JP3504721B2 - 袋織エアバッグ - Google Patents
袋織エアバッグInfo
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Description
【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は自動車の乗員保護用とし
て使用される衝撃吸収用袋織エアバッグに関する。 【０００２】 【従来の技術】近年、自動車の衝突事故に伴う人身障害
防止のための乗員保護用安全装置としてエアバッグシス
テムが実用化され、搭載されつつある。エアバッグシス
テムは自動車の衝突を検知するセンサー、センサーから
の信号に基づいてエアバッグを膨張させるガス発生器
（インフレーター）および衝突時にガスによって膨張し
て乗員の衝撃を吸収するエアバッグから構成されてい
る。 【０００３】したがって、エアバッグはガスを収容する
袋織部を有すると共に、ガス発生器を取付けるための取
付口および膨張後のエアバッグからのガスを排出させる
ための機構（例えばベントホール、エアバッグ基布から
の排出）が設けられている。かかるエアバッグは、従来
ナイロン６６マルチフィラメント等の高強度合成繊維を
用いて織物を作り、例えばドライバーシート用エアバッ
グの場合、この織物から２枚のほぼ円形の織物を裁断
し、２枚の織物周辺部を縫製によって接合することによ
って形成され、その後ガス発生器取付口およびガス排出
機構が設けられている。なお、縫製に先たって、通常織
物にコーティングが施されている。 【０００４】前記従来公知の縫製によるエアバッグは縫
製に伴う種々の問題点、例えば縫製による接合の信頼性
および縫製作業によるコストアップ等の問題を有する。
そこで前記縫製によって周辺部の接合を有するエアバッ
グの問題点を解決するために周辺部の接合を接結一重組
織によって行う袋織エアバッグが特開平１−２５４４６
号公報に提案されている。 【０００５】 【発明が解決しようとする課題】前記袋織エアバッグの
構造及び問題点を図３を参照して以下説明する。図３は
従来公知の袋織エアバッグの一例を示す平面図を示した
ものである。図３に示すように従来公知の袋織エアバッ
グ５は表側織地６（使用時にドライバー側）と裏側織地
７（使用時にハンドル側）から成り、表側織地６と裏側
織地７の外周に接結一重組織部８の帯が織成によって形
成され、その結果表側織地６と裏側織地７の間に二重袋
織部ｄが形成されている。裏側織地７の中央にはガス発
生器取付口（図示せず）が設けられている。二重袋織部
ｄの外周はほぼ円形に作られ、二重袋織部ｄと接結一重
組織部８との境界線はほぼ円形となる。すなわち図３で
Ｄｗで示す経糸方向の直径、Ｄｆで示す緯糸方向の直
径、及びＤｂ1 ，Ｄｂ2 で示す互いに直交する２本のバ
イヤス方向（経糸又は緯糸に対して４５度の方向）の直
径の値はほぼ等しく形成されている。 【０００６】前記袋織エアバッグ５はＸ軸又はＹ軸上の
外周一重組織部８の二重袋織部ｄと接する１本の経糸又
は緯糸が二重袋織部ｄの経糸又は緯糸と交錯組織する本
数、すなわちＸ軸、Ｙ軸と交差する部位９，１０，１
１，１２での一重組織部８の境界線上の１本の経糸又は
緯糸に対する二重袋織部ｄ側からの交錯糸本数がバイヤ
ス方向の部位に比べて数１０本と極端に多くなり、バイ
ヤス方向の部位では境界線上の１本の経糸又は緯糸に対
する二重袋織部側の緯糸又は経糸の１本が対応交錯す
る。これは二重袋織部ｄの外周がほぼ円形作られている
ためである。このような袋織エアバッグ５でのインフレ
ーション試験では、二重袋織部ｄ内に加わる拡開応力が
糸軸方向（Ｘ軸、Ｙ軸と一重組織部の交差する部位）の
部位９，１０，１１，１２にあっては、二重袋織部ｄ側
の多数の緯糸又は経糸群に作用する引張応力を一重組織
部８側の境界線上の少ない（１本又は２本）経糸又は緯
糸が受けるため、即ち、同一の１本又は２本の境界糸に
対して多数本の直交糸条群の引張応力が集中作用して破
損する問題点があった。 【０００７】この改善策として、特開平４−４３１４１
号公報には経糸及び緯糸の糸軸方向のカバーファクター
を他の部分のカバーファクターより高い織物帯域を形成
することで耐インフレーション性の向上を図るなどのエ
アバッグが提案されている。しかし、前記提案の技術は
エアバッグ製造時の煩雑さ、二重袋織部６（７）のカバ
ーファクターが２０００以上になると経毛羽発生で製織
困難になるなどの問題を有している。 【０００８】本発明は上記問題点および袋織エアバッグ
の接結強力の方向による差異を極力小さくし、エアバッ
グとしてのバースト強度が高くインフレーション試験で
の袋の破損のない信頼性の高い袋織エアバッグを提供す
ることを目的とする。 【０００９】 【課題を解決するための手段及び作用】すなわち、本発
明は、例えば図１及び図２に示す如く、円形の流体導入
部用二重袋織部ｄの外周に一重組織部４の帯で接合され
ている袋織エアバッグにおいて、前記袋織部ｄの表裏各
経糸ｙ，ｙ′又は表裏各緯糸ｆ，ｆ′が、前記一重組織
部側の袋織部との境界Ｂに位置する１本の緯糸Ｆ又は経
糸Ｗに対してそれぞれ８本以下で交錯組織した袋織エア
バッグによって達成される。 【００１０】ここでいう円形とは円形に近い異形円、お
よび膨張したときに円形に近い形状になり得る多角形を
含むものを意味する。前記、袋織部ｄの表裏各経糸ｙ，
ｙ′又は表裏各緯糸ｆ，ｆ′が一重組織部側の袋織部と
の境界に位置する１本の緯糸Ｆ（Ｆ1 〜Ｆn ）又は経糸
Ｗ（Ｗ1 〜Ｗ n ）に対してそれぞれ８本以下で交錯組織
したとは、二重袋織部ｄの表裏の経糸ｙ，ｙ′又は表裏
の緯糸ｆ，ｆ′それぞれの８本以下が一重組織部側の袋
織部との境界Ｂを構成している１本の緯糸Ｆ又は経糸Ｗ
と交錯することを意味し、従って、袋織バッグ形状は円
形に近い異形円となる。このような袋織バッグにあって
一重組織部４側の１本の糸に対する袋織部側の糸の交錯
本数が最も多くなるのは経糸方向中心部Ｄｗ又は緯糸方
向中心部Ｄｆの方向であり、従って、一重組織部４側の
境界Ｂに位置する１本の経糸Ｗ又は緯糸Ｆに対して二重
袋織部側の８本を越えた各表裏の緯糸ｆ，ｆ′又は経糸
ｙ，ｙ′が交錯すれば、従来の袋織エアバッグ同様の局
部応力集中欠陥を生じ、接結部強力、バースト強力、耐
インフレーション性の改善はほとんど達成されない。 【００１１】一重組織部４側の境界Ｂ上の同一の１本の
経糸Ｗ又は緯糸Ｆに対する袋織部ｄ側の表裏各緯糸ｆ，
ｆ′又は経糸ｙ，ｙ′の交錯本数を８本以下に設定すれ
ば、表裏各８本以下の糸に作用する引張応力が１本の直
交糸Ｗ又はＦに作用することとなり、局部応力集中を避
けることが出来てバースト（破裂）強度が向上する。以
下、本発明の異形袋織エアバッグの好ましい一例を示す
添付図面を参照して本発明を説明する。 【００１２】図１は本発明の袋織エアバッグの好ましい
一例の平面図を示し、図２（Ａ），（Ｂ）及び（Ｃ）は
図１で示した袋織エアバッグを得るための二重袋織部と
一重組織部の境界部の組織図を示し、（Ａ）はＤｆ位置
の、（Ｂ）はＤｗ位置の、（Ｃ）はＤｂ1 （Ｄｂ2 ）位
置の部分組織図である。図１に示すように本発明のエア
バッグ１は表側織地２と裏側織地３の２枚の織物から成
り、表側織地２と裏側織地３の外周が接結一重組織部４
によって１枚の織物として形成され、その結果表側織地
２と裏側織地３とで二重袋織部ｄが形成されている。こ
の袋織エアバッグ１のＤｆ方向、即ち緯糸方向に関して
は、図２（Ａ）に示すように接結一重組織部４の２本引
揃えの経糸Ｗ1 １本に対して二重袋織部ｄの表緯糸（ｆ
1 〜ｆ8 ）８本、裏緯糸（ｆ′1 〜ｆ′8 ）８本で交錯
組織し、順次２本引揃えの経糸Ｗ2 〜Ｗn へと行くに従
って二重組織部ｄの交錯緯糸数を減じながら、Ｄｂ
1 （Ｄｂ2 ）位置あたりでは図２（Ｃ）の如く、２本引
揃え経糸Ｗｂ１本に対し二重袋織部ｄの表緯糸ｆｂ１本
と裏緯糸ｆ′ｂ１本とが交錯組織する。一方Ｄｗ方向、
即ち経糸方向に関しては、図２（Ｂ）に示すように接結
一重組織部４の２本引揃えの緯糸Ｆ1 １本に対して二重
袋織部ｄの表経糸（ｙ1 〜ｙ8 ）８本、裏経糸（ｙ′1
〜ｙ′8 ）８本で交錯組織し、順次Ｆ2 〜Ｆn へと行く
にしたがって交錯経糸数を減じ、バイヤス方向Ｄｂ
1 （Ｄｂ2 ）位置では図２（Ｃ）の如く、緯糸Ｆｂ１本
に対して表経糸ｙｂ１本と裏経糸ｙ′ｂ１本とが交錯組
織するよう予めジャガード用の紋紙を作り製織した。従
って、図１に示すようにバッグ形状が円形でなく、経糸
方向Ｄｗの直径と緯糸方向Ｄｆの直径がバイヤス方向Ｄ
ｂ1 ，Ｄｂ2 の直径に比べて少し長い異形円となる。そ
の結果、バッグ形状が円形の場合での経糸又は緯糸方向
の境界部（図３の９，１０，１１，１２部分）よりも、
一重組織部の１本の同一糸に対する袋織部側から直交交
錯する糸本数をはるかに少なく出来、２本引揃え状の１
本の糸に対する応力の集中も軽減出来、経糸緯糸の糸軸
方向の接結部強力、バースト強力、耐インフレーション
性の向上が得られた。この袋織エアバッグを製織する織
機はジャガードを搭載した織機に限定される。 【００１３】また、前記袋織部の経糸または緯糸が前記
一重組織部のそれぞれ同一の経糸または緯糸と多数本で
交錯組織した場合、応力が集中してバッグ破損が生じる
ため、交錯本数の多くなる経糸又は緯糸方向位置にあっ
ても出来るだけ交錯本数を少くすべきであり（Ｄｂ1 や
Ｄｂ2 （図１）の位置では１本の糸に直交糸１本が交錯
する）、バッグの全方向の交錯本数のバラツキが少くな
るように設計すべきである。 【００１４】尚、接結一重組織部では図示例の如く正則
斜子組織が好ましいが、平組織であっても本発明の目的
を達成することは当業者にとって自明である。 【００１５】 【実施例】以下実施例により本発明を説明し、併せて比
較例との物性比較を行う。なお、エアバッグの接結強力
は図５に示す方法で実施した。すなわち試料として、図
４（Ａ）にＣｗで示す経糸方向のサンプル、Ｃｔで示す
緯糸方向のサンプルおよびＣｂで示すバイヤス方向のサ
ンプルをそれぞれ対応する袋織エアバッグから採取（２
００mm×８０mm）し、図４（Ｂ）に示すようにサンプル
両端の一重接結部４と袋織部ｄの境界部に２５mmの切込
みを入れて切込み部分で袋織部ｄの表側織地２と裏側織
地３とを切離しておく。 【００１６】それらの試験サンプルを図５に示すように
織物試験機に表側織地２のつかみ１３と裏側織地３のつ
かみ１４のつかみ間隔を２００mmで取付ける。その際接
結部１５がつかみ間の中心に位置するように初荷重を加
えてつかみ、引張速度２００±２mm／分の条件で試験を
行う。接結部が破壊した時の強さＮ／３０mmを測定し、
つかみ付近で切断したものを除外し、３回の測定値の平
均値で表す。 【００１７】次に、バースト試験は図６に示すバースト
試験装置を用いてエアバッグ１７の中へエアバッグより
大きい風船１８を入れた上で、エアバッグ取付板１９に
取付具２０を用いて固定する。圧力調整弁２２により高
圧空気１６の供給量を調整しながらエアバッグ１７が破
裂したときの圧力（kg／cm2 ）を圧力計２１により求め
る。実施例１ 図１に示す本発明の袋織エアバッグ用袋織地を下記に示
す仕様で製織した。 糸使い 経糸 ナイロン６６ ４２０ｄ／７０
ｆ 緯糸 ナイロン６６ ４２０ｄ／７０
ｆ 筬羽数 ３７羽／Ｋ寸 経糸引込み本数 ４本／羽 入れ 打込み密度 経緯共１０２本／吋 通し幅 １５７．３cm 織機 ドルニエ ＨＴＶ４Ｊ型 ジャガード グロッセ ＵＮＩＲＡＰＩＤ４ 二重袋織部 直径５８９cmでＤｗ，Ｄｆの４点
がやゝ突出した異形円の表裏平組織 外周接結一重組織部 １５mm幅の２／２斜子組織 一重部と二重部の交錯組織 経糸方向（Ｄｗ）：２本引揃緯糸１本と表裏各経糸８本 緯糸方向（Ｄｆ）：２本引揃経糸１本と表裏各緯糸８本 その他の方向 ：境界線が円形となるように、引揃緯
糸１本と表裏経糸８本→引揃緯糸１本と表裏各経糸１本
→表裏各緯糸８本と引揃経糸１本、へと円弧曲線を形成
させた。実施例２ 一重部と二重部の交錯組織 経糸方向（Ｄｗ）：引揃緯糸１本と表裏各経糸４本 緯糸方向（Ｄｆ）：引揃経糸１本と表裏各緯糸４本 上記条件以外は実施例１と同一条件で製織した。 【００１８】 【比較例】比較例１ 二重袋織部 直径５８９cmの円形 一重部と二重部の交錯組織 経糸方向（Ｄｗ）：引揃緯糸１本と表裏各経糸３５本 緯糸方向（Ｄｆ）：引揃経糸１本と表裏各緯糸３５本 上記条件以外は実施例１と同一条件で製織した。 【００１９】実施例１，２及び比較例１の３種類の袋織
エアバッグの接結強力・バースト強力値の比較結果を第
１表に示す。 【００２０】 【表１】 【００２１】第１表に示すように、本発明の実施例の袋
織地の経糸方向及び緯糸方向のバイヤス方向に対する接
結強力の差は比較例に比べて大幅に縮小しており、その
結果エアバッグ全体としての接結部強力アップ及びバー
スト強力アップに寄与し、バーストの部位が糸軸方向に
偏らずインフレーター取付口周辺部になった。 【００２２】一方、比較例１の接結部強力については、
経糸方向及び緯糸方向の強力がバイヤス方向の強力の７
９〜８２％しかなく、その結果バースト試験において
は、低バースト強力で、かつバースト部位は糸軸方向に
偏った。 【００２３】 【発明の効果】本発明による袋織エアバッグは前述のよ
うに構成されているので接結部強力の偏りを少なくする
ことができ、その結果接結部強力及びバースト強力を一
段と向上させることができる。また、本発明による袋織
エアバッグは従来公知の袋織エアバッグを製織するとき
の織物設計の変更のみで実施できるので同一のコストで
優れたエアバッグを得ることができるという利点を有す
る。
て使用される衝撃吸収用袋織エアバッグに関する。 【０００２】 【従来の技術】近年、自動車の衝突事故に伴う人身障害
防止のための乗員保護用安全装置としてエアバッグシス
テムが実用化され、搭載されつつある。エアバッグシス
テムは自動車の衝突を検知するセンサー、センサーから
の信号に基づいてエアバッグを膨張させるガス発生器
（インフレーター）および衝突時にガスによって膨張し
て乗員の衝撃を吸収するエアバッグから構成されてい
る。 【０００３】したがって、エアバッグはガスを収容する
袋織部を有すると共に、ガス発生器を取付けるための取
付口および膨張後のエアバッグからのガスを排出させる
ための機構（例えばベントホール、エアバッグ基布から
の排出）が設けられている。かかるエアバッグは、従来
ナイロン６６マルチフィラメント等の高強度合成繊維を
用いて織物を作り、例えばドライバーシート用エアバッ
グの場合、この織物から２枚のほぼ円形の織物を裁断
し、２枚の織物周辺部を縫製によって接合することによ
って形成され、その後ガス発生器取付口およびガス排出
機構が設けられている。なお、縫製に先たって、通常織
物にコーティングが施されている。 【０００４】前記従来公知の縫製によるエアバッグは縫
製に伴う種々の問題点、例えば縫製による接合の信頼性
および縫製作業によるコストアップ等の問題を有する。
そこで前記縫製によって周辺部の接合を有するエアバッ
グの問題点を解決するために周辺部の接合を接結一重組
織によって行う袋織エアバッグが特開平１−２５４４６
号公報に提案されている。 【０００５】 【発明が解決しようとする課題】前記袋織エアバッグの
構造及び問題点を図３を参照して以下説明する。図３は
従来公知の袋織エアバッグの一例を示す平面図を示した
ものである。図３に示すように従来公知の袋織エアバッ
グ５は表側織地６（使用時にドライバー側）と裏側織地
７（使用時にハンドル側）から成り、表側織地６と裏側
織地７の外周に接結一重組織部８の帯が織成によって形
成され、その結果表側織地６と裏側織地７の間に二重袋
織部ｄが形成されている。裏側織地７の中央にはガス発
生器取付口（図示せず）が設けられている。二重袋織部
ｄの外周はほぼ円形に作られ、二重袋織部ｄと接結一重
組織部８との境界線はほぼ円形となる。すなわち図３で
Ｄｗで示す経糸方向の直径、Ｄｆで示す緯糸方向の直
径、及びＤｂ1 ，Ｄｂ2 で示す互いに直交する２本のバ
イヤス方向（経糸又は緯糸に対して４５度の方向）の直
径の値はほぼ等しく形成されている。 【０００６】前記袋織エアバッグ５はＸ軸又はＹ軸上の
外周一重組織部８の二重袋織部ｄと接する１本の経糸又
は緯糸が二重袋織部ｄの経糸又は緯糸と交錯組織する本
数、すなわちＸ軸、Ｙ軸と交差する部位９，１０，１
１，１２での一重組織部８の境界線上の１本の経糸又は
緯糸に対する二重袋織部ｄ側からの交錯糸本数がバイヤ
ス方向の部位に比べて数１０本と極端に多くなり、バイ
ヤス方向の部位では境界線上の１本の経糸又は緯糸に対
する二重袋織部側の緯糸又は経糸の１本が対応交錯す
る。これは二重袋織部ｄの外周がほぼ円形作られている
ためである。このような袋織エアバッグ５でのインフレ
ーション試験では、二重袋織部ｄ内に加わる拡開応力が
糸軸方向（Ｘ軸、Ｙ軸と一重組織部の交差する部位）の
部位９，１０，１１，１２にあっては、二重袋織部ｄ側
の多数の緯糸又は経糸群に作用する引張応力を一重組織
部８側の境界線上の少ない（１本又は２本）経糸又は緯
糸が受けるため、即ち、同一の１本又は２本の境界糸に
対して多数本の直交糸条群の引張応力が集中作用して破
損する問題点があった。 【０００７】この改善策として、特開平４−４３１４１
号公報には経糸及び緯糸の糸軸方向のカバーファクター
を他の部分のカバーファクターより高い織物帯域を形成
することで耐インフレーション性の向上を図るなどのエ
アバッグが提案されている。しかし、前記提案の技術は
エアバッグ製造時の煩雑さ、二重袋織部６（７）のカバ
ーファクターが２０００以上になると経毛羽発生で製織
困難になるなどの問題を有している。 【０００８】本発明は上記問題点および袋織エアバッグ
の接結強力の方向による差異を極力小さくし、エアバッ
グとしてのバースト強度が高くインフレーション試験で
の袋の破損のない信頼性の高い袋織エアバッグを提供す
ることを目的とする。 【０００９】 【課題を解決するための手段及び作用】すなわち、本発
明は、例えば図１及び図２に示す如く、円形の流体導入
部用二重袋織部ｄの外周に一重組織部４の帯で接合され
ている袋織エアバッグにおいて、前記袋織部ｄの表裏各
経糸ｙ，ｙ′又は表裏各緯糸ｆ，ｆ′が、前記一重組織
部側の袋織部との境界Ｂに位置する１本の緯糸Ｆ又は経
糸Ｗに対してそれぞれ８本以下で交錯組織した袋織エア
バッグによって達成される。 【００１０】ここでいう円形とは円形に近い異形円、お
よび膨張したときに円形に近い形状になり得る多角形を
含むものを意味する。前記、袋織部ｄの表裏各経糸ｙ，
ｙ′又は表裏各緯糸ｆ，ｆ′が一重組織部側の袋織部と
の境界に位置する１本の緯糸Ｆ（Ｆ1 〜Ｆn ）又は経糸
Ｗ（Ｗ1 〜Ｗ n ）に対してそれぞれ８本以下で交錯組織
したとは、二重袋織部ｄの表裏の経糸ｙ，ｙ′又は表裏
の緯糸ｆ，ｆ′それぞれの８本以下が一重組織部側の袋
織部との境界Ｂを構成している１本の緯糸Ｆ又は経糸Ｗ
と交錯することを意味し、従って、袋織バッグ形状は円
形に近い異形円となる。このような袋織バッグにあって
一重組織部４側の１本の糸に対する袋織部側の糸の交錯
本数が最も多くなるのは経糸方向中心部Ｄｗ又は緯糸方
向中心部Ｄｆの方向であり、従って、一重組織部４側の
境界Ｂに位置する１本の経糸Ｗ又は緯糸Ｆに対して二重
袋織部側の８本を越えた各表裏の緯糸ｆ，ｆ′又は経糸
ｙ，ｙ′が交錯すれば、従来の袋織エアバッグ同様の局
部応力集中欠陥を生じ、接結部強力、バースト強力、耐
インフレーション性の改善はほとんど達成されない。 【００１１】一重組織部４側の境界Ｂ上の同一の１本の
経糸Ｗ又は緯糸Ｆに対する袋織部ｄ側の表裏各緯糸ｆ，
ｆ′又は経糸ｙ，ｙ′の交錯本数を８本以下に設定すれ
ば、表裏各８本以下の糸に作用する引張応力が１本の直
交糸Ｗ又はＦに作用することとなり、局部応力集中を避
けることが出来てバースト（破裂）強度が向上する。以
下、本発明の異形袋織エアバッグの好ましい一例を示す
添付図面を参照して本発明を説明する。 【００１２】図１は本発明の袋織エアバッグの好ましい
一例の平面図を示し、図２（Ａ），（Ｂ）及び（Ｃ）は
図１で示した袋織エアバッグを得るための二重袋織部と
一重組織部の境界部の組織図を示し、（Ａ）はＤｆ位置
の、（Ｂ）はＤｗ位置の、（Ｃ）はＤｂ1 （Ｄｂ2 ）位
置の部分組織図である。図１に示すように本発明のエア
バッグ１は表側織地２と裏側織地３の２枚の織物から成
り、表側織地２と裏側織地３の外周が接結一重組織部４
によって１枚の織物として形成され、その結果表側織地
２と裏側織地３とで二重袋織部ｄが形成されている。こ
の袋織エアバッグ１のＤｆ方向、即ち緯糸方向に関して
は、図２（Ａ）に示すように接結一重組織部４の２本引
揃えの経糸Ｗ1 １本に対して二重袋織部ｄの表緯糸（ｆ
1 〜ｆ8 ）８本、裏緯糸（ｆ′1 〜ｆ′8 ）８本で交錯
組織し、順次２本引揃えの経糸Ｗ2 〜Ｗn へと行くに従
って二重組織部ｄの交錯緯糸数を減じながら、Ｄｂ
1 （Ｄｂ2 ）位置あたりでは図２（Ｃ）の如く、２本引
揃え経糸Ｗｂ１本に対し二重袋織部ｄの表緯糸ｆｂ１本
と裏緯糸ｆ′ｂ１本とが交錯組織する。一方Ｄｗ方向、
即ち経糸方向に関しては、図２（Ｂ）に示すように接結
一重組織部４の２本引揃えの緯糸Ｆ1 １本に対して二重
袋織部ｄの表経糸（ｙ1 〜ｙ8 ）８本、裏経糸（ｙ′1
〜ｙ′8 ）８本で交錯組織し、順次Ｆ2 〜Ｆn へと行く
にしたがって交錯経糸数を減じ、バイヤス方向Ｄｂ
1 （Ｄｂ2 ）位置では図２（Ｃ）の如く、緯糸Ｆｂ１本
に対して表経糸ｙｂ１本と裏経糸ｙ′ｂ１本とが交錯組
織するよう予めジャガード用の紋紙を作り製織した。従
って、図１に示すようにバッグ形状が円形でなく、経糸
方向Ｄｗの直径と緯糸方向Ｄｆの直径がバイヤス方向Ｄ
ｂ1 ，Ｄｂ2 の直径に比べて少し長い異形円となる。そ
の結果、バッグ形状が円形の場合での経糸又は緯糸方向
の境界部（図３の９，１０，１１，１２部分）よりも、
一重組織部の１本の同一糸に対する袋織部側から直交交
錯する糸本数をはるかに少なく出来、２本引揃え状の１
本の糸に対する応力の集中も軽減出来、経糸緯糸の糸軸
方向の接結部強力、バースト強力、耐インフレーション
性の向上が得られた。この袋織エアバッグを製織する織
機はジャガードを搭載した織機に限定される。 【００１３】また、前記袋織部の経糸または緯糸が前記
一重組織部のそれぞれ同一の経糸または緯糸と多数本で
交錯組織した場合、応力が集中してバッグ破損が生じる
ため、交錯本数の多くなる経糸又は緯糸方向位置にあっ
ても出来るだけ交錯本数を少くすべきであり（Ｄｂ1 や
Ｄｂ2 （図１）の位置では１本の糸に直交糸１本が交錯
する）、バッグの全方向の交錯本数のバラツキが少くな
るように設計すべきである。 【００１４】尚、接結一重組織部では図示例の如く正則
斜子組織が好ましいが、平組織であっても本発明の目的
を達成することは当業者にとって自明である。 【００１５】 【実施例】以下実施例により本発明を説明し、併せて比
較例との物性比較を行う。なお、エアバッグの接結強力
は図５に示す方法で実施した。すなわち試料として、図
４（Ａ）にＣｗで示す経糸方向のサンプル、Ｃｔで示す
緯糸方向のサンプルおよびＣｂで示すバイヤス方向のサ
ンプルをそれぞれ対応する袋織エアバッグから採取（２
００mm×８０mm）し、図４（Ｂ）に示すようにサンプル
両端の一重接結部４と袋織部ｄの境界部に２５mmの切込
みを入れて切込み部分で袋織部ｄの表側織地２と裏側織
地３とを切離しておく。 【００１６】それらの試験サンプルを図５に示すように
織物試験機に表側織地２のつかみ１３と裏側織地３のつ
かみ１４のつかみ間隔を２００mmで取付ける。その際接
結部１５がつかみ間の中心に位置するように初荷重を加
えてつかみ、引張速度２００±２mm／分の条件で試験を
行う。接結部が破壊した時の強さＮ／３０mmを測定し、
つかみ付近で切断したものを除外し、３回の測定値の平
均値で表す。 【００１７】次に、バースト試験は図６に示すバースト
試験装置を用いてエアバッグ１７の中へエアバッグより
大きい風船１８を入れた上で、エアバッグ取付板１９に
取付具２０を用いて固定する。圧力調整弁２２により高
圧空気１６の供給量を調整しながらエアバッグ１７が破
裂したときの圧力（kg／cm2 ）を圧力計２１により求め
る。実施例１ 図１に示す本発明の袋織エアバッグ用袋織地を下記に示
す仕様で製織した。 糸使い 経糸 ナイロン６６ ４２０ｄ／７０
ｆ 緯糸 ナイロン６６ ４２０ｄ／７０
ｆ 筬羽数 ３７羽／Ｋ寸 経糸引込み本数 ４本／羽 入れ 打込み密度 経緯共１０２本／吋 通し幅 １５７．３cm 織機 ドルニエ ＨＴＶ４Ｊ型 ジャガード グロッセ ＵＮＩＲＡＰＩＤ４ 二重袋織部 直径５８９cmでＤｗ，Ｄｆの４点
がやゝ突出した異形円の表裏平組織 外周接結一重組織部 １５mm幅の２／２斜子組織 一重部と二重部の交錯組織 経糸方向（Ｄｗ）：２本引揃緯糸１本と表裏各経糸８本 緯糸方向（Ｄｆ）：２本引揃経糸１本と表裏各緯糸８本 その他の方向 ：境界線が円形となるように、引揃緯
糸１本と表裏経糸８本→引揃緯糸１本と表裏各経糸１本
→表裏各緯糸８本と引揃経糸１本、へと円弧曲線を形成
させた。実施例２ 一重部と二重部の交錯組織 経糸方向（Ｄｗ）：引揃緯糸１本と表裏各経糸４本 緯糸方向（Ｄｆ）：引揃経糸１本と表裏各緯糸４本 上記条件以外は実施例１と同一条件で製織した。 【００１８】 【比較例】比較例１ 二重袋織部 直径５８９cmの円形 一重部と二重部の交錯組織 経糸方向（Ｄｗ）：引揃緯糸１本と表裏各経糸３５本 緯糸方向（Ｄｆ）：引揃経糸１本と表裏各緯糸３５本 上記条件以外は実施例１と同一条件で製織した。 【００１９】実施例１，２及び比較例１の３種類の袋織
エアバッグの接結強力・バースト強力値の比較結果を第
１表に示す。 【００２０】 【表１】 【００２１】第１表に示すように、本発明の実施例の袋
織地の経糸方向及び緯糸方向のバイヤス方向に対する接
結強力の差は比較例に比べて大幅に縮小しており、その
結果エアバッグ全体としての接結部強力アップ及びバー
スト強力アップに寄与し、バーストの部位が糸軸方向に
偏らずインフレーター取付口周辺部になった。 【００２２】一方、比較例１の接結部強力については、
経糸方向及び緯糸方向の強力がバイヤス方向の強力の７
９〜８２％しかなく、その結果バースト試験において
は、低バースト強力で、かつバースト部位は糸軸方向に
偏った。 【００２３】 【発明の効果】本発明による袋織エアバッグは前述のよ
うに構成されているので接結部強力の偏りを少なくする
ことができ、その結果接結部強力及びバースト強力を一
段と向上させることができる。また、本発明による袋織
エアバッグは従来公知の袋織エアバッグを製織するとき
の織物設計の変更のみで実施できるので同一のコストで
優れたエアバッグを得ることができるという利点を有す
る。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明により異形袋織エアバッグの平面図。
【図２】図１に示した袋織エアバッグを得るための組織
図を示し、（Ａ）は緯糸方向の接結一重部と二重袋織部
の境界部の組織図であり、（Ｂ）は経糸方向の接結一重
部と二重袋織部の境界部の組織図であり、（Ｃ）はＤｂ
1 （Ｄｂ2 ）方向（バイヤス方向）の接結一重部と二重
袋織部の境界部の組織図である。 【図３】従来公知の袋織エアバッグの平面図。 【図４】（Ａ）は接結部強力測定用試料を採取する位置
説明図であり、（Ｂ）は測定用試料を作成する説明図。 【図５】接結部強力測定方法の説明図。 【図６】バースト試験測定装置の説明図。 【符号の説明】 １…本発明の異形袋織エアバッグ ２，６…表側織地 ３，７…裏側織地 ４，８…接結一重組織部 ５…従来公知の袋織エアバッグ ９，１０，１１，１２…Ｘ軸、Ｙ軸と交差する部位 １３，１４…織地のつかみ部 １５…接結部（一重組織部と二重袋織部の境界） １６…高圧空気 １７…エアバッグ １８…風船 １９…エアバッグ取付板 ２０…取付具 ２１…圧力計 ２２…圧力調整弁 Ｄｗ…経糸方向 Ｄｆ…緯糸方向 Ｄｂ1 ，Ｄｂ2 …バイヤス方向
図を示し、（Ａ）は緯糸方向の接結一重部と二重袋織部
の境界部の組織図であり、（Ｂ）は経糸方向の接結一重
部と二重袋織部の境界部の組織図であり、（Ｃ）はＤｂ
1 （Ｄｂ2 ）方向（バイヤス方向）の接結一重部と二重
袋織部の境界部の組織図である。 【図３】従来公知の袋織エアバッグの平面図。 【図４】（Ａ）は接結部強力測定用試料を採取する位置
説明図であり、（Ｂ）は測定用試料を作成する説明図。 【図５】接結部強力測定方法の説明図。 【図６】バースト試験測定装置の説明図。 【符号の説明】 １…本発明の異形袋織エアバッグ ２，６…表側織地 ３，７…裏側織地 ４，８…接結一重組織部 ５…従来公知の袋織エアバッグ ９，１０，１１，１２…Ｘ軸、Ｙ軸と交差する部位 １３，１４…織地のつかみ部 １５…接結部（一重組織部と二重袋織部の境界） １６…高圧空気 １７…エアバッグ １８…風船 １９…エアバッグ取付板 ２０…取付具 ２１…圧力計 ２２…圧力調整弁 Ｄｗ…経糸方向 Ｄｆ…緯糸方向 Ｄｂ1 ，Ｄｂ2 …バイヤス方向
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(56)参考文献 特開 平４−362441（ＪＰ，Ａ)
特開 平４−5145（ＪＰ，Ａ)
特開 平４−193646（ＪＰ，Ａ)
特開 平３−16850（ＪＰ，Ａ)
特開 平５−51837（ＪＰ，Ａ)
特開 平４−121249（ＪＰ，Ａ)
特開 平１−254446（ＪＰ，Ａ)
特開 平４−43141（ＪＰ，Ａ)
(58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名)
B60R 21/16
D03D 1/04
D03D 11/00
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】 円形の流体導入部用二重袋織部の外周が
一重組織部の帯で接合されている袋織エアバッグにおい
て、前記袋織部の表裏各経糸（ｙ，ｙ′）又は表裏各緯
糸（ｆ，ｆ′）が、前記一重組織部側の袋織部との境界
（Ｂ）に位置する緯糸（Ｆ）又は経糸（Ｗ）に対してそ
れぞれ８本以下で交錯組織されていることを特徴とする
袋織エアバッグ。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP09503394A JP3504721B2 (ja) | 1994-05-09 | 1994-05-09 | 袋織エアバッグ |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP09503394A JP3504721B2 (ja) | 1994-05-09 | 1994-05-09 | 袋織エアバッグ |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH07300055A JPH07300055A (ja) | 1995-11-14 |
| JP3504721B2 true JP3504721B2 (ja) | 2004-03-08 |
Family
ID=14126781
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP09503394A Expired - Lifetime JP3504721B2 (ja) | 1994-05-09 | 1994-05-09 | 袋織エアバッグ |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3504721B2 (ja) |
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| US8372645B2 (en) | 2004-07-26 | 2013-02-12 | Merz Pharma Gmbh & Co. Kgaa | Therapeutic composition with a botulinum neurotoxin |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| US6220309B1 (en) * | 1999-09-24 | 2001-04-24 | Milliken & Company | Inflatable fabrics comprising basket-woven attachment points between fabric panels |
-
1994
- 1994-05-09 JP JP09503394A patent/JP3504721B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| US8372645B2 (en) | 2004-07-26 | 2013-02-12 | Merz Pharma Gmbh & Co. Kgaa | Therapeutic composition with a botulinum neurotoxin |
| US8652489B2 (en) | 2004-07-26 | 2014-02-18 | Merz Pharma Gmbh & Co., Kgaa | Therapeutic composition with a botulinum neurotoxin |
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH07300055A (ja) | 1995-11-14 |
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