JP3520597B2 - 蛍光表示管の製造方法 - Google Patents
蛍光表示管の製造方法Info
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- Manufacture Of Electron Tubes, Discharge Lamp Vessels, Lead-In Wires, And The Like (AREA)
- Formation Of Various Coating Films On Cathode Ray Tubes And Lamps (AREA)
- Cathode-Ray Tubes And Fluorescent Screens For Display (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、点灯時間の経過に伴う
陰極のエミッション特性の劣化が少ないアルカリ土類金
属硫化物蛍光体を備えた陽極基板の製造方法、又はその
ような蛍光表示管の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】蛍光表示管の発光表示部である陽極に用
いられる低速電子線によって励起する硫化物系の蛍光体
としては、ZnSを母体とするZnS系蛍光体や、Zn
CdSを母体とするZnCdS系蛍光体が知られてい
た。これらの他には、高電圧領域での発光効率に優れて
いる硫化物系の蛍光体として、アルカリ土類硫化物に希
土類を付活させた蛍光体、例えばCaS:Ce等が知ら
れていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】アルカリ土類硫化物に
希土類を付活させた高電圧領域での発光効率に優れてい
る蛍光体、例えばCaS:Ce等は、EL、CRT,投
射管等に用いるよう提案されていた。しかしながら、係
る提案にも係わらず、本発明者等が得た知見によれば、
このCaS:Ce等のアルカリ土類硫化物蛍光体は化学
的に不安定なため、表示素子用の蛍光体としてはほとん
ど実用化することができない。ここで化学的に不安定と
は、空気中で酸化されやすく、また加水分解されやすい
点をさす。例えばCaSを例にとれば、空気中で酸化さ
れてチオ硫酸カルシウムを生じ、湿気と二酸化炭素の作
用で硫化水素を発生する。また、冷水には難溶であるが
徐々に加水分解して硫化水素カルシウムと水酸化カルシ
ウムを生ずる。 【0004】このような性質があるため、CaS:Ce
等のアルカリ土類硫化物蛍光体は、次に説明するよう
に、蛍光体を発光表示部として所定のパターンに被着す
るための工程において分解しやすく、また所定のパター
ンに被着した蛍光体を焼成する工程において酸化されや
すい。 【0005】まず、蛍光体の一般的な被着方法であるス
クリーン印刷法では、蛍光体とビークルを混合してペー
スト化し、これを基板上に所定のパターンで印刷し、さ
らにこれを大気焼成してペースト成分をCO2 にして蒸
発させる。被着時に使用した有機物を焼成分解するため
には酸化雰囲気で焼成する必要があるが、そのようにす
ると、前記CaS:Ce等のアルカリ土類硫化物蛍光体
自体も酸化してしまう。 【0006】蛍光体の他の被着方法である電着法では、
蛍光体を水に分散し、電気永動の原理で陽極に蛍光体を
付着させていた。この方法では水を使うので前記Ca
S:Ce等のアルカリ土類硫化物蛍光体は加水分解して
しまう。 【0007】蛍光体の他の被着方法であるスラリー法で
は、ポリビニルアルコール、重クロム酸アンモニウムを
主媒体とする液に蛍光体を分散し、これを塗布したもの
に所定パターンのマスクをかけて露光し、水現像でポリ
ビニルアルコールを除去して所定パターンを得る。この
方法はCaS:Ce等のアルカリ土類硫化物蛍光体がP
UA−ADC、PUA−SbQ等の感光剤と反応してし
まい、スラリー液がゲル化して使用できない。 【0008】以上の事情から、アルカリ土類硫化物蛍光
体を従来の形成方法で表示素子の発光部に形成しても、
蛍光体の表面は荒れた状態になり、発光状態が悪くて実
用にならなかった。また、表示素子、例えば蛍光表示管
等に適用した場合、駆動時に電子が蛍光体に射突すると
発熱によってSが容易に放出され、陰極を汚染して電子
のエミッション特性を悪化させてしまう。図1中に示す
ように、従来の形成方法で形成したアルカリ土類硫化物
蛍光体では、従来のスクリーン印刷で形成したZnS:
Cu,Al蛍光体よりも経過時間に対するパルスエミッ
ション残存率の低下が著しい。 【0009】本発明は、以上説明した本願発明者等の知
見に基づいて成されたものであり、表面劣化等の有害な
影響を与えることなく蛍光表示管の陽極基板上にアルカ
リ土類硫化物蛍光体層を形成することができ、蛍光体の
分解による陰極のエミッションへの悪影響が少ない蛍光
表示管の製造方法を提供することを目的としている。 【0010】 【課題を解決するための手段】請求項1に記載された蛍
光表示管の製造方法は、不活性雰囲気中又は真空中で蒸
発する非水系の溶剤とアルカリ土類金属硫化物蛍光体を
混合してなるペーストの層を基板上に形成する工程と、
不活性雰囲気中又は真空中において前記基板上のペース
トから前記溶剤を蒸発させて蛍光体層を形成する工程
と、前記蛍光体層を活性雰囲気から隔離した状態に保ち
ながら前記基板上に制御電極と陰極を設ける工程と、前
記蛍光体層を活性雰囲気から隔離した状態に保ちながら
前記基板に容器部を封着して外囲器を構成する工程と、
前記外囲器の内部を真空にする封止工程とを有すること
を特徴としている。 【0011】 【0012】 【0013】 【実施例】本願発明者等は、[発明が解決しようとする
課題]の項で説明したように、アルカリ土類硫化物蛍光
体を用いて従来の製造方法で蛍光表示管を形成した場合
に陰極のエミッション特性が急激に低下する原因を、ア
ルカリ土類硫化物蛍光体が加水分解しやすく酸化雰囲気
中での加熱に弱い点にあると考えた。 【0014】そこで本願発明者等は、上記の知見に基づ
いて、蛍光表示管において陰極のエミッション特性の劣
化が生じないようにする為に、加水分解や酸化雰囲気中
での熱処理でアルカリ土類硫化物蛍光体の表面が劣化す
ることのない蛍光表示管の製造方法を提供することを目
指した。 【0015】本実施例で説明するアルカリ土類硫化物蛍
光体を用いた蛍光表示管の製造方法は、低速電子線で発
光する蛍光表示管の他、陽極電圧が数百ボルト以上の中
速及び高速電子管にも適しており、また、電子源として
は電子放出物質を有するフィラメント状の陰極を備えた
蛍光表示管又はFEC(Field Emission Cathode) を備
えた蛍光表示管のいずれにも適している。 【0016】本実施例の蛍光表示管の製造方法において
は、不活性雰囲気(例えば窒素ガス、アルゴンガス等)
中又は真空中で蒸発する非水系の溶剤である有機溶媒
(例えば沸点約180℃のテレピネオール、沸点約40
0℃のグリセリン等)と、アルカリ土類金属硫化物蛍光
体とを混合してペーストを作る。このペーストをドクタ
ーブレード法又はスクリーン法等によって基板上に所定
のパターンで被着し、不活性雰囲気中又は真空中で前記
基板上のペーストから前記有機溶媒を蒸発させて蛍光体
層を形成する。以後、前記蛍光体層を活性雰囲気から隔
離した状態に保ちながら工程を進め、まず基板上に制御
電極と陰極を設け、次に基板に容器部を封着して外囲器
を構成し、最後に外囲器の内部を真空にして封止する。 【0017】以上のようにして、大気中における熱処理
及び湿気による蛍光体粒子表面の劣化を防止しながら真
空封止することにより、アルカリ土類金属硫化物蛍光体
を従来適用できなかった蛍光表示管や電界放出素子の蛍
光体として実用化することができた。 【0018】以下に、アルカリ土類金属硫化物蛍光体を
用いた蛍光表示管の製造工程と、製造された蛍光表示管
の性能について、さらに具体的な実例1〜3を参照して
説明する。 (実例1)制御電極を2枚有する4極管構造の蛍光表示
管を製造した。図4に示すように、ガラス製の陽極基板
1の上にはITO膜からなる電極2を形成する。電極2
に接続して直径4mmの発光領域3を陽極基板1上に設
ける。発光領域3以外の陽極基板1上は厚さ35μmの
絶縁層4で覆う。蛍光体ペースト5は、テレピネオール
1.5重量部に対し、CaS:Ce1重量部を添加し、
混合したものを用いた。図4に示すように、この蛍光体
ペースト5により、ドクターブレード6を用いて絶縁層
4上に膜厚約20μmの厚さの蛍光体層を形成する。こ
の蛍光体層を有する陽極基板1を、窒素ガス中にてテレ
ピネオールの沸点以下の温度で30分間焼成し、焼成炉
の温度が常温になってから陽極基板1を取り出し、前記
4極管構造の蛍光表示管を製造した。蛍光表示管の組み
立て工程中は、前記蛍光体層は常時不活性ガス雰囲気中
に保持した。 【0019】陽極電圧400V、陽極電流密度25mA
/cm2 にて5.81m/Wの発光効率を得た。本例の
蛍光表示管におけるエミッションの特性は、点灯経過時
間とパルスエミッション残存率との関係を示す図1の通
りである。図1中には、スクリーン印刷、450℃大気
焼成15分間保持で形成したZnS:Cu,Al蛍光体
を有する蛍光表示管と、同様の条件で形成したCaS:
Ce蛍光体を有する蛍光表示管のエミッションの相対残
存率を比較のために示す。図1から明らかなように、本
例の方法を用いることにより、大気中における熱処理及
び湿気による蛍光体粒子表面の劣化を一切排除して、エ
ミッションへの悪影響が少ないアルカリ土類金属硫化物
蛍光体を備えた蛍光表示管を実用化できた。 【0020】(実例2)以下の組成のペーストを調整
し、陽極基板上にスクリーン印刷を行った。 CaS:Eu 1重量部 グリセリン 1重量部 このペーストを使用し、通常のスクリーン印刷機にて印
刷を行い、陽極基板上に平均13μmの厚さの膜を形成
した。この陽極基板を、窒素雰囲気中にてグリセリンの
沸点(290℃)以下の温度で焼成した。この陽極基板
を、電子の加速電圧が8kVの高電圧管に実装し、実例
1と同様にパルスエミッションの経時変化を測定した。
高電圧管への実装工程中は、前記蛍光体層は常時不活性
ガス雰囲気中に保持した。同様の材料・工程でペースト
の膜を形成した陽極基板を450℃で大気焼成したもの
を比較例とした。経過時間に対するパルスエミッション
の残存率は実例1と同様の傾向を示した。発光効率は、
相対値で窒素ガス焼成の本例2が100であるのに対
し、大気焼成の比較例は80であった。経過時間に対す
る発光効率の変化を図2に示す。発光効率は、1000
時間近く経過した後も、80%以上を維持した。 【0021】(実例3)以下の組成のペーストを調整
し、陽極基板上にスクリーン印刷を行った。 CaS:Ce 1重量部 グリセリン 1重量部 In2 O3 0.25重量部 このペーストを使用し、通常のスクリーン印刷機にて印
刷を行い、陽極基板上に平均13μmの厚さの膜を形成
した。この陽極基板を、窒素雰囲気中にてグリセリンの
沸点以下の温度で焼成した。この陽極基板を、蛍光表示
管に実装し、陽極電圧50Vにて点灯して寿命試験を行
った。蛍光表示管の組み立て工程中は、前記蛍光体層は
常時不活性ガス雰囲気中に保持した。実例1と同様にパ
ルスエミッションの経時変化を測定した。その結果を図
3に示す。同様の材料・工程でペーストの膜を形成した
陽極基板を450℃で大気焼成した比較例を、同図中に
示す。パルスエミッションの残存率は実例1と同様の傾
向を示した。 【0022】以上説明した実例のように、本実施例によ
れば、蛍光体層の製造には水を使わず、また大気中での
焼成も行わず、さらに陽極基板を蛍光表示管の一部とし
て組み立てるまでは製造された蛍光体層は大気に触れさ
せないので、加水分解や酸化雰囲気中での熱処理でアル
カリ土類硫化物蛍光体の表面が劣化するおそれがなく、
陰極のエミッション特性の劣化しにくいアルカリ土類硫
化物蛍光体を備えた蛍光表示管を製造することができ
る。 【0023】以上説明した各実例において、CaS:E
u蛍光体は特に赤色発光蛍光体として有用であり、また
CaS:Ce蛍光体は黄緑色発光の蛍光体として有用で
ある。 【0024】以上説明した実施例においては、CaS:
Eu蛍光体とCaS:Ce蛍光体を説明したが、本発明
は、その他BaS系蛍光体や、次の表1に示すアルカリ
土類硫化物蛍光体蛍光体にも適用される。 【0025】 【表1】【0026】 【発明の効果】本発明によれば、蛍光体層の製造には水
の代わりに非水系の溶剤を使い、また大気中での焼成も
行わず、さらに陽極基板を蛍光表示管の一部として組み
立てるまでは製造された蛍光体層を活性雰囲気に触れさ
せないので、加水分解や酸化雰囲気中での熱処理でアル
カリ土類硫化物蛍光体の表面が劣化するおそれがなく、
陰極のエミッション特性の劣化しにくいアルカリ土類硫
化物蛍光体を備えた蛍光表示管を製造することができ
る。
陰極のエミッション特性の劣化が少ないアルカリ土類金
属硫化物蛍光体を備えた陽極基板の製造方法、又はその
ような蛍光表示管の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】蛍光表示管の発光表示部である陽極に用
いられる低速電子線によって励起する硫化物系の蛍光体
としては、ZnSを母体とするZnS系蛍光体や、Zn
CdSを母体とするZnCdS系蛍光体が知られてい
た。これらの他には、高電圧領域での発光効率に優れて
いる硫化物系の蛍光体として、アルカリ土類硫化物に希
土類を付活させた蛍光体、例えばCaS:Ce等が知ら
れていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】アルカリ土類硫化物に
希土類を付活させた高電圧領域での発光効率に優れてい
る蛍光体、例えばCaS:Ce等は、EL、CRT,投
射管等に用いるよう提案されていた。しかしながら、係
る提案にも係わらず、本発明者等が得た知見によれば、
このCaS:Ce等のアルカリ土類硫化物蛍光体は化学
的に不安定なため、表示素子用の蛍光体としてはほとん
ど実用化することができない。ここで化学的に不安定と
は、空気中で酸化されやすく、また加水分解されやすい
点をさす。例えばCaSを例にとれば、空気中で酸化さ
れてチオ硫酸カルシウムを生じ、湿気と二酸化炭素の作
用で硫化水素を発生する。また、冷水には難溶であるが
徐々に加水分解して硫化水素カルシウムと水酸化カルシ
ウムを生ずる。 【0004】このような性質があるため、CaS:Ce
等のアルカリ土類硫化物蛍光体は、次に説明するよう
に、蛍光体を発光表示部として所定のパターンに被着す
るための工程において分解しやすく、また所定のパター
ンに被着した蛍光体を焼成する工程において酸化されや
すい。 【0005】まず、蛍光体の一般的な被着方法であるス
クリーン印刷法では、蛍光体とビークルを混合してペー
スト化し、これを基板上に所定のパターンで印刷し、さ
らにこれを大気焼成してペースト成分をCO2 にして蒸
発させる。被着時に使用した有機物を焼成分解するため
には酸化雰囲気で焼成する必要があるが、そのようにす
ると、前記CaS:Ce等のアルカリ土類硫化物蛍光体
自体も酸化してしまう。 【0006】蛍光体の他の被着方法である電着法では、
蛍光体を水に分散し、電気永動の原理で陽極に蛍光体を
付着させていた。この方法では水を使うので前記Ca
S:Ce等のアルカリ土類硫化物蛍光体は加水分解して
しまう。 【0007】蛍光体の他の被着方法であるスラリー法で
は、ポリビニルアルコール、重クロム酸アンモニウムを
主媒体とする液に蛍光体を分散し、これを塗布したもの
に所定パターンのマスクをかけて露光し、水現像でポリ
ビニルアルコールを除去して所定パターンを得る。この
方法はCaS:Ce等のアルカリ土類硫化物蛍光体がP
UA−ADC、PUA−SbQ等の感光剤と反応してし
まい、スラリー液がゲル化して使用できない。 【0008】以上の事情から、アルカリ土類硫化物蛍光
体を従来の形成方法で表示素子の発光部に形成しても、
蛍光体の表面は荒れた状態になり、発光状態が悪くて実
用にならなかった。また、表示素子、例えば蛍光表示管
等に適用した場合、駆動時に電子が蛍光体に射突すると
発熱によってSが容易に放出され、陰極を汚染して電子
のエミッション特性を悪化させてしまう。図1中に示す
ように、従来の形成方法で形成したアルカリ土類硫化物
蛍光体では、従来のスクリーン印刷で形成したZnS:
Cu,Al蛍光体よりも経過時間に対するパルスエミッ
ション残存率の低下が著しい。 【0009】本発明は、以上説明した本願発明者等の知
見に基づいて成されたものであり、表面劣化等の有害な
影響を与えることなく蛍光表示管の陽極基板上にアルカ
リ土類硫化物蛍光体層を形成することができ、蛍光体の
分解による陰極のエミッションへの悪影響が少ない蛍光
表示管の製造方法を提供することを目的としている。 【0010】 【課題を解決するための手段】請求項1に記載された蛍
光表示管の製造方法は、不活性雰囲気中又は真空中で蒸
発する非水系の溶剤とアルカリ土類金属硫化物蛍光体を
混合してなるペーストの層を基板上に形成する工程と、
不活性雰囲気中又は真空中において前記基板上のペース
トから前記溶剤を蒸発させて蛍光体層を形成する工程
と、前記蛍光体層を活性雰囲気から隔離した状態に保ち
ながら前記基板上に制御電極と陰極を設ける工程と、前
記蛍光体層を活性雰囲気から隔離した状態に保ちながら
前記基板に容器部を封着して外囲器を構成する工程と、
前記外囲器の内部を真空にする封止工程とを有すること
を特徴としている。 【0011】 【0012】 【0013】 【実施例】本願発明者等は、[発明が解決しようとする
課題]の項で説明したように、アルカリ土類硫化物蛍光
体を用いて従来の製造方法で蛍光表示管を形成した場合
に陰極のエミッション特性が急激に低下する原因を、ア
ルカリ土類硫化物蛍光体が加水分解しやすく酸化雰囲気
中での加熱に弱い点にあると考えた。 【0014】そこで本願発明者等は、上記の知見に基づ
いて、蛍光表示管において陰極のエミッション特性の劣
化が生じないようにする為に、加水分解や酸化雰囲気中
での熱処理でアルカリ土類硫化物蛍光体の表面が劣化す
ることのない蛍光表示管の製造方法を提供することを目
指した。 【0015】本実施例で説明するアルカリ土類硫化物蛍
光体を用いた蛍光表示管の製造方法は、低速電子線で発
光する蛍光表示管の他、陽極電圧が数百ボルト以上の中
速及び高速電子管にも適しており、また、電子源として
は電子放出物質を有するフィラメント状の陰極を備えた
蛍光表示管又はFEC(Field Emission Cathode) を備
えた蛍光表示管のいずれにも適している。 【0016】本実施例の蛍光表示管の製造方法において
は、不活性雰囲気(例えば窒素ガス、アルゴンガス等)
中又は真空中で蒸発する非水系の溶剤である有機溶媒
(例えば沸点約180℃のテレピネオール、沸点約40
0℃のグリセリン等)と、アルカリ土類金属硫化物蛍光
体とを混合してペーストを作る。このペーストをドクタ
ーブレード法又はスクリーン法等によって基板上に所定
のパターンで被着し、不活性雰囲気中又は真空中で前記
基板上のペーストから前記有機溶媒を蒸発させて蛍光体
層を形成する。以後、前記蛍光体層を活性雰囲気から隔
離した状態に保ちながら工程を進め、まず基板上に制御
電極と陰極を設け、次に基板に容器部を封着して外囲器
を構成し、最後に外囲器の内部を真空にして封止する。 【0017】以上のようにして、大気中における熱処理
及び湿気による蛍光体粒子表面の劣化を防止しながら真
空封止することにより、アルカリ土類金属硫化物蛍光体
を従来適用できなかった蛍光表示管や電界放出素子の蛍
光体として実用化することができた。 【0018】以下に、アルカリ土類金属硫化物蛍光体を
用いた蛍光表示管の製造工程と、製造された蛍光表示管
の性能について、さらに具体的な実例1〜3を参照して
説明する。 (実例1)制御電極を2枚有する4極管構造の蛍光表示
管を製造した。図4に示すように、ガラス製の陽極基板
1の上にはITO膜からなる電極2を形成する。電極2
に接続して直径4mmの発光領域3を陽極基板1上に設
ける。発光領域3以外の陽極基板1上は厚さ35μmの
絶縁層4で覆う。蛍光体ペースト5は、テレピネオール
1.5重量部に対し、CaS:Ce1重量部を添加し、
混合したものを用いた。図4に示すように、この蛍光体
ペースト5により、ドクターブレード6を用いて絶縁層
4上に膜厚約20μmの厚さの蛍光体層を形成する。こ
の蛍光体層を有する陽極基板1を、窒素ガス中にてテレ
ピネオールの沸点以下の温度で30分間焼成し、焼成炉
の温度が常温になってから陽極基板1を取り出し、前記
4極管構造の蛍光表示管を製造した。蛍光表示管の組み
立て工程中は、前記蛍光体層は常時不活性ガス雰囲気中
に保持した。 【0019】陽極電圧400V、陽極電流密度25mA
/cm2 にて5.81m/Wの発光効率を得た。本例の
蛍光表示管におけるエミッションの特性は、点灯経過時
間とパルスエミッション残存率との関係を示す図1の通
りである。図1中には、スクリーン印刷、450℃大気
焼成15分間保持で形成したZnS:Cu,Al蛍光体
を有する蛍光表示管と、同様の条件で形成したCaS:
Ce蛍光体を有する蛍光表示管のエミッションの相対残
存率を比較のために示す。図1から明らかなように、本
例の方法を用いることにより、大気中における熱処理及
び湿気による蛍光体粒子表面の劣化を一切排除して、エ
ミッションへの悪影響が少ないアルカリ土類金属硫化物
蛍光体を備えた蛍光表示管を実用化できた。 【0020】(実例2)以下の組成のペーストを調整
し、陽極基板上にスクリーン印刷を行った。 CaS:Eu 1重量部 グリセリン 1重量部 このペーストを使用し、通常のスクリーン印刷機にて印
刷を行い、陽極基板上に平均13μmの厚さの膜を形成
した。この陽極基板を、窒素雰囲気中にてグリセリンの
沸点(290℃)以下の温度で焼成した。この陽極基板
を、電子の加速電圧が8kVの高電圧管に実装し、実例
1と同様にパルスエミッションの経時変化を測定した。
高電圧管への実装工程中は、前記蛍光体層は常時不活性
ガス雰囲気中に保持した。同様の材料・工程でペースト
の膜を形成した陽極基板を450℃で大気焼成したもの
を比較例とした。経過時間に対するパルスエミッション
の残存率は実例1と同様の傾向を示した。発光効率は、
相対値で窒素ガス焼成の本例2が100であるのに対
し、大気焼成の比較例は80であった。経過時間に対す
る発光効率の変化を図2に示す。発光効率は、1000
時間近く経過した後も、80%以上を維持した。 【0021】(実例3)以下の組成のペーストを調整
し、陽極基板上にスクリーン印刷を行った。 CaS:Ce 1重量部 グリセリン 1重量部 In2 O3 0.25重量部 このペーストを使用し、通常のスクリーン印刷機にて印
刷を行い、陽極基板上に平均13μmの厚さの膜を形成
した。この陽極基板を、窒素雰囲気中にてグリセリンの
沸点以下の温度で焼成した。この陽極基板を、蛍光表示
管に実装し、陽極電圧50Vにて点灯して寿命試験を行
った。蛍光表示管の組み立て工程中は、前記蛍光体層は
常時不活性ガス雰囲気中に保持した。実例1と同様にパ
ルスエミッションの経時変化を測定した。その結果を図
3に示す。同様の材料・工程でペーストの膜を形成した
陽極基板を450℃で大気焼成した比較例を、同図中に
示す。パルスエミッションの残存率は実例1と同様の傾
向を示した。 【0022】以上説明した実例のように、本実施例によ
れば、蛍光体層の製造には水を使わず、また大気中での
焼成も行わず、さらに陽極基板を蛍光表示管の一部とし
て組み立てるまでは製造された蛍光体層は大気に触れさ
せないので、加水分解や酸化雰囲気中での熱処理でアル
カリ土類硫化物蛍光体の表面が劣化するおそれがなく、
陰極のエミッション特性の劣化しにくいアルカリ土類硫
化物蛍光体を備えた蛍光表示管を製造することができ
る。 【0023】以上説明した各実例において、CaS:E
u蛍光体は特に赤色発光蛍光体として有用であり、また
CaS:Ce蛍光体は黄緑色発光の蛍光体として有用で
ある。 【0024】以上説明した実施例においては、CaS:
Eu蛍光体とCaS:Ce蛍光体を説明したが、本発明
は、その他BaS系蛍光体や、次の表1に示すアルカリ
土類硫化物蛍光体蛍光体にも適用される。 【0025】 【表1】【0026】 【発明の効果】本発明によれば、蛍光体層の製造には水
の代わりに非水系の溶剤を使い、また大気中での焼成も
行わず、さらに陽極基板を蛍光表示管の一部として組み
立てるまでは製造された蛍光体層を活性雰囲気に触れさ
せないので、加水分解や酸化雰囲気中での熱処理でアル
カリ土類硫化物蛍光体の表面が劣化するおそれがなく、
陰極のエミッション特性の劣化しにくいアルカリ土類硫
化物蛍光体を備えた蛍光表示管を製造することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の実例1における経過時間とパルスエミ
ッション残存率との関係を比較例と対比して示すグラフ
である。 【図2】実施例の実例2における経過時間と発光輝度の
残存率との関係を示すグラフである。 【図3】実施例の実例3における経過時間とパルスエミ
ッション残存率との関係を比較例と対比して示すグラフ
である。 【図4】実施例の実例1における陽極の一製造工程を示
す図である。 【符号の説明】 1 陽極基板
ッション残存率との関係を比較例と対比して示すグラフ
である。 【図2】実施例の実例2における経過時間と発光輝度の
残存率との関係を示すグラフである。 【図3】実施例の実例3における経過時間とパルスエミ
ッション残存率との関係を比較例と対比して示すグラフ
である。 【図4】実施例の実例1における陽極の一製造工程を示
す図である。 【符号の説明】 1 陽極基板
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(56)参考文献 特開 昭57−205940(JP,A)
特開 昭58−142742(JP,A)
特開 昭58−80375(JP,A)
特開 昭62−291834(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
H01J 9/227
H01J 9/02
H01J 9/14
H01J 9/18
H01J 9/40
H01J 31/15
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 不活性雰囲気中又は真空中で蒸発する非
水系の溶剤とアルカリ土類金属硫化物蛍光体を混合して
なるペーストの層を基板上に形成する工程と、不活性雰
囲気中又は真空中において前記基板上のペーストから前
記溶剤を蒸発させて蛍光体層を形成する工程と、前記蛍
光体層を活性雰囲気から隔離した状態に保ちながら前記
基板上に制御電極と陰極を設ける工程と、前記蛍光体層
を活性雰囲気から隔離した状態に保ちながら前記基板に
容器部を封着して外囲器を構成する工程と、前記外囲器
の内部を真空にする封止工程とを有する蛍光表示管の製
造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09531395A JP3520597B2 (ja) | 1995-04-20 | 1995-04-20 | 蛍光表示管の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09531395A JP3520597B2 (ja) | 1995-04-20 | 1995-04-20 | 蛍光表示管の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08293247A JPH08293247A (ja) | 1996-11-05 |
JP3520597B2 true JP3520597B2 (ja) | 2004-04-19 |
Family
ID=14134273
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP09531395A Expired - Fee Related JP3520597B2 (ja) | 1995-04-20 | 1995-04-20 | 蛍光表示管の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3520597B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003064357A (ja) * | 2001-08-30 | 2003-03-05 | Futaba Corp | 蛍光体、蛍光体層の製造方法及び蛍光表示管 |
CN101192493B (zh) * | 2006-11-22 | 2011-02-02 | 鸿富锦精密工业(深圳)有限公司 | 阳极装置及其制造方法 |
-
1995
- 1995-04-20 JP JP09531395A patent/JP3520597B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08293247A (ja) | 1996-11-05 |
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