JP2001047987A - ブレーキ力保持装置 - Google Patents

ブレーキ力保持装置

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JP2001047987A
JP2001047987A JP11224205A JP22420599A JP2001047987A JP 2001047987 A JP2001047987 A JP 2001047987A JP 11224205 A JP11224205 A JP 11224205A JP 22420599 A JP22420599 A JP 22420599A JP 2001047987 A JP2001047987 A JP 2001047987A
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braking force
brake
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Satoshi Haneda
智 羽田
Yoichi Sugimoto
洋一 杉本
Toshiya Kanda
稔也 神田
Takahiro Eguchi
高弘 江口
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Honda Motor Co Ltd
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Honda Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 車両の傾斜角(道路勾配)や車両の積載重量
の大きさに応じた適切な保持ブレーキ力の解除を行うこ
とができるブレーキ力保持装置を提供すること課題とす
る。 【解決手段】 車両停止時にブレーキペダルの踏み込み
開放後も引き続き車両にブレーキ力を作用させるために
開放前のブレーキペダルの踏み込み力に応じたブレーキ
力を保持し、発進操作により前記ブレーキ力の保持を解
除するブレーキ力保持装置であって、前記ブレーキ力の
保持を解除する際、前記ブレーキ力の保持の解除開始時
から前記ブレーキ力の作用がなくなるまでの解除時間を
前記保持していたブレーキ力の大きさに応じて増減する
ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両停止時にブレ
ーキペダルの踏み込み開放後も引き続き車両にブレーキ
力を作用させるブレーキ力保持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車両停止時にブレーキペダルの踏み込み
開放後も引き続き車両にブレーキ力を作用させることが
できるブレーキ力保持装置が知られている。ブレーキ力
保持装置には、マスタシリンダとホイールシリンダ間の
液圧通路に電磁弁を設けて、この液圧通路を電磁弁で連
通/遮断してブレーキ力を保持するものがある。このブ
レーキ力保持装置は、ブレーキペダルの踏み込みが開放
された後も、電磁弁で液圧通路を遮断してブレーキ液圧
をホイールシリンダに保持する。そして、発進操作がな
されると電磁弁による液圧通路の遮断を解除し、上り坂
において後退のない円滑な発進を行えるようにしてい
る。
【0003】例えば、特開昭60−12360号公報に
は、マスタシリンダとホイールシリンダの間に電磁逆止
弁を設け、電磁逆止弁を作動することにより、ホイール
シリンダからマスタシリンダへのブレーキ液の逆流を阻
止してブレーキ力を保持する車両用制動装置が開示され
ている。この電磁逆止弁の作動条件又は解除条件は、車
速センサ、アクセルペダルスイッチ、ブレーキペダルス
イッチなどの各種検出装置からの信号に基づいて電子式
制御ユニットで判断している。また、特開昭63−43
854号公報には、マスタシリンダとホイールシリンダ
の間に電磁弁を設け、電磁弁制御手段から電磁弁への通
電により、ホイールシリンダにブレーキ液圧を保持する
ブレーキ液圧保持装置の制御装置が開示されている。電
磁弁制御手段は、傾斜検出手段、ブレーキスイッチ、ク
ラッチスイッチ、バックギアスイッチからの信号に基づ
いて、上り坂において前進又は後進中に車両が停止した
場合に電磁弁に通電する。
【0004】一般に、車両の傾斜角(道路勾配)が大き
いほど又は車両の積載重量が大きいほど、車両を停止さ
せるのに必要なブレーキ力が大きくなると共に、車両の
停止状態を維持するために必要なブレーキ力も大きくな
る。そのため、ドライバは、車両の傾斜角(道路勾配)
が大きい又は車両の積載重量が大きい場合、ブレーキペ
ダルを強く踏み込み、大きなブレーキ力を発生させる。
そして、ドライバのブレーキペダルの踏み込みに応じた
ブレーキ力を保持すれば、車両の傾斜角(道路勾配)や
車両の積載重量に見合ったブレーキ力を保持することが
できる。
【0005】
【発明が解決しよとする課題】しかしながら、ブレーキ
力を保持する際に車両の傾斜角(道路勾配)や車両の積
載重量に見合ったブレーキ力を保持したとしても、発進
操作がなされたときに保持ブレーキ力の解除が適切にな
されないと、発進時に車両後退やブレーキの引きずりな
どを生じて、円滑な発進を行うことができない。例え
ば、車両の傾斜角(道路勾配)や車両の積載重量が大き
い場合、保持ブレーキ力も大きくなる。しかし、図16
に示すように、駆動力が十分に大きくなっていないの
に、大きい保持ブレーキ力を一気に解除すると、車両後
退を生じる。また、車両の傾斜角(道路勾配)や車両の
積載重量が小さい場合、保持ブレーキ力も小さくなる。
しかし、図16に示すように、小さい保持ブレーキ力を
漸減すると、不必要なブレーキ力がいつまでも保持され
て、ブレーキ力の引きずりを生じる。
【0006】そこで、本発明は、車両の傾斜角(道路勾
配)や車両の積載重量の大きさに応じた適切な保持ブレ
ーキ力の解除を行うことができるブレーキ力保持装置を
提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決した本発
明に係るブレーキ力保持装置は、車両停止時にブレーキ
ペダルの踏み込み開放後も引き続き車両にブレーキ力を
作用させるために開放前のブレーキペダルの踏み込み力
に応じたブレーキ力を保持し、発進操作により前記ブレ
ーキ力の保持を解除するブレーキ力保持装置であって、
前記ブレーキ力の保持を解除する際、前記ブレーキ力の
保持の解除開始時から前記ブレーキ力の作用がなくなる
までの解除時間を前記保持していたブレーキ力の大きさ
に応じて増減することを特徴とする。このブレーキ力保
持装置によれば、保持していたブレーキ力の大きさから
車両の傾斜角(道路勾配)や車両の積載重量の大きさを
推定し、保持ブレーキ力の解除時間を増減する。そし
て、保持していたブレーキ力が大きい場合(すなわち、
車両の傾斜角(道路勾配)や車両の積載重量が大きい場
合)には、解除時間を長くし、上り坂での車両後退を防
止する。また、保持していたブレーキ力が小さい場合
(すなわち、車両の傾斜角(道路勾配)や車両の積載重
量が小さい場合)には、解除時間を短くし、無用なブレ
ーキ力の引きずりを防止する。
【0008】また、前記ブレーキ力保持装置において、
前記ブレーキ力の保持を解除する際、前記保持していた
ブレーキ力の大きさに関係なく前記ブレーキ力を一定速
度で低減することを特徴とする。このブレーキ力保持装
置によれば、保持していたブレーキ力の大きさに関係な
く保持ブレーキ力を一定速度で低減するので、保持して
いたブレーキ力の大きさに比例して解除時間が増減す
る。さらに、ドライバが体感するブレーキ力の低減感が
一定となり、発進操作時の安定感が向上する。
【0009】「ブレーキペダルの踏み込み力に応じたブ
レーキ力」とは、ブレーキペダルの踏み込み力に比例す
るブレーキ力を引き続き車両に作用するようにすればよ
い。したがって、ホイールシリンダに送り込まれていた
ブレーキ液圧をそのまま保持しても良いし、また、その
まま保持するのでなく、減圧したり、或いはブレーキペ
ダルの踏み込みに関係なくブレーキ液圧を発生できるポ
ンプを備えるブレーキ装置にあっては増圧して保持する
ようにしても良い。なお、本実施の形態では、保持する
ブレーキ力は、ホイールシリンダに送り込まれていたブ
レーキ液圧をそのまま保持している。また、「発進操
作」は、以下の3パターンなどの操作が行われたたとき
に相当する。 ドライバによるアクセルペダルの踏み込み。(自動変
速機搭載車両) ドライバによるアクセルペダルの踏み込みとクラッチ
接続。(手動変速機搭載車両) ブレーキペダルの踏み込み開放に応じて、自動的に坂
道に抗する程度まで駆動力が大きくなるように発進クラ
ッチのトルク伝達容量を増加する車両にあっては、ブレ
ーキペダルの踏み込み開放と開放後の駆動力増加達成。
(本実施の形態)。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係るブレーキ力
保持装置の実施の形態を図面を参照して説明する。図1
はブレーキ力保持装置を搭載した車両のシステム構成
図、図2はブレーキ力保持装置の構成図、図3はブレー
キ力保持装置の(a)はブレーキ力を保持する制御ロジ
ック、(b)はブレーキ力保持装置の作動を許可する制
御ロジック、図4は駆動力制御装置の(a)は弱クリー
プ状態にする制御ロジック、(b)は走行時強クリープ
状態にする制御ロジック、(c)は中クリープ状態にす
る制御ロジック、図5は原動機停止装置のエンジンを自
動停止する制御ロジック、図6はブレーキ力保持装置の
(a)はブレーキ力の保持を解除する制御ロジック(遮
断状態→調圧状態)、(b)はブレーキ力の保持を解除
する制御ロジック(遮断状態→連通状態)、(c)はク
リープの立ち上がりを判断する制御ロジック、図7は駆
動力制御装置の(a)は強クリープ状態にする制御ロジ
ック(車両後退検出バージョン)、(b)は強クリープ
状態にする制御ロジック(車両移動検出バージョン)、
図8は原動機停止装置の(a)はエンジンを自動始動す
る制御ロジック(車両後退検出バージョン)、(b)は
エンジンを自動始動する制御ロジック(車両移動検出バ
ージョン)、図9は車両後退検出方法の一例であり、
(a)は車両後退検出の構成図、(b)は(a)図の
方向回転のパルス位相、(c)は(a)図の方向回転
のパルス位相、図10はブレーキ力保持装置によるブレ
ーキ液圧制御のフローチャート(パターン1)、図11
はブレーキ力保持装置によるブレーキ液圧制御のフロー
チャート(パターン2)、図12はブレーキ力保持装置
を塔載した車両のエンジンを自動停止する場合の制御タ
イムチャート(パターン1)、図13はブレーキ力保持
装置を塔載した車両のエンジンを自動停止する場合の制
御タイムチャート(パターン2)、図14はブレーキ力
保持装置を塔載した車両のエンジンを自動停止しない場
合の制御タイムチャート(パターン1)、図15はブレ
ーキ力保持装置を塔載した車両のエンジンを自動停止し
ない場合の制御タイムチャート(パターン2)である。
【0011】本実施の形態のブレーキ力保持装置は、原
動機を備えた車両に搭載され、ブレーキペダルの踏み込
み開放後も引き続きブレーキ力を保持することができ
る。さらに、ブレーキ力保持装置は、保持ブレーキ力を
解除する際、保持ブレーキ力の解除開始から保持ブレー
キ力の作用がなくなるまでの解除時間を保持ブレーキ力
の大きさによって増減する。また、この車両は、原動機
がアイドリング状態でかつ所定車速以下で、ブレーキペ
ダルの踏み込み状態に応じてクリープの駆動力を大きい
状態と小さい状態に切換える駆動力制御装置を備える。
なお、クリープとは、自動変速機を備える車両でDレン
ジ又はRレンジなどの走行レンジが選択されているとき
に、アクセルペダルを踏み込まなくても(原動機がアイ
ドリング状態)、車両が這うようにゆっくり動くことで
ある。
【0012】《車両のシステム構成など》先ず、本実施
の形態の車両のシステム構成などを図1を参照して説明
する。本実施の形態で説明する車両は、原動機としてガ
ソリンなどを動力源とする内燃機関であるエンジン1と
電気を動力源とするモータ2を備えるハイブリッド車両
であり、変速機としてベルト式無段変速機3(以下、C
VT3と記載する)を備える車両である。なお、本発明
の車両は、原動機としてエンジンのみ、モータのみな
ど、原動機を特に限定しない。また、変速機としてトル
クコンバーターを備える自動変速機や手動変速機など、
変速機を特に限定しない。
【0013】〔エンジン(原動機)・CVT(変速機)
・モータ(原動機)〕エンジン1は、燃料噴射電子制御
ユニット(以下、FIECUと記載する)に制御され
る。なお、FIECUは、マネージメント電子制御ユニ
ット(以下、MGECUと記載する)と一体で構成し、
燃料噴射/マネージメント電子制御ユニット(以下、F
I/MGECUと記載する)4に備わっている。また、
モータ2は、モータ電子制御ユニット(以下、MOTE
CUと記載する)5に制御される。さらに、CVT3
は、CVT電子制御ユニット(以下、CVTECUと記
載する)6に制御される。
【0014】さらに、CVT3には、駆動輪8,8が装
着された駆動軸7が取り付けられる。駆動輪8,8に
は、ホイールシリンダWC(図2参照)などを備えるデ
ィスクブレーキ9,9が装備されている。ディスクブレ
ーキ9,9のホイールシリンダWCには、ブレーキ力保
持装置RUを介してマスタシリンダMCが接続される。
マスタシリンダMCには、マスタパワーMPを介してブ
レーキペダルBPからの踏み込みが伝達される。ブレー
キペダルBPは、ブレーキスイッチBSWによって、ブ
レーキペダルBPが踏み込まれているか否かが検出され
る。
【0015】エンジン1は、熱エネルギーを利用する内
燃機関であり、CVT3及び駆動軸7などを介して駆動
輪8,8を駆動する。なお、エンジン1は、燃費悪化の
防止などのために、車両停止時に自動で停止させる場合
がある。そのために、車両は、エンジン自動停止条件を
満たしたときにエンジン1を停止させる原動機停止装置
を備える。
【0016】モータ2は、図示しないバッテリからの電
気エネルギーを利用し、エンジン1による駆動をアシス
トするアシストモードを有する。また、モータ2は、ア
シスト不要の時(下り坂や減速時など)に駆動軸7の回
転による運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、図
示しないバッテリに蓄電する回生モードを有し、さらに
エンジン1を始動する始動モードなどを有する。
【0017】CVT3は、ドライブプーリとドリブンプ
ーリとの間に無端ベルトを巻き掛け、各プーリ幅を変化
させて無端ベルトの巻き掛け半径を変化させることによ
って、変速比を無段階に変化させる。そして、CVT3
は、出力軸に発進クラッチを連結し、この発進クラッチ
を係合して、無端ベルトで変速されたエンジン1などの
出力を発進クラッチの出力側のギアを介して駆動軸7に
伝達する。なお、このCVT3を備える車両は、アイド
リング時におけるクリープ走行が可能であると共に、こ
のクリープの駆動力を低減する駆動力制御装置DCUを
備える。
【0018】〔駆動力制御装置〕駆動力制御装置DCU
は、CVT3に備えられ、発進クラッチの駆動力伝達容
量を可変制御して、クリープの駆動力の大きさを切り換
える。また、駆動力制御装置DCUは、車両移動(又
は、車両後退)を検出したときには、駆動力を増加させ
る。なお、駆動力制御装置DCUは、後に説明するCV
TECU6も構成に含むものとする。
【0019】駆動力制御装置DCUは、後に説明する弱
クリープ状態にする条件、中クリープ状態にする条件、
強クリープ状態にする条件及び走行時強クリープ状態に
する条件をCVTECU6で判断し、発進クラッチの駆
動力伝達容量を変えて、予め設定された各クリープ状態
の駆動力に切り換える。さらに、駆動力制御装置DCU
は、登坂発進時、車両が後退したか又は車両が移動した
かを検出したときには、発進クラッチの駆動力伝達容量
を増加させて強クリープ状態に切り換える。駆動力制御
装置DCUは、CVTECU6でクリープの駆動力を切
り換える各条件を判断し、CVTECU6からCVT3
に発進クラッチの係合油圧を制御するリニアソレノイド
弁への油圧指令値を送信する。そして、駆動力制御装置
DCUは、CVT3でこの油圧指令値に基づいて、発進
クラッチの係合力を切り換える。これにより、駆動力伝
達容量も変わり、クリープの駆動力が切り換わる。な
お、車両は、この駆動力制御装置DCUによる駆動力の
低減によって、燃費の改善が図られる。燃費の改善は、
エンジン1の負荷の低減と、発進クラッチにおける油圧
ポンプの負荷の低減などにより実現される。ここで、駆
動力伝達容量とは、発進クラッチが伝達できる最大駆動
力(駆動トルク)を意味する。つまり、エンジン1で発
生した駆動力が駆動力伝達容量を上回った場合、発進ク
ラッチは駆動力伝達容量を越える駆動力を駆動輪8,8
に伝達することはできない。ちなみに、故障検出装置D
Uでブレーキ力保持装置RUの故障が検出されると、駆
動力制御装置DCUによる弱クリープ状態への切り換え
は、禁止される。
【0020】駆動力制御装置DCUは、所定車速以下で
アクセルペダルの踏み込みが開放されている状態でも変
速機において走行レンジが選択されている場合は、原動
機から駆動輪へ駆動力を伝達すると共に、ブレーキペダ
ルBPの踏み込みの状態により、ブレーキペダルBPが
踏み込まれているときは駆動輪に伝達する駆動力を「小
さい状態」にし、ブレーキペダルBPが踏み込まれてい
ないときは駆動力を「大きい状態」にする。このよう
に、ブレーキペダルBPの踏み込み時に駆動力を「小さ
い状態」にするのは、ドライバに強くブレーキペダルB
Pを踏み込ませて仮にエンジン1による駆動力が消滅し
ても坂道で停止する際に自重により車両が後退しないよ
うにするためである。一方、ブレーキペダルBPの踏み
込み開放時に駆動力を「大きい状態」にするのは、車両
の発進や加速などに備えるほかブレーキ力によらないで
もある程度の坂道に抗することができるようにするため
である。
【0021】なお、本実施の形態の車両のクリープの駆
動力は、大きい状態と小さい状態の他、前記大き
い状態と前記小さい状態の中間程度の状態の3つの大き
さを有する。各状態での駆動力伝達容量は、駆動力が大
きい状態では大きく、駆動力が小さい状態では小さく、
駆動力が中間程度の状態では中間程度の大きさに予め設
定されている。本実施の形態では、駆動力(クリープの
駆動力)が大きい状態を強クリープ状態、駆動力が小さ
い状態を弱クリープ状態、駆動力が前記大きい状態と前
記小さい状態の中間程度の状態を中クリープ状態と呼
ぶ。さらに、強クリープ状態には、駆動力が大きいレベ
ルと小さいレベルがあり、大きいレベルを単に強クリー
プ状態と呼び、小さいレベルを走行時強クリープ状態と
呼ぶ。強クリープ状態は、傾斜5°に釣り合う駆動力を
有する状態である。走行時強クリープ状態は、強クリー
プ状態より小さい駆動力であり、弱クリープ状態に切り
換わる前段階の状態である。弱クリープ状態は、殆ど駆
動力がない状態である。中クリープ状態は、強クリープ
状態と弱クリープ状態の中間程度の駆動力を有する状態
であり、強クリープ状態から弱クリープ状態に切り換わ
る過程で段階的に駆動力を低減させる場合の中間状態で
ある。強クリープ状態は、所定車速以下でアクセルペダ
ルの踏み込みが開放され(すなわち、アイドリング状態
時)、かつポジションスイッチPSWで走行レンジが選
択されているときに実現され、ブレーキペダルBPの踏
み込みを開放すると車両が這うようにゆっくり進む。弱
クリープ状態は、さらにブレーキペダルBPが踏み込ま
れたときに実現され、車両は停止か微低速である。な
お、「ポジションスイッチPSWで走行レンジが選択さ
れ」とは、「変速機において走行レンジが選択され」と
いう意味である。
【0022】〔ポジションスイッチ〕ポジションスイッ
チPSWのレンジは、シフトレバーで選択する。ポジシ
ョンスイッチPSWのレンジは、駐停車時に使用するP
レンジ、ニュートラルであるNレンジ、バック走行時に
使用するRレンジ、通常走行時に使用するDレンジ及び
急加速や強いエンジンブレーキを必要とするときに使用
するLレンジがある。また、走行レンジとは、車両が走
行可能なレンジ位置であり、この車両ではDレンジ、L
レンジ及びRレンジの3つのレンジである。さらに、ポ
ジションスイッチPSWでDレンジが選択されていると
きには、モードスイッチMSWで、通常走行モードであ
るDモードとスポーツ走行モードであるSモードを選択
できる。ちなみに、ポジションスイッチPSWとモード
スイッチMSWの情報は、CVTECU6に送信され、
さらにメータ10に送信される。メータ10は、ポジシ
ョンスイッチPSWとモードスイッチMSWで選択され
たレンジ情報とモード情報を表示する。なお、本実施の
形態において、前記したクリープの駆動力の低減(つま
り駆動力を中クリープ状態、弱クリープ状態にするこ
と)は、ポジションスイッチPSWがDレンジ又はLレ
ンジにあるときに行なわれ、Rレンジにあるときは強ク
リープ状態が保持される。また、Nレンジ、Pレンジで
は駆動輪8,8には駆動力は伝達されないが、駆動力伝
達容量が低減され形式上は弱クリープ状態に切り換えら
れる。これらの点に付いては、後に詳細に説明する。
【0023】〔ECU類〕FI/MGECU4に含まれ
るFIECUは、最適な空気燃費比となるように燃料の
噴射量を制御すると共に、エンジン1を統括的に制御す
る。FIECUは、スロットル開度やエンジン1の状態
を示す情報などが送信され、各情報に基づいてエンジン
1を制御する。また、FI/MGECU4に含まれるM
GECUは、MOTECU5を主として制御すると共
に、エンジン自動停止条件及びエンジン自動始動条件の
判断を行う。MGECUは、モータ2の状態を示す情報
が送信されると共に、FIECUからエンジン1の状態
を示す情報などが入力され、各情報に基づいて、モータ
2のモードの切り換え指示などをMOTECU5に行
う。また、MGECUにはCVT3の状態を示す情報、
エンジン1の状態を示す情報、ポジションスイッチPS
Wのレンジ情報及びモータ2の状態を示す情報などが送
信され、各情報に基づいて、エンジン1の自動停止又は
自動始動を判断する。
【0024】MOTECU5は、FI/MGECU4か
らの制御信号に基づいて、モータ2を制御する。FI/
MGECU4からの制御信号にはモータ2によるエンジ
ン1の始動、エンジン1の駆動のアシスト又は電気エネ
ルギーの回生などを指令するモード情報やモータ2に対
する出力要求値などがあり、MOTECU5は、これら
の情報に基づいて、モータ2に命令を出す。また、モー
タ2などから情報を得て、発電量などのモータ2の情報
やバッテリの容量などをFI/MGECU4に送信す
る。
【0025】CVTECU6は、CVT3の変速比や発
進クラッチの駆動力伝達容量などを制御する。CVTE
CU6は、CVT3の状態を示す情報、エンジン1の状
態を示す情報及びポジションスイッチPSWのレンジ情
報などが送信され、CVT3のドライブプーリとドリブ
ンプーリの各シリンダの油圧の制御及び発進クラッチの
油圧の制御をするための信号などをCVT3に送信す
る。さらに、CVTECU6は、ブレーキ力保持装置R
Uの電磁弁SV(A),SV(B)(図2参照)のON
(遮断)/OFF(連通)を制御する制御部CUを備
え、電磁弁SV(A),SV(B)をON(遮断)/O
FF(連通)するために、ブレーキ力保持装置RUに通
電する。また、CVTECU6は、クリープの駆動力の
切り換え判断をすると共に、ブレーキ力保持装置RU作
動中に車両移動(又は、車両後退)を検出したときに駆
動力を増加させる判断をし、この判断をした情報をCV
T3の駆動力制御装置DCUに送信する。また、CVT
ECU6は、ブレーキ力保持装置RUの故障を検出する
ために、故障検出装置DUを備えている。なお、CVT
ECU6は、クリープの駆動力の切り換え判断及び車両
移動(又は、車両後退)を検出したときに駆動力を増加
させる判断をすると共に、その判断結果に基づいて発進
クラッチの係合油圧を制御するリニアソレノイド弁への
油圧指令値を送信する。
【0026】〔ブレーキ(ブレーキ力保持装置)〕ディ
スクブレーキ9,9は、駆動輪8,8と一体となって回
転するディスクロータを、ホイールシリンダWC(図2
参照)を駆動源とするブレーキパッドで挟み付け、その
摩擦力で制動力を得る。ホイールシリンダWCには、ブ
レーキ力保持装置RUを介してマスタシリンダMCのブ
レーキ液圧が供給される。
【0027】ブレーキ力保持装置RUは、ブレーキペダ
ルBPの踏み込み開放後もホイールシリンダWCにブレ
ーキ液圧を作用させて、ブレーキ力を保持する。ブレー
キ力保持装置RUは、CVTECU6内の制御部CUも
構成に含むものとする。この、ブレーキ力保持装置RU
の構成などについては、後で詳細に説明する(図2参
照)。
【0028】なお、電磁弁がON/OFFするとは、
「常時開型の電磁弁では、電磁弁がONするとは電磁弁
が閉じてブレーキ液の流れを遮断する遮断位置になるこ
とであり、電磁弁がOFFするとは電磁弁が開いてブレ
ーキ液の流れを許容する連通位置になること」である。
他方、「常時閉型の電磁弁では、電磁弁がONするとは
電磁弁が開いてブレーキ液の流れを許容する連通位置に
なることであり、電磁弁がOFFするとは電磁弁が閉じ
てブレーキ液の流れを遮断する遮断位置になること」で
ある。後に説明するように、本実施の形態における電磁
弁SV(A),SV(B)は、常時開型の電磁弁であ
る。また、制御部CU内に備えられる駆動回路は、電磁
弁SV(A),SV(B)をON/OFFするために、
電磁弁SV(A),SV(B)の各電磁コイルに流す電
流量を算出し、電磁弁SV(A),SV(B)に通電す
る。
【0029】マスタシリンダMCは、ブレーキペダルB
Pの踏み込みを油圧に変える装置である。さらに、その
ブレーキペダルBPの踏み込みをアシストするために、
マスタパワーMPが、マスタシリンダMCとブレーキペ
ダルBPの間に設けられている。マスタパワーMPは、
ドライバがブレーキペダルBPを踏み込む力に、エンジ
ン1の負圧や圧縮空気などの力を加えて制動力を強化
し、ブレーキング時の踏力を軽くする装置である。ま
た、ブレーキペダルBPにはブレーキスイッチBSWが
設けられ、このブレーキスイッチBSWは、ブレーキペ
ダルBPが踏み込まれているか踏み込みが開放されてい
るかを検出する。
【0030】〔原動機停止装置〕この車両に備わる原動
機停止装置は、FI/MGECU4やCVTECU6な
どで構成される。原動機停止装置は、車両が停止状態の
ときに、エンジン1を自動で停止させることができる。
原動機停止装置は、FI/MGECU4とCVTECU
6でエンジン自動停止条件を判断する。なお、エンジン
自動停止条件については、後で詳細に説明する。そし
て、エンジン自動停止条件が全て満たされていると判断
すると、FI/MGECU4からエンジン1にエンジン
停止命令を送信し、エンジン1を自動で停止させる。車
両は、この原動機停止装置によるエンジン1の自動停止
によって、さらに燃費の改善を図る。また、原動機停止
装置は、この原動機停止装置によるエンジン1自動停止
時に、FI/MGECU4とCVTECU6で、エンジ
ン自動始動条件を判断する。そして、エンジン自動始動
条件が満たされると、FI/MGECU4からMOTE
CU5にエンジン始動命令を送信し、さらに、MOTE
CU5からモータ2にエンジン1を始動させる命令を送
信し、モータ2によってエンジン1を自動始動させると
共に、強クリープ状態にする。なお、エンジン自動始動
条件については、後で詳細に説明する。ちなみに、故障
検出装置DUでブレーキ力保持装置RUの故障が検出さ
れると、原動機停止装置の作動は、禁止される。
【0031】〔信号類〕次に、このシステムにおいて送
受信される信号について説明する。なお、図1中の各信
号の前に付与されている「F_」は信号が0か1のフラ
グ情報であることを表し、「V_」は信号が数値情報
(単位は任意)であることを表し、「I_」は信号が複
数種類の情報を含む情報であることを表す。
【0032】FI/MGECU4からCVTECU6に
送信される信号について説明する。V_MOTTRQ
は、モータ2の出力トルク値である。F_MGSTB
は、エンジン自動停止条件の中でFI/MGECU4で
判断する条件で、その条件が全て満たされているか否か
を示すフラグであり、満たしている場合は1、満たして
いない場合は0である。なお、F_MGSTBのエンジ
ン自動停止条件は、後で詳細に説明する。ちなみに、F
_MGSTBとF_CVTOKが共に1に切り換わると
エンジン1を自動停止し、どちらかのフラグが0に切り
換わるとエンジン1を自動始動する。
【0033】FI/MGECU4からCVTECU6と
MOTECU5に送信される信号について説明する。V
_NEPは、エンジン1の回転数である。
【0034】CVTECU6からFI/MGECU4に
送信される信号について説明する。F_MCRPON
は、中クリープ状態であるか否かを示すフラグであり、
中クリープ状態の場合は1、中クリープ状態でない場合
は0である。なお、F_MCRPONが1の場合、エン
ジン1に中クリープ状態時の中エア(強クリープよりも
弱いエア)を吹くことを要求している。F_AIRSC
RPは、強クリープ状態時の強エア要求フラグであり、
強クリープ状態時の強エアを吹く場合には1、吹かない
場合には0である。なお、F_MCRPONとF_AI
RSCRPが共に0の場合には、FI/MGECU4は
弱クリープ状態時の弱エアを吹く。ちなみに、強クリー
プ状態、中クリープ状態、弱クリープ状態にかかわら
ず、アイドリング時のエンジン回転数を一定に保つに
は、強クリープ状態、中クリープ状態、弱クリープ状態
の各状態に応じたエアを吹いてエンジン出力を調整する
必要がある。強クリープ状態のように、エンジン1の負
荷が高いときには強いエア(強クリープ状態時の強エ
ア)を吹く必要がある。なお、エアを吹くとは、エンジ
ン1のスロットル弁をバイパスする空気通路から、スロ
ットル弁下流の吸気管にエアを送り込むことである。エ
アの強さは、空気通路の開度を制御して送り込むエアの
強さ(量)を調節する。F_CVTOKは、エンジン自
動停止条件の中でCVTECU6で判断する条件で、そ
の条件が全て満たされているか否かを示すフラグであ
り、満たしている場合は1、満たしていない場合は0で
ある。なお、F_CVTOKのエンジン自動停止条件
は、後で詳細に説明する。F_CVTTOは、CVT3
の油温が所定値以上か否かを示すフラグであり、所定値
以上の場合は1、所定値未満の場合は0である。なお、
このCVT3の油温は、CVT3の発進クラッチの油圧
を制御するリニアソレノイド弁の電気抵抗値から推定す
る。F_POSRは、ポジションスイッチPSWのレン
ジでRレンジが選択されているか否かを示すフラグであ
り、Rレンジの場合は1、Rレンジ以外の場合は0であ
る。F_POSDDは、ポジションスイッチPSWのレ
ンジでDレンジかつモードスイッチMSWのモードでD
モードが選択されているか否かを示すフラグであり、D
レンジDモードの場合は1、DレンジDモード以外の場
合は0である。なお、FI/MGECU4は、Dレンジ
Dモード、Rレンジ、Pレンジ、Nレンジを示す情報が
入力されていない場合、DレンジSモード、Lレンジの
いずれかが選択されていると判断する。
【0035】エンジン1からFI/MGECU4とCV
TECU6に送信される信号について説明する。V_A
NPは、エンジン1の吸気管の負圧値である。V_TH
は、スロットルの開度である。V_TWは、エンジン1
の冷却水温である。V_TAは、エンジン1の吸気温で
ある。なお、エンジンルーム内に配置されているブレー
キ力保持装置RUのブレーキ液温は、この吸気温に基づ
いて推定する。両者とも、エンジンルームの温度に関連
して変化するからである。
【0036】CVT3からFI/MGECU4とCVT
ECU6に送信される信号について説明する。V_VS
P1は、CVT3内に設けられた2つの車速ピックアッ
プの一方から出される車速パルスである。この車速パル
スに基づいて、車速を算出する。
【0037】CVT3からCVTECU6に送信される
信号について説明する。V_NDRPは、CVT3のド
ライブプーリの回転数を示すパルスである。V_NDN
Pは、CVT3のドリブンプーリの回転数を示すパルス
である。V_VSP2は、CVT3内に設けられた2つ
の車速ピックアップの他方から出される車速パルスであ
る。なお、V_VSP2は、V_VSP1より高精度で
あり、CVT3の発進クラッチの滑り量の算出などに利
用する。
【0038】MOTECU5からFI/MGECU4に
送信される信号について説明する。V_QBATは、バ
ッテリの残容量である。V_ACTTRQは、モータ2
の出力トルク値であり、V_MOTTRQと同じ値であ
る。I_MOTは、電気負荷を示すモータ2の発電量な
どの情報である。なお、モータ駆動電力を含めこの車両
で消費される電力は、全てこのモータ2で発電される。
【0039】FI/MGECU4からMOTECU5に
送信される信号について説明する。V_CMDPWR
は、モータ2に対する出力要求値である。V_ENGT
RQは、エンジン1の出力トルク値である。I_MG
は、モータ2に対する始動モード、アシストモード、回
生モードなどの情報である。
【0040】マスタパワーMPからFI/MGECU4
に送信される信号について説明する。V_M/PNP
は、マスタパワーMPの定圧室の負圧検出値である。
【0041】ポジションスイッチPSWからFI/MG
ECU4に送信される信号について説明する。ポジショ
ンスイッチPSWでNレンジ又はPレンジのどちらかが
選択されている場合のみ、ポジション情報としてNかP
が送信される。
【0042】CVTECU6からCVT3に送信される
信号について説明する。V_DRHPは、CVT3のド
ライブプーリのシリンダの油圧を制御するリニアソレノ
イド弁への油圧指令値である。V_DNHPは、CVT
3のドリブンプーリのシリンダの油圧を制御するリニア
ソレノイド弁への油圧指令値である。なお、V_DRH
PとV_DNHPにより、CVT3の変速比を変える。
V_SCHPは、CVT3の発進クラッチの油圧を制御
するリニアソレノイド弁への油圧指令値である。なお、
V_SCHPにより、発進クラッチの係合力(すなわ
ち、駆動力伝達容量)を変える。
【0043】CVTECU6からブレーキ力保持装置R
Uに送信される信号について説明する。V_SOLA
は、ブレーキ力保持装置RUの電磁弁SV(A)(図2
参照)をON(閉)/OFF(開)するために、電磁コ
イルに流す電流量である。V_SOLBは、ブレーキ力
保持装置RUの電磁弁SV(B)(図2参照)をON
(閉)/OFF(開)するために、電磁コイルに流す電
流量である。
【0044】ポジションスイッチPSWからCVTEC
U6に送信される信号について説明する。ポジションス
イッチPSWでNレンジ、Pレンジ、Rレンジ、Dレン
ジ又はLレンジのいずれの位置に選択されているかが、
ポジション情報として送信される。
【0045】モードスイッチMSWからCVTECU6
に送信される信号について説明する。モードスイッチM
SWでDモード(通常走行モード)かSモード(スポー
ツ走行モード)のいずれが選択されているかが、モード
情報として送信される。なお、モードスイッチMSW
は、ポジションスイッチPSWがDレンジに設定されて
いるときに機能するモード選択スイッチである。
【0046】ブレーキスイッチBSWからFI/MGE
CU4とCVTECU6に送信される信号について説明
する。F_BKSWは、ブレーキペダルBPが踏み込ま
れている(ON)か踏み込みが開放されているか(OF
F)を示すフラグであり、踏み込まれている場合は1、
踏み込みが開放されている場合は0である。
【0047】CVTECU6からメータ10に送信され
る信号について説明する。ポジションスイッチPSWで
Nレンジ、Pレンジ、Rレンジ、Dレンジ又はLレンジ
のいずれの位置に選択されているかが、ポジション情報
として送信される。さらに、モードスイッチMSWでD
モード(通常走行モード)かSモード(スポーツ走行モ
ード)のいずれが選択されているかが、モード情報とし
て送信される。
【0048】《ブレーキ力保持装置》 〔ブレーキ力保持装置の構成〕ブレーキ力保持装置RU
は、ブレーキペダルBPの踏み込み開放後も引き続きブ
レーキ力を保持することができる。そして、保持したブ
レーキ力を解除する際、保持ブレーキ力の低減開始から
保持ブレーキ力の作用がなくなるまでの解除時間を保持
したブレーキ力の大きさによって増減する。なお、ブレ
ーキ力保持装置RUは、ブレーキペダルBPの踏み込み
開放後、駆動力が大きい状態に増加する過程でブレーキ
力の保持を解除する。
【0049】本実施の形態におけるブレーキ力保持装置
RUは、図2に示すように、液圧式ブレーキ装置BKの
ブレーキ液圧通路FP内に組み込まれ、マスタシリンダ
MCとホイールシリンダWC間のブレーキ液圧通路FP
を連通する連通位置と該ブレーキ液圧通路FPを遮断し
てホイールシリンダWCのブレーキ液圧を保持(つまり
ブレーキ力を保持)する遮断位置に切り換わる電磁弁S
Vを有する。電磁弁SVは、制御部CUによって電磁コ
イル(図示せず)に流れる電流量が制御され、その電流
量に応じて連通位置と遮断位置に切り換わって、保持し
たブレーキ液圧を調整しながら低減することができる。
【0050】先ず、液圧式ブレーキ装置BKの説明を行
う(図2参照)。液圧式ブレーキ装置BKのブレーキ液
圧回路BCは、マスタシリンダMCとホイールシリンダ
WCとこれを結ぶブレーキ液圧通路FPよりなる。ブレ
ーキは安全走行のために極めて重要な役割を有するの
で、液圧式ブレーキ装置BKはそれぞれ独立したブレー
キ液圧回路を2系統設け(BC(A)、BC(B))、
一つの系統が故障したときでも残りの系統で最低限のブ
レーキ力が得られるようになっている。
【0051】マスタシリンダMCは、本体にピストンM
CPが挿入されており、ドライバがブレーキペダルBP
を踏み込むことによりピストンMCPが押されてマスタ
シリンダMC内のブレーキ液に圧力が加わり機械的な力
がブレーキ液圧(ブレーキ液に加わる圧力)に変換され
る。ドライバがブレーキペダルBPから足を放して踏み
込みを開放すると、戻しバネMCSの力でピストンMC
Pが元に戻され、同時にブレーキ液圧も元に戻る。図2
に示すマスタシリンダMCは、独立したブレーキ液圧回
路BCを2系統設けるというフェイルアンドセーフの観
点から、ピストンMCPを2つ並べてマスタシリンダM
Cの本体を2分割したタンデム式のマスタシリンダMC
である。
【0052】プレーキペダルBPの操作力を軽くするた
めに、ブレーキペダルBPとマスタシリンダMCの間に
マスタパワーMP(ブレーキブースタ)が設けられる。
図2に示すマスタパワーMPは、バキューム(負圧)サ
ーボ式のものであり、エンジン1の吸気マニホールドか
ら負圧を取り出して、ドライバによるブレーキペダルB
Pの操作を容易にしている。
【0053】ブレーキ液圧通路FPは、マスタシリンダ
MCとホイールシリンダWCを結び、マスタシリンダM
Cで発生したブレーキ液圧を、ブレーキ液を移動させる
ことによりホイールシリンダWCに伝達する流路の役割
を果たす。また、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧
の方が高い場合には、ホイールシリンダWCからマスタ
シリンダMCにブレーキ液を戻す流路の役割を果す。ブ
レーキ液圧回路BCは前記のとおりそれぞれ独立したも
のが設けられるため、ブレーキ液圧通路FPもそれぞれ
独立のものが2系統設けられる。図2に示すブレーキ液
圧通路などにより構成されるブレーキ液圧回路BCは、
一方のブレーキ液圧回路BC(A)が右前輪と左後輪を
制動し、他方のブレーキ液圧回路BC(B)が左前輪と
右後輪を制動するX配管方式のものである。なお、ブレ
ーキ液圧回路は、X配管方式ではなく、一方のブレーキ
液圧回路が両方の前輪を他方のブレーキ液圧回路が両方
の後輪を制動する前後分割方式とすることもできる。
【0054】ホイールシリンダWCは、車輪8ごとに設
けられ、マスタシリンダMCにより発生しブレーキ液圧
通路FPを通してホイールシリンダWCに伝達されたブ
レーキ液圧を、車輪8を制動するための機械的な力(ブ
レーキ力)に変換する役割を果す。ホイールシリンダW
Cは、本体にピストンが挿入されており、このピストン
がブレーキ液圧に押されて、ディスクブレーキの場合は
ブレーキパッド或いはドラムブレーキの場合はブレーキ
シューを作動させて、車輪8を制動するブレーキ力を作
り出す。なお、前記以外に前輪のホイールシリンダWC
のブレーキ液圧と後輪のホイールシリンダWCのブレー
キ液圧を制御するブレーキ液圧制御バルブなどが、必要
に応じて設けられる。
【0055】次に、ブレーキ力保持装置RUの説明を行
う(図2参照)。ブレーキ力保持装置RUは、電磁弁S
V並びに必要に応じてチェック弁CVを備え、マスタシ
リンダMCとホイールシリンダWCを結ぶブレーキ液圧
通路FPに組み込まれる。また、ブレーキ力保持装置R
Uは、マスターシリンダMCのブレーキ液圧を検出する
ために、ブレーキ液圧通路FPにブレーキ液圧センサP
Gを備える。さらに、ブレーキ力保持装置RUは、電磁
弁SVのON(遮断位置)/OFF(連通位置)を制御
するために、CVTECU6に制御部CUを備える。
【0056】電磁弁SVは、制御部CUからの電気信号
により作動し、遮断位置(ON)でブレーキ液圧通路F
Pのブレーキ液の流れを遮断する遮断状態と、連通位置
(OFF)でブレーキ液圧通路FPのブレーキ液の流れ
を許容する連通状態を有する。さらに、電磁弁SVは、
遮断位置(ON)と連通位置(OFF)を切り換えてブ
レーキ液圧通路FPのブレーキ液の流れを遮断/許容を
繰り返しながら、ブレーキ液圧を調整する調圧状態を有
する。ちなみに、図2に示す2つの電磁弁SV(A),
SV(B)は共に連通位置にあることを示す。この電磁
弁SVにより、登坂発進時にドライバがブレーキペダル
BPの踏み込みを開放した場合でも、ホイールシリンダ
WCにブレーキ液圧を保持し、車両の後退を防止するこ
とができる。なお、後退とは、車両の自重によりドライ
バが進もうとする方向とは逆の方向に車両が進んでしま
うこと(坂道を下ってしまうこと)を意味する。
【0057】電磁弁SVが遮断状態に切り換わるとき
は、ブレーキ液の流れを一気に遮断して、ホイールシリ
ンダWCに加えられたブレーキ液圧をブレーキ力として
保持する。しがたって、ブレーキ力保持装置RUは、電
磁弁SVを遮断状態に切り換えることによって、ホイー
ルシリンダWCに送り込まれたブレーキ液圧をそのまま
保持することができる。ちなみに、ホイールシリンダW
Cに送り込まれるブレーキ液圧は、マスタパワーMP、
マスターシリンダMC及びブレーキ液圧通路FPを介し
て伝達されたドライバのブレーキペダルBPの踏み込み
力に比例したブレーキ液の圧力である。そのため、車両
の傾斜角(道路勾配)や車両の積載重量が大きいほど、
ドライバはブレーキペダルBPを強く踏み込むので、ホ
イールシリンダWCに送り込まれるブレーキ液圧は大き
い(ひいては、ブレーキ力は大きい)。したがって、遮
断状態で保持していたブレーキ力が大きいほど、車両の
傾斜角(道路勾配)や車両の積載重量が大きいと推定で
きる。
【0058】電磁弁SVが連通状態に切り換わるとき
は、ホイールシリンダWCとマスタシリンダMC間のブ
レーキ液の流れを一気に許容して、ブレーキ力を瞬時に
解除する。なお、電磁弁SVが連通状態に維持されてい
るときは、ホイールシリンダWCにはブレーキ液圧が保
持されない(すなわち、ブレーキ力が保持されない)。
【0059】電磁弁SVが調圧状態に切り換わるとき
は、電磁弁SVが遮断位置と連通位置に繰り返し切り換
わり、ホイールシリンダWCからマスタシリンダMCに
流れるブレーキ液の流量を調整する。そして、ブレーキ
液圧(ひいては、ブレーキ力)を調整しながら低減し、
保持ブレーキ力の解除時間を制御する。解除時間は、遮
断状態で保持していたブレーキ力が大きいほど長い時間
に設定する。特に、遮断状態で保持していたブレーキ力
の大きさに関係なく保持ブレーキ力を一定速度で低減す
ることによって、解除時間を遮断状態で保持していたブ
レーキ力の大きさに比例させて設定することもできる。
【0060】遮断状態で保持していたブレーキ力が大き
いほど、解除時間を長い時間に設定する理由について説
明する。前記したように、遮断状態で保持していたブレ
ーキ力が大きいほど、車両の傾斜角(道路勾配)や車両
の積載重量が大きいと推定できる。また、ブレーキ力保
持装置RUは、ブレーキペダルBPの踏み込み開放後、
駆動力が強クリープ状態に増加する過程でブレーキ力の
保持を解除する。そのため、保持ブレーキ力の解除開始
後の短時間内では、駆動力が強クリープ状態に達成して
いない。したがって、車両の傾斜角(道路勾配)や車両
の積載重量が大きい(遮断状態で保持していたブレーキ
力が大きい)にも関わらず、保持ブレーキ力の作用を短
時間で解除すると、駆動力と保持ブレーキ力の和による
後退抑止力が十分に確保されないため、車両後退を生じ
る。他方、車両の傾斜角(道路勾配)や車両の積載重量
が小さい(遮断状態で保持していたブレーキ力が小さ
い)にも関わらず、保持ブレーキ力の作用を長時間維持
すると、無用なブレーキ力が何時までも作用してしま
う。そこで、遮断状態で保持していたブレーキ力の大き
さに応じて保持ブレーキ力の解除時間を増減して設定
し、遮断状態で保持していたブレーキ力が大きいほど解
除時間を長くする。なお、解除時間を実際にどの程度の
時間に設定するかは、遮断状態で保持していたブレーキ
力の大きさ、ブレーキ力保持装置RUの保持ブレーキ力
を解除するタイミング(すなわち、駆動力がどの程度の
大きさで解除を開始するか)や駆動力の増加速度などの
条件を関連づけて、車両によって適切な値に設定する。
ちなみに、前記条件は、車両によって異なる。また、遮
断状態で保持していたブレーキ力の大きさに関係なく保
持ブレーキ力を一定速度で低減する場合でも、前記条件
を関連ずけて、低減速度を車両によって適切な値に設定
する。
【0061】また、解除時間は、単に時間を長くする或
いは短くすることのみ重要でなく、低減のさせかたも重
要となる。とういのは、遮断状態で保持していたブレー
キ力が大きい場合に、保持ブレーキの解除開始直後に一
気に保持ブレーキ力を解除し、保持ブレーキ力が殆ど作
用していないブレーキ力からブレーキ力がゼロになるま
での時間を長く設定して解除時間を長くしても、駆動力
と保持ブレーキ力の和による後退抑止力が十分に確保さ
れないため、車両後退を生じる。すなわち、保持ブレー
キ力が十分に作用している時間を長くしないと、解除時
間を長くする意味がない。そこで、遮断状態で保持して
いたブレーキ力>遮断状態で保持していたブレーキ力
の関係にある二つの保持ブレーキ力を同時に低減させ
る場合、解除時間を遮断状態で保持していたブレーキ力
の方を長くするとともに、解除開始後の任意の時間に
おける保持ブレーキ力も常に遮断状態で保持していたブ
レーキ力の方が大きくなるように保持ブレーキ力を低
減させる。
【0062】電磁弁SVが連通状態から遮断状態に切り
換わる際には、調圧状態を経由することなく切り換わ
る。他方、電磁弁SVが遮断状態から連通状態に切り換
わる際には、調圧状態を経由して切り換わる場合と、調
圧状態を経由せずに切り換わる場合の二通りがある。な
お、電磁弁SVが遮断状態、連通状態又は調圧状態に切
り換わる条件については、後で詳細に説明する。
【0063】ブレーキ液圧を調整しながらブレーキ液圧
を低減することができる電磁弁SVとしては、比例電磁
弁などがある。比例電磁弁(図2の電磁弁SV)は、一
例として、弁に内蔵するバネSによる付勢力と印加され
るパイロット圧に受圧面積を掛け合わせた積との和(以
下「付勢力など」という)が、弁に内蔵する電磁コイル
(図示せず)により生じる電磁力と均衡するように弁の
開閉(連通/遮断)を繰り返す。比例電磁弁が常時開型
のものであれば、付勢力などが電磁力よりも大きければ
弁が開いて連通位置になる。なお、連通位置は、電磁力
>付勢力などになるまで持続される。他方、付勢力など
が電磁力よりも小さければ弁が閉じて遮断位置になる。
なお、遮断位置は、電磁力<付勢力などになるまで持続
される。ここで、パイロット圧は、ホイールシリンダW
Cのブレーキ液圧である。
【0064】比例電磁弁の電磁力は、電磁コイルに供給
される電流量により変化する。常時開型の比例電磁弁の
場合、遮断状態での最大の電流量から電流量を徐々に低
下させれば電磁力も徐々に弱まるため、付勢力などと電
磁力との釣り合いで、連通位置と遮断位置を切り換えな
がらブレーキ液圧を調整することができる。なお、遮断
状態での最大の電流量は、遮断状態で保持していたブレ
ーキ力(ブレーキ液圧)の大きさによって異なることと
なり、遮断状態で保持していたブレーキ力(ブレーキ液
圧)が大きいほど大きくなる。そして、ホイールシリン
ダWCに保持されているブレーキ液圧を低減させる際、
この電流量を調整することによって、ブレーキ液圧が低
減を開始してからブレーキ液圧の作用がなくなるまでの
解除時間を増減することができる。なお、常時開型の比
例電磁弁の場合、電磁コイルに供給される電流量がゼロ
の場合、連通状態が維持される。
【0065】なお、本実施の形態では電磁弁SVが比例
電磁弁であることを前提とするが、必ずしも比例電磁弁
に限定されるものでなく、前記説明した遮断状態、連通
状態及び調圧状態を作り出せるものであれば弁の種類を
問わない。
【0066】電磁弁SVには、通電時に連通位置になる
常時閉型と通電時に遮断位置になる常時開型があるが、
いずれの電磁弁を使用することもできる。ただし、フェ
イルアンドセーフの観点からは、常時開型の電磁弁が好
ましい。故障などにより通電が絶たれた場合に、常時閉
型の電磁弁では、ブレーキが効かなくなったり逆にブレ
ーキが効きっぱなしになったりするからである。なお、
本実施の形態は、電磁弁SVが常時開型のものであるこ
とを前提として説明する。
【0067】チェック弁CVは、必要に応じて設けられ
るが、電磁弁SVが遮断位置にありかつドライバがブレ
ーキペダルBPを踏み増しした場合に、マスタシリンダ
MCで発生したブレーキ液圧をホイールシリンダWCに
伝える役割を果す。チェック弁CVは、マスタシリンダ
MCで発生したブレーキ液圧がホイールシリンダWCの
ブレーキ液圧を上回る場合に有効に作動し、ドライバの
ブレーキペダルBPの踏み増しに対応して迅速にホイー
ルシリンダWCのブレーキ液圧を上昇させる。なお、マ
スタシリンダMCのブレーキ液圧がホイールシリンダW
Cのブレーキ液圧よりも上回った場合に一旦閉じた電磁
弁SVが連通状態になるような構成とすれば、電磁弁S
VのみでブレーキペダルBPの踏み増しに対応すること
ができるので、チェック弁CVを設ける必要はない。つ
まり、マスタシリンダMC側のブレーキ液圧値とホイー
ルシリンダWC側のブレーキ液圧値を検出し、前者のブ
レーキ液圧値が後者のブレーキ液圧を上回った場合に電
磁弁SVが連通状態になる構成とすることで、チェック
弁CVを不要とすることができる。
【0068】なお、本実施の形態においては、リリーフ
弁を特に設ける必要はない。ブレーキペダルBPの踏み
込み開放時に、電磁弁SVの電磁コイルに供給する電流
量を制御することにより、リリーフ弁の役割を兼ねさせ
ることができるからである。ちなみに、リリーフ弁は、
ホイールシリンダWC内の必要以上のブレーキ液圧をリ
リーフ圧まで一気に低減するための弁である。
【0069】ブレーキスイッチBSWは、ブレーキペダ
ルBPが踏み込まれているか否かを検出する。そして、
この検出値を制御部CUに送信する。
【0070】ブレーキ液圧センサPGは、ブレーキ液圧
通路FPに設けられ、マスタシリンダMCのブレーキ液
圧を検出する。そして、この検出値を制御部CUに送信
する。
【0071】制御部CUは、ブレーキスイッチBSWの
信号、車速などから電磁弁SVを連通状態、遮断状態又
は調圧状態の何れの状態にするかを判断し、電磁弁SV
に供給する電流量を算出する。そして、その電流量に応
じて、電磁弁SVの電磁コイルに電流を供給する。特
に、調圧状態のときには、電磁弁SVの電磁コイルで発
生する電磁力と前記した付勢力等の関係から電磁弁SV
に供給する電流量を算出する。
【0072】〔ブレーキ力保持装置の基本制御〕次に、
ブレーキ力保持装置RUの基本制御について説明する。 1) 先ず、ブレーキ力保持装置RUは、ブレーキペダ
ルBPの踏み込み開放後も引き続きブレーキ力を保持す
る。電磁弁SVが遮断状態に切り換わる条件は、車両停
止時にブレーキペダルBPが踏み込まれていることを条
件とする。 「車両停止時」という条件は、車速が速いときに電磁
弁SVを遮断状態に切り換えてしまうとドライバが望む
位置に車両を停止できなくなるおそれがあるが、車両が
停止している状態であれば電磁弁SVを遮断状態にして
もドライバの操作に与える支障はないからという理由に
よる。車両停止時には、車両が停止する直前の状態を含
む。 「ブレーキペダルBPが踏み込まれている」という条
件は、ブレーキペダルBPが踏み込まれていない状況で
は電磁弁SVを遮断状態にしてもブレーキ力が保持され
ることがないので、電磁弁SVを遮断状態にする意味が
ないからという理由による。 なお、前記の他に、ブレーキ力を保持する際に駆動
力伝達容量が「小さい状態」になっていることを電磁弁
SVが遮断状態に切り換わる条件に加えると、ドライバ
は強くブレーキペダルBPを踏み込むため、坂道におい
てしっかりと停止することができる。また、燃費の節減
を図ることもできる。この駆動力が小さい状態には、発
進クラッチの駆動力伝達容量がゼロの状態及びエンジン
1が停止している状態を含む。
【0073】2) ブレーキ力保持装置RUは、ブレー
キペダルBPの踏み込み開放後、駆動力が大きい状態に
まで増加する過程でブレーキ力の保持を解除する。 「ブレーキペダルBPの踏み込み開放」という条件
は、ブレーキペダルBPの踏み込み開放によりドライバ
に車両を発進させる意図のあることが推認できるからと
いう理由による。 「駆動力が大きい状態にまで増加する過程(クリープ
立ち上り)」という条件は、駆動力が大きい状態(強ク
リープ状態)になった時点でブレーキ力保持の解除を行
なうと、車両の発進の際に唐突感を受けることがあるか
らという理由による。殊に、下り坂においては、駆動力
に車両の自重による移動力が加わるため、唐突感を受け
やすい。
【0074】しかし、ブレーキペダルBPの踏み込み開
放後、駆動力が大きい状態にまで増加する過程でブレー
キ力の保持を解除することにより、車両の自重による移
動力がさらに加わる下り坂であっても、増加過程にある
駆動力により唐突感のない滑らかな発進が可能となる。
ここで、駆動力が大きい状態にまで増加する過程でブレ
ーキ力の保持を解除すると、上り坂では車両が後退して
しまうのではないかとの疑念を生じるが、車両の持つ慣
性力及び転がり抵抗(プラス増加過程にある駆動力)に
より車両の後退を生じることがなく坂道に抗することが
できる。したがって、ブレーキペダルBPの踏み込み開
放後ブレーキ力の保持が解除されるまでは保持されたブ
レーキ力により車両の後退が抑制され、ブレーキ力保持
の解除後駆動力が大きい状態になるまで(クリープの立
ち上がりまで)は車両の持つ慣性力などにより車両の後
退が抑制される。さらに、ブレーキ力保持装置RUは、
車両の傾斜角(道路勾配)や車両の積載重量を遮断状態
で保持していたブレーキ力から推定し、そのブレーキ力
の大きさから保持ブレーキ力の解除時間を設定している
ので、駆動力が大きい状態にまで増加する過程におい
て、保持ブレーキ力が有効に作用する。すなわち、車両
の傾斜角(道路勾配)や車両の積載重量が大きいために
車両の自重による移動力が大きくなり、駆動力などによ
る後退抑止力が不足する場合には、保持ブレーキ力が作
用する時間を長くすることによって車両の後退を防止す
る。このように、車両の後退が抑制されている間、駆動
力が大きい状態にまで増加し、結果として滑らかな車両
の発進が達成される。
【0075】なお、「駆動力が大きい状態にまで増加す
る過程」とは、駆動力が生じた後から駆動力が大きい状
態になる前のいずれかの時点であるが、駆動力がわずか
しか生じていない状態でブレーキ力保持の解除を行なう
と、下り坂では好都合であるが、上り坂では車両の後退
を生じるおそれがあるので好ましくない。一方、駆動力
が大きく生じている状態でブレーキ力保持の解除を行な
うと、上り坂では支障はないが、下り坂では唐突感が生
じて好ましくない。したがって、駆動力がどの段階にな
った時点でブレーキ力の保持を解除するのかは、車両の
慣性力及び転がり抵抗なども併せて、上り坂と下り坂に
おける得失を比較考量して定められる。この点は、「ク
リープの立ち上りの判断条件」として後に説明する。
【0076】具体的な車両の制御 次に、本実施の形態における車両においてどのような制
御がなされるのかを具体的に説明する(図3乃至図9参
照)。
【0077】《ブレーキ力が保持される場合》ブレーキ
力保持装置RUによりブレーキ力が保持される場合につ
いて説明する。ブレーキ力が保持されるのは、次の4つ
の条件がすべて満たされた場合である(図3(a)参
照)。 I )ブレーキスイッチBSWがONであること II)ポジションスイッチPSWが、ニュートラル(Nレ
ンジ)、パーキング(Pレンジ)、リバース(Rレン
ジ)のいずれでもないこと III )ブレーキ力保持装置RUに対しての作動許可があ
ること IV)車速が0km/hであること これらの条件をすべて満たすときに、電磁弁SVがとも
に遮断状態になりブレーキ力が保持される。なお、電磁
弁SVを遮断状態にする条件は、CVTECU6の制御
部CUで判断する。
【0078】前記したブレーキ力が保持される条件を個
別に説明する。 I )「ブレーキスイッチBSWがONであること」とい
う条件は、ブレーキスイッチBSWがOFFの場合には
ホイールシリンダWCに保持すべきブレーキ力が全くな
いか極わずかしかないからという理由による。
【0079】II)「ポジションスイッチPSWが、ニュ
ートラル(Nレンジ)、パーキング(Pレンジ)、リバ
ース(Rレンジ)のいずれでもないこと」という条件
は、Nレンジ、Pレンジでは、ブレーキ力保持装置R
Uの無駄な動作をなくするため、Rレンジでは、強ク
リープ状態が維持されるので車両の後退の抑制は強クリ
ープ状態における駆動力で行なわれるためという理由に
よる。したがって、Dレンジ(ドライブレンジ)、Lレ
ンジ(ローレンジ)で、ブレーキ力の保持がなされる。
【0080】III )「ブレーキ力保持装置RUに対して
の作動許可があること」という条件は、ブレーキ力を保
持する前に、ドライバに充分強くブレーキペダルBPを
踏み込ませ、坂道での後退を防止できるブレーキ力を確
保するためという理由による。すなわち、強クリープ状
態では傾斜5度の坂道でも車両が後退しないような駆動
力を有しているので、ドライバは、ブレーキペダルBP
を強く踏み込まないでも、坂道で車両を停止させること
ができる。したがって、ドライバがブレーキペダルBP
を弱くしか踏み込んでいない場合がある。しかし、弱ク
リープ状態又は中クリープ状態では、傾斜5度の坂道で
も車両が後退しないような駆動力を有していない。そこ
で、駆動力を弱めてドライバにブレーキペダルBPを強
く踏み込ませて、駆動力が低減或いは消滅しても坂道で
の後退を防止できるブレーキ力を確保する。なお、ブレ
ーキ力保持装置RUに対して作動許可の制御ロジック
は、後で説明する。
【0081】IV)「車速が0km/hであること」とい
う条件は、走行中に電磁弁SVを遮断状態にすると任意
の位置に車両を停止することができなくなるためという
理由による。一方、車速が0km/hであれば車両が停
止状態にあるため、ブレーキ力を保持しても運転操作上
の支障はない。なお、「車速が0km/h」には車両が
停止する直前の状態を含む。
【0082】〔ブレーキ力保持装置作動が許可される条
件〕ブレーキ力保持装置RUの作動許可条件について説
明する。図3(b)に示すように、ブレーキ力保持装置
RUは、弱クリープ状態、又は中クリープ状態のときに
作動が許可される。つまり、弱クリープ状態又は中クリ
ープ状態の場合には傾斜5度の坂道でも車両が後退しな
いような駆動力を有していない。そこで、ブレーキ力保
持前にドライバにブレーキペダルBPを強く踏み込ませ
て坂道後退を防止できるブレーキ力を確保し、そのブレ
ーキ力を保持して、車両の後退を抑制する。なお、弱ク
リープ又は中クリープの駆動力は、CVT3の発進クラ
ッチの油圧を制御するリニアソレノイド弁への油圧指令
値に基づき判定する。
【0083】〔弱クリープ指令が発せられる条件〕弱ク
リープ指令が発せられる条件について説明する。弱クリ
ープ指令(F_WCRP)が発せられる条件は、次の
I)又はII)の条件が満たされた場合である(図4
(a)参照)。 I )ポジションスイッチPSWがNレンジ又はPレンジ
にあること II)次の及びが満たされること 1)ブレーキ力保持装置RUが正常、かつ2)ブレーキ
スイッチBSWがON、かつ3)ポジションスイッチPS
Wが前進(D・L)レンジ、かつ4)車速が5km/h以
下 5)強クリープ状態移行後車速>5km/hかつ車速
>4km/h、又は6)弱クリープ状態、又は7)車速が0
km/hかつ中クリープ状態かつ中クリープ状態移行後
所定時間経過
【0084】前記I )又はII)のいずれかの条件を満た
すと弱クリープ指令が発せられ、弱クリープ状態にな
る。なお、前記の各条件は、駆動力制御装置DCUで判
断される。また、駆動力を弱クリープ状態にするのは、
前記したように坂道での停止時に車両の後退が生じない
ように、ドライバにブレーキペダルBPを強く踏み込ま
せるためという理由に加えて、燃費を向上させるためと
いう理由もある。
【0085】前記した弱クリープ指令が発せられる条件
を個別に説明する。 I )「ポジションスイッチPSWがNレンジ又はPレン
ジにあること」という条件は、非走行レンジ(N・Pレ
ンジ)から走行レンジ(D・L・Rレンジ)への切り換
えと同時にアクセルペダルが素早く踏み込まれた場合で
も、発進クラッチの駆動力伝達容量の増加が速やかにな
され、円滑な発進を行えるようにするためという理由に
よる。つまり、弱クリープ状態では、発進クラッチの油
圧室には圧油が既に充填されていて、押し付けピストン
の無効ストローク(遊び)が無い。したがって、圧油の
値を上昇させれば、駆動力伝達容量は速やかに増加す
る。なお、N・Pレンジにおいて弱クリープ状態にする
といっても、発進クラッチの駆動力伝達容量を予め弱ク
リープ状態の容量にしておくためであり、エンジン1か
らの駆動力が駆動輪8に伝達されるわけではない。この
点において、D・Lレンジにおける弱クリープ状態と異
なる。ちなみに、N・Pレンジでは、駆動力伝達経路上
に発進クラッチと直列配置されている前後進切り換え機
構によりエンジン1と駆動輪8との連結が完全に遮断さ
れている。つまり、N・Pレンジでは、前進用駆動力伝
達経路、後退用駆動力伝達経路とも設定されていない。
そのため、エンジン1から駆動力が駆動輪8に全く伝達
されない。
【0086】II)の条件は、の1)から4)までの条件が
弱クリープ状態になるための基本的な条件であり、さら
に弱クリープ状態になる前の状態がの5)から7)の何れ
かの状態であることを弱クリープ状態にする条件とす
る。
【0087】1) 「ブレーキ力保持装置RUが正常」と
いう条件は、ブレーキ力保持装置RUに異常があるとブ
レーキ力を保持できず、ブレーキ力が保持されないと弱
クリープ状態では坂道における車両後退を抑制すること
ができないからという理由による。例えば、電磁弁SV
が遮断位置にならないなどの異常がある場合に弱クリー
プ指令が発せられて弱クリープ状態になると、ブレーキ
ペダルBPの踏み込み開放後ホイールシリンダWCにブ
レーキ液圧が保持されない(ブレーキ力が保持されな
い)。そのため、坂道発進時に、ドライバがブレーキペ
ダルBPの踏み込みを開放すると、ブレーキ力が一気に
なくなり車両が坂道を後退してしまうからである。この
場合、強クリープ状態を保つことで、坂道での後退を防
止して坂道発進(登坂発進)を容易にする。
【0088】2) 「ブレーキスイッチBSWがON」と
いう条件は、ブレーキペダルBPが踏み込まれていない
ときには、ドライバは少なくとも駆動力の低下を望んで
いないからという理由による。
【0089】3) 「ポジションスイッチPSWが前進
(D・L)レンジ」という条件は、前進レンジでの燃費
を向上させるためという理由による。なお、Dレンジで
は、Dモード、Sモードの何れのモードでも、弱クリー
プ状態にする。ちなみに、Rレンジでは、強クリープ走
行による車庫入れなどを容易にするために、弱クリープ
状態に切り換えない。
【0090】4) 「車速が5km/h以下」という条件
は、5km/hを越える車速ではCVT3の発進クラッ
チを経由して駆動輪8からの逆駆動力をエンジン1やモ
ータ2に伝達して、エンジンブレーキを効かしたりモー
タ2による回生発電を行わせることがあるからという理
由による。
【0091】5) 「強クリープ状態移行後車速>5km
/hかつ車速>4km/h」という条件は、連続ブレー
キ踏み込みによる減速でのみ弱クリープ状態にするため
という理由による。強クリープ状態と弱クリープ状態と
は駆動力差が大きいため、ブレーキペダルBPを踏み込
んだときに強クリープ状態から弱クリープ状態に切り換
わると、車両停止前の場合には、ドライバの意図しない
強い減速感を生じる。また、車両停止時でかつ上り坂の
場合、瞬時の後退を生じることがある。したがって、強
クリープ状態から弱クリープ状態への切り換えが行われ
ないようにする必要がある。そこで、強クリープ状態に
なったら車速が5km/hを越えてスロットルがOFF
(アクセルペダルの踏み込みが開放)し、走行時強クリ
ープ状態に切り換わるまで、弱クリープ状態に切り換え
ない。また、強クリープ状態になった後、車速が5km
/hを越えて駆動力が低下しても(走行時強クリープ状
態)、例えば、上り坂にさしかかっているとブレーキペ
ダルBPが踏み込まれていなくても、車速が再び5km
/hに低下することがある。このとき、ブレーキスイッ
チBSWがOFFであるため、車速が5km/hに低下
した時点で強クリープ状態になる。このような場合で
も、その後に強クリープ状態から弱クリープ状態の切り
換えが実行されないようにするために、車速>4km/
hの条件を設け、車速が再び5km/hまで低下した時
点でブレーキペダルBPが踏み込まれていなければ、そ
の後、弱クリープ状態への切り換えを実行しないように
する。なお、車速が5km/hまで低下した時点でブレ
ーキペダルBPが踏み込まれていれば(ブレーキスイッ
チBSWがON)、走行時強クリープ状態から弱クリー
プ状態への切り換えを実行する。すなわち、車速が再び
5km/hまで低下した時点(車速=5km/h)で弱
クリープ状態になる機会を逃すと、車速が5km/h以
下である限り、強クリープ状態を維持する。
【0092】6) 「弱クリープ状態」という条件は、一
度弱クリープ状態になれば、5)と7)の条件を排除して弱
クリープ状態を維持するためという理由による。5)の条
件は、車両が5km/hになった時点で弱クリープ状態
にするが、車両が5km/hより小さくなると条件を満
たさなくなる。そのため、車速が5km/hより小さく
なると、5)の条件だけでは弱クリープ状態を維持できな
くなる。そこで、車速が5km/h未満になっても弱ク
リープ状態を維持するために、弱クリープ状態を条件と
する。
【0093】7) 「車速が0km/hかつ中クリープ状
態かつ中クリープ状態移行後所定時間経過」という条件
は、強クリープ状態で車両停止時における燃費悪化及び
車体振動の悪化を防止するためという理由による。車速
が再び5km/hまで低下した時点(車速=5km/
h)で弱クリープ状態に切り換わる機会を逃したり(5
の条件によって)、或いは一度弱クリープ状態になった
後にブレーキペダルBPの踏み込みが開放されて強クリ
ープ状態になった後に車速5km/h以下が維持される
と、強クリープ状態が維持される。さらに、ブレーキペ
ダルBPが踏み込まれたまま強クリープ状態で車両停止
が続くと、燃費が悪化し、車体振動も続く。そこで、車
両が完全に停止(車速=0km/h)していて、強クリ
ープ状態と弱クリープ状態の中間程度の駆動力である中
クリープ状態になり、さらに中クリープ状態になってか
ら所定時間(本実施の形態では、300msec)経過
していれば、弱クリープ状態に切り換える。このよう
に、駆動力を強クリープ状態から中クリープ状態、さら
に弱クリープ状態と段階的に下げている間にブレーキペ
ダルBPの踏み込みによるブレーキ力が高まるため、上
り坂での瞬時の後退量も可及的に小さく抑えることがで
きる。
【0094】〔走行時強クリープ指令が発せられる条
件〕走行時強クリープ指令が発せられる条件について説
明する。走行時強クリープ指令(F_MSCRP)が発
せられるのは、次のI)及びII) の条件が2つとも満たさ
れた場合である(図4(b)参照)。走行時強クリープ
指令の後、走行時強クリープ状態になる。 I )車速>5km/hであること II)スロットルがOFF(アクセルペダルの踏み込みが
開放)であること なお、この各条件は、駆動力制御装置DCUで判断され
る。また、駆動力を走行時強クリープ状態にするのは、
強クリープ状態から弱クリープ状態に切り換える際に生
じる車両停止前におけるドライバに与える強い減速感を
生じさせないためである。そのために、弱クリープ状態
になる前に、強クリープ状態の駆動力よりも小さい駆動
力にしておく。
【0095】前記の走行時強クリープ指令が発せられる
条件を個別に説明する。 I )「車速>5km/hであること」という条件は、強
クリープ状態から弱クリープ状態に移行する場合に、強
クリープ状態移行後、車速が一度5km/hを越えてか
ら車速が5km/hになった時点で弱クリープ状態にす
るからという理由による。また、車速が5km/h以下
での強クリープ状態と車速が5km/hを越える走行時
強クリープ状態とを判別するためである。
【0096】II)「スロットルがOFFであること(T
H OFF)」という条件は、ドライバは駆動力の増強
を望んでおらず、駆動力を低減しても支障がないからと
いう理由による。
【0097】〔中クリープ指令が発せられる条件〕中ク
リープ指令が発せられる条件について説明する。中クリ
ープ指令(F_MCRP)が発せられる条件は、次の
I)、II) 及びIII)の条件が3つとも満たされた場合であ
る(図4(c)参照)。 I )ブレーキスイッチBSWがONであること II)ポジションスイッチPSWが前進(D・L)レンジ
であること III )車両完全停止(車速=0km/h)であること なお、この各条件は、駆動力制御装置DCUで判断され
る。また、駆動力を中クリープ状態にするのは、車速が
再び5km/hまで低下した時点(車速=5km/h)
で弱クリープ状態に切り換わる機会を逃したり、或いは
一度弱クリープ状態になった後にブレーキペダルBPの
踏み込みが開放されて強クリープ状態になった後に車速
5km/h以下が維持されると、強クリープ状態が維持
される。さらに、強クリープ状態で車両停止が続くと、
燃費が悪化し、車体振動も続く。そこで、車両停止時に
強クリープ状態から弱クリープ状態に切り換えたのでは
前記したように瞬時の後退などを生じるため、強クリー
プ状態と弱クリープ状態の中間程度の駆動力である中ク
リープ状態に切り換える。
【0098】前記した中クリープ指令が発せられる条件
を個別に説明する。 I )「ブレーキスイッチBSWがON」という条件は、
ブレーキペダルBPが踏み込まれていないときには、ド
ライバは少なくとも駆動力の低下を望んでいないからと
いう理由による。
【0099】II)「ポジションスイッチPSWが前進
(D・L)レンジであること」という条件は、Dレンジ
又はLレンジにおいて弱クリープ状態にするので、この
レンジのときに中クリープ状態にする必要が生じるため
という理由による。なお、N・Pレンジでは変速機の切
り換えと同時に弱クリープ状態にするので中クリープ状
態にする必要性がない。また、Rレンジでは強クリープ
状態を維持するため中クリープ状態にする必要性がな
い。
【0100】III )「車両完全停止(すなわち、車速=
0km/h)であること」という条件は、車両停止時の
強クリープ状態における燃費悪化や車体振動を抑制する
ために弱クリープ状態にするので、その過渡状態として
の中クリープ状態が必要になるからという理由による。
【0101】なお、弱クリープ状態、走行時強クリープ
状態、中クリープ状態であるか否かは、CVT3の発進
クラッチに対する油圧指令値により判定する。
【0102】〔エンジンの自動停止条件〕燃費をさらに
向上させるため、車両の停止時にエンジン1を自動停止
するが、この条件について説明する。図5に示す条件が
全て満たされた場合に、エンジン停止指令(F_ENG
OFF)が発せられ、エンジン1が自動的に停止する。
このエンジン1の自動停止は、原動機停止装置が行う。
したがって、以下のエンジン自動停止条件は、原動機停
止装置で判断される。なお、エンジン1の自動停止条件
はFI/MGECU4とCVTECU6で判断され、F
I/MGECU4で判断されてI )からVIII)の条件が
全て満たされるとF_MGSTBが1となり、CVTE
CU6で判断されてIX)からXV)の条件が全て満たされ
るとF_CVTOKが1となる。
【0103】エンジンの自動停止条件を個別に説明す
る。 I )「ブレーキスイッチBSWがONであること」とい
う条件は、ドライバに注意を促すためという理由によ
る。ブレーキスイッチBSWがONの場合、ドライバ
は、ブレーキペダルBPに足を置いた状態にある。した
がって、仮に、エンジン1の自動停止により駆動力がな
くなって車両が坂道を後退し始めても、ドライバは、ブ
レーキペダルBPの踏み増しを容易に行い得るからであ
る。
【0104】II)「エンジン1の水温が所定値以上であ
ること」という条件は、エンジン1の自動停止・自動始
動は、エンジン1が安定している状態で実施するのが好
ましいからという理由による。水温が低いと、寒冷地で
は、エンジン1が再始動しない場合があるからである。
【0105】III )「エンジン1始動後、一旦車速が5
km/h以上であること」という条件は、クリープ走行
での車庫出し・車庫入れを容易にするためという理由に
よる。車両を車庫から出し入れする際の切り返し操作な
どで、停止するたびにエンジン1が自動停止したので
は、煩わしいからである。
【0106】IV)「ポジションスイッチPSW及びモー
ドスイッチMSWがR・D(Sモード)・Lレンジ以外
のレンジであること(すなわち、N・D(Dモード)・
Pレンジ)」という条件は、以下の理由による。ポジシ
ョンスイッチPSWがRレンジの場合、車庫入れなどの
際に頻繁にエンジン1が自動停止したのでは、煩わしい
からである。ポジションスイッチPSWがDレンジかつ
モードスイッチMSWがSモードの場合又はポジション
スイッチPSWがLレンジの場合、ドライバは、素早い
車両の発進などが行えることを期待しているからであ
る。
【0107】V )「バッテリ容量が所定値以上であるこ
と」という条件は、エンジン1停止後、モータ2でエン
ジン1を再始動することができないという事態を防止す
るためという理由による。
【0108】VI)「電気負荷所定値以下であること」と
いう条件は、負荷への電気の供給を確保するためという
理由による。
【0109】VII )「マスタパワーMPの定圧室の負圧
が所定値以上であること」という条件は、マスタパワー
MPの定圧室の負圧が小さいと、ブレーキペダルBPを
踏み込んだ場合の踏み込み力の増幅が小さくなりブレー
キの効きが低下してしまうから(アシストされない)と
いう理由による。すなわち、定圧室の負圧が小さい状態
でエンジン1を停止すると、定圧室の負圧はエンジン1
の吸気管より導入しているため、定圧室の負圧はさらに
小さくなる。そのため、ブレーキペダルBPを踏み込ん
だ場合の踏み込み力の増幅が小さくなり、ブレーキの効
きが低下する。
【0110】VIII)「アクセルペダルが踏まれていない
こと(TH OFF)」という条件は、ドライバは駆動
力の増強を望んでおらず、エンジン1を停止しても支障
がないからという理由による。
【0111】IX)「FI/MGECU4でのエンジン1
の自動停止条件が全て満たされて準備完了しているこ
と」という条件は、FI/MGECU4で判断すべきエ
ンジン1の自動停止条件が全て満たされていないと、エ
ンジン1を自動停止することが適当でないためという理
由による。
【0112】X )「車速0km/hであること」という
条件は、車両が停止していれば駆動力をなくしても支障
がないからという理由による。
【0113】XI)「CVT3のレシオがローであるこ
と」という条件は、CVT3のレシオ(プーリ比)がロ
ーでない場合は円滑な発進ができない場合があるためと
いう理由による。
【0114】XII )「CVT3の油温が所定値以上であ
ること」という条件は、CVT3の油温が低い場合は、
発進クラッチの実際の油圧の立ち上りに後れを生じ、エ
ンジン1の始動から強クリープ状態になるまでに時間が
かかり、坂道で車両が後退する場合があるためという理
由による。
【0115】XIII)「アクセルペダルが踏み込まれてい
ないこと(TH OFF)」という条件は、ドライバは
駆動力の増強を望んでおらず、エンジン1を停止しても
支障がないからという理由による。
【0116】XIV )「ブレーキ力保持装置RUが正常で
あること」という条件は、ブレーキ力保持装置RUに異
常がある場合はブレーキ力を保持することができないこ
とがあるので、強クリープ状態を維持して坂道で車両が
後退しないようにするためという理由による。
【0117】XV)「〔1)ブレーキ力保持(電磁弁SVが
遮断状態)かつブレーキスイッチBSWがON〕又は
〔2)ポジションスイッチPSWがN・Pレンジ〕である
こと」という条件は、以下の理由による。 1) ブレーキ力が保持されている場合、エンジン1が自
動停止して駆動力がなくなっても、上り坂で後退するこ
とがない。さらに、ブレーキスイッチBSWがONの場
合、ドライバはブレーキペダルBPに足を置いた状態に
ある。したがって、仮に、エンジン1の自動停止により
駆動力がなくなって車両が坂道を後退し始めても、ドラ
イバはブレーキペダルBPの踏み増しを容易に行い得る
からである。 2) ポジションスイッチPSWがPレンジ又はNレンジ
で車両が停止している場合、ドライバは、車両を完全に
停止させる意思があるので、エンジン1を停止しても支
障はない。この条件では、ブレーキ力保持装置RUが作
動していなくても、エンジン1を自動停止する。
【0118】《ブレーキ力の保持が解除される場合》次
に、ブレーキ力保持装置RUによりブレーキ力の保持が
解除される場合について説明する。なお、ブレーキ力保
持装置RUは、ブレーキ力の保持を解除するときには、
遮断状態から調圧状態に切り換える場合(図6(a)の
条件の場合)と遮断状態から直接連通状態に切り換える
場合(図6(b)の条件の場合)がある。
【0119】図6(a)に示すように、遮断状態から調
圧状態に切り換えてブレーキ力の保持を解除するのは、
次の条件が満たされた場合である。 I )クリープ立ち上がりかつブレーキスイッチBSWが
OFFであること この条件が満たされたときに、電磁弁SVが調圧状態に
なりブレーキ力の保持が解除される。なお、電磁弁SV
を調圧状態に切り換える条件は、CVTECU6の制御
部CUで判断する。
【0120】前記電磁弁SVを調圧状態に切り換えてブ
レーキ力の保持を解除する条件を説明する。 I )「クリープ立ち上がりかつブレーキスイッチBSW
がOFFであること」という条件は、駆動力が強クリー
プ状態に増加する過程であり、強クリープ状態には至っ
てはいないが、上り坂においてはブレーキ力保持装置R
Uによる車両の傾斜角や車両の積載重量に応じた保持ブ
レーキ力の適切な解除、車両の持つ慣性力及び転がり抵
抗(プラス増加過程にある駆動力)を考慮すれば後退を
抑制でき、かつ下り坂においては唐突感のない車両の発
進を実現することができるからという理由による。ちな
みに、ブレーキ力保持装置RUは、保持ブレーキ力の解
除時間を遮断状態で保持していたブレーキ力の大きさに
応じて設定しているので、低減中にも保持ブレーキ力を
有効に作用させることができる。
【0121】図6(b)に示すように、遮断状態から直
接連通状態に切り換えてブレーキ力の保持が解除するの
は、次のいずれかの条件が満たされた場合である。 I )ポジションスイッチPSWがN・Pレンジかつブレ
ーキスイッチBSWがOFFであること II)車速が20km/hを越えたこと これらの条件のいずれかが満たされたときに、電磁弁S
Vが連通状態になりブレーキ力の保持が解除される。な
お、電磁弁SVを連通状態に切り換える条件は、CVT
ECU6の制御部CUで判断する。
【0122】前記電磁弁SVを直接連通状態に切り換え
てブレーキ力の保持を解除する条件を個別に説明する。 I )「ポジションスイッチPSWがN・Pレンジかつブ
レーキスイッチBSWがOFFであること」という条件
は、ブレーキ力保持装置RUの無駄な動作を省くためと
いう理由による。
【0123】II)「車速が20km/hを越えたこと」
という条件は、フェイルアンドセーフアクションとし
て、無駄なブレーキの引きずりをなくするためという理
由による。
【0124】〔クリープ立ち上がりの判断条件〕クリー
プ立ち上がりの判断条件について説明する。クリープが
立ち上がっていると判断されるのは、次のI)又はII) の
いずれかが満たされた場合である(図6(c)参照)。 I )CVT3の発進クラッチの油圧指令値が所定値以上
であること II)エンジン1が自動停止後に再始動し所定時間経過し
たこと なお、この2つの条件は、駆動力制御装置DCUで判断
される。クリープ立ち上がりは、ブレーキ力保持装置R
Uの作動が解除されてブレーキ力がなくなっても、車両
の持つ慣性力及び転がり抵抗(プラス増加過程にある駆
動力)を考慮すれば、上り坂での後退を抑制できる程度
に駆動力が増加している状態である。また、このクリー
プ立ち上りは、車両が多少の後退を生じても増加する駆
動力により後退を最小限に抑制できる程度に駆動力が増
加している状態を含む。しかし、車両の傾斜角や車両の
積載重量が大きい場合、車両の自重による移動力が大き
くるので、ブレーキ力保持装置RUによる車両の傾斜角
や車両の積載重量に対応した適切な保持ブレーキ力の解
除で車両の後退を防止する。
【0125】前記したクリープ立ち上りの判断条件につ
いて個別に説明する。 I )「CVT3の発進クラッチの油圧指令値が所定値以
上であること」という条件は、CVT3の発進クラッチ
の油圧指令値が所定値以上であれば、ブレーキ力の保持
を解除しても前記理由により上り坂において車両の後退
を抑制できる程度に駆動力が増加していると判断される
ためという理由による。また、下り坂においても唐突感
のない滑らかな発進を行うことができるためという理由
による。なお、発進クラッチの油圧司令値が所定値以上
とは、弱クリープ状態から強クリープ状態に移行する過
程で、発進クラッチの係合力の油圧を制御するリニアソ
レノイド弁への油圧指令値が弱クリープ状態と強クリー
プ状態との略中間の値まで増加した時点である。
【0126】II)「エンジン1が自動停止後に再始動し
所定時間経過したこと」という条件は、エンジン1が自
動停止後に再始動し所定時間経過すれば、ブレーキ力の
保持を解除しても前記理由により上り坂において車両の
後退を抑制できる程度に駆動力が増加していると判断さ
れるためという理由による。また、下り坂において唐突
感のない滑らかな発進を行うことができるためという理
由による。なお、所定時間は、エンジン1が実際に再始
動し、CVT3の発進クラッチへの圧油の供給が開始さ
れた時点からカウントされ始める。というのは、エンジ
ン1が停止状態ではCVT3の発進クラッチの油圧室内
の作動油が抜けているため、エンジン1が始動して圧油
の供給が開始した際に、押し付けピストンの無効ストロ
ーク(遊び)が有る。そのため、発進クラッチのリニア
ソレノイド弁への油圧指令値と実際の油圧値(駆動力伝
達容量)とが一致しない。その結果、エンジン1の停止
状態から駆動力が増加していく場合、CVT3の発進ク
ラッチの油圧指令値によって、クリープ立ち上がりを判
断できない。そこで、エンジン1の停止状態から強クリ
ープ状態に移行する場合には、発進クラッチへの圧油の
供給が開始された時点からタイマによりカウントし、ク
リープ立ち上がりを判断する。
【0127】〔強クリープ指令が発せられる条件〕強ク
リープ指令が発せられる条件について説明する。強クリ
ープ指令(F_SCRP)は図7(a)又は図7(b)
に示す条件が満たされた時に発せられ、強クリープ状態
になる。強クリープ指令が発せられる第1条件は、次の
I)又はII)のいずれかが満たされる場合である(図7
(a)参照)。 I )〔1)ブレーキスイッチがOFF又はスロットルがO
N、かつポジションスイッチPSWが前進(D・L)レ
ンジ〕又は〔2)ポジションスイッチPSWが後進(R)
レンジ〕、かつ3)車速が5km/h以下であること II)車両後退が検出されたこと
【0128】或いは、強クリープ指令が発せられる第2
条件は、次のIII)又はIV) のいずれかが満たされた場合
である(図7(b)参照)。 III )〔1)ブレーキスイッチがOFF又はスロットルが
ON、かつポジションスイッチPSWが前進(D・L)
レンジ〕又は〔2)ポジションスイッチPSWが後進
(R)レンジ〕、かつ3)車速が5km/h以下であるこ
と IV)車速パルス入力かつ車速パルスが入力される前に車
両が完全停止であること
【0129】ちなみに、強クリープ指令が発せられる第
1条件と第2条件は、条件I )と条件III )が同一条件
であり、条件II)と条件IV)が異なる。したがって、I)
の条件と重複する条件III )の説明は省略する。なお、
この各条件は、駆動力制御装置DCUで判断される。
【0130】前記の強クリープ指令が発せられる条件を
個別に説明する。最初にI )の1)から3)の各条件を説明
する(なお、この内容はIII )と同じ内容なのでIII )
の説明は省略する)。 1) 「ブレーキスイッチがOFF又はスロットルがON
で、かつポジションスイッチPSWが前進(D・L)レ
ンジ」という条件は、ドライバが発進動作に移ったので
強クリープ状態に移行するためという理由による。すな
わち、ドライバは、ポジションスイッチPSWをDレン
ジ又はLレンジとし、さらに、ブレーキペダルBPの踏
み込みを開放したか或いはアクセルペダルを踏み込んで
いるので、発進する意思がある。そこで、弱クリープ状
態から強クリープ状態に切り換える。なお、アクセルペ
ダルが踏み込まれている場合、駆動力伝達容量が大きい
状態に達した以降の駆動力伝達容量は、原動機で発生し
た駆動力のすべてを伝達できる容量(大きい状態以上の
状態)に増加される。ただし、フラグは、次に別のフラ
グが立つまでは、強クリープのフラグ(F_SCRPO
N)が立ち続ける。
【0131】2) 「ポジションスイッチPSWが後進
(R)レンジ」という条件は、Rレンジでのクリープ走
行を円滑に行うためという理由による。すなわち、ドラ
イバは、ポジションスイッチPSWをRレンジに切り換
えた場合、強クリープ状態の駆動力による走行で車庫入
れなどを望んでいる場合がある。そこで、弱クリープ状
態から強クリープ状態に切り換える。
【0132】3) 「車速が5km/h以下」という条件
は、車速が5km/hを越える場合の走行時強クリープ
状態と車速5km/h以下の場合の強クリープ状態を判
断するためという理由による。
【0133】II)「車両後退検出」という条件は、急勾
配の上り坂において車両の自重による移動力がブレーキ
力を上回って車両が後退を始めているため、強クリープ
状態の駆動力により後退を抑制するためという理由によ
る。上り坂の場合、弱クリープ状態の駆動力(なお、エ
ンジン1が停止の場合は駆動力がゼロ)とブレーキ力の
和が、車両の自重による移動力に対する制動力になる。
しかし、坂道が急になるほど、車両の自重による移動力
が増加する。そのため、急勾配の上り坂では、車両の自
重による移動力が弱クリープ状態の駆動力とブレーキ力
の和を上回り、車両が後退する。そこで、車両の後退を
検出したら、無条件に弱クリープ状態から強クリープ状
態にして、上り坂に抗する駆動力を発生させる。
【0134】ここで、図9を参照して、車両の後退を検
出する手段について説明する。例えば、CVT3の発進
クラッチの下流側にヘリカルギアHG(A),HG
(B)を設ける。なお、ヘリカルギアHG(A),HG
(B)を設ける位置は、タイヤと一緒に回転する位置な
らよい。図9(a)に示すように、ヘリカルギアHG
(A),HG(B)は、歯が螺旋状になっており、周方
向に斜めに刻まれている。そのため、歯が方向又は
方向の回転方向によって、歯の位相がずれる。そこで、
ヘリカルギアHG(A),HG(B)の同一軸AX上に
電磁ピックアップP(A),P(B)を各々設け、電磁
ピックアップP(A),P(B)によって歯の先端を検
出する。そして、電磁ピックアップP(A),P(B)
で検出された2つのパルスに基づいて、パルス位相差の
位置から回転方向を判断する。ちなみに、方向に回転
する場合、図9(b)に示すように、電磁ピックアップ
P(B)で検出されたパルスが電磁ピックアップP
(A)で検出されたパルスより後方にずれる。すなわ
ち、ヘリカルギアHG(A)の歯の先端が、ヘリカルギ
アHG(B)の歯の先端より先に検出される。他方、
方向に回転する場合、図9(c)に示すように、電磁ピ
ックアップP(B)された検出したパルスが電磁ピック
アップP(A)で検出されたパルスより前方にずれる。
すなわち、ヘリカルギアHG(A)の歯の先端が、ヘリ
カルギアHG(B)の歯の先端より後に検出される。こ
のように、パルス位相差の位置によって、回転方向を検
出することができる。そこで、例えば、方向の回転が
車両後退の場合には、電磁ピックアップP(B)で検出
したパルスが電磁ピックアップP(A)で検出したパル
スより後方にずれれば、車両後退と判断する。なお、ヘ
リカルギアHG(A),HG(B)を使用したが、使用
するギアとしては、2つのギアの歯に位相差があるギア
ならよい。
【0135】IV)「車速パルス入力かつ車速パルスが入
力される前に車両が完全停止であること」という条件
は、車両が完全停止状態からすこしでも動いた場合には
車両の後退(後退するおそれがある)と判断して強クリ
ープ状態にして坂道に抗するためという理由による。す
なわち、車両が前進したか、後退したかは判断せず、動
いた時点を判断する。坂道の場合、弱クリープの駆動力
(なお、エンジン1が停止の場合は駆動力はゼロ)とブ
レーキ力の和が、車両の自重による移動力に対する制動
力になる。しかし、坂道が急になるほど自重による移動
力が増加する。そのため、急な坂道では、車両の自重に
よる移動力が弱クリープの駆動力とブレーキ力の和を上
回り、車両が前進(下り坂)或いは後退(上り坂)する
場合がある。そこで、車両の前進或いは後退(すなわ
ち、車両の移動)を検出し、弱クリープ状態から強クリ
ープ状態にして、坂道に抗する駆動力を発生させる。ま
ず、車速パルスが入力される前に車速パルスが0パルス
であることを検出し、車両が完全に停止していることを
検出する。その後、車速パルスが1パルスでも入力され
ると、車両が動いたと判断する。なお、車両がドライバ
の意図する方向に進行する場合であっても駆動力を強ク
リープ状態にすることは、ドライバの意に反するもので
はないので支障はない。
【0136】〔エンジンの自動始動条件〕エンジン1の
自動停止後、エンジン1を自動始動する条件について説
明する。図8(a)又は図8(b)に示す条件が満たさ
れた場合に、エンジン始動指令(F_ENGON)が発
せられ、エンジン1が自動的に始動する。このエンジン
1の自動始動は、原動機停止装置が行う。したがって、
以下のエンジン自動始動条件は、原動機停止装置で判断
される。なお、エンジン1の自動始動条件はFI/MG
ECU4とCVTECU6で判断され、FI/MGEC
U4で判断されてI)からVI)の何れかの条件が満たさ
れるとF_MGSTBが0となり、CVTECU6で判
断されてVII )からXI)〔又は、VII )からX )とXII
)〕の何れかの条件が満たされるとF_CVTOKが
0となる。ちなみに、エンジン1の自動始動条件が発せ
られる第1条件(図8(a)に示す条件)と第2条件
(図8(b)に示す条件)は、CVTECU6で判断す
るXI)車両後退検出とXII )車速パルス入力かつ車速パ
ルスが入力される前に車両が完全停止の条件のみが異な
る。したがって、エンジン1の自動始動条件が発せられ
る第2条件については、その条件のみ説明する。
【0137】I )「ブレーキペダルBPの踏み込みが開
放されたこと(すなわち、ブレーキスイッチBSWがO
FF)」という条件は、ブレーキペダルの踏み込みが開
放されることによりドライバの発進操作が開始されたと
判断されるからという理由による。つまり、DレンジD
モードの場合にドライバがブレーキペダルBPの踏み込
みを開放するのは、発進操作を開始したときであるた
め、エンジン1を自動始動する。また、Pレンジ、Nレ
ンジの場合にドライバがブレーキペダルBPの踏み込み
を開放するのは、車両から降りるためなどであるが、こ
の際エンジン1の自動停止によりドライバがイグニッシ
ョンスイッチを切る必要がないものと思い込んで車両を
離れてしまうことがないようにエンジン1を自動始動す
る。
【0138】II)「ポジションスイッチPSW及びモー
ドスイッチMSWがR・D(Sモード)・Lレンジに切
り換えられたこと」という条件は、エンジン1の自動停
止後、ポジションスイッチPSW及びモードスイッチM
SWがR・D(Sモード)・Lレンジのいずれかに切り
換えられるということは、ドライバに即座に発進しよう
とする意図があるものと判断されるからという理由によ
る。したがって、R・D(Sモード)・Lレンジ以外の
レンジでエンジン1が自動停止した後、R・D(Sモー
ド)・Lレンジに切り換えられると、エンジン1を自動
始動する。
【0139】III )「バッテリ容量が所定値以下である
こと」という条件は、バッテリ容量が低減するとエンジ
ン1を自動始動することができなくなるのでこれを防止
するためという理由による。すなわち、バッテリ容量が
所定値以上でなければエンジン1の自動停止はなされな
いが、一旦、エンジン1が自動停止された後でも、バッ
テリ容量が低減する場合がある。この場合は、バッテリ
に充電することを目的としてエンジン1が自動始動され
る。なお、所定値は、これ以上バッテリ容量が低減する
とエンジン1を自動始動することができなくなるという
限界のバッテリ容量よりも高い値に設定される。
【0140】IV)「電気負荷が所定値以上であること」
という条件は、例えば、照明などの電気負荷が稼動して
いると、バッテリ容量が急速に低減してしまい、エンジ
ン1を再始動することができなくなってしまうためとい
う理由による。したがって、バッテリ容量にかかわらず
電気負荷が所定値以上である場合は、エンジン1を自動
始動する。
【0141】V )「マスタパワーMPの負圧が所定値以
下であること」という条件は、マスタパワーMPの負圧
が小さくなるとブレーキの制動力が低下するためという
理由による。したがって、マスタパワーMPの負圧が所
定値以下になった場合は、エンジン1を自動始動する。
【0142】VI)「アクセルペダルが踏み込まれている
こと(TH ON)」という条件は、ドライバはエンジ
ン1による駆動力を期待しているからという理由によ
る。したがって、アクセルペダルが踏み込まれるとエン
ジン1を自動始動する。
【0143】VII )「FI/MGECU4でのエンジン
1の自動始動条件を満たしていること」という条件は、
FI/MGECU4で判断するエンジン1の自動始動条
件をCVTECU6でも判断するためという理由によ
る。
【0144】VIII)「アクセルペダルの踏み込まれてい
ること(TH ON)」という条件は、ドライバはエン
ジン1による駆動力を期待しているからという理由によ
る。したがって、アクセルペダルが踏み込まれるとエン
ジン1を自動始動する。
【0145】IX)「ブレーキペダルBPの踏み込みが開
放されていること(すなわち、ブレーキスイッチBSW
がOFF)」という条件は、ブレーキペダルBPの踏み
込みが開放されることによりドライバの発進操作が開始
されたと判断されるからという理由による。つまり、D
レンジDモードの場合にドライバがブレーキペダルBP
の踏み込みを開放するのは、発進操作を開始したときで
あるため、エンジン1を自動始動する。
【0146】X )「ブレーキ力保持装置RUが故障して
いること」という条件は、ブレーキ力保持装置RUが故
障によってブレーキ力が保持されないと、エンジン1が
停止した時には坂道で後退(前進)してしまうからとい
う理由による。したがって、電磁弁SVなどが故障して
いる場合は、エンジン1を自動始動して強クリープ状態
を作り出す。エンジン1自動停止後、ブレーキ力保持装
置RUに故障が検出された場合は、発進時、ブレーキペ
ダルBPの踏み込みが開放された際に、ブレーキ力を保
持することができない場合があるので、強クリープ状態
にすべく、故障が検出された時点でエンジン1を自動始
動する。すなわち、強クリープ状態で車両が後退するの
を防止し、坂道発進を容易にする。なお、ブレーキ力保
持装置RUの故障検出は、故障検出装置DUで行う。
【0147】XI)「車両後退検出」という条件は、急勾
配の上り坂において車両の自重による移動力がブレーキ
力を上回って車両が後退を始めているため、エンジン1
の駆動力により後退を抑制するためという理由による。
上り坂の場合、エンジン1が停止時、ブレーキ力が、車
両の自重による移動力に対する制動力になる。しかし、
坂道が急になるほど自重による移動力が増加する。その
ため、急勾配の上り坂では、車両の自重による移動力が
ブレーキ力を上回り、車両が後退する場合がある。そこ
で、車両の後退を検出し、無条件にエンジン1の停止状
態から強クリープ状態にして、上り坂に抗する駆動力を
発生させる。なお、車両の後退を検出する方法は、強ク
リープ指令が発せられる条件で説明したので省略する。
【0148】XII )「車速パルス入力かつ車速パルスが
入力される前に車両が完全停止であること」という条件
は、車両が完全停止状態からすこしでも動いた場合には
車両の後退(後退するおそれがある)と判断してエンジ
ン1を自動始動して駆動力により坂道に抗するためとい
う理由による。すなわち、車両が前進したか、後退した
かは判断せず、動いた時点を判断する。坂道の場合、エ
ンジン1が停止の場合はブレーキ力のみが車両の自重に
よる移動力に対する制動力になる。しかし、坂道が急に
なるほど自重による移動力が増加する。そのため、急な
坂道では、車両の自重による移動力がブレーキ力を上回
り、車両が前進(下り坂)或いは後退(上り坂)する場
合がある。そこで、車両の前進或いは後退(すなわち、
車両の移動)を検出し、エンジン1を自動始動して(強
クリープ状態を作り出し)、坂道に抗する。まず、車速
パルスが入力される前に車速パルスが0パルスであるこ
とを検出し、車両が完全に停止していることを検出す
る。その後、車速パルスが1パルスでも入力されると、
車両が動いたと判断する。
【0149】《制御タイムチャート》次に、本実施の形
態に係るブレーキ力保持装置RUを搭載する車両が走行
時にどのような制御を行うかを図12乃至図15の制御
タイムチャートを参照して説明する。図12及び図13
は、車両停止時にエンジン1の自動停止を行なう場合の
制御タイムチャートである。図14及び図15は、車両
停止時にエンジン1の自動停止を行なわない場合の制御
タイムチャートである。また、図12及び図14は、ブ
レーキ力保持装置RUの制御において遮断状態で保持し
ていたブレーキ力の大きさに応じて解除時間を増減する
制御であり、図10のフローチャートに沿って説明す
る。図13及び図15は、ブレーキ力保持装置RUの制
御において保持ブレーキ力を一定速度で低減する制御で
あり、図11のフローチャートに沿って説明する。
【0150】〔エンジンが自動停止する場合の制御タイ
ムチャート1〕図12を参照して前記システムを備えた
車両が減速→停止→発進したときの制御について説明す
ると共に、特に、ブレーキ力保持装置RUの制御につい
ては図10のフローチャートに沿って説明する。この制
御では、駆動力制御装置DCUにより駆動力が走行時強
クリープ状態から弱クリープ状態になり、さらに原動機
停止装置によりエンジン1が停止する。また、ブレーキ
力保持装置RUによりブレーキ力を保持し、その保持し
ていたブレーキ力の大きさに応じて解除時間を増減して
保持ブレーキ力を解除する。ちなみに、車両は、上り坂
で停止するものとする。車両のポジションスイッチPS
W及びモードスイッチMSWはDモードDレンジで変化
させないこととする。なお、図12の制御タイムチャー
トは、車両の駆動力とブレーキ力の増減を時系列で示し
た図であり、図中の太い線が駆動力を示し、細い線がブ
レーキ力を示す。ちなみに、ブレーキ力は、道路勾配が
急勾配、緩勾配及び急勾配と緩勾配の中間程度の中勾配
の3勾配の上り坂で車両が停止した場合の3つのブレー
キ力を示す。
【0151】まず、車両走行時(ちなみに、車速>5k
m/h)、ドライバがアクセルペダルの踏み込みを開放
すると(すなわち、スロットルがOFFすると)、駆動
力制御装置DCUは、走行時強クリープ指令(F_MS
CRP)を発し、走行時強クリープ状態(F_MSCR
PON)にする。そのため、強クリープ状態(F_SC
RPON)より駆動力が減少する。
【0152】さらに、ドライバがアクセルペダルの踏み
込みを開放すると共にブレーキペダルBPを踏み込むと
(すなわち、ブレーキスイッチBSWがONすると(図
10のS10))、ブレーキ力が増して行く。そして、
継続してブレーキペダルBPが踏み込まれて車速が5k
m/hになると、駆動力制御装置DCUは、弱クリープ
指令(F_WCRP)を発し、弱クリープ状態(F_W
CRPON)にする。このとき、走行時強クリープ状態
から弱クリープ状態になるため、ドライバは強い減速感
を受けることがない。
【0153】そして、車速が0km/hになると(図1
0のS11)、ブレーキ力保持装置RUは、電磁弁SV
を遮断位置にしてブレーキ力を保持する(電磁弁SVが
遮断状態(図10のS12))。このとき、前記したよ
うに上り坂の道路勾配は3勾配あり、ドライバは、各道
路勾配に対して後退しない程度のブレーキ力を発生させ
るために、急勾配ではブレーキペダルBPを強く踏み込
み、中勾配ではブレーキペダルBPを中程度に踏み込
み、緩勾配ではブレーキペダルBPを弱く踏み込んでい
る。したがって、保持するブレーキ力は、ドライバの踏
み込み力に応じて、急勾配に対しては大きなブレーキ力
(ブレーキ力1)を保持し、中勾配に対しては中程度の
ブレーキ力(ブレーキ力2)を保持し、緩勾配に対して
は小さなブレーキ力(ブレーキ力3)を保持する。ま
た、ブレーキ力保持装置RUは、ブレーキ液圧センサP
Gでブレーキ液圧を検出すると共に、制御部CUで検出
したブレーキ液圧に応じて保持ブレーキ力の解除開始か
ら保持ブレーキ力の作用がなくなるまでの解除時間を算
出する(図10のS13)。解除時間は、ブレーキ力1
に対しては長時間(クリープ立ち上がりから強クリープ
状態の駆動力になるのに必要な時間以上)、ブレーキ力
2に対しては中時間(増加する駆動力と低減する保持ブ
レーキ力の和で後退抑止力を確保できる時間)、ブレー
キ力3に対しては短時間(クリープ立ち上がりの駆動力
で後退抑止力を確保できるので極短い時間)である。
【0154】さらに、原動機停止装置がエンジン1を自
動的に停止(F_ENGOFF)し、駆動力がなくな
る。この際、エンジン1が弱クリープ状態を経て停止す
る関係から、ドライバは坂道で車両が後退しない程度に
強くブレーキペダルBPを踏み込んでいる。したがっ
て、エンジン1が自動停止して駆動力がなくなっても車
両が坂道を後退することはない(後退抑制力)。なお、
エンジン1を自動停止するのは、燃費を向上させること
及び排気ガスの発生をなくすためである。
【0155】次に、ドライバが、再発進に備えてブレー
キペダルBPの踏み込みを開放する。ブレーキペダルB
Pの踏み込み開放によりブレーキスイッチBSWがOF
Fされ(図10のS14)、エンジン自動始動指令(F
_ENGON)を発する。そして、信号通信及びメカ系
の遅れによるタイムラグの後、エンジン1が自動始動し
てCVT3の発進クラッチへの圧油の供給が開始する
(SC〔ON〕)。これにより駆動力が増加して行く。
ちなみに、エンジン1が停止した際に、CVT3の発進
クラッチの油圧室内の作動油は抜けてしまっている。そ
のため、エンジン1が始動し、発進クラッチへの圧油の
供給が開始されると、まず、押し付けピストンの抵抗に
よって、駆動力が急に立ち上がる(SC〔ON〕のとこ
ろにおける駆動力の急な立ち上り)。そして、エンジン
1の停止時には油圧室内の作動油が抜けて押し付けピス
トンには無効ストローク(遊び)が生じているので、発
進クラッチへの油圧指令値と実際の油圧値が一致せず、
発進クラッチの駆動力伝達容量は、油圧室内の作動油が
満たされるまで徐々にしか増加しない。その結果、駆動
力は徐々に増加する。そして、油圧室内の作動油が満た
されると、駆動力は油圧指令値に応じて増加する。
【0156】そして、駆動力が大きい状態に達成する過
程(クリープ立ち上がり:F_SCDLY(図10のS
15))になると、ブレーキ力保持装置RUは、遮断状
態で保持していたブレーキ力の解除を開始し、電磁弁S
Vを遮断位置と連通位置に繰り返し切り換えてブレーキ
液圧を調整し、ブレーキ力を低減させる(電磁弁SVが
調圧状態(図10のS16))。調圧状態中、ブレーキ
力保持装置RUの制御部CUは、電磁弁SVの電磁コイ
ルに供給する電流量を算出し、算出された電流量で電磁
コイルに電流を供給する。電磁弁SVは、供給された電
流量に応じた電磁力を発生し、その電磁力によって連通
位置と遮断位置に切り換わり、ブレーキ液圧を調整す
る。なお、前記したように解除時間は、ブレーキ力1>
ブレーキ力2>ブレーキ力3の関係にある。また、ブレ
ーキ力の大きさも任意の時間において常にブレーキ力1
>ブレーキ力2>ブレーキ力3の関係(すなわち、保持
ブレーキ力の低減中には3つの低減曲線は交差しない関
係)となるように、ブレーキ力保持装置RUは、ブレー
キ液圧の低減量を調整しながらブレーキ力を低減する。
このように、ブレーキ力保持装置RUは、遮断状態で保
持していたブレーキ力が大きいほど、保持ブレーキ力が
作用する時間を長くかつ保持ブレーキ力が作用する大き
さを大きくすることにより、車両の後退を防止すると共
に、無用なブレーキ力の引きずりを防止している。
【0157】なお、ブレーキ力の保持を解除するタイミ
ングは、CVT3の発進クラッチへの圧油の供給が開始
(SC〔ON〕)されてから、クリープ立ち上がりタイ
マにより決められた時間である。この時間になるとブレ
ーキ力の保持を解除するための信号(クリープたち立ち
上り信号、F_SCDLY)が発せられ、ブレーキスイ
ッチBSWがOFFのため直ちに電磁弁SVが調圧状態
となり、ブレーキ力の保持が解除される。このように、
タイマによってクリープ立ち上がりを判断するのは、前
記の通りエンジン1の停止時に発進クラッチの油圧室内
の作動油が抜けてしまっているため、発進クラッチへの
油圧司令値と実際の油圧値(駆動力伝達容量)とが一致
しないからである。
【0158】そして、駆動力が増加し、強クリープ状態
(F_SCRPON)になると、車両は、坂道に抗する
ことができる駆動力を生じる。また、ブレーキ力保持装
置RUは、3つの保持ブレーキ力に対して各々の低減曲
線でブレーキ力を低減させ、やがて各解除時間に応じて
各ブレーキ力をゼロにする。ちなみに、ブレーキ力の低
減中、制御部CUは、ホイールシリンダWC内のブレー
キ液圧がゼロになるまで、ブレーキ力を低減させる。そ
して、ブレーキ液圧(ブレーキ力)がゼロになると、制
御部CUは、電磁弁SVの電磁コイルへの通電を完全に
停止する。その結果、電磁弁SVは、連通位置に維持さ
れる(電磁弁SVが連通状態)。その後、アクセルペダ
ルのさらなる踏み込みにより駆動力が増加し、車両は加
速していく。
【0159】なお、図12のブレーキ力を示す線におい
て、「ブレーキペダルの踏み込み開放」の部分から右斜
め下に伸びる仮想線は、ブレーキ液圧が保持されない場
合を示す。この場合、ブレーキペダルBPの踏み込み力
の低下に遅れることなくブレーキ力が低下するので、坂
道発進を容易に行うことはできない。また、この仮想線
は、ブレーキペダルBPの戻り状況を示すものでもあ
る。
【0160】〔エンジンが自動停止する場合の制御タイ
ムチャート2〕図13を参照して前記システムを備えた
車両が減速→停止→発進したときの制御について説明す
ると共に、特に、ブレーキ力保持装置RUの制御につい
ては図11のフローチャートに沿って説明する。この制
御では、駆動力制御装置DCUにより駆動力が走行時強
クリープ状態から弱クリープ状態になり、さらに原動機
停止装置によりエンジン1が停止する。また、ブレーキ
力保持装置RUによりブレーキ力を保持し、そして保持
ブレーキ力を一定速度で低減する。ちなみに、車両は、
上り坂で停止するものとする。車両のポジションスイッ
チPSW及びモードスイッチMSWはDモードDレンジ
で変化させないこととする。なお、図13の制御タイム
チャートは、車両の駆動力とブレーキ力の増減を時系列
で示した図であり、図中の太い線が駆動力を示し、細い
線がブレーキ力を示す。ちなみに、ブレーキ力は、道路
勾配が急勾配、緩勾配及び急勾配と緩勾配の中間程度の
中勾配の3勾配の上り坂で車両が停止した場合の3つの
ブレーキ力を示す。
【0161】まず、車両走行時(ちなみに、車速>5k
m/h)、ドライバがアクセルペダルの踏み込みを開放
すると(すなわち、スロットルがOFFすると)、駆動
力制御装置DCUは、走行時強クリープ指令(F_MS
CRP)を発し、走行時強クリープ状態(F_MSCR
PON)にする。そのため、強クリープ状態(F_SC
RPON)より駆動力が減少する。
【0162】さらに、ドライバがアクセルペダルの踏み
込みを開放すると共にブレーキペダルBPを踏み込むと
(すなわち、ブレーキスイッチBSWがONすると(図
11のS20))、ブレーキ力が増して行く。そして、
継続してブレーキペダルBPが踏み込まれて車速が5k
m/hになると、駆動力制御装置DCUは、弱クリープ
指令(F_WCRP)を発し、弱クリープ状態(F_W
CRPON)にする。このとき、走行時強クリープ状態
から弱クリープ状態になるため、ドライバは強い減速感
を受けることがない。
【0163】そして、車速が0km/hになると(図1
1のS21)、ブレーキ力保持装置RUは、電磁弁SV
を遮断位置にしてブレーキ力を保持する(電磁弁SVが
遮断状態(図11のS22))。このとき、前記したよ
うに上り坂の道路勾配は3勾配あり、ドライバは、各道
路勾配に対して後退しない程度のブレーキ力を発生させ
るために、急勾配ではブレーキペダルBPを強く踏み込
み、中勾配ではブレーキペダルBPを中程度に踏み込
み、緩勾配ではブレーキペダルBPを弱く踏み込んでい
る。したがって、保持するブレーキ力は、ドライバの踏
み込み力に応じて、急勾配に対しては大きなブレーキ力
(ブレーキ力1)を保持し、中勾配に対しては中程度の
ブレーキ力(ブレーキ力2)を保持し、緩勾配に対して
は小さなブレーキ力(ブレーキ力3)を保持する。
【0164】さらに、原動機停止装置がエンジン1を自
動的に停止(F_ENGOFF)し、駆動力がなくな
る。この際、エンジン1が弱クリープ状態を経て停止す
る関係から、ドライバは坂道で車両が後退しない程度に
強くブレーキペダルBPを踏み込んでいる。したがっ
て、エンジン1が自動停止して駆動力がなくなっても車
両が坂道を後退することはない(後退抑制力)。なお、
エンジン1を自動停止するのは、燃費を向上させること
及び排気ガスの発生をなくすためである。
【0165】次に、ドライバが、再発進に備えてブレー
キペダルBPの踏み込みを開放する。ブレーキペダルB
Pの踏み込み開放によりブレーキスイッチBSWがOF
Fされ(図11のS23)、エンジン自動始動指令(F
_ENGON)を発する。そして、信号通信及びメカ系
の遅れによるタイムラグの後、エンジン1が自動始動し
てCVT3の発進クラッチへの圧油の供給が開始する
(SC〔ON〕)。これにより駆動力が増加して行く。
ちなみに、エンジン1が停止した際に、CVT3の発進
クラッチの油圧室内の作動油は抜けてしまっている。そ
のため、エンジン1が始動し、発進クラッチへの圧油の
供給が開始されると、まず、押し付けピストンの抵抗に
よって、駆動力が急に立ち上がる(SC〔ON〕のとこ
ろにおける駆動力の急な立ち上り)。そして、エンジン
1の停止時には油圧室内の作動油が抜けて押し付けピス
トンには無効ストローク(遊び)が生じているので、発
進クラッチへの油圧指令値と実際の油圧値が一致せず、
発進クラッチの駆動力伝達容量は、油圧室内の作動油が
満たされるまで徐々にしか増加しない。その結果、駆動
力は徐々に増加する。そして、油圧室内の作動油が満た
されると、駆動力は油圧指令値に応じて増加する。
【0166】そして、駆動力が大きい状態に達成する過
程(クリープ立ち上がり:F_SCDLY(図11のS
24))になると、ブレーキ力保持装置RUは、遮断状
態で保持していたブレーキ力の解除を開始し、電磁弁S
Vを遮断位置と連通位置に繰り返し切り換えてブレーキ
液圧を調整し、ブレーキ力を一定速度で低減させる(電
磁弁SVが調圧状態(図11のS25))。調圧状態
中、ブレーキ力保持装置RUの制御部CUは、電磁弁S
Vの電磁コイルに供給する電流量を算出する。このと
き、制御部CUは、ホイールシリンダWC内のブレーキ
液圧の低減していく割合(すなわち、低減速度)が予め
設定されている割合となるように電流量を算出する。そ
して、制御部CUは、算出された電流量で電磁コイルに
電流を供給する。電磁弁SVは、供給された電流量に応
じた電磁力を発生し、その電磁力によって連通位置と遮
断位置に切り換わり、ブレーキ液圧を調整する。なお、
解除時間は、ブレーキ力の低減速度を一定としているの
で、遮断状態で保持していたブレーキ力が大きいほど長
くなり、ブレーキ力1>ブレーキ力2>ブレーキ力3の
関係にある。また、ブレーキ力の大きさも、ブレーキ力
の低減速度を一定としているので、任意の時間において
常にブレーキ力1>ブレーキ力2>ブレーキ力3の関係
(すなわち、保持ブレーキ力の低減中には3つの低減直
線は平行関係)となるように、ブレーキ力保持装置RU
は、ブレーキ液圧の低減量を調整しながらブレーキ力を
低減する。このように、ブレーキ力保持装置RUは、ブ
レーキ力の低減速度を一定とすることによって、遮断状
態で保持していたブレーキ力が大きいほど、保持ブレー
キ力が作用する時間を長くかつ保持ブレーキ力が作用す
る大きさを大きくし、車両の後退を防止すると共に、無
用なブレーキ力の引きずりを防止している。
【0167】なお、ブレーキ力の保持を解除するタイミ
ングは、CVT3の発進クラッチへの圧油の供給が開始
(SC〔ON〕)されてから、クリープ立ち上がりタイ
マにより決められた時間である。この時間になるとブレ
ーキ力の保持を解除するための信号(クリープたち立ち
上り信号、F_SCDLY)が発せられ、ブレーキスイ
ッチBSWがOFFのため直ちに電磁弁SVが調圧状態
となり、ブレーキ力の保持が解除される。このように、
タイマによってクリープ立ち上がりを判断するのは、前
記の通りエンジン1の停止時に発進クラッチの油圧室内
の作動油が抜けてしまっているため、発進クラッチへの
油圧司令値と実際の油圧値(駆動力伝達容量)とが一致
しないからである。
【0168】そして、駆動力が増加し、強クリープ状態
(F_SCRPON)になると、車両は、坂道に抗する
ことができる駆動力を生じる。また、ブレーキ力保持装
置RUは、3つの保持ブレーキ力に対して同じ低減速度
でブレーキ力を低減させ、やがて各ブレーキ力をゼロに
する。ちなみに、ブレーキ力の低減中、制御部CUは、
ホイールシリンダWC内のブレーキ液圧がゼロになるま
で、ブレーキ力を低減させる。そして、ブレーキ液圧
(ブレーキ力)がゼロになると、制御部CUは、電磁弁
SVの電磁コイルへの通電を完全に停止する。その結
果、電磁弁SVは、連通位置に維持される(電磁弁SV
が連通状態)。その後、アクセルペダルのさらなる踏み
込みにより駆動力が増加し、車両は加速していく。
【0169】なお、図13のブレーキ力を示す線におい
て、「ブレーキペダルの踏み込み開放」の部分から右斜
め下に伸びる仮想線は、ブレーキ液圧が保持されない場
合を示す。この場合、ブレーキペダルBPの踏み込み力
の低下に遅れることなくブレーキ力が低下するので、坂
道発進を容易に行うことはできない。また、この仮想線
は、ブレーキペダルBPの戻り状況を示すものでもあ
る。
【0170】〔エンジンが自動停止しない場合の制御タ
イムチャート1〕図14を参照して前記システムを備え
た車両が減速→停止→発進したときの制御について説明
すると共に、特に、ブレーキ力保持装置RUの制御につ
いては図10のフローチャートに沿って説明する。この
制御では、駆動力制御装置DCUにより駆動力が走行時
強クリープ状態から弱クリープ状態になる。なお、エン
ジン1は、自動停止しない。また、ブレーキ力保持装置
RUによりブレーキ力を保持し、その保持していたブレ
ーキ力の大きさに応じて解除時間を増減して保持ブレー
キ力を解除する。ちなみに、車両は、上り坂で停止する
ものとする。車両のポジションスイッチPSW及びモー
ドスイッチMSWはDモードDレンジで変化させないこ
ととする。なお、図14の制御タイムチャートは、車両
の駆動力とブレーキ力の増減を時系列で示した図であ
り、図中の太い線が駆動力を示し、細い線がブレーキ力
を示す。ちなみに、ブレーキ力は、道路勾配が急勾配、
緩勾配及び急勾配と緩勾配の中間程度の中勾配の3勾配
の上り坂で車両が停止した場合の3つのブレーキ力を示
す。
【0171】まず、車両走行時(ちなみに、車速>5k
m/h)、ドライバがアクセルペダルの踏み込みを開放
すると(すなわち、スロットルがOFFすると)、駆動
力制御装置DCUは、走行時強クリープ指令(F_MS
CRP)を発し、走行時強クリープ状態(F_MSCR
PON)にする。そのため、強クリープ状態(F_SC
RPON)より駆動力が減少する。
【0172】さらに、ドライバがアクセルペダルの踏み
込みを開放すると共にブレーキペダルBPを踏み込むと
(すなわち、ブレーキスイッチBSWがONすると(図
10のS10))、ブレーキ力が増して行く。そして、
継続してブレーキペダルBPが踏み込まれて車速が5k
m/hになると、駆動力制御装置DCUは、弱クリープ
指令(F_WCRP)を発し、弱クリープ状態(F_W
CRPON)にする。このとき、走行時強クリープ状態
から弱クリープ状態になるため、ドライバは強い減速感
を受けることがない。
【0173】そして、車速が0km/hになると(図1
0のS11)、ブレーキ力保持装置RUは、電磁弁SV
を遮断位置にしてブレーキ力を保持する(電磁弁SVが
遮断状態(図10のS12))。このとき、前記したよ
うに上り坂の道路勾配は3勾配あり、ドライバは、各道
路勾配に対して後退しない程度のブレーキ力を発生させ
るために、急勾配ではブレーキペダルBPを強く踏み込
み、中勾配ではブレーキペダルBPを中程度に踏み込
み、緩勾配ではブレーキペダルBPを弱く踏み込んでい
る。したがって、保持するブレーキ力は、ドライバの踏
み込み力に応じて、急勾配に対しては大きなブレーキ力
(ブレーキ力1)を保持し、中勾配に対しては中程度の
ブレーキ力(ブレーキ力2)を保持し、緩勾配に対して
は小さなブレーキ力(ブレーキ力3)を保持する。ま
た、ブレーキ力保持装置RUは、ブレーキ液圧センサP
Gでブレーキ液圧を検出すると共に、制御部CUで検出
したブレーキ液圧に応じて保持ブレーキ力の解除開始か
ら保持ブレーキ力の作用がなくなるまでの解除時間を算
出する(図10のS13)。解除時間は、ブレーキ力1
に対しては長時間(クリープ立ち上がりから強クリープ
状態の駆動力になるのに必要な時間以上)、ブレーキ力
2に対しては中時間(増加する駆動力と低減する保持ブ
レーキ力の和で後退抑止力を確保できる時間)、ブレー
キ力3に対しては短時間(クリープ立ち上がりの駆動力
で後退抑止力を確保できるので極短い時間)である。
【0174】次に、ドライバが、再発進に備えてブレー
キペダルBPの踏み込みを開放する。ブレーキペダルB
Pの踏み込み開放によりブレーキスイッチBSWがOF
Fされ(図10のS14)、これにより発せられる強ク
リープ指令(F_SCRP)によって駆動力が増加して
行く。ちなみに、エンジン1が停止した場合と異なり、
CVT3の発進クラッチの油圧室内の作動油は抜けてい
ないので、発進クラッチへの油圧指令値と実際の油圧値
が一致しており油圧指令値に応じて、駆動力が増加し強
クリープ状態になる(F_SCRPON)。
【0175】そして、駆動力が大きい状態に達成する過
程(クリープ立ち上がり:F_SCDLY(図10のS
15))になると、ブレーキ力保持装置RUは、遮断状
態で保持していたブレーキ力の解除を開始し、電磁弁S
Vを遮断位置と連通位置に繰り返し切り換えてブレーキ
液圧を調整し、ブレーキ力を低減させる(電磁弁SVが
調圧状態(図10のS16))。調圧状態中、ブレーキ
力保持装置RUの制御部CUは、電磁弁SVの電磁コイ
ルに供給する電流量を算出し、算出された電流量で電磁
コイルに電流を供給する。電磁弁SVは、供給された電
流量に応じた電磁力を発生し、その電磁力によって連通
位置と遮断位置に切り換わり、ブレーキ液圧を調整す
る。なお、前記したように解除時間は、ブレーキ力1>
ブレーキ力2>ブレーキ力3の関係にある。また、ブレ
ーキ力の大きさも任意の時間において常にブレーキ力1
>ブレーキ力2>ブレーキ力3の関係(すなわち、保持
ブレーキ力の低減中には3つの低減曲線は交差しない関
係)となるように、ブレーキ力保持装置RUは、ブレー
キ液圧の低減量を調整しながらブレーキ力を低減してい
る。このように、ブレーキ力保持装置RUは、遮断状態
で保持していたブレーキ力が大きいほど、保持ブレーキ
力が作用する時間を長くかつ保持ブレーキ力が作用する
大きさを大きくすることにより、車両の後退を防止する
と共に、無用なブレーキ力の引きずりを防止している。
【0176】なお、ブレーキ力の保持を解除するタイミ
ング(F_SCDLY)は、エンジン1が停止(自動停
止)した場合と異なり、弱クリープ状態から強クリープ
状態に移行する過程で、発進クラッチの係合力の油圧を
制御するリニアソレノイド弁への油圧指令値が弱クリー
プと強クリープとの略中間の値まで増加した時点であ
る。このように油圧司令値に基づいてブレーキ力の保持
を解除するのは、エンジン1が停止していないため、油
圧司令値と実際の油圧値(駆動力伝達容量)とが一致し
ているからである。
【0177】そして、駆動力が増加し、強クリープ状態
(F_SCRPON)になると、車両は、坂道に抗する
ことができる駆動力を生じる。また、ブレーキ力保持装
置RUは、3つの保持ブレーキ力に対して各々の低減曲
線でブレーキ力を低減させ、やがて各解除時間に応じて
各ブレーキ力をゼロにする。ちなみに、ブレーキ力の低
減中、制御部CUは、ホイールシリンダWC内のブレー
キ液圧がゼロになるまで、ブレーキ力を低減させる。そ
して、ブレーキ液圧(ブレーキ力)がゼロになると、制
御部CUは、電磁弁SVの電磁コイルへの通電を完全に
停止する。その結果、電磁弁SVは、連通位置に維持さ
れる(電磁弁SVが連通状態)。その後、アクセルペダ
ルのさらなる踏み込みにより駆動力が増加し、車両は加
速していく。
【0178】なお、図14のブレーキ力を示す線におい
て、「ブレーキペダルの踏み込み開放」の部分から右斜
め下に伸びる仮想線は、ブレーキ液圧が保持されない場
合を示す。この場合、ブレーキペダルBPの踏み込み力
の低下に遅れることなくブレーキ力が低下するので、坂
道発進を容易に行うことはできない。また、この仮想線
は、ブレーキペダルBPの戻り状況を示すものでもあ
る。
【0179】〔エンジンが自動停止しない場合の制御タ
イムチャート2〕図15を参照して前記システムを備え
た車両が減速→停止→発進したときの制御について説明
すると共に、特に、ブレーキ力保持装置RUの制御につ
いては図11のフローチャートに沿って説明する。この
制御では、駆動力制御装置DCUにより駆動力が走行時
強クリープ状態から弱クリープ状態になる。なお、エン
ジン1は、自動停止しない。また、ブレーキ力保持装置
RUによりブレーキ力を保持し、そして保持ブレーキ力
を一定速度で低減する。ちなみに、車両は、上り坂で停
止するものとする。車両のポジションスイッチPSW及
びモードスイッチMSWはDモードDレンジで変化させ
ないこととする。なお、図15の制御タイムチャート
は、車両の駆動力とブレーキ力の増減を時系列で示した
図であり、図中の太い線が駆動力を示し、細い線がブレ
ーキ力を示す。ちなみに、ブレーキ力は、道路勾配が急
勾配、緩勾配及び急勾配と緩勾配の中間程度の中勾配の
3勾配の上り坂で車両が停止した場合の3つのブレーキ
力を示す。
【0180】まず、車両走行時(ちなみに、車速>5k
m/h)、ドライバがアクセルペダルの踏み込みを開放
すると(すなわち、スロットルがOFFすると)、駆動
力制御装置DCUは、走行時強クリープ指令(F_MS
CRP)を発し、走行時強クリープ状態(F_MSCR
PON)にする。そのため、強クリープ状態(F_SC
RPON)より駆動力が減少する。
【0181】さらに、ドライバがアクセルペダルの踏み
込みを開放すると共にブレーキペダルBPを踏み込むと
(すなわち、ブレーキスイッチBSWがONすると(図
11のS20))、ブレーキ力が増して行く。そして、
継続してブレーキペダルBPが踏み込まれて車速が5k
m/hになると、駆動力制御装置DCUは、弱クリープ
指令(F_WCRP)を発し、弱クリープ状態(F_W
CRPON)にする。このとき、走行時強クリープ状態
から弱クリープ状態になるため、ドライバは強い減速感
を受けることがない。
【0182】そして、車速が0km/hになると(図1
1のS21)、ブレーキ力保持装置RUは、電磁弁SV
を遮断位置にしてブレーキ力を保持する(電磁弁SVが
遮断状態(図11のS22))。このとき、前記したよ
うに上り坂の道路勾配は3勾配あり、ドライバは、各道
路勾配に対して後退しない程度のブレーキ力を発生させ
るために、急勾配ではブレーキペダルBPを強く踏み込
み、中勾配ではブレーキペダルBPを中程度に踏み込
み、緩勾配ではブレーキペダルBPを弱く踏み込んでい
る。したがって、保持するブレーキ力は、ドライバの踏
み込み力に応じて、急勾配に対しては大きなブレーキ力
(ブレーキ力1)を保持し、中勾配に対しては中程度の
ブレーキ力(ブレーキ力2)を保持し、緩勾配に対して
は小さなブレーキ力(ブレーキ力3)を保持する。
【0183】次に、ドライバが、再発進に備えてブレー
キペダルBPの踏み込みを開放する。ブレーキペダルB
Pの踏み込み開放によりブレーキスイッチBSWがOF
Fされ(図11のS23)、これにより発せられる強ク
リープ指令(F_SCRP)によって駆動力が増加して
行く。ちなみに、エンジン1が停止した場合と異なり、
CVT3の発進クラッチの油圧室内の作動油は抜けてい
ないので、発進クラッチへの油圧指令値と実際の油圧値
が一致しており油圧指令値に応じて、駆動力が増加し強
クリープ状態になる(F_SCRPON)。
【0184】そして、駆動力が大きい状態に達成する過
程(クリープ立ち上がり:F_SCDLY(図11のS
24))になると、ブレーキ力保持装置RUは、遮断状
態で保持していたブレーキ力の解除を開始し、電磁弁S
Vを遮断位置と連通位置に繰り返し切り換えてブレーキ
液圧を調整し、ブレーキ力を一定速度で低減させる(電
磁弁SVが調圧状態(図11のS25))。調圧状態
中、ブレーキ力保持装置RUの制御部CUは、電磁弁S
Vの電磁コイルに供給する電流量を算出する。このと
き、制御部CUは、ホイールシリンダWC内のブレーキ
液圧の低減していく割合(すなわち、低減速度)が予め
設定されている割合となるように電流量を算出する。そ
して、制御部CUは、算出された電流量で電磁コイルに
電流を供給する。電磁弁SVは、供給された電流量に応
じた電磁力を発生し、その電磁力によって連通位置と遮
断位置に切り換わり、ブレーキ液圧を調整する。なお、
解除時間は、ブレーキ力の低減速度を一定としているの
で、遮断状態で保持していたブレーキ力が大きいほど長
くなり、ブレーキ力1>ブレーキ力2>ブレーキ力3の
関係にある。また、ブレーキ力の大きさも、ブレーキ力
の低減速度を一定としているので、任意の時間において
常にブレーキ力1>ブレーキ力2>ブレーキ力3の関係
(すなわち、保持ブレーキ力の低減中には3つの低減直
線は平行関係)となるように、ブレーキ力保持装置RU
は、ブレーキ液圧の低減量を調整しながらブレーキ力を
低減している。このように、ブレーキ力保持装置RU
は、ブレーキ力の低減速度を一定とすることによって、
遮断状態で保持していたブレーキ力が大きいほど、保持
ブレーキ力が作用する時間を長くかつ保持ブレーキ力が
作用する大きさを大きくし、車両の後退を防止すると共
に、無用なブレーキ力の引きずりを防止している。
【0185】なお、ブレーキ力の保持を解除するタイミ
ング(F_SCDLY)は、エンジン1が停止(自動停
止)した場合と異なり、弱クリープ状態から強クリープ
状態に移行する過程で、発進クラッチの係合力の油圧を
制御するリニアソレノイド弁への油圧指令値が弱クリー
プと強クリープとの略中間の値まで増加した時点であ
る。このように油圧司令値に基づいてブレーキ力の保持
を解除するのは、エンジン1が停止していないため、油
圧司令値と実際の油圧値(駆動力伝達容量)とが一致し
ているからである。
【0186】そして、駆動力が増加し、強クリープ状態
(F_SCRPON)になると、車両は、坂道に抗する
ことができる駆動力を生じる。また、ブレーキ力保持装
置RUは、3つの保持ブレーキ力に対して同じ低減速度
でブレーキ力を低減させ、やがて各ブレーキ力をゼロに
する。ちなみに、ブレーキ力の低減中、制御部CUは、
ホイールシリンダWC内のブレーキ液圧がゼロになるま
で、ブレーキ力を低減させる。そして、ブレーキ液圧
(ブレーキ力)がゼロになると、制御部CUは、電磁弁
SVの電磁コイルへの通電を完全に停止する。その結
果、電磁弁SVは、連通位置に維持される(電磁弁SV
が連通状態)。その後、アクセルペダルのさらなる踏み
込みにより駆動力が増加し、車両は加速していく。
【0187】なお、図15のブレーキ力を示す線におい
て、「ブレーキペダルの踏み込み開放」の部分から右斜
め下に伸びる仮想線は、ブレーキ液圧が保持されない場
合を示す。この場合、ブレーキペダルBPの踏み込み力
の低下に遅れることなくブレーキ力が低下するので、坂
道発進を容易に行うことはできない。また、この仮想線
は、ブレーキペダルBPの戻り状況を示すものでもあ
る。
【0188】以上、本発明は、前記の実施の形態に限定
されることなく、様々な形態で実施される。例えば、ブ
レーキ力保持装置はブレーキ力に作用する手段としてブ
レーキ液圧に作用する手段で構成したが、ブレーキ力に
作用できる手段なら特に限定するものではない。また、
ブレーキ力保持装置において保持ブレーキ力の解除時間
や保持ブレーキ力の低減速度を制御できる手段として比
例電磁弁で構成したが、保持ブレーキ力の解除時間や保
持ブレーキ力の低減速度を制御できる手段なら特に限定
するものではない。
【0189】
【発明の効果】本発明の請求項1に係るブレーキ力保持
装置によれば、保持していたブレーキ力の大きさから車
両の傾斜角(道路勾配)や車両の積載重量を推定してい
るので、実際に車両の傾斜角や車両の積載重量を測定し
なくても、保持ブレーキ力の解除時間を増減でき、車両
の傾斜角や車両の積載重量に応じた適切な保持ブレーキ
力の解除を行うことがきる。したがって、車両の傾斜角
(道路勾配)や車両の積載重量が大きいと推定できると
き(保持していたブレーキ力が大きいとき)には、解除
時間を長くし、発進時の車両後退を防止することができ
る。また、車両の傾斜角(道路勾配)や車両の積載重量
が小さいと推定できるとき(保持していたブレーキ力が
小さいとき)には、解除時間を短くし、無用なブレーキ
力の引きずりを防止することできる。
【0190】本発明の請求項2に係るブレーキ力保持装
置によれば、保持していたブレーキ力の大きさに関係な
く保持ブレーキ力の低減速度を一定にすることによっ
て、保持ブレーキ力の解除時間を保持していたブレーキ
力の大きさに比例して増減することができる。また、ド
ライバが体感するブレーキ力の低減感が一定となり、発
進操作時の安定感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係るブレーキ力保持装置を塔載
した車両のシステム構成図である。
【図2】本実施の形態に係るブレーキ力保持装置の構成
図である。
【図3】本実施の形態に係るブレーキ力保持装置の
(a)はブレーキ力を保持する制御ロジック、(b)は
ブレーキ力保持装置の作動を許可する制御ロジックであ
る。
【図4】本実施の形態に係る駆動力制御装置の(a)は
弱クリープ状態にする制御ロジック、(b)は走行時強
クリープ状態にする制御ロジック、(c)は中クリープ
状態にする制御ロジックである。
【図5】本実施の形態に係る原動機停止装置のエンジン
を自動停止する制御ロジックである。
【図6】本実施の形態に係るブレーキ力保持装置の
(a)はブレーキ力の保持を解除する制御ロジック(遮
断状態→調圧状態)、(b)はブレーキ力の保持を解除
する制御ロジック(遮断状態→連通状態)、(c)はク
リープの立ち上がりを判断する制御ロジックである。
【図7】本実施の形態に係る駆動力制御装置の(a)は
強クリープ状態にする制御ロジック(車両後退検出バー
ジョン)、(b)は強クリープ状態にする制御ロジック
(車両移動検出バージョン)である。
【図8】本実施の形態に係る原動機停止装置の(a)は
エンジンを自動始動する制御ロジック(車両後退検出バ
ージョン)、(b)はエンジンを自動始動する制御ロジ
ック(車両移動検出バージョン)である。
【図9】本実施の形態に係る車両後退検出方法の一例で
あり、(a)は車両後退検出の構成図、(b)は(a)
図の方向回転のパルス位相、(c)は(a)図の方
向回転のパルス位相である。
【図10】本実施の形態に係るブレーキ力保持装置によ
るブレーキ液圧制御のフローチャート(パターン1)で
ある。
【図11】本実施の形態に係るブレーキ力保持装置によ
るブレーキ液圧制御のフローチャート(パターン2)で
ある。
【図12】本実施の形態に係るブレーキ力保持装置を塔
載した車両のエンジンを自動停止する場合の制御タイム
チャート(パターン1)である。
【図13】本実施の形態に係るブレーキ力保持装置を塔
載した車両のエンジンを自動停止する場合の制御タイム
チャート(パターン2)である。
【図14】本実施の形態に係るブレーキ力保持装置を塔
載した車両のエンジンを自動停止しない場合の制御タイ
ムチャート(パターン1)である。
【図15】本実施の形態に係るブレーキ力保持装置を塔
載した車両のエンジンを自動停止しない場合の制御タイ
ムチャート(パターン2)である。
【図16】従来の保持ブレーキ力の解除を示す制御タイ
ムチャートである。
【符号の説明】
BP・・・ブレーキペダル RU・・・ブレーキ力保持装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神田 稔也 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 (72)発明者 江口 高弘 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 Fターム(参考) 3D046 BB02 CC02 EE01 GG02 HH02 HH05 HH06 HH16 HH17 JJ14 KK11

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両停止時にブレーキペダルの踏み込み
    開放後も引き続き車両にブレーキ力を作用させるために
    開放前のブレーキペダルの踏み込み力に応じたブレーキ
    力を保持し、発進操作により前記ブレーキ力の保持を解
    除するブレーキ力保持装置であって、 前記ブレーキ力の保持を解除する際、前記ブレーキ力の
    保持の解除開始時から前記ブレーキ力の作用がなくなる
    までの解除時間を前記保持していたブレーキ力の大きさ
    に応じて増減することを特徴とするブレーキ力保持装
    置。
  2. 【請求項2】 前記ブレーキ力の保持を解除する際、前
    記保持していたブレーキ力の大きさに関係なく前記ブレ
    ーキ力を一定速度で低減することを特徴とする請求項1
    に記載のブレーキ力保持装置。
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