JP3507992B2 - 密封装置 - Google Patents
密封装置Info
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Description
合わせた密封装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来のこの種、2つのシール体を組み合
わせた密封装置としては、例えば実開平4−89892
号公報に示すようなものなどが知られている。 【0003】この公報の密封装置は、2つのシール体の
うちの一方のシール体にのみ他方のシール体に摺接する
複数のシールリップを備えた構成である。このうち、シ
ールリップ付きのシール体は、金属製の環体にゴムなど
の弾性体からなるシールリップを被着してなるが、シー
ルリップを持たないシール体は、金属製の環体のみから
なる。 【0004】特にシールリップを持たないシール体を構
成する環体の金属素材としては、一般的に、ステンレス
鋼が選択される。この環体の表面としては、一般的にほ
ぼ平滑な面とされる。 【0005】ところで、この種の密封装置では、潤滑剤
が存在する密封空間と、潤滑剤の存在しない外部空間と
の間を遮断するものであるが、密封空間に存在する潤滑
剤がシールリップとその摺接相手面との間に介入して、
シールリップの潤滑を行うようになっている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の密
封装置では、2つのシール体が軸方向や径方向に相対的
に変位すると、複数のシールリップによってその摺接相
手面から潤滑油膜がかきとられたり、シールリップと摺
接相手面に外部から泥水や塵埃などが侵入したりして、
比較的短期間のうちにシールリップとその摺接相手面と
の間で油膜切れを起こすことが指摘される。このような
油膜切れが起こると、シールリップが異常摩耗しやすく
なり、密封性が著しく低下することになる。 【0007】特に、複数あるシールリップのうち、密封
空間側よりも外部空間側に位置するシールリップほど、
油膜切れしやすい。但し、互いのシールリップ間にグリ
ースなどの潤滑剤を充填しておくことがあるが、これら
は経時的に外部へ流出したりあるいは固形化したりして
枯渇することになるため、枯渇後において比較的短期間
のうちに前述したような油膜切れを起こすことになる。 【0008】本発明は、上記事情に鑑み、シールリップ
の異常摩耗を起こしにくくして、長期にわたって密封性
を維持できるようにすることを課題としている。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明は、相対回転可能
に同心状に配置される二つの部材間に形成される環状空
間を密封するための密封装置であって、一方の部材側に
固定される第1シール体と、第1シール体より軸方向外
側に位置付けられて他方の部材側に固定される第2シー
ル体とを備え、かつ、少なくともいずれか一方のシール
体は、残り他方のシール体に摺接する二つまたは三つの
シールリップを備えており、残り他方のシール体は、ス
テンレス鋼製の環体からなり、当該シール体の少なくと
も上記シールリップに摺接する面部分に独立した球面状
の微小凹部を有する不働態膜が形成されているととも
に、各シールリップ間には潤滑剤が充填されており、該
潤滑剤が上記不働態膜の微小凹部に保持されている。 【0010】なお、前記シール体の不働態膜が複数の微
小凹部を有している。 【0011】 【作用】上記構成では、第2シール体を構成する環体に
形成してある不働態膜が、耐腐食性を有しているから、
シールリップの摺接相手面が荒れにくくなる。また、不
働態膜を、潤滑剤を保持しつつシールリップの摩耗を促
進しない程度の複数の微小凹部を有するものとした場
合、2つのシール体が軸方向や径方向に相対的に変位し
ても、第1シール体のシールリップによってそれの摺接
相手面である第2シール体の環体表面から潤滑油膜がか
きとられなくなる。 【0012】 【実施例】以下、本発明の詳細を図1ないし図5に示す
実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例
に係る密封装置の上半分の縦断面図である。図例の密封
装置1は、2つのシール体2、3からなり、相対回転可
能に同心状に配置される径方向内外の二つの部材4、5
間に形成される環状空間を密封するものである。 【0013】この密封装置1は、例えば図4に示すウォ
ーターポンプ軸受や図5に示す複列アンギュラ玉軸受な
どに用いられる。図4において、50はシリンダブロッ
ク、51はポンプ軸、52はウォーターポンプ軸受、5
3はウォーターポンプ軸受52の外輪である。図5にお
いて、60は複列アンギュラ玉軸受、61は内輪、62
は外輪、63は冠型保持器、64は玉である。つまり、
図1の内側部材4が図4ではポンプ軸51に、図5では
内輪61にそれぞれ相当し、また、図1の外側部材5が
図4ではウォーターポンプ軸受の外輪53に、図5では
外輪62にそれぞれ相当する。 【0014】第1シール体2は、金属製の環体21にゴ
ムなどの弾性体22を被着したものである。弾性体22
は、環体21の外側面全面を被覆して環体21の径方向
外周縁側を包むように被着されているとともに、環体2
1の径方向内周縁側において2つのラジアルシールリッ
プ23、24および1つのアキシャルシールリップ25
を一体的に形成している。この第1シール体2の外周縁
が外側部材5の周溝に係合されている。 【0015】第2シール体3は、金属製の環体のみから
なり、内側部材4に圧入外嵌される円筒部31と、円筒
部31の軸方向一端と連なって径方向外向きに延びる環
状板部32とを備える。この第2シール体3の全表面に
は、潤滑剤を保持しつつ第1シール体2の各シールリッ
プ23,24,25との摺接時にその摩耗が促進されな
いようにする複数の微小凹部(好ましくは穴径rが1μ
m〜3μm)を有した不働態膜33が形成されている。
この不働態膜33は、第2シール体3を例えばJIS規
格SUS304あるいはSUS430などのステンレス
鋼を素材とし、これをプレス成形で図示の形状とした
後、これを例えば高濃度硫酸や濃硝酸などのハロゲン系
以外の酸の溶液中で反応させることにより形成される。
一般に、この不働態膜33は、Fe(鉄)の不活性膜あ
るいは酸化皮膜と言われている。また、前述の不働態膜
33は、第2シール体3において第1シール体2の各シ
ールリップ23〜25が摺接する側の片側面の全面に形
成してもよいし、また、第2シール体3において第1シ
ール体2の各シールリップ23〜25が摺接する側の片
側面の一部に局部的に形成してもよい。 【0016】前述の第1シール体2が潤滑剤の存在する
密封空間X側に、第2シール体3が外部空間Y側にそれ
ぞれ配置される位置関係となるように、第1シール体2
は外側部材5に、また、第2シール体3は内側部材4に
それぞれ固定されている。しかも、このような取付状態
において、第1シール体2の2つのラジアルシールリッ
プ23、24が第2シール体3の円筒部31の外周面
に、また、第1シール体2の1つのアキシャルシールリ
ップ25が第2シール体3の環状板部32の内側面(密
封空間X側へ向く面)にそれぞれ摺接させられる。そし
て、図中左側の第1ラジアルシールリップ23は、密封
空間X側から外部空間Y側への潤滑油流出を阻止する接
触状態となるように、また、図中右側の第2ラジアルシ
ールリップ24およびアキシャルシールリップ25は、
外部空間Y側から密封空間X側への水分や塵埃などの異
物混入を阻止する接触状態となるようにそれぞれ設定さ
れている。 【0017】そして、第1ラジアルシールリップ23と
第2ラジアルシールリップ24との間や第2ラジアルシ
ールリップ24とアキシャルシールリップ25との間に
は、必要に応じてグリースなどの潤滑剤(図示、符号省
略)が充填される。この潤滑剤により、各シールリップ
23〜25が潤滑されることになるが、この潤滑剤が外
部へ流出したり固形化したりして枯渇した場合、潤滑剤
が、第2シール体3の円筒部31や環状板部32の不働
態膜33の微小凹部によって保持されるようになる。内
側部材4と外側部材5とが相対的に軸方向や径方向に変
位すると、各シールリップ23〜25が第2シール体3
の円筒部31や環状板部32の表面の不働態膜33上で
ひきずられるけれども、このとき、潤滑剤が不働態膜3
3の微小凹部に保持されているから、前記各シールリッ
プ23〜25によってかきとられることがない。このよ
うに各シールリップ23〜25間に充填してある潤滑剤
が枯渇しても、各シールリップ23〜25とそれの摺接
相手である円筒部31や環状板部32との間に残って潤
滑油膜を途切れなく形成されることになるから、ここの
潤滑性が良好となって各シールリップ23〜25が異常
摩耗するのを防止できる。 【0018】ところで、各シールリップ23〜25の間
にグリースなどの潤滑剤を充填しない場合であっても、
密封空間Xに存在する潤滑剤が各シールリップ23〜2
5と第2シール体3の円筒部31や環状板部32との間
に介入することで、この潤滑剤が、第2シール体3の円
筒部31や環状板部32の表面の不働態膜33に保持さ
れるようになるから、前述と同様に長期にわたって良好
な潤滑性を維持できるようになる。 【0019】上述した本発明の密封装置1を図4に示す
ウォーターポンプ軸受に使用する場合、ウォーターポン
プ内の不凍液にさらされるために、不凍液によって第2
シール体3の表面が腐食摩耗されやすいのであるが、本
発明の場合、この第2シール体3の全表面に不働態膜3
3を形成してあるので、前述のような腐食摩耗を防止す
る。また、自動車のホイール軸受とされる複列アンギュ
ラ玉軸受に本発明の密封装置1を使用する場合、路面に
散布される凍結防止剤を含む水分にさらされるけれど
も、凍結防止剤によって第2シール体3が腐食摩耗する
のを防止する。 【0020】なお、本発明は上記実施例のみに限定され
ず、例えば図2および図3に示すような構成の密封装置
にも本発明を適用できる。まず、図2の密封装置1Aに
おいて、図1に示す密封装置1と異なる点は、第2ラジ
アルシールリップ24Aの第2シール体3に対する接触
状態を図1に示す密封装置1のそれと逆向きにしている
ことと、第2シール体3Aの環状板部32Aの外周縁に
アキシャルシールリップ25Aを覆うような円筒部34
Aを設けていることである。この構造では、密封空間X
側からの潤滑剤の流出を2重のラジアルシールリップ2
3A、24Aで防止し、外部空間Y側からの異物侵入を
円筒部33Aとアキシャルシールリップ25Aとで防止
するようになっている。特に、円筒部33Aは、アキシ
ャルシールリップ25Aを外部に露出させずに隠蔽する
ことで、アキシャルシールリップ25Aとその摺接相手
面との間へ異物を近づけないようにしている。また、図
3の密封装置1Bは、2つのシール体2B、3Bのいず
れも、金属製の環体21B、31Bにそれぞれ2つずつ
シールリップ23B、24B、35B、36Bを被着し
た構造であり、各シール体2B、3Bの環体21B、3
1Bの全表面あるいは互いのシールリップ摺接面となる
片側面のみに不働態膜(図示、符号省略)が形成され
る。この構造では、密封空間X側の潤滑剤が外部空間Y
側へわずかに流出しやすいように各シールリップ23
B、24B、35B、36Bの接触状態が設定されてい
て、このわずかずつ流出する潤滑剤が両環体21B、3
1Bにおいて各シールリップ23B、24B、35B、
36Bが摺接する面の不働態膜に保持されることになる
から、不働態膜に保持される潤滑剤が半永久的に枯渇す
ることがなくなる。 【0021】 【発明の効果】以上のように本発明では、シールリップ
の摺接相手面を荒れにくくしているから、シールリップ
との摺接状態を長期にわたって安定に保つことができ
る。また、2つのシール体が軸方向や径方向に相対的に
変位したときに、第1シール体のシールリップによって
それの摺接相手面である第2シール体の環体表面から潤
滑油膜がかきとられないように工夫しているから、シー
ルリップとそれの摺接相手面との間に長期にわたって途
切れることなく潤滑油膜を形成できるようになり、その
結果としてシールリップが異常摩耗しにくくなって長期
にわたって密封性を維持できるようになる。
す縦断面図。 【図2】本発明の他の実施例に係る密封装置の上半分を
示す縦断面図。 【図3】本発明のさらに他の実施例に係る密封装置の上
半分を示す縦断面図。 【図4】自動車のウォーターポンプ軸受の部分切欠きの
側面図。 【図5】複列アンギュラ玉軸受の上半分を示す縦断面図 【符号の説明】 1 密封装置 2 第1シール体 23 第1ラジアルシールリップ 24 第2ラジアルシールリップ 25 アキシャルシールリップ 3 第2シール体 33 不働態膜 4 内側部材 5 外側部材
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 相対回転可能に同心状に配置される二つ
の部材間に形成される環状空間を密封するための密封装
置であって、 一方の部材側に固定される第1シール体と、第1シール
体より軸方向外側に位置付けられて他方の部材側に固定
される第2シール体とを備え、かつ、少なくともいずれ
か一方のシール体は、残り他方のシール体に摺接する二
つまたは三つのシールリップを備えており、残り他方の
シール体は、ステンレス鋼製の環体からなり、当該シー
ル体の少なくとも上記シールリップに摺接する面部分に
独立した球面状の微小凹部を有する不働態膜が形成され
ているとともに、各シールリップ間には潤滑剤が充填さ
れており、該潤滑剤が上記不働態膜の微小凹部に保持さ
れていることを特徴とする密封装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01229294A JP3507992B2 (ja) | 1994-02-04 | 1994-02-04 | 密封装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01229294A JP3507992B2 (ja) | 1994-02-04 | 1994-02-04 | 密封装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH07217663A JPH07217663A (ja) | 1995-08-15 |
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Family
ID=11801269
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP01229294A Expired - Fee Related JP3507992B2 (ja) | 1994-02-04 | 1994-02-04 | 密封装置 |
Country Status (1)
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Families Citing this family (4)
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JP6439262B2 (ja) * | 2014-03-19 | 2018-12-19 | 日本精工株式会社 | 転がり軸受 |
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JP2018084301A (ja) * | 2016-11-25 | 2018-05-31 | 内山工業株式会社 | オイルシール及びオイルシールの製造方法 |
-
1994
- 1994-02-04 JP JP01229294A patent/JP3507992B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH07217663A (ja) | 1995-08-15 |
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