JP3525159B2 - リン酸型燃料電池の多孔質電極基板用炭素繊維 - Google Patents
リン酸型燃料電池の多孔質電極基板用炭素繊維Info
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Description
要部材である電極基板、リザーバなどのカーボン多孔質
体に用いられる炭素繊維、とくに優れた耐蝕性により高
い信頼性を付与することができるリン酸型燃料電池の多
孔質電極基板用炭素繊維に関する。 【0002】 【従来の技術】リン酸型燃料電池は、リン酸を保持した
電解質層の両側に白金触媒担持カーボンブラックを塗布
により電極触媒層を形成した多孔質電極基板を配置して
単位セルを構成し、各単位セルをセパレーター板を介し
て所定のスタック構造に形成することにより組立てられ
る。このうち、多孔質電極基板は電池性能の信頼性に影
響を与える重要な部材で、材質的に易ガス透過性、耐熱
性、耐蝕性、良導電性、良熱伝導性、易加工性などの諸
特性が要求される。 【0003】一般に、多孔質電極基板は炭素繊維のチョ
ップに熱硬化性樹脂を配合して板状に成形したのち焼成
炭化する方法、あるいは炭素繊維の前駆体シートに熱硬
化性樹脂を含浸したのち焼成炭化する方法により製造さ
れているが、後者の方法は繊維源として炭素化前のプレ
カーサーを用いる関係で焼成炭化処理が1回で済むうえ
シート形成が容易となる利点があり、前者に比べて工業
的な有利性があるとされている。このため、後者の方法
については数多くの改良が試みられている。 【0004】例えば強度や電気伝導性の向上を図る方法
として、ポリアクリロニトリル系繊維の織布または不織
布を張力下で不融化処理し、これに有機結合材を含浸し
たのち非酸化性雰囲気下で炭化する多孔質炭素板の製造
法(特開平2−51480号公報)、特定量の人造有機
繊維、パルプおよび抄紙用バインダーを混合抄紙して得
られるシートに有機高分子溶液を含浸し、必要により不
融化処理を行ったのち、不活性雰囲気中で800℃以上
の温度で加熱炭化する炭素繊維シートの製造法(特公平
2−58369号公報)、炭素化可能な有機高分子繊維
を抄紙後、熱硬化性樹脂を含浸し、積層圧着、炭素化し
て得られる多孔質炭素の製造において、積層各含浸紙間
に加熱圧着時に炭素化可能で熱可塑的性質を有し、熱可
塑性有機高分子繊維を不融化する機能を有するフイルム
を介在させる多孔質炭素の製造法(特開平4−2193
70号公報)等が提案されている。 【0005】また、この種の方法で形成される炭素繊維
シートに不足する耐薬品性の改善を図る目的として、特
公平6−671号公報には、未焼成の炭素繊維製造用有
機繊維を65重量%以上含む繊維集合体シートに、熱硬
化性樹脂溶液を含浸させたのち乾燥することによって、
上記有機繊維の表面をこの有機繊維に対して乾燥重量で
5重量%以上の量の熱硬化性樹脂で被覆する工程、上記
熱硬化性樹脂を熱硬化させて前駆体シートを作成する工
程、前駆体シートを酸素ガス含有雰囲気中で150〜3
50℃の温度で5時間以上安定化処理する工程、および
安定化処理後の前駆体シートを不活性ガス雰囲気中で1
800℃以上の温度で焼成する工程を含む高黒鉛化多孔
質炭素繊維シートの製造方法が開示されている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】上記した特公平6−6
71号公報の発明は、炭素繊維の耐蝕性が黒鉛化度に依
存することに着目されており、黒鉛化性の向上効果は有
機繊維表面に被覆され、不融化(安定化)に先立って硬
化した熱硬化性樹脂が安定化熱処理および焼成過程で炭
素繊維の収縮を抑制し、炭素繊維に緊張を与えたと同様
の機能を果たすためにもたらされると推測している。し
かしながら、有機繊維面に被覆した熱硬化性樹脂膜は繊
維の収縮に抗して緊張状態を保つほどの収縮抑止力はな
いため、耐蝕性を大きく改善するほどの黒鉛化性向上効
果を期待することはできない。したがって、塩素に対し
て良好な耐蝕性が付与されたとしても、リン酸中におけ
る電解酸化に対して十分な安定性を確保することはでき
ない。 【0007】本発明者らは、電極基材となる炭素繊維の
黒鉛結晶性状と200℃以上のリン酸中における電解腐
食の耐力(耐蝕性)との因果関係について詳細に検討を
行った結果、リン酸型燃料電池における電極基材用炭素
繊維の耐蝕性を向上させるためには単に黒鉛化度を高め
るのみではなく、電解質と接する炭素繊維の表面構造が
重要であることを知り、更に炭素繊維の黒鉛結晶性状が
特定の格子面間隔と結晶子の大きさを有し、かつ繊維表
層部がオニオンスキン構造を呈する場合に実用上十分な
耐蝕性を発揮することを確認した。 【0008】本発明は前記の知見に基づいて開発された
もので、その目的とするところは、リン酸型燃料電池に
供して優れた熱伝導率および電気伝導性を保有し、長時
間の実用に耐える耐蝕性能を発揮する高信頼性の多孔質
電極基板用炭素繊維を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明によるリン酸型燃料電池の多孔質電極基板用
炭素繊維は、黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d002 が
0.345nm以下、結晶子の大きさLc(002)が5.0
nm以上で、かつ表層部の炭素網面がオニオンスキン構
造の黒鉛結晶性状を備え、引張弾性率が300GPa以
上、嵩密度が1.8g/cm3 以上、および表面酸素量
(O1s/C1s比)が0.03以下の物性を有することを
構成上の特徴とする。 【0010】本発明に係るリン酸型燃料電池の多孔質電
極基板を構成する炭素繊維の種類には特に限定はなく、
ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊
維、ピッチ系炭素繊維のいずれも対象となる。炭素繊維
の黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d002 は黒鉛結晶に
おけるC0 /2層間距離の平均値、また結晶子の大きさ
Lc(002)はc軸方向の積層厚さであり、いずれもX線回
折の図形から算出した値として示される。これらの結晶
特性は、いずれも炭素繊維の黒鉛化度を示す指標となる
もので、本発明の目的には黒鉛六角網面層の平均格子面
間隔d002 が0.345nm以下で、結晶子の大きさLc
(002)が5.0nm以上の高い黒鉛化度を備える炭素繊維
が選択される。この黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d
002 および結晶子の大きさLc(002)が前記の数値を共に
外れると耐蝕性の向上効果が得られず、同時に熱伝導性
および電気伝導性が低下する。また、前記数値のいずれ
かが限定範囲を外れても耐蝕性の向上が期待できなくな
る。 【0011】本発明の炭素繊維は、上記の結晶性状とと
もに表層部の炭素網面がオニオンスキン構造を呈してい
ることが重要な選択要件となる。オニオンスキン構造と
は、炭素繊維の横断面を観察した際に表層部における炭
素網面が年輪状に配列した配向構造を意味する。炭素繊
維の横断面における結晶の配列状態には、オニオン状
(同心円形)、ラジアル状(放射状)、ランダム状(無
秩序)等が知られているが、本発明が対象とするオニオ
ンスキン構造とは、図1に示すような完全なオニオン構
造、あるいは例えば図2のような芯部がラジアル状であ
っても表層部がオニオン状を呈する構造、あるいは図3
のように芯部がランダム状であっても表層部がオニオン
状を呈する構造であればよい。しかし、図4に示すよう
なラジアル構造や、図5および図6に示すようなランダ
ム構造では、エッジ部分から次第に腐食が進行して安定
な耐蝕性が発揮されなくなる。 【0012】本発明の炭素繊維は、上記の黒鉛結晶性状
に加えて、引張弾性率が300GPa以上、嵩密度が
1.8g/cm3 以上、および表面酸素量(O1s/C1s
比)が0.03以下の物性を有することが必要である。 【0013】引張弾性率が300GPa 以上で、嵩密度が
1.8g/cm3 以上の物性は、黒鉛結晶が発達し、乱れた
構造が少なくなる傾向を強めて耐蝕性の向上に寄与す
る。また、表面酸素量(O1S/C1S比)は炭素繊維をX
線光電子分光法(XPS)で計測される値で示され、こ
の量が0.03以下の場合にはリン酸により腐食を受け
易い反応部分、すなわち黒鉛結晶のエッジ部分(構造乱
れ部分)が少なくなって耐蝕性が向上する。 【0014】更に、本発明の炭素繊維は可及的に金属不
純物が少ないことが好ましい。金属不純物は酸化を促進
させて耐蝕性を低下させる要因となることから、灰分量
として数100ppm 以下、好適には100ppm 以下とす
る。また、原糸には炭素と結合した窒素が存在し、これ
がそのまま炭素繊維中に残留していると耐蝕性を損ねる
原因となる。しかし、この窒素成分は1800℃以上の
温度で黒鉛化処理すれば、大部分を除去することが可能
である。 【0015】上記の黒鉛結晶性状ならびに物性を備える
リン酸型燃料電池の多孔質電極基板用炭素繊維は、炭素
化可能なプレカーサー繊維を緊張状態を保持しながら不
活性雰囲気中1000℃以上の温度域で焼成・炭化処理
する炭化工程と、炭化工程で得られた炭化繊維を無緊張
下で不活性雰囲気中2000℃以上の温度域で黒鉛化処
理する黒鉛化工程からなるプロセスにより製造すること
ができる。 【0016】炭素化可能なプレカーサー繊維としては、
炭素繊維製造用の原糸として常用されているポリアクリ
ロニトリル系繊維、レーヨン系繊維またはピッチ系繊維
が用いられるが、ポリアクリロニトリル系繊維やレーヨ
ン系繊維をプレカーサー繊維とする場合には延伸下に紡
糸されたフィラメントが使用される。このように延伸紡
糸されたフィラメントは繊維表面の分子構造が軸方向に
配向しているため、後工程の炭化・黒鉛化工程で黒鉛結
晶の発達が円滑となり、オニオンスキン構造が形成し易
くなる。一方、ピッチ系繊維を用いる場合には、溶融紡
糸する際のノズル形状を工夫してメソフェーズピッチの
分子配向を揃えるように紡糸する。オニオン状の炭素繊
維を得るためのピッチ紡糸方法については、例えば特開
昭59−168127号公報、特開昭62−18412
3号公報、特開昭64−61512号公報等に記載され
ている。 【0017】プレカーサー繊維は、トウ形態で緊張状態
を保持しながら不活性雰囲気中で1000℃以上の温度
域で炭化処理される。緊張状態の保持は、熱処理によっ
て繊維が収縮する以上の張力を掛ければ足り、このテン
ション操作により繊維が炭化される過程において黒鉛結
晶が配向しながら発達する。ついで、炭化後の繊維を無
緊張下で不活性雰囲気中2000℃以上の温度で黒鉛化
処理する。黒鉛化段階で黒鉛結晶が一層発達し、同時に
結晶子が配向して表層部がオニオンスキン構造となる。 【0018】このようにして製造された黒鉛組織の炭素
繊維は、適宜な長さに裁断して短繊維にチョップし、こ
れを抄紙してシート化したのち熱硬化性樹脂を含浸する
か、熱硬化性樹脂と共にシート状に成形したのち、不活
性雰囲気下で焼成炭化処理して多孔質電極基板を作製す
る。なお、必要に応じて更に2000℃以上の温度で黒
鉛化処理を施すこともできるが、この段階で黒鉛化処理
を施す場合には前記した炭素繊維の製造過程での黒鉛化
処理は不要となる。 【0019】 【作用】炭素繊維は黒鉛化度が高まるに従って化学的安
定性が向上することは知られているが、具体的な黒鉛結
晶性状やその他の物性がリン酸型燃料電池の電極基板と
した際にリン酸と反応して腐食される挙動についてはこ
れまで解明された例はない。本発明によれば、リン酸型
燃料電池の多孔質電極基板用として適用され、最も腐食
反応の影響を受ける骨格部の炭素繊維が備えている特性
として、黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d002 が0.
345nm以下、結晶子の大きさLc(002)が5.0nm以上
で、かつ表層部の炭素網面がオニオンスキン構造の黒鉛
結晶性状を選択することにより熱伝導性や電気伝導性を
高水準に維持しながら、実用上十分な耐蝕性を付与する
ことが可能となる。更に、引張弾性率が300GPa 以
上、嵩密度が1.8g/cm3 以上、および表面酸素量(O
1S/C1S比)が0.03以下の物性を与えることにより
一層耐蝕性を向上させることができる。 【0020】特に炭素繊維表層部のオニオンスキン構造
は、リン酸に対する耐蝕性を高めるために効果的な機能
を果たす。すなわち、炭素繊維の熱濃リン酸中での電解
酸化による腐食は、経時的に表面官能基の生成を伴いな
がらC+2H2 O→CO2 +4H+ +4e- の反応で進
行すると考えられている。この腐食反応は炭素繊維表面
の結晶構造の乱れた部分から生じるため、黒鉛結晶構造
の発達度合が不足して構造乱れ部分が表面に多く存在し
ている炭素繊維では、表面全体において腐蝕反応が進む
ようになる。黒鉛結晶が比較的配列した構造の炭素繊維
は化学的に安定な基底面が表面に平行に配列しているた
め表面からの腐蝕反応を抑制することができるが、黒鉛
結晶の基底面のエッジ部分が出やすい構造を持つラジア
ル構造の炭素繊維では、エッジ部分から局部的に腐蝕す
る現象を招く。これに対し、オニオンスキン構造の炭素
繊維は、エッジ部分が存在しないため、腐食反応が効果
的に抑制されて長期間に亘る熱濃リン酸に接触しても十
分な耐蝕性が発揮される。 【0021】したがって、本発明に係る炭素繊維により
製造されたリン酸型燃料電池の多孔質電極基板は、実用
時、高出力状態において4万時間を越える発電に十分耐
える高い信頼性と安定性を得ることができる。 【0022】 【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比しなが
ら具体的に説明する。しかし、本発明の実施態様はこれ
らの例に限られるものではない。 【0023】実施例1 延伸紡糸されたポリアクリロニトリル繊維をプレカーサ
ーとし、熱安定化処理を行ったのち、張力を掛けた状態
でアルゴンガス雰囲気下の環状炭化炉を通過させて15
00℃の温度で焼成炭化処理を施した。ついで、炭化後
の繊維をアルゴンガス気流中2000℃の温度で無緊張
下にて黒鉛化処理した。得られた炭素繊維の横断面を拡
大観察したところ、図2に示すように炭素繊維の表層部
がオニオンスキン構造を呈していることが確認された。
また、該炭素繊維の黒鉛結晶性状およびその他の物性を
測定するとともに、炭素繊維を210℃の熱濃リン酸中
に浸漬して1.0V/RHE の電位をかけ、1000分後の
腐蝕電流を測定して耐蝕性を評価した。表1に製造条件
を、表2および表3に測定結果を示した。 【0024】実施例2 実施例1の黒鉛化温度を2300℃に高め、その他は実
施例1と同一条件により炭素繊維を製造した。この炭素
繊維につき実施例1と同様に各種測定を行い、表1に製
造条件を、表2および表3に測定結果を併載した。 【0025】実施例3 ベンゼン不溶分90.98重量%、メソフェーズピッチ
95容量%を含む軟化点280℃のピッチを、紡糸ノズ
ルの出口に設置した突起状紡出ガイドを用いて溶融紡糸
(温度;375 ℃、圧力;0.2kg/cm2)した。得られたピッ
チ繊維を繊維が収縮しない程度の緊張を掛けながら窒素
気流中で1500℃で焼成炭化し、さらにアルゴン雰囲
気下で無緊張状態により2000℃により黒鉛化した。
この炭素繊維の横断面を拡大観察したところ、図1に示
すオニオン構造になっていることが確認された。該炭素
繊維につき実施例1と同様に各種測定を行い、表1に製
造条件を、表2および表3に測定結果を併載した。 【0026】実施例4 実施例3の黒鉛化温度を2500℃に高め、その他は実
施例3と同一条件により炭素繊維を製造した。この炭素
繊維につき実施例1と同様に各種測定を行い、表1に製
造条件を、表2および表3に測定結果を併載した。 【0027】比較例1 等方性構造のピッチ系炭素繊維〔呉羽化学工業(株)
製、C-199T〕を窒素雰囲気に保持された炉内に入れ、無
緊張下で2300℃の温度により黒鉛化処理を行った。
この炭素繊維につき実施例1と同様に各種測定を行い、
表1に製造条件を、表2および表3に測定結果を併載し
た。 【0028】比較例2 フェノール樹脂繊維〔群栄化学(株)製、カイノール繊
維KR0204〕を窒素雰囲気中で無緊張状態により2000
℃の温度で焼成炭化して炭素繊維を製造した。この炭素
繊維につき実施例1と同様に各種測定を行い、表1に製
造条件を、表2および表3に測定結果を併載した。 【0029】比較例3 実施例2で製造した炭素繊維をオゾン酸化処理により表
面層のオニオンスキン構造部分を除去した。この炭素繊
維につき実施例1と同様に各種測定を行い、表1に製造
条件を、表2および表3に測定結果を併載した。 【0030】比較例4 石油ピッチ系炭素繊維で横断面がラジアル構造を呈する
炭素繊維〔日本石油(株)製、XN-40 〕を1000℃の
温度で熱処理し、表面に存在するサイジング剤を除去し
た。この炭素繊維につき実施例1と同様に各種測定を行
い、表1に製造条件を、表2および表3に測定結果を併
載した。 【0031】比較例5 ポリアクリロニトリル繊維を緊張状態で炭化および黒鉛
化処理して製造された市販の高弾性炭素繊維〔東レ
(株)製、M50 〕を1000℃の温度で熱処理し、表面
に存在するサイジング剤を除去した。該炭素繊維の性状
は、緊張下で黒鉛化処理を行った関係で表面には応力が
残留し構造乱れ部分が残っており、オニオンスキン構造
が十分発達せずにランダム構造を呈していた。この炭素
繊維につき実施例1と同様に各種測定を行い、表1に製
造条件を、表2および表3に測定結果を併載した。 【0032】比較例6 ポリアクリルニトリル系炭素繊維〔東レ(株)製、T30
0〕を1800℃で熱処理し、その物性と耐蝕性を評価
した。この炭素繊維につき実施例1と同様に各種測定を
行い、表1に製造条件を、表2および表3に測定結果を
併載した。 【0033】 【表1】〔表注〕(1) PANはポリアクリロニトリルである。 (2) *熱処理温度。 【0034】 【表2】 【0035】 【表3】【0036】表1〜3を考察して明らかなとおり、実施
例による炭素繊維は本発明の要件を外れる比較例の炭素
繊維に比べて熱濃リン酸に対する耐蝕性が著しく高く、
かつ相対的に熱伝導性および電気伝導性が高水準に維持
されていることが判る。 【0037】 【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば特定の黒
鉛結晶性状を選択することにより、熱伝導性や電気伝導
性等を高水準に維持しながら、優れた耐蝕性を発揮する
リン酸型燃料電池の多孔質電極基板用として好適な炭素
繊維を提供することが可能となる。したがって、該炭素
繊維を用いて作製された多孔質電極基板を用いれば、高
出力状態において4万時間の発電に十分耐え得る信頼性
と安定性を確保することができる。
面を示した模式図である。 【図2】黒鉛結晶性状が、芯部がラジアル構造で表層部
がオニオン構造の炭素繊維横断面を示した模式図であ
る。 【図3】黒鉛結晶性状が、芯部がランダム構造で表層部
がオニオン構造の炭素繊維横断面を示した模式図であ
る。 【図4】黒鉛結晶性状が、ラジアル構造の炭素繊維横断
面を示した模式図である。 【図5】黒鉛結晶性状が、ランダム構造の炭素繊維横断
面を示した模式図である。 【図6】黒鉛結晶性状が、ランダム構造の炭素繊維横断
面を示した模式図である。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d002
が0.345nm以下、結晶子の大きさLc(002)が5.
0nm以上で、かつ表層部の炭素網面がオニオンスキン
構造の黒鉛結晶性状を備え、引張弾性率が300GPa
以上、嵩密度が1.8g/cm 3 以上、および表面酸素
量(O1s/C1s比)が0.03以下の物性を有すること
を特徴とするリン酸型燃料電池の多孔質電極基板用炭素
繊維。
Priority Applications (1)
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JP12595095A JP3525159B2 (ja) | 1995-04-26 | 1995-04-26 | リン酸型燃料電池の多孔質電極基板用炭素繊維 |
Applications Claiming Priority (1)
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