JP3521709B2 - 抄紙機用ワインダーのライダーロール - Google Patents

抄紙機用ワインダーのライダーロール

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JP3521709B2
JP3521709B2 JP27486097A JP27486097A JP3521709B2 JP 3521709 B2 JP3521709 B2 JP 3521709B2 JP 27486097 A JP27486097 A JP 27486097A JP 27486097 A JP27486097 A JP 27486097A JP 3521709 B2 JP3521709 B2 JP 3521709B2
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恵次 中山
啓治 仲井
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Nomura Plating Co Ltd
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、古紙含有率の高い
中芯紙、ジュートライナー等を抄造する抄紙機におい
て、出来上がった紙を一定サイズと一定長さに巻き取る
為の仕上げパートで利用されるワインダーの新規なライ
ダーロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図1に代表的な抄紙機のワインダーであ
るシャフトレス2ドラムワインダーの構造とライダーロ
ールの位置関係を示す。図中、1は抄紙機で抄造された
半製品、2はライダービーム、3はライダーロール、4
は製品(完成品)、5はドラム、6はワインダー、7は
リワインダーである。ライダーロール3は、抄紙機で抄
造された半製品1の紙を一定長さと幅を持った製品4と
するために、リワインダー7から送り出されてくる紙を
スリッターを経てワインダー6で再び巻き取って製品4
とする際に、紙の伸びやシワの無い均一な巻き固さを確
保する機能を担うものであり、時にライディングロール
とも称される。このような抄紙機の仕上げパートにある
ワインダーのライダーロールには、従来から鋼管製のも
のが利用されており、まれにクロムめっき被覆される場
合もある。
【0003】ところで、抄紙機で抄造される紙がA級の
中芯紙である場合、その主原料は一般に広葉樹のSCP
またはCGPが用いられているが、それよりもグレード
の低いB級紙及びC級紙等の中芯紙やジュートライナー
の場合には、回収された古紙が主原料となっている。古
紙には、その履歴によってホットメルト、ワックス、ガ
ム状物質、フィルム類などの異物が混入しており、これ
らの異物を総称してピッチと言い表している。そしてピ
ッチは、色々な意味で、今日操業上のトラブルを引き起
こしている。
【0004】そこで、ライダーロールへのピッチの付着
防止の為に、鋼管製ロールの表面にテフロンコーティン
グを施したり、ポリプロピレン管を被せたり、タングス
テンカーバイトの溶射被覆を形成したりする試みがなさ
れたことはあるが、いずれも偏摩耗したり、ピッチが付
着したりして1〜2箇月の寿命しかなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】中芯紙、ジュートライ
ナーを抄造する抄紙機のワインダーのライダーロールに
は、原料の一部に古紙を利用する関係で、早くからその
表面にピッチが付着するという現象は見られていたが、
近年、古紙含有率が急激に高まったせいと古紙成分の変
動ということもあって、ピッチトラブルが急増してい
る。そして、ライダーロールに付着するというより固着
するという表現が適切なピッチは、ロールの表面に一様
に付着する訳ではなく、部分的にその堆積厚みに差異を
生ずる。また、一旦付着したピッチは、粘性もあって容
易なことで除去出来ず、ロール表面の清掃にも困難を極
めている。さらに別な弊害としてピッチのイレギュラー
な付着が90〜100dBにも及ぶ騒音公害の発生を伴
っているだけでなく、製品とする為に折角巻き取った紙
にシワが発生して不良品を出すなど、多くの操業上の問
題点を抱えている。
【0006】本発明は、現状のピッチ付着による騒音公
害の発生や製品へのしわの発生等操業上のトラブルを長
期間に亘って解消出来る離型性と耐久性に優れた新規な
ライダーロールを提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明にあっては、上記
の課題を解決するために、古紙含有率の高い中芯紙やジ
ュートライナー用の抄紙機の仕上パートで用いられる紙
巻取用ワインダーのライダーロールにおいて、表面に
化クロムまたは酸化クロムを主体とする混合物よりなる
セラミック被覆を気孔率10%以下の条件で溶射した
とを特徴とするものである。セラミック被覆は、酸化ク
ロムに少なくともシリカまたはチタニアのうち一種以上
を0〜50%の範囲で配合した混合物よりなることが好
ましい。またセラミック被覆層の厚みは、0.05〜
1.00mmの範囲とすることが好ましい。
【0008】このように構成することにより、長期間に
亘ってライダーロールへのピッチの付着を防止し、その
結果、運転音量の低減及び巻き取りしわの防止が可能と
なる。
【0009】
【発明の実施の形態】実際のライダーロールに付着する
ピッチの成分は、エチレン酢酸ビニル共重合体が主体で
ある。これは一般にガムテープの主成分として知られて
おり、極めて粘着性が高い。従って、この粘着性の高い
ピッチが付着しないか、あるいは付着しても容易に除去
できるだけでなく、中芯紙やジュートライナーで連続的
に擦られても摩耗しがたい被覆材料を発見出来れば良い
ことになる。
【0010】そこで、本発明者らは、離型性と耐摩耗性
に優れた表面被覆材料の候補として、まず、めっき法で
は、クロムめっき、無電解ニッケルめっき、ニッケルめ
っき、ニッケル−20%鉄の合金めっき、銅めっき等を
選定し、また、溶射法では、ニッケル80%−クロム2
0%合金、トリバロイ、モリブデン、タングステンカー
バイト、クロムカーバイト等のサーメットと、アルミ
ナ、アルミナ−2.3%チタニア、アルミナ−40%チ
タニア、酸化クロム、酸化クロム−10%シリカ、酸化
クロム−5%チタニア、ジルコニア等のセラミックを選
定して、めっきないし製膜した試料を作成し、JIS−
H−8504のテープ試験法を応用して、試料表面に貼
り付けた一定幅の粘着テープを引き剥がすに要する強度
を粘着性の大小と見なして、粘着性の小さい被覆材料の
選別を行った。この際、上記クロムめっきもそうである
が、テフロン被膜を選別の為の比較ないし目安材料とし
た。この結果、酸化クロム及び酸化クロムにチタニアや
シリカを配した材料やアルミナ−40%チタニア等のセ
ラミックやタングステンカーバイトが有望であることを
発見した。
【0011】そこで、今度は、実際の中芯紙を使用する
擬似試験機を図2に示すように設計・製作し、直径が2
50mmで幅が65mmのSS400製のテスト用リン
グ10にクロムめっき、タングステンカーバイト、酸化
クロム、酸化クロム−10%シリカ、酸化クロム−5%
チタニア、アルミナ−40%チタニア、テフロンを被覆
し、研磨加工して表面粗さと被覆厚とを揃えた。また被
覆厚は、仕上がりでそれぞれ0.1mmとした。これら
のリングを用いてピッチ付着性と耐摩耗性とを併せた予
備試験を実施した。なお、予備試験の条件は、以下の通
りである。
【0012】 ・テスト用リングのニップ圧 … 50〜100kg/cm ・運転スピード … 1,000〜1,300m/分 ・運転時間 … 合計30日間
【0013】
【表1】
【0014】予備試験の結果を表1に示す。表1のピッ
チ付着性の項目においては、○の数の多い程、ピッチの
付着量が多いことを示す。表1の結果からも明らかなよ
うに、ピッチの付着防止に効果があるものはテフロンと
酸化クロムのみであったが、耐離耗性の観点からは、酸
化クロムが最も優れていることを発見した。また、酸化
クロム系の酸化クロム−10%シリカ及び酸化クロム−
5%チタニアは、ピッチが付着するものゝ、堆積厚みも
少なく簡単に剥がせることが分かったが、何故付着する
のかを調査すると表面の微細な凹凸が影響していること
が明らかとなった。セラミック溶射被膜の研磨後の凹凸
は、しばしばセラミック溶射に固有な気孔に起因するこ
とが多いので、酸化クロムを含めて、酸化クロム−10
%シリカ、酸化クロム−5%チタニア、アルミナ−40
%チタニア等の気孔率を調査すると、酸化クロムで2%
以下、酸化クロム−10%シリカで11〜13%、酸化
クロム−5%チタニアで10〜14%、アルミナ−40
%チタニアで5%以下の気孔率であった。気孔率とピッ
チ付着性の関係をさらに詳細に検討して見ると、セラミ
ックの種類によっては、材料の特性から気孔率を低減出
来ないものや気孔率が少なくてもピッチが付着する材料
もあること等が明らかとなった。
【0015】結局、酸化クロムを含めた酸化クロム系の
セラミック材料のみが、気孔率10%を境にピッチが付
着する領域と付着しない領域とが存在することを発見し
た。従って、酸化クロム系のセラミックに於いて、気孔
率が10%以下となるようにセラミックを溶射する条件
を選定すれば、ピッチ付着が防止出来るだけでなく、結
果として操業時の騒音低減と引いては耐摩耗性向上によ
る長寿命のライダーロールが提供出来る。
【0016】なお、適用する被膜厚は、耐久性の点で厚
ければ厚い程良いが、中芯紙やジュートライナーと接触
するライダーロールに掛かる接触面圧や曲げ応力と酸化
クロム系のセラミック材の転動疲労強度の関係を勘案し
て0.05〜1.00mmまでの範囲が好ましい。
【0017】
【実施例】
(実施例1)1本の寸法が直径260mmで長さ1,5
30mmの長手方向3本1組のライダーロールのそれぞ
れの表面に平均気孔率3%の酸化クロムを0.5mmの
厚さにプラズマ溶射し、グラインダ研削、表面ラッピン
グを施して表面粗さを0.10μRaに仕上げた。
【0018】このライダーロールを100%古紙から抄
造している実際の中芯紙の抄紙機用ワインダーに装着し
た。このワインダーに元から装着されている鋼管製のラ
イダーロールは、運転後8時間経過するとピッチが付着
し、最大運転音量は95〜100dBであったが、酸化
クロムを溶射した本発明のライダーロールの場合には、
3箇月経過後もピッチの付着が全くなく、運転音量も6
0dBを超えることはなく、現在も順調に運転されてい
る。
【0019】(実施例2)1本の寸法が直径270mm
で長さ1,670mmの長手方向3本1組のライダーロ
ールの1本目の表面に、平均気孔率2%の酸化クロム
を、2本目の表面に、平均気孔率が9%の酸化クロム−
8%シリカを、また3本目の表面に、平均気孔率10%
の酸化クロム−5%チタニア−8%シリカの複合材料
を、それぞれ1.0mmの厚さにプラズマ溶射し、グラ
インダ研磨してラッピング仕上げして、表面粗さを0.
2μRaに仕上げて、古紙含有率が100%に近いジュ
ートライナー紙を抄造している抄紙機のワインダーのラ
イダーロールとして組み込んだ。当ワインダーの従来の
鋼管製ライダーロールの場合には、運転開始後2日経過
するとピッチの付着が著しく、運転音量も90〜110
dBで、始終マシーンを停止してライダーロールを交換
しなければ製品歩留まりに影響していたが、本発明のラ
イダーロールの場合には、3本目の酸化クロム−5%チ
タニア−8%シリカの複合材料からなるライダーロール
に僅かにピッチが付着する傾向が見えたものゝ、軽微で
マシーン停止時に軽く手で擦ると簡単に除去出来る程度
であった。なお、最大運転音量は、50〜60dB程度
であり、これら3種類の酸化クロム系セラミックを溶射
したライダーロールは、ワインダーに組込み後8箇月経
過しているが、従来のライダーロールに見られる難点が
ないので、交換に至らず現在も順調に運転されている。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、古紙含有率の高い中芯
紙やジュートライナー用の抄紙機の仕上パートで用いら
れる紙巻取用ワインダーのライダーロールにおいて、表
面に酸化クロムまたは酸化クロムを主体とする混合物よ
りなるセラミック被覆を気孔率10%以下の条件で溶射
したので、古紙に由来するピッチの付着が皆無に近いだ
けでなく、従来の鋼管製ロールを組込んだライダーロー
ルに宿命的に派生する高い運転騒音を長期間に亘って著
しく低減出来るものであり、ライダーロールの清掃の労
力を省略出来るだけでなく、テンダーの健康維持にもは
なはだ効果的である。付け加えて、ピッチが付着しない
ので製品となった巻取紙にしわも入らないという効果も
あり、製品歩留まりの著しい向上が見られ、経済的でも
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のライダーロールを備える紙巻取用ワイ
ンダーを含む抄紙機の仕上パートの概略構成図である。
【図2】本発明のライダーロールに適用される各種被覆
を評価するための擬似試験機の構成を示す図であり、
(a)は正面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
3 ライダーロール 6 ワインダー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B65H 18/26 B65H 27/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 古紙含有率の高い中芯紙やジュートラ
    イナー用の抄紙機の仕上パートで用いられる紙巻取用ワ
    インダーのライダーロールにおいて、表面に酸化クロム
    または酸化クロムを主体とする混合物よりなるセラミッ
    ク被覆を気孔率10%以下の条件で溶射したことを特徴
    とする抄紙機用ワインダーのライダーロール。
  2. 【請求項2】 セラミック被覆は、酸化クロムに少な
    くともシリカまたはチタニアのうち一種以上を0〜50
    %の範囲で配合した混合物よりなることを特徴とする請
    求項1記載のライダーロール。
  3. 【請求項3】 セラミック被覆層の厚みは、0.05
    〜1.00mmの範囲であることを特徴とする請求項1
    又は2に記載のライダーロール。
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JP6258747B2 (ja) * 2014-03-28 2018-01-10 京セラ株式会社 サクションローラおよび搬送装置
JP6476014B2 (ja) * 2015-03-05 2019-02-27 日本製紙株式会社 ワインダ装置におけるシワ発生防止方法

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