JP2004167902A - ドクターブレード - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回転するシリンダーと接触する鋼またはステンレス鋼からなる刃先部分と、少なくとも表面がプラスチックよりなる本体部分とからなり、前記刃先部分は、少なくともシリンダー回転方向の裏側の表面粗さ(Ra)が1.0μm以下の平滑な表面を有し、好ましくは本体部分が、ドクターホルダーストッパー構造および/またはドクターホルダーカバー構造を有しているドクターブレード。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グラビア印刷用のドクターブレードに関するものであり、さらに詳しく言えば、従来のドクターブレードと比較して連続印刷特性に優れ、しかも安価に製造できるドクターブレードに関するものである。
【0002】
【従来技術及びその課題】
グラビア(凹版)印刷では、図1および図2(図1の部分拡大図。但し、図1、2共に理解を容易にするためにブレード部分をシリンダーに対して極端に拡大して描いている。)に示すように円筒表面に画像に対応するセルと呼ばれる微小な凹部(図示せず)を多数形成したシリンダー(1)を用い、このシリンダーの円周面にスチール製またはステンレス製のドクターブレード(2)を一定の圧力で押圧しておいて、版面の非画像部に付着しているインキ(3)を掻き落とし除去している。このドクターブレードは非画像部のインキを完全に除去すると共に、画像部に所定量のインキを残す機能を有するものであるから、シリンダーとドクターブレードとの接触圧は常に一定に維持されなければならず、その先端部(刃先)には耐磨耗性とインキの切れ(インキの掻き取り)が良好であることが要求されている。
【0003】
一般的には、ドクターブレードとしては、刃先部となる側縁が薄刃状になるように段付けする等の刃付け加工が施された鋼あるいはステンレス鋼よりなるドクターブレードがそのまま使用されるか、あるいは、図3に示すように、さらにこのドクターブレードの表面に、SiC微粒子が分散したニッケル−リン分散めっき(22)が、7μm〜10μm程度施された表面処理ドクターブレード(以下、これらを「従来ブレード」と総称する。)が利用されている。
【0004】
近年、ユーザーの印刷物に要求される品質は、益々高度なものとなってきており、数年前であれば問題にならなかったレベルの微小・微細なスジ、あるいはかすかなニジミによる画像形状の再現性の不良等の印刷欠陥(以下、「印刷不良」と総称する。)が問題視されつつある。
印刷物の品質には、ドクターブレードの性能が大きく関係しており、従来ブレードで昨今求められている高度なレベルの品質に対応するには、頻繁にブレードの交換等のメンテナンスを行う必要があり、従来ブレードの連続印刷特性は十分なものではなかった。
【0005】
さらに、印刷業界においても企業間の競争が激しくなり、それに伴い印刷コスト削減のためにドクターブレードのコスト低減の要求もより厳しいものとなってきている。しかし、従来のブレードは、(1)ブレードの基材である鋼、ステンレス鋼自体のコスト削減は限界に達していること、(2)ブレードへの刃付け工程に要するコストが大であるが、この刃つけ工程を省略することはブレードの品質性能上困難であること、(3)表面処理ドクターブレードの場合、めっきは本来刃先のみに施されていれば十分であるが、実際は刃先以外の部分にもめっきが施されており、この部分のめっきはコスト的に無駄であること、そこで(4)刃先のみにめっきを行うために、刃先以外の部分を完全マスキングしてめっきを行う手段もあるが、この方法では、めっき作業工程においてマスキング材の取り付け工程、マスキング材の取り外し工程が新たに加わり、作業効率が低下し、しかも、マスキング材に起因しためっき不良もしばしば生じていること等の理由により、従来ブレードでのこれ以上の大幅なコスト低減には限界があった。
【0006】
また、ドクターブレードは、図4に示すように、ドクターブレードホルダー(4)に取り付ける際、ドクターブレードの上下に当て板(5)を重ね、上部および下部のドクターホルダーにより挟み付け、複数個のネジ等の固定部材(6)により固定設置して、これを版にあてることにより利用されている。
この際、ドクターブレードを、刃が水平になるようにホルダーに設置することが重要であり、刃が水平でない場合は印刷版に押圧し、印刷を行う際にブレードに偏磨耗等が生じ、印刷トラブルの原因になっていた。そのため、従来、ドクターブレードの交換の際には、刃を印刷版に対して水平になるようにホルダーに設置するのに時間と手間を要しており、この作業性を改善し、簡単にブレードを水平にホルダーに設置できる方法が求められていた。
【0007】
さらに、ドクターブレードホルダー部では、ドクターブレード、当て板およびホルダーの隙間にインキ、あるいはコート液がしみこんだり、ホルダーの表面自体にも、これら薬液が付着したりしているため、ブレードの交換の際には、完全に分解しホルダー自体を洗浄する必要があり、分解作業や洗浄作業に多大な労力を要するという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明の第一の課題は連続印刷特性に優れ、安価なドクターブレードを提供することにあり、さらには第二の課題はドクターブレードのホルダーへの設置・交換の際の作業性にも優れたドクターブレードを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、これら従来技術の問題点を改善することを目的として、まず連続印刷性を向上させるために、ドクターブレードの刃先表面の形状と連続印刷特性の関係について調べた。その結果、従来のドクターブレードでは回転方向裏側(図2、図3のR側)の刃先に、板厚0.15mm〜0.2mm程度の鋼の側縁を0.04mm〜0.08mm程度まで砥石等により研磨し削り落として薄刃状の刃を形成する段つけ加工が行われているが、この刃付け加工時の研磨により、回転方向裏側の刃先表面には、かなりの研磨スジが存在すると共に、その表面も粗いものとなっており、この表面の凹凸が基点となって、連続印刷時に印刷不良が発生しやすいことを見出した。すなわち、刃先回転方向裏側(図2、図3のR側)の面の表面形状が、連続印刷性に大きく影響を及ぼしており、連続印刷性を一段と向上させるには、従来考慮されていなかった刃先回転方向裏側(図2、図3のR側)の表面をより平滑にすることが極めて有効であることを確認した。
【0010】
さらに、この刃付け加工時の研磨による熱と圧力による歪みのため、刃先加工部には僅かではあるが波うちが生じやすく、しかも加工後の刃先厚は均一なものではなかった。このことが、高度な印刷を行った際のインキの掻き取り不良等の印刷不良の原因となっていることが判明し、前述した従来ブレードで行われてきたブレード側縁への研磨による刃付けを行わず、予め従来の刃付け後の刃先の厚さ迄板厚を調整した金属板または金属帯を使用することが有効であることが確認された。
【0011】
また、安価なドクターブレードを提供するには、耐磨耗性が要求される刃先先端のみに金属材料を使用すればよく、そうすることで表面処理もこの金属部分のみについて行えばよく、その他の本体部分に安価な材料であるプラスチックを使用できることを確認した。さらに前述した従来ブレードで行われてきたブレード側縁への刃付け工程を省略し、刃先先端に使用する金属材料として予め所定の厚さ(従来の段付け加工後の薄刃程度の厚さ)に調整した金属板または金属帯を使用することはコスト的にも有利なものとなる。
【0012】
さらに、ブレード本体部分にプラスチックを使用することは、プラスチックの優れた成形加工性を生かせる利点があり、例えば、プラスチック本体部分の所定位置表面に凹凸をつけて、ホルダーに固定する際のストッパーの役割を持たせることにより、ブレードをホルダーに取り付ける際の刃の水平出しを容易に行うことが可能になること、また、プラスチックの表面を、ホルダー部をカバーするような形状とすることによりホルダーの汚れが防止できるため、従来の印刷作業時における問題点であったブレードの設置、取り替え時の作業性を改善できることを見出した。
これらの知見に基づく本発明は以下の構成よりなる。
【0013】
1.印刷版シリンダーと接触する金属製刃先部分と、少なくとも表面がプラスチックよりなる本体部分とからなり、前記刃先部分は少なくともシリンダー回転方向の裏側が平滑な表面を有することを特徴とするドクターブレード。
2.本体部分がプラスチック材料からなる前記1に記載のドクターブレード。
3.プラスチックが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂およびポリカーボネート系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1または2に記載のドクターブレード。
4.金属製刃先が鋼またはステンレス鋼からなる前記1乃至3に記載のドクターブレード。
5.金属製刃先が、表面に硬質の皮膜が形成されている鋼またはステンレス鋼からなる前記1乃至3に記載のドクターブレード。
6.前記刃先のシリンダー回転方向の裏側表面の表面粗さ(Ra)が1.0μm以下である前記1乃至5に記載のドクターブレード。
7.本体部分がドクターホルダーストッパー構造を有している前記1乃至6に記載のドクターブレード。
8.本体部分がドクターホルダーカバー構造を有している前記1乃至7に記載のドクターブレード。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のドクターブレードは、少なくとも印刷版である回転シリンダーと接触する刃先部分のシリンダー回転方向の裏側(図2のR側)が平滑な表面を有する金属材料(7)よりなる刃先部分(23)(図5の刃先部)と、少なくとも表面がプラスチック(8)よりなる本体部分(24)(図5の本体部)で構成されていることを特徴とする。
刃先部分の金属材料としては、ドクターブレード用あるいは刃物用として通常利用されている鋼、ステンレス鋼等が用いられるが、さらに現在利用されていなくても今後利用されるものであればいずれも使用可能である。
【0015】
本発明におけるドクターブレードの刃先金属部分は、従来のドクターブレードで実施されてきた、砥石等により研磨し削り落として刃先先端を薄刃状の刃となるよう段つけ形成させる加工(刃付け加工)を行わないため、金属部分の厚さ(t1)は、30μm〜150μmのものが好ましく、特に40μm〜100μmが好ましい。30μm未満では、ブレードに圧力を加えた際、刃先の曲がり、折れ等が生じやすくなり好ましくなく、150μmを超えるとインキの掻き取り性が劣化し、印刷不良が発生しやすくなり好ましくない。
さらに、この金属部分には、刃先の耐磨耗性を付与するために、鋼、ステンレス鋼等の基材表面に硬度の高い皮膜(以下、耐磨耗性皮膜という。)を設けることにより、一層耐磨耗性を向上させることができる。鋼、ステンレス鋼等の基材より硬度の低い皮膜では耐磨耗性の向上は望めない。
【0016】
耐磨耗性皮膜の硬度は、ビッカース硬度(Hv)で500〜1500が好ましく、800〜1200がより好ましい。ビッカース硬度(Hv)が500未満では、基材の硬度とほぼ同じ硬度となってしまい耐磨耗性付与の効果が得られない。またビッカース硬度(Hv)が、1500以上では、硬度が高くなり印刷版自体を損傷させる危険性があるため好ましくない。なお、本発明におけるビッカース硬度(Hv)とは、JIS Z 2251の微小硬さ試験方法のビッカース硬さ試験に準拠して行うものである(試験荷重に関しては、めっき厚に応じて50gf未満の荷重を利用して測定することも可能である。)。
【0017】
耐磨耗性皮膜の種類としては、前述の硬度を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば純ニッケルめっき、ニッケル−コバルト、ニッケル−鉄、ニッケル−クロム、ニッケル−タングステン、ニッケル−マンガン、ニッケル−スズ、ニッケル−リン、ニッケル−ボロン、ニッケル−リン−ボロン等のニッケル系合金めっき、およびこれらニッケル系金属よりなるマトリックス中に4−フッ化エチレン樹脂等の有機樹脂粒子、Al2O3、Cr2O3、Fe2O3、TiO2、ZrO2、ThO2、SiO2、CeO2、BeO2、MgO、CdO、ダイヤモンド、SiC、TiC、WC、VC、ZrC、TaC、Cr3C2、B4C、BN、ZrB2、TiN、Si3N4、WSi2等の中から選ばれる少なくとも1種の粒子が分散したニッケル系分散めっき等のニッケル系金属皮膜、純クロムめっき、クロム−タングステン、クロム−鉄等のクロム系合金めっき、およびこれらクロム系金属マトリックス中にAl2O3、TiO2、ZrO2、SiO2、CeO2、UO2、SiC、WC、ZaB2、TiB2等中から選ばれる少なくとも1種の粒子が含有したクロム系分散めっき等のクロム系金属皮膜、硬質鉄めっき、鉄―リンめっき、あるいはこれら鉄系金属よりなるマトリックス中に4−フッ化エチレン樹脂等の有機樹脂粒子、Al2O3、Cr2O3、Fe2O3、TiO2、ZrO2、ThO2、SiO2、CeO2、BeO2、MgO、CdO、ダイヤモンド、SiC、TiC、WC、VC、ZrC、TaC、Cr3C2、B4C、BN、ZrB2、TiN、Si3N4、WSi2等の中から選ばれる少なくとも1種の粒子が分散した鉄系分散めっき等の鉄系金属皮膜、あるいはAl2O3、TiO2、ZrO2、SiO2等の酸化物、SiC等の炭化物、BN等の窒化物およびこれらの混合物よりなるセラミック皮膜等の中から選ばれるいずれの皮膜も使用可能である。
【0018】
また、分散めっきを行う場合、本発明で使用可能なセラミック微粒子の粒子径は0.03μm〜6μmが好ましく、0.1μm〜3μmがより好ましく、0.2μm〜2.0μmが最も好ましい。粒子径が0.03μm未満では、基材との密着性が劣るので好ましくない。一方、6μmを超えると、セラミック微粒子がめっき中から欠落しやすくなり、欠落した皮膜欠陥部において連続印刷時に印刷物にスジ等の印刷不良が生じやすくなり、本発明の効果が得られない。
【0019】
有機樹脂微粒子の粒子径は、0.02μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜5μmがより好ましく、0.1μm〜1μmが最も好ましい。粒子径が0.02μm未満では、基材との密着性が劣るので好ましくない。一方、10μmを超えると、樹脂粒子がめっき中から欠落しやすくなり、欠落した皮膜欠陥部において連続印刷時に印刷物にスジ等の印刷不良が生じやすくなり、本発明の効果が得られない。
【0020】
めっき中のセラミック微粒子および/または有機樹脂微粒子の含有量は特に限定されないが、好ましい含有量は、めっき中で1容量%〜55容量%、さらに好ましくは5容量%〜40容量%、最も好ましくは10容量%〜30容量%である。
本発明では、耐磨耗性皮膜の膜厚は2μm〜50μmが好ましく、3μm〜20μmがより好ましく、5μm〜10μmが最も好ましい。皮膜厚が2μm未満では、耐磨耗性の効果が得られず本発明には適さない。また、50μmを超えると、経済的に不利であるばかりか、皮膜の密着性が劣ってくるので本発明には適さない。
【0021】
皮膜厚の測定方法としては、公知の測定方法が利用できる。例えば、(1)蛍光X線測定装置を用いて皮膜から放射される蛍光X線量を測定して、皮膜の厚さを測定する方法、(2)皮膜の垂直断面を光学顕微鏡、電子顕微鏡で観察し皮膜厚を測定する方法等、JIS H 8501に示されている皮膜の厚さ試験方法の中から適宜選択することにより測定可能である。
【0022】
本発明では、少なくとも刃先金属部分の回転方向裏側(図2、図3のR側)の表面が平滑であることを必須条件とする。この刃先の回転方向裏側(図2、図3のR側)の表面が平滑でないと、本発明が目的とするところの高度な印刷を行った際の連続印刷性の向上は得られない。ここで、平滑な表面とは、具体的には、その表面粗さがJIS B 0601に定義されている中心線平均粗さ(以下、Ra)で1.0μm以下、さらに好ましくはRa 0.6μm以下、より好ましくはRa 0.3μm以下、最も好ましくはRa 0.2μm以下に制御されているものをいう。
また、回転方向裏側(図2のR側)の表面の粗さを、上述の範囲に管理する領域は、刃先最先端(0mm)から3mm程度がこの範囲で管理されておればよく、その他の領域の表面粗さを本発明で規定されるものではない。
【0023】
本発明のドクターブレードの本体部はプラスチック材料であるか、あるいは、少なくとも表面がプラスチックであり、かつ本体の主要部がプラスチックより構成されていることを特徴とする。このように、本体部分にプラスチックを用いることにより、ドクターブレードを安価に提供することが可能となる。また、後述するように成形性の容易なプラスチックの特性を利用して、ドクターブレードの取り付け・交換の際の作業性の改善も図られる。
【0024】
本発明で使用できるプラスチックに必要な性能としては、インキ中に含まれる溶剤性の物質により膨潤し軟らかくならないこと(以下、耐溶剤性という。)、および刃先先端を印刷版に押圧する際に刃先先端まで圧力を伝播し得る程度の剛性を有することが最低限必要である。これらの条件を満足するプラスチックとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、およびこれらの共重合体樹脂の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。中でも、低コストで利用でき、環境にも優しいことから、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびこれらの共重合体樹脂の中から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0025】
本発明では、本体にプラスチックを使用するメリットとして、ドクターブレードをドクターホルダーに取り付ける際の作業性の改善効果、およびドクターブレードを交換する際の分解・洗浄に要する時間の短縮効果が挙げられる。
【0026】
すなわち、成形が容易であるというプラスチックの特性を利用して、本体部分のプラスチックに、ドクターブレードをブレードホルダーに設置する際のストッパーとなる凹凸を設け、ホルダーの先端をこのストッパーの凸部にきっちり当てて固定することにより自動的に刃先の水平が出せるようにすることができる。ホルダーのストッパーの形状は、所定の位置でドクターブレードがホルダー内で止まるような形状にプラスチック表面を加工したものであれば特に限定されるものではないが、例えば、図6(A)および(B)に例示するように本体部分のプラスチックの刃先側の所定長さ(図6のL部)の厚み(t3)を厚くし、ホルダー側の厚み(t2)を薄くする段差を設けた形状(t3>t2)のものが挙げられる。このような形状にすることにより、ホルダーのストッパー位置に前記段差が当たる位置までドクターブレードを完全に押し込み、この位置で固定することにより刃先の水平出しが簡単かつ確実に確保できる。
【0027】
ホルダー側の厚み(t2)は、0.5mm〜7mmの範囲内で、使用するプラスチックの材質により適宜変更して利用することが好ましい。すなわち、剛性の高いプラスチックの場合は、厚み(t2)が薄くても使用でき、剛性の低い材質の場合、厚み(t2)を厚くして利用する。また、さらに、プラスチック本体部分を、ホルダー部を覆うカバー構造を備えた形に成形することにより、インキ、コート液、薬液等のホルダー部への飛散防止、ホルダー・ブレード界面への薬液の染込み防止が可能となる。
【0028】
このホルダーカバー部(10)の形状は、ホルダー部にインキ、コート液、薬液等が飛散しないような形状であれば特には限定されない。例えば、図7(A)に示すようにホルダ−ストッパー部(9)を上下対象に傘のように覆う形状に成形したもの、図7(B)に示すようにホルダ−ストッパー部(9)の片方をストッパーの切り込みを延長せしめ、その頂点から金属刃先部のなす傾斜面がインキ等のホルダー部への飛散・侵入防止の役割を果たすものなどが挙げられる。
このようなホルダーカバー構造を設けることによりホルダーへの薬液飛散および染込みが防止され、洗浄に要する作業性が大きく改善される。
【0029】
図6および図7にホルダーストッパー(9)およびホルダーカバー(10)を例示したが、本発明はこれらの例に限られるものではなく、ドクターブレードの刃先が、印刷版に水平になるようにホルダーに容易に固定できるようなストッパーの役目を果たすか、または、ホルダーの汚れを防止する役目を果たす任意の形状のものが適宜利用可能である。
本発明のブレード本体部はプラスチック材料製であることから、成形によりその表面にホルダーストッパー構造およびホルダーカバー構造を同時に形成させることも出来る。
【0030】
刃先金属部分の幅(図5のX)および本体部分の幅(図5のY)は本発明では特に限定されず、用途に応じて適宜選択して利用することができるが、好ましくは、Xを1mm〜10mmさらに好ましくは1mm〜3mm、Yを5mm〜60mmさらに好ましくは5mm〜30mmとすることが望ましい。
また、金属部分(7)は、本体部分であるプラスチック(8)との接合のため、金属の一部が図5(B)に示すようにプラスチック内部に埋め込んだ形状となっている。プラスチック内に埋め込む金属部分は、金属とプラスチックが十分な接合強さを有し、しかもドクターブレードとなった際の剛性を十分確保することが出来さえすれば良く、埋め込む金属部分の長さ自体は適宜選択して利用できる。例えば、プラスチックのみでは剛性が不足し、印刷版を十分押圧できない場合には、図8に示すように金属部分(7)をブレード内部に完全に埋め込み、本体部分がプラスチック/金属/プラスチックとなる構造として利用することが出来る。
【0031】
本体部分の刃先部分近傍(図5(B)のα)には、金属部分と同等(t1)の厚みから本体部分の厚み(t2)へと、厚みを徐々に増していく形状にすることが好ましく、これにより本体部分にかかる圧力がスムーズに刃先部分にまで伝達されてインキの掻き取り性が向上する。
【0032】
本発明によるドクターブレードの長さ(図5のZ)は、使用する印刷版の幅等の用途にあわせて適宜選択することが可能である。
本発明のドクターブレードの製造方法自体は特に限定されないが、公知技術を利用することにより製造可能である。
例えば、予め40μm〜100μmの厚さに成形した金属板あるいは金属帯の表面を所定の粗さになるまで研磨した後、ドクターブレードとしての必要な幅迄スリットする。
【0033】
また、金属の表面に耐磨耗性皮膜を設ける場合には、前述のスリット前の段階で表面処理を行ってもよいし、スリット後に表面処理を行ってもよい。あるいは一旦耐磨耗性皮膜を有していないブレードを製造した後に、耐磨耗性皮膜を形成してもよいが、コスト的に考えると、スリットを行う前の段階で、皮膜を形成させることが好ましい。
【0034】
耐磨耗性皮膜を形成させる方法としては、耐磨耗性皮膜の種類に応じて、溶射法、電気めっき法、無電解めっき法等適宜選択して利用できる。さらに、金属の表面に耐磨耗性皮膜を設ける場合の表面の粗さを所定の粗さにするための表面研磨は、表面処理前の金属板/帯について行ってもよいし、あるいは表面処理後または表面処理前後に行ってもよい。
【0035】
所定の幅にスリットされた金属は、プラスチック材料と共にインサートインジェクション法により所定の形状に成形される。あるいは、スリットされた金属上に、押し出し法により溶融したプラスチックをたらした後、型にはめ込み所定の形状に成形することにより製造したり、予めインジェクション法等により所定の形状に成形したプラスチック板を、接着剤等を用いてスリットされた金属に貼付け、圧着あるいは熱圧着したりすることにより製造できる。
さらに、製造されたドクターブレードは、金属部分に防錆処理を施したり、刃先最先端のみ刃先調整のための研磨を行ったりして、適宜後処理を行うことも出来る。
【0036】
本発明で得られるドクターブレードは、グラビア印刷等の印刷用の用途に利用可能であるが、塗装用途、画像形成装置等に装備される残留トナー除去用途等の他の用途にも適宜利用可能である。
また、印刷あるいは塗装時に利用されるインキあるいは塗料は、水性、油性いずれのタイプでも利用可能である。さらに、印刷機のインキング装置としてはドブ漬け方式、ファニシャローラー方式等、また塗装時の塗装方法として2ロール方式、3ロール方式等があるが、本発明では、ブレードを使用する方式であれば、インキング方式、塗装方式にとらわれずいずれも利用可能である。
【0037】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の記載により限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における表面処理ドクターブレードのめっき厚、表面硬度(ビッカース硬度)および表面粗さは下記の方法により測定した。
【0038】
[めっき厚]
刃先の断面を、電子顕微鏡で観察し、めっき厚を測定した。
【0039】
[ビッカース硬度]
下記条件で、5点測定し、その平均値をビッカース硬度(Hv)とした。
測定箇所:刃先表側(ロール回転方向表側(図2、3のS側))の刃先部、
測定機:株式会社 島津製作所製 HMV−2000、
測定条件:試験荷重25gf、保持時間10秒。
【0040】
[中心線平均粗さ]
刃先回転方向裏側(図2、図3のR側)の表面を以下の条件で5点測定し、その平均値を表面粗さ(Ra)とした。
カットオフ値:0.8mm、
測定長:2.4mm、
測定項目:中心線平均粗さ(Ra)。
【0041】
実施例1:
板幅60mm、板長さ1200mm、板厚0.07mm、Ra0.2μmのドクターブレード用鋼板を、50℃のアルカリ脱脂液(パクナRT−T;60g/リットル)に15分間浸漬し、水洗後、塩酸活性液中で15分間、塩酸活性処理し、さらに水洗した。その後、SiC粒子を分散させた無電解Niめっき液(日本カニゼン(株)社製のめっき液、シューマ−SC−80−1:20vol%、シューマ−SC−80−4:2vol%)中に87℃でめっき厚が所定膜厚になるまで浸漬し、SiC粒子を含有したセラミック分散ニッケル−リン複合めっきを行い水洗後、乾燥を行った。その後、表面研磨を行い、めっき後の表面の粗さを所定粗さに調整した後に、300℃×1時間の焼鈍処理を行い、板幅5mmになるように剪断し、金属板−1を得た。
【0042】
金属板−1を使用し、ポリエチレン系樹脂を使用してインサートインジェクション法により、本体プラスチック部が図6(A)の形状よりなり、金属部分(図5のXに相当する部分)が1.5mm、本体部分(図5のYに相当する部分)が30mm、ブレード長(図5のZに相当する部分)が1200mmの実施例1のドクターブレードを作成した。実施例1のドクターブレードの金属部分のめっき厚、めっき硬度、表面粗さを表1に示す。
【0043】
実施例1のドクターブレードを用いて下記の方法により、連続印刷特性、インキの掻き取り性、製造コスト及び作業性を評価した。その評価結果をまとめて表1に示す。
(1)連続印刷特性
実施例1のブレードを装着した印刷機により油性インキを使用して印刷を行い、印刷物に微細なスジ、カブリ、カスレ、ニジミ等の印刷欠陥、画像形状不良が発生した時点をブレードの寿命とし、その時までの印刷量を測定し、後述のSiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)の寿命までの印刷量と比較して下記に示す基準により評価した。
【0044】
[評価基準]
◎:寿命までの印刷量がSiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)の1.5倍超、
○:寿命までの印刷量がSiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)の1.2倍超1.5倍以下、
△:寿命までの印刷量がSiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)の1.O倍超以上1.2倍以下、
×:寿命までの印刷量がSiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)の1.0倍以下。
【0045】
(2)インキの掻き取り性
水性インキを使用し、実施例1のブレードを装着したグラビア印刷機による印刷時の印刷速度を徐々に変化させ、インキの掻き取り不良(カブリ等)が生じ始める印刷速度を測定し、それを限界印刷速度とし、めっき処理していないSiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)と下記の基準で比較して評価した。
【0046】
○:限界印刷速度がSiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)と同等以上、
×:限界印刷速度がSiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)より劣る。
【0047】
(3)製造コスト
量産時の製造コストを計算し、SiC分散ニッケル−リン複合めっきブレードとの比較で評価した。評価基準を以下に示す。
○:SiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)より製造コストが低い、
△:SiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)と同等の製造コスト、
×:SiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)より製造コストが高い。
【0048】
(4)作業性
ブレード交換時の作業性を、実施例1のブレードを印刷機のブレードホルダーへ設置する際の、刃の水平出し時の作業性を評価し、その後、実施例1のブレードを装着した印刷機により、ブレードの寿命がくるまで連続印刷を行った後、ブレードホルダー等への汚れの有無により、以下の基準で判定した。
【0049】
(4−1)作業性−1(ドクター刃の水平出しの容易性)
○:SiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)より容易、
△:SiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)と同等、
×:SiC分散ニッケル−リン複合めっきブレード(比較例1)より困難。
【0050】
(4−2)作業性−2(ホルダー等への汚れ)
○:ホルダーへの薬液飛散による汚れ無し、
△:ホルダーへの薬液飛散による汚れ有り。
【0051】
比較例1:
板幅50mm、板厚0.15mm、刃先長さ1.4mm、刃先先端厚0.07mm、平行刃に刃付け加工されたドクターブレードスチール基材(鋼帯、全長50m)を、エンボス加工により表面に凹凸を付与した金属鋼帯よりなるスペーサーと共にリールに渦巻状に巻き取り、リールに巻いた状態のまま、50℃のアルカリ脱脂液(パクナRT−T;60g/リットル)に15分間浸漬し、水洗後、塩酸活性液中で15分間、塩酸活性処理し、さらに水洗した。その後、SiC(平均粒子径0.5μm)を分散させた無電解Niめっき液(日本カニゼン(株)社製のめっき液、シューマーSC−80−1:20vol%、シューマーSC−80−4:2vol%)中に87℃で、めっき厚が所定膜厚になるまで浸漬し、SiCを含有したセラミック分散ニッケル−リン複合めっきを行い、水洗後、乾燥を行った。その後、スペーサーとブレードを巻き戻し、分割し、得られた表面処理ドクターブレードにバフ研磨を行い、表面のめっき残渣等を完全に除去した後、300℃×1時間の焼鈍処理を行い、所定の寸法(ブレード長が1200mm)にせん断し、刃先部分のめっき厚が7μm、ビッカース硬度(Hv)1000、回転方向裏側の表面粗さ(Ra)0.9μmの比較例1のドクターブレードを得た。
【0052】
実施例2〜5:
実施例1と本体部のプラスチックの形状が異なる以外は、実施例1と同じ方法で作成した。これら実施例2〜5のドクターブレードの金属部分のめっき厚、めっき硬度、表面粗さ、および実施例2〜5のドクターブレードの連続印刷性、インキ掻き取り性、製造コスト、作業性を実施例1と同様にして評価した結果をまとめて表1に示す。
【0053】
実施例6〜7:
実施例1と本体部のプラスチックの素材が異なる以外は、実施例1と同じ方法で作成した。これら実施例6、7のドクターブレードの金属部分のめっき厚、めっき硬度、表面粗さ、および、実施例6、7のドクターブレードの連続印刷性、インキ掻き取り性、製造コスト、作業性を実施例1と同様にして評価した結果をまとめて表1に示す。
【0054】
実施例8
板幅60mm、板長さ1200mm、板厚0.07mm、Ra0.6μmのドクターブレード用鋼板を使用して、最終的な刃先回転方向裏側の表面の表面粗さが異なる以外は、実施例1と同様に実施例8を作成した。実施例8のドクターブレードの金属部分のめっき厚、めっき硬度、表面粗さ、および実施例8のドクターブレードの連続印刷性、インキ掻き取り性、製造コスト、作業性を実施例1と同様にして評価した結果を表1に示す。
【0055】
実施例9:
板幅60mm、板長さ1200mm、板厚0.07mm、Ra0.2μmのドクターブレード用鋼板を、50℃のアルカリ脱脂液(パクナRT−T;60g/リットル)に15分間浸漬し、水洗後、塩酸活性液中で15分間塩酸活性処理し、さらに水洗した。その後、SiC粒子を分散させた無電解Niめっき液(日本カニゼン(株)社製のめっき液、シューマ−SC−80−1:20vol%、シューマ−SC−80−4:2vol%)中に87℃でめっき厚が所定膜厚になるまで浸漬し、SiC粒子を含有したセラミック分散ニッケル−リン複合めっきを行い、水洗後、乾燥を行った。その後、300℃×1時間の焼鈍処理を行った後、表面研磨を行い、めっき後の表面の粗さを所定粗さに調整した。表面粗さを調整した金属板を板幅が31.5mmになるように剪断し、金属板−9を得た。
また、ポリエチレン系樹脂を使用してインジェクション法により、本体プラスチック部が図8の金属板(7)より上部を形成する幅30mmのプラスチック板−1および本体プラスチック部が図8の金属板(7)より下部を形成する、幅30mmのプラスチック板−2を作成した。その後、スリットした金属板−9とプラスチック板−1及びプラスチック板−2を接着剤を用い、熱圧着を行い金属部分(図5のXに相当する部分)が1.5mm、本体部分(図5のYに相当する部分)が30mm、ブレード長(図5のZに相当する部分)が1200mmの実施例9のドクターブレードを作成した。実施例9のドクターブレードの金属部分のめっき厚、めっき硬度、表面粗さ、および実施例9のドクターブレードの連続印刷性、インキ掻き取り性、製造コスト、作業性を実施例1と同様にして評価した結果を表1に示す。
【0056】
実施例10:
ドクターブレードを作成した後に#2000番のサンドペーパーで刃先調整のための研磨を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例10を作成した。実施例10のドクターブレードの金属部分のめっき厚、めっき硬度、表面粗さ、および実施例10のドクターブレードの連続印刷性、インキ掻き取り性、製造コスト、作業性を実施例1と同様にして評価した結果を表1に示す。
【0057】
実施例11:
板幅60mm、板長さ1200mm、板厚0.07mm、Ra0.2μmのドクターブレード用鋼板を、50℃のアルカリ脱脂液(パクナRT−T;60g/リットル)に15分間浸漬し、水洗後、乾燥を行った。その後、表面研磨を行い、表面の粗さを所定粗さに調整した後に、板幅10mmになるように剪断し、金属板−11を得た。
金属板−11を使用し、高分子量ポリエチレン樹脂を使用してインサートインジェクション法により、本体プラスチック部が図6(A)の形状よりなり、金属部分(図5のXに相当する部分)が1.5mm、本体部分(図5のYに相当する部分)が30mm、ブレード長(図5のZに相当する部分)が1200mmの実施例11のドクターブレードを作成した。実施例11のドクターブレードの金属部分の刃先回転方向裏側の表面粗さを表1に示す。
【0058】
実施例11のドクターブレードを用いて下記の方法により、連続印刷特性、インキの掻き取り性、製造コストおよび作業性を評価した。
(1)連続印刷特性
実施例11のドクターブレードを装着した印刷機により油性インキおよび水性インキを使用して印刷を行い、印刷物にスジ、カブリ、カスレ、ニジミ等の印刷欠陥、画像形状の不良が発生した時点をブレードの寿命としてその印刷量を測定し、後述のドクターブレードスチール(比較例2)の寿命までの印刷量と比較して下記に示す基準により評価した。
【0059】
[評価基準]
◎:寿命までの印刷量がドクターブレードスチール(比較例2)の1.5倍超、
○:寿命までの印刷量がドクターブレードスチール(比較例2)の1.2倍超1.5倍以下、
△:寿命までの印刷量がドクターブレードスチール(比較例2)の1.0倍超1.2倍以下、
×:寿命までの印刷量がドクターブレードスチール(比較例2)の1.0倍以下。
【0060】
(2)インキの掻き取り性
水性インキを使用し、実施例11のブレードを装着したグラビア印刷機による印刷時の印刷速度を徐々に変化させ、インキの掻き取り不良(カブリ等)が生じ始める印刷速度を測定し、それを限界印刷速度とし、ドクターブレードスチール(比較例2)と下記の基準で比較して評価した。
○:限界印刷速度がドクターブレードスチール(比較例2)と同等以上、
×:限界印刷速度がドクターブレードスチール(比較例2)より劣る。
【0061】
(3)製造コスト
量産時の製造コストを単純計算し、ドクターブレードスチール(比較例2)との比較で評価した。評価基準を以下に示す。
○:ドクターブレードスチール(比較例2)より製造コストが低い、
△:ドクターブレードスチール(比較例2)と同等の製造コスト、
×:ドクターブレードスチール(比較例2)より製造コストが高い。
【0062】
(4)作業性
ブレード交換時の作業性を、ブレード設置時の刃の水平出し、ブレード交換時のホルダー等への汚れの有無により、以下の基準で判定した。
【0063】
(4−1)作業性−1(ドクター刃の水平出しの容易性)
○:ドクターブレードスチール(比較例2)より容易、
△:ドクターブレードスチール(比較例2)と同等、
×:ドクターブレードスチール(比較例2)より困難。
【0064】
(4−2)作業性−2(ホルダー等への汚れ)
○:ホルダーへのインキ飛散による汚れ無し、
×:ホルダーへのインキ飛散による汚れ有り。
【0065】
比較例2:
板幅50mm、板長さ1200mm、板厚0.15mm、刃先長さ1.4mm、刃先先端厚0.07mm、刃先回転方向裏側の表面粗さ(Ra)1.3μmの平行刃よりなり、刃先先端から本体部まで全て鋼よりなるドクターブレードスチール(比較例2)を作成した。
【0066】
比較例3:
板幅50mm、板厚0.2mm、板長さ1200mm、刃先長さ2mm、の傾斜刃であり、刃先先端から本体部まで全てポリエステル樹脂よりなるプラスチックブレード(比較例3)を作成した。比較例3の連続印刷性、インキ掻き取り性、製造コスト、作業性を実施例11と同様にして評価した結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、安価で連続印刷性に優れたドクターブレードが得られ、しかもドクターブレードを交換する際の作業性にも優れたドクターブレードが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ドクターブレードを使用するグラビア(凹版)印刷の概念図である。
【図2】図1の拡大図である。
【図3】従来のドクターブレード刃先部の構成を示す断面図である。
【図4】ドクターブレードのブレードホルダー固定部の構成を示す断面図である。
【図5】本発明のドクターブレードの1例の平面図(A)および側面図(B)である。
【図6】(A)および(B)は、各々ブレードホルダーストッパーを設けた本発明のドクターブレード例の側面図である。
【図7】(A)および(B)は、各々ブレードホルダーカバーとストッパーを設けた本発明のドクターブレード例の側面図である。
【図8】本発明のドクターブレードの他の例の側面図である。
【符号の説明】
1 シリンダー
2 ドクターブレード
21 ドクターブレード基材(スチール)
22 メッキ層
23 刃先部分
24 本体部分
3 インキ
4 ドクターブレードホルダー
5 当て板
6 固定部材
7 金属部材
8 プラスチック部材
9 ブレードホルダーストッパー
10 ブレードホルダーカバー
Claims (8)
- 印刷版シリンダーと接触する金属製刃先部分と、少なくとも表面がプラスチックよりなる本体部分とからなり、前記刃先部分は少なくともシリンダー回転方向の裏側が平滑な表面を有することを特徴とするドクターブレード。
- 本体部分がプラスチック材料からなる請求項1に記載のドクターブレード。
- プラスチックが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂およびポリカーボネート系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載のドクターブレード。
- 金属製刃先が鋼またはステンレス鋼からなる請求項1乃至3に記載のドクターブレード。
- 金属製刃先が、表面に硬質の皮膜が形成されている鋼またはステンレス鋼からなる請求項1乃至3に記載のドクターブレード。
- 前記刃先のシリンダー回転方向の裏側表面の表面粗さ(Ra)が1.0μm以下である請求項1乃至5に記載のドクターブレード。
- 本体部分がドクターホルダーストッパー構造を有している請求項1乃至6に記載のドクターブレード。
- 本体部分がドクターホルダーカバー構造を有している請求項1乃至7に記載のドクターブレード。
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