JP3520320B2 - セラミックスの接合体の製造法 - Google Patents

セラミックスの接合体の製造法

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JP3520320B2
JP3520320B2 JP2000005828A JP2000005828A JP3520320B2 JP 3520320 B2 JP3520320 B2 JP 3520320B2 JP 2000005828 A JP2000005828 A JP 2000005828A JP 2000005828 A JP2000005828 A JP 2000005828A JP 3520320 B2 JP3520320 B2 JP 3520320B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックスとセ
ラミックスとを接合したり、セラミックスと単結晶とを
接合して機能を高めた接合体およびその製造法に関する
ものである。さらに詳しくは、内部に微細な孔を有した
り、鋭い切れ込みのある、通常の方法では成形が困難な
精密セラミック接合体とその製造法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術とその課題】精密に組み合わせることので
きるセラミックスや内部に折れ曲がった孔のあるセラミ
ックスの開発が産業技術の発展により求められようにな
った。セラミックスは、硬くて脆いために、金属のよう
な圧延加工や切削加工が難しい。このため、セラミック
スでは、使用する形状にその焼結原料となる非金属無機
化合物の粉体を予め成形し、この成形体を焼結すること
で、製品として必要な機械的、電気的、磁気的性質を付
与している。セラミックスの製造では、粉体の成形体が
焼結により収縮するために、寸法精度が要求される製品
や内部に折れ曲がった孔を有する製品を製造すること
は、本質的に困難である。
【0003】従来の接合法として、溶射、鑞付け、熱間
静水圧プレス(HIP)やホットプレスなどによる高温
での圧着等がある。これらの技術の中で、溶射は、金属
等の表面に溶けたセラミックスを吹き付けて接合する技
術であり、主に、高温または常温での耐腐食材料を製造
するために行われる。この技術では、溶けたセラミック
スを吹き付けるために寸法精度が要求される材料を製造
できないという欠点がある。
【0004】鑞付け法は、適当な物質を接合体の間に介
在させて接合する方法であるが、この方法では、介在物
質として低融点物質を用いるために、優れた高温特性を
有する材料の製造が難しいという欠点があった。HIP
やホットプレスなどによる高温での圧着法は、寸法精度
が良く高純度・高機能性接合体を製造できるという長所
はあるが、接合に圧力装置を用いるために、作業性が悪
くコストが高いという欠点があった。
【0005】さらに、高温強度の低下が無視できたり、
光の散乱が無視できるなどの高機能性を損なわない接合
を常圧で行う技術が開発されている。しかしながら、現
在のところ、この技術による接合は、表面の凹凸を原子
オーダーまで平らにできる材料に限られている。例え
ば、超精密に研磨したガラス同士は接合可能で、その接
合を利用した材料は既に市販されている。また、非金属
無機化合物の単結晶も原子オーダーの凹凸まで平らに研
磨ができる場合、無加圧の接合は既に成功している。一
方、多数の単結晶の集合体であるセラミックスの場合、
研磨すると粒子毎に研磨される速度が異なるので、原子
オーダーまで凹凸を抑えた研磨は困難である。このた
め、高機能性を期待したセラミックスとセラミックス同
士の接合、またはセラミックスと非金属無機化合物の単
結晶との接合において、圧力を加えない接合は未解決の
技術課題が多く残されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するものとして、セラミックスとセラミックスとの
接合面の間、またはセラミックスと非金属無機化合物の
単結晶体との接合面の間が、これらのセラミックスまた
は単結晶との2面角が90o 以上で、かつ平均粒径が5
μm以下の非金属無機化合物の粉体を圧着し焼結した層
で接合されていることを特徴とするセラミックス接合体
を提供する。
【0007】また、接合層の組織とセラミックスの組織
が一体化して、見掛け上接合相が認められないことを特
徴とする上記のセラミックス接合体を提供する。
【0008】また、セラミックスとセラミックスとを接
合する面、またはセラミックスと非金属無機化合物の単
結晶体とを接合する面に、これらのセラミックスまたは
単結晶との2面角が90o 以上で、かつ平均粒径が5μ
m以下の非金属無機化合物の粉体を挟み、圧着し、該粉
体の融点の0.5倍から融点の間の温度で該粉体を焼結
して接合することを特徴とする上記のセラミックス接合
体の製造法を提供する。
【0009】さらに、結合剤、分散剤、または可塑剤の
中の一種あるいは複数と共に予め液体で混練した粉体を
用いることを特徴とする上記のセラミックス接合体の製
造法を提供する。
【0010】なお、現在、「セラミックス」という用語
は、焼結体ばかりでなく、単結晶や薄膜、セメント等の
非金属無機化合物材料に対して使用されるが、本来は、
該化合物の焼結体を意味していた。本明細書において
は、本来の意味で、セラミックスという用語を用いる。
【0011】本発明において、セラミックスとセラミッ
クスとの接合面の間、またはセラミックスと非金属無機
化合物の単結晶体との接合面の間に挟む粉体は、粒径が
5μm以下の粉体である。
【0012】本発明は、微細な粉体が化学的に活性であ
る性質を利用している。このために、原理的には、粉体
の基本粒子の平均粒径は小さいほど好ましい。しかしな
がら、基本粒子が小さくなると、該粒子間で強い凝集力
が働き、硬い凝集粒子を形成する。粉体の焼結性は、硬
い凝集粒子の大きさに支配される。このため、本発明に
おいては、硬い凝集粒子の平均粒径が10μm以下の粉
体を使用する必要がある。ここで、基本粒子とは、一次
粒子または一次粒子が緻密に集合していて、該集合体内
に気孔が実質的に認められない粒子をいう。また、凝集
粒子とは、基本粒子が気孔を含みながら集合した粒子で
ある。
【0013】一方、基本粒子が大きくなると、焼結性は
急激に低下する。このため、基本粒子の平均粒径は5μ
m以下に制限する必要がある。この平均粒径よりも大き
い粉体を用いると、非常に高温で接合する必要があるの
で、実用的でない。本発明において使用する粉体は、上
記の条件を満足する大きさであれば、特に制限は無く、
市販品として入手したものでもよい。
【0014】本発明においては、接合に使用できる粉体
は、該粉体と接合しようとする物質間との2面角できま
る。本発明において、2面角とは、接合に使用する粉体
粒子と接合する物質が接した界面とそれらの表面との交
点におけるそれらの表面間の角度をいう。表面自由エネ
ルギーに比べて、界面自由エネルギーが相対的に大きく
なると2面角は小さくなる。
【0015】2面角の測定方法として以下のもの(G.Ac
hutaramayyaとW.D.Scott.J.Am.Ceram.Soc.,56[4]230-31
(1973) )が例示できる。接合試料を鏡面研磨した後
に、接合した試料の融点の1/2から融点の間の温度で
熱腐食する。該試料をSEMの試料台に水平にセットす
る。接合に使用した粉体粒子と接合した物体間に形成さ
れる粒界の熱腐食溝に対して直角にSEMの電子線をラ
インスキャンする。該電子線に衝突した有機物蒸気が分
解して生成したカーボン等がこのスキャンした線に沿っ
て堆積する。この線状に堆積した物をマーカーとして利
用する。
【0016】試料が水平であると、このマーカーから得
られるSEM像は直線になる。試料を傾けると、マーカ
ーは粒界の所で角を有する窪みを示す。この角の角度β
を測定する。試斜を傾けた角度と2面角をそれぞれαと
θで表すと、tan(θ/2)はsin(α/2)とt
an(β/2)の積に等しい。αとβは既知であるか
ら、この等式から2θが計算できる。また、近年発達し
た原子力間顕微鏡を用いると、粒界溝の2面角を直接的
に測定できる。
【0017】本発明において、接合現象は、接合に使用
する粉体粒子と接合する物質間に形成される界面の原子
が、該粒子表面や該物質の表面に拡散して界面の面積を
増大させると同時に、それらの表面の面積を減少させる
現象である。界面自由エネルギーは、表面自由エネルギ
ーと同様に過剰エネルギーである。このため、界面自由
エネルギーが大きいことは、界面の面積を増大させるの
に多くのエネルギーを必要とし、逆に、接合を起こす駆
動力がそれだけ小さくなることを意味する。理論的計算
によると2面角が60o 以下になると接合は進まない。
【0018】実際的には、接合に使用する粉体粒子と接
合する物体の接触した所の2面角の50%以上が90°
未満になると接合のための駆動力は非常に小さくなり、
接合は殆ど進まない。したがって、2面角の50%以上
が90o 以上であることが必要である。固体の表面や界
面の性質は、微量の不純物で非常に変化することは既に
知られている。接合に使用する粉体と物質間の2面角が
小さく接合が進まない場合、接合体の実用的な特性を損
なわない物質を添加して、90°以上の2面角を50%
以上にすると本発明の技術で接合が可能になる。
【0019】例えば、SiCの結合は共有結合性が強
く、SiCの粉体粒子とSiCの焼結体の粒子との間の
2面には90°より小さい2面角が無視できない頻度
で出現する。この場合、ボロン(B)を添加したSiC
粉体を用いると殆どの2面角が90°以上になり接合が
可能になる。
【0020】本発明においては、接合しようとする物質
の間に粉体のままで挟んでも好ましい結果が得られる
が、良好な接合面を得るには技術的熟練が必要であると
いう欠点がある。そこで、粉体と液体の混練物を接合す
る物質間に挟むと、該液体の作用で接合強度が強くな
り、接合作業が容易になり好ましい。また、この混練に
際して、解膠剤や潤滑剤を含む液体を用いると、接合す
る物質間に挟んだ粉体を緻密に充填できるので、さらに
好ましい。また、該液体に結合剤を添加しておくと、焼
成前の接合強度が向上し、接合作業が容易になるので好
ましい。
【0021】本発明においては、接合に使用する粉体を
接合しようとする物体の間に挟んだ後、該粉体と該物体
の密着を良くしたり、該粉体の嵩密度を高くしたり、さ
らには、接着に直接寄与しない過剰な粉体を除去するた
めに室温で該物体に圧力をかけて粉体を圧着する。該圧
着圧は、10MPa以上が好ましく、30MPaが特に
好ましい。
【0022】本発明において、接合する温度は、接合の
ために使用する粉体の融点の0.5倍以下であると、物
質移動速度が小さく実質的に接合できず、0.5倍以上
が必要であり、0.7倍以上が好ましい。該粉末の融点
以上または該粉末と接合するセラミックスとの反応で生
成した化合物の融点以上になると、該セラミックスの粒
成長を異常に促進する。この異常粒成長は、該セラミッ
クスの機械的強度などの実用的に重要な特性を低下させ
るので好ましくない。一方、接合初期に溶融体が生成し
ても、該溶融体が異常粒成長が起こる前に接合しようと
する物質に固溶したり、反応して接合後に残らない場合
は、接合体の機能を低下させないので問題はない。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明において、非金属無機化合
物とは、固体の無機物質の中で、鉄(Fe)、銅(C
u)、アルミニウム(Al)等の金属や炭素(C)や珪
素(Si)等の半金属の単体や金属間化合物を除いた物
質をいう。該化合物としてアルミナ(Al2 3 )や窒
化アルミニウム(AlN)で例示される金属類と酸素や
窒素等の非金属との化合物や炭化珪素(SiC)で例示
される半金属同士の化合物等がある。
【0024】本発明において、接合体の対象となるセラ
ミックスは、非金属無機化合物の焼結体であり、非金属
無機化合物としては、アルミナ(Al2 3 )、安定化
及び高靭性ジルコニア(種々の添加物を含むZr
2 )、ペロブスカイト系セラミックス、イットリウム
・アルミニウム・ガーネット(YAG)、チタニア(T
iO 2 )、酸化亜鉛(ZnO)、イットリア(Y
2 3 )、窒化珪素(Si3 4 )、サイアロン(SI
ALON)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム
(AlN)等、本発明の目的に適する物質であれば、そ
の種類は特に限定されない。これらの単体の焼結体で
も、複数が混合した複合焼結体でもよい。
【0025】また、本発明の接合体の対象になる非金属
無機化合物の単結晶とは、アルミナ(Al2 3 )、イ
ットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、イ
ットリア(Y2 3 )、マグネシア(MgO)、カルシ
ア(CaO)等の酸化物系の無機化合物単結晶が例示さ
れるが、本発明の目的に適する物質であれば、その種類
は特に限定されない。炭化珪素(SiC)や窒化アルミ
ニウム(AlN)等の非酸化物系無機化合物でも、大き
な単結晶が合成できるようになれば、高機能性接合体に
対する需要もでてくると考えられるが、その時は、本発
明の技術が応用できる。
【0026】接合のために使用する粉体と接合する物質
とが異なると、焼結時に化学反応が起こる。本発明にお
いては、好ましい化学反応もあるし、好ましくない化学
反応もある。例えば、Si3 4 やSIALONとCa
Oを組み合わせると、焼結時に生成した低融点物質は接
合後も残るので、技術的には従来の鑞付けに近い。この
ために、そのような場合は、本発明において用いる粉体
として適さない。しかしながら、Si3 4 とY2 3
のように、接合初期に低融点物質が生成しても、接合の
進行につれて高融点物質に変化する系では、低融点物質
が接合を促進し、接合が終わった後は該低融点物質は存
在しないので、本発明において、好ましい組み合わせで
ある。
【0027】なお、粉体の焼結後に生成する接合と接
合に使用されたセラミックスや単結晶との熱膨張率の差
が2×10-6/℃以上あると、接合後の冷却時に熱膨張
差による熱応力が発生し破壊する。また、接合する物質
が異なる場合や同じ物質でもセラミックスと単結晶を接
合する場合も、熱膨張率の差が2×10-6/℃以上ある
と、接合後の冷却時に破壊する。このため、接合と接
合する物質間の熱膨張率の差ばかりでなく、該物質間の
熱膨張率の差も2×10-6/℃未満に抑える必要があ
る。
【0028】本発明において、粉体を混練するのに使用
する液体は、水やアルコール類等が例示されるが、上記
の使用目的に適し、かつ接合部の純度を低下させない液
体であれば、その種類は特に限定されない。
【0029】本発明において、粉体の混練に使用する解
膠剤は、ジエチルアミン、ピリジン、メチルセルロース
等が例示されるが、接合後に接合部の純度を低下させ
ず、かつ混練した粉体粒子の凝集をほぐすという本発明
の使用目的に適する物質であれば、その種類は特に限定
されない。
【0030】本発明において、粉体の混練に使用する結
合剤は、接合しようとする物質に粉体を挟んだ状態を強
固にして接合作業を容易にすると同時に、接合のための
焼成時に粒子が不均一に焼結することを防止する目的で
使用する。結合剤として、ポリエチレングリコール、ポ
リビニールアルコール、ポリアクリル酸アミド等が例示
されるが、接合後に接合部の純度を低下させず、かつ結
合剤として本発明の使用目的に適する物質であれば、そ
の種類は特に限定されない。
【0031】本発明において、粉体の混練に使用する潤
滑剤は、接合しようとする物質に挟まれた粉体の粒子間
の滑りを良好にして、該粉体の充填密度むらを無くすと
同時に充填密度を大きくする目的で使用する。ステアリ
ン酸ジグリコールやカーボワックス等が例示されるが、
接合後に接合部の純度を低下させず、かつ潤滑剤として
本発明の使用目的に適する物質であれば、その種類は特
に限定されない。
【0032】本発明において、使用目的を最も発揮する
解膠剤や結合剤、潤滑剤の種類や添加量は、粉体の種類
や大きさ等で異なる。これらの種類や添加量を決める科
学は十分に発達していないので、経験的に求める必要が
ある。これらの添加剤はセラミックス粉体の成形にも効
果を発揮するので、セラミックス製造の助剤として従来
より詳しく研究されている。そこで実際的には、それら
の研究成果(例えば「成形用有機添加剤」、(株)TI
C平成5年、「セラミックス製造プロセス」、素木洋一
著、技報堂出版(株)、(1982)等)を参考に、添加剤の
種類や添加量を検討する必要がある。
【0033】接合しようとする物質に挟んだ粉体層には
空隙が存在する。本発明においては、高温で該粉体層の
粒子を焼結させて、空隙を取り除く。接合する表面に不
規則で大きい凹凸があると、焼結による緻密化は不均一
になり、粉体粒子の充填状態を厳密に制御しないと焼成
で空隙が大きく成長する。接合する表面を平滑にすると
緻密化は一次元的となり、大きな空隙の発生が少なくな
る。以上の理由で、15ミクロン以下の研磨材で研磨す
ることが好ましく、3ミクロン以下の研磨材で研磨する
ことが特に好ましい。
【0034】また、本発明においては、表面うねりの抑
制も効果的であり、該うねりを±100ミクロン以内に
抑制することが好ましく、±50ミクロン以内が特に好
ましい。本発明において、接合層と接合する物質の組織
を一体化させる接合では、表面うねりを±100ミクロ
ン以内に抑制する必要がある。
【0035】本発明において、接合させるセラミックス
とセラミックスとの間またはセラミックスと単結晶との
間の接合に用いる粉体の層の厚さは、該セラミックスや
単結晶の接合面の表面粗さや表面うねりのそれぞれの振
幅の高さと該粉体粒子の粒径の3つを比較して、最も大
きいものの1倍から100倍が好ましく、3倍から50
倍が特に好ましい。該粉体層の厚さが、上述した1倍よ
りも小さいと、接合させるセラミックス同士またはセラ
ミックスと単結晶が直接的に接触して、良好な接合体が
得られない。一方、該厚さが上述した100倍以上にな
っても、接合に使用する粉体量が多くなるだけで、接合
特性は同じである。このため、100倍以上に厚くする
と、使用する粉体量が多くなるだけで経済的には不利で
あるので好ましくない。
【0036】
【実施例】実施例1 直径が0.4μmの市販のアルミナ粉末を用いて、乾式
プレス法で直径が10mm、厚さ3mmのアルミナ成形
体を複数作製し、それらを1700℃で1時間真空焼結
する。焼結体の片面を鏡面研磨する。直径が0.9μm
の市販のアルミナ粉末に蒸留水を少し加えて良く練った
後、研磨面に塗布し、研磨面同士を張り合わせ約30M
Paの圧力で圧着した。塗布層の厚さは約10μmであ
った。
【0037】この張り合わせた試料を乾燥させ、170
0℃で1時間、真空焼成すると、良好な接合体が得られ
た。該接合体を鏡面研磨した後に、1600℃で熱腐食
する。接合に使用した粉体粒子と接合した物体間に形成
される粒界の熱腐食溝に対して直角にSEMの電子線を
ラインスキャンする。このスキャンした線に沿って該電
子線と衝突した有機物蒸気から分解したカーボン等が線
状に堆積する。この試料を角度αだけ傾けた後に粒界に
交わった表面間の角度βを測定する。2面角θは、ta
n(θ/2)=sin(α/2)×tan(β/2)の
等式を用いて計算した。測定した結果によると、90°
より小さい2面角は認められず、その平均値は135°
であった。使用したアルミナ粉体とアルミナ焼結体の2
面角で90°以下のものは認められず、その平均値は1
35°であった。
【0038】実施例2 直径が0.4μmの市販のアルミナ粉末と結合剤や分散
剤を含む蒸留水を良く練り、実施例1で製造した試験片
の鏡面研磨面に塗り、研磨面同士を張り合わせる。約3
0MPaの圧力で圧着してから結合剤や分散剤を除くた
めに空気中で1400℃、2時間予備焼成する。塗布層
の厚さは約10μmであった。その後、1700℃で1
時間、真空焼成し、2つの試験片が一体化した接合体が
得られた。図1は、得られたセラミックス接合体の接合
部分を示すSEM写真である。
【0039】図1に示す矢印は、接合層に生じた気孔で
ある。矢印で示さない限り接合層の組織とセラミックス
の組織が一体化して、どこに接合層があるのか分からな
い。接合体の3点曲げ試験を行ったところ、曲げ強度は
52kg/mm2 であり、接合部が無い試験片の曲げ強
度と実験誤差内で一致した。なお、2面角は実施例1に
記載の方法で測定した。その結果2面角は実施例1と同
じ分布を示し、その平均値は135°であった。
【0040】実施例3 鏡面研磨面の代わりにダイヤモンドカッターで切断した
面に実施例2で使用した混練物を塗る。塗布層の厚さは
約100μmであった。約30MPaの圧力で圧着して
から乾燥し、実施例2の条件で焼結し接合を行う。空隙
を十分に取り除くことはできなかったが、この3点曲げ
強度は15kg/mm2 あり、かなりの強度を有する接
合体が得られた。なお、2面角は実施例1に記載の方法
で測定した。その結果、2面角は実施例1で得られたも
のと同じ分布を示した。
【0041】実施例4 実施例1の方法で、直径が0.9μmの市販のアルミナ
粉末の代わりに平均粒径が0.06μmのイットリア粉
末を用いて接合する。塗布層の厚さは約10μmであっ
た。接合する材料はアルミナであるので、接合のための
焼結中にアルミナとイットリアが反応して低融点物質が
発生し、接合が非常に速く進んだ。なお、2面角は実施
例1に記載の方法で測定した。その結果、該低融点物質
とアルミナ焼結体との2面角は120〜150°の間に
あった。
【0042】実施例5 直径が0.06μmの易焼結性イットリア粉末を用い
て、乾式プレス法で直径が10mm、厚さ3mmのイッ
トリア成形体を複数作製し、それらを1700℃で1時
間、真空焼結する。焼結体の片面を鏡面研磨する。上記
のイットリア粉末と結合剤や分散剤を含む水とを良く練
ったのち、研磨面に塗布し、研磨面同士を張り合わせ
て、約30MPaの圧力で圧着してから乾燥させる。塗
布層の厚さは約10μmであった。張り合わせた試料を
1700℃で1時間真空焼結すると良好な接合体が得ら
れた。接合に使用した粉体と接合した焼結体の2面角は
実施例1に記載の方法で測定した。その結果、該2面角
は120〜147°の間にあった。
【0043】比較例1 実施例と1と同じく、平均粒径が0.4μmのアルミナ
粉体を使用し、液体を加えることなく粉の状態で実施例
1で製造した試験片に挟んだ。挟んだ粉を圧着すること
なく電気炉にセットして1700℃で1時間、真空焼結
した。図2は、得られたセラミックス接合体の接合部分
を示すSEM写真である。接合が十分に進まない部分が
あり、殆ど接合していないところもあった。なお、2面
角は実施例1に記載の方法で測定した。その結果、2面
角は実施例1と同じ値を示した。
【0044】比較例2 実施例1で作製した試験片を粉体を挟まずに直接接触さ
せて、実施例1の条件で焼成したが、試験片同士の接合
は無視できる程度で、試験片はすぐに離れた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例2によって得られたセラミック
ス接合体の接合部分を示す図面代用のSEM写真であ
る。
【図2】図2は、比較例1によって得られたセラミック
ス接合体の接合部分を示す図面代用のSEM写真であ
る。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−77186(JP,A) 特開 平11−157951(JP,A) 特開 平1−157469(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 37/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】セラミックスとセラミックスとを接合する
    面またはセラミックスと非金属無機化合物の単結晶体と
    を接合する面を鏡面研磨し、表面うねりを±100ミク
    ロン以内に抑制した面に、これらのセラミックスまたは
    単結晶と接触した所の2面角の50%以上が90°以上
    で、かつ平均粒径が5μm以下の非金属無機化合物の粉
    体を、粉体の層の厚さが、該セラミックスや単結晶の接
    合面の表面粗さや表面うねりのそれぞれの振幅の高さと
    該体粒子の平均粒径の3つを比較して、最も大きいもの
    の1倍から100倍となるように、挟み、室温で10M
    Pa以上の圧着圧で圧着し、該粉体の融点の0.5倍か
    ら融点の間の温度で該粉体を圧力を加えないで焼結して
    接合することを特徴とするセラミックス接合体の製造
    法。
  2. 【請求項2】結合剤、分散剤、または可塑剤の中の一種
    あるいは複数と共に予め液体で混練した粉体を用いるこ
    とを特徴とする請求項記載のセラミックス接合体の製
    造法。
  3. 【請求項3】該粉体と該セラミックスまたは単結晶間の
    2面角が小さく接合が進まない場合、接合体の実用的な
    特性を損なわない物質を添加して、90°以上の2面角
    を50%以上にすることを特徴とする請求項1又は2記
    載のセラミックス接合体の製造法。
  4. 【請求項4】該粉体と該セラミックスまたは単結晶とが
    異なる物質の場合、化学反応により接合初期に形成され
    る低融点物質が接合の進行につれて高融点物質に変化す
    る系となる組み合わせとすることを特徴とする請求項1
    ないし3のいずれかに記載のセラミックス接合体の製造
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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