JP3505114B2 - 単レンズ、金型、金型の加工方法、及び単レンズを用いた光ピックアップ装置 - Google Patents

単レンズ、金型、金型の加工方法、及び単レンズを用いた光ピックアップ装置

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JP3505114B2 JP25668699A JP25668699A JP3505114B2 JP 3505114 B2 JP3505114 B2 JP 3505114B2 JP 25668699 A JP25668699 A JP 25668699A JP 25668699 A JP25668699 A JP 25668699A JP 3505114 B2 JP3505114 B2 JP 3505114B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ディスク装置に
用いる対物レンズ、特に、厚みの異なる情報記録媒体の
再生を行う光ヘッド用に適した対物レンズ、及び前記対
物レンズを成形するための金型に関する。
【0002】
【従来の技術】DVD(ディジタルバーサタイルディス
ク)は高密度記録を達成するためにディスク媒体の厚み
が0.6mmと、従来のCD(コンパクトディスク)が
1.2mmであるのに比べて薄い規格となっている。そ
の為、DVD用に最適設計したレンズでCDを再生しよ
うとした場合には、ディスク厚みの違いにより球面収差
が発生し、結果として情報の読み出しができなくなる。
1台のドライブ装置で厚みの異なる光ディスクを読みと
るためには、1.2mm厚用と0.6mm厚用の対物レ
ンズの両方を取り付けた光ピックアップとすればよい
が、レンズの切り替え機構が必要となるため、光ピック
アップの構成が複雑となり小型化、低コスト化が困難と
なる。
【0003】1つのレンズで厚みの異なる光ディスクを
再生する方法として、レンズを光軸を中心とした同心円
状の領域に分割する方法が提案されている。中でも、レ
ンズ面を2つに分割し、内周部をCDに適した設計と
し、外周部をDVDに適した設計とし、その2つの領域
の接続部を段差を設けて接続するいわゆる2ゾーン分割
型のレンズが提案されている(例えば特開平9−184
975号公報、特開平10−55564号公報)。
【0004】また、そういった段差のあるレンズを成形
するための金型は、段差部を精度よく加工するためにダ
イヤモンドバイトを用いた切削加工によって製造されて
いた。
【0005】また、加工した金型を計測評価するための
表面形状計測装置は、測定値を評価する基準となる設計
形状データとして回転対称非球面を用いている。2ゾー
ン分割型のレンズを計測する場合には、内周部と外周部
を分けてそれぞれ別に計測したり、内周部と外周部の形
状を20次程度の高次の非球面係数を用いてフィッテン
グして形状を表現し、測定値をこれと比較したりしてい
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述の2ゾーン型対物
レンズは内周非球面と外周非球面との接続部に段差を与
えてあり、この段差は設計上では光軸と略平行に設ける
ことが理想とされる。しかしながら、実際の加工では段
差を加工可能な程度になまらせる必要がある。特開平9
−184975号公報では、段差部分を滑らかに接続す
る形状が開示されているが、内周非球面と外周非球面を
ほぼ均等になまらせた形状であって、バイトを用いた切
削加工でないと加工できない形状である。ここで、バイ
ト切削加工においては加工できる金属材料に制約があ
り、切削性に優れた比較的柔らかい金属でないと満足な
加工精度が得られない。一方で、ガラス材料を用いてレ
ンズをプレス成形するためには高温高圧成形が必要であ
り、金型としては超硬合金(WCを主成分とする焼結
体)などのような高硬度の金属材料を用いることが好ま
しい。しかしながら、超硬合金はバイト切削加工で加工
できない。つまり、これまでに提案されてきた2ゾーン
型の対物レンズは実質上樹脂成形を前提とした形状であ
り、ガラス材料を用いて成形する場合には金型の加工が
困難となるものばかりであった。
【0007】また、樹脂材料を用いたレンズは温度変化
による屈折率変化が大きい。そのため、たとえば車載用
などのような広い温度範囲での動作を保証する必要があ
るような光ピックアップでは一般にガラス製のレンズを
用いていた。ところが上述のように、2ゾーン型のDV
D/CD互換レンズは樹脂成形を前提とした設計がなさ
れており、温度特性が著しく悪くなってしまうという課
題があった。
【0008】また、レンズ成型用の金型を計測評価する
形状計測装置は、計測した形状とあらかじめ保存した設
計形状とを比較して加工誤差を計算するが、設計形状と
しては、回転対称非球面などのような形状しか入力する
ことが出来なかった。2ゾーン型のレンズを内周部と外
周部とに分けて計測する方法は、レンズ全域を一度に計
測する方法ではないため形状誤差を正確に知ることが出
来ないという課題があった。また、レンズ全体の形状を
高次の非球面係数を用いてフィッテングして1つの非球
面として表現して、この非球面形状を設計形状として計
測する方法では、段差の前後でフィッテング誤差が発生
するため、十分な計測精度が得られないという課題があ
った。
【0009】 本発明は上記課題に鑑みてなされてもの
で、本発明の目的は、ガラス材料を用いた生産性に優れ
る2ゾーン分割型の対物レンズを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ガラス材料の成形に耐える
超硬合金を用いた2ゾーンレンズ用の金型及びその加工
方法を提供することにある。また、本発明の他の目的
は、温度特性に優れたDVDとCDの互換再生光ピック
アップ装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成するために以下の構成とする。
【0011】本発明に係る単レンズは、ガラス製の単レ
ンズであって、前記単レンズの少なくとも1つの面が、
光軸を中心とする同心円により少なくとも3つの領域に
分割され、前記3つの領域のうち、光軸を含む第1の領
域と、レンズの最も外部にある第2の領域が回転対称非
球面であって、前記第1及び第2の領域に挟まれる第3
の領域が光軸を回転中心軸とするトーリック面であるこ
とを特徴とする。
【0012】上記の構成において、前記トーリック面で
ある第3の領域は、前記第2の領域と接し、前記第1の
領域とは交わることが好ましい。
【0013】また、上記の構成において、前記第1及び
第2の領域の非球面係数が異なることが好ましい。
【0014】また、上記の構成において、レンズの中心
曲率半径の大きい側に前記トーリック面を設けることが
好ましい。
【0015】また、上記の構成において、前記第3の領
域が、下記式を満たす半径Rの円弧を光軸を中心に回転
させてできるトーリック面であることが好ましい。
【0016】
【数8】 0.7mm < R < 2.5mm ・・・(1)
【0017】更に、前記半径Rが下記式を満足すること
がより好ましい。
【0018】
【数9】 1.6mm < R < 2.1mm ・・・(2)
【0019】また、上記の構成において、前記第3の領
域の幅wが下記を満たすことが好ましい。
【0020】
【数10】 0.02mm < w < 0.04mm ・・・(3)
【0021】また、本発明に係るレンズ成型用金型は、
超硬合金を研削加工して製造したレンズ成型用の金型で
あって、レンズ面が光軸を中心とする同心円により少な
くとも3つの領域に分割され、前記3つの領域のうち光
軸を含む第1の領域と最も外側の第3の領域は回転対称
非球面であって、前記第1及び第2の領域に挟まれる第
3の領域が光軸を回転中心軸とするトーリック面である
ことを特徴とする。
【0022】上記の構成において、前記光軸を回転中心
とするトーリック面の曲率半径Rが下記式を満足するこ
とが好ましい。
【0023】
【数11】 0.7mm < R < 2.5mm ・・・(4)
【0024】更に、前記曲率半径Rが下記式を満足する
ことがより好ましい。
【0025】
【数12】 1.6mm < R < 2.1mm ・・・(5)
【0026】また、本発明に係るレンズ成型用金型の加
工方法は、レンズ面が光軸を中心とする同心円により少
なくとも3つの領域に分割され、前記3つの領域のうち
光軸を含む第1の領域と最も外側の第3の領域は回転対
称非球面であって、前記第1及び第2の領域に挟まれる
第3の領域が光軸を回転中心軸とするトーリック面であ
るレンズ成型用金型をダイヤモンド砥石を用いて研削加
工によって加工する加工方法であって、加工に用いるダ
イヤモンド砥石の半径は前記トーリック面の曲率半径と
同一かこれより小さいことを特徴とする。
【0027】上記の構成において、記ダイヤモンド砥石
の半径Rが下記式を満足することが好ましい。
【0028】
【数13】 0.7mm < R < 2.5mm ・・・(6)
【0029】更に、前記半径Rが下記式を満足すること
がより好ましい。
【0030】
【数14】 1.6mm < R < 2.1mm ・・・(7)
【0031】
【0032】また、本発明に係る光ピックアップ装置
は、少なくとも、第1の波長の光を射出する第1のレー
ザ光源と、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を
射出する第2のレーザ光源と、前記第1及び第2の光源
からの射出光束を情報記録媒体に集光する集光手段と、
前記情報記録媒体からの反射光のうち、第1の波長の光
を受光するための第1の受光手段と、第2の波長の光を
受光するための第2の受光手段とを有する光ピックアッ
プ装置であって、前記集光手段として前記本発明の単レ
ンズを用いたことを特徴とする。
【0033】
【発明の実施の形態】以下に本発明の好適な実施の形態
について、図面を参照して具体的に説明する。
【0034】なお、本発明において非球面とは、半径が
近軸曲率半径である球面に偏差を与えた形状をいうもの
とする。つまり、下記式(8)にて表現出来る形状を指
す。なお、光学設計上必要十分な精度(10nm未満の
形状誤差)で下記式(8)にて表現することが可能なレ
ンズ形状は、異なる式を用いて設計されていたとしても
本発明の非球面に含むものとする。
【0035】
【数15】
【0036】(第1の実施形態)図1は本発明の単レン
ズの概略光路図である。
【0037】光源からの入射光103は本発明の単レン
ズ101によって光ディスク媒体102に集光される。
【0038】レンズ101の光ディスク媒体102側の
面は、光軸107を含む第1の非球面領域104と、第
2の非球面領域105と、第1及び第2の非球面領域1
04,105に挟まれた、光軸107を回転対称中心軸
とするトーリック面領域106とにより構成される。
【0039】レンズ101の第1及び第2の非球面領域
104,105はCDとDVDを1つのレンズで良好に
再生するように設計されている。具体的には、光軸を含
む第1の非球面104は波長780nmの光を射出する
光源を用いてCDを再生したときに良好に再生できるよ
うに設計されており、第2の非球面105は、波長66
0nmの光を射出する光源を用いてDVDを再生すると
きに良好に再生できるように設計されている。この第1
及び第2の非球面104,105を後述する不連続の段
差を持たせて接続することにより、CDやDVDをそれ
ぞれの波長の光源を用いてレンズ全域で良好に再生でき
る。
【0040】図ではレンズ曲率半径の大きい側の面をト
ーリック面で3領域に分割しているが、これは金型加工
用の砥石径の選択の自由度を増やす効果がある。この詳
細については次の実施の形態にて説明する。
【0041】図2は、図1のA部のトーリック面106
近傍部分を拡大した半径方向断面図である。
【0042】トーリック面106は半径Rの円弧を光軸
を中心に回転させて得られるトーリック面である。この
トーリック面106は、外周部の第2の非球面105と
接し、内周部の第1の非球面104と交差するように形
成されている。ここで、トーリック面106が第2の非
球面105と「接する」とは、半径方向断面においてト
ーリック面106の表面曲線と第2の非球面105の表
面曲線との接続点におけるそれぞれの接線の傾きが一致
することをいう。また、トーリック面106が第1の非
球面104と「交差する」とは、半径方向断面において
トーリック面106の表面曲線と第1の非球面104の
表面曲線との接続点におけるそれぞれの接線の傾きが一
致せず、所定の角度で交差することをいう。
【0043】最終的な設計形状は図の実線のようにな
る。
【0044】トーリック面の半径方向の幅(円弧の幅)
wは、
【0045】
【数16】 0.02mm < w < 0.04mm ・・・(3)
【0046】であるのが好ましい。ここで、幅wは、図
2に示すように、第1の非球面104とトーリック面1
06との接続点の光軸からの高さと、第2の非球面10
5とトーリック面106との接続点の光軸からの高さと
の差で定義される。wが式(3)の下限を超えた場合に
は、砥石で加工できない形状となり、製造が困難なレン
ズとなる。また、wが上限を超えた場合には、実際に得
られるレンズ形状と理想的な設計形状との差が大きくな
りすぎて、レンズの性能が満足に発揮できない。
【0047】また、トーリック面106を形成する円弧
の半径Rは、
【0048】
【数17】 0.7mm < R < 2.5mm ・・(1)
【0049】であるのが好ましい。上式の下限を超えて
Rが小さくなると研削加工で金型を加工できなくなるた
め、製造が困難なレンズとなる。逆に、Rが上式の上限
を超えた場合には円弧部の幅が広くなりすぎてレンズ性
能を悪化させてしまう。好ましくは、
【0050】
【数18】 1.6 mm < R < 2.1 mm ・・・(2)
【0051】であることが望ましい。
【0052】(数値実施例1)図3は実際にレンズ形状
を計算して得た本発明の単レンズの一例のトーリック面
近傍の半径方向の拡大断面図である。図3において、横
軸は光軸からの高さh(mm)、縦軸は内周部の第1の非
球面104と光軸との交点を原点とするサグ量zであ
る。
【0053】内周部の第1の非球面104の非球面デー
タは以下の通りである。
【0054】
【表1】 r =−1.682×101 k =−7.90807×1013 = 2.605947654×10-34 = 1.054073967×10-46 = 6.605216379×10-48 =−4.966151680×10-410 = 8.362178008×10-5
【0055】また、外周部の第2の非球面105の非球
面データは以下の通りである。
【0056】
【表2】 r =−1.682×101 k =−4.10782×1013 =−2.083119392×10-34 = 7.583760761×10-36 =−2.145398325×10-28 = 3.23346325×10-410=−2.125916694×10-5
【0057】図3において、第1の非球面104の非球
面曲線と、第2の非球面105の非球面曲線とをそれぞ
れ相手方方向に2点鎖線で示したように延長したとき、
光軸からの高さh=1.07mmの地点での両曲線の光軸
方向の距離Dは0.303μmである。なお、本発明に
おいて、第1の非球面と第2の非球面との接続部におけ
る両面のこのような光軸方向距離を「接続部の段差」と
いう。また、第1の非球面と第2の非球面とを光軸方向
に所定の距離(すなわち段差)を設けて接続することを
「段差を介して接続する」という。トーリック面106
を形成する円弧の半径Rは2mmであり、該円弧の中心
点の座標は(h,z)=(1.006469,−2.0
26898)である。また、内外周の非球面104,1
05を接続するトーリック面106の幅wは約34μm
である。
【0058】このレンズを用いたときの、DVD及びC
D再生時の収差(光路長差曲線:OPD)は図4のよう
になる。図4(a)はDVD再生時の収差曲線であり、
図4(b)はCD再生時の収差曲線である。
【0059】ここで、破線で示した曲線は、内外周の非
球面104,105を本実施の形態のようなトーリック
面106で接続せずに、図3の2点鎖線で示したような
段差を設けて接続した理想的な条件における収差曲線を
示す。実線で示した本実施の形態では破線と比較してト
ーリック面の部分で収差曲線が変形するが、DVD及び
CDそれぞれの再生には殆ど影響しない。
【0060】(第2の実施形態)図5は本発明のレンズ
成型用金型の半径方向断面図である。本発明の金型50
1の成形面は、回転対称中心軸を中心とする同心円によ
り3つの領域に分割されている。具体的には、回転対称
中心軸を含む第1の非球面領域504と最も外側の第3
の非球面領域505と、第1の非球面領域504と第2
の非球面領域505に挟まれた、回転中心軸を回転中心
とするトーリック面領域506とを有している。トーリ
ック面506の半径方向断面における曲率半径Rは、
【0061】
【数19】 0.7mm < R < 2.5mm ・・・(4)
【0062】である。好ましくは、
【0063】
【数20】 1.6mm < R < 2.1mm ・・・(5)
【0064】である。従って、上記の半径Rと同一又は
これより小さい半径の砥石を用いて研削加工することが
可能である。従って、本発明の金型は、高融点のガラス
材料を高圧成形することが可能な超硬合金(たとえばW
Cを主成分とする焼結体)を材料として用いることがで
きる。
【0065】また、加工した金型の形状は形状計測装置
によって計測される。触針式の計測器を用いる場合に
は、計測器の触針(プローブ)の先端形状は計測される
形状が有する最小の曲率半径未満の曲率半径を有する必
要がある。すなわち、被計測形状がプローブ先端径より
も小さな曲面形状を有する場合には、その部分の計測結
果がずれてしまい正しく計測できない。これを防ぐため
には小径のプローブを用いればよいが、一般に小径のプ
ローブは真円度が悪くなるため、特に傾斜面での形状計
測精度が悪くなり好ましくない。上述の範囲のトーリッ
ク面を有する金型の場合には、先端曲率半径が500μ
m程度のプローブで良好に計測できる。
【0066】また、光学式の計測器を用いた場合には、
内外周の非球面を図3の2点鎖線で示したように段差を
形成させて接続した場合に比べて、トーリック面部分の
形状の変化が波長オーダーで十分に滑らかなので、計測
光の波面が連続的につながるため、この場合にも精度よ
く計測できる。
【0067】(第3の実施形態)ガラス材料を成形する
ための金型には、ガラスの融点以上の高温状態で加圧し
ても変形しないような耐熱性に優れた高硬度の材料(超
硬合金)を用いる。超硬合金の加工はダイヤモンド砥石
を用いた研削加工によって行われる。
【0068】図6は本発明の第3の実施の形態にかかる
金型加工法の概略図であり、図6(a)は正面方向断面
図、図6(b)側面方向断面図である。
【0069】被加工金型601は被加工金型の回転軸6
02を軸として回転し、砥石603は砥石の回転軸60
4を軸として回転する。砥石603は加工面形状を砥石
の半径Rだけオフセットした曲線605に沿って移動
し、金型表面にレンズ形状606を加工する。
【0070】砥石603の半径Rを加工しようとするト
ーリック面の曲率半径と同一かこれより小さくすること
により、実施の形態2で説明した金型を加工することが
できる。特に、砥石603の半径Rを加工しようとする
トーリック面の曲率半径の80%以上、更に90%以
上、特に95%以上とすると、金型を効率よく加工でき
るので好ましい。
【0071】砥石の軸607の径は図6(b)より明ら
かなように、加工するレンズのサグ、砥石の半径R、金
型と砥石軸とのクリアランスによって制約を受け、Rが
小径であったり、レンズのサグが大きい場合には軸径を
細くする必要がある。砥石の軸が細くなると、たわみな
どを起こす恐れがあり、加工精度を悪化させる。十分満
足な軸径を確保するためには、サグ量の小さい面に段差
加工を行いかつ、Rをレンズのサグに比べて十分大きく
とる必要がある。
【0072】
【数21】 0.7mm < R < 2.5mm ・・・(6)
【0073】は良好にゾーン分割型のレンズ成型用金型
を加工するための砥石半径Rの範囲であり、上式の下限
を超えてRが小さくなると、砥石の軸径が細くなりすぎ
るため、加工面の形状精度が悪くなる。また、上式の上
限を超えてRが大きくなると、トーリック面の接続領域
が広くなり、成形されたレンズの収差が設計から大きく
ずれてしまう。砥石半径Rは、
【0074】
【数22】 1.6mm < R < 2.1mm ・・・(7)
【0075】であることがより好ましい。この範囲内の
ときにトーリック面の幅を小さくすることと、砥石の軸
径を強度が十分な太さに保つこととを良好に両立させる
ことができる。
【0076】(第4の実施形態)図7は本発明の第4の
実施の形態にかかる形状計測装置の構成図である。
【0077】被検金型701はステージ702上に配置
される。ステージ702はステージ制御装置703によ
って水平方向に移動する。触針704は被検金型701
の表面に接触しながら垂直方向に移動するように触針制
御装置705によって制御・保持される。
【0078】ステージ制御装置703及び触針制御装置
705はステージの水平座標Yとそれに対応する触針の
垂直座標Zを演算装置706に転送する。YとZの組で
構成される座標データ列が被検金型701の形状データ
(測定データ)情報となる。ハードディスクドライブ装
置(HDD)707には被検金型701の設計形状デー
タが保存されており、演算装置706は、測定データと
設計形状データとを比較して得られる加工誤差をディス
プレイ708に表示する。また、キーボード709は、
データの入力や、計測装置の操作に用いられる。
【0079】本発明の計測装置においては、設計形状デ
ータとして内外周の回転対称非球面と、その接続面に相
当する光軸を回転軸とするトーリック面を用いることが
できる。その為、加工されたレンズの形状を誤差なく計
測することができる。
【0080】具体的には、実施形態1にて示した単レン
ズ用の金型形状を計測する場合には、内周部の第1の非
球面とトーリック面との境界部の光軸からの高さh1
1.06,外周部の第2の非球面とトーリック面との境
界部の光軸からの高さh2=1.094であるから、0
<h<1.06の範囲は前記式(8)の非球面多項式に
前記[表1]の係数を用いて形状を表現し、1.094
<hの領域は下記式
【0081】
【数23】
【0082】の非球面多項式に前記[表2]の係数を用
いて表現する。ここで、式(9)のA 0係数は外周部の
非球面を段差が適切となるようにz軸方向に平行移動さ
せる係数であり、この場合には0.303となる。ま
た、1.06<h<1.094の範囲は、中心の座標が
(h,z)=(1.006469,−2.02689
8)で半径が2mmの円弧の方程式を用いて形状を表現
する。このとき円弧形状は下記式(10)で表現され
る。
【0083】
【数24】
【0084】ここで、 h0=1.006469 z0=−2.026898 である。
【0085】なお、本実施の形態においては、触針式の
形状計測装置を用いて説明したが、これが、光学式の非
接触の形状計測装置や、原子間力を利用した形状計測装
置であっても同様の効果を有することはいうまでもな
い。
【0086】(第5の実施形態)次に、本発明の第5の
実施形態にかかる光ピックアップ装置を説明する。
【0087】図8は本発明の光ピックアップ装置の構成
図である。
【0088】801及び802はそれぞれDVD用及び
CD用のレーザモジュールである。DVD用のレーザモ
ジュール801は波長660nmのレーザ光を、CD用
のレーザモジュール802は波長780nmのレーザ光
をそれぞれ射出する半導体レーザと、それぞれのディス
クからの反射光を受光する受光素子とからなっている。
【0089】DVDの再生時には、DVDモジュール8
01からの射出光束はビームスプリッタ803を透過
し、コリメートレンズ804によって略平行光束に変換
され、本発明の対物レンズ805に入射する。本発明の
対物レンズ805はDVD806の情報記録面に集光ス
ポットを結像する。DVD806からの反射光は本発明
の対物レンズ805によって略平行光束となった後、コ
リメートレンズ804によって収束光束に変換される。
その後、ビームスプリッタ803を透過しDVDモジュ
ール801の受光部分に集光される。
【0090】次にCDの再生時の動作を説明する。CD
用モジュール802からの射出光束はビームスプリッタ
803により反射された後にコリメートレンズ804に
より略平行光束に変換され、本発明の対物レンズ805
に入射する。本発明の対物レンズ805はCD807の
情報記録面に集光スポットを結像する。CD807から
の反射光は本発明の対物レンズ805によって略平行光
束となった後、コリメートレンズ804によって収束光
束に変換され、ビームスプリッタ803によって反射さ
れCDモジュール802の受光部分に集光される。
【0091】ここで、対物レンズ805には本発明のガ
ラス製単レンズを用いるため温度変化による対物レンズ
の収差の変動が十分に小さい。そのため、車載用などの
ように広い温度範囲で動作を保証する必要がある場合に
も良好な性能を発揮できる。
【0092】
【発明の効果】本発明の単レンズは鋭利な段差を有する
従来のゾーン分割型対物レンズに比べて各種の利点を有
する、すなわち、従来の単レンズは鋭利な段差を有して
いたため、ダイヤモンドバイトを用いて金型を加工せね
ばならず、結果として、成形できる材料が限定されてい
たが、本発明の単レンズは段差部分を光軸を回転中心軸
とするトーリック面にて構成しているため、金型を砥石
で加工することが可能で、高温高圧成形が必用なガラス
材料を用いてレンズを構成することができる。
【0093】また、本発明のレンズ成型用金型は、段差
部分を光軸を回転中心軸とするトーリック面で構成して
いるため、従来のゾーン分割レンズ用金型に比べて各種
の利点を有する。すなわち、砥石を用いた研削加工によ
る製造が可能であり、ガラス材料の成形により適した超
硬素材を型材料として用いることができる。また、有効
径内に頂点曲率半径の小さな起伏を有さないため、形状
計測時にも500μm程度の先端曲率半径のプローブで
計測することが可能で、高精度に計測できる。
【0094】また、本発明の金型の加工方法は、ダイヤ
モンド砥石を用いた研削加工であるため、超硬合金を材
料としたゾーン分割型のレンズ用金型を製造することが
可能である。
【0095】また、本発明の形状計測装置は、レンズ形
状の設計式として内周部非球面と、外周部非球面と、そ
の中間領域の光軸を回転中心軸とするトーリック面との
3つを用いて1つの面形状を表現することが可能である
ため、従来の形状評価装置に比べて各種の利点を有す
る。すなわち、面形状を高次の多項式を用いてフィッテ
ィングした場合には必ずフィッテング誤差が発生し、特
に段差形状を有する場合には段差の前後でフィッテング
結果が振動する為誤差が大きくなり測定精度が低下する
が、本発明の形状計測装置によれば、設計形状に忠実に
計測することが可能で結果として測定精度を大きく向上
させることができる。
【0096】また、本発明の光ピックアップ装置は、本
発明の単レンズを用いているため従来のゾーン分割型レ
ンズを用いた光ピックアップ装置に比べて下記の利点を
有する。すなわち、本発明の単レンズは、温度変化によ
る収差劣化が少ないガラス材料を用いたレンズであるた
め、例えば車載環境のような広い温度条件で動作保証が
必用なピックアップ装置を構成することが可能である。
また、上述のように、本発明の単レンズは従来のレンズ
に比べて金型の生産コストを低くすることが可能な上
に、金型の寿命も長くなることが予想され、結果として
レンズの生産コストを低下させることが可能である。こ
れは、ピックアップ装置の生産コストを低減できること
となる。
【0097】なお、本明細においては、DVD/CD互
換レンズとして、内周非球面と外周非球面の2つのゾー
ンに分割設計する形式の単レンズを対象としたが、単レ
ンズを3つ以上のゾーンに分割する設計であっても、各
ゾーン間の段差部を光軸を回転対称軸とするトーリック
面で接続することによって上記と同様の本発明の効果が
得られることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の単レンズの概略航路図
【図2】 図1の単レンズのA部の半径方向拡大断面図
【図3】 数値実施例1にかかる単レンズのトーリック
面近傍の形状を示した拡大断面図
【図4】 数値実施例1の単レンズの収差曲線
【図5】 本発明のレンズ成型用金型の概略断面図
【図6】 本発明のレンズ成型用金型の研削加工方法を
示した概略図
【図7】 本発明の形状計測装置の概略構成図
【図8】 本発明の光ピックアップ装置の概略構成図
【符号の説明】
101 単レンズ 102 光ディスク媒体 103 光束 104、504 内周非球面領域(第1の領域) 105、505 外周非球面領域(第2の領域) 106、506 トーリック面領域(第3の領域) 107 光軸 501 レンズ成型用金型 601 被加工金型 602 被加工金型の回転軸 603 砥石 604 砥石の回転軸 605 砥石の移動する曲線 606 加工されたレンズ面 607 砥石の軸 701 被検金型 702 ステージ 703 ステージ制御装置 704 触針 705 触針制御装置 706 演算装置 707 ハードディスクドライブ装置 708 ディスプレイ装置 709 キーボード 801 DVD用レーザモジュール 802 CD用レーザモジュール 803 ビームスプリッタ 804 コリメートレンズ 805 対物レンズ 806 DVD 807 CD
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−183160(JP,A) 特開 平6−147886(JP,A) 特開 平10−228667(JP,A) 特開 平9−145995(JP,A) 実開 昭60−74006(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02B 13/00 G02B 9/00 G11B 7/135

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラス製の単レンズであって、前記単レ
    ンズの少なくとも1つの面が、光軸を中心とする同心円
    により少なくとも3つの領域に分割され、前記3つの領
    域のうち、光軸を含む第1の領域と、レンズの最も外部
    にある第2の領域が回転対称非球面であって、前記第1
    及び第2の領域に挟まれる第3の領域が光軸を回転中心
    軸とするトーリック面であることを特徴とする単レン
    ズ。
  2. 【請求項2】 前記トーリック面である第3の領域は、
    前記第2の領域と接し、前記第1の領域とは交わること
    を特徴とする請求項1に記載の単レンズ。
  3. 【請求項3】 前記第1及び第2の領域の非球面係数が
    異なることを特徴とする請求項1に記載の単レンズ。
  4. 【請求項4】 レンズの中心曲率半径の大きい側に前記
    トーリック面を設けたことを特徴とする請求項1に記載
    の単レンズ。
  5. 【請求項5】 前記第3の領域が、下記式を満たす半径
    Rの円弧を光軸を中心に回転させてできるトーリック面
    であることを特徴とする請求項1に記載の単レンズ。 【数1】 0.7mm < R < 2.5mm ・・・(1)
  6. 【請求項6】 前記第3の領域が、下記式を満たす半径
    Rの円弧を光軸を中心に回転させてできるトーリック面
    であることを特徴とする請求項1に記載の単レンズ。 【数2】 1.6mm < R < 2.1mm ・・・(2)
  7. 【請求項7】 前記第3の領域の幅wが下記を満たすこ
    とを特徴とする請求項1に記載の単レンズ。 【数3】 0.02mm < w < 0.04mm ・・・(3)
  8. 【請求項8】 超硬合金を研削加工して製造したレンズ
    成型用の金型であって、レンズ面が光軸を中心とする同
    心円により少なくとも3つの領域に分割され、前記3つ
    の領域のうち光軸を含む第1の領域と最も外側の第3の
    領域は回転対称非球面であって、前記第1及び第2の領
    域に挟まれる第3の領域が光軸を回転中心軸とするトー
    リック面であることを特徴とするレンズ成型用金型。
  9. 【請求項9】 前記光軸を回転中心とするトーリック面
    の曲率半径Rが下記式を満足することを特徴とする請求
    項8に記載のレンズ成型用金型。 【数4】 0.7mm < R < 2.5mm ・・・(4)
  10. 【請求項10】 前記光軸を回転中心とするトーリック
    面の曲率半径Rが下記式を満足することを特徴とする請
    求項8に記載のレンズ成型用金型。 【数5】 1.6mm < R < 2.1mm ・・・(5)
  11. 【請求項11】 レンズ面が光軸を中心とする同心円に
    より少なくとも3つの領域に分割され、前記3つの領域
    のうち光軸を含む第1の領域と最も外側の第3の領域は
    回転対称非球面であって、前記第1及び第2の領域に挟
    まれる第3の領域が光軸を回転中心軸とするトーリック
    面であるレンズ成型用金型をダイヤモンド砥石を用いて
    研削加工によって加工する加工方法であって、加工に用
    いるダイヤモンド砥石の半径は前記トーリック面の曲率
    半径と同一かこれより小さいことを特徴とするレンズ成
    型用金型の加工方法。
  12. 【請求項12】 前記ダイヤモンド砥石の半径Rが下記
    式を満足することを特徴とする請求項11に記載のレン
    ズ成型用金型の加工方法。 【数6】 0.7mm < R < 2.5mm ・・・(6)
  13. 【請求項13】 前記ダイヤモンド砥石の半径Rが下記
    式を満足することを特徴とする請求項11に記載のレン
    ズ成型用金型の加工方法。 【数7】 1.6mm < R < 2.1mm ・・・(7)
  14. 【請求項14】 少なくとも、第1の波長の光を射出す
    る第1のレーザ光源と、前記第1の波長とは異なる第2
    の波長の光を射出する第2のレーザ光源と、前記第1及
    び第2の光源からの射出光束を情報記録媒体に集光する
    集光手段と、前記情報記録媒体からの反射光のうち、第
    1の波長の光を受光するための第1の受光手段と、第2
    の波長の光を受光するための第2の受光手段とを有する
    光ピックアップ装置であって、前記集光手段として請求
    項1から請求項7のいずれかに記載の単レンズを用いた
    ことを特徴とする光ピックアップ装置。
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