JP3520632B2 - 疲労特性および加工性に優れる熱延高張力鋼板ならびにその製造方法 - Google Patents

疲労特性および加工性に優れる熱延高張力鋼板ならびにその製造方法

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JP3520632B2 JP29285995A JP29285995A JP3520632B2 JP 3520632 B2 JP3520632 B2 JP 3520632B2 JP 29285995 A JP29285995 A JP 29285995A JP 29285995 A JP29285995 A JP 29285995A JP 3520632 B2 JP3520632 B2 JP 3520632B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用の内板、
足回り部品および強度部材等の使途に用いて好適な、熱
延のままで使用される熱延高張力鋼板に係り、特に疲労
特性および加工性に優れる熱延高張力鋼板およびその製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱延鋼板は、一般に、連続鋳造した鋳片
をそのまま或いはその後1050〜1300℃に加熱してから、
粗圧延および仕上げ圧延の2段階の熱間圧延によって製
造される。その際に、前記粗圧延、仕上圧延の圧延前に
は、通常、高圧水を用いたデスケーリングが行われる
が、このデスケーリングが不十分でスケールの取れ残り
があると、スケールが圧延時に部分的に噛み込まれて、
いわゆるスケール疵となる。スケール疵は、外観を損ね
るばかりか、たとえ酸洗でスケールが除去されたとして
も表面に凹凸が残り、疲労特性や静的破壊特性などのよ
うな、表面の切り欠き状欠陥が影響する特性値を劣化さ
せる。
【0003】このようなスケール残りは、特に多量にSi
を添加した高張力鋼板の製造時に顕著に現れる。すなわ
ち、高Si鋼では、高温状態で、地鉄とスケールの界面に
Fe2SiO4 (ファイアライト)よりなる難剥離性のサブス
ケールが生成されるので、スケールが完全には除去され
ないまま圧延される結果、赤スケール(残留したスケー
ルが圧延で破砕され、過度に酸化したスケール)を形成
して外観を害したり、前述したスケール疵を生じて引張
強度から期待された疲労特性を発揮できないという大き
な問題があった。
【0004】そこで、スケール残りによるこのような障
害を軽減するための努力が、これまでにも幾つか試みら
れている。例えば、特公昭60−1085号公報には、Si:0.
10〜4.00%含有の鋼スラブを熱間圧延するに際し、鋳片
温度が1000℃以上にある圧延期間内において、吐出圧80
〜250 kgf/cm2 (約8〜25 MPa)の高圧水ジェットによ
るデスケーリングを累積時間にして0.04秒以上施す技術
が開示されている。また、特開平4−238620号公報に
は、難剥離性スケール鋼種を熱間圧延するに際し、仕上
圧延前に、単位散布面積あたりの衝突圧が20g/mm2 以上
40g/mm2 以下(約0.2 MPa 以上0.4 MPa 以下)で、かつ
流量が0.1 リットル/min・mm2 以上 0.2リットル/min・mm2 以下
の高圧水スプレーを鋼板表面に噴射する技術が開示され
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
公昭60−1085号公報に開示された技術では、1000℃以上
という高温のFET(仕上圧延入側温度)を確保する必
要があるため、加熱炉から高温で鋼片を抽出することが
必要となり、原単位が悪化したりスケールロスが増加す
るほか、圧下率やデスケーリングの時間に種々の制約が
あるため圧延作業が煩雑となるなどの問題があった。ま
た、上記特開平4−238620号公報に開示された技術で
は、大部分のスケールは剥離されるが、高Si鋼で形成さ
れる地金に食い込むようなスケールは除去されずに残る
場合があり、赤スケールや他のスケール疵を完全に回避
することはできないという問題があった。さらに、これ
らの従来技術によって、 0.5%以上のSiを含有する鋼板
を製造した場合、得られた鋼板表面の平均粗さは2μm
以上のものしか得られず、このことも疲労特性が引張強
度から期待される値まで達しない(耐久比≦0.5 、ただ
し耐久比=疲労強度/引張強度)ことの原因となってい
た。
【0006】そこで、本発明の主たる目的は、従来技術
が抱える上述した問題のない熱延鋼板およびその製造方
法を提供することにある。この発明の他の目的は、 0.5
%以上のSiを含有する鋼板であっても、表面粗さが小さ
く、疲労特性および加工性に優れる熱延高張力鋼板を提
案することにある。本発明のさらに他の目的は、このよ
うな疲労特性および加工性に優れる熱延高張力鋼板を、
超高圧デスケーリングを適用して有利に製造する方法を
提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記の目的
を達成すべく、主として仕上圧延に先立って行うデスケ
ーリングの操業条件に着目して、鋭意研究を重ねた結
果、これまで用いられたことのないような超高圧のデス
ケーリングを適用することによって、鋼板の表面性状が
大きく改善できることを知見した。さらに、仕上圧延後
の冷却パターンを制御することにより、強度、加工性、
疲労強度に最も適した組織となし、この組織と前記表面
性状とを組み合わせることによって、上記目的を実現す
ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに
至った。
【0008】すなわち、本発明の要旨構成は下記のとお
りである。 (1) C:0.18wt%以下、 Si:0.5 〜2.5 wt%、Mn:0.
5 〜2.5 wt%、P:0.05wt%以下、S:0.005 wt%以
下、Al:0.01〜0.10wt%を含み、かつTi:0.02〜0.5 wt
%、Nb:0.02〜0.5 wt%から選ばれるいずれか1種また
は2種を含有するとともに、これらTiならびにNbはCと
の関係において下記式; C≧0.03+Ti/4+Nb/8 を満足するように含み、残部がFeおよび不可避的不純物
よりなり、金属組織が、面積率で、TiまたはNbの炭化物
が析出した50〜90%のフェライト、1〜25%のベイナイ
ト、5〜25%のマルテンサイトもしくは残留オーステナ
イトからなる混合組織であって、鋼板表面の平均粗さR
aが1.5 μm以下、鋼板表面から20μmまでの表層部の
平均フェライト粒径が5μm以下であることを特徴とす
る疲労特性および加工性に優れる熱延高張力鋼板。
【0009】(2) C:0.18wt%以下、 Si:0.5 〜2.5
wt%、Mn:0.5 〜2.5 wt%、P:0.05wt%以下、S:0.
005 wt%以下、Al:0.01〜0.10wt%を含み、かつTi:0.
02〜0.5 wt%、Nb:0.02〜0.5 wt%から選ばれるいずれ
か1種または2種を含有するとともに、これらにTiなら
びにNbはCとの関係において下記式; C≧0.03+Ti/4+Nb/8 を満足するように含み、残部がFeおよび不可避的不純物
よりなる鋼を、鋳造した後あるいはその後1050〜1200℃
に加熱した後、粗圧延し、次いで衝突圧2.5MPa以上かつ
液(水)量密度が0.002 リットル/cm2以上を満たす条件
の超高圧デスケーリングを行い、デスケーリング後5秒
以内に仕上げ圧延を開始し、(Ar3+150℃)〜(Ar3
+50℃)で終了し、続いて、2秒以内に、20℃/秒以上
の冷却速度で800 ℃まで冷却し、800 〜 700℃の温度域
に5〜20秒間滞留させた後、20℃/秒以上の冷却速度
で冷却し、500 〜 350℃の温度範囲で巻取ることを特徴
とする疲労特性および加工性に優れる熱延高張力鋼板の
製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態
について詳細に説明する。 (1) 鋼成分について; C:0.18wt%以下、C≧0.03+Ti/4+Nb/8 Cは、強度の確保に有用な元素であるが、0.18wt%を超
えて含有すると、スポット溶接性を劣化させる。また、
過剰のCはベイナイトやマルテンサイトの比率を過剰に
し、加工性や疲労強度の低下を引き起こす。したがっ
て、Cの含有量は0.18wt%以下、好ましくは0.15wt%以
下とする。ただし、このCはTiおよびNbとの関連におい
て、wt%でC≧0.03+Ti/4+Nb/8の関係を満足しない
と、γ→α変態時に、このCが、TiCやNbCの析出反応
に優先的に消費され、未変態γ粒のオーステナイトとし
ての安定性が低下し、第2相がマルテンサイトあるいは
残留オーステナイトになりにくくなり、良好な強度−延
性のバランスならびに疲労特性が得られなくなる。した
がって、このCの下限は、Ti, Nbとの関連において上記
式の条件を満足するように含有させなければならない。
【0011】Si:0.5 〜2.5 wt% Siは、固溶強化作用により、引張、疲労の両強度を高め
るのに極めて有効な元素てある。また、γ→α変態時
に、フェライトへのTiCやNbCの析出を促進する作用
と、第2相をベイナイト、マルテンサイト( 残留オース
テナイトを含む) 化させる作用の両方を持ち、加工性と
疲労強度向上に有効な元素である。これらのSiの効果は
0.5wt%以上の添加で発現する。一方、2.5 wt%を超え
て含有すると、その効果が飽和してしまうのみならず、
フェライト粒の異常成長を引き起こし疲労強度を低下さ
せるので、Siの含有量は 0.5〜2.5 wt%、好ましくは1
.0〜2.0wt %とする。
【0012】Mn:0.5 〜2.5 wt% Mnは、所望の複合組織を得るために必要な元素である。
その含有量が0.5 wt%未満では、上記組織を得ることが
できず、一方、2.5 wt%を超えて含有しても、過度にγ
→α変態点を低下させ、熱間圧延後の冷却中にフェライ
トが析出しにくくなり、同様に所望の組織が得られなく
なる。したがって、Mn含有量は 0.5〜2.5 wt%、好まし
くは1.0 〜2.0 wt%とする。
【0013】P:0.05wt%以下 Pは、強度増加には有用であるが加工性や溶接性を低下
させる元素である。したがって、P含有量は0.05wt%以
下、好ましくは0.02wt%以下とする。
【0014】S:0.005 wt%以下 Sは、鋼中のMnと反応してA系介在物を生じ、伸びフラ
ンジ性や疲労強度を劣化させる有害な元素である。した
がって、S含有量は0.005 wt%以下、好ましくは0.002
wt%以下とする。
【0015】Al:0.01〜0.10wt% Alは、鋼の清浄化のために、少なくとも0.01wt%の添加
が必要であるが、0.10wt%を超えて添加してもコストア
ップになるばかりか、表面欠陥の原因ともなるので、Al
含有量は0.01〜0.10wt%とする。好ましくは0.02〜0.05
wt%とする。
【0016】Ti:0.02〜0.5 wt%、Nb:0.02〜0.5 wt% Ti, Nbは、熱間圧延後のγ→α変態時に、それと同時進
行的にフェライト粒内に炭化物として析出し、フェライ
ト粒の強化に大いに寄与する。フェライト粒の析出強化
は強度に寄与するだけでなく、加工性や疲労強度の低下
の原因となる第2相(ベイナイト、マルテンサイト等)
との強度差を軽減する効果を有する。しかし、Ti, Nbの
含有量が少な過ぎると、析出粒子が粗大化して、析出強
化能を失うとともに、第二相比率が多くなって、組織強
化型に偏ることとなる。一方、これらTi, Nbの含有量が
多過ぎる場合には、第二相を形成するのに必要なC量が
不足し、析出強化型に偏る結果となる。いずれの場合
も、析出強化したフェライト相+第2相という最も加工
性、疲労特性に優れた組織の型から逸脱する。このよう
な理由から、添加量は、Tiの場合には0.02〜0.5 wt%の
範囲が、Nbの場合には0.02〜0.5 wt%の範囲とする。ま
た、Ti, Nbは共通の作用効果を有しているので、上記の
範囲内でいずれか1種または2種を選択的に使用すれば
よい。
【0017】(3) 金属組織および表面粗さについて 金属組織は、面積率で、TiまたはNbの炭化物が析出した
50〜90%のフェライト、1〜25%のベイナイト、5〜25
%のマルテンサイトもしくは残留オーステナイトからな
る混合組織とし、鋼板表面から20μmまでの表層部の平
均フェライト粒径を5μm以下とする必要がある。なぜ
なら、フェライトの比率が上記範囲より少ないと、伸び
フランジ性および延性が低下し、厳しい穴拡げ加工など
に対して加工性が不十分であり、一方多いと、耐久比
(=疲労強度/引張強度)が低下するからであり、ま
た、ベイナイトの比率が上記範囲より少ないと、伸びフ
ランジ性が低下し、厳しい穴拡げ加工などに対して加工
性が不十分であり、一方多いと延性が低下するほか、耐
久比にも不利であるからであり、さらに、マルテンサイ
トもしくは残留オーステナイトの比率が上記範囲より少
ないと、延性および耐久比が低下し、逆に多いと、伸び
フランジ性が低下し、厳しい穴拡げ加工などに対して加
工性が不十分であるからである。
【0018】また、鋼板表面から20μmまでの表層部の
平均フェライト粒径を5μm以下とするのは、鋼板表面
から20μmまでの粒径は、特に疲労強度に及ぼす影響が
大きく、この値が5μmを超えると、耐久比が著しく低
下するからである。さらに、鋼板表面の平均粗さRaを
1.5 μm以下とするのは、平均粗さRaがとくに疲労特
性に影響をもたらし、この値が1.5 μmを超えるとその
影響が顕著に現れるからである。なお、好ましい平均粗
さRaは1.0 μm以下である。
【0019】(3) 製造条件について;本発明法は次の工
程よりなる。 a.上述した化学組成の鋼を、鋳造した後あるいは加熱
した後、粗圧延、超高圧水によるデスケーリングおよび
仕上げ圧延を行い、 b.上記仕上げ圧延の後、所定の冷却パターンで冷却
し、巻き取る。
【0020】以下、これら工程のうち本発明において、
特に重要な要件についてその限定理由を含めて説明す
る。 熱延前の鋼素材の加熱:熱延前の鋼素材は完全な溶体化
がなされておればよく、そのため、熱延は、鋳造直後の
状態か、再加熱の場合には1050℃以上に加熱した状態の
ものに対して施せばよい。しかし、過度の加熱は表面性
状を劣化させ、疲労強度に悪影響を及ぼすため、その上
限温度は1200℃、好ましくは1150℃とする。
【0021】・超高圧デスケーリング:粗圧延の後、衝
突圧2.5MPa以上、好ましくは3.0MPa以上、かつ液(水)
量密度が0.002 リットル/cm2以上、好ましくは0.0025リ
ットル/cm2以上を満たす条件の超高圧デスケーリングを
行う。これらの条件は、図1に示すように、鋼板の表面
平均粗さRaを1.5 μm以下に制御するために、後述す
るデスケーリング後から仕上げ圧延開始までの経過時間
とともに、必要である。図1に、デスケーリングの衝突
圧および液量密度と、得られた熱延鋼板のRaとの関係
を示す。ここに、図1の実験に供した鋼の組成は、0.08
wt%C−1.8 wt%Si−1.5 wt%Mn−0.012 wt%P−0.00
2 wt%S−0.04wt%Al−0.11wt%Tiのもので、スラブ厚
さ:260 mm、スラブ加熱温度:1150℃であり、終了温度
970℃の粗圧延によりシートバーの厚さ40mmとし、仕
上げ圧延は7パス、仕上げ温度:880 ℃、仕上げ板厚:
3.0mm とし、巻取温度450 ℃であった。また、デスケー
リング後〜仕上げ圧延開始の経過時間は3.0 秒であっ
た。
【0022】なお、デスケーリング時の鋼板表面での上
記衝突圧pは、一般に、ノズルの吐出圧Pおよび吐出量
Q、鋼板表面とノズルとの間の距離Hから次式により求
めることができる。(「鉄と鋼」1991 vol.77 No.9 p11
450参照) p=5.64PQ/H2 ただし、p:鋼板表面での衝突圧(MPa) P:吐出圧(MPa) Q:吐出量(リットル/sec) H:鋼板表面とノズルとの間の距離(cm) また、液量密度は、鋼板の単位面積当たりに投入される
総液量を表し、(吐出量)/(衝突面の長手方向の幅×
通板速度)で算出される。ここで、(吐出量/衝突面
積)を流量ともいう。
【0023】・仕上げ圧延;仕上げ圧延は、デスケーリ
ング後5秒以内に圧延を開始し、Ar3+50℃〜Ar3+15
0 ℃で圧延を終了する。デスケーリング〜仕上げ圧延開
始の経過時間と鋼板表面粗さとの関係は、図2に示すよ
うになり、表面粗さRaを1.5 μm以下に制御するに
は、デスケーリング後の仕上げ圧延までの時間を5秒以
内に制御することが必要である。また、圧延終了温度を
(Ar3+50℃)〜(Ar3+150 ℃)とするのは、Ar3
50℃未満では表層部のフェライト粒が粗大となり、一方
(Ar3+150 ℃)を超えると鋼板全体の組織が粗大化し
て、いずれも所望の特性が得られないからである。な
お、好ましい仕上げ圧延終了温度は(Ar3+50℃)〜
(Ar3+100 ℃)である。このほか、仕上圧延の好適な
条件として、圧下率は80%以上が挙げられる。
【0024】図2に、デスケーリング後仕上げ圧延まで
の時間と、得られた熱延鋼板のRaとの関係を示す。こ
こに、図2の実験に供した鋼の組成は、0.08wt%C−1.
8 wt%Si−1.5 wt%Mn−0.012 wt%P−0.002 wt%S−
0.04wt%Al−0.10Tiのもので、スラブ厚さ:260 mm、ス
ラブ加熱温度:1150℃であり、終了温度970 ℃の粗圧延
によりシートバーの厚さ40mmとし、仕上げ圧延は7パ
ス、仕上げ温度:880℃、仕上げ板厚:3.0mm とし、巻
取温度450 ℃であった。また、デスケーリングにおける
衝突圧は6.7 MPa 、かつ液(水)量密度が0.0025リット
ル/cm2であった。
【0025】本発明において、超高圧デスケーリング条
件およびデスケーリング後の仕上圧延を開始するまでの
時間が、最終的な鋼板の表面粗さに影響するメカニズム
は必ずしも明らかではないが、衝突圧が2.5 MPa という
超高圧になると、表層の凹凸が消滅して平滑化し、その
後のスケール生成も均一かつ薄くなるため仕上げ圧延に
おけるスケールの噛み込みが減少することがその理由で
あろうと考えられる。因に、従来の高圧デスケーリング
の衝突圧は 0.1〜0.4 MPa 程度であり、その約10倍に
当たる超高圧を採用することで、本発明では、従来技術
の下では期待されていなかった特有の作用効果を発現し
たものと思われる。
【0026】・仕上げ圧延後の冷却パターン、巻取温
度:上記仕上げ圧延後の冷却パターンおよび巻取温度は
鋼板の金属組織を制御する上で重要な要件でである。仕
上げ圧延後800 ℃までの冷却速度が遅いと、初期変態し
たフェライト粒、特に表層のフェライト粒が粗大化し、
疲労強度を低下させるので、20℃/秒以上の冷却速度を
必要とする。この条件での冷却が仕上げ圧延後2秒を超
えてしまうと、やはり、初期変態したフェライト粒、特
に表層のフェライト粒が粗大化し、疲労強度強度の低下
を招くので、20℃/秒以上とする上記冷却は、仕上げ圧
延後2秒以内に始める必要がある。なお、この温度域に
おける好適な冷却速度は50℃/秒以上である。その後、
700 〜800 ℃の温度域で5秒〜20秒間滞留させる必要
がある。滞留時間が、5秒未満ではγ→α変態が不十分
となる。すなわち、変態したα粒内へのTiCまたはNbC
の析出および未変態γ粒へのCの濃化が不十分になり、
最終的に所望の析出強化フェライトとベイナイト、マル
テンサイト、残留オーステナイトの複合組織を得ること
ができなくなる。一方、滞留時間が20秒を超えると、
パーライトが生成し、やはり所望の複合組織を得ること
ができなくなるからである。なお、滞留時間は7〜15
秒が好ましい。
【0027】また、上記の条件で滞留後、巻き取りまで
の冷却速度が遅いと、パーライトが析出してしまい、所
望の組織が得られないので、20℃/秒以上の冷却速度と
する必要がある。なお、この温度域における好適な冷却
速度は50℃/秒以上である。さらに、巻取温度を350
〜500 ℃の範囲にするのは、500 ℃を超えると、パーラ
イトが生成し、所望の複合組織を得ることができなくな
り、300 ℃未満ではフェライトの生成が不十分で伸びフ
ランジ性および延性が低下し、厳しい穴拡げ加工などに
対して加工性が不十分となるからである。
【0028】
【実施例】表1に示す化学成分を含有する鋼スラブを、
加熱後、粗圧延して40mmのシートバーとし、次いで表
2,表3に示す種々の条件で、水を用いたデスケーリン
グ、仕上圧延(圧下率92.5%)および冷却を施し、板厚
3.0 mmの熱延鋼板を得た。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】この熱延鋼板を室温まで冷却した後、表面
粗さRa (μm)を調査した。また、鋼板断面の顕微鏡観察
から金属組織の比率を求めた。さらに、各種の機械的性
質を調査した。ここで、疲労特性は完全両振りの平面曲
げ疲労試験(JIS Z 2275)により求め、107 回繰り返し
負荷後破断しない応力を疲労強度とした。これらの結果
を表4,表5に示す。これらの表から明らかなように、
本発明によって製造した熱延鋼板は、いずれも表面粗さ
Raは1.5 μm以下となり、金属組織も所定の混合組織
で、かつ表層部も所定サイズのフェライト粒径となり、
優れた疲労特性が得られることが判る。なお、表3,表
5中の比較鋼30は本発明を外れる量のSを含有するた
め、また、比較鋼31はフェライト相の析出強化が全くな
されないために、穴拡げ性( 伸びフランジ性) および疲
労特性に劣る。
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
熱延のままの状態で使用しても、表面粗さが小さいの
で、良好な疲労特性および加工性を有する熱延高張力鋼
板を得ることができる。また、本発明の製造方法によれ
ば、上記の熱延鋼板を超高圧デスケーリングなどの適用
によって効果的に付与することができ、それ故に、生産
性、経済性の面で著効がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】衝突圧、水量と熱延板の表面粗さとの関係を示
したグラフである。
【図2】デスケーリング後仕上圧延を開始するまでの時
間と熱延板の表面粗さとの関係を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小原 隆史 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 技術研究所内 (56)参考文献 特開 平7−166236(JP,A) 特開 平7−70649(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 301 C22C 38/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.18wt%以下、 Si:0.5 〜2.5 wt%、 Mn:0.5 〜2.5 wt%、 P:0.05wt%以下、 S:0.005 wt%以下、 Al:0.01〜0.10wt%を含み、かつ Ti:0.02〜0.5 wt%、 Nb:0.02〜0.5 wt%から選ばれるいずれか1種または2
    種を含有するとともに、これらTiならびにNbはCとの関
    係において下記式; C≧0.03+Ti/4+Nb/8 を満足するように含み、残部がFeおよび不可避的不純物
    よりなり、金属組織が、面積率で、TiまたはNbの炭化物
    が析出した50〜90%のフェライト、1〜25%のベイナイ
    ト、5〜25%のマルテンサイトもしくは残留オーステナ
    イトからなる混合組織であって、鋼板表面の平均粗さR
    aが1.5 μm以下、鋼板表面から20μmまでの表層部の
    平均フェライト粒径が5μm以下であることを特徴とす
    る疲労特性および加工性に優れる熱延高張力鋼板。
  2. 【請求項2】C:0.18wt%以下、 Si:0.5 〜2.5 wt%、 Mn:0.5 〜2.5 wt%、 P:0.05wt%以下、 S:0.005 wt%以下、 Al:0.01〜0.10wt%を含み、かつ Ti:0.02〜0.5 wt%、 Nb:0.02〜0.5 wt%から選ばれるいずれか1種または2
    種を含有するとともに、これらにTiならびにNbはCとの
    関係において下記式; C≧0.03+Ti/4+Nb/8 を満足するように含み、残部がFeおよび不可避的不純物
    よりなる鋼を、鋳造した後あるいはその後1050〜1200℃
    に加熱した後、粗圧延し、次いで衝突圧2.5MPa以上かつ
    液量密度が0.002 リットル/cm2以上を満たす条件の超高
    圧デスケーリングを行い、デスケーリング後5秒以内に
    仕上げ圧延を開始し、(Ar3+150 ℃)〜(Ar3+50
    ℃)で終了し、続いて、2秒以内に、20℃/秒以上の冷
    却速度で800℃まで冷却し、800 〜 700℃の温度域に5
    〜20秒間滞留させた後、20℃/秒以上の冷却速度で冷
    却し、500 〜 350℃の温度範囲で巻取ることを特徴とす
    る疲労特性および加工性に優れる熱延高張力鋼板の製造
    方法。
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