JP2004263738A - 密封装置 - Google Patents

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Takeshi Kanzaki
剛 神前
Shinji Nagasawa
晋治 長澤
Kazunori Takeno
一記 武野
Koichi Mizunoya
弘一 水野谷
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Abstract

【課題】シールリップ6,8を有する密封装置1を過酷な耐泥水条件下で使用する場合であっても摺動トルクを低減させることができ、もってシールリップ6,8の耐久性を向上させることが可能な密封装置1を提供する。
【解決手段】相手部材4に摺動自在に密接するシールリップ6,8を有する密封装置1において、シールリップ6,8の相手部材4に対する接触面6a,8aに粗し加工部9,10を設けることにより、シールリップ6,8の潤滑性を高め、摩擦を低減させる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、密封装置に係り、更に詳しくは、シールリップを有する密封装置に関するものである。本発明の密封装置は例えばハブベアリングシールとして自動車関連分野に用いられ、または汎用機械等に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来から例えば特開平9−287619号公報に掲載されているように、相手部材に摺動自在に密接するシールリップを有する密封装置が知られており、この種の密封装置を過酷な耐泥水条件下で使用する場合には、シールリップの相手部材に対する接触面圧(シール面圧)を高く設定するのが一般的である。
【0003】
しかしながら、このようにシールリップの面圧を高く設定すると、これに伴って摺動トルクが増大するために、これがシールリップの早期摩耗やへたりの発生等の不具合を招いている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−287619号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の点に鑑みて、シールリップを有する密封装置を過酷な耐泥水条件下で使用する場合であっても摺動トルクを低減させることができ、もってシールリップの耐久性を向上させることが可能な密封装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による密封装置は、相手部材に摺動自在に密接するシールリップを有する密封装置において、前記シールリップの相手部材に対する接触面に粗し加工部を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の請求項2による密封装置は、相手部材に摺動自在に密接するシールリップを有する密封装置において、前記シールリップの相手部材に対する接触面に粗し加工部を設け、前記シールリップの先端部には、粗し加工を施していないプレーン部を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
上記構成を備えた本発明の請求項1による密封装置のように、シールリップの相手部材に対する接触面に粗し加工部を設けると、シールリップの相手部材に対する接触面積が実質減少し、接触面のグリース保持性が高められるために、潤滑性が高められ、摩擦が低減される。粗し加工部はシールリップの接触面に表面粗し加工を施すことによって形成されるもので、その大きさは一般に5〜20μm程度とされ、この程度の大きさであると、泥水シール性は従来(シールリップの接触面に粗し加工部が設けられていないもの)とほぼ同等であって摺動トルクのみを低減させることができる。
【0009】
また、上記構成を備えた本発明の請求項2による密封装置においては、加えてシールリップの先端部に粗し加工を施していないプレーン部が設けられているために、このプレーン部が粗し加工部の泥水側(密封流体側)で相手部材に密接することにより、一層効果的なシール性が確保される。
【0010】
尚、本件出願には、以下の技術的事項が含まれる。
【0011】
すなわち、上記目的を達成するため、本件出願が提案する一の密封装置は、以下の内容を備えている。
【0012】
▲1▼ 相手軸(スリンガー)との接触部(リップ部)に粗し加工を入れることにより低トルク化を図る。
▲2▼ 相手軸(スリンガー)に接触するリップ部に粗し加工を入れることによって真実接触面積が減少すること、リップ接触部近傍のグリース保持性が向上することにより、トルクの低減を図る。
▲3▼ リップ部に粗し加工(5〜20μm程度、5〜10μmが最適)をすることによって、低トルク効果が得られる。その理由は、真実接触面積の低減、リップ接触部近傍のグリース保持性の向上により、潤滑性が向上し、摩擦が低減するからである。
▲4▼ 上記粗さ程度であると、泥水のシールは現行と同等であり、トルクのみを低減することができる。
▲5▼ 粗し加工の大きさについては、5〜20μm程度を検討しているが、必ずしもこの大きさとは限らない。耐泥水性の低下無きことでトルクの低減が図れる粗さであれば対応可。
▲6▼ 粗し加工の大きさによっては、リップ先端に0.05〜0.3mm程度のプレーン部を設ける。
▲7▼ 当該構造は泥水シールに適応可。リップタイプのシール全てに適応可。ハブベアリングシールの場合にはサイドリップ、ダストリップに適応可。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0014】
第一実施例(請求項1関連)・・・
図1は、本発明の第一実施例に係る密封装置1の要部断面を示している。この密封装置1は例えば自動車用車輪懸架装置におけるベアリング部にハブベアリング用シールとして用いられるものであって、以下のように構成されている。
【0015】
すなわち先ず、上記ベアリング部における取付部材であるベアリング外輪(図示せず)の内周側に嵌着される金属等剛材製の取付環(外環)2が設けられており、この取付環2にゴム状弾性材製の弾性体(パッキン)3が加硫接着されており、この弾性体3に複数のシールリップが一体成形されており、この複数のシールリップが、上記ベアリング部における回転部材であるハブ(図示せず)の外周側に嵌着される金属等剛材製のスリンガー(スリーブ)4の筒部(軸方向部)5の外周面5aに摺動自在に密接するダストリップ6と、スリンガー4のフランジ部(径方向部)7の軸方向端面7aに摺動自在に密接するサイドリップ8とによって構成されている。
【0016】
上記ダストリップ6およびサイドリップ8はそれぞれ、外部の泥水やダスト等の異物がベアリング内部へ侵入しないようにこれをシールするものであって、その機能からして外向き構造とされ、特にサイドリップ8はその基端から先端へかけて径寸法が徐々に拡大するように形成されている。
【0017】
また、上記ダストリップ6のスリンガー4に対する接触面6aには粗し加工部(粗し加工面)9が形成されており、上記サイドリップ8のスリンガー4に対する接触面8aにも粗し加工部(粗し加工面)10が形成されている。この粗し加工部9,10はそれぞれ、ダストリップ6またはサイドリップ8の接触面6a,8aに表面粗し加工を施すことによって接触面6a,8aの全面に亙って形成されており、その大きさ(深さ)は5〜20μm(5〜10μmが最適)とされている。
【0018】
上記構成を備えた密封装置1によれば、上記したようにダストリップ6およびサイドリップ8のスリンガー4に対する接触面6a,8aにそれぞれ粗し加工部9,10が形成されているために、ダストリップ6およびサイドリップ8のスリンガー4に対する接触面積がそれぞれ実質減少せしめられ、接触面6a,8aのグリース保持性が高められている。グリースは粗し加工部9,10の凹み空間に貯留される。したがって各リップ6,8の潤滑性が高められ、摩擦が低減されるために、摺動作動時に発生する摺動トルクの大きさを低減させることができ、これによりリップ6,8が早期に摩耗したり、へたったりするのを抑えることができる。
【0019】
また、5〜20μmの大きさに形成された粗し加工部9,10は、泥水シール性能については従来(リップ6,8の接触面6a,8aに粗し加工部が設けられていないもの)とほぼ同等の性能を確保することができ、その上で上記したように摺動トルクを低減させることができる。したがって、シール性能および耐久性の双方に優れたシールリップ6,8を提供することができる。
【0020】
第二実施例(請求項2関連)・・・
図2は、本発明の第二実施例に係る密封装置1の要部断面を示している。この密封装置1は例えば自動車用車輪懸架装置におけるベアリング部にハブベアリング用シールとして用いられるものであって、以下のように構成されている。
【0021】
すなわち先ず、上記ベアリング部における取付部材であるベアリング外輪(図示せず)の内周側に嵌着される金属等剛材製の取付環(外環)2が設けられており、この取付環2にゴム状弾性材製の弾性体(パッキン)3が加硫接着されており、この弾性体3に複数のシールリップが一体成形されており、この複数のシールリップが、上記ベアリング部における回転部材であるハブ(図示せず)の外周側に嵌着される金属等剛材製のスリンガー(スリーブ)4の筒部(軸方向部)5の外周面5aに摺動自在に密接するダストリップ6と、スリンガー4のフランジ部(径方向部)7の軸方向端面7aに摺動自在に密接するサイドリップ8とによって構成されている。
【0022】
上記ダストリップ6およびサイドリップ8はそれぞれ、外部の泥水やダスト等の異物がベアリング内部へ侵入しないようにこれをシールするものであって、その機能からして外向き構造とされ、特にサイドリップ8はその基端から先端へかけて径寸法が徐々に拡大するように形成されている。
【0023】
また、上記ダストリップ6のスリンガー4に対する接触面6aには粗し加工部(粗し加工面)9が形成されており、上記サイドリップ8のスリンガー4に対する接触面8aにも粗し加工部(粗し加工面)10が形成されている。この粗し加工部9,10はそれぞれダストリップ6またはサイドリップ8の接触面6a,8aに表面粗し加工を施すことにより全周に亙って形成されており、その大きさ(深さ)は5〜20μm(5〜10μmが最適)とされている。
【0024】
また加えて、各リップ6,8の接触面6a,8aの先端部にはそれぞれ粗し加工が施されていないプレーン部11,12が全周に亙って設けられており、その大きさ(接触面6a,8a断面の長手方向に沿った長さ)Lは0.05〜0.3mmとされている。尚、図では、このプレーン部11,12の形成位置を明確にするために、その大きさLを誇張して描いている。
【0025】
上記構成を備えた密封装置1によれば、上記したようにダストリップ6およびサイドリップ8のスリンガー4に対する接触面6a,8aにそれぞれ粗し加工部9,10が形成されているために、ダストリップ6およびサイドリップ8のスリンガー4に対する接触面積がそれぞれ実質減少せしめられ、接触面6a,8aのグリース保持性が高められている。グリースは粗し加工部9,10の凹み空間に貯留される。したがって各リップ6,8の潤滑性が高められ、摩擦が低減されるために、摺動作動時に発生する摺動トルクの大きさを低減させることができ、これによりリップ6,8が早期に摩耗したり、へたったりするのを抑えることができる。
【0026】
また、5〜20μmの大きさに形成された粗し加工部9,10は、泥水シール性能については従来(リップ6,8の接触面6a,8aに粗し加工部が設けられていないもの)とほぼ同等の性能を確保することができ、その上で上記したように摺動トルクを低減させることができる。
【0027】
また加えて、各リップ6,8の先端部に粗し加工が施されていないプレーン部11,12が設けられているために、このプレーン部11,12が粗し加工部9,10の泥水側(密封流体側)でスリンガー4に密接することにより、シール性能を一層向上させることができる。
【0028】
したがってこれらのことから、シール性能および耐久性の双方に優れたシールリップ6,8を提供することができる。
【0029】
第三実施例・・・
上記第一実施例では、ダストリップ6およびサイドリップ8の双方にそれぞれ粗し加工部9,10を設けたが、ダストリップ6のみに粗し加工部9を設けるようにしても良い。この場合には、泥水側(密封流体側)に配置されるサイドリップ8の接触面8aがプレーンのままとされるために、上記第一実施例の場合と比較してシール性能を一層向上させることができる。
【0030】
第四実施例・・・
また、上記第二実施例では、ダストリップ6およびサイドリップ8の双方にそれぞれ粗し加工部9,10およびプレーン部11,12を設けたが、ダストリップ6のみに粗し加工部9およびプレーン部11を設けるようにしても良い。この場合には、泥水側(密封流体側)に配置されるサイドリップ8の接触面8aがプレーンのままとされるために、上記第二実施例の場合と比較してシール性能を一層向上させることができる。
【0031】
第五実施例・・・
本発明が適用されるのは上記各実施例で説明した密封装置1に限定されず、本発明は種々の密封装置に適用され、例えば図3に示す密封装置21にも適用される。この密封装置21は以下のように構成されている。
【0032】
すなわち、図3は、本発明の第五実施例に係る密封装置21の要部断面を示している。この密封装置21は例えば自動車用車輪懸架装置におけるベアリング部にハブベアリング用シールとして用いられるものであって、以下のように構成されている。
【0033】
すなわち先ず、上記ベアリング部における取付部材であるベアリング外輪22の内周側に嵌着される金属等剛材製の取付環(外環)23が設けられており、取付環23にゴム状弾性材製の弾性体(パッキン)24が加硫接着されており、弾性体24に複数のシールリップが一体成形されており、この複数のシールリップが、上記ベアリング部における回転部材であるハブ25に設けられた軸方向端面25a(この軸方向端面25aとハブ25の外周円筒面25bとの間に形成された断面円弧形の曲面部25cを含む、以下同じ)に摺動自在に密接するダストリップ26と、その外周側において同じく軸方向端面25aに摺動自在に密接するサイドリップ27とによって構成されている。
【0034】
上記ダストリップ26およびサイドリップ27はそれぞれ、外部の泥水やダスト等の異物がベアリング部内部へ侵入しないようにこれをシールするものであって、その機能から外向き構造とされ、その基端から先端へかけて径寸法が徐々に拡大するように形成されており、このダストリップ26および/またはサイドリップ27の接触面26a,27aに、上記第一ないし第四実施例の何れかに対応して、粗し加工部(図示せず)が設けられ、または粗し加工部およびプレーン部(図示せず)が設けられている。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0036】
すなわち、上記構成を備えた本発明の請求項1による密封装置においては、相手部材に摺動自在に密接するシールリップを有する密封装置において、シールリップの相手部材に対する接触面に粗し加工部を設けるようにしたために、シールリップの相手部材に対する接触面積が実質減少し、接触面のグリース保持性が高められる。したがってシールリップの潤滑性が高められ、摩擦が低減されるために、密封装置を過酷な耐泥水条件下で使用する場合であっても、摺動トルクを低減させることができ、シールリップの耐久性を向上させることができる。
【0037】
また、上記構成を備えた本発明の請求項2による密封装置においては、加えてシールリップの先端部に粗し加工を施していないプレーン部を設けるようにしたために、このプレーン部が粗し加工部の密封流体側で相手部材に密接することにより、シール性能を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例に係る密封装置の要部断面図
【図2】本発明の第二実施例に係る密封装置の要部断面図
【図3】本発明の第五実施例に係る密封装置の要部断面図
【符号の説明】
1,21 密封装置
2,23 取付環
3,24 弾性体
4 スリンガー(相手部材)
5 筒部
5a 外周面
6,26 ダストリップ(シールリップ)
6a,8a,26a,27a 接触面
7 フランジ部
7a,25a 軸方向端面
8,27 サイドリップ(シールリップ)
9,10 粗し加工部
11,12 プレーン部
22 ベアリング外輪
25 ハブ(相手部材)
25b 外周円筒面
25c 曲面部

Claims (2)

  1. 相手部材に摺動自在に密接するシールリップを有する密封装置において、前記シールリップの相手部材に対する接触面に粗し加工部を設けたことを特徴とする密封装置。
  2. 相手部材に摺動自在に密接するシールリップを有する密封装置において、前記シールリップの相手部材に対する接触面に粗し加工部を設け、前記シールリップの先端部には、粗し加工を施していないプレーン部を設けたことを特徴とする密封装置。
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