JP3504042B2 - ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法,及びそれを用いた型内成形方法 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法,及びそれを用いた型内成形方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリプロピレン系
樹脂発泡粒子製造方法及びそれを用いた型内成形方法
に関するものであり、より詳細には高密度で特別な前処
理、特別な設備なしで成形でき、後処理も必要のないポ
リプロピレン系樹脂発泡粒子製造方法及びそれを用い
た型内成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来か
ら、ポリオレフィン系樹脂の発泡粒子を型内に充填し加
熱発泡させて型通りの成形体を得ることが行われている
が、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子はそのままでは、型
内に充填後加熱しても、充分に2次発泡しないため、表
面外観がきれいで、充分に融着された成形体とし難いの
で、型内への充填前に予め粒子内に無機ガス等を圧入し
2次発泡力を高めておく方法(いわゆる内圧付与方法、
特開昭49−128065号公報参照)や、型内に充填
する際に粒子を圧縮する(いわゆる圧縮充填方法、特公
昭53−33996号公報参照)方法等が行われてい
る。
【0003】しかしながら、前記内圧付与方法には特別
な加圧設備が必要であり、またその処理に長時間かかる
という問題が、また、前記圧縮充填方法にも特別な装置
が必要な上、特に高密度の粒子を用いて成形する場合に
は多大なエネルギーを要し、既存の圧縮設備、成形機で
は成形ができないという問題があった。これら問題を解
決する方法として、示差走査熱量測定によって得られる
DSC曲線に樹脂固有の固有ピークと、該固有ピークの
温度より高温側の高温ピークが現れる結晶構造を有する
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子において、予備発泡
粒子の嵩密度が0.04g/cm3以上においては高温
ピークの融解エネルギーが8〜12J/gであり、予備
発泡粒子の嵩密度が0.04g/cm3未満においては
8J/g以上の特定の発泡樹脂粒子を用いる方法(特開
昭62−128709号公報参照)が提案されている。
【0004】そこで本発明者等は、この技術を利用し特
別な前処理をせずに、近年自動車内装材、ロボットトレ
ー等で注目されている高密度の成形体を得ようとしたと
ころ、通常の加熱時間では間隙が多く表面外観の悪い成
形体しか製造できず、加熱時間を長くしたり、加熱媒体
の圧力を高める必要が生じた。しかしながら、そのよう
にして得られた成形体は、成形後の収縮が大きく前処理
は不要なものの、収縮を回復させるための後処理(いわ
ゆる養生)が必要となるという新たな問題が生じた。こ
れは発泡粒子の二次発泡力は、高密度になる程セル壁の
強度が増すため、低くなる傾向にあるので、前記技術で
は対応しきれなかったものと考えられる。本発明は、こ
のような問題に鑑み、高密度でも充分な二次発泡力を備
え、内圧付与操作なしで、既存の成形機を利用し得、ま
た、成形後の養生を必要としないポリプロピレン系樹脂
発泡粒子製造方法及びそれを用いた型内成形方法を提
供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課
題を解決するために鋭意研究を重ねた結果本発明を完
成するに至った
【0006】即ち、本発明は、示差走査熱量測定で得ら
れるDSC曲線に2つのピークを有する結晶構造を有
し、該ピークの高温側ピークの温度が基材樹脂の融解終
了温度以上であり、かつ該ピークの融解熱量が20〜3
0J/gであるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造す
る方法であって,ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とす
る粒子を密閉容器内で水に分散させ次いで密閉容器内に
揮発性発泡剤を供給し、該分散液を下記一般式(1)で
表されるT 1 ℃まで一旦昇温し、次いで5〜30分間か
けて,下記一般式(2)で表されるT 2 ℃まで冷却し,
その後密閉容器内の内容物を密閉容器内の圧力よりも低
い圧力雰囲気下に放出することを特徴とするポリプロピ
レン系樹脂発泡粒子の製造方法である。
【0007】
【数2】 TE −17≦T1 ≦TE −8 (1) TE ;基材樹脂のDSC曲線の融解終了温度 T1 −10≦T2 ≦T1 −3 (2)
【0008】更には、上記分散液の温度をT 1 ℃からT 2
℃に冷却する際に、無機ガスを導入しながらT2℃にす
るのが好ましい。尚、ポリプロピレン系樹脂がプロピレ
ン・ブテン−1ランダム共重合体であるのが好ましい。
更にまた本発明は、前記した製造方法で得られたポリプ
ロピレン系樹脂発泡粒子を金型内に大気圧下で充填し、
次いで145〜165℃の範囲にある加熱媒体で加熱融
着させることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡
粒子の型内成形方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒
子は、該粒子が示差走査熱量測定で得られるDSC曲線
に2つのピークを有する結晶構造を有し、該ピークの高
温側ピークの温度が基材樹脂の融解終了温度以上、好ま
しくは融解終了温度より2℃高い温度以上であり、かつ
該ピークの融解熱量が20〜30J/g、好ましくは2
0〜28J/gであり、好ましくは嵩密度が80〜50
0g/lのものである。
【0010】高温側ピークの温度が基材樹脂の融解終了
温度未満では、それを用いて得られる発泡成形体の寸法
収縮が大きくなるので好ましくない。融解熱量が20J
/g未満では、それを用いて得られる発泡成形体の収縮
が大きくなるので、高温での養生という後工程が必要と
なるし、逆に融解熱量が30J/gを越えると発泡粒子
の発泡力が不足するため、それを用いて得られる発泡成
形体の外観が悪化する。
【0011】本発明で用いるポリプロピレン系樹脂とし
ては、プロピレンの単独重合体、プロピレン・エチレン
(0.5〜8重量%)ランダム共重合体、プロピレン・
エチレン(3〜18重量%)ブロック共重合体、プロピ
レン・ブテン−1(2〜15重量%)ランダム共重合
体、プロピレン・エチレン(0.3〜5重量%)・ブテ
ン−1(0.5〜20重量%)ランダム共重合体、プロ
ピレン・ヘキセン−1(2〜6重量%)ランダム共重合
体、プロピレン・4−メチルペンテン−1(1〜8重量
%)ランダム共重合体等の結晶性ポリプロピレン系樹脂
があげられる。これらの中でも、特に高温成形時の樹脂
強度が高く高温で成形しても変形しにくいので、プロピ
レン・ブテン−1ランダム共重合体が好ましい。
【0012】上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る
ための一つの方法として、ポリプロピレン系樹脂を基材
樹脂とする粒子を密閉容器内で水に分散させ次いで密閉
容器内に揮発性発泡剤を供給し、該分散液を下記一般式
(1)で表されるT 1 ℃まで一旦昇温し、次いで5〜3
0分間かけて,下記一般式(2)で表されるT 2 ℃まで
冷却し,その後密閉容器内の内容物を密閉容器内の圧力
よりも低い圧力雰囲気下に放出する方法が挙げられる。
【0013】
【数3】 TE −17≦T1 ≦TE −8 (1) TE ;基材樹脂のDSC曲線の融解終了温度 T1 −10≦T2 ≦T1 −3 (2)
【0014】上記のように分散液を特定の温度で一旦昇
温した後、特定の比較的低温に保持した後、放出するこ
とにより、DSC曲線の高温側ピークの融解終了温度と
融解熱量を調節することができる。即ち、T1が低すぎ
ると高温側ピーク温度がTEより低下し、逆にT1が高す
ぎると高温側ピークの融解熱量が小さくなりすぎるので
好ましくない。また、T2が低すぎるとT2に到達する時
間が長くなり生産効率が低下し、また高温側ピークの融
解熱量が大きくなりすぎてしまうし、逆にT2が高すぎ
ると高温側ピークの融解熱量が小さくなりすぎてしま
う。好ましくはT1はTE−16≦T1≦TE−10℃であ
り、T2はT1−8≦T2≦T1−3℃の式で表される範囲
である。またT1からT2に到達させる時間は冷却方法に
よって変わるが5〜30分間である。
【0015】更に、分散液の温度をT1 ℃からT2 ℃に
する際に無機ガスを導入するのが、得られる発泡粒子の
発泡倍率、換言すれば嵩密度のバラツキ(標準偏差:
σ)を抑え、密度分布の少ない発泡成形体を得ることが
できるので好ましい。尚、T1 からT2 へ温度を下げる
ための手段としては特に限定されるものではないが、例
えば密閉容器のジャケットに水を通したり、放冷したり
する方法が挙げられる。
【0016】尚、本発明でいう基材樹脂の融解終了温度
(TE )、発泡粒子の高温側融解ピーク温度及び融解熱
量は以下の方法で測定されたものである。即ち、発泡粒
子1〜5mgを示差走差熱量計にて、30℃から10℃
/分の速度で220℃迄昇温後、220℃から10℃/
分の速度で30℃迄降温し、再度10℃/分の速度で2
20℃迄昇温した時に得られるDSC曲線に於いて、2
回目の昇温で得られる加熱曲線の終了温度を基材樹脂の
融解終了温度とし、1回目の昇温で得られる基材樹脂の
固有ピークより高温側に現れる吸熱ピークの頂点の温度
を、発泡粒子の高温側融解ピーク温度、その融解熱量を
発泡粒子の高温側ピークの融解熱量とした。
【0017】上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、上
記した通り特定の性質を有するものであるので、充填時
に加圧する必要がなく、また内圧を付与しておくことも
なく、金型内に大気圧下で充填し、次いで145〜16
5℃の範囲にある加熱媒体で加熱融着させて型内発泡成
形することができる。用いられる加熱媒体としては例え
ば、水蒸気等が挙げられる。以下に本発明について、実
施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるもので
はない。
【0018】
【実施例】
発泡粒子の製造例1 密閉容器中に、プロピレン・ブテン−1(8.5重量
%)ランダム共重合体樹脂ペレット(TE =162℃)
100重量部、水300重量部、第3リン酸カルシウム
3.2重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
0.5重量部及び発泡剤としてi−ブタン45重量%と
n−ブタン55重量%の混合物8重量部を加え、撹拌し
て分散液となし、撹拌しながら149℃(T1 )に昇温
させた。尚、この際の内圧は19kg/cm2 Gであっ
た。その直後に、窒素を導入しながら143℃(T2
内圧21kg/cm2 G)迄冷却し、窒素ガスを導入し
つづけながら(内圧21kg/cm2 G)密閉容器の下
端のバルブを開き、ノズルより分散液を大気圧下の受槽
に放出し発泡粒子を得た。その後、得られた発泡粒子を
用いて、前述した通りに高温側融解ピーク温度及び高温
側融解ピークの融解熱量を測定したところ、それぞれ1
65℃及び22J/gであった。
【0019】発泡粒子の製造例2〜10 分散液の加熱温度(T1 及びT2 )、T1 ℃からT2
への到達所要時間、T 2 ℃に到達までの間の窒素加圧の
有無等を表1に示す通りに変更した以外は発泡粒子の製
造例1と同様に発泡粒子を製造した。
【0020】
【表1】
【0021】成形例1 発泡粒子の製造例1で得られた発泡粒子を、常温、大気
圧下で、雌雄金型が密閉されたキャビティ内に充填し1
64℃の温度の水蒸気で20秒間加熱し、融着させた。
その後冷却水で金型を冷却し、金型の温度が50℃で冷
却を停止し、金型を開き成形体を取り出した。冷却時間
は20秒であった。取り出された成形体の外観はいずれ
も良好で、収縮が無く高温養生が不要であり、密度分布
もなく、融着度は95%と良好であった。尚、成形体の
外観、融着度、成形体収縮、寸法収縮率、密度分布は以
下の通りに評価したものである。
【0022】成形体外観;成形体表面の25cm2 当た
りの粒子間間隙の個数により以下の規準で評価した。 ○:5個以下 △:6〜10個 ×:10個以上 融着度(%);成形体を割断した断面の粒子破壊と粒子
間破壊を目視で評価し、粒子破壊の割合で表した。
【0023】成形体収縮;成形体体積の金型体積に対す
る比率(%)で評価した。 ○:10vol%以下 ×:11vol%以上
【0024】寸法収縮率;でき上りの成形体寸法の金型
寸法に対する比率(%)で評価した。 ○:25/1000以下 ×:26/1000以上
【0025】密度分布;成形体を12分割した各々の密
度を測定し、(最大値−最小値)÷平均値×100
(%)で評価した。 ○:9%以下 ×:10%以上
【0026】成形例2、4〜6及び比較成形例1、3、
7〜10 用いる発泡粒子、蒸気温度及び冷却時間を表2に記載の
通りに変更した以外は、成形例1と同様に行い、同様に
評価した。
【0027】成形例3 金型への発泡粒子の充填量を金型体積の10%増にし、
蒸気温度を151℃にした以外は、成形例1と同様に行
い、同様に評価した。 比較成形例2、4及び5 金型への発泡粒子の過充填量、用いる発泡粒子、蒸気温
度及び冷却時間を表2に示す通りに変更した以外は成形
例3と同様に行い、同様に評価した。
【0028】比較成形例6 粒子内圧が1.0kg/cm2 Gになる様に圧縮空気で
内圧付与した発泡粒子を、常温、大気圧下で金型に充填
し、151℃の水蒸気で加熱、融着させた。その後、冷
却水で金型を冷却し、金型温度50℃で成形体を取り出
した。冷却時間は60秒必要であった。評価結果を表2
に示した。
【0029】
【表2】
【0030】
【発明の効果】本発明の製造方法により得られる発泡粒
子は、高密度で特別な前処理、特別な設備なしで成形で
き、後処理が必要なく、これを用いて得られた成形体は
外観が優れ、収縮率も低く融着度の高いものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−138399(JP,A) 特開 平3−254930(JP,A) 特開 昭60−42434(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 9/16,9/232

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 示差走査熱量測定で得られるDSC曲線
    に2つのピークを有する結晶構造を有し、該ピークの高
    温側ピークの温度が基材樹脂の融解終了温度以上であ
    り、かつ該ピークの融解熱量が20〜30J/gである
    ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法であっ
    , ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする粒子を密閉容器
    内で水に分散させ次いで密閉容器内に揮発性発泡剤を供
    給し、 該分散液を下記一般式(1)で表されるT 1 ℃まで一旦
    昇温し、次いで5〜30分間かけて,下記一般式(2)
    で表されるT 2 ℃まで冷却し, その後 密閉容器内の内容物を密閉容器内の圧力よりも低
    い圧力雰囲気下に放出することを特徴とするポリプロピ
    レン系樹脂発泡粒子の製造方法。 【数1】 TE−17≦T1≦TE−8 (1)
    E;基材樹脂のDSC曲線の融解終了温度 T1−10≦T2≦T1−3(2)
  2. 【請求項2】 上記分散液の温度をT 1 ℃からT 2 ℃に冷
    却する際に、無機ガスを導入することを特徴とする、請
    求項記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 ポリプロピレン系樹脂がプロピレン・ブ
    テン−1ランダム共重合体である、請求項記載のポリ
    プロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の製造方法で得られたポリ
    プロピレン系樹脂発泡粒子を金型内に大気圧下で充填
    し、次いで145〜165℃の範囲にある加熱媒体で加
    熱融着させることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂
    発泡粒子の型内成形方法。
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