JP3507216B2 - 差動磁気抵抗回路 - Google Patents

差動磁気抵抗回路

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気検出器として
利用される差動磁気抵抗回路の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】磁界の変化を検出する磁気検出回路とし
ては、図2に示すような差動磁気抵抗回路(ハーフブリ
ッジ回路)が知られている。この差動磁気抵抗回路11
は、半導体からなる2個の磁気抵抗素子12および13
を直列に接続したものであり、基準電圧が与えられる端
子14および15と、この基準電圧を磁気抵抗素子12
と13により分圧した中点電圧を出力する出力端子16
とを有するものである。
【0003】ここで、磁気抵抗素子12および13は、
磁界の大きさに応じてその抵抗値を変化させる素子であ
り、例えば、特公昭50−21229号公報におけるも
の等が知られている。
【0004】このような差動磁気抵抗回路11が、例え
ば、図3に示すような強磁性体17と非磁性体18とが
周期的に配置される配列に近接して置かれたならば、そ
の位置に応じて磁気抵抗素子12および13の周囲の磁
界がそれぞれ異なって変化し、これに応じて磁気抵抗素
子12および13の抵抗値も異なった変化をする。した
がって、この差動磁気抵抗回路11と強磁性体17およ
び非磁性体18との相対位置の変化は、磁気抵抗素子1
2と13の抵抗値の比にしたがって得られる中点電圧の
変化として検出されることとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】さて、このような差動
磁気抵抗回路においては、磁界の強さ以外の外部環境が
変化したとしても、磁気抵抗素子12と13の特性が等
しく、これらの抵抗値が同様の変化をする限り、中点電
圧の変化は生じない。例えば、温度変化による抵抗変化
に対しては、磁気抵抗素子12および13の抵抗温度係
数が等しければ、温度変化によっても磁気抵抗素子12
および13の抵抗値は同一の比率で変化するので、中点
電圧に変化が生じることはない。
【0006】しかしながら、実際には、このような差動
磁気抵抗回路11の2個の磁気抵抗素子12、13の特
性が厳密に等しいことはなく、素子の材料自体のわずか
な特性の違いや、素子の構造のわずかな相違により、2
個の磁気抵抗素子12と13の特性には若干の差異があ
ることが多い。
【0007】このため、差動磁気抵抗回路11の周辺の
温度変化により、異なる抵抗温度係数を有する2個の磁
気抵抗素子12および13の抵抗値が、周囲の磁界が不
変であるにもかかわらず、異なった比率で変化してしま
う。この結果、出力端子16から得られる中点電圧も変
化してしまうので、正確な磁界の変化の検出が阻害され
るという問題点を、この差動磁気抵抗回路11は有して
いた。
【0008】本発明は、このような問題点に着目して、
周囲の温度変化が激しい環境下でも、出力の精度が補償
され得る差動磁気抵抗回路を提供することを目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】第1の発明では、2個の
半導体磁気抵抗素子を直列に連結し、その中点電圧を出
力電圧とする差動磁気抵抗回路において、これらの磁気
抵抗素子に比べて抵抗温度係数の著しく小さな抵抗体を
前記磁気抵抗素子のいずれか一方に並列に接続し、所定
の温度範囲で、前記一方の磁気抵抗素子及び前記抵抗体
からなる並列回路の抵抗温度係数と、もう一方の前記磁
気抵抗素子の抵抗温度係数とをほぼ一致させる。
【0010】第2の発明では、前記抵抗体の抵抗値α
を、 α=a12 (b1 −b2 )/(a12 −a21 ) と設定する。ただし、ここで、a1 、a2 はそれぞれ同
一磁界内での所定の温度t1 、t2 における前記抵抗体
を並列に接続した磁気抵抗素子の抵抗値とし、また、b
1 、b2 はそれぞれ同一磁界内での所定の温度t1 、t
2 におけるもう一方の磁気抵抗素子の抵抗値とする。
【0011】
【作用】第1の発明では、差動磁気抵抗回路の使用中に
周辺温度が変化しても、2個の磁気抵抗素子のいずれか
一方に抵抗体が並列に接続されているので、この抵抗体
の存在により出力電圧の変動が補償され、出力電圧の温
度ドリフトは抑制される。
【0012】第2の発明では、前記抵抗体の抵抗値が適
切に設定されるので、抵抗体が接続されない方の磁気抵
抗素子の抵抗値の変化率が、抵抗体が接続された方の磁
気抵抗素子と抵抗体とからなる並列回路の抵抗値の変化
率によってほぼ近似され、これらの抵抗値の比として出
力される出力電圧の温度ドリフトは確実に抑制される。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実
施の形態について説明する。
【0014】ここで、差動磁気抵抗回路1は、従来例と
同様に、磁気抵抗素子2と3が直列に接続され、端子4
と5の間の基準電圧VC C を分圧した中点電圧が出力端
子6から取り出される構成となっている。
【0015】また、磁気抵抗素子2および3は磁界の強
さによりその抵抗値を変化させる素子であり、例えばI
nSbのような電子移動度の大きな半導体から構成され
る。
【0016】さらに、本発明においては、磁気抵抗素子
2には並列に抵抗体7が接続される。ここで、抵抗体7
としては、半導体である磁気抵抗素子2および3の抵抗
温度係数に対して無視し得る程度に抵抗温度係数が小さ
な抵抗として、例えば、一般の金属抵抗や炭素皮膜抵抗
が用いられる。
【0017】また、抵抗体7の抵抗値は、磁気抵抗素子
2および抵抗体7による形成される並列回路の抵抗温度
係数が、磁気抵抗素子3の抵抗温度係数と、近似的に等
しくなるように選ばれる。具体的には、以下のとおりで
ある。
【0018】すなわち、まず、差動磁気抵抗回路1の使
用環境に対応して適切に選ばれた所定の温度t1 、t
2 、例えばこの差動磁気抵抗回路の常用範囲の温度t
1 、高温範囲での温度t2 において、同一磁界内での磁
気抵抗素子2の抵抗値a1 、a2および磁気抵抗素子3
の抵抗値b1 、b2 の測定を行う。
【0019】つぎに、温度変化に対して抵抗体7の抵抗
値αは不変と仮定して、同一の磁界内での、温度t1
温度t2 における差動磁気抵抗回路1の出力電圧が同一
となるように、抵抗値αの値を定める。すなわち、磁気
抵抗素子2と抵抗体7からなる並列回路と磁気抵抗素子
3の間の中点電圧が、この両温度において等しくなるよ
うに抵抗値αの値を定める。
【0020】ここで、 (t1 における中点電圧) =VC C1 /{b1 +a1 α/(a1 +α)} …(1) であり、 (t2 における中点電圧) =VC C2 /{b2 +a2 α/(a2 +α)} …(2) であるから、これらの式(1)の右辺と式(2)の右辺
を等置することにより、求めるべき抵抗値αが、 α=a12 (b1 −b2 )/(a12 −a21 ) …(3) と求められる。
【0021】このように、例えば差動磁気抵抗回路1の
使用される温度範囲t1 、t2 に対して、抵抗体7の抵
抗値αを定めることにより、温度t1 からt2 間での差
動磁気抵抗回路1の使用に際しては、磁気抵抗素子2お
よび抵抗体7からなる並列回路の抵抗温度係数と磁気抵
抗素子3の抵抗温度係数がほぼ等しく保たれ、並列回路
と磁気抵抗素子3の抵抗値がほぼ同一の割合で変化する
ので、温度変化による抵抗値変動が原因の出力電圧変動
は相殺され、出力電圧の変動が抑制される。
【0022】なお、この抵抗体7の抵抗値αの設定は、
1個1個の差動磁気抵抗回路1に対して別々に行われる
こととなる。
【0023】つぎに作用を説明する。
【0024】本発明の差動磁気抵抗回路1は、例えば、
従来例の説明において述べたのと同じように、周囲の磁
界が位置によって周期的に変化するような環境におか
れ、差動磁気抵抗回路1の位置の変化は、出力端子6か
ら得られる出力の変動として検出される。ここで、端子
4および5の間には一定の基準電圧VC C が与えられ、
差動磁気抵抗回路1の出力電圧としてはこの基準電圧V
C C を磁気抵抗素子2および抵抗体7とからなる並列回
路と磁気抵抗素子3により分圧した中点電圧の値が取り
出される。
【0025】このとき、例えば、差動磁気抵抗回路1の
位置の変化等により、磁気抵抗素子2および3の周囲の
磁界が異なって変化すれば、これらの磁気抵抗素子2、
3の抵抗値もこの磁界の異なった変動に対応して異なっ
た変化を示す。この結果、これらの磁気抵抗素子2、3
により基準電圧VC C を分圧した結果得られる出力電圧
は変動し、結局、差動磁気抵抗回路1の位置の変化等
が、差動磁気抵抗回路1の周囲の磁界の変化に対応する
ものとして検出される。
【0026】さて、この差動磁気抵抗回路1の使用中に
周辺温度が変化すると、磁気抵抗素子2および3は、そ
れぞれの素子に固有の抵抗温度係数にしたがって、その
抵抗値が変化するが、磁気抵抗素子2および3の抵抗温
度係数は必ずしも等しくないので、これらの磁気抵抗素
子2、3の抵抗値はそれぞれ異なった割合で変化する。
【0027】ところが、本発明においては、磁気抵抗素
子2には適切な値の抵抗体7が並列に接続されているの
で、磁気抵抗素子3の抵抗値の変化率が、磁気抵抗素子
2と抵抗体7の並列回路の抵抗値の変化率によってほぼ
近似され、磁気抵抗素子3と並列回路の抵抗値は温度変
化に対してはほぼ同様の割合で変化し、磁気抵抗素子3
と並列回路の抵抗値変動の温度変化による部分はお互い
に打ち消し合うこととなる。したがって、これらの抵抗
値の比として出力される出力電圧の温度変化による変動
は抑制される。
【0028】このように、本発明は、特に高温での使用
に際し、差動磁気抵抗回路1の出力の温度ドリフトを低
減する手段として有効である。
【0029】
【発明の効果】第1の発明は、差動磁気抵抗回路のいず
れか一方の磁気抵抗素子に並列に接続した抵抗により出
力電圧の変動が補償されるので、温度変化の激しい環境
下においても出力の温度ドリフトが抑制され、差動磁気
抵抗回路は磁気検出器として正確に作動する。
【0030】第2の発明は、磁気抵抗素子に並列に接続
した抵抗体の抵抗値が適切に設定されるので、温度変化
の激しい環境下においても出力の温度ドリフトが確実に
抑制され、差動磁気抵抗回路は磁気検出器として正確に
作動する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の回路構成を示す構成図で
ある。
【図2】従来例の回路構成を示す構成図である。
【図3】従来例の使用状況を示す説明図である。
【符号の説明】
1 差動磁気抵抗回路 2 磁気抵抗素子 3 磁気抵抗素子 7 抵抗体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−246176(JP,A) 特開 平8−220203(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01R 33/02 - 33/10 G01B 7/00 - 7/34 G01D 5/12 - 5/252

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2個の磁気抵抗素子を直列に連結し、その
    中点電圧を出力電圧とする差動磁気抵抗回路において、
    これらの磁気抵抗素子に比べて抵抗温度係数の著しく小
    さな抵抗体を前記磁気抵抗素子のいずれか一方に並列に
    接続し、所定の温度範囲で、前記一方の磁気抵抗素子及
    び前記抵抗体からなる並列回路の抵抗温度係数と、もう
    一方の前記磁気抵抗素子の抵抗温度係数とをほぼ一致さ
    せるようにしたことを特徴とする差動磁気抵抗回路。
  2. 【請求項2】 前記抵抗体の抵抗値αを α=a12 (b1 −b2 )/(a12 −a21 ) (ただし、a1 、a2 はそれぞれ同一磁界内での所定の
    温度t1 、t2 における前記抵抗体を並列に接続した磁
    気抵抗素子の抵抗値、b1 、b2 はそれぞれ同一磁界内
    での所定の温度t1 、t2 におけるもう一方の磁気抵抗
    素子の抵抗値)と設定したことを特徴とする請求項1に
    記載の差動磁気抵抗回路。
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