JP3507523B2 - 糖質吸収抑制剤 - Google Patents
糖質吸収抑制剤Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、腸管における炭水化物
の吸収を抑制することにより、肥満の予防や治療、糖尿
病の予防や治療等に用いられる糖質吸収抑制剤に関す
る。 【0002】 【従来の技術】近年、食生活が豊かになるに伴い、糖質
の過多摂取による肥満などが原因となって糖尿病、動脈
硬化症、心臓病、高血圧症などの成人病が増加してい
る。そのため、肥満防止が健康上極めて重要視されるよ
うになって来ている。 【0003】肥満は基本的にはカロリーと代謝の問題で
あるので、肥満防止には摂取カロリーの低減、運動によ
るカロリーコントロール、場合によっては一時的な飢餓
療法などが提案されている。しかし食欲は人間の本能で
あるので節食による摂取カロリーの低減は容易ではな
く、また、運動やその他の療法によるカロリーコントロ
ールも誰でも実行し得るものでなく、療法によっては栄
養学上の問題点もある。また、簡便な方法として、食事
の際に食物中80%近くを占める炭水化物(澱粉など)
の消化酵素の作用を阻害する物質を服用する方法が考え
られている。消化酵素として、唾液および膵液中にはα
−アミラーゼが存在し、小腸粘膜微絨毛膜にはスクラー
ゼ、マルターゼ、イソマルターゼ、ラクターゼなど膜消
化酵素が局在している。これらが炭水化物の消化に関与
しており、近年これら酵素の阻害物質が数種見い出され
ている。また、糖質の腸管での吸収は小腸粘膜細胞に局
在する能動輸送系により主に行われていることが明らか
になっている。その機構を簡単に説明すると、吸収上皮
細胞の刷子縁膜にある担体にNa+ イオンと糖が結合し
て、Na+ イオンの濃度差によって生じた電気化学的勾
配によって膜を通過し、細胞内にNa+ イオンと糖が取
り込まれる(林幸三、川崎尚:代謝,19:661,1
981,川崎尚:病態生理,2:12,1983)。 【0004】この段階の阻害剤としてフロリジンなどが
あり、糖質の吸収量を低下させることが可能と考えられ
る。しかしながら、これら阻害物質は微生物または植物
より得られたオリゴ糖系およびペプチド系のものであ
り、安全性、有効性の点で問題点を有しており、そのほ
とんどが今だ実用化の段階まで至っていない。また、人
工甘味料も繁用されているが、これは砂糖の添加量を抑
制するだけで、炭水化物の分解物である糖質吸収には影
響がなく、肥満に対して特に大きな効果が期待できな
い。 【0005】また、症状が糖尿病まで進行した場合は、
インシュリン投与により血糖の抑制を図るか、トラザミ
ド、グリジミンナトリウム、トルブタミド、アセトヘキ
サミドなどの薬物の投与により膵臓のランゲルハンス島
β細胞のインシュリン分泌を促進する療法が用いられ、
一方では強烈な食事制限が施される。インシュリン、イ
ンシュリン分泌促進剤は作用が強烈である反面、副作用
が大きく、血糖値の極端な低下による死亡や不可逆的後
遺症を引き起こすことも多く報告されている。 【0006】糖質吸収抑制剤として従来よりインド原産
のギムネマ属ガガイモ科の植物が研究されている。その
うちギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvestre )はイ
ンドにおいて古くから糖尿病の民間伝承薬として知られ
ている。ギムネマシルベスタの温水抽出物やアルコール
抽出物は、腸管における炭水化物の吸収を抑制する作用
があることから、お茶として飲用したり、食品に添加し
て用いることが提案されている(特開昭63−1056
61号公報、特開昭61−5023号公報参照)。ギム
ネマシルベスタはギムネマ酸を含み、この物質が糖吸収
抑制の中心的役割を演じていると考えられるが、その作
用機序は明らかでない(吉岡伸一:米子医学雑誌,3
7:142,1986)。しかしながら、ギムネマ酸は
舌上の味覚受容体と結合し、味覚の知覚抑制として働く
ことが明らかにされており、しかも、ギムネマシルベス
タは経口的に投与されるので、ギムネマシルベスタから
有効物質が溶出し、これが味覚とりわけ甘味の知覚を抑
制して、しばらくの間は甘味を感じなくなる。したがっ
て、ギムネマシルベスタ投与後は食事などが味気なくな
ってしまうといった問題がある。 【0007】また、ギムネマ酸はギムネマシルベスタか
ら抽出されたもので比較的高価であり、天然由来である
ため安定供給の面でも難点がある。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
の肥満予防上の問題点に鑑みてなされたものであって、
節食や特殊な療法に依存することなく、安定供給が可能
な物質を用い、腸管における糖質の吸収を効率的に阻害
すると共に、甘味を感じる感覚を麻痺させることのない
新規な糖質吸収抑制剤を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】食物として摂取された炭
水化物は小腸から消化吸収される。したがって、この小
腸からの吸収の場を阻害することにより糖質の吸収量を
低下させることが可能になると考えられる。 【0010】 本発明は、上記の考えに立脚し、平均分
子量が5,000〜1,000,000で、小腸管腔内
で水溶性であり、ポリアリルアミン、ポリリジン、メタ
クリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジ
メチルアミノエチル共重合体及びこれらの塩からなる群
から選ばれる少なくとも1種のポリアミンが腸管の内表
面に付着して、糖質の吸収を抑制するという作用機序を
用いたものである。 【0011】 すなわち、本発明による糖質吸収抑制剤
は、平均分子量が5,000〜1,000,000で、
小腸管腔内で水溶性であるポリアミンからなるととも
に、ポリアミンがポリアリルアミン、ポリリジン、メタ
クリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジ
メチルアミノエチル共重合体及びこれらの塩からなる群
から選ばれる少なくとも1種である糖質吸収抑制剤であ
って、かつ、食前に服用されることを特徴とするもので
ある。 【0012】 上記ポリアミンは小腸の表面に被膜を形
成する。これは、小腸の表面に存在する粘液中の主成分
である硫酸多糖類とポリイオンコンプレックスを形成し
て、小腸粘膜表面に不溶性の膜を形成し、糖質の吸収を
阻害するものと考えられる。 【0013】 本発明の糖質吸収抑制剤に使用できるポ
リアミンは、ポリアリルアミン、ポリリジン及びメタク
リル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメ
チルアミノエチル共重合体である。また、これらのポリ
アミンが小腸管腔内で水溶性であることが必要である。
ポリアミンが水不溶性になると、小腸に対する親和性が
低下すると考えられる。用いられたポリアミンの平均分
子量は、5,000〜1,000,000の範囲であ
る。 【0014】本発明におけるポリアミンの毒性について
は、Wistar系雄性ラットを用いて、該ポリアミン
の一つであるポリアリルアミン塩酸塩を500g/ラッ
ト1kg経口投与したところ、ラットに異常は認められ
なかった。 【0015】本発明の糖質吸収抑制剤は、経口投与で服
用される。該ポリアミンは経口投与後、胃内で胃酸によ
りポリアミンの塩酸塩となり水溶性化するが、予め塩に
したポリアミンを用いてもよい。また、製剤化に当たっ
ては、製剤学の技術分野における周知の技術によって該
ポリアミンを、カプセル、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤
などの剤形に調製することができる。該ポリアミンを、
物理学的および化学的に該ポリアミンと適合し得る1種
類以上の添加剤、例えば着色剤、着香剤、矯臭剤、安定
課剤と混合してもよい。また、本発明の糖質吸収抑制剤
は該ポリアミン塩の液体製剤としてもよい。液体製剤に
おいて該ポリアミン塩を溶解する担体としては、水単
独、またはエタノール、プロピレングリコール、ポリエ
チレングリコールもしくはグリセロールまたはソルビト
ールの希水溶液のような水ベースの医薬的に許可される
ものを用いることが好ましい。このような製剤は、防腐
剤、矯味剤および甘味剤を含んでいてもよい。 【0016】本発明による糖質吸収抑制剤はその使用に
よって糖質の吸収を阻害しようとするものであるので、
上記添加剤のうち、デンプン、スクロース、フルクトー
スなどの糖質の使用は避けるか、またはその使用量を最
小限にする。 【0017】 かくして得られた製剤は肥満治療や糖尿
病治療のための医薬品として使用される。 【0018】 本発明の糖質吸収抑制剤の投与量は病気
の悪性度、患者の年齢、病状や一般状態、病気の進行度
などに依存するが、成人一回当り0.1〜100gを食
前に服用する。 【0019】 【作用】本発明の糖質吸収抑制剤の有効成分である上記
ポリアミンは、小腸粘膜の表面に存在する粘液中の主成
分である硫酸多糖類とポリイオンコンプレックスを形成
して、小腸粘膜表面に不溶性の被膜を形成して糖質の吸
収を効率的に阻害することが可能になる。 【0020】 【実施例】つぎに、実施例により本発明を具体的に説明
する。 【0021】実施例1 ポリアリルアミン塩酸塩(PAA−HC1−3S 分子
量:7,500〜11,000、日東紡績社製)16.
4mgからなる糖質吸収抑制剤を調製した。 【0022】実施例2 ポリアリルアミン塩酸塩(PAA−HC1−3S 分子
量:7,500〜11,000、日東紡績社製)65.
8mgからなる糖質吸収抑制剤を調製した。 【0023】実施例3 ポリリジン臭化水素酸塩(分子量:5,000〜15,
000、ナカライテスク社製)16.4mgからなる糖
質吸収抑制剤を調製した。 【0024】実施例4 ポリリジン臭化水素酸塩(分子量:5,000〜15,
000、ナカライテスク社製)65.8mgからなる糖
質吸収抑制剤を調製した。 【0025】 【0026】 【0027】 実施例5 メタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル
酸ジメチルアミノエチル共重合体(商品名:オイドラギ
ットE100(ドイツレーム・フォーマ社製)5gを1
N塩酸17.9mlに溶解し、凍結乾燥し、その65.
8mgからなる糖質吸収抑制剤を調整した。 【0028】比較例1 ポリアクリル酸(分子量:25000、ナカライテスク
社製)5gを1N水酸化ナトリウムで中和後、凍結乾燥
し、その65.8mgからなる糖質吸収抑制剤を調製し
た。 【0029】腸管吸収阻害試験 実験動物としてWister系雄性ラット8週令(平均
体重約180g)を用いた。ラットを16〜18時間水
だけ与えて絶食させ、エーテル麻酔下に断頭屠殺し、脱
血後開腹した。小腸中部約12cmを切断し、約10m
lのタイロード液(NaCl:8g、KCl:0.2
g、CaCl2 :0.2g、MgCl2 :0.1g、N
aH2 PO4 :0.05g、NaHCO3 :1g、Gl
ucose:1g、pH:8.0)で腸内を3回洗浄し
た。直径3mmのステンレス棒を、切断した小腸の空腸
側に差し込み、糸で結紮し、タイロード液で濡らしたキ
ムワイプでなぞるようにして、腸管を反転させ、反転さ
せた一端を結紮した。これに26Gの注射針を差し込
み、反転腸内にタイロード液を注入して内部を同液で満
たした。さらに、糸で結紮し、約3cmの反転腸サック
を作製した。 【0030】 実施例1〜5および比較例1の糖質吸収
抑制剤の各量を含有するタイロード液10ml、ならび
にタイロード液のみ10ml(比較例2)をそれぞれ1
5mlのプラスチック遠沈管に入れた。これらの遠沈管
の液に上記反転腸サックを浸漬し、さらに95%O2と
5%CO2の混合ガスを吹き込みながら37℃にて12
0分間同液をインキュベートした。インキュベート後、
反転腸サック内の液を取り出し液中のグルコース濃度を
自動グルコース測定装置(京都第一化学社製)グルコー
スオートアンドスタット GA 1120)で測定し
た。 【0031】 【表1】【0032】また、実施例の反転腸サックの粘膜側表面
には、いずれもポリマー状物質の付着が見られた。 【0033】糖付加試験 実施例1、2で用いたポリアクリルアミン塩酸塩50m
gを生理食塩水5mlに溶解させ10mg/ml濃度の
溶液を調製した。この溶液を試料1とした。実施例7で
用いたメタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタ
クリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩共重合体50mg
を生理食塩水5mlに溶解させ10mg/ml濃度の溶
液を調製した。この溶液を試料2とした。以下の手法に
よって、糖吸収抑制効果を調べた。 【0034】実験動物としてWistar系雄性ラット
8週令(平均体重約160g)を用い、実験前日より一
晩水だけ与え絶食させた後、グルコース2g/ラット1
kgと上記の試料0.8mlをゾンデを用いて強制投与
した。投与前、投与15分後および投与45分後に頸静
脈より0.2ml採血し、これを速やかに遠心分離機に
かけ、血漿を回収した。この血漿について、自動グルコ
ース測定装置(京都第一化学社製)グルコースオートア
ンドスタット GA 1120)を用いてグルコース濃
度を測定した。この試験では5匹のラットを用い、投与
前と投与後のグルコース濃度の差を血糖上昇値とした。 【0035】なお、対照として試料の代わりに生理食塩
水を0.8ml投与し同様の操作を行った。 【0036】 【表2】 投与15分後の血糖上昇値をみると、対象群の平均値は
114mg/dlであったのに対して、試料1投与群の
平均値は53mg/dl、試料2投与群の平均値は67
mg/dlであり有意に低い値となった。また、投与4
5分後は対象群が81mg/dlであったのに対して、
試料1投与群は58mg/dl、試料2投与群は70m
g/dlであり、ポリアリルアミン塩酸塩およびメタク
リル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメ
チルアミノエチル塩酸塩共重合体に糖吸収抑制効果が認
められた。 【0037】 【発明の効果】本発明によれば、節食や特殊な療法に依
存することなく、安定供給が可能な物質を用い、腸管に
おける糖質の吸収を効率的に阻害すると共に、甘味を感
じる感覚を麻痺させることのない新規な糖質吸収抑制剤
を提供することができる。
の吸収を抑制することにより、肥満の予防や治療、糖尿
病の予防や治療等に用いられる糖質吸収抑制剤に関す
る。 【0002】 【従来の技術】近年、食生活が豊かになるに伴い、糖質
の過多摂取による肥満などが原因となって糖尿病、動脈
硬化症、心臓病、高血圧症などの成人病が増加してい
る。そのため、肥満防止が健康上極めて重要視されるよ
うになって来ている。 【0003】肥満は基本的にはカロリーと代謝の問題で
あるので、肥満防止には摂取カロリーの低減、運動によ
るカロリーコントロール、場合によっては一時的な飢餓
療法などが提案されている。しかし食欲は人間の本能で
あるので節食による摂取カロリーの低減は容易ではな
く、また、運動やその他の療法によるカロリーコントロ
ールも誰でも実行し得るものでなく、療法によっては栄
養学上の問題点もある。また、簡便な方法として、食事
の際に食物中80%近くを占める炭水化物(澱粉など)
の消化酵素の作用を阻害する物質を服用する方法が考え
られている。消化酵素として、唾液および膵液中にはα
−アミラーゼが存在し、小腸粘膜微絨毛膜にはスクラー
ゼ、マルターゼ、イソマルターゼ、ラクターゼなど膜消
化酵素が局在している。これらが炭水化物の消化に関与
しており、近年これら酵素の阻害物質が数種見い出され
ている。また、糖質の腸管での吸収は小腸粘膜細胞に局
在する能動輸送系により主に行われていることが明らか
になっている。その機構を簡単に説明すると、吸収上皮
細胞の刷子縁膜にある担体にNa+ イオンと糖が結合し
て、Na+ イオンの濃度差によって生じた電気化学的勾
配によって膜を通過し、細胞内にNa+ イオンと糖が取
り込まれる(林幸三、川崎尚:代謝,19:661,1
981,川崎尚:病態生理,2:12,1983)。 【0004】この段階の阻害剤としてフロリジンなどが
あり、糖質の吸収量を低下させることが可能と考えられ
る。しかしながら、これら阻害物質は微生物または植物
より得られたオリゴ糖系およびペプチド系のものであ
り、安全性、有効性の点で問題点を有しており、そのほ
とんどが今だ実用化の段階まで至っていない。また、人
工甘味料も繁用されているが、これは砂糖の添加量を抑
制するだけで、炭水化物の分解物である糖質吸収には影
響がなく、肥満に対して特に大きな効果が期待できな
い。 【0005】また、症状が糖尿病まで進行した場合は、
インシュリン投与により血糖の抑制を図るか、トラザミ
ド、グリジミンナトリウム、トルブタミド、アセトヘキ
サミドなどの薬物の投与により膵臓のランゲルハンス島
β細胞のインシュリン分泌を促進する療法が用いられ、
一方では強烈な食事制限が施される。インシュリン、イ
ンシュリン分泌促進剤は作用が強烈である反面、副作用
が大きく、血糖値の極端な低下による死亡や不可逆的後
遺症を引き起こすことも多く報告されている。 【0006】糖質吸収抑制剤として従来よりインド原産
のギムネマ属ガガイモ科の植物が研究されている。その
うちギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvestre )はイ
ンドにおいて古くから糖尿病の民間伝承薬として知られ
ている。ギムネマシルベスタの温水抽出物やアルコール
抽出物は、腸管における炭水化物の吸収を抑制する作用
があることから、お茶として飲用したり、食品に添加し
て用いることが提案されている(特開昭63−1056
61号公報、特開昭61−5023号公報参照)。ギム
ネマシルベスタはギムネマ酸を含み、この物質が糖吸収
抑制の中心的役割を演じていると考えられるが、その作
用機序は明らかでない(吉岡伸一:米子医学雑誌,3
7:142,1986)。しかしながら、ギムネマ酸は
舌上の味覚受容体と結合し、味覚の知覚抑制として働く
ことが明らかにされており、しかも、ギムネマシルベス
タは経口的に投与されるので、ギムネマシルベスタから
有効物質が溶出し、これが味覚とりわけ甘味の知覚を抑
制して、しばらくの間は甘味を感じなくなる。したがっ
て、ギムネマシルベスタ投与後は食事などが味気なくな
ってしまうといった問題がある。 【0007】また、ギムネマ酸はギムネマシルベスタか
ら抽出されたもので比較的高価であり、天然由来である
ため安定供給の面でも難点がある。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
の肥満予防上の問題点に鑑みてなされたものであって、
節食や特殊な療法に依存することなく、安定供給が可能
な物質を用い、腸管における糖質の吸収を効率的に阻害
すると共に、甘味を感じる感覚を麻痺させることのない
新規な糖質吸収抑制剤を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】食物として摂取された炭
水化物は小腸から消化吸収される。したがって、この小
腸からの吸収の場を阻害することにより糖質の吸収量を
低下させることが可能になると考えられる。 【0010】 本発明は、上記の考えに立脚し、平均分
子量が5,000〜1,000,000で、小腸管腔内
で水溶性であり、ポリアリルアミン、ポリリジン、メタ
クリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジ
メチルアミノエチル共重合体及びこれらの塩からなる群
から選ばれる少なくとも1種のポリアミンが腸管の内表
面に付着して、糖質の吸収を抑制するという作用機序を
用いたものである。 【0011】 すなわち、本発明による糖質吸収抑制剤
は、平均分子量が5,000〜1,000,000で、
小腸管腔内で水溶性であるポリアミンからなるととも
に、ポリアミンがポリアリルアミン、ポリリジン、メタ
クリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジ
メチルアミノエチル共重合体及びこれらの塩からなる群
から選ばれる少なくとも1種である糖質吸収抑制剤であ
って、かつ、食前に服用されることを特徴とするもので
ある。 【0012】 上記ポリアミンは小腸の表面に被膜を形
成する。これは、小腸の表面に存在する粘液中の主成分
である硫酸多糖類とポリイオンコンプレックスを形成し
て、小腸粘膜表面に不溶性の膜を形成し、糖質の吸収を
阻害するものと考えられる。 【0013】 本発明の糖質吸収抑制剤に使用できるポ
リアミンは、ポリアリルアミン、ポリリジン及びメタク
リル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメ
チルアミノエチル共重合体である。また、これらのポリ
アミンが小腸管腔内で水溶性であることが必要である。
ポリアミンが水不溶性になると、小腸に対する親和性が
低下すると考えられる。用いられたポリアミンの平均分
子量は、5,000〜1,000,000の範囲であ
る。 【0014】本発明におけるポリアミンの毒性について
は、Wistar系雄性ラットを用いて、該ポリアミン
の一つであるポリアリルアミン塩酸塩を500g/ラッ
ト1kg経口投与したところ、ラットに異常は認められ
なかった。 【0015】本発明の糖質吸収抑制剤は、経口投与で服
用される。該ポリアミンは経口投与後、胃内で胃酸によ
りポリアミンの塩酸塩となり水溶性化するが、予め塩に
したポリアミンを用いてもよい。また、製剤化に当たっ
ては、製剤学の技術分野における周知の技術によって該
ポリアミンを、カプセル、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤
などの剤形に調製することができる。該ポリアミンを、
物理学的および化学的に該ポリアミンと適合し得る1種
類以上の添加剤、例えば着色剤、着香剤、矯臭剤、安定
課剤と混合してもよい。また、本発明の糖質吸収抑制剤
は該ポリアミン塩の液体製剤としてもよい。液体製剤に
おいて該ポリアミン塩を溶解する担体としては、水単
独、またはエタノール、プロピレングリコール、ポリエ
チレングリコールもしくはグリセロールまたはソルビト
ールの希水溶液のような水ベースの医薬的に許可される
ものを用いることが好ましい。このような製剤は、防腐
剤、矯味剤および甘味剤を含んでいてもよい。 【0016】本発明による糖質吸収抑制剤はその使用に
よって糖質の吸収を阻害しようとするものであるので、
上記添加剤のうち、デンプン、スクロース、フルクトー
スなどの糖質の使用は避けるか、またはその使用量を最
小限にする。 【0017】 かくして得られた製剤は肥満治療や糖尿
病治療のための医薬品として使用される。 【0018】 本発明の糖質吸収抑制剤の投与量は病気
の悪性度、患者の年齢、病状や一般状態、病気の進行度
などに依存するが、成人一回当り0.1〜100gを食
前に服用する。 【0019】 【作用】本発明の糖質吸収抑制剤の有効成分である上記
ポリアミンは、小腸粘膜の表面に存在する粘液中の主成
分である硫酸多糖類とポリイオンコンプレックスを形成
して、小腸粘膜表面に不溶性の被膜を形成して糖質の吸
収を効率的に阻害することが可能になる。 【0020】 【実施例】つぎに、実施例により本発明を具体的に説明
する。 【0021】実施例1 ポリアリルアミン塩酸塩(PAA−HC1−3S 分子
量:7,500〜11,000、日東紡績社製)16.
4mgからなる糖質吸収抑制剤を調製した。 【0022】実施例2 ポリアリルアミン塩酸塩(PAA−HC1−3S 分子
量:7,500〜11,000、日東紡績社製)65.
8mgからなる糖質吸収抑制剤を調製した。 【0023】実施例3 ポリリジン臭化水素酸塩(分子量:5,000〜15,
000、ナカライテスク社製)16.4mgからなる糖
質吸収抑制剤を調製した。 【0024】実施例4 ポリリジン臭化水素酸塩(分子量:5,000〜15,
000、ナカライテスク社製)65.8mgからなる糖
質吸収抑制剤を調製した。 【0025】 【0026】 【0027】 実施例5 メタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル
酸ジメチルアミノエチル共重合体(商品名:オイドラギ
ットE100(ドイツレーム・フォーマ社製)5gを1
N塩酸17.9mlに溶解し、凍結乾燥し、その65.
8mgからなる糖質吸収抑制剤を調整した。 【0028】比較例1 ポリアクリル酸(分子量:25000、ナカライテスク
社製)5gを1N水酸化ナトリウムで中和後、凍結乾燥
し、その65.8mgからなる糖質吸収抑制剤を調製し
た。 【0029】腸管吸収阻害試験 実験動物としてWister系雄性ラット8週令(平均
体重約180g)を用いた。ラットを16〜18時間水
だけ与えて絶食させ、エーテル麻酔下に断頭屠殺し、脱
血後開腹した。小腸中部約12cmを切断し、約10m
lのタイロード液(NaCl:8g、KCl:0.2
g、CaCl2 :0.2g、MgCl2 :0.1g、N
aH2 PO4 :0.05g、NaHCO3 :1g、Gl
ucose:1g、pH:8.0)で腸内を3回洗浄し
た。直径3mmのステンレス棒を、切断した小腸の空腸
側に差し込み、糸で結紮し、タイロード液で濡らしたキ
ムワイプでなぞるようにして、腸管を反転させ、反転さ
せた一端を結紮した。これに26Gの注射針を差し込
み、反転腸内にタイロード液を注入して内部を同液で満
たした。さらに、糸で結紮し、約3cmの反転腸サック
を作製した。 【0030】 実施例1〜5および比較例1の糖質吸収
抑制剤の各量を含有するタイロード液10ml、ならび
にタイロード液のみ10ml(比較例2)をそれぞれ1
5mlのプラスチック遠沈管に入れた。これらの遠沈管
の液に上記反転腸サックを浸漬し、さらに95%O2と
5%CO2の混合ガスを吹き込みながら37℃にて12
0分間同液をインキュベートした。インキュベート後、
反転腸サック内の液を取り出し液中のグルコース濃度を
自動グルコース測定装置(京都第一化学社製)グルコー
スオートアンドスタット GA 1120)で測定し
た。 【0031】 【表1】【0032】また、実施例の反転腸サックの粘膜側表面
には、いずれもポリマー状物質の付着が見られた。 【0033】糖付加試験 実施例1、2で用いたポリアクリルアミン塩酸塩50m
gを生理食塩水5mlに溶解させ10mg/ml濃度の
溶液を調製した。この溶液を試料1とした。実施例7で
用いたメタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタ
クリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩共重合体50mg
を生理食塩水5mlに溶解させ10mg/ml濃度の溶
液を調製した。この溶液を試料2とした。以下の手法に
よって、糖吸収抑制効果を調べた。 【0034】実験動物としてWistar系雄性ラット
8週令(平均体重約160g)を用い、実験前日より一
晩水だけ与え絶食させた後、グルコース2g/ラット1
kgと上記の試料0.8mlをゾンデを用いて強制投与
した。投与前、投与15分後および投与45分後に頸静
脈より0.2ml採血し、これを速やかに遠心分離機に
かけ、血漿を回収した。この血漿について、自動グルコ
ース測定装置(京都第一化学社製)グルコースオートア
ンドスタット GA 1120)を用いてグルコース濃
度を測定した。この試験では5匹のラットを用い、投与
前と投与後のグルコース濃度の差を血糖上昇値とした。 【0035】なお、対照として試料の代わりに生理食塩
水を0.8ml投与し同様の操作を行った。 【0036】 【表2】 投与15分後の血糖上昇値をみると、対象群の平均値は
114mg/dlであったのに対して、試料1投与群の
平均値は53mg/dl、試料2投与群の平均値は67
mg/dlであり有意に低い値となった。また、投与4
5分後は対象群が81mg/dlであったのに対して、
試料1投与群は58mg/dl、試料2投与群は70m
g/dlであり、ポリアリルアミン塩酸塩およびメタク
リル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメ
チルアミノエチル塩酸塩共重合体に糖吸収抑制効果が認
められた。 【0037】 【発明の効果】本発明によれば、節食や特殊な療法に依
存することなく、安定供給が可能な物質を用い、腸管に
おける糖質の吸収を効率的に阻害すると共に、甘味を感
じる感覚を麻痺させることのない新規な糖質吸収抑制剤
を提供することができる。
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 平2−232229(JP,A)
特開 平2−291244(JP,A)
特開 平2−283261(JP,A)
特開 平1−294627(JP,A)
特開 昭62−132830(JP,A)
特開 昭58−79022(JP,A)
特開 昭52−148630(JP,A)
特開 昭63−258901(JP,A)
特開 昭63−41422(JP,A)
特開 昭62−123122(JP,A)
国際公開92/006136(WO,A1)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
A61K 31/785
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 平均分子量が5,000〜1,000,
000で、小腸管腔内で水溶性であるポリアミンからな
るとともに、ポリアミンがポリアリルアミン、ポリリジ
ン、メタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタク
リル酸ジメチルアミノエチル共重合体及びこれらの塩か
らなる群から選ばれる少なくとも1種である糖質吸収抑
制剤であって、かつ、食前に服用されることを特徴とす
る糖質吸収抑制剤。
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