JP3500603B2 - ブレーキ液圧保持装置 - Google Patents

ブレーキ液圧保持装置

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JP3500603B2
JP3500603B2 JP08271599A JP8271599A JP3500603B2 JP 3500603 B2 JP3500603 B2 JP 3500603B2 JP 08271599 A JP08271599 A JP 08271599A JP 8271599 A JP8271599 A JP 8271599A JP 3500603 B2 JP3500603 B2 JP 3500603B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ブレーキペダルの
踏込み開放後も、車両自体に発進駆動力が生じるまで、
引続きホイールシリンダ内にブレーキ液圧を作用させる
ブレーキ液圧保持装置に関する。 【0002】 【従来の技術】ブレーキペダルの踏込み開放後も、車両
自体に発進駆動力が生じるまでの間、ホイールシリンダ
内にブレーキ液圧を作用させることができるブレーキ液
圧保持装置が知られている。このブレーキ液圧保持装置
により、車両は、登坂発進時に後ずさりすることなく円
滑な発進を容易に行うことができる。 【0003】例えば、特開平9−202159号公報に
は、トラクションコントロールシステムを利用したブレ
ーキ力制御装置が開示されている。このブレーキ力制御
装置は、駆動力検出手段で駆動力が小さな状態から大き
な状態に切換わったことが検出されるまで(すなわち、
発進駆動力が生じるまで)、トラクションコントロール
システムの制御によって、一定のブレーキ力を保持する
ことができる。そのため、上り坂において、車両が後ず
さりすることがない。また、本願出願人による特願平1
0−370249号には、ブレーキ液圧低下速度減少手
段によるブレーキ液圧保持装置について記載している。
このブレーキ液圧保持装置は、車両自体に発進駆動力が
生じるまでの間、ドライバのブレーキペダルの踏込み力
の低下速度に対してホイールシリンダ内のブレーキ液圧
の低下速度を小さくすることにより、ブレーキ力を徐々
に低下させ、ブレーキ力を保持している。そのため、上
り坂において、車両が後ずさりすることがなく、また、
下り坂において、ブレーキペダルの踏込みを開放した
り、部分的に緩めるだけで、車両が発進することもでき
る。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところが、前記したブ
レーキ液圧保持装置を備える車両でも、坂道が急勾配の
ときには、車両の持つ自重による推進力によって、坂を
下る方向への移動力が、保持しているブレーキ力よりも
上回る場合がある。そのため、車両自体に発進駆動力が
生じる前に、すなわちブレーキペダルの踏込みを開放し
たり、部分的に踏込みを緩めたりした時点で、車両が、
上り坂では後ずさりし、下り坂では下り始める場合があ
る。このとき、ドライバが停止あるいは登坂する意図を
持っているなら、車両が後ずさりを始めると、ドライバ
は、即座に、ブレーキペダルを踏込んでホイールシリン
ダ内のブレーキ液圧を高めるか、あるいはアクセルペダ
ルを踏込んで発進駆動力を生じさせ、車両の後ずさりを
防止する。他方、ドライバが降坂する意図を持っている
なら、車両が下り始めても、ドライバは、その状態を許
容する。なお、「降坂」とは、車両が下り坂を下ること
である。特に、降坂する意図を持っている際には、ドラ
イバは、ブレーキペダルの踏込み力を加減しながら降坂
走行する場合がある。この場合、ブレーキ液圧保持装置
によるブレーキ力の保持が、降坂走行にとって余計なブ
レーキ力となる。そのため、ドライバが降坂する意図を
持っている場合には、ブレーキ液圧保持装置によるブレ
ーキ力の保持を解除し、ドライバのブレーキペダル操作
に応じたブレーキ力を生じさせるほうが、円滑な降坂走
行を行うことができる。 【0005】そこで、本発明の課題は、ドライバが降坂
する意図を持っている場合には、ホイールシリンダ内の
ブレーキ液圧の作用を解除するブレーキ液圧保持装置を
提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決した本発
明に係るブレーキ液圧保持装置は、ブレーキペダルの踏
込み開放後も、車両自体に発進駆動力が生じるまで、引
続きホイールシリンダ内にブレーキ液圧を作用させるブ
レーキ液圧保持装置において、発進駆動力が生じていな
い場合であっても、車両速度が登坂発進時の車両の後ず
さりを検出する可能性のある車速より大きいドライバに
降坂する意図があると判断できる車速まで上昇したとき
にはブレーキ液圧保持装置によるホイールシリンダ内の
ブレーキ液圧の作用を解除することを特徴とする。この
ブレーキ液圧保持装置によれば、ドライバが降坂する意
図があると判断できる車速まで上昇すると、発進駆動力
が生じていない場合であっても、ホイールシリンダ内の
ブレーキ液圧の作用を解除する。解除後、ホイールシリ
ンダ内のブレーキ液圧は、ドライバのブレーキペダルの
踏込み力に応じたブレーキ液圧となる。 【0007】 【発明の実施の形態】以下に、本発明に係るブレーキ液
圧保持装置の実施の形態を図面を参照して説明する。図
1はブレーキ液圧保持装置の構成図、図2はブレーキ液
圧保持装置を備える車両のシステム構成図、図3はブレ
ーキ液圧保持装置の車両停止時における制御ロジックで
あり、(a)は電磁弁を閉状態にする制御ロジック、
(b)はエンジンを自動停止する制御ロジック、図4は
ブレーキ液圧保持装置の車両発進時における制御ロジッ
クであり、(a)は電磁弁を開状態にする制御ロジッ
ク、(b)はエンジンを自動始動する制御ロジック、図
5はブレーキ液圧保持装置を備えた車両の制御タイムチ
ャートであり、(a)は車両の減速→停止→発進の時系
列に沿った駆動力とブレーキ力の変化、および電磁弁の
開閉状態を示し、(b)は車両停止時のブレーキ液圧回
路の構成図、図6は車両発進時に発進駆動力が生じてい
ない場合かつ車両速度が所定車速まで上昇した場合の図
5に相当する制御タイムチャート、図7は車両停止時に
エンジンを自動停止しない場合における図6に相当する
制御タイムチャートである。 【0008】本発明のブレーキ液圧保持装置は、油圧
(ブレーキ液圧)により作動するブレーキ装置を備え、
かつ原動機を搭載する全ての車両に適用することができ
る。なお、原動機には、ガソリンなどを動力源とする内
燃機関であるエンジンや外燃機関であるスターリングエ
ンジン、電気を動力源とするモータなどが含まれる。ま
た、車両には、手動変速機を搭載したマニュアルトラン
スミッション車(以下、MT車と記載する)や自動変速
機を搭載したオートマチックトランスミッション車(以
下、AT車と記載する)があるが、いずれにも本発明の
ブレーキ液圧保持装置を適用することができる。 【0009】《ブレーキ液圧保持装置の構成》本発明の
ブレーキ液圧保持装置は、ブレーキペダルの踏込み開放
後も、車両自体に発進駆動力が生じるまで、引続きホイ
ールシリンダ内にブレーキ液圧を保持する装置である。
そのブレーキ液圧を保持する手段としては、ドライバの
ブレーキペダルの踏込み力の低下速度に対してホイール
シリンダ内のブレーキ液圧の低下速度を小さくするブレ
ーキ液圧低下速度減少手段で構成するものや、トラクシ
ョンコントロールシステムを利用してホイールシリンダ
内のブレーキ液圧を一定値に保持する構成のものなど、
特に手段を限定しない。さらに、本発明のブレーキ液圧
保持装置は、発進駆動力が生じない場合でも、車両速度
が所定車速まで上昇したときには、ホイールシリンダ内
のブレーキ液圧の保持を解除する機能を有するものであ
る。 【0010】なお、「車両自体に発進駆動力が生じるま
で」とは、エンジンやモータなどの原動機からの出力が
駆動輪に伝達され、ブレーキ力がなくても坂道で下がり
を生じないような状態になるまでのことである。この状
態を検出するために、駆動輪の駆動トルクを直接測定し
てもよいが、一般には、以下の時点をもって車両自体に
発進駆動力が生じたと判断している。MT車の場合、ド
ライバの操作によりアクセルペダルが踏込まれ、かつク
ラッチが接続された時点で判断する。AT車の場合、ド
ライバの操作によりアクセルペダルが踏込まれた時点で
判断する。また、AT車の中で、ブレーキペダルの踏込
み開放に応じて、自動的に坂道に抗する程度まで駆動力
が大きくなるように発進クラッチのトルク伝達容量を増
加する車両の場合、その発進クラッチのトルク伝達容量
の増加が達成された時点で判断する。 【0011】また、「所定車速」とは、ドライバに降坂
する意図があると判断できる車速である。なお、本実施
の形態では、所定車速を20km/hに設定してある
が、過度に低い車速を設定すると、登坂発進時に車両が
若干後ずさりしただけでブレーキ液圧保持装置によるブ
レーキ液圧の作用を解除してしまう可能性がある。そこ
で、10km/h程度以上に設定することが望ましい。 【0012】以下、図1を参照して、本発明のブレーキ
液圧保持装置を液圧式ブレーキ装置とともに説明する。
ブレーキ液圧保持装置RUは、液圧式ブレーキ装置BK
のブレーキ液圧回路BC内に設け、ブレーキ液圧低下速
度減少手段によりホイールシリンダWC内のブレーキ液
圧を保持する構成のものである。 【0013】〔液圧式ブレーキ装置〕まず、液圧式ブレ
ーキ装置BKを説明する。液圧式ブレーキ装置BKのブ
レーキ液圧回路BCは、マスタシリンダMCとホイール
シリンダWCとこれを結ぶブレーキ液配管FPよりな
る。ブレーキは安全走行のために極めて重要な役割を担
うので、液圧式ブレーキ装置BKは、それぞれ独立した
ブレーキ液圧回路を2系統設け(BC(A)、BC
(B))、一つの系統が故障したときでも、残りの系統
で最低限のブレーキ力が得られるようになっている。 【0014】マスタシリンダMCは、本体にピストンM
CPが挿入されており、ドライバがブレーキペダルBP
を踏込むことによりピストンMCPが押されてマスタシ
リンダMC内のブレーキ液に圧力が加わり機械的な力を
ブレーキ液圧(ブレーキ液に加わる圧力)に変換する。
ドライバがブレーキペダルBPから足を放して踏込みを
開放すると、マスタシリンダMCは、戻しバネMCSの
力でピストンMCPを元に戻し、同時にブレーキ液圧も
元に戻す。図1に示すマスタシリンダMCは、独立した
ブレーキ液圧回路BCを2系統設けるというフェイルア
ンドセーフの観点から、ピストンMCPを2つ並べて本
体を2分割したタンデム式のマスタシリンダである。 【0015】さらに、プレーキペダルBPの操作力を軽
くするために、ブレーキペダルBPとマスタシリンダM
Cの間に、マスタパワMP(ブレーキブースタ)が設け
られる。図1に示すマスタパワMPは、バキューム(負
圧)サーボ式のものであり、図示しないエンジンの吸気
マニホールドから負圧を取出して、ドライバによるブレ
ーキペダルBPの操作を容易にしている。 【0016】ブレーキ液配管FPは、マスタシリンダM
CとホイールシリンダWCを結び、マスタシリンダMC
で発生したブレーキ液圧を、ブレーキ液を移動させるこ
とによりホイールシリンダWCに伝達する流路の役割を
果たす。また、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧の
方が高い場合には、ホイールシリンダWCからマスタシ
リンダMCにブレーキ液を戻す流路の役割を果す。ブレ
ーキ液圧回路BCは前記のとおりそれぞれ独立したもの
が設けられるため、ブレーキ液配管FPもそれぞれ独立
のものが2系統設けられる。図1に示すブレーキ液配管
FPなどにより構成されるブレーキ液圧回路BCは、一
方のブレーキ液圧回路BC(A)が右前輪と左後輪を制
動し、他方のブレーキ液圧回路BC(B)が左前輪と右
後輪を制動するX配管方式のものである。なお、ブレー
キ液圧回路は、X配管方式ではなく、一方のブレーキ液
圧回路が両方の前輪を他方のブレーキ液圧回路が両方の
後輪を制動する前後分割方式とすることもできる。 【0017】ホイールシリンダWCは、車輪ごとに設け
られ、マスタシリンダMCにより発生しブレーキ液配管
FPを通してホイールシリンダWCに伝達されたブレー
キ液圧を、車輪を制動するための機械的な力(ブレーキ
力)に変換する役割を果す。ホイールシリンダWCは、
図示しない本体にピストンが挿入されており、このピス
トンがブレーキ液圧に押されて、ディスクブレーキの場
合にはブレーキパッドを、またドラムブレーキの場合に
はブレーキシューを作動させて、車輪を制動するブレー
キ力を作り出す。なお、前記以外に前輪のホイールシリ
ンダWCのブレーキ液圧と後輪のホイールシリンダWC
のブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御バルブなど
が、必要に応じて設けられる。 【0018】〔ブレーキ液圧保持装置〕次に、ブレーキ
液圧保持装置RUを説明する。ブレーキ液圧保持装置R
Uは、車両発進時におけるドライバのブレーキペダルB
Pの踏込み力の低下速度に対してホイールシリンダWC
内のブレーキ液圧の低下速度を小さくするブレーキ液圧
低下速度減少手段で構成される。このブレーキ液圧低下
速度減少手段は、車両の再発進時にドライバがブレーキ
ペダルBPの踏込みを開放した際に、ホイールシリンダ
WCのブレーキ液圧の減少する速度(ブレーキ力の低下
する速度)を、ドライバのブレーキペダルBPの踏込み
力を緩める速度よりも遅くする機能を有する。 【0019】なお、このような機能を有するブレーキ液
圧低下速度減少手段は、ブレーキ液圧回路BC内にブレ
ーキ液の流れに対して流体抵抗となる部分を設けること
により構成することができる。また、ブレーキ液圧回路
BC以外に、例えば、ブレーキペダルBP自体の動きを
規制して、ドライバがブレーキペダルBPの踏込みを素
早く開放しても、ブレーキペダルBPを徐々にしか元に
戻さないようにすることでも構成することができる。前
者の場合は、ブレーキ液の流れ自体を規制する。後者の
場合は、ブレーキペダルBPの動き自体を規制する。い
ずれの場合でも、ドライバのブレーキペダルBPの踏込
み力の低下速度に対してホイールシリンダWC内のブレ
ーキ液圧の低下速度を小さくすることができる。 【0020】図1のブレーキ液圧保持装置RUは、ブレ
ーキ液圧低下速度減少手段を液圧式ブレーキ装置BKの
ブレーキ液圧回路BC内に設けたものである。ブレーキ
液圧保持装置RUは、ブレーキ液の流れ自体を規制する
ため、ブレーキ液圧回路BC内に電磁弁SVおよび絞り
D、必要に応じてチェック弁CVおよびリリーフ弁RV
を備える。なお、ブレーキ液圧保持装置RUは、電磁弁
SVおよび絞りDがブレーキ液圧低下速度減少手段を構
成する。 【0021】電磁弁SVは、ECU6(CVTECU
6:後で詳細に説明する)からの電気信号により開閉
し、閉状態でブレーキ液配管FP内のブレーキ液の流れ
を遮断してホイールシリンダWCに加えられたブレーキ
液圧を保持する役割を果す。ちなみに、2つの電磁弁S
V(A),SV(B)は、ともに開状態にあることを示
す。この電磁弁SVにより、登坂発進時にドライバがブ
レーキペダルBPの踏込みを開放した場合でも、ホイー
ルシリンダWC内にブレーキ液圧が保持され、車両の後
ずさりを防止することができる。なお、「後ずさり」と
は、車両の自重(位置エネルギ)によりドライバが進も
うとする方向とは逆の方向に車両が進んでしまうこと
(坂道を下ってしまうこと)を意味する。 【0022】電磁弁SVには、通電時に開状態になる常
時閉型と通電時に閉状態になる常時開型があるが、いず
れの電磁弁SVを使用することもできる。ただし、フェ
イルアンドセーフの観点からは、常時開型の電磁弁SV
が好ましい。というのは、故障などにより通電が絶たれ
た場合に、常時閉型の電磁弁SVでは、ブレーキが効か
なくなったり、逆にブレーキが効きっぱなしになったり
するからである。そこで、本実施の形態では、常時開型
の電磁弁SVを使用する。なお、通常の操作において、
電磁弁SVが閉状態になるのは、車両が停止したときか
ら発進するまでの間であるが、どのような条件で電磁弁
SVが閉状態になるのか、あるいは開状態になるのかは
後で詳細に説明する。また、ブレーキ液圧保持装置RU
によるホイールシリンダWC内のブレーキ液圧の作用を
解除するとは、電磁弁SVを開状態にしてホイールシリ
ンダWCとマスタシリンダMC間を導通し、ホイールシ
リンダWC内のブレーキ液圧がドライバのブレーキペダ
ルBPの踏込み力に応じたブレーキ液圧となることであ
る。 【0023】絞りDは、電磁弁SVの開閉状態にかかわ
らずマスタシリンダMCとホイールシリンダWCとを導
通する。殊に、電磁弁SVが閉状態で、かつドライバが
ブレーキペダルBPの踏込みを開放したか踏込みを緩め
た場合に、絞りDは、ホイールシリンダWCに閉じ込め
られたブレーキ液を徐々にマスタシリンダMC側に逃が
し、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧を所定速度で
低下させる役割を果す。この絞りDは、ブレーキ液配管
FPに流量調整弁を設けることにより構成することもで
きるし、ブレーキ液配管FPの一部に流体に対する抵抗
となる部分(流路の断面積が小さくなっている部分)を
設けることにより構成することもできる。 【0024】絞りDの存在により、ドライバがブレーキ
ペダルBPの踏込みを開放したり緩めたりすれば、電磁
弁SVが閉状態でも、ブレーキが永久に効きっぱなしと
いう状態がなく、徐々にブレーキ力(制動力)が低下し
ていく。すなわち、ドライバのブレーキペダルBPの踏
込み力の低下速度に対して、ホイールシリンダWC内の
ブレーキ液圧の低下速度を小さくすることができる。こ
れにより、電磁弁SVが閉状態でも、所定時間後にはブ
レーキ力が充分弱まり、原動機の駆動力により車両を再
発進(登坂発進)させることが可能になる。また、下り
坂では、ドライバがアクセルペダルを踏込むことなく車
両の自重のみにより車両を発進させることができる。 【0025】なお、ドライバがブレーキペダルBPを踏
込んでいる状態で、マスタシリンダMCのブレーキ液圧
がホイールシリンダWCのブレーキ液圧よりも高い限
り、絞りDの存在によりブレーキ力が低下することはな
い。絞りDは、ホイールシリンダWCとマスタシリンダ
MCのブレーキ液圧の差(差圧)によりブレーキ液圧の
高い方からブレーキ液圧の低い方にブレーキ液を所定速
度で流す役割を有するからである。すなわち、ドライバ
がブレーキペダルBPの踏込みを緩めない限り、ホイー
ルシリンダWCのブレーキ液圧が、絞りDの存在により
上昇することはあっても低下することはない。この絞り
Dに逆止弁的な機能を持たせて、マスタシリンダMC側
からホイールシリンダWC側へのブレーキ液の流れを阻
止する構成としても良い。 【0026】ホイールシリンダWCのブレーキ液圧を低
下させる速度は、例えば、上り坂などでドライバがブレ
ーキペダルBPの踏込みを開放してアクセルペダルを踏
込み(ペダルの踏替え)、車両自体に登坂発進するのに
充分な駆動力が生じるまで車両の後ずさりを防ぐことが
できる時間を確保できるものであればよい。ペダルを踏
替えて車両自体に登坂発進するのに充分な駆動力が生じ
るまでの時間は、通常0.5秒程度である。 【0027】なお、ホイールシリンダWCのブレーキ液
圧を低下させる速度が早い場合、電磁弁SVが閉状態で
あっても、ブレーキペダルBPの踏込みを開放するとす
ぐにブレーキ力がなくなり、充分な駆動力を得るまでに
車両が坂道を後ずさりしてしまう。したがって、ブレー
キ液圧保持装置RUにより登坂発進を容易にするという
目的を達成できない。逆に、ホイールシリンダWCのブ
レーキ液圧を低下させる速度が遅い場合は、ブレーキペ
ダルBPの踏込みを開放してもブレーキが良く効いた状
態が続くため車両の後ずさりはなくなるが、ブレーキ力
および坂道に抗する充分な駆動力を確保するために、余
分な時間や動力を要することになり好ましくない。ま
た、登坂発進を容易にすることも困難になる。 【0028】絞りDによるホイールシリンダWCのブレ
ーキ液圧を低下させる速度は、ブレーキ液の性状や絞り
Dの種類(流路の断面積・長さなどの形状)により決定
される。なお、絞りDを、電磁弁SV、チェック弁CV
またはリリーフ弁RVと組合せて一体で設けても良い。
組合せることにより、部品点数や設置スペースの削減を
図ることができる。 【0029】チェック弁CVは、必要に応じて設けられ
るが、電磁弁SVが閉状態でかつドライバがブレーキペ
ダルBPを踏増しした場合に、マスタシリンダMCで発
生したブレーキ液圧をホイールシリンダWCに伝える役
割を果す。チェック弁CVは、マスタシリンダMCで発
生したブレーキ液圧がホイールシリンダWCのブレーキ
液圧を上回る場合に有効に作動し、ドライバのブレーキ
ペダルBPの踏増しに対応して迅速にホイールシリンダ
WCのブレーキ液圧を上昇させる。なお、マスタシリン
ダMCのブレーキ液圧がホイールシリンダWCのブレー
キ液圧よりも上回った場合に、一旦閉じた電磁弁SVが
開状態になるような構成とすれば、電磁弁SVのみでブ
レーキペダルBPの踏増しに対応することができるの
で、チェック弁CVを設ける必要はない。 【0030】リリーフ弁RVは、必要に応じて設けられ
るが、電磁弁SVが閉状態でかつドライバがブレーキペ
ダルBPの踏込みを開放したか踏込みを緩めた場合に、
ホイールシリンダWCに閉じ込められたブレーキ液を所
定のブレーキ液圧になるまで迅速にマスタシリンダMC
側に逃がす役割を果す。リリーフ弁RVは、ホイールシ
リンダWCのブレーキ液圧が予め定められたブレーキ液
圧以上で、かつマスタシリンダMCのブレーキ液圧より
も高い場合に作動する。これにより、電磁弁SVが閉状
態の場合でも、ホイールシリンダWC内の必要以上のブ
レーキ液圧を所定のブレーキ液圧(リリーフ圧)まで迅
速に低減することができる。したがって、「登坂発進の
際にドライバが必要以上に強くブレーキペダルBPを踏
込んでいて、ブレーキペダルBPの踏込み開放後、絞り
DのみによりホイールシリンダWCのブレーキ液圧を低
下させるのでは時間がかかって好ましくない」という問
題を、リリーフ弁RVにより解決することができる。 【0031】なお、ブレーキスイッチBSWは、ブレー
キペダルBPが踏込まれているか否かを検出し、この検
出値に基づいて、ECU6が電磁弁SVの開閉の指示を
行う。 【0032】本発明のブレーキ液圧保持装置は、図1で
示したブレーキ液圧保持装置RUの他に様々な手段によ
って構成することができる。例えば、ブレーキ液圧低下
速度減少手段として電磁弁の開度を調整してブレーキ液
の流量を制御できる比例電磁弁を使用する構成のもの
や、ブレーキ液圧低下速度減少手段としてブレーキペダ
ルの戻り速度自体を規制する構成のものがある。また、
トラクションコントロールシステムを搭載する車両で
は、トラクションコントロールシステムの1つの機能と
してブレーキ液圧保持機能を持たせても良い。 【0033】《ブレーキ液圧保持装置の基本的動作》次
に、図1を参照して、ブレーキ液圧保持装置RUの基本
的な動作について説明する。 【0034】(上り坂での停止・発進) 例えば、上り
坂で停止しようとする場合、ドライバは、走行状態か
ら、ブレーキペダルBPを踏込む。これにより、マスタ
シリンダMC内のブレーキ液が圧縮され、ブレーキ液圧
が高まる。そして、このブレーキ液圧は、ブレーキ液の
流れを伴って、ブレーキ液配管FP、開状態にある電磁
弁SVを通してホイールシリンダWCに伝達され、車輪
を制動するブレーキ力に変換される。その結果、車両
が、坂道で停止する。 【0035】ECU6は、車両が停止しているなどの条
件を判断し、電磁弁SVを閉状態にして、ホイールシリ
ンダWC内のブレーキ液圧を保持する。このとき、EC
U6は、車両が停止している場所が坂道か否かを判断す
る必要はない。なお、電磁弁SVが閉状態でも、ドライ
バは、ブレーキペダルBPの踏込みを踏増すことによ
り、チェック弁CVを通してブレーキ力を増すことがで
きる。 【0036】次に、ドライバは、坂道を発進するため
に、ブレーキペダルBPの踏込みを開放するとともに、
図示しないアクセルペダルを踏込む。この操作時、電磁
弁SVは閉状態であるため、ブレーキ力が保持され、ド
ライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放しても、車
両が坂道を後ずさりすることはない。ただし、ホイール
シリンダWC内のブレーキ液圧は、絞りDを通して徐々
に低減していく。そのため、ブレーキ力も徐々に低減し
ていく。一方、ドライバがアクセルペダルを踏込むこと
により、駆動力が増していく。そして、駆動力が車両の
自重による坂道を下ろうとする力と徐々に低減していく
ブレーキ力の和より大きくなったとき、車両が坂道を登
坂発進する。 【0037】絞りDにより、ドライバがブレーキペダル
BPの踏込みを開放した後、0.5秒間程度車両が坂道
を後ずさりすることがなければ、ドライバは、登坂発進
を容易に行うことができる。通常、ブレーキペダルBP
の踏込みを開放してから0.5秒後には、アクセルペダ
ルの踏込みなどにより充分な発進駆動力が発生している
からである。なお、ドライバによっては、必要以上にブ
レーキペダルBPを強く踏込んでいる場合がある。この
ような場合に、リリーフ弁RVにより、ブレーキペダル
BPの踏込みを開放したり踏込みを緩めることで、ホイ
ールシリンダWC内のブレーキ液圧を所定のブレーキ液
圧(リリーフ圧)まで一気に低減させることができるの
で、迅速な登坂発進を行うことができる。 【0038】なお、登坂発進後いつまでも電磁弁SVが
閉状態では、ブレーキの引きずりを起こすなど好ましく
ない。そこで、ドライバの発進操作がなされた時点で、
電磁弁SVを開状態にする制御を行うのがよい。具体的
には、AT車ではアクセルペダルの踏込みがなされた時
点などで、MT車ではアクセルペダルの踏込みおよびク
ラッチペダルの戻しによる発進クラッチの接続がなされ
た時点などで、電磁弁SVを開状態にする制御を行うの
がよい。また、フェイルアンドセーフアクションとし
て、ブレーキペダルBPの踏込みを開放してから所定時
間後(例えば2〜3秒後)に、電磁弁SVを開状態にす
る制御を行ってもよい。なお、ブレーキペダルBPの踏
込み・踏込みの開放は、ブレーキスイッチBSWにより
検知する。 【0039】(下り坂での停止・発進) 下り坂で停止
する場合は、ドライバは、上り坂の場合と同様に、ブレ
ーキペダルBPを踏込んで停止する。ECU6は、車両
が停止していることなどの条件を判断して、上り坂の場
合と同様に、電磁弁SVを閉状態にして、ホイールシリ
ンダWC内のブレーキ液圧を保持する。ECU6は、前
記のとおり下り坂であるか上り坂であるかを判断しな
い。 【0040】次に、ドライバは坂道を下るため(発進す
るため)に、ブレーキペダルBPの踏込みを開放する。
下り坂の場合は、ドライバはアクセルペダルを踏込むこ
となく、ブレーキペダルBPの踏込みを開放したり踏込
みを緩めたりすることで、車両の自重を利用して坂道を
下ろうとすることがある。ブレーキ液圧保持装置RUに
よれば、電磁弁SVが閉状態であっても、ブレーキペダ
ルBPの踏込みを開放するもしくは踏込みを緩めること
により、絞りDによってブレーキ力が徐々に弱まってい
く。したがって、通常の車両における下り坂の発進と同
様に、アクセルペダルを踏込むことなく車両を発進させ
ることができる。 【0041】さらに、ドライバが降坂する意図があると
判断できる場合には、不必要なブレーキの引きずりをな
くし、ドライバのブレーキペダルBPの操作に応じたブ
レーキ力を生じさせたほうが円滑な降坂走行ができる。
そこで、ブレーキ液圧保持装置RUは、発進駆動力が生
じていない場合(例えば、アクセルペダルが踏込まれて
いない場合)でも、車両速度が所定車速まで上昇したと
きには、電磁弁SVを開状態にする制御を行う。なお、
本発明では、ドライバが降坂する意図を、車両速度が所
定車速(本実施の形態では20km/h)まで上昇した
か否かで判断する。したがって、車速が20km/h以
下では電磁弁SVを閉状態に維持し、他方、車速が20
km/hを越えると電磁弁SVを開状態にし、ホイール
シリンダWC内のブレーキ液圧をドライバのブレーキペ
ダルBPの踏込み力に応じたブレーキ液圧にする。 【0042】ブレーキ液圧保持装置RUによれば、発進
が困難である上り坂であっても容易に発進することがで
きる。また、下り坂や平坦な場所であっても車両の発進
に支障はない。さらに、ドライバが降坂する意図がある
と判断したときには、ホイールシリンダWC内のブレー
キ液圧の作用を解除し、円滑な降坂走行を行うことがで
きる。 【0043】 【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。本実施例は、本発明のブレーキ液圧保持装置を
AT車(以下、車両と記載する)に適用したものであ
る。 【0044】なお、本実施例で説明する車両は、原動機
としてエンジンとモータを備えた、いわゆるハイブリッ
ド車両であり、変速機としてベルト式無段変速機(以
下、CVTと記載する)を備える。この車両に使われる
ブレーキ液圧保持装置RUは、ブレーキ液圧回路BC内
に電磁弁SV、絞りD、リリーフ弁RV、およびチェッ
ク弁CVを設けた図1に示すものである。 【0045】さらに、この車両は、原動機がアイドリン
グ状態でかつ所定の車速以下であること、およびブレー
キペダルBPが踏込まれていることを条件にクリープの
駆動力を低減する駆動力低減装置または/および車両停
止中に原動機を自動で停止可能な原動機停止装置を備え
る。加えて、この車両は、ブレーキペダルBPの踏込み
が開放され、ブレーキスイッチBSWがOFFになると
同時に、車両に駆動力を生じさせる制御が自動的に開始
される構成を備える。 【0046】《システム構成》まず、図2を参照して、
本実施例の車両のシステム構成を説明する。車両は、原
動機としてエンジン1とモータ2を備え、変速機として
ベルト式無段変速機であるCVT3を備える。エンジン
1は、燃料噴射電子制御ユニット(以下、FIECUと
記載する)に制御される。なお、FIECUは、マネー
ジメント電子制御ユニット(以下、MGECUと記載す
る)と一体で構成し、燃料噴射/マネージメント電子制
御ユニット(以下、FI/MGECUと記載する)4に
備わっている。また、モータ2は、モータ電子制御ユニ
ット(以下、MOTECUと記載する)5に制御され
る。さらに、CVT3は、CVT電子制御ユニット(以
下、CVTECUと記載する)6に制御される。 【0047】さらに、CVT3には、駆動輪8,8が装
着された駆動軸7が取付けられる。駆動輪8,8には、
ホイールシリンダWC(図1参照)などを備えるディス
クブレーキ9,9が装備されている。ディスクブレーキ
9,9のホイールシリンダWCには、ブレーキ液圧保持
装置RUを介してマスタシリンダMCが接続される。マ
スタシリンダMCには、マスタパワMPを介してブレー
キペダルBPからの踏込みが伝達される。ブレーキペダ
ルBPは、ブレーキスイッチBSWによって、ブレーキ
ペダルBPが踏込まれているか否かが検出される。 【0048】エンジン1は、熱エネルギを利用する内燃
機関であり、CVT3および駆動軸7などを介して駆動
輪8,8を駆動する。なお、エンジン1は、燃費悪化の
防止などのために、車両停止時に自動で停止させる場合
がある。そのために、車両は、エンジン自動停止条件を
満たした時に、エンジン1を停止させる原動機停止装置
を備える。 【0049】モータ2は、図示しないバッテリからの電
気エネルギを利用し、エンジン1による駆動をアシスト
するアシストモードを有する。また、モータ2は、アシ
スト不要の時(下り坂や減速時など)に駆動軸7の回転
による運動エネルギを電気エネルギに変換し、図示しな
いバッテリに蓄電する回生モードを有し、さらにエンジ
ン1を始動する始動モードなどを有する。 【0050】CVT3は、ドライブプーリとドリブンプ
ーリとの間に無端ベルトを巻掛け、各プーリ幅を変化さ
せて無端ベルトの巻掛け半径を変化させることによっ
て、変速比を無段階に変化させる。そして、CVT3
は、出力軸に発進クラッチを連結し、この発進クラッチ
を係合して、無端ベルトで変速されたエンジン1などの
出力を発進クラッチの出力側のギアを介して駆動軸7に
伝達する。なお、このCVT3を備える車両は、クリー
プ走行が可能であるとともに、このクリープの駆動力を
低減する駆動力低減装置を備える。クリープの駆動力
は、発進クラッチの係合力によって調整され、駆動力が
大きい状態と駆動力が小さい状態の2つの大きさを有す
る。この駆動力の大きい状態は、傾斜5°に釣りあう駆
動力を有する状態であり、本実施の形態では強クリープ
状態と呼ぶ。他方、駆動力の小さい状態は、殆ど駆動力
がない状態であり、本実施の形態では弱クリープ状態と
呼ぶ。強クリープ状態では、アクセルペダルの踏込みが
開放された時(すなわち、アイドリング状態時)で、か
つポジションスイッチPSWで走行レンジ(Dレンジ、
LレンジまたはRレンジ)が選択されている時に、ブレ
ーキペダルBPの踏込みを開放すると車両が這うように
ゆっくり進む。弱クリープ状態では、所定の低車速以下
の時でかつブレーキペダルBPが踏込まれた時で、車両
は停止か微低速である。なお、ポジションスイッチPS
Wのレンジ位置は、シフトレバーで選択する。ポジショ
ンスイッチPSWのレンジは、駐停車時に使用するPレ
ンジ、ニュートラルであるNレンジ、バック走行時に使
用するRレンジ、通常走行時に使用するDレンジおよび
急加速や強いエンジンブレーキを必要とするときに使用
するLレンジがある。また、走行レンジとは、車両が走
行可能なレンジ位置であり、この車両ではDレンジ、L
レンジおよびRレンジの3つのレンジである。さらに、
ポジションスイッチPSWでDレンジが選択されている
時には、モードスイッチMSWで、通常走行モードであ
るDモードとスポーツ走行モードであるSモードを選択
できる。 【0051】FI/MGECU4に含まれるFIECU
は、最適な空気燃費比となるように燃料の噴射量を制御
するとともに、エンジン1を統括的に制御する。FIE
CUにはスロットル開度やエンジン1の状態を示す情報
などが送信され、各情報に基づいてエンジン1を制御す
る。また、FI/MGECU4に含まれるMGECU
は、MOTECU5を主として制御するとともに、エン
ジン自動停止条件およびエンジン自動始動条件の判断を
行う。MGECUにはモータ2の状態を示す情報が送信
されるとともに、FIECUからエンジン1の状態を示
す情報などが入力され、各情報に基づいて、モータ2の
モードの切り換え指示などをMOTECU5に行う。ま
た、MGECUにはCVT3の状態を示す情報、エンジ
ン1の状態を示す情報、ポジションスイッチPSWのレ
ンジ情報およびモータ2の状態を示す情報などが送信さ
れ、各情報に基づいて、エンジン1の自動停止または自
動始動を判断する。 【0052】MOTECU5は、FI/MGECU4か
らの制御信号に基づいて、モータ2を制御する。FI/
MGECU4からの制御信号にはモータ2によるエンジ
ン1の始動、エンジン1の駆動のアシストまたは電気エ
ネルギの回生などを指令するモード情報やモータ2に対
する出力要求値などがあり、MOTECU5は、これら
の情報に基づいて、モータ2に命令を出す。また、モー
タ2などから情報を得て、発電量などのモータ2の情報
やバッテリの容量などをFI/MGECU4に送信す
る。 【0053】CVTECU6は、CVT3の変速比や発
進クラッチの係合力などを制御する。CVTECU6に
はCVT3の状態を示す情報、エンジン1の状態を示す
情報およびポジションスイッチPSWのレンジ情報など
が送信され、CVT3のドライブプーリとドリブンプー
リの各シリンダの油圧の制御および発進クラッチの油圧
の制御をするための信号などをCVT3に送信する。さ
らに、CVTECU6は、ブレーキ液圧保持装置RUの
電磁弁SV,SV(図1参照)のON/OFF(開閉)
を制御するとともに、クリープの駆動力を大きい状態か
小さい状態のいずれにするかを判断する。また、CVT
ECU6は、ブレーキ液圧保持装置RUの故障を検出す
るために、故障検出装置DUを備えている。この故障検
出装置DUは、ブレーキ液圧保持装置RUの電磁弁S
V,SVをON/OFF(開閉)するための駆動回路も
備える。 【0054】ディスクブレーキ9,9は、駆動輪8,8
と一体となって回転するディスクロータを、ホイールシ
リンダWC(図1参照)を駆動源とするブレーキパッド
で挟みつけ、その摩擦力で制動力を得る。ホイールシリ
ンダWCには、ブレーキ液圧保持装置RUを介してマス
タシリンダMCのブレーキ液圧が供給される。 【0055】ブレーキ液圧保持装置RUは、ブレーキペ
ダルBPの踏込み開放後も、ホイールシリンダWCにブ
レーキ液圧を作用させる。ブレーキ液圧保持装置RU
は、CVTECU6内の故障検出装置DUにおけるブレ
ーキ液圧保持装置RUの電磁弁SV,SV(図1参照)
を駆動(ON/OFF)するための駆動回路も含むもの
とする。なお、電磁弁SVがON/OFFするとは、
「常時開型の電磁弁では、電磁弁がONするとは電磁弁
が閉じて閉状態になることであり、電磁弁がOFFする
とは電磁弁が開いて開状態になること」である。他方、
「常時閉型の電磁弁では、電磁弁がONするとは電磁弁
が開いて開状態になることであり、電磁弁がOFFする
とは電磁弁が閉じて閉状態になること」である。本実施
の形態における電磁弁SV,SVは、常時開型の電磁弁
である。また、駆動回路は、電磁弁SV,SVをONす
るために、電磁弁SV,SVの各コイルに電流を供給
し、電磁弁SV,SVをOFFするために、電流の供給
を停止する。なお、マスタシリンダMC、マスタパワM
P、ブレーキスイッチBSWなどは、既に説明したとお
りである。 【0056】この車両に備わる駆動力低減装置は、CV
T3およびCVTECU6などで構成される。駆動力低
減装置は、ブレーキペダルBPが踏込まれている時かつ
車速が5km/h以下の時(所定の低車速以下の時)
に、クリープの駆動力を低減し、強クリープ状態から弱
クリープ状態にする。駆動力低減装置は、CVTECU
6で、ブレーキペダルBPが踏込まれているかをブレー
キスイッチBSWの信号から判断するとともに、車速が
5km/h以下であるかをCVT3の車速パルスから判
断する。さらに、CVTECU6では前記2つの基本条
件に追加して、ブレーキ液温が所定値以上、ブレーキ液
圧保持装置RUが正常(ブレーキ液圧保持装置RUの電
磁弁SV,SV(図1参照)の駆動回路が正常も含む)
およびポジションスイッチPSWのレンジがDレンジで
あることも判断し、5つの条件を満たしたときに、駆動
力を低減させている。車両は、この駆動力低減装置によ
る駆動力の低減によって、燃費の悪化を防止する。な
お、弱クリープ状態およびエンジン1停止の時には、C
VTECU6で、強クリープになるため条件を判断す
る。そして、強クリープの条件が満たされると、CVT
ECU6からCVT3に発進クラッチの係合力を強める
命令を送信し、クリープの駆動力を大きくする。 【0057】この車両に備わる原動機停止装置は、FI
/MGECU4などで構成される。原動機停止装置は、
車両が停止状態の時に、エンジン1を自動で停止させる
ことができる。原動機停止装置は、FI/MGECU4
のMGECUで、車速が0km/hなどのエンジン自動
停止条件を判断する。なお、エンジン自動停止条件につ
いては、後で詳細に説明する。そして、エンジン自動停
止条件が全て満たされていると判断すると、FI/MG
ECU4からエンジン1にエンジン停止命令を送信し、
エンジン1を自動で停止させる。車両は、この原動機停
止装置によるエンジン1の自動停止によって、さらに一
層燃費の悪化を防止する。なお、この原動機停止装置に
よるエンジン1自動停止時に、FI/MGECU4のM
GECUで、エンジン自動始動条件を判断する。そし
て、エンジン自動始動条件が満たされると、FI/MG
ECU4からMOTECU5にエンジン始動命令を送信
し、さらにMOTECU5からモータ2にエンジン1を
始動させる命令を送信し、モータ2によってエンジン1
を自動始動させるとともに、強クリープ状態にする。な
お、エンジン自動始動条件については、後で詳細に説明
する。 【0058】次に、このシステムにおいて送受信される
信号について説明する。なお、図2中の各信号の前に付
与されている「F_」は信号が0か1のフラグ情報であ
ることを表し、「V_」は信号が数値情報(単位は任
意)であることを表し、「I_」は信号が複数種類の情
報を含む情報であることを表す。 【0059】FI/MGECU4からCVTECU6に
送信される信号について説明する。V_MOTTRQ
は、モータ2の出力トルク値である。F_MGSTB
は、後で説明するエンジン自動停止条件の中でF_CV
TOKの5つの条件を除いた条件が全て満たされている
か否かを示すフラグであり、満たしている場合は1、満
たしていない場合は0である。ちなみに、F_MGST
BとF_CVTOKが共に1に切換わるとエンジン1を
自動停止し、どちらかのフラグが0に切換わるとエンジ
ン1を自動始動する。 【0060】FI/MGECU4からCVTECU6と
MOTECU5に送信される信号について説明する。V
_NEPは、エンジン1の回転数である。 【0061】CVTECU6からFI/MGECU4に
送信される信号について説明する。F_CVTOKは、
CVT3が弱クリープ状態、CVT3のレシオ(プーリ
比)がロー、CVT3の油温が所定値以上、ブレーキ液
温が所定値以上およびブレーキ液圧保持装置RUが正常
(ブレーキ液圧保持装置RUの電磁弁SV,SV(図1
参照)の駆動回路が正常も含む)の5つの条件が満たさ
れているか否かを示すフラグであり、5つの条件が全て
満たされている場合は1、1つでも条件を満たしていな
い場合は0である。なお、エンジン停止時には、CVT
3が弱クリープ状態、CVT3のレシオがロー、CVT
3の油温が所定値以上およびブレーキ液温が所定値以上
の条件は維持され、F_CVTOKは、ブレーキ液圧保
持装置RUが正常か否かのみで判断される。すなわち、
エンジン停止時、ブレーキ液圧保持装置RUが正常の場
合にはF_CVTOKは1、ブレーキ液圧保持装置RU
が故障の場合にはF_CVTOKは0である。F_CV
TTOは、CVT3の油温が所定値以上か否かを示すフ
ラグであり、所定値以上の場合は1、所定値未満の場合
は0である。なお、このCVT3の油温は、CVT3の
発進クラッチの油圧を制御するリニアソレノイド弁の電
気抵抗値から推定する。F_POSRは、ポジションス
イッチPSWのレンジがRレンジに選択されているか否
かを示すフラグであり、Rレンジの場合は1、Rレンジ
以外の場合は0である。F_POSDDは、ポジション
スイッチPSWのレンジがDレンジかつモードスイッチ
MSWのモードがDモードが選択されているか否かを示
すフラグであり、DモードDレンジの場合は1、Dレン
ジDモード以外の場合は0である。なお、FI/MGE
CU4は、DレンジDモード、Rレンジ、Pレンジ、N
レンジを示す情報が入力されていない場合、DレンジS
モード、Lレンジのいずれかが選択されていると判断す
る。 【0062】エンジン1からFI/MGECU4とCV
TECU6に送信される信号について説明する。V_A
NPは、エンジン1の吸気管の負圧値である。V_TH
は、スロットルの開度である。V_TWは、エンジン1
の冷却水温である。V_TAは、エンジン1の吸気温で
ある。なお、エンジンルーム内に配置されているブレー
キ液圧保持装置RUのブレーキ液温は、この吸気温に基
づいて推定する。両者ともエンジンルームの温度に関連
して変化するからである。 【0063】CVT3からFI/MGECU4とCVT
ECU6に送信される信号について説明する。V_VS
P1は、CVT3内に設けられた2つの車速ピックアッ
プの一方から出される車速パルスである。この車速パル
スに基づいて、車速を算出する。 【0064】CVT3からCVTECU6に送信される
信号について説明する。V_NDRPは、CVT3のド
ライブプーリの回転数を示すパルスである。V_NDN
Pは、CVT3のドリブンプーリの回転数を示すパルス
である。V_VSP2は、CVT3内に設けられた2つ
の車速ピックアップの他方から出される車速パルスであ
る。なお、V_VSP2は、V_VSP1より高精度で
あり、CVT3の発進クラッチの滑り量の算出などに利
用する。 【0065】MOTECU5からFI/MGECU4に
送信される信号について説明する。V_QBATは、バ
ッテリの残容量である。V_ACTTRQは、モータ2
の出力トルク値であり、V_MOTTRQと同じ値であ
る。I_MOTは、電気負荷を示すモータ2の発電量な
どの情報である。なお、モータ駆動電力を含めこの車両
で消費される電力は、全てこのモータ2で発電される。 【0066】FI/MGECU4からMOTECU5に
送信される信号について説明する。V_CMDPWR
は、モータ2に対する出力要求値である。V_ENGT
RQは、エンジン1の出力トルク値である。I_MG
は、モータ2に対する始動モード、アシストモード、回
生モードなどの情報である。 【0067】マスタパワMPからFI/MGECU4に
送信される信号について説明する。V_M/PNPは、
マスタパワMPの定圧室の負圧検出値である。 【0068】ポジションスイッチPSWからFI/MG
ECU4に送信される信号について説明する。ポジショ
ンスイッチPSWでNレンジまたはPレンジのどちらか
が選択されている場合のみ、ポジション情報としてNか
Pが送信される。 【0069】CVTECU6からCVT3に送信される
信号について説明する。V_DRHPは、CVT3のド
ライブプーリのシリンダの油圧を制御するリニアソレノ
イド弁への油圧指令値である。V_DNHPは、CVT
3のドリブンプーリのシリンダの油圧を制御するリニア
ソレノイド弁への油圧指令値である。なお、V_DRH
PとV_DNHPにより、CVT3の変速比を変える。
V_SCHPは、CVT3の発進クラッチの油圧を制御
するリニアソレノイド弁への油圧指令値である。なお、
V_SCHPにより、発進クラッチの係合力を変える。 【0070】CVTECU6からブレーキ液圧保持装置
RUに送信される信号について説明する。F_SOLA
は、ブレーキ液圧保持装置RUの電磁弁SV(A)(図
1参照)をON/OFFするためのフラグであり、ON
させる場合は1、OFFさせる場合は0である。F_S
OLBは、ブレーキ液圧保持装置RUの電磁弁SV
(B)(図1参照)をON/OFFするためのフラグで
あり、ONさせる場合は1、OFFさせる場合は0であ
る。 【0071】ポジションスイッチPSWからCVTEC
U6に送信される信号について説明する。ポジションス
イッチPSWでNレンジ、Pレンジ、Rレンジ、Dレン
ジまたはLレンジのいずれの位置に選択されているか
が、ポジション情報として送信される。 【0072】モードスイッチMSWからCVTECU6
に送信される信号について説明する。モードスイッチM
SWでDモード(通常走行モード)かSモード(スポー
ツ走行モード)のいずれが選択されているかが、モード
情報として送信される。なお、モードスイッチMSW
は、ポジションスイッチPSWがDレンジに設定されて
いる時に機能するモード選択スイッチである。 【0073】ブレーキスイッチBSWからFI/MGE
CU4とCVTECU6に送信される信号について説明
する。F_BKSWは、ブレーキペダルBPが踏込まれ
ている(ON)か踏込みが開放されているか(OFF)
を示すフラグであり、踏込まれている場合は1、踏込み
が開放されている場合は0である。 【0074】《ブレーキ液圧が保持される場合》次に、
前記システム構成を備えた車両において、ブレーキ液圧
保持装置RUによりブレーキ液圧が保持される場合を説
明する。ブレーキ液圧が保持されるのは、図3(a)に
示すように、I )車両の駆動力が弱クリープ状態にな
り、かつ、II)車速が0km/hになった場合である。
この条件を満たすときに、二つの電磁弁SV,SV(電
磁弁A・B)がともに閉状態になり、ホイールシリンダ
WC内にブレーキ液圧が保持される。なお、駆動力が弱
クリープ状態(F_WCRPON=1)になるのは、弱
クリープ指令(F_WCRP=1)が発せられた後であ
る。 【0075】I ) 「弱クリープ状態」という条件は、
坂道において、ドライバに充分強くブレーキペダルBP
を踏込ませるという理由による。すなわち、強クリープ
状態は傾斜5度の坂道でも車両が後ずさりしないような
駆動力を有しているので、ドライバは、ブレーキペダル
BPを強く踏込まないでも坂道で車両を停止させること
ができる。そのため、ドライバがブレーキペダルBPを
弱くしか踏込んでいない場合がある。このような場合
に、電磁弁SVを閉状態にし、さらにエンジン1を止め
てしまうと、車両が坂道を後ずさりしてしまうからであ
る。 【0076】II) 「車速が0km/h」という条件
は、走行中に電磁弁SVを閉じたのでは、任意の位置に
車両を停止することができなくなるという理由による。 【0077】〔弱クリープ指令条件〕弱クリープ指令
(F_WCRP)は、図3(a)に示すように、1)ブレ
ーキ液圧保持装置RUが正常であること、2)ブレーキ液
温所定値以上であること(F_BKTO)、3)ブレーキ
ペダルBPが踏込まれてブレーキスイッチBSWがON
になっていること(F_BKSW)、4)車速が5km/
h以下になっていること(F_VS)、5)ポジションス
イッチPSWがDレンジであること(F_POSD)、
の各条件が全て満たされた場合に発せられる。なお、駆
動力を弱クリープ状態にするのは、前記したようにドラ
イバにブレーキペダルBPを強く踏込ませるためという
理由に加えて、燃費を向上させるためという理由もあ
る。 【0078】1) ブレーキ液圧保持装置RUが正常でな
い場合に弱クリープ指令が発せられないのは、例えば、
電磁弁SVが閉状態にならないなどの異常がある場合
に、弱クリープ指令が発せられて弱クリープ状態になる
と、ホイールシリンダWC内にブレーキ液圧が保持され
ないために、発進時にドライバがブレーキペダルBPの
踏込みを開放すると一気にブレーキ力がなくなり車両が
坂道を後ずさりしてしまうからである。この場合、強ク
リープ状態を保つことで、坂道での後ずさりを防止して
坂道発進(登坂発進)を容易にする。 【0079】2) ブレーキ液温所定値未満で弱クリープ
指令が発せられないのは、ブレーキ液温が低い場合にブ
レーキ液圧保持装置RUを作動させて電磁弁SVを閉状
態にすると、ブレーキペダルBPの踏込みを部分的に緩
めた場合に、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧の低
下速度が極端に遅くなる問題があるからである。すなわ
ち、ブレーキペダルBPの踏込みを緩めただけでは、ブ
レーキスイッチBSWはONの状態のままであり、いつ
までも電磁弁SVは閉じた状態でいる。したがって、ブ
レーキ液は狭い絞りDを通してのみ排出されることにな
るが、ブレーキ液の温度が低いと粘性が高いため、所望
の速度でブレーキ液が流れないので、いつまでもブレー
キ力が強い状態に保持されたままになってしまうからで
ある。このように、ブレーキ液温が低い場合には、弱ク
リープ状態になることを禁止して、強クリープ状態を維
持し、坂道での後ずさりを防止する。ちなみに、強クリ
ープ状態が維持されれば、ブレーキ液圧保持装置RUは
作動せず、電磁弁SVが閉状態になることはない。な
お、ブレーキ液圧回路内に絞りを設けない構成のブレー
キ液圧保持装置の場合、例えば,弁の開度を変化させる
ことができる比例電磁弁を用いる構成のブレーキ液圧保
持装置の場合は、ブレーキ液の温度管理の重要性はさほ
ど高くない。また、ブレーキペダル自体の戻りを遅くす
る構成のブレーキ液圧保持装置の場合も、ブレーキ液の
温度管理はさほど重要ではない。したがって、ブレーキ
液温がある程度低い場合でも、弱クリープ指令を発する
ことができる。 【0080】3) ブレーキペダルBPが踏込まれていな
いとき(F_BKSW)に弱クリープ指令が発せられな
いのは、ドライバは少なくとも駆動力の低下を望んでい
ないからである。 【0081】4) 車速が5km/h以上で弱クリープ指
令が発せられないのは、発進クラッチを経由して駆動輪
8,8からの逆駆動力をエンジン1やモータ2に伝達し
てエンジンブレーキを効かしたり、モータによる回生発
電を行わせることがあるからである。 【0082】5) ポジションスイッチPSWがDレンジ
である場合と異なり、ポジションスイッチPSWがRレ
ンジまたはLレンジでは、弱クリープ指令は発せられな
い。強クリープ走行による車庫入れなどを容易にするた
めである。 【0083】弱クリープ状態であるか否かはCVT発進
クラッチに対する油圧指令値により判定する。弱クリー
プ状態であるフラグF_WCRPONは、次に強クリー
プ状態になるまで立ちつづける。 【0084】〔エンジン自動停止条件〕燃費をさらに向
上させるため、車両の停止時にはエンジン1が原動機自
動停止装置により自動停止されるが、この条件を説明す
る。以下の各条件がすべて満たされた場合にエンジン停
止指令(F_ENGOFF)が発せられ、エンジン1が
自動的に停止する(図3(b)参照)。 【0085】1) ポジションスイッチPSWがDレンジ
でありモードスイッチMSWがDモード(以下、この状
態を「DレンジDモード」という)であること; Dレ
ンジDモード以外では、イグニッションスイッチを切ら
ない限り、エンジン1を自動停止しない。例えば、ポジ
ションスイッチPSWがPレンジやNレンジの場合に、
エンジン1を自動的に停止させる指令が発せられてエン
ジン1が停止すると、ドライバは、イグニッションスイ
ッチが切られたものと思い込んで車両を離れてしまうこ
とがあるからである。なお、ポジションスイッチPSW
がDレンジでありモードスイッチMSWがSモード(以
下、この状態を「DレンジSモード」という)の場合
は、エンジン1の自動停止を行わない。ドライバは、D
レンジSモードでは、素早い車両の発進などが行えるこ
とを期待しているからである。また、ポジションスイッ
チPSWがLレンジ、Rレンジの場合にエンジン1の自
動停止を行わないのは、車庫入れなどの際に、頻繁にエ
ンジン1を自動停止したのでは、ドライバにとって煩わ
しいからである。 【0086】2) ブレーキペダルBPが踏込まれてブレ
ーキスイッチBSWがONの状態であること; ドライ
バに注意を促すためである。ブレーキスイッチBSWが
ONの場合、ドライバは、ブレーキペダルBPに足を置
いた状態にある。したがって、仮に、エンジン1の自動
停止により駆動力がなくなって車両が坂道を後ずさりし
始めても、ドライバは、ブレーキペダルBPの踏増しを
容易に行い得るからである。 【0087】3) エンジン始動後、一旦車速が5km/
h以上に達したこと; クリープ走行での車庫出し・車
庫入れを容易にするためである。車両を車庫から出し入
れする際の切返えし操作などで、停止するたびにエンジ
ン1が自動停止したのでは、ドライバにとって煩わしい
からである。 【0088】4) 車速が0km/hであること; 停止
していれば駆動力は必要がないからである。 5) バッテリ容量が所定値以上であること; エンジン
停止後、モータ2でエンジン1を再始動することができ
ないという事態を防止するためである。 6) 電気負荷所定値以下であること; 負荷への電気の
供給を確保するためである。電気負荷が所定値以下であ
れば、エンジン1を自動停止しても支障はない。 【0089】7) マスターパワMPの定圧室の負圧が所
定値以上であること; 定圧室の負圧が小さい状態でエ
ンジン1を自動停止すると、定圧室の負圧はエンジン1
の吸気管より導入しているため、定圧室の負圧はさらに
小さくなり、ブレーキペダルBPを踏込んだ場合の踏込
み力の増幅が小さくなりブレーキの効きが低下してしま
うからである。 【0090】8) アクセルペダルが踏込まれていないこ
と; ドライバは、駆動力の増強を望んでおらず、エン
ジン1を自動停止しても支障がない。 【0091】9) CVT3が弱クリープ状態であるこ
と; ドライバに強くブレーキペダルBPを踏込ませ
て、エンジン停止後も車両が後ずさりするのを防ぐため
である。すなわち、エンジン1が始動している場合、坂
道での後ずさりは、ブレーキ力とクリープ力の合計で防
止される。このため、強クリープ状態では、ドライバが
ブレーキペダルBPの踏込みを加減して弱くしか踏込ん
でいない場合がある。したがって、弱クリープ状態にし
てからエンジン1の自動停止を行う。 【0092】10) CVT3のレシオがローであること;
CVT3のレシオ(プーリ比)がローでない場合、円
滑な発進ができない場合があるため、エンジン1の自動
停止は行わない。したがって、円滑な発進のため、CV
T3のレシオがローである場合に、エンジン1の自動停
止を行う。 【0093】11) エンジン1の水温が所定値以上である
こと; エンジン1の自動停止・自動始動はエンジン1
が安定している状態で行うのが好ましいからである。水
温が低いと、寒冷地ではエンジン1が再始動しない場合
があるため、エンジン1の自動停止を行わない。 【0094】12) CVT3の油温が所定値以上であるこ
と; CVT3の油温が低い場合は、発進クラッチの実
際の油圧の立ち上りに後れを生じ、エンジン1の始動か
ら強クリープ状態になるまでに時間がかかり、坂道で車
両が後ずさりする場合があるため、エンジン1の自動停
止を行わない。 【0095】13) ブレーキ液の温度が所定値以上である
こと; ブレーキ液の温度が低い場合、絞りDでの流体
抵抗が大きくなり、不要なブレーキの引きずりを生じる
からである。このため、ブレーキ液圧保持装置RUは作
動させない。したがって、エンジン1の自動停止および
弱クリープ状態を禁止して、強クリープによって坂道で
の下りを防止する。なお、ブレーキ液圧回路内に絞りを
設けない構成のブレーキ液圧保持装置の場合、例えば、
弁の開度を変化させることができる比例電磁弁を用いる
構成のブレーキ液圧保持装置の場合や、ブレーキペダル
自体の戻りを遅くする構成のブレーキ液圧保持装置の場
合、ブレーキ液の温度管理はさほど重要ではない。した
がって、ブレーキ液温がある程度低い場合でも、エンジ
ン自動停止指令を発することができる。 【0096】14) ブレーキ液圧保持装置RUが正常であ
ること; ブレーキ液圧保持装置RUに異常がある場
合、ブレーキ液圧を保持することができないことがある
ので、強クリープ状態を継続させて、坂道で車両が後ず
さりしないようにする。したがって、ブレーキ液圧保持
装置RUに異常がある場合は、エンジン1の自動停止を
行わない。一方、ブレーキ液圧保持装置RUが正常であ
れば、エンジン1の自動停止を行っても支障がない。 【0097】《ブレーキ液圧の保持が解除される場合》
一旦閉状態になった電磁弁SVは、図4(a)に示すよ
うに、I )ブレーキペダルBPの踏込み開放後、所定の
遅延時間が経過した場合、II)駆動力が強クリープ状態
になった場合、III )車両速度が所定車速(20km/
h)まで上昇した場合、のいずれかの条件を満たすとき
に開状態になり、ホイールシリンダWC内のブレーキ液
圧の保持が解除される。 【0098】I ) 遅延時間は、ブレーキペダルBPの
踏込みが開放された場合(ブレーキスイッチBSWがO
FFになった場合)にカウントされ始める。遅延時間は
2〜3秒程度であり、フェイルアンドセーフアクション
として電磁弁SVを開状態にして、ブレーキの引きずり
をなくする。 【0099】II) 駆動力が強クリープ状態になると電
磁弁SVを開状態にするのは、強クリープ状態は5度の
坂道に抗して車両を停止させることができるような駆動
力を備えるため、ホイールシリンダWCにブレーキ液圧
を保持して車両が後ずさりするのを防止する必要がなく
なるからである。強クリープ状態になるのは強クリープ
指令(F_SCRP)が発せられた後であるが、強クリ
ープ指令は、Dレンジにおいて、ブレーキペダルBPの
踏込みが開放された場合に発せられる。 【0100】III ) 車両速度が所定車速(20km/
h)まで上昇すると電磁弁SVを開状態にするのは、車
速が20km/hに達するとドライバに降坂する意図が
あると判断し、不要なブレーキの引きずりをなくするた
めである。すなわち、ドライバがブレーキペダルBPの
踏込みを緩めて(または、踏込みを開放して)下り坂を
下ろうとする際には、ドライバのブレーキペダルBPの
操作に応じたブレーキ力を発生させて、円滑な降坂走行
ができるようにする。なお、車両が弱クリープ状態(す
なわち、発進駆動力が生じていない状態)において車速
が20km/hまで上昇しているので、車両は、原動機
による駆動力以外で推進力を得ている。車両の走行にお
いて、原動機による駆動力以外での車両の推進力は、下
り坂で、車両の自重による推進力とドライバがブレーキ
ペダルBPの踏込みを緩めるかあるいは開放することに
よるブレーキ力の低減によって得ることができる。ま
た、下り坂で、ドライバがブレーキペダルBPの踏込み
を緩めるあるいは踏込みを開放するのは、ドライバが降
坂走行する場合である。したがって、弱クリープ状態で
車速が20km/hまで上昇することによって、ドライ
バが降坂する意図があると判断できる。 【0101】〔エンジン自動始動条件〕エンジン1の自
動停止後、エンジン1は、以下の条件で自動的に始動す
る。このエンジン自動始動条件を説明する(図4(b)
参照)。以下の条件のいずれかを満たす場合に、エンジ
ン1が自動的に始動する。 【0102】1) DレンジDモードであり、かつブレー
キペダルBPの踏込みが開放された場合; ドライバの
発進操作が開始されたと判断されるため、エンジン1を
自動始動する。 【0103】2) DレンジSモードに切替えられた場
合; DレンジDモードでエンジン1が自動停止した
後、DレンジSモードに切替えると、エンジン1を自動
始動する。ドライバはDレンジSモードでは素早い発進
を期待するからであり、ブレーキペダルBPの踏込みの
開放を待つことなくエンジン1を自動始動する。 【0104】3) アクセルペダルが踏込まれた場合;
ドライバは、エンジン1による駆動力を期待しているか
らである。 【0105】4) Pレンジ、Nレンジ、Lレンジ、Rレ
ンジに切替えられた場合; DレンジDモードでエンジ
ン1が自動停止した後、Pレンジなどに切替えると、エ
ンジン1を自動始動する。PレンジまたはNレンジに切
替えた場合に、エンジン1を自動始動しないと、ドライ
バは、イグニッションスイッチを切ったものと思った
り、イグニッションスイッチを切る必要がないものと思
って、そのまま車両から離れてしまうことがあり、フェ
イルアンドセーフの観点から好ましくないからである。
このような事態を防止するため、エンジン1を再始動す
る。また、Lレンジ、Rレンジに切替えられた場合にエ
ンジン1を自動始動するのは、ドライバに発進の意図が
あると判断されるからである。 【0106】5) バッテリ容量が所定値以下になった場
合; バッテリ容量が所定値以上でなければエンジン1
を自動停止しないが、一旦エンジン1を自動停止した後
でも、バッテリ容量が低減する場合がある。この場合
は、バッテリに充電することを目的として、エンジン1
を自動始動する。なお、所定値は、これ以上バッテリ容
量が低減するとエンジン1を自動始動することができな
くなるという限界のバッテリ容量よりも高い値に設定す
る。 【0107】6) 電気負荷が所定値以上になった場合;
例えば、照明などの電気負荷が稼動していると、バッ
テリ容量が急速に低減してしまい、エンジン1を再始動
することができなくなってしまうからである。したがっ
て、バッテリ容量にかかわらず電気負荷が所定値以上で
ある場合には、エンジン1を自動始動する。 【0108】7) マスターパワMPの負圧が所定値以下
になった場合; マスターパワMPの負圧が小さくなる
とブレーキの制動力が低下するため、これを確保するた
めにエンジン1を自動始動する。 【0109】8) ブレーキ液圧保持装置RUが故障して
いる場合; 電磁弁SVや電磁弁SVの駆動回路などが
故障している場合、エンジン1を始動して,強クリープ
状態にする。エンジン1の自動停止後、電磁弁SVの駆
動回路を含むブレーキ液圧保持装置RUに故障が検出さ
れた場合、発進時にブレーキペダルBPの踏込みが開放
された際にブレーキ液圧を保持することができない場合
があるので、強クリープ状態にすべく、故障が検出され
た時点でエンジン1を自動始動する。すなわち、強クリ
ープ状態で車両が後ずさりするのを防止し、登坂発進を
容易にする。 【0110】《通常時の制御タイムチャート》次に、図
5を参照して、前記システムを備えた車両が減速→停止
→発進した時の制御について説明する。なお、車両のポ
ジションスイッチPSWおよびモードスイッチMSW
は、DモードDレンジで変化させないこととする。な
お、図5(a)の上段のタイムチャートは、車両の駆動
力とブレーキ力の増減を時系列で示した図である。図中
の太い線が駆動力を示し、細い線がブレーキ力を示す。
図5(a)の下段のタイムチャートは、電磁弁SVの開
閉状態を示した図である。図5(b)は、停止時のブレ
ーキ液圧回路の状態を示す図であり、電磁弁SVは閉状
態にある。 【0111】まず、図5(a)において、車両走行時、
ドライバがブレーキペダルBPを踏込むと(ブレーキS
W[ON])、ブレーキ力が増加していく。ブレーキペ
ダルBPを踏込む際に、ドライバはアクセルペダルの踏
込みを開放するため、駆動力は、低減し、やがて強クリ
ープ状態(通常のアイドリング状態)になる。そして、
継続してブレーキペダルBPが踏込まれて車速が5km
/h以下になると、弱クリープ指令(F_WCRP)が
発せられ、さらに駆動力が低減し、弱クリープ状態(F
_WCRPON)になる。 【0112】そして、車速が0km/hになると、電磁
弁SVが閉状態になるとともに、エンジン1が自動的に
停止(F_ENGOFF)し、駆動力がなくなる。この
際、電磁弁SVが閉状態になるので、ホイールシリンダ
WC内にブレーキ液圧が保持される。また、エンジン1
が弱クリープ状態を経て停止するので、ドライバは、坂
道で車両が後ずさりしない程度に強くブレーキペダルB
Pを踏込んでいる。そのため、エンジン1が自動停止し
ても車両が後ずさりすることはない(後退抑制力)。仮
に、後ずさりしても、ドライバがブレーキペダルBPを
僅かに踏増すだけで、後ずさりを防止することができ
る。ドライバはブレーキペダルBPを踏込んだ状態(ブ
レーキペダルBPに足を置いた状態)にあるので、慌て
ることなく容易にブレーキペダルBPの踏増しを行え
る。なお、エンジン1を自動停止するのは、燃費を向上
させることおよび排気ガスの発生をなくするためであ
る。駆動力を弱クリープ状態にする条件、電磁弁SVを
閉状態にする条件、エンジン1を自動停止する条件は、
図3を参照して既に説明したとおりである。 【0113】次に、ドライバが、車両を再発進させるた
めに、ブレーキペダルBPの踏込みを開放する。なお、
ドライバがリリーフ弁RVの設定圧(リリーフ圧)以上
にブレーキペダルBPを踏込んでいる場合、図5(a)
に示すようにブレーキペダルBPの踏込みの開放により
リリーフ弁RVが作動し、リリーフ圧までブレーキ力が
短時間に低減する。このリリーフ弁RVにより、ドライ
バが必要以上にブレーキペダルBPを強く踏込んでいる
場合でも、迅速な登坂発進を行うことができる。 【0114】ブレーキペダルBPの踏込みが完全に開放
(ブレーキSW[OFF])されると、エンジン自動始
動指令(F_ENGON)が発せられ、信号通信および
メカ系の遅れによるタイムラグの後、エンジン1が自動
始動する。そして、駆動力が、増加して、強クリープ状
態(F_SCRPON)になる。ブレーキペダルBPの
踏込みが開放されて(ブレーキスイッチBSWがOFF
になって)から強クリープ状態になるまでの時間は、約
0.5秒である。この間、電磁弁SVは閉状態を維持す
るので、ホイールシリンダWC内のブレーキ液は、絞り
Dを通してのみしかマスタシリンダMC側に移動するこ
とができない。そのため、ブレーキ力は徐々にしか低減
せず、車両の後ずさりが防止される。 【0115】そして、強クリープ状態(F_SCRPO
N)になると、車両は、坂道に抗することができる駆動
力を生じる。そこで、車両は、ブレーキ力によって車両
の発進の障害にならないように、あるいはブレーキの無
駄な引きずりをなくするため、閉状態にある電磁弁SV
を開状態にし、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧を
一気に低減させてブレーキ力をなくする。その後、アク
セルペダルのさらなる踏込みにより駆動力が増加し、車
両は加速していく。駆動力を強クリープ状態にする条
件、電磁弁SVを開状態にする条件は、図4を参照して
既に説明したとおりである。 【0116】なお、図5(a)上段図のブレーキ力を示
す線において、「リリーフ圧」の部分から右斜め下に伸
びる仮想線は、ブレーキ液圧が保持されない場合を示
す。この場合、ブレーキペダルBPの踏込み力の低下に
遅れることなくブレーキ力が低減し消滅するので、登坂
発進を容易に行うことはできない。また、図5(a)上
段図のブレーキ力を示す線において、電磁弁SVが開状
態になった部分から右斜め下に徐々に低減していく仮想
線は、電磁弁SVが開状態にならない場合のブレーキ力
の低減状況を示す。この仮想線に示すようにブレーキ力
が低減していくと、ブレーキの引きずりを生じて好まし
くない。図5(a)下段図のV_BKDLYは、遅延時
間を示す。遅延時間が経過したならば、フェイルアンド
セーフアクションとして、状況の如何にかかわらず電磁
弁SVが開状態になる。 【0117】《下り坂における制御タイムチャート
(1)》次に、図6を参照して、図5で説明した同じ構
成の車両が下り坂において減速→停止→発進した時の制
御について説明する。なお、車両のポジションスイッチ
PSWおよびモードスイッチMSWは、DモードDレン
ジで変化させないこととする。なお、図6の上段のタイ
ムチャートは、車両の駆動力とブレーキ力の増減を時系
列で示した図である。図中の太い線が駆動力を示し、細
い線がブレーキ力を示す。図6の中段のタイムチャート
は、車速を示した図である。図6の下段のタイムチャー
トは、電磁弁SVの開閉状態を示した図である。 【0118】図6に示す制御では、車両が停止するまで
図5に示す制御と同じなので、説明を省略する。なお、
車両を下り坂で停止させるため、ドライバは、平坦地で
車両を停止するよりも、ブレーキペダルBPを強く踏込
んでいる。というのは、下り坂では、車両の自重によっ
て下り坂を下る方向への推進力が存在する。そのため、
下り坂で停止するために、その推進力を上回るブレーキ
力を必要とするからである。 【0119】ドライバが、車両を再発進させるために、
ブレーキペダルBPの踏込みを開放する。なお、ドライ
バがリリーフ弁RVの設定圧(リリーフ圧)以上にブレ
ーキペダルBPを踏込んでいる場合、図6に示すように
ブレーキペダルBPの踏込みの開放によりリリーフ弁R
Vが作動し、リリーフ圧までブレーキ力が短時間に低減
する。 【0120】リリーフ圧までブレーキ力が低減した後、
急勾配の下り坂の場合、車両の自重による推進力とブレ
ーキ力の低減によって、車両が下り坂を下り始める。そ
して、車両は速度を増していく。 【0121】また、ブレーキペダルBPの踏込みが完全
に開放(ブレーキSW[OFF])されると、エンジン
自動始動指令(F_ENGON)が発せられ、信号通信
およびメカ系の遅れによるタイムラグの後、エンジン1
が自動始動する。 【0122】そして、駆動力が増加して強クリープ状態
(F_SCRPON)になる前(すなわち、発進駆動力
が生じる前)に、車速が20km/hに達すると、車両
は、電磁弁SVを閉状態から開状態にして、マスタシリ
ンダMCとホイールシリンダWCを導通する。すると、
ホイールシリンダWC内のブレーキ液がマスタシリンダ
に流れ込み、ブレーキ力がなくなる。そのため、車両
は、不要なブレーキの引きずりなく、下り坂を下る。そ
の結果、さらに車速が増す。 【0123】なお、図6に示す制御では、DレンジDモ
ードでブレーキペダルBPの踏込みを開放(ブレーキS
W[OFF])したために、エンジン1を自動的に始動
した。しかし、ブレーキペダルBPの踏込みを部分的に
緩めて車両を走行させ、車速が20km/hに達した場
合、車両は、エンジン1を停止した状態(すなわち、駆
動力が全くない状態)で、電磁弁SVを閉状態から開状
態にする。そして、ドライバが、不要なブレーキの引き
ずりなくブレーキペダルBPの踏込み力を加減しなが
ら、降坂走行することができる。 【0124】《下り坂における制御タイムチャート
(2)》次に、図7を参照して、図6で説明した制御に
対して車両停止時にエンジン1を自動停止しない場合
に、車両が下り坂において減速→停止→発進した時の制
御について説明する。車両停止時にエンジン1を自動停
止しないのは、車両が原動機停止装置を備えていない場
合でもよいし、原動機停止装置を備えているが、図3
(b)のエンジン自動停止条件を満たしていない場合で
もよい。なお、車両のポジションスイッチPSWおよび
モードスイッチMSWは、DモードDレンジで変化させ
ないこととする。なお、図7の上段のタイムチャート
は、車両の駆動力とブレーキ力の増減を時系列で示した
図である。図中の太い線が駆動力を示し、細い線がブレ
ーキ力を示す。図7の中段のタイムチャートは、車速を
示した図である。図7の下段のタイムチャートは、電磁
弁SVの開閉状態を示した図である。 【0125】図7に示す制御では、車両が停止するまで
図5に示す制御と同じなので、説明を省略する。しか
し、車速が0km/hになっても、エンジン自動停止条
件を満たさないか、あるいは原動機停止装置を備えてな
いため、エンジン1を自動的に停止しない。したがっ
て、駆動力は、弱クリープ状態が維持される。なお、車
両を下り坂で停止させるため、ドライバは、平坦地で停
止するよりも、ブレーキペダルBPを強く踏込んでい
る。というのは、下り坂では、車両の自重によって下り
坂を下る方向への推進力が存在する。そのため、下り坂
で停止するために、その推進力を上回るブレーキ力を必
要とするからである。 【0126】ドライバが、車両を再発進させるために、
ブレーキペダルBPの踏込みを開放する。なお、ドライ
バがリリーフ弁RVの設定圧(リリーフ圧)以上にブレ
ーキペダルBPを踏込んでいる場合、図7に示すように
ブレーキペダルBPの踏込みの開放によりリリーフ弁R
Vが作動し、リリーフ圧までブレーキ力が短時間に低減
する。 【0127】リリーフ圧までブレーキ力が低減した後、
急勾配の下り坂の場合、車両の自重による推進力とブレ
ーキ力の低減によって、車両が下り坂を下り始める。そ
して、車両は速度を増していく。 【0128】また、ブレーキペダルBPの踏込みが完全
に開放(ブレーキSW[OFF])されると、強クリー
プ指令(F_SCRP)が発せられ、駆動力が増してい
く。 【0129】そして、駆動力が増加して強クリープ状態
(F_SCRPON)になる前(すなわち、発進駆動力
が生じる前)に、車速が20km/hに達すると、車両
は、電磁弁SVを閉状態から開状態にして、マスタシリ
ンダMCとホイールシリンダWCを導通する。すると、
ホイールシリンダWC内のブレーキ液がマスタシリンダ
に流れ込み、ブレーキ力がなくなる。そのため、車両
は、不要なブレーキの引きずりなく、下り坂を下る。そ
の結果、さらに車速が増す。 【0130】なお、図7に示す制御では、DレンジDモ
ードでブレーキペダルBPの踏込みを開放(ブレーキS
W[OFF])したために、強クリープ指令(F_SC
RP)を発した。しかし、ブレーキペダルBPの踏込み
を部分的に緩めて車両を走行させ、車速が20km/h
に達した場合、車両は、弱クリープ状態を維持して、電
磁弁SVを閉状態から開状態にする。そして、ドライバ
が、不要なブレーキの引きずりなくブレーキペダルBP
の踏込み力を加減しながら、降坂走行することもでき
る。 【0131】以上、本発明は、前記の実施の形態に限定
されることなく、様々な形態で実施される。例えば、ブ
レーキ液圧保持装置によるホイールシリンダ内のブレー
キ液圧の作用を解除する所定車速を20km/hとした
が、特に数値を限定するものではなく、ドライバが降坂
する意図があると判断できる車速とする。また、ブレー
キ液圧保持装置の構成として絞りと電磁弁によるブレー
キ液圧低下速度減少手段によってホイールシリンダ内の
ブレーキ液圧を保持したが、ホイールシリンダ内のブレ
ーキ液圧を保持できる手段を特に限定するものでなく、
トラクションコントロールシステムの1つの機能として
ブレーキ液圧を保持するものなどでもよい。 【0132】 【発明の効果】本発明に係るブレーキ液圧保持装置によ
れば、ドライバが降坂する意図がある時には、ドライバ
は、ブレーキ液圧保持装置によるホイールシリンダ内の
ブレーキ液圧の作用を受けることなく、ブレーキペダル
操作に応じたブレーキ力を発生させることができる。そ
のため、ドライバは、ブレーキペダルの踏込み力を加減
するだけで、降坂走行を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係るブレーキ液圧保持装置の構成図で
ある。 【図2】本発明に係るブレーキ液圧保持装置を備える車
両のシステム構成図である。 【図3】本発明に係るブレーキ液圧保持装置の車両停止
時における制御ロジックであり、(a)は電磁弁を閉状
態にする制御ロジック、(b)はエンジンを自動停止す
る制御ロジックである。 【図4】本発明に係るブレーキ液圧保持装置の車両発進
時における制御ロジックであり、(a)は電磁弁を開状
態にする制御ロジック、(b)はエンジンを自動始動す
る制御ロジックである。 【図5】本発明に係るブレーキ液圧保持装置を備えた車
両の制御タイムチャートであり、(a)は車両の減速→
停止→発進の時系列に沿った駆動力とブレーキ力の変
化、および電磁弁の開閉状態を示し、(b)は車両停止
時のブレーキ液圧回路の構成図である。 【図6】車両発進時に発進駆動力が生じていない場合か
つ車両速度が所定車速まで上昇した場合の図5に相当す
る制御タイムチャートである。 【図7】車両停止時にエンジンを自動停止しない場合に
おける図6に相当する制御タイムチャートである。 【符号の説明】 BP・・・ブレーキペダル RU・・・ブレーキ液圧保持装置 WC・・・ホイールシリンダ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神田 稔也 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 羽田 智 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 江口 高弘 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 井上 弘敏 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (56)参考文献 特開 平7−101319(JP,A) 特開 平10−147222(JP,A) 実開 平4−2732(JP,U) 実開 平1−81163(JP,U)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ブレーキペダルの踏込み開放後も、車両
    自体に発進駆動力が生じるまで、引続きホイールシリン
    ダ内にブレーキ液圧を作用させるブレーキ液圧保持装置
    において、 発進駆動力が生じていない場合であっても、車両速度が
    登坂発進時の車両の後ずさりを検出する可能性のある車
    速より大きいドライバに降坂する意図があると判断でき
    る車速まで上昇したときにはブレーキ液圧保持装置によ
    るホイールシリンダ内のブレーキ液圧の作用を解除する
    ことを特徴とするブレーキ液圧保持装置。
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