従来、CD及びDVD等の数種類の光ディスクを1つの装置で記録再生することができる互換型の光ディスク装置がある。このような互換型の光ディスク装置は、それぞれの光ディスクにおいて情報信号の記録再生をするために、光源からのレーザービームをそれぞれの光ディスクの情報記録面に透明基板を介して集光させる必要がある。
CD(Compact Disk)とDVD(Digtal Versatile Disk)とにおいては、レーザービームの波長と、透明基板の厚さとが異なっている。この2つの相違点によって生じる収差により、レーザービームをそれぞれの光ディスクの情報記録面の回折限界近くまで集光させることができないという問題点があった。この問題点を解決するために、光源からの光が入射される側に段差構造を設けた非連続球面のレンズを用いて光ディスクに光を集光させることによって、二波長の光束における収差を抑制している。
また、近年青色レーザを用いた高密度光ディスク(BD:Blu−ray Disc、HD−DVD:High definition−DVD)が実用化され始めている。光ディスクの記録密度は、情報記録面に集光する光スポット径と対物レンズの開口数とに依存する。これにより、光ディスクの高密度化は、光ディスク装置の光源からのレーザービームの短波長化及び対物レンズにおける高開口数化により実現することができる。
このような青色レーザを用いた高密度の光ディスク装置においては、CD及びDVD等の既存の光ディスクを記録再生できるように、互換性を有している光ディスク装置であることが好ましい。また、光ピックアップにおいて、光ディスクの種類に応じて対物レンズを設け、使用する光ディスクの種類に応じて、対物レンズを交換する必要がある。さらに、光ディスクの種類ごとに光ヘッド装置を設け、使用する光ディスクの種類に応じて光ヘッド装置を交換する必要がある。
コストを削減するためや装置の小型化を実現するために光ヘッド装置は、CD及びDVDに用いられる対物レンズと、BD又はHD−DVDに用いられる対物レンズの2つの対物レンズを用いることが好ましい。ここで、DVDの波長は、略660nm、CDの波長は略785nm、及びBDの波長は略405nmである。
このような2つの対物レンズを有する従来の光ヘッド装置900の断面図を図13に示す。また、図13においては、対物レンズによって集光された光が照射される光ディスク904の断面図を点線で示している。図13に示す光ヘッド装置900はDVD及びCD互換用対物レンズ901、BD用対物レンズ902、レンズホルダ903、図示せぬアクチュエータを有する。レンズホルダ903はこのDVD及びCD互換用対物レンズ901及びBD用対物レンズ902を当接保持している。アクチュエータはレンズホルダ903を移動させる。すなわち、使用する光ディスク904に応じてアクチュエータを制御して、その光ディスクに対応した対物レンズが光軸上にくるように選択して移動させる。DVD及びCD互換用対物レンズ901又はBD用対物レンズ902を通過した光は光ディスク904に集光されて照射される。
しかしながら、対物レンズにおいては、製造時に非点対称の歪みが生じてしまい、この歪みが対物レンズにコマ収差を発生させてしまう。この対物レンズのコマ収差を抑制する従来の方法として、対物レンズを当接保持するレンズホルダ全体を傾けることによって、光軸を傾け、コマ収差を低減させていた。図14にレンズホルダ全体を傾けた従来の光ヘッド装置910の断面図及び点線で対物レンズを通過した光を集光する光ディスク904の断面図を点線で示す。図14に示すように、レンズホルダ903全体を傾けることにより、対物レンズ自体が有する製造誤差によるコマ収差を抑制している。しかし、この方法を用いて、片方の対物レンズのコマ収差を完全に抑制したとしても、他方の対物レンズのコマ収差まで完全に抑制できず、その他方の対物レンズのコマ収差をそれ以上小さくすることができないという問題点があった。
2枚の対物レンズ両方のコマ収差を抑制した光ヘッド部が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の技術は、DVD及びCD互換用対物レンズとBD用対物レンズとの開口率等に条件を設け、この条件によりDVD及びCD互換用対物レンズ及びBD用対物レンズを形成する。そして、この2つの対物レンズをレンズホルダに当接して、DVD及びCD互換用対物レンズ及びBD用対物レンズを有するレンズホルダ全体を傾けるものである。
また、従来1つの対物レンズのみを有する光ヘッド装置も一般的に用いられている。図15に従来の1つの対物レンズを有する光ヘッド装置920の断面図を示す。また、図15には、光ヘッド装置920の上方に対物レンズを通過した光を集光する光ディスク904の断面図を点線で示す。図15に示すように、1つの対物レンズを有する光ヘッド装置920は図13で示す2つの対物レンズを有する光ヘッド装置900と同様に、コマ収差が考慮されずに形成されていた。若しくは対物レンズの製造時に発生するコマ収差に基づきレンズホルダ全体を所定角度傾けていた(不図示)。
特許3235519号
しかしながら、特許文献1に記載の2つの対物レンズを有する光ヘッド装置は、コマ収差をなくす条件に合わせてDVD及びCD互換用対物レンズ及びBD用対物レンズを形成する必要があるため、このような対物レンズを製造することは困難であるという問題点があった。また、1つの対物レンズを有する光ヘッド装置の場合には、製造誤差によるコマ収差を補正するためにレンズホルダ全体を傾ける操作が細かい作業であるため、コマ収差が大きい値である場合はレンズホルダ全体を傾ける角度が大きいため調整時間が長くなり困難であった。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、光ディスク装置における対物レンズのコマ収差の抑制を容易にすることができるレンズホルダ及びこのレンズホルダを用いた光ヘッド装置を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様に係るレンズホルダにおいては、対物レンズを嵌合するレンズ取付孔と、前記レンズ取付孔の周囲に位置し、前記対物レンズを当接するレンズ当接面とを有し、前記対物レンズが傾いて嵌合するように前記レンズ当接面の一部に段差部が形成されている。レンズ当接面に段差部が形成されていることにより、対物レンズが傾いてレンズ当接面に当接されるため、対物レンズのコマ収差を抑制することができる。
本発明の第2の態様に係るレンズホルダにおいては、前記対物レンズはDVD及びCD互換用対物レンズ又はBD用対物レンズであることを特徴とするものである。
本発明の第3の態様に係るレンズホルダにおいては、対物レンズを嵌合する第1のレンズ取付孔及び第2のレンズ取付孔と、前記第1のレンズ取付孔の周囲に位置し、前記対物レンズを当接する第1のレンズ当接面と、前記第2のレンズ取付孔の周囲に位置し、前記対物レンズを当接する第2のレンズ当接面とを有し、前記対物レンズが前記第1のレンズ当接面及び/又は前記第2のレンズ当接面の一部に傾いて嵌合するように段差部が形成されている。第1のレンズ当接面及び/又は第2のレンズ当接面の一部に段差部が形成されていることにより、対物レンズが傾いて第1のレンズ当接面及び/又は第2のレンズ当接面に当接されるため、対物レンズの収差を抑制することができる。
本発明の第4の態様に係るレンズホルダにおいては、前記対物レンズはDVD及びCD互換用対物レンズ及びBD用対物レンズであることを特徴とするものである。
本発明の第5の態様に係るレンズホルダにおいては、前記段差部は前記対物レンズの製造時のコマ収差及び前記対物レンズが単位角度傾く際に発生する単位角コマ収差に基づいて形成されることを特徴とするものである。
本発明の第6の態様に係るレンズホルダにおいては、前記段差部はスペーサにより形成されることを特徴とするものである。
本発明の第7の態様に係るレンズホルダにおいては、前記段差部は前記レンズ当接面を切削することにより形成されることを特徴とするものである。
本発明の第8の態様に係るレンズホルダにおいては、前記段差部は前記対物レンズのコマ収差を60mλrms以下にするように形成されることを特徴とするものである。
本発明の第9の態様に係るレンズホルダにおいては、前記段差部は前記対物レンズのコマ収差を10mλrms以下にするように形成されることを特徴とするものである。
本発明の第10の態様に係るレンズホルダにおいては、前記レンズホルダを前記対物レンズのコマ収差に応じて前記コマ収差をなくすように傾けることを特徴とするものである。
本発明の第11の態様に係るレンズホルダにおいては、前記レンズホルダは、前記段差部により前記対物レンズが傾けられる方向と略逆方向又は略同方向に傾けられることを特徴とするものである。
本発明の第12の態様に係る光ヘッド装置においては、第1の態様乃至第11の態様にかかる前記レンズホルダを有するものである。
本発明の第13の態様に係る光ディスク装置においては、第12の態様にかかる前記光ヘッド装置を有するものである。
本発明の第14の態様に係る対物レンズの収差補正方法においては、光ディスクに光を集光するための対物レンズが嵌合するレンズ取付孔と、前記レンズ取付孔の周囲に位置し、前記対物レンズを当接するレンズ当接面とを有するレンズホルダを用いた対物レンズの収差補正方法であって、前記対物レンズの製造時のコマ収差及び前記対物レンズの単位角度傾ける際に発生するコマ収差である単位角コマ収差を測定するステップと、前記製造時のコマ収差及び前記単位角コマ収差に基づいて前記レンズ当接面の一部に段差部が形成された前記レンズホルダを準備するステップと、前記段差部を有する前記レンズホルダに前記対物レンズを傾けて嵌合させるステップとを有する。対物レンズの製造時のコマ収差及び単位角コマ収差に基づいてレンズ当接面の一部に段差部を形成することにより、対物レンズがレンズ当接面に傾いて当接されるため、対物レンズのコマ収差を抑制することができる。
本発明の第15の態様に係る対物レンズの収差補正方法においては、前記対物レンズはDVD及びCD互換用対物レンズ又はBD用対物レンズであることを特徴とするものである。
本発明の第16の態様に係る対物レンズの収差補正方法においては、第1の対物レンズ及び第2の対物レンズが嵌合する2つのレンズ取付孔と、前記レンズ取付孔の周囲に位置し、前記第1の対物レンズ及び第2の対物レンズを当接するレンズ当接面とを有するレンズホルダを用いた対物レンズの収差補正方法であって、前記第1の対物レンズ及び前記第2の対物レンズのそれぞれの製造時のコマ収差及び前記第1の対物レンズ及び前記第2の対物レンズの単位角あたりに発生するコマ収差である単位角コマ収差を測定するステップと、前記第1の対物レンズ及び前記第2の対物レンズそれぞれの製造時のコマ収差及び前記単位角コマ収差に基づいて前記第1の対物レンズ及び/又は前記第2の対物レンズのレンズ当接面の一部に段差部が形成された前記レンズホルダを準備するステップと、前記段差部を有する前記レンズホルダに前記第1の対物レンズ及び/又は前記第2の対物レンズを傾けて嵌合させるステップと、前記レンズホルダを前記第1の対物レンズ及び/又は前記第2の対物レンズのコマ収差をなくすように前記レンズホルダを傾けるステップとを有する。前記第1の対物レンズ及び前記第2の対物レンズの製造時のコマ収差及び単位角コマ収差に基づき、レンズ当接面の一部に段差部を形成し、第1の対物レンズ及び/又は第2の対物レンズを傾けてレンズ当接面に当接する。さらにレンズホルダを傾けることにより、第1の対物レンズ及び第2の対物レンズのコマ収差を抑制することができる。
本発明の第17の態様に係る対物レンズの収差補正方法においては、前記第1の対物レンズはDVD及びCD互換用対物レンズであり、前記第2の対物レンズはBD用対物レンズであることを特徴とするものである。
本発明の第18の態様に係る対物レンズの収差補正方法においては、前記段差部が異なる数種類の前記レンズホルダを予め用意することを特徴とするものである。
本発明によれば、対物レンズとレンズホルダとが当接されるレンズ当接面の一部に段差部を設けることによって、対物レンズのコマ収差を容易に抑制することができるレンズホルダ及びそのレンズホルダを用いた光ヘッド装置を提供することができる。
実施の形態1.
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明する。この実施の形態は、本発明をレンズホルダ及びこのレンズホルダを用いた光ヘッド装置に適用したものである。本実施の形態にかかる光ヘッド装置は、2つの対物レンズを有している。この2つの対物レンズを当接保持するためのレンズホルダは、それぞれの対物レンズに対応したレンズ当接面を有しており、このレンズ当接面の一部に段差部を設けている。
このレンズホルダに2つの対物レンズを当接保持させ、レンズホルダを傾けることによって、2つの対物レンズにおけるコマ収差を抑制させている。この段差部の高さは、それぞれの対物レンズにおけるコマ収差及びそれぞれの対物レンズにおける角度に対するコマ収差の変化量から算出される。このようにすることによって、容易に2つの対物レンズのコマ収差を低減させることができる。以下では、BD又はHD−DVD(High Definition DVD)用の対物レンズとCD及びDVD用の対物レンズの2つを有する光ヘッド装置を有する例として説明する。
本実施の形態に係る光ヘッド装置が用いられる光ディスク装置1の一例について説明する。図1に本発明を用いた光ディスク装置1の概略構成図を示す。図1に示すように、光ディスク装置1は、波長λ1で発光するBD用の光源2、波長λ2で発光するDVD用の光源3、波長λ3で発光するCD用の光源4、第1のビームスプリッタ5a、第2のビームスプリッタ5b、レンズ6、制限開口7、及び対物レンズ8とを有する。図1においては、光源2乃至4から出射された光が集光されて照射される光ディスクであるDVD9a、CD9b、及びBD9cの断面図も示す。
第1のビームスプリッタ5a及び第2のビームスプリッタ5bは光源2乃至4から出射された光を分割する。レンズ6はコリメータレンズ等である。そして、制限開口7は後述するように対物レンズ8の実効開口数を、照射対象の光ディスクに応じて決定する。対物レンズ8は光源2乃至4から出射された光束を光ディスク9a乃至9cの情報記録面上に集光する。
まず、BD用の光源2から出射した光は、ビームスプリッタ5aを通過し、レンズ6を介することによって略平行になる。レンズ6を通過した平行光が制限開口7を介して対物レンズ8に照射されて、対物レンズ8によってBD9cに集光される。DVD用の光源3から出射した光もBD用の光源2から出射した光と同様にビームスプリッタ5aを通過してレンズ6を介してレンズ8に照射される。そして、対物レンズ8によってDVD9aに集光される。また、CD用の光源4から出射した光は、ビームスプリッタ5bを通過する。そして、レンズ6及び制限開口7を介し、対物レンズ8に照射される。そして、対物レンズ8によってCD9bに集光される。なお、図1では、BD9c及びDVD9aを用いる場合を無限系の光学系とし、CD9bを用いる場合を有限系の光学系としたが、本発明はこれに限られない。
光源2乃至光源4から出射された光が光ディスクの情報記録面で反射する。そして、対物レンズ8を介して検出部(不図示)により反射した光が検出され、光電変換される。これにより、フォーカスサーボ信号、トラックサーボ信号、及び再生信号等を生成する。
以下、本実施の形態の光ヘッド装置10について図面を用いて詳細に説明する。図2に本発明の実施の形態にかかる光ヘッド装置10の概略構成図を示す。この光ヘッド装置10においては、上述の光ディスク装置における対物レンズ8を有している。また、本実施の形態に係る光ヘッド装置においては、対物レンズ8として、DVD及びCD互換用対物レンズ及びBD専用対物レンズを有している。図2には、光ヘッド装置10の対物レンズによって集光された光が照射される光ディスク9を点線で示す。また、図3に本実施の形態にかかる光ヘッド装置を対物レンズが当接保持される側から見た図を示す。
図2に示す光ヘッド装置10は、DVD及びCD互換用対物レンズ11、BD用対物レンズ12、及びレンズホルダ13を有する。このDVD及びCD互換用対物レンズ11及びBD用対物レンズ12を介して、光源から出射された光が光ディスク9の情報記録面に集光される。
レンズホルダ13はDVD及びCD互換用対物レンズ11及びBD用対物レンズ12を嵌合するための2つのレンズ取付孔を有する。一方のレンズ取付孔の周囲にはDVD及びCD互換用対物レンズを当接するためのレンズ当接面15aが形成されている。また、他方のレンズ取付孔の周囲にはBD用対物レンズ12を当接するためのレンズ当接面15bが形成されている。本実施の形態に係るレンズホルダ13においては、このレンズ当接面の一部に段差部14を形成している。ここでは、BD用対物レンズ12のレンズ当接面15bに段差部14を形成するものとする。なお、段差部14は、DVD及びCD互換用対物レンズ11が当接されるレンズ当接面15aに設けられてもよいし、DVD及びCD互換用対物レンズ11が当接されるレンズ当接面15bに設けられてもよい。また、BD用対物レンズが当接されるレンズ当接面15b及びDVD及びCD互換用対物レンズ11が当接されるレンズ当接面15a両方に設けられても良い。
また、ここでは、図3に示すように、段差部14は、BD用対物レンズ12のレンズ当接面15b上であって、DVD及びCD互換用対物レンズ11と離隔した位置に形成するものとする。もちろん、段差部14は、レンズ当接面15bのDVD及びCD互換用対物レンズ11側に設けても良い。また、段差部14を設けたレンズホルダ13を作成するのではなく、段差部14に相当するスペーサを用いてもよい。さらに、レンズ当接面15bに凹部を設けることによって対物レンズを傾けるようにしてもよい。すなわち、ここで段差部14と記述しているのは、DVD及びCD互換用対物レンズ11に対してBD用対物レンズ12を傾けるための段差部14であり、この段差部14は、凹部であってもよいし、凸部であってもよい。また、これらの部分がスペーサによって作成されても良い。
また、DVD及びCD互換用対物レンズ11においては、DVD9a及びCD9b側のレンズ面と、DVD9a及びCD9b側と反対側のレンズ面のどちらか一方を輪帯状の段差構造を形成した不連続な非球面形状にする。この不連続な非球面形状は、DVD及びCDの記録再生時の波面収差を極力抑えるように決定されている。また、BD用対物レンズ2は非球面レンズとしてもよいし球面レンズとしてもよい。
また、レンズ当接面15bに形成した段差部14の高さは、以下のようにして算出する。まず、それぞれの対物レンズにおける製造誤差によるコマ収差を測定する。同時に、レンズを傾ける角度であるチルト角に対するコマ収差の増加の割合である単位角コマ収差も測定する。一種類の対物レンズを作成する場合、一つの金型を作成した後に対物レンズは作成され、同じ金型で作成された対物レンズの場合、製造誤差は略同じ値をとることが経験的に実証されている。そのため、1枚の対物レンズにおいて上述の製造誤差によるコマ収差と単位角コマ収差とを測定することによって、同じ金型で作成した対物レンズにおける製造誤差によるコマ収差と単位角コマ収差とはその値と略同じ値をとると考えられる。
このようにして測定した、対物レンズのコマ収差と単位角コマ収差とを用いて、BD用対物レンズ12のレンズ当接面15bに形成する段差部14の高さを算出する。まず、それぞれの対物レンズにおけるコマ収差を、それぞれの対物レンズを傾けた際に発生するコマ収差の増加分で除算することによって、それぞれの対物レンズにおいてコマ収差をなくすために必要なレンズを傾ける角度であるチルト角を算出する。すなわち、DVD及びCD用の対物レンズ11においてコマ収差をなくすために必要な第1のチルト角と、BD用対物レンズ12においてコマ収差をなくすために必要な第2のチルト角との差を算出する。この第1のチルト角と第2のチルト角の差分だけBD用対物レンズ12が傾けられるような段差を算出することによって、レンズ当接面15bに形成した段差部14の高さを算出する。この方法で算出された高さの段差部14を有するレンズホルダ13を用いることによって、レンズホルダ13を傾けることによって、両方の対物レンズのコマ収差を同時に抑制することができる。
次に、一例を示すことによって、上述の段差部14の高さの算出方法を説明する。まず、図4にDVD及びCD用のDVD及びCD互換用対物レンズ11と、BD用の第2の対物レンズ12の設計仕様の一例を表す。図4には、DVD及びCD用の対物レンズ11、及びBD用の対物レンズ12に使用する光の波長λ、焦点距離f、実効開口数NA、物像間距離ODを記載している。図4に示すそれぞれの対物レンズの仕様を満たすように第1の対物レンズ11及び第2の対物レンズ12を設計する。
図4に示すように、DVDの波長は略660nm、CDの波長は略785nm、及びBDの波長は略405nmである。また、図4に示したDVD及びCD用の対物レンズ11及びBD用の対物レンズ12のそれぞれの実効開口数NAは、図示せぬ光ディスク装置の制限開口によって定められる。この制限開口は、光ディスク装置の光源から照射する対象に応じて実効開口数NAを変化させる。すなわち、例えば、光ディスクがBDである場合、BD用の対物レンズ12の実効開口数が約0.85となるように制限開口が動作する。この実効開口数は、有効径/(2×焦点距離)で求められる。
また、図4に示したCD及びDVD用の対物レンズ11及びBD用対物レンズ12における物像間距離ODが無限大であるというのは、対物レンズに平行光束が入射するということを示す。すなわち、本実施例においては、CD及びDVD用の対物レンズ11における物像間距離OD及びBD用対物レンズ12における物像間距ODは無限であるため、DVD及びCD用の対物レンズ11及びBD用の対物レンズ12には平行光が入射される。なお、本発明は、無限系に用いられる対物レンズには限られない。
以上の設計仕様等のデータに基づいて設計されたDVD及びCD互換用対物レンズ11の非球面形状を下記の式で表している。
(1)式において、zはサグ量、Rは非球面の光軸上での曲率半径、Kはコーニック係数、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16はそれぞれ4次から16次までの非球面係数である。また、Bは、光軸上のサグ量を示している。そして、C=1/Rである。このサグ量zとは、CD及びDVDの光ディスク側の面と反対側の面における光軸からの高さがhとなる非球面上の座標点における非球面の光軸上での接平面からの距離である。
この(1)式における係数表を図5に示す。図5に示すように、DVD及びCD互換用対物レンズ11の所定の輪帯におけるhの範囲が示されている。hは光軸からの高さであるため、それぞれの輪帯における(1)式で表される非球面形状が有効なレンズ半径である。すなわち、DVD及びCD互換用対物レンズ11は不連続な非球面形状を有するので、その不連続な非球面形状を構成する輪帯毎にその非球面形状を表記している。この不連続な非球面形状によって、CDに用いられる光の波長とDVDに用いられる光の波長とによって生じる収差を低減している。
次に、以上のデータに基づき形成されたDVD及びCD互換用対物レンズ11及びBD用対物レンズ12の製造の際に発生するそれぞれの対物レンズのコマ収差から、レンズ当接面に形成する段差部14の高さを算出する。この算出方法について図6乃至図9を用いて説明する。図6に、段差部14の高さを求める手順と数値例を示す。本例においては、BD用対物レンズ12のレンズ当接面15bに段差部14を設けることとする。
まず、DVD及びCD互換用対物レンズ11及びBD用対物レンズ12の製造時のコマ収差を測定する(手順(1))。それぞれの対物レンズのコマ収差の測定方法は、干渉計等を用いて測定する。本例においては、DVD及びCD互換用対物レンズ11の製造時のコマ収差は0.015λrms、BD用対物レンズ12の製造時のコマ収差は0.040λrmsである。また、製造のために対物レンズを設計した時点では、コマ収差は発生しないことになる。(手順(2))。すなわち、これらの対物レンズにおいては、製造時のコマ収差のみを考慮することになる。
次に、DVD及びCD互換用対物レンズ11及びBD用対物レンズ12を傾けるときに発生するコマ収差を測定する(手順(3))。図6にDVD及びCD互換用対物レンズ11及びBD用対物レンズ12を1度傾けたときに発生するコマ収差を記載する。DVD及びCD互換用対物レンズ11の単位角コマ収差は0.126λrms/度、BD用対物レンズ12の単位角コマ収差は0.085λrms/度である。
ここで、DVD及びCD互換用対物レンズ11を傾ける角度である第1のチルト角と、そのとき発生するコマ収差の関係を図7に示す。また、BD用対物レンズ12を傾ける角度である第2のチルト角と、そのとき発生するコマ収差の関係を図8に示す。そして、図9に図7及び図8から得られる対物レンズを傾ける角度と、対物レンズを傾けたときに発生するコマ収差の値をプロットしたものを示す。図9に示すグラフのx軸は対物レンズを傾ける角度であるチルト角(度)、y軸は対物レンズを傾けるときに発生するコマ収差(λrms)である。図9に示すように、第1のチルト角とコマ収差、及び第2のチルト角とコマ収差は比例関係を有する。すなわち、図9に示すグラフにより図6に示した単位角コマ収差が算出される。
そして、DVD及びCD互換用対物レンズ11及びBD用対物レンズ12の製造時のコマ収差と単位角コマ収差に基づきそれぞれの対物レンズのコマ収差を0にするためにレンズを傾ける角度(以下、必要レンズチルトという。)を算出する(手順(4))。このとき、必要レンズチルトは対物レンズの製造時のコマ収差と単位角コマ収差の除法により算出される。本例においては、DVD及びCD互換用対物レンズ11の必要レンズチルトは、0.119度、BD用対物レンズ12の必要レンズチルトは0.471度である。
上述の除法により算出された値のどちらか一方を基準にして、基準にした方の補正レンズチルトの値に基づきレンズホルダ13を傾ける。このレンズホルダ13を傾ける角度を以下、レンズホルダチルトという。このレンズホルダチルトは図2に示すα1である。本例においてはDVD及びCD互換用対物レンズ11を基準にしている。そのため、レンズホルダチルトはDVD及びCD互換用対物レンズ11の必要レンズチルトである0.119度となる(手順(5))。このようにレンズホルダ13を0.119度傾けることによって、DVD及びCD互換用対物レンズ11のコマ収差を略ゼロにすることができる。
しかしながら、ここではまだBD用対物レンズ12のコマ収差は生じているために、本実施の形態に係るレンズホルダにおいては、段差部14を設けている。すなわち、BD用対物レンズ12とDVD及びCD互換用対物レンズ11の必要レンズチルトの差を算出し、この差に基づいた高さを有する段差部14を設けることによってBD用対物レンズ12をDVD及びCD互換用対物レンズ11に対して傾ける必要がある。この差に基づくレンズチルトを補正レンズチルトという。この補正レンズチルトは図2に示すβ1である。このBD用対物レンズ12の補正レンズチルトは、DVD及びCD互換用対物レンズ11の必要レンズチルトとBD用対物レンズ12の必要レンズチルトの差である0.352度となる(手順(6))。
すなわち、補正レンズチルトとレンズホルダチルトをあわせた角度傾けることにより、BD用対物レンズ12のコマ収差はなくなる。この補正レンズチルトとレンズホルダチルトをあわせた角度は図2に示すγ1である。すなわち、γ1がBD用対物レンズ12の必要レンズチルトである0.471度となる。以上の算出方法により、DVD及びCD互換用対物レンズ11及びBD用対物レンズ12のコマ収差をなくすために必要な対物レンズ及びレンズホルダ13の傾ける角度を算出できる。
本実施の形態に係るレンズホルダにおいては、対物レンズのレンズ当接面に段差部14を設けることによって、一方の対物レンズを他方の対物レンズに対して傾ける。その後に、それらの対物レンズが設けられたレンズホルダを傾けることによって、それぞれの対物レンズにおけるコマ収差を抑制している。このレンズホルダを傾ける方向は、レンズ当接面上の段差部14により対物レンズが傾けられる方向と略逆方向又は略同じ方向とする。上述の例においては、BD用対物レンズ12を0.352度傾くように、BD用対物レンズのレンズ当接面15bに段差部14を設けておき、その後にレンズホルダを0.119度傾けることによって、DVD及びCD用の対物レンズ11とBD用対物レンズ12とにおけるコマ収差を抑制している。
この0.352度傾くような段差部14の高さは、BD用対物レンズ12の大きさに比例した高さを有している。すなわち、この補正レンズチルトは、ほとんどが1度にも満たない非常に小さい値であるため、対物レンズの幅とラジアン表示した角度との積とすることができる。このようにすることによって、段差部14の高さを算出することができる。
また、本例においては、数種類の異なる高さの段差部14を有するレンズホルダ13を用意しておくことが好ましい。ここで、この数種類のレンズホルダ13の補正レンズチルトと、この補正レンズチルトに対応する段差部14の高さとの関係を図10に示す。図10に示すように、本例においては、補正レンズチルトが0度、0.2度、0.35度、及び0.5度の4種類の場合のレンズホルダ13を用意する。そして、上述したように算出された補正レンズチルトに一番近い値のレンズホルダ13を用いて光ヘッド装置を形成する。本例においては、補正レンズチルトは0.352であるため、この値に一番近い補正レンズチルト0.35に基づいて形成されたNO.3のレンズホルダを使用する。これにより、レンズホルダを0.119度傾けることによって、DVD及びCD互換用対物レンズ11及びBD用対物レンズ12の収差は略無くなる。
本例においては、数種類の異なる高さの段差部14が形成されたレンズホルダ13を予め用意しておいたが、補正レンズチルトに応じた高さのスペーサを形成してもよい。または、補正レンズチルトに応じて、切削等行うことによって凹部を用いることによって段差部14を設けてもよい。さらに、本例においては一方のレンズ当接面に段差部14を形成することとしたが、両方のレンズ当接面に段差部14を設けてもよい。
以上に示す方法により、DVD及びCD互換用対物レンズ11とBD用対物レンズ12の収差をなくすようにレンズホルダ13のBD用対物レンズ12のレンズ当接面15bに段差部14を設ける。これにより、より容易に収差を抑制することができる。また、段差部14により収差を略なくなるように対物レンズをレンズホルダ13に嵌合することができる。また、DVD及びCD互換用対物レンズ11及びBD用対物レンズ12をレンズホルダ13に嵌合させたあとに必要であるレンズホルダ13を傾ける際の調整時間を短縮することができる。
実施の形態2.
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2では1つの対物レンズを有する光ヘッド装置について説明する。図11に1つの対物レンズを有する光ヘッド装置を示す。また、図11においては、光ヘッド装置20の対物レンズを通過した光が集光される光ディスク23を点線で示す。また、図12に光ヘッド装置20の上面図を示す。図11及び図12に示す実施の形態2にかかる光ヘッド装置において、図2及び図3に示す実施の形態1にかかる光ヘッド装置と同一構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図11に示す光ヘッド装置20は対物レンズ21、レンズホルダ22を有する。光ディスク装置の光源から出射された光が対物レンズ21を通過して、光ディスク23に集光される。また、本実施の形態に係るレンズホルダ22においては、レンズホルダ22の対物レンズ21が当接するレンズ当接面25の一部において、段差部24を有する。
また、この段差部24の高さは実施の形態1と同様の方法によって、算出される。この方法によって算出された高さの段差部24を有するレンズホルダ22に対物レンズ21を嵌合することによって、対物レンズ21のコマ収差は略抑制することができる。ここで、レンズ当接面25の一部に段差部24を形成することにより、対物レンズ21はレンズホルダ22にβ2度傾いて嵌合される。さらに、対物レンズ21のコマ収差の微調整を行う場合は段差部24を形成の後、レンズホルダ22全体を傾けてもよい。ここで、レンズホルダ22をα2度傾けることとする。すなわち、レンズ当接面25に段差部24を形成することにより、対物レンズ21を傾けてレンズホルダ22に嵌合する。さらに、この傾いた対物レンズ21が嵌合されたレンズホルダ22全体を傾けることにより、対物レンズ21はγ2度傾くことになる。
本例においては、予め段差部が形成された数種類のレンズホルダを用意しておくとよい。また、対物レンズを傾ける角度に応じてスペーサ等を形成してもよい。さらに、対物レンズを傾ける角度に応じて、レンズ当接面25に切削等を行い、凹部を形成することによって段差部24を設けてもよい。
以上に示すように、1つの対物レンズを有する光ヘッド装置20において、対物レンズ21のコマ収差をなくすように、レンズ当接面25の一部に段差部24を設けて対物レンズ21を嵌合させる。そして、必要に応じて段差部24が形成されたレンズホルダ22を傾ける。これにより、対物レンズ21のコマ収差を抑制することができる。また、段差部24によりコマ収差が略なくなるため、レンズホルダ22全体を傾けるために必要な調整時間が短縮される。さらに、DVD及びCDの光ディスクの記録再生の精度を向上することができる。
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。また、本例で形成した段差部による対物レンズの焦点距離はほとんど問題にならない程度の大きさである。