JP3519242B2 - アナログ信号処理装置およびそれを用いる相関演算器 - Google Patents

アナログ信号処理装置およびそれを用いる相関演算器

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    • H03F1/30Modifications of amplifiers to reduce influence of variations of temperature or supply voltage or other physical parameters
    • H03F1/303Modifications of amplifiers to reduce influence of variations of temperature or supply voltage or other physical parameters using a switching device

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、CMOS構成の差
動増幅器等から成るアンプを備え、入力アナログ信号に
対して増幅等の処理を行うアナログ信号処理装置および
それを用いて構成されるマッチドフィルタ等の相関演算
器に関する。
【0002】
【従来の技術】CMOSインバータ等で実現されるアン
プAMP1と、入力キャパシタCiと、帰還キャパシタ
Cfとを備える図15で示すようなアナログ信号処理回
路1は、アナログのままで入力信号を処理する基本回路
として、近年、様々な応用が考えられている。たとえば
特開平6−215164号公報では、乗算回路に応用し
た例が述べられている。また、それ以外にも、アナログ
電圧のサンプルホールド回路、スケーラ回路、加減算回
路およびフィルタ回路等への応用が考えられている。
【0003】このアナログ信号処理回路1は、アナログ
電圧の変化で表された入力信号Vinをアナログのまま
信号処理して、対応する電圧変化を有する出力信号Vo
utを出力する。
【0004】一方、デジタルで信号処理を行う場合に
は、アナログ/デジタル変換およびデジタル/アナログ
変換が必要となって、回路規模および電力消費が増大す
るとともに、高精度化のために量子化ビット数を増加す
ると、演算量が飛躍的に増加し、これによってもまた、
回路規模および電力消費が増大するという問題がある。
これに対して、上述のようにアナログのままで信号処理
を行うことによって、そのような問題が発生することも
ない。このため、アナログ信号処理回路を用いることに
よって、上述のような用途での回路規模の縮小および電
力消費の削減が期待されている。
【0005】前記図15で示す容量結合型のアナログ信
号処理回路1では、アンプAMP1の入力端であるノー
ドn1のインピーダンスが高く、入力信号のタイムスケ
ールにおいて、その電荷量が変化しないことが信号処理
動作の前提となる。そのため、該アンプAMP1の入力
段にはMOSFETが使用され、前記ノードn1は電気
的にフローティングの状態とされている。
【0006】このアナログ信号処理回路1の静的な入出
力特性を、 Vo−Vr=−G(Vi−Vr) …(1) とする。ここで、−G(G>0)はアンプAMP1のゲ
インであり、ViはアンプAMP1の入力電圧であり、
VoはアンプAMP1の出力電圧であり、Vrはアンプ
AMP1の動作点電圧、すなわち、 Vo=Vi …(2) が成立するときの入力電圧Viである。
【0007】このようなアンプAMP1を用いるアナロ
グ信号処理回路1において、フローティング状態の前記
ノードn1に蓄えられている電荷量をQとし、ゲインG
が充分大きい値であるとするとき、該アナログ信号処理
回路1の静的な入出力特性は、下式で表すことができ
る。
【0008】 Vout−Vr=−(Ci/Cf)(Vin−Vr)−Q/Cf …(3) したがって、−Q/Cfがオフセットとなる。
【0009】ところが、製造段階で前記電荷量Qを0に
制御することは極めて困難であり、この電荷量Qのバラ
ツキが出力信号Voutの直流レベルのバラツキとな
る。また、前記電荷量Qは、アナログ信号処理回路1の
信号処理動作中にホットエレクトロンの侵入によって変
化することがある。さらにまた、前記電荷量Qを0に制
御することができたとしても、アンプAMP1の動作点
電圧Vrにバラツキがあり、このバラツキも前記直流レ
ベルのバラツキとなってしまう。前記アンプAMP1が
差動アンプである場合には、入力オフセットのバラツキ
が前記出力信号Voutの直流オフセットとなって現れ
る。
【0010】したがって、この図15で示すアナログ信
号処理回路1は、このままでは工業的に実用化すること
が困難であり、図16で示すような典型的な従来技術の
アナログ信号処理回路2が提案されている。このアナロ
グ信号処理回路2において、前述のアナログ信号処理回
路1と同一の構成には、同一の参照符号を付してその説
明を省略する。このアナログ信号処理回路2では、前述
のアナログ信号処理回路1の構成に、さらにオフセット
電圧を補償するリフレッシュ動作を行うためのスイッチ
S1〜S3が設けられている。
【0011】前記スイッチS1はアンプAMP1の入出
力端間に設けられており、制御信号φ1がハイレベルと
なると導通して、該入出力端間をホロア結合する。ま
た、スイッチS2は入力キャパシタCiの入力端に設け
られており、制御信号φ2がローレベルであるときには
入力キャパシタCiに入力信号Vinを入力し、ハイレ
ベルであるときには予め定める基準レベルVrefを入
力する。さらにまた、スイッチS3は帰還キャパシタC
fに関して設けられており、前記制御信号φ2がローレ
ベルであるときには帰還キャパシタCfにアンプAMP
1の出力電圧Voを入力し、ハイレベルであるときには
前記基準電圧Vrefを入力する。
【0012】図17は、上述のアナログ信号処理回路2
の動作を説明するためのタイミングチャートである。所
定期間毎に、リフレッシュ期間と信号処理期間とが繰返
される。リフレッシュ期間の開始の時刻t1において、
前記制御信号φ1,φ2はそれぞれ図17(a)および
図17(b)で示すようにハイレベルとされ、スイッチ
S1が導通してアンプAMP1がホロア結合となるとと
もに、キャパシタCi,Cfにはそれぞれ前記基準レベ
ルVrefが与えられる。
【0013】これによって、前記ノードn1には、前記
アンプAMP1の入力オフセット電圧に対応した電荷が
蓄積されることになる。その後、時刻t2において、ま
ず制御信号φ1がローレベルとされてスイッチS1が遮
断した後、時刻t3において制御信号φ2がローレベル
とされて、入力キャパシタCiにはスイッチS2を介し
て入力信号Vinが入力され、帰還キャパシタCfには
スイッチS3を介してアンプAMP1の出力電圧Voが
入力される。これによって、時刻t3以降では信号処理
動作が可能となる。
【0014】こうしてリフレッシュ動作が終了すると、
前記式3における電荷量Qが0となり、該アナログ信号
処理回路2の静的な入出力特性は、下式のようになる。
【0015】 Vout−Vref=−(Ci/Cf)(Vin−Vref) …(4) しかしながら、入力信号Vinの直流成分および処理す
べき信号成分に比べて充分低い周波数の成分から成る背
景電圧が、前記基準レベルVrefと一致する場合には
前記処理すべき信号成分のみの信号処理が行われるけれ
ども、一般には前記背景電圧は一定ではないために実用
上の障害となっていた。
【0016】また、前記スイッチS1はたとえばMOS
FETから構成され、このため該スイッチS1が遮断し
た状態であっても微小なリーク電流が流れ、ノードn1
の電荷量を長時間に亘って一定に保つことは不可能であ
る。したがって、前記時刻t1〜t3で示すようなリフ
レッシュ動作を頻繁に行う必要があり、かつそのリフレ
ッシュ期間には信号処理を行うことができなくなるため
に、該アナログ信号処理回路2を用いる具体的な回路
は、たとえば図18で示すようになる。
【0017】図18は、CDMA(Code Divi
sion Multiple Access:符号分割
多元接続)方式のデジタル自動車・携帯電話装置の復調
回路に用いられるマッチドフィルタ11の電気的構成を
示すブロック図である。前記CDMA方式では、各事業
者毎等に予め定められているPN符号によって信号が拡
散されている。受信側では、受信信号を、縦続接続され
た多段のサンプルホールド回路SH1,SH2,…,S
Hm(総称するときには参照符号SHで示す)によって
予め定めるサンプリング周期毎に順次サンプリングし、
各サンプルホールド回路SHで保持されている電圧に前
記PN符号に対応した固有の係数が乗算された後、加減
算される。こうして、前記受信信号のPN符号と、この
マッチドフィルタ11のPN符号とが一致したときに、
前記加減算の出力がピーク値となって、信号の逆拡散が
行われる。
【0018】このマッチドフィルタ11には、積和演算
を行う2つの加減算回路12,13と、これらの加減算
回路12,13を切換えるためのマルチプレクサ14,
15とが設けられている。前記サンプルホールド回路S
Hで保持されている電圧は、マルチプレクサ14によっ
て、加減算回路12または13のいずれかに選択的に出
力される。また、前記PN符号はマルチプレクサ14に
与えられており、このマルチプレクサ14によって、前
記PN符号が+1のビットは加減算回路12または13
の加算器に与えられ、−1のビットは減算器に与えられ
る。マルチプレクサ15は、前記マルチプレクサ14に
よってサンプルホールド回路SHからの出力電圧および
PN符号が与えられている加減算回路12または13か
らの出力電圧を出力する。こうして、加減算回路12ま
たは13のいずれか一方が積和演算を行っている期間中
に、いずれか他方がアナログ信号処理回路2のリフレッ
シュ動作を行うように構成されている。
【0019】図19は、上記加減算回路12,13の具
体的構成を示すブロック図である。この加減算回路1
2,13は、前記各サンプルホールド回路SHからの並
列入力が与えられる2つの積和演算器16,17と、反
転器18と、加算器19とを備えて構成されている。積
和演算器16は、前記PN符号に対応した正係数の入力
キャパシタCi+ 1,Ci+ 2,…, Ci+ m(総称す
るときには参照符Ci+で示す)を備えて構成されてお
り、正のPN符号に対応する各サンプルホールド回路S
Hiからの出力電圧に、前記各入力キャパシタCi+
帰還キャパシタCf+ との静電容量比Ci+ /Cf+
係数として乗算し、その乗算結果を相互に加算して出力
するものである。
【0020】これに対して、積和演算器17は、負係数
に対応した入力キャパシタCi- 1,Ci- 2,…,C
- m(総称するときには参照符Ci- で示す)を備え
て構成されており、負のPN符号に対応する各サンプル
ホールド回路SHiからの並列入力にそれぞれ負係数C
- /Cf- を乗算し、その乗算結果を加算して出力す
るものである。前記入力キャパシタCi+ とCi-
は、前記PN符号に対応して、相互に対応する入力キャ
パシタ、たとえばCi+ 1およびCi- 1のうち、いず
れか一方にサンプルホールド回路SHiの出力が与えら
れ、他方に基準電圧が与えられる。
【0021】積和演算器17からの出力は、反転器18
で反転された後、加算器19において前記積和演算器1
6からの出力と加算され、マルチプレクサ15へ出力さ
れる。この加減算回路12,13において、前記アナロ
グ信号処理回路2は、各積和演算器16,17、反転器
18および加算器19に、信号処理用に設けられてい
る。したがって、マッチドフィルタ11では、前記加減
算回路12と加減算回路13とのそれぞれに含まれるア
ナログ信号処理回路2のリフレッシュ動作のために、前
述のようにマルチプレクサ14,15によって、これら
の加減算回路12,13が相互に切換えて使用される。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】上述のようにアナログ
信号処理回路2では、ノードn1の電荷量を制御するた
めにリフレッシュ動作が必要であり、このようなリフレ
ッシュ動作を本来の信号処理動作と時分割で行うと、信
号処理を中断しないようにもう1つ予備の回路が必要と
なる。したがって、回路規模および電力消費が増大して
しまうとともに、それらの切換によるノイズが発生し、
かつクロック発生回路等の切換制御のための構成が必要
になるという問題がある。
【0023】本発明の目的は、信号処理を行いつつ、前
記電荷量Q等による誤差要因を補償して、出力信号の直
流レベルを、常に所望とするレベルに適応させることが
できるアナログ信号処理装置およびそれを用いる相関演
算器を提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係るア
ナログ信号処理装置は、アンプと入力キャパシタと帰還
キャパシタとを備える容量結合型のアナログ信号処理装
置において、前記アンプからの出力信号と、該アンプの
動作点電圧との差の処理対象信号とは無関係な低周波成
分のみを該アンプの入力端に負帰還し、前記出力信号の
直流レベルを前記動作点電圧に適応させる適応制御回路
を含むことを特徴とする。
【0025】上記の構成によれば、適応制御回路は、入
力信号の処理すべき対象信号成分とは周波数帯域が充分
に離間した低周波で、適応制御のための信号を負帰還す
る。
【0026】したがって、フローティングノードである
アンプの入力端における電荷量の製造段階でのバラツキ
や、信号処理に伴うホットエレクトロンの前記入力端へ
の侵入などによって、該入力端の電荷量に変動が生じ
て、直流および低周波成分から成る入力信号の背景電圧
に変動が生じても、また入力信号の入力基準レベル、す
なわち平均値が、該アナログ信号処理装置の入力基準レ
ベルとずれが生じていても、出力信号の直流レベルを動
作点電圧に保持して、正確な信号処理を行うことができ
る。また、このようなアナログ信号処理装置が複数チャ
ネル並列に設けられているような場合には、各チャネル
間の入力基準レベルのずれを補償することができる。
【0027】このようにして、入力信号の処理を停止す
ることなく、該処理を継続したまま、処理すべき信号成
分に影響を与えることのない、充分に周波数帯域の離間
した適応制御信号によって、入力信号の背景電圧および
入力基準レベルのずれを補償することができる。これに
よって、前記補償のための予備の回路を設ける必要がな
く、回路面積および電力消費を縮小することができると
ともに、そのような予備の回路への切換えに伴うノイズ
の発生などの不具合を生じることもない。
【0028】また、請求項2の発明に係るアナログ信号
処理装置では、前記適応制御回路は、前記帰還キャパシ
タの静電容量との積値が10-4以上となるような高抵抗
であることを特徴とする。
【0029】上記の構成によれば、たとえば帰還キャパ
シタの静電容量がpF(10-12 )オーダであるときに
は、帰還抵抗は108 Ω以上となり、これによって1/
(2π・Rf・Cf)で表される適応制御回路の遮断周
波数が1.5kHz以下となり、たとえば数百MHz程
度の前記処理すべき信号成分に対して、適応制御信号の
周波数帯域を充分に離間することができ、前記処理すべ
き対象信号成分に何ら影響を与えることなく、前記入力
信号の背景電圧の変化および入力基準レベルのずれを補
償することができる。
【0030】さらにまた、請求項3の発明に係るアナロ
グ信号処理装置は、アンプと入力キャパシタと帰還キャ
パシタとを備える容量結合型のアナログ信号処理装置に
おいて、前記アンプからの出力信号と、予め定める基準
レベルとの差の処理対象信号とは無関係な低周波成分の
みを該アンプの入力端に負帰還し、前記出力信号の直流
レベルを前記基準レベルに適応させる適応制御回路を含
むことを特徴とする。
【0031】上記の構成によれば、適応制御回路は、入
力信号の処理すべき対象信号成分とは周波数帯域が充分
に離間した低周波で、適応制御のための信号を負帰還す
る。
【0032】したがって、入力信号の処理を停止するこ
となく、該処理を継続したまま、処理すべき信号成分に
影響を与えることのない、充分に周波数帯域の離間した
適応制御信号によって、入力信号の背景電圧および入力
基準レベルのずれを補償することができる。これによっ
て、前記補償のための予備の回路を設ける必要がなく、
回路面積および電力消費を縮小することができるととも
に、そのような予備の回路への切換えに伴うノイズの発
生などの不具合を生じることもない。
【0033】また、アンプの動作点電圧は、入力オフセ
ット電圧の存在によって固有の値になるのに対して、適
応制御回路による低周波成分の負帰還制御によって、こ
の入力オフセット電圧をも補償して、出力信号の直流レ
ベルを所望とする基準レベルに適応させることができ
る。したがって、該アナログ信号処理装置が複数チャネ
ル並列に設けられるような場合にも、各アナログ信号処
理装置からの出力信号の直流レベルを相互に一致させる
ことができ、その後の各出力信号間の大小判定等を高精
度に行うことができる。
【0034】また、請求項4の発明に係るアナログ信号
処理装置では、前記適応制御回路は、前記出力信号と基
準レベルとの差に対応した電圧を発生する比較器と、該
比較器の出力を前記アンプの入力端に負帰還する帰還抵
抗とを備え、前記比較器のゲインおよび帰還抵抗の抵抗
値は、適応制御信号がユニティゲインとなる周波数での
前記アンプへの入力信号に対する該適応制御信号の位相
遅れが180°未満となるように選ばれることを特徴と
する。
【0035】上記の構成によれば、基本的には、比較器
のゲインと適応制御信号の遮断周波数との積値が、アン
プおよび比較器のポールのうち、周波数が小さい方のポ
ールの周波数未満とされる。したがって、アンプの出力
信号の低周波成分を所望とするゲインで前記アンプの入
力端へ負帰還する適応制御回路を挿入しても、前記適応
制御信号の入力信号に対する位相遅れが180°未満で
あるので、該適応制御回路の挿入によって発振が生じる
ことはない。
【0036】さらにまた、請求項5の発明に係るアナロ
グ信号処理装置は、前記比較器における前記出力信号の
入力端に介在され、前記入力端に前記出力信号と前記基
準レベルとを選択的に入力することができる第1のスイ
ッチング手段と、前記比較器における前記基準レベルの
入力端に介在される入力結合キャパシタと、前記比較器
の出力端と前記基準レベルの入力端とをホロア結合する
ことができる第2のスイッチング手段とをさらに備える
ことを特徴とする。
【0037】上記の構成によれば、適応制御回路自身の
リフレッシュ動作時には、比較器の出力信号の入力端へ
は第1のスイッチング手段を介して前記基準レベルが入
力されており、また該比較器の出力端と基準レベルの入
力端とは第2のスイッチング手段によってホロア結合さ
れている。したがって、該比較器の出力端と基準レベル
の入力端とは同電位となり、該基準レベルの入力端に介
在され、前記基準レベルが与えられている入力結合キャ
パシタの端子間には、比較器の入力オフセット電圧に対
応した電位差が生じ、該入力結合キャパシタには前記入
力オフセット電圧に対応した電荷が蓄積されることにな
る。
【0038】一方、通常の信号処理時には、比較器の出
力信号の入力端へは第1のスイッチング手段を介して前
記アンプの出力信号が入力されており、また基準レベル
の入力端には入力結合キャパシタを介して基準レベルが
入力される。さらにまた、該比較器の出力端は、帰還抵
抗を介してアンプの入力端に接続されている。
【0039】したがって、この信号処理時には、比較器
に入力される前記基準レベルは、入力結合キャパシタに
よって、該比較器の入力オフセット電圧分だけシフトさ
れて入力されることになり、該比較器の入力オフセット
電圧の補償を行うことができる。
【0040】また、請求項6の発明に係るアナログ信号
処理装置は、前記比較器に関連して、ゲイン設定用の帰
還回路を設けることを特徴とする。
【0041】上記の構成によれば、前記比較器を帰還な
しで用いると、適応制御信号のゲインが大きくなって、
処理すべき信号帯域と背景信号帯域との周波数によって
は、発振を抑えることができる安定条件を満たすことが
できなくなってしまうことがあるのに対して、このよう
にさらに比較器に関してゲイン設定用の帰還回路を設け
ることによって、適応制御信号のゲインを制御して、発
振を確実に防止することができる。
【0042】さらにまた、請求項7の発明に係る相関演
算器は、請求項1ないし6のいずれかに記載のアナログ
信号処理装置を用い、前記入力キャパシタが相互に並列
に複数チャネルの各入力毎に設けられ、かつその静電容
量が予め定める係数に対応した値に形成されており、前
記各入力を対応する係数で積和演算することを特徴とす
る。
【0043】上記の構成によれば、たとえばアナログ入
力信号の所定周期毎のサンプリング信号が、各入力キャ
パシタにおいてそれぞれ係数が乗算されて入力され、前
記アンプによってその和を演算することによって、たと
えばデジタル自動車・携帯電話装置に用いられているC
DMA方式の復調回路において、自己のPN(Pseu
do Noise:疑似雑音)符号に対応した前記係数
で受信信号を積和演算し、その演算値がピーク値となる
ことによって前記PN符号の一致を検知し、同期を確立
するマッチドフィルタ等の相関演算器を実現することが
できる。
【0044】また、請求項8の発明に係るアナログ信号
処理装置は、請求項1または2に記載のアナログ信号処
理装置の出力の低域周波数成分を取り出すローパスフィ
ルタをさらに含み、該ローパスフィルタの出力と前記ア
ナログ信号処理装置の出力とを差動信号として用いるこ
とを特徴とする。
【0045】ローパスフィルタを備えていない構成で
は、出力信号の直流レベルがアンプの動作点電圧である
が、この動作点は、LSI製造上のプロセスのばらつき
により変動し、設計上の動作点と同じにならない。しか
しながら、上記の構成によれば、ローパスフィルタの遮
断周波数が、信号帯域を通過させないように十分小さい
値に選ばれる。このため、入力信号の背景電圧が一定で
ある場合は、ローパスフィルタの出力が一定値すなわち
アンプの動作点電圧となる。したがって、アナログ信号
処理装置の出力信号とローパスフィルタの出力との差
は、アンプの動作点電圧に関わらず、入力の信号成分に
対して入力キャパシタと帰還キャパシタとの静電容量比
を乗じた電圧になる。
【0046】さらにまた、請求項9の発明に係る相関演
算器は、請求項8に記載のアナログ信号処理装置を用
い、前記入力キャパシタが相互に並列に複数チャネルの
各入力毎に設けられ、かつその静電容量が予め定める係
数に対応した値に形成されており、前記各入力を対応す
る係数で積和演算することを特徴とする。
【0047】上記の構成によれば、請求項7に記載の相
関演算器と同様に、CDMA方式の復調回路において、
自己のPN符号に対応した前記係数で受信信号を積和演
算し、その演算値がピーク値となることによって前記P
N符号の一致を検知し、同期を確立するマッチドフィル
タ等の相関演算器を実現することができる。さらに、ロ
ーパスフィルタを含んだ請求項8に記載のアナログ信号
処理装置を用いることにより、相関演算器は、相関演算
器に用いられる複数のアナログ信号処理装置の動作点電
圧のばらつきの影響を受けずに動作することができる。
【0048】
【発明の実施の形態】本発明の実施の第1の形態につい
て、図1ないし図6に基づいて説明すれば以下のとおり
である。
【0049】図1は、本発明の原理を説明するためのブ
ロック図である。信号処理系において、信号処理器21
には、参照符α1で示すような処理すべき対象信号に、
該対象信号よりも充分低い周波数で、参照符α2で示す
背景信号が重畳された、参照符α3で示すような信号
が、入力信号Vinとして入力される。信号処理器21
は、前記入力信号Vinを信号処理(この図1の例では
反転増幅)して、参照符α4で示すような出力信号Vo
utを出力する。
【0050】前記出力信号Voutは、本発明に従う適
応制御系に取込まれ、比較器22に入力される。この比
較器22は、前記出力信号Voutと、予め定める出力
信号の基準レベルVthとを比較し、前記信号処理器2
1の特性を入力信号Vinに適応させるための出力を導
出する。前記比較器22からの出力は、ローパスフィル
タ23によって、前記背景信号に対応した低周波成分が
濾波されて、適応制御信号として前記信号処理器21に
負帰還される。
【0051】図2で示すように、前記対象信号の周波数
帯域は、たとえば数百kHz〜数百MHzであり、これ
に対して前記適応制御信号は、前記背景信号に対応し
て、直流〜1kHz程度である。こうして、処理すべき
対象信号の周波数帯域とは充分に離間した周波数帯域の
適応制御信号を用いることによって、信号処理を行いつ
つ、前記背景信号の変化に対して信号処理器21を適応
させ、出力信号Voutの直流レベルを安定させること
ができる。
【0052】図3は、具体的な本発明の実施の第1の形
態のアナログ信号処理回路31の電気回路図である。こ
のアナログ信号処理回路31は、アンプAMP1と、入
力キャパシタCiと、帰還キャパシタCfとを備える容
量結合型のアナログ信号処理回路に、適応制御用の高抵
抗Rbが設けられて構成されている。したがって、アン
プAMP1、入力キャパシタCiおよび帰還キャパシタ
Cfが、前記信号処理器21から成る信号処理系に対応
し、帰還キャパシタCfおよび高抵抗Rbが、前記比較
器22およびローパスフィルタ23から成る適応制御系
に対応している。
【0053】前記高抵抗Rbの抵抗値は、該高抵抗Rb
の抵抗値および帰還キャパシタCfの静電容量をそれぞ
れ参照符と同一に示すとき、ローパスフィルタ23の遮
断周波数fcが、 fc=1/(2πRbCf) …(5) で定義されることから、本発明では、Rb,Cfの積値
が10-4以上となるように選ばれる。
【0054】したがって、たとえばCf=0.2pFす
なわち2×10-13 Fであるときには、上記関係からR
b=500MΩ以上に選ばれ、これによって前記式5で
示す遮断周波数fcは、 fc=1/(2×π×5×108 ×2×10-13 )≒160Hz …(6) となる。
【0055】このように構成されるアナログ信号処理回
路31において、アンプAMP1のゲインを−G1(G
1>0)とし、またその動作点電圧をVr1とすると
き、このアンプAMP1の入出力特性は、 Vout−Vr1=−G1(Vn1−Vr1) …(7) で表される。ただし、Vn1はノードn1の電位であ
る。
【0056】今、入力信号Vinに含まれる前記対象信
号の周期と比較して、キャパシタCi,Cfと高抵抗R
bとによって決定される時定数が充分大きければ、該ア
ナログ信号処理回路31における高抵抗Rbの影響は無
視することができる。この場合、静特性を考えると、V
n1=Voutである。
【0057】したがって、このアナログ信号処理回路3
1が安定であれば、入力信号Vinの背景信号レベルに
関わらず、出力信号Voutの直流レベルは動作点電圧
Vr1に収束する。このとき、この図3で示す回路の前
記対象信号の周波数帯域での入出力特性は、 Vout−Vr1=−(Ci/Cf)(Vin−VinDC) …(8) となる。ここで、VinDCは、入力信号Vinの背景信
号レベルである。すなわちこのアナログ信号処理回路3
1は、入力信号Vin中の対象信号成分を、−(Ci/
Cf)倍に変換する乗算器として動作することが理解さ
れる。
【0058】このように、帰還キャパシタCfと並列に
高抵抗Rbを介在することによって、対象信号とは充分
に周波数帯域の離間した適応制御信号を負帰還し、アン
プAMP1の入力端であるノードn1の電荷量を制御し
て、出力信号Voutの直流レベルを動作点電圧Vr1
に保持することができる。こうして、信号処理を継続し
つつ、入力信号Vinにおける直流および低周波成分か
ら成る背景信号の変動に適応することができる。
【0059】したがって、信号処理に全く影響なく、従
来技術で述べたリフレッシュ動作を並行して行うことが
でき、該アナログ信号処理回路31が用いられる前記マ
ッチドフィルタ等の装置において、予備の回路を使用す
る必要はなく、回路規模および電力消費を削減すること
ができるとともに、切換に伴うノイズが発生するような
こともなく、かつクロック発生回路等の煩雑な切換のた
めの構成もなくすことができる。
【0060】本件発明者の試算によれば、回路面積およ
び電力消費を30%程度削減することができる。
【0061】続いて、本実施の形態の変形例について説
明する。
【0062】図4は、本変形例に係る具体的なアナログ
信号処理回路32の電気回路図である。図3のアナログ
信号処理回路31では、出力信号Voutの直流レベル
は、アンプAMP1の動作点電圧Vr1であった。設計
上の動作点をVrとすれば、Vr1は、LSI製造上の
プロセスのばらつきにより変動し、Vrと同じにならな
い。この差異が出力信号Voutを評価する上で重要に
なる。アナログ信号処理回路32は、図3のアナログ信
号処理回路31と、その出力から低周波数成分を取り出
すための、抵抗RLおよびキャパシタCLからなるロー
パスフィルタ33とを備えて構成されている。
【0063】ローパスフィルタ33の遮断周波数は、信
号帯域を通過させないように十分小さい値に選ばれる。
入力信号の背景電圧が一定である場合は、ローパスフィ
ルタ33の出力Vaは一定値すなわちVr1となる。し
たがって、アナログ信号処理回路31の出力信号Vou
tとローパスフィルタ33の出力Vaとの差(Vout
−Va)は、アンプAMP1の動作点電圧に関わらず、
入力の信号成分に対して−Ci/Cfを乗じた電圧にな
る。
【0064】図5は、図4のアナログ信号処理回路32
をマッチドフィルタ71に適用した構成を示すブロック
図である。このマッチドフィルタ71において、アナロ
グ入力信号は、サンプルホールド回路SH1,SH2,
…,SHm(総称するときには参照符号SHで示す)に
よって順次サンプリングされていく。マルチプレクサ7
2は、PN符号系列により制御されて、各サンプルホー
ルド回路SHの出力を加減算器73の加算側または減算
側に与える。
【0065】加減算器73は、図6に示すように、各サ
ンプルホールド回路SHからマルチプレクサ72を介し
て入力が与えられる2つの積和演算器74,75と、反
転器76と、加算器77とを備えて構成されている。積
和演算器75は、PN符号に対応した正係数の入力キャ
パシタCi+ 1,Ci+ 2,…, Ci+ m(総称すると
きには参照符Ci+ で示す)を備えて構成されている。
この積和演算器74は、正のPN符号に対応する各サン
プルホールド回路SHiからの出力電圧に、各入力キャ
パシタCi+ と帰還キャパシタCf+ との静電容量比C
+ /Cf+ を係数として乗算し、その乗算結果を相互
に加算して出力する。
【0066】これに対して、積和演算器75は、負係数
に対応した入力キャパシタCi- 1,Ci- 2,…,C
- m(総称するときには参照符Ci- で示す)を備え
て構成されている。この積和演算器75は、負のPN符
号に対応した各サンプルホールド回路SHiからの並列
入力にそれぞれ負係数Ci- /Cf- を乗算し、その乗
算結果を加算して出力する。入力キャパシタCi+ とC
- とは、PN符号に対応して、相互に対応する入力キ
ャパシタ、たとえばCi+ 1およびCi- 1のうち、い
ずれか一方にサンプルホールド回路SHiの出力が与え
られ、他方に基準電圧が与えられる。
【0067】積和演算器75からの出力は、反転器76
で反転された後、加算器77において前記積和演算器7
4からの出力と加算される。加算器77の出力Vout
と、それをローパスフィルタ33を介して得られる出力
Vaとを差動信号として用いることにより、加減算器7
3は、積和演算器74,75と、反転器76と、加算器
77とをそれぞれ構成するアナログ信号処理回路32の
動作点電圧のばらつきの影響を受けずに動作することが
できる。
【0068】また、マッチドフィルタ71では、加減算
器73に含まれるアナログ信号処理回路32が、前記ア
ナログ信号処理回路31と同様、リフレッシュ動作と信
号処理動作とを並行して行うことができるので、前述の
マッチドフィルタ11(図18参照)に必要であった加
減算回路13およびマルチプレクサ15が不要になる。
【0069】これによって、たとえば、デジタル自動車
・携帯電話装置に用いられているCDMA方式の復調回
路において、自己のPN符号に対応した前記係数で受信
信号を積和演算し、その演算値がピーク値となることに
よって前記PN符号の一致を検知し、同期を確立するマ
ッチドフィルタ等の相関演算器を実現することができ
る。
【0070】なお、加減算器73には、アナログ信号処
理回路32だけでなく、後述のアナログ信号処理回路4
1,51および61や、前述のアナログ信号処理回路3
1にも適用できる。
【0071】本発明の実施の第2の形態について、図7
ないし図12に基づいて説明すれば以下のとおりであ
る。
【0072】図7は、本発明の実施の第2の形態のアナ
ログ信号処理回路41の電気回路図である。このアナロ
グ信号処理回路41において、前述のアナログ信号処理
回路31に類似し対応する部分には、同一の参照符号を
付してその説明を省略する。
【0073】このアナログ信号処理回路41は、アンプ
AMP1を反転アンプとし、キャパシタCi,Cfを備
えるアナログ電圧乗算器を想定している。注目すべきは
このアナログ信号処理回路41では、前記比較器22に
対応するアンプAMP2が設けられていることである。
このアンプAMP2は、差動増幅器であり、前記出力信
号Voutが非反転入力端子に入力され、予め定める基
準レベルVrefが反転入力端子に入力され、前記出力
信号Voutの直流レベルの前記基準レベルVrefに
対するずれに対応した適応制御信号を、前記高抵抗Rb
を介してノードn1に負帰還する。
【0074】上述のように構成されるアナログ信号処理
回路41において、アンプAMP1の入出力特性は、前
記式8で表される。また、前記キャパシタCi,Cfと
高抵抗Rbとで決定される時定数が充分大きく、高抵抗
Rbの影響を無視できるものとする。さらにまた、アン
プAMP2のゲインをG2(G2>0)とし、その動作
点電圧をVr2とし、該アンプAMP2の反転入力端で
あるノードn2の電位をVn2とし、出力端であるノー
ドn3の電位をVn3とするとき、該アンプAMP2の
入出力特性は、 Vn3−Vr2=G2(Vn2−Vr2) …(9) で表すことができる。
【0075】ここで、アンプAMP2の入力オフセット
電圧をVoff2とすると、 Vr2=Vref+Voff2 …(10) である。静特性を考えると、Vn1=Vn3である。こ
れらを前記式7および式9に代入し、Vn1を消去する
と、次式が得られる。なお、最右辺は、G1,G2が充
分大きい、たとえば100以上として近似したものであ
る。
【0076】
【数1】
【0077】したがって、このアナログ信号処理回路4
1が安定であれば、入力信号Vinの背景信号レベルV
inDCに係わらず、出力信号Voutの直流レベルは一
定の値に収束する。このときの対象信号周波数帯域での
入出力特性は、 Vout−Vr2=−(Ci/Cf)(Vin−VinDC) …(12) となる。
【0078】したがって、このアナログ信号処理回路4
1は、入力信号Vin中の対象信号成分を−(Ci/C
f)倍に変換する乗算器として働くことが理解される。
さらに、アンプAMP2の入力オフセット電圧Voff
2が充分に小さければ、前記式12は、 Vout−Vref=−(Ci/Cf)(Vin−VinDC) …(13) と近似することができ、出力信号Voutの直流レベル
は常に基準レベルVrefに適応することが理解され
る。
【0079】以下に、前記適応制御系にアンプAMP2
を用いることに対する安定条件を検討する。前記図7で
示す回路から、前記出力信号Voutに含まれる低周波
の背景信号の帰還系を取出し、アンプAMP1の出力端
であるノードAにおいて、ノードA,Aaとして入出力
に分断した回路を図8に示す。
【0080】アンプAMP2の出力端であるノードn3
の電位Vn3からノードAの電位への変換特性は、高抵
抗Rbと帰還キャパシタCfとで構成される一次型RC
ローパスフィルタの特性と符号を除いて同等である。こ
のローパスフィルタの遮断周波数をf2とすると、 f2=1/(2πRbCf) …(14) である。
【0081】したがって、ノードAに入力された信号
は、直流ゲイン−G2のアンプAMP2および遮断周波
数f2のRCフィルタを通過してノードAaに出力さ
れ、帰還線Lfを介して前記ノードAに帰還されること
になる。このような帰還回路が安定であるためには、ユ
ニティゲイン(値が1(0dB)であるゲイン)となる
周波数での位相遅れが180°未満であることが必要で
ある。この条件は、図8における回路のパラメータが、 f2・G2<AMP1とAMP2とのポールの最小値 …(15) を成立させるように選択されることによって満足され
る。
【0082】すなわち、回路全体の周波数特性が図9に
おいて参照符β1で示されるとき、参照符β2で示すよ
うに、ユニティゲインでの周波数が、アンプAMP1と
AMP2とのポールp1およびp2のうち小さい方のポ
ールの周波数fpより小さくなるように、前記高抵抗R
bの抵抗値および帰還キャパシタCfの静電容量を選ぶ
ことによって遮断周波数f2をf2aに移動させる。な
お、実際の設計では、余裕を見て、前記式15は式16
となるように選ばれる。 3・f2・G2<AMP1とAMP2とのポールの最小値 …(16)
【0083】前記ポールp1は、たとえばアンプAMP
2のユニティゲイン周波数を80MHzとし、直流ゲイ
ンを60dBとするとき、 p1=80/60≒1,3MHz …(17) となる。
【0084】図10は、上述のように構成されたアナロ
グ信号処理回路41の動作を説明するための波形図であ
る。なお、回路パラメータは、Ci=Cf=0.2p
F、Rb=5GΩ、G1=1000、G2=200、V
DD=3V、Vref=1.5Vとしている。
【0085】図10では、動作を理解し易くするため
に、前記入力信号Vinの対象信号周波数を5kHzと
し、背景信号を周波数100Hzの正弦波とし、図10
(a)および図10(b)に、それぞれ入力信号Vin
と出力信号Voutとを表す。また、この図10におい
て参照符Wで示される期間を、図11に拡大して示す。
したがって、対象信号周波数と比較して充分に低い周波
数の背景信号の電圧レベル変動に適応して、出力信号V
outの直流レベルは常に設定した基準レベルVref
である1.5Vで安定していることが理解される。
【0086】また、図12は電源投入時の初期化動作を
表すものである。このアナログ信号処理回路41では、
ノードn1は高抵抗Rbを介してノードn3と接続され
ており、電源を接続していない状態では、ノードn3の
浮遊容量に蓄えられた電荷で決定されるノードn3の電
位によってノードn1とノードn3との間に電位差が生
じ、これによってノードn1の電荷量が変化する。
【0087】したがって、電源投入時には、図12
(b)で示すように、出力信号Voutの直流レベルは
基準レベルVrefである1.5Vからずれているけれ
ども、図12(a)で示すノードn1の電位の立上がり
に応じて、前記出力信号Voutの直流レベルが前記基
準レベルVrefである1.5Vに収束してゆく。なお
この図12(b)では、入力信号Vinは一定の直流電
圧としている。
【0088】このようにして、前記アナログ信号処理回
路31では、前記基準レベルVthに対応するレベルが
アンプAMP1の固有の動作点電圧Vr1であるのに対
して、このアナログ信号処理回路41では、前記基準レ
ベルVthを所望とする基準レベルVrefとすること
ができる。したがって、該アナログ信号処理回路41が
複数チャネル並列に用いられるような場合に、出力信号
Voutの直流レベルを所望とするレベルに相互に一致
させることができ、大小判定などのその後の信号処理を
高精度に行うことができる。
【0089】本発明の実施の第3の形態について、図1
3に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0090】図13は、本発明の実施の第3の形態のア
ナログ信号処理回路51の電気回路図である。なおこの
アナログ信号処理回路51において、前述のアナログ信
号処理回路41に類似し対応する部分には、同一の参照
符号を付してその説明を省略する。
【0091】注目すべきは、このアナログ信号処理回路
51では、アンプAMP2の反転入力端子へは前記基準
レベルVrefが入力結合キャパシタCbを介して入力
され、またアンプAMP2の反転入力端子と出力端子と
の間をホロア結合することができるスイッチSW1と、
アンプAMP2の非反転端子へ前記出力信号Voutと
前記基準レベルVrefとを選択的に入力することがで
きるスイッチSW2とが設けられていることである。
【0092】アンプAMP2は、その入力段がMOSF
ETから成り、反転入力端子側のノードn4は、前記ス
イッチSW1が遮断している状態では極めて高いインピ
ーダンスを有する。前記スイッチSW1のための制御信
号Φ1がハイレベルとされて、該スイッチSW1が導通
し、スイッチSW2のための制御信号Φ2がハイレベル
とされて、アンプAMP2の非反転入力端子側のノード
n3に基準レベルVrefが与えられるときには、該ア
ンプAMP2の入力オフセット電圧をVoff2とする
と、ノードn4にはCb・Voff2の電荷が蓄積され
る。
【0093】その後、前記制御信号Φ1をローレベルと
して、スイッチSW1を遮断することによってノードn
4の電荷を保存し、続いて制御信号Φ2をローレベルと
して、スイッチSW2を介してアンプAMP2へ前記出
力信号Voutを入力し、帰還系を動作状態とすると、
ノードn4に蓄積されていた電荷Cb・Voff2によ
って、前記基準レベルVrefが前記オフセット電圧V
off2だけシフトされて、アンプAMP2へ入力され
ることになる。
【0094】こうして、前記アナログ信号処理回路41
では、出力信号Voutの直流レベルが前記基準レベル
VrefからアンプAMP2の入力オフセット電圧Vo
ff2だけずれてしまうのに対して、このアナログ信号
処理回路51では、前記入力オフセット電圧Voff2
を補償して、さらに高精度に信号処理を行うことができ
る。
【0095】なお、従来技術でも述べているとおり、ス
イッチSW1を遮断していても、そのリーク電流によっ
て前記ノードn4の電荷量を長時間に亘って一定に保持
することは困難であるけれども、周期的に、たとえば1
kHz、すなわち1msec毎に、数μsecの期間で
補償動作を終了することができ、該アンプAMP2によ
る帰還系の時定数である前記10-4secに比べて極め
て短時間であり、適応制御動作に影響を与えることはな
い。したがって、信号処理動作を行いつつ、オフセット
電圧補償動作を行い、常に所望とする基準レベルVre
fへの適応制御動作を行うことができる。
【0096】本発明の実施の第4の形態について、図1
4に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0097】図14は、本発明の実施の第4の形態のア
ナログ信号処理回路61の電気回路図である。このアナ
ログ信号処理回路61において、前述のアナログ信号処
理回路51に類似し対応する部分には、同一の参照符号
を付してその説明を省略する。
【0098】注目すべきは、このアナログ信号処理回路
61では、前記アンプAMP2に関して、帰還キャパシ
タCcが設けられていることである。また、この帰還キ
ャパシタCcに蓄積された電荷を除去してリフレッシュ
させるために、前記制御信号Φ2に応答して動作するス
イッチSW3が設けられている。さらにまた、アンプA
MP2からの出力を反転するためのアンプAMP3と、
そのAMP3のゲインを決定するための入力キャパシタ
Cdおよび帰還キャパシタCeと、帰還キャパシタCe
のリフレッシュ用のスイッチSW4,SW5とが設けら
れている。
【0099】前記制御信号Φ1,Φ2がハイレベルとな
ると、アンプAMP2,AMP3の入力オフセット電圧
を補償するリフレッシュ動作が行われ、制御信号Φ1,
Φ2がローレベルである期間に、前記適応制御動作が行
われる。
【0100】このアナログ信号処理回路61において、
前記アンプAMP2,AMP3の入力オフセット電圧が
補償された状態で、ノードn2からノードn3への電圧
変換特性は、 Vn3−Vref=(Cd/Ce)・(Cd/Cc)・(Vn2−Vref) …(18) で与えられる。
【0101】したがって、静電容量Cb,Cc,Cd,
Ceを適宜選択することによって、適応制御系のゲイ
ン、すなわち前記G2を所望とする任意の値、たとえば
1〜数百に設定することができる。これによって、たと
えば前記アナログ信号処理回路51では、アンプAMP
2のゲインが60dB程度の大きな値になってしまい、
前記対象信号と前記背景信号との周波数帯域によって
は、前記式16を満足することが困難な場合が生じるの
に対して、このアナログ信号処理回路61では、そのよ
うな不具合も解消することができる。
【0102】なお、前記アンプAMP3は、アンプAM
P2からの出力の極性を反転する機能を有していれば良
く、したがって抵抗によって帰還が行われる差動アンプ
であっても良い。また、アンプAMP1は、インバータ
アンプに限らず、非反転入力端子に前記基準レベルVr
efが与えられる差動アンプ等の他のアンプであっても
よい。
【0103】
【発明の効果】請求項1の発明に係るアナログ信号処理
装置は、以上のように、適応制御回路によって、アンプ
からの出力信号と該アンプの動作点電圧との差のうち、
処理すべき対象信号成分と周波数帯域が充分に離間した
低周波成分を、前記アンプの入力端に適応制御信号とし
て負帰還する。
【0104】それゆえ、入力信号の処理を停止すること
なく、該処理を継続したままであっても、処理すべき対
象信号成分に影響を与えることなく、入力信号の背景電
圧および入力基準レベルのずれを補償することができ
る。これによって、前記補償のための予備の回路を設け
る必要がなく、回路面積および電力消費を縮小すること
ができるとともに、そのような予備の回路への切換に伴
うノイズの発生等の不具合を生じることもない。
【0105】また、請求項2の発明に係るアナログ信号
処理装置は、以上のように、前記適応制御回路を、帰還
キャパシタの静電容量との積値が10-4以上となるよう
な抵抗値の高抵抗で実現する。
【0106】それゆえ、適応制御回路の遮断周波数が処
理すべき対象信号成分の周波数に対して充分に離間した
値となり、処理すべき対象信号成分に何ら影響を与える
ことなく、入力信号の背景電圧の変化および入力基準レ
ベルのずれを補償することができる。
【0107】さらにまた、請求項3の発明に係るアナロ
グ信号処理装置は、以上のように、適応制御回路によっ
て、アンプからの出力信号と予め定める基準レベルとの
差のうち、処理すべき対象信号成分と周波数帯域が充分
に離間した低周波成分を、前記アンプの入力端に適応制
御信号として負帰還する。
【0108】それゆえ、入力信号の処理を停止すること
なく、該処理を継続したままであっても、処理すべき対
象信号成分に影響を与えることなく、入力信号の背景電
圧および入力基準レベルのずれを補償することができ
る。これによって、前記補償のための予備の回路を設け
る必要がなく、回路面積および電力消費を縮小すること
ができるとともに、そのような予備の回路への切換に伴
うノイズの発生等の不具合を生じることもない。
【0109】また、アンプの入力オフセット電圧をも補
償して、出力信号の直流レベルを所望とする基準レベル
に適応させることができ、該アナログ信号処理装置が複
数チャネル並列に設けられているような場合には、各ア
ナログ信号処理装置からの出力信号の直流レベルを相互
に一致させることができ、その後の各出力信号間の大小
判定等を高精度に行うことができる。
【0110】また、請求項4の発明に係るアナログ信号
処理装置は、以上のように、前記適応制御回路を比較器
と帰還抵抗とを備えて構成し、比較器のゲインおよび帰
還抵抗の抵抗値を、適応制御信号がユニティゲインとな
る周波数でのアンプへの入力信号に対する位相遅れが1
80°未満となるように選ぶ。
【0111】それゆえ、該適応制御回路を挿入しても、
発振が生じることはない。
【0112】さらにまた、請求項5の発明に係るアナロ
グ信号処理装置は、以上のように、適応制御回路におけ
る比較器の入力オフセット電圧補償のために、第1およ
び第2のスイッチング手段と、補償のための電荷を蓄積
することができる入力結合キャパシタとを有する。
【0113】それゆえ、通常の信号処理時には、前記ア
ンプからの出力信号は該比較器の入力オフセット電圧分
だけシフトされて入力されることになり、該比較器の入
力オフセット電圧の補償を行うことができる。
【0114】また、請求項6の発明に係るアナログ信号
処理装置は、以上のように、前記適応制御回路の比較器
に関しても、ゲイン設定用の帰還回路を有する。
【0115】それゆえ、適応制御信号のゲインを制御し
て、発振を確実に防止することができる。
【0116】さらにまた、請求項7の発明に係る相関演
算器は、以上のように、請求項1ないし6のいずれかに
記載のアナログ信号処理装置を用いて、複数チャネルの
各入力を予め定める係数で積和演算する。
【0117】それゆえ、該相関演算器をマッチドフィル
タ等の相関演算器に好適に用いることができる。
【0118】また、請求項8の発明に係るアナログ信号
処理装置は、以上のように、請求項1または2に記載の
アナログ信号処理装置において、前記アナログ信号処理
装置の出力の低域周波数成分を取り出すローパスフィル
タをさらに含み、該ローパスフィルタの出力と前記アナ
ログ信号処理装置の出力とを差動信号として用いる。
【0119】それゆえ、アナログ信号処理装置の出力信
号とローパスフィルタの出力との差を、アンプの動作点
電圧に関わらず、入力の信号成分に対して入力キャパシ
タと帰還キャパシタとの静電容量比を乗じた電圧にする
ことができる。
【0120】さらにまた、請求項9の発明に係る相関演
算器は、以上のように、請求項8に記載のアナログ信号
処理装置を用い、前記入力キャパシタが相互に並列に複
数チャネルの各入力毎に設けられ、かつその静電容量が
予め定める係数に対応した値に形成されており、前記各
入力を対応する係数で積和演算する。
【0121】それゆえ、請求項7に記載の相関演算器と
同様に、相関演算器をマッチドフィルタ等の相関演算器
に好適に用いることができるるとともに、複数のアナロ
グ信号処理装置の動作点電圧のばらつきの影響を受けず
に相関演算器を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明するためのブロック図であ
る。
【図2】本発明に従う信号処理装置の周波数スペクトラ
ムを説明するためのグラフである。
【図3】本発明の実施の第1の形態のアナログ信号処理
回路の電気回路図である。
【図4】第1の実施の形態の変形例に係るアナログ信号
処理回路の電気回路図である。
【図5】図4のアナログ信号処理回路が適用されるマッ
チドフィルタの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】マッチドフィルタにおいて図4のアナログ信号
処理回路が用いられる加減算回路の具体的構成を示す電
気回路図である。
【図7】本発明の実施の第2の形態のアナログ信号処理
回路の電気回路図である。
【図8】図7のアナログ信号処理回路における適応制御
系の特性を説明するための図である。
【図9】図7で示すアナログ信号処理回路の適応制御系
の設計条件を説明するための周波数特性を示すグラフで
ある。
【図10】図7で示すアナログ信号処理回路の適応制御
動作を説明するための波形図である。
【図11】図10の一部分を拡大して示す波形図であ
る。
【図12】図7で示すアナログ信号処理回路の電源投入
時の初期化動作を説明するための波形図である。
【図13】本発明の実施の第3の形態のアナログ信号処
理回路の電気回路図である。
【図14】本発明の実施の第4の形態のアナログ信号処
理回路の電気回路図である。
【図15】基本的なアナログ信号処理回路の電気回路図
である。
【図16】典型的な従来技術のアナログ信号処理回路の
電気回路図である。
【図17】図16で示すアナログ信号処理回路の動作を
説明するためのタイミングチャートである。
【図18】図16で示すアナログ信号処理回路が用いら
れるマッチドフィルタの電気的構成を示すブロック図で
ある。
【図19】前記マッチドフィルタにおけるアナログ信号
処理回路が用いられる加減算回路の具体的構成を示す電
気回路図である。
【符号の説明】
11 マッチドフィルタ(相関演算器) 12 加減算回路 13 加減算回路 14 マルチプレクサ 15 マルチプレクサ 16 積和演算器 17 積和演算器 18 反転器 19 加算器 21 信号処理器(アナログ信号処理装置) 22 比較器(適応制御回路) 23 ローパスフィルタ(適応制御回路) 31 アナログ信号処理回路(アナログ信号処理装
置) 33 ローパスフィルタ 41 アナログ信号処理回路(アナログ信号処理装
置) 51 アナログ信号処理回路(アナログ信号処理装
置) 61 アナログ信号処理回路(アナログ信号処理装
置) 72 マルチプレクサ 73 加減算回路 74 積和演算器 75 積和演算器 76 反転器 77 加算器 AMP1 アンプ AMP2 アンプ(比較器) AMP3 アンプ Ci 入力キャパシタ Cf 帰還キャパシタ Cb 入力結合キャパシタ Rb 高抵抗 SW1 スイッチ(第2のスイッチング手段) SW2 スイッチ(第1のスイッチング手段) SW3 スイッチ SW4 スイッチ SW5 スイッチ

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アンプと入力キャパシタと帰還キャパシタ
    とを備える容量結合型のアナログ信号処理装置におい
    て、 前記アンプからの出力信号と、該アンプの動作点電圧と
    の差の処理対象信号とは無関係な低周波成分のみを該ア
    ンプの入力端に負帰還し、前記出力信号の直流レベルを
    前記動作点電圧に適応させる適応制御回路を含むことを
    特徴とするアナログ信号処理装置。
  2. 【請求項2】前記適応制御回路は、前記帰還キャパシタ
    の静電容量との積値が10-4以上となるような高抵抗で
    あることを特徴とする請求項1に記載のアナログ信号処
    理装置。
  3. 【請求項3】アンプと入力キャパシタと帰還キャパシタ
    とを備える容量結合型のアナログ信号処理装置におい
    て、 前記アンプからの出力信号と、予め定める基準レベルと
    の差の処理対象信号とは無関係な低周波成分のみを該ア
    ンプの入力端に負帰還し、前記出力信号の直流レベルを
    前記基準レベルに適応させる適応制御回路を含むことを
    特徴とするアナログ信号処理装置。
  4. 【請求項4】前記適応制御回路は、前記出力信号と基準
    レベルとの差に対応した電圧を発生する比較器と、該比
    較器の出力を前記アンプの入力端に負帰還する帰還抵抗
    とを備え、 前記比較器のゲインおよび帰還抵抗の抵抗値は、適応制
    御信号がユニティゲインとなる周波数での前記アンプへ
    の入力信号に対する該適応制御信号の位相遅れが180
    °未満となるように選ばれることを特徴とする請求項3
    に記載のアナログ信号処理装置。
  5. 【請求項5】前記比較器における前記出力信号の入力端
    に介在され、前記入力端に前記出力信号と前記基準レベ
    ルとを選択的に入力することができる第1のスイッチン
    グ手段と、 前記比較器における前記基準レベルの入力端に介在され
    る入力結合キャパシタと、 前記比較器の出力端と前記基準レベルの入力端とをホロ
    ア結合することができる第2のスイッチング手段とをさ
    らに備えることを特徴とする請求項4に記載のアナログ
    信号処理装置。
  6. 【請求項6】前記比較器に関連して、ゲイン設定用の帰
    還回路を設けることを特徴とする請求項5に記載のアナ
    ログ信号処理装置。
  7. 【請求項7】請求項1ないし6のいずれかに記載のアナ
    ログ信号処理装置を用い、前記入力キャパシタが相互に
    並列に複数チャネルの各入力毎に設けられ、かつその静
    電容量が予め定める係数に対応した値に形成されてお
    り、前記各入力を対応する係数で積和演算することを特
    徴とする相関演算器。
  8. 【請求項8】前記アナログ信号処理装置の出力の低域周
    波数成分を取り出すローパスフィルタをさらに含み、該
    ローパスフィルタの出力と前記アナログ信号処理装置の
    出力とを差動信号として用いることを特徴とする請求項
    1または2に記載のアナログ信号処理装置。
  9. 【請求項9】請求項8に記載のアナログ信号処理装置を
    用い、前記入力キャパシタが相互に並列に複数チャネル
    の各入力毎に設けられ、かつその静電容量が予め定める
    係数に対応した値に形成されており、前記各入力を対応
    する係数で積和演算することを特徴とする相関演算器。
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