JP3967847B2 - ブレーキ力制御装置を有する車両 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキペダルの踏込み開放後もブレーキ力を保持できるブレーキ力保持手段を備えるブレーキ力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より車両発進時ブレーキペダルの踏込み開放後もブレーキ液圧をホイールシリンダに保持することでブレーキ力を引続き作用させるブレーキ力保持手段を備えた車両が知られている。かかる車両においては、ブレーキ力を保持したままでは発進することが困難なため、また発進後にブレーキの引きずりを生じるため、発進駆動力が所定値に上昇した時点でブレーキ力を一気に解除する制御を行なっていた(図10参照)。このようにブレーキ力を解除する制御を行なうことにより、必要以上に大きな駆動力を要することなく、かつブレーキの引きずりのない発進を行なうことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図10に示すように発進駆動力が所定値に上昇した時点でブレーキ力を一気に解除すると、車両の発進が唐突な感じになる場合がある。特に、車両自体の発進駆動力だけでなく、車両の自重による移動力がさらに加わる下り坂での発進においてこうした唐突感が生じ易く、ドライバにとってはこの唐突感がショックあるいはブレーキの引っかかり感として感じられるものであった。本発明は、発進時における唐突感を解消して滑らかな車両の発進を実現することのできるブレーキ力制御装置を有する車両を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決すべく、発進駆動力が生じた時点でブレーキ力を一気に解除するのではなく、ブレーキ力を漸減しながら解除させることとした(請求項1)。
これによれば、駆動力が大きな状態まで増加した後、ブレーキ力が一気に低下することなく徐々に低下する。
なお、「所定車速」とは車速0km/h(車両停止状態)あるいは車両が停止する直前の車速を意味する。したがって、所定車速を0km/hに設定すれば「所定車速以下」とは車両停止状態のみを意味し、本実施の形態のように「所定車速」を車両が停止する直前の車速の一例である5km/hに設定すれば「所定車速以下」とは車両停止状態を含む5km/h以下の車速範囲を意味する。
【0005】
また、本発明は、原動機停止装置をさらに備える(請求項2)。これによれば、停止時に原動機が停止される。
また、本発明は、アクセルペダルの踏込み操作が検出されたとき、ブレーキ力保持手段はその時点でブレーキ力を一気に解除する(請求項)。これによれば、アクセルペダルの踏込みにより増加する駆動力がブレーキ力による制限を受けることがない。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のブレーキ力制御装置の実施の形態を詳細に説明する。
ブレーキ力制御装置は、ブレーキペダルの踏込み開放後も引続き車両にブレーキ力を作用できるブレーキ力保持手段を備える。このブレーキ力制御装置は車両に搭載されるが、この車両は駆動力を変化させることができる駆動力制御装置を備える。
以下の実施の形態では、変速機がベルト式無段変速機(以下「CVT」という)である車両について説明を行なうが、変速機がトルクコンバータ付きの有段自動変速機などであってもよい。
【0007】
《車両の全般的システム構成など》
先ず、車両の全般的システム構成例を、図1を参照して説明する。図1は本実施の形態におけるブレーキ力制御装置を搭載する車両のシステム構成例を示す図である。なお、この車両は原動機としてエンジン1とモータ2を備え、変速機としてCVT3を備える。このCVT3には後に説明する駆動力制御装置DCUが組込まれる。
【0008】
〔機器類の説明〕
エンジン1は、燃料噴射電子制御ユニット(以下「FIECU」という)に制御される。なお、FIECUは、マネージメント電子制御ユニット(以下「MGECU」という)と一体で構成し、燃料噴射/マネージメント電子制御ユニット(以下「FI/MGECU」という)4に備わっている。また、モータ2は、モータ電子制御ユニット(以下「MOTECU」という)5に制御される。さらに、CVT3は、CVT電子制御ユニット(以下「CVTECU」という)6に制御される。このCVTECU6は、後に説明する駆動力制御装置DCU及びブレーキ力制御装置BCUの制御手段CUを内蔵する。
【0009】
エンジン1は、熱エネルギーを利用する内燃機関であり、CVT3及び駆動軸7などを介して駆動輪8・8を駆動する。この駆動輪8・8は、後に説明する液圧式ブレーキ装置BC(図3参照)により制動される構造となっている。なお、エンジン1は、燃費悪化の防止などのために、車両停止時に自動で停止させる場合がある。そのために、車両は、エンジン自動停止条件を満たした時にエンジン1を停止させる原動機停止装置を備える。
【0010】
モータ2は、図示しないバッテリからの電気エネルギーを利用し、エンジン1による駆動をアシストするアシストモードを有する。また、モータ2は、アシスト不要の時(下り坂や減速時など)に駆動軸7の回転による運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、バッテリに蓄電する回生モードを有し、さらにエンジン1を始動する始動モードなどを有する。
【0011】
CVT3は、ドライブプーリとドリブンプーリとの間に無端ベルトを巻掛け、各プーリ幅を変化させて無端ベルトの巻掛け半径を変化させることによって、変速比を無段階に変化させる。そして、CVT3は、出力軸に発進クラッチを連結し、この発進クラッチを係合して、無端ベルトで変速されたエンジン1などの出力を発進クラッチの出力側のギアを介して駆動軸7に伝達する。なお、このCVT3は駆動力制御装置DCUを備え、原動機により発生する駆動力を駆動輪8・8に伝達する際に駆動力を大きくしたり小さくしたり変化させて伝達することができる。
【0012】
この駆動力制御装置DCUについては後に詳細に説明するが、駆動力制御装置DCUを備える車両は、いわゆるクリープ(creep)の駆動力を変化させることができる。例えば、アイドリング時に駆動力制御装置DCUにより駆動力を「大きい状態」に設定すればクリープの駆動力が大きい「強クリープ状態」を作り出すことができる。また、アイドリング時に駆動力を「小さい状態」に設定すれば「弱クリープ状態」を作り出すことができる。本実施の形態の車両では、強クリープ状態は傾斜5度の坂道で車両が後ずさりすることがない駆動力を有する。また、弱クリープ状態は全く駆動力がないかほとんど駆動力がない状態である。この強クリープ状態と弱クリープ状態は相対的な関係にあり、強クリープ状態よりも駆動力が小さい状態が弱クリープ状態であり、弱クリープ状態よりも駆動力が大きい状態が強クリープ状態である。弱クリープ状態を作り出すことにより、エンジン1の負荷が低減すると共に発進クラッチに供給する油圧を低くすることができるため、燃費を節減することができる。ちなみに変速機において走行レンジが選択されかつアクセルペダルが踏込まれているときは、駆動力制御装置DCUは駆動力を「大きい状態以上」にする。
なお、以下の説明において、「弱クリープ状態」とあるときは駆動力は「小さい状態」にあり、「強クリープ状態」とあるときは駆動力は「大きい状態」にある。また、逆に、駆動力が「小さい状態」にあるときはクリープの駆動力は「弱クリープ状態」にあり、駆動力が「大きい状態」にあるときはクリープの駆動力は「強クリープ状態」にある。
【0013】
次に、ポジションスイッチPSWのレンジ位置(走行位置・非走行位置)は、シフトレバーで選択する。ポジションスイッチPSWのレンジは、駐停車時に使用するPレンジ、ニュートラルであるNレンジ、バック走行時に使用するRレンジ、通常走行時に使用するDレンジ及び急加速や強いエンジンブレーキを必要とするときに使用するLレンジがある。このうち、Dレンジ、Lレンジ及びRレンジの3つのレンジが「走行位置」である。また、Pレンジ、Nレンジの2つのレンジが「非走行位置」である。なお、ポジションスイッチPSWでDレンジが選択されている時には、モードスイッチMSWで、通常走行モードであるDモードとスポーツ走行モードであるSモードを選択できる。
【0014】
FI/MGECU4に含まれるFIECUは、最適な空気燃費比となるように燃料の噴射量を制御すると共に、エンジン1を統括的に制御する。FIECUにはスロットル開度やエンジン1の状態を示す情報などが送信され、各情報に基づいてエンジン1を制御する。また、FI/MGECU4に含まれるMGECUは、MOTECU5を主として制御すると共に、エンジン自動停止条件及びエンジン自動始動条件の判断を行う。MGECUにはモータ2の状態を示す情報が送信されると共に、FIECUからエンジン1の状態を示す情報などが入力され、各情報に基づいて、モータ2のモードの切換え指示などをMOTECU5に行う。また、MGECUにはCVT3の状態を示す情報、エンジン1の状態を示す情報、ポジションスイッチPSWのレンジ情報及びモータ2の状態を示す情報などが送信され、各情報に基づいて、エンジン1の自動停止又は自動始動を判断する。
【0015】
MOTECU5は、FI/MGECU4からの制御信号に基づいて、モータ2を制御する。FI/MGECU4からの制御信号にはモータ2によるエンジン1の始動、エンジン1の駆動のアシスト又は電気エネルギーの回生などを指令するモード情報やモータ2に対する出力要求値などがあり、MOTECU5は、これらの情報に基づいて、モータ2に命令を出す。また、モータ2などから情報を得て、発電量などのモータ2の情報やバッテリの容量などをFI/MGECU4に送信する。
【0016】
制御手段CUでもあるCVTECU6は、CVT3の変速比や駆動力制御装置DCU、さらにブレーキ力制御装置BCU(ともに詳細は後述する)などを制御する。CVTECU6にはCVT3の状態を示す情報、エンジン1の状態を示す情報及びポジションスイッチPSWのレンジ情報などが送信され、CVT3のドライブプーリとドリブンプーリの各シリンダの油圧の制御及び発進クラッチの油圧の制御をするための信号などをCVT3に送信する。さらに、CVTECU6は、ブレーキ力制御装置BCUの電磁弁SV(図3参照)の状態を後に説明する連通状態、遮断状態、流量制限状態のいずれにするか、クリープの駆動力を強クリープ状態か弱クリープ状態のいずれにするかを判断する。また、CVTECU6は、ブレーキ力制御装置BCUの故障を検出するために、故障検出装置DUを備えている。この故障検出装置DUは、ブレーキ力制御装置BCUの電磁弁SVを駆動するための駆動回路も備える。
【0017】
ディスクブレーキ9・9は、駆動輪8・8と一体となって回転するディスクロータを、ホイールシリンダWC(図3参照)を駆動源とするブレーキパッドで挟みつけ、その摩擦力で制動力を得る。ホイールシリンダWCには、ブレーキ力制御装置BCUを介してマスタシリンダMC(図3参照)のブレーキ液圧が供給される。
【0018】
この車両に備わる原動機停止装置は、FI/MGECU4などで構成される。原動機停止装置は、車両が停止状態の時に、エンジン1を自動で停止させることができる。原動機停止装置は、FI/MGECU4のMGECUで、車速が0Km/hなどのエンジン自動停止条件を判断する。なお、エンジン自動停止条件については、後で詳細に説明する。そして、エンジン自動停止条件が全て満たされていると判断すると、FI/MGECU4からエンジン1にエンジン停止命令を送信し、エンジン1を自動で停止させる。車両は、この原動機停止装置によるエンジン1の自動停止によって、さらに一層燃費の悪化を防止する。
なお、この原動機停止装置によるエンジン1の自動停止時に、FI/MGECU4のMGECUで、エンジン自動始動条件を判断する。そして、エンジン自動始動条件が満たされると、FI/MGECU4からMOTECU5にエンジン始動命令を送信し、さらにMOTECU5からモータ2にエンジン1を始動させる命令を送信し、モータ2によってエンジン1を自動始動させると共に、強クリープ状態にする。なお、エンジン自動始動条件については、後で詳細に説明する(図5(c)参照)。また、故障検出装置DUでブレーキ力制御装置BCUの故障が検出されると、原動機停止装置の作動は禁止される。
【0019】
〔信号の説明〕
次に、このシステムにおいて送受信される信号について説明する。なお、図1中の各信号の前に付与されている「F_」は信号が0か1のフラグ情報であることを表し、「V_」は信号が数値情報(単位は任意)であることを表し、「I_」は信号が複数種類の情報を含む情報であることを表す。
【0020】
FI/MGECU4から制御手段CUでもあるCVTECU6に送信される信号について説明する。V_MOTTRQは、モータ2の出力トルク値である。F_MGSTBは、後で説明するエンジン自動停止条件の中でF_CVTOKの5つの条件を除いた条件が全て満たされているか否かを示すフラグであり、満たしている場合は「1」、満たしていない場合は「0」である。ちなみに、F_MGSTBとF_CVTOKが共に「1」に切換わるとエンジン1を自動停止し、どちらかのフラグが「0」に切換わるとエンジン1を自動始動する。
【0021】
FI/MGECU4からCVTECU6とMOTECU5に送信される信号について説明する。V_NEPは、エンジン1の回転数である。
【0022】
CVTECU6からFI/MGECU4に送信される信号について説明する。F_CVTOKは、CVT3が弱クリープ状態、CVT3のレシオ(プーリ比)がロー、CVT3の油温が所定値以上、ブレーキ液温が所定値以上及びブレーキ力制御装置BCUが正常(ブレーキ力制御装置BCUの電磁弁SV(図3参照)の駆動回路が正常も含む)の5つの条件が満たされているか否かを示すフラグであり、5つの条件が全て満たされている場合は「1」、1つでも条件を満たしていない場合は「0」である。なお、エンジン停止時には、CVT3が弱クリープ状態、CVT3のレシオがロー、CVT3の油温が所定値以上及びブレーキ液温が所定値以上の条件は維持され、F_CVTOKは、ブレーキ力制御装置BCUが正常か否かのみで判断される。すなわち、エンジン停止時、ブレーキ力制御装置BCUが正常の場合にはF_CVTOKは「1」、ブレーキ力制御装置BCUが故障の場合にはF_CVTOKは「0」である。F_CVTTOは、CVT3の油温が所定値以上か否かを示すフラグであり、所定値以上の場合は「1」、所定値未満の場合は「0」である。なお、このCVT3の油温は、CVT3の発進クラッチの油圧を制御するリニアソレノイド弁の電気抵抗値から推定する。F_POSRは、ポジションスイッチPSWのレンジがRレンジに選択されているか否かを示すフラグであり、Rレンジの場合は「1」、Rレンジ以外の場合は「0」である。F_POSDDは、ポジションスイッチPSWのレンジがDレンジかつモードスイッチMSWのモードがDモードに選択されているか否かを示すフラグであり、DモードDレンジの場合は「1」、DレンジDモード以外の場合は「0」である。なお、FI/MGECU4は、DレンジDモード、Rレンジ、Pレンジ、Nレンジを示す情報が入力されていない場合、DレンジSモード、Lレンジのいずれかが選択されていると判断する。
【0023】
エンジン1からFI/MGECU4とCVTECU6に送信される信号について説明する。V_ANPは、エンジン1の吸気管の負圧値である。V_THは、スロットルの開度であり、ちなみにV_TH=0のときはアクセルペダルが踏込まれていないスロットルTH[OFF]の状態で、V_TH>0のときはアクセルペダルが踏込まれているスロットルTH[ON]の状態である。V_TWは、エンジン1の冷却水温である。V_TAは、エンジン1の吸気温である。なお、エンジンルーム内に配置されているブレーキ力制御装置BCUのブレーキ液温は、この吸気温に基づいて推定する。両者ともエンジンルームの温度に関連して変化するからである。
【0024】
CVT3からFI/MGECU4とCVTECU6に送信される信号について説明する。V_VSP1は、CVT3内に設けられた2つの車速ピックアップの一方から出される車速パルスである。この車速パルスに基づいて、車速を算出する。
【0025】
CVT3からCVTECU6に送信される信号について説明する。V_NDRPは、CVT3のドライブプーリの回転数を示すパルスである。V_NDNPは、CVT3のドリブンプーリの回転数を示すパルスである。V_VSP2は、CVT3内に設けられた2つの車速ピックアップの他方から出される車速パルスである。なお、V_VSP2は、V_VSP1より高精度であり、CVT3の発進クラッチの滑り量の算出などに利用する。
【0026】
MOTECU5からFI/MGECU4に送信される信号について説明する。V_QBATは、バッテリの残容量である。V_ACTTRQは、モータ2の出力トルク値であり、V_MOTTRQと同じ値である。I_MOTは、電気負荷を示すモータ2の発電量などの情報である。なお、モータ駆動電力を含めこの車両で消費される電力は、全てこのモータ2で発電される。
【0027】
FI/MGECU4からMOTECU5に送信される信号について説明する。V_CMDPWRは、モータ2に対する出力要求値である。V_ENGTRQは、エンジン1の出力トルク値である。I_MGは、モータ2に対する始動モード、アシストモード、回生モードなどの情報である。
【0028】
マスターパワーMPからFI/MGECU4に送信される信号について説明する。V_M/PNPは、マスターパワーMPの定圧室の負圧検出値である。
【0029】
ポジションスイッチPSWからFI/MGECU4に送信される信号について説明する。ポジションスイッチPSWでNレンジ又はPレンジのどちらかが選択されている場合のみ、ポジション情報としてNかPが送信される。
【0030】
CVTECU6からCVT3に送信される信号について説明する。V_DRHPは、CVT3のドライブプーリのシリンダの油圧を制御するリニアソレノイド弁への油圧指令値である。V_DNHPは、CVT3のドリブンプーリのシリンダの油圧を制御するリニアソレノイド弁への油圧指令値である。なお、V_DRHPとV_DNHPにより、CVT3の変速比を変える。V_SCHPは、CVT3の発進クラッチの油圧を制御するリニアソレノイド弁への油圧指令値である。なお、V_SCHPにより、発進クラッチの係合力を変える。
【0031】
CVTECU6(制御手段CU)からブレーキ力制御装置BCUに送信される信号について説明する。V_SOLAは、ブレーキ力制御装置BCUの一方の電磁弁SVA(図3参照)へのブレーキ液圧保持司令値であり、V_SOLBは、ブレーキ力制御装置BCUの他方の電磁弁SVB(図3参照)へのブレーキ液圧保持司令値である。
電磁弁SVAは、例えば常時開型の比例電磁弁であれば、V_SOLA(電流値)がゼロのときに連通状態になり、V_SOLA(電流値)が最大のときに遮断状態になる。そして、流量制限状態ではV_SOLAは最大からゼロの間で変化する。電磁弁SVBについても電磁弁SVAと同じである。
【0032】
ポジションスイッチPSWからCVTECU6に送信される信号について説明する。ポジションスイッチPSWでNレンジ、Pレンジ、Rレンジ、Dレンジ又はLレンジのいずれの位置に選択されているかが、ポジション情報として送信される。
【0033】
モードスイッチMSWからCVTECU6に送信される信号について説明する。モードスイッチMSWでDモード(通常走行モード)かSモード(スポーツ走行モード)のいずれが選択されているかが、モード情報として送信される。なお、モードスイッチMSWは、ポジションスイッチPSWがDレンジに設定されている時に機能するモード選択スイッチである。
【0034】
ブレーキスイッチBSWからFI/MGECU4とCVTECU6に送信される信号について説明する。F_BKSWは、ブレーキペダルBPが踏込まれている(ON)か、踏込みが開放されているか(OFF)を示すフラグであり、ブレーキペダルBPが踏込まれている場合は「1」、踏込みが開放されている場合は「0」である。
【0035】
《駆動力制御装置》
〔駆動力制御装置の構成など〕
本実施の形態における駆動力制御装置DCUはCVT3に組込まれ、CVTECU6に内蔵される制御手段CUからの信号により、アイドリング時における駆動力を「大きい状態」にしたり「小さい状態」にしたりする。駆動力制御装置DCUによる駆動力の制御は、CVT3に組込まれている発進クラッチ(油圧多板式クラッチ)の油圧を制御することにより行なわれる。発進クラッチの油圧の値を小さくすれば、クラッチ板の押付け力が弱くなり、駆動力が弱クリープ状態において選択される「小さい状態」になる。油圧の値を大きくすれば、クラッチ板の押付け力が強くなり、駆動力が強クリープ状態において選択される「大きい状態」になる。
【0036】
駆動力が各状態における適正な値になっているか否かは、発進クラッチの滑り量などに基づいて判断され、例えば駆動力が適正な値よりも大きいと判断された場合は、発進クラッチの油圧の値を小さくすることにより駆動力を適正な値にすることができる。ちなみに、トルクコンバータ付きの有段自動変速機においての駆動力の制御は、発進時に使用される油圧クラッチの油圧を制御することによりCVT3の場合と同様に行なうことができる。
【0037】
〔駆動力制御装置の基本制御〕
次に、駆動力制御装置DCUの基本制御について説明する。
駆動力制御装置DCUは、所定車速以下でアクセルペダルの踏込みが開放されている状態でも変速機において走行レンジが選択されている場合は、原動機から駆動輪へ駆動力を伝達すると共に、ブレーキペダルBPの踏込みの状態により、ブレーキペダルBPが踏込まれているときは駆動輪に伝達する駆動力を「小さい状態」にし、ブレーキペダルBPが踏込まれていないときは駆動力を「大きい状態」にする。ブレーキペダルBPが踏込まれているか否かはブレーキスイッチBSWの信号から制御手段CUが判断する。
【0038】
このようにブレーキペダルBPの踏込み時に駆動力を「小さい状態」にするのは、ドライバに強くブレーキペダルBPを踏込ませて仮にエンジン1による駆動力が消滅しても坂道で停止する際に自重により車両が後ずさりしないようするためである。一方、ブレーキペダルBPの踏込み開放時に駆動力を「大きい状態」にするのは、車両の発進や加速などに備えるほかブレーキ力によらないでもある程度の坂道に抗することができるようにするためである。また、駆動力を「小さい状態」にするのは、エンジン1の負荷を低減すると共に、発進クラッチの油圧ポンプの負荷を低減して燃費を節減するためでもある。
【0039】
なお、本実施の形態においては、アクセルペダルが踏込まれ、かつ変速機において走行レンジが選択されているときは、駆動力制御装置DCUは、ブレーキペダルBPの踏込み状態にかかわらず発進クラッチのクラッチ板の押付け力をさらに強くして、駆動力を「大きい状態以上」にする。この場合、発進クラッチにおける滑りは全くないかわずかである。
このように駆動力を「大きい状態以上」にすることは、アクセルペダルを踏込むことにより駆動力の増強を望むドライバの意志に適い、また、例えば右足でアクセルペダルを踏込むと同時に左足でブレーキペダルBPを踏込み、駆動力を高めてからブレーキペダルBPの踏込みを開放して発進するドライバに対応することができる。
【0040】
上記した駆動力制御装置DCUの基本制御の一例を、図2のフローチャートに示す。このフローチャートでは、変速機の走行レンジを検知して判断し(J1)、走行レンジにない場合は発進クラッチの接続を行わず(駆動力ゼロの状態を保持)、走行レンジにある場合はアクセルペダルの踏込みを検知して判断し(J2)、これが踏込まれているときは駆動力を「大きい状態以上」にする。一方、アクセルペダルが踏込まれていないときは車速を検知して判断し(J3)、車速が所定車速以下になければ駆動力を「大きい状態以上」にする。そして、車速が所定車速以下であればブレーキペダルBPの踏込みを検知して判断し(J4)、これが踏込まれていない場合は駆動力を「大きい状態」にし、踏込まれている場合は駆動力を「小さい状態」にする。
【0041】
《ブレーキ力制御装置》
〔ブレーキ力制御装置の構成〕
ブレーキ力制御装置は、ブレーキペダルBPの踏込み開放後も引続き車両にブレーキ力を保持することができると共に、保持したブレーキ力を漸減解除することのできるブレーキ力保持手段を備える。
本実施の形態におけるブレーキ力制御装置BCUは、図3に示すように、液圧式ブレーキ装置BKのブレーキ液圧通路FP内に組込まれ、マスタシリンダMCとホイールシリンダWC間のブレーキ液圧通路FPを連通する連通状態と該ブレーキ液圧通路FPを遮断してホイールシリンダWCのブレーキ液圧を保持する遮断状態とに切換わるブレーキ力保持手段RUたる電磁弁SVを有する。加えて、この電磁弁SVは、ブレーキ液の流れに対して流量制限を行なう流量制限状態に切換わることができる。流量制限状態に切換わることにより、遮断状態で保持されたブレーキ液圧(ブレーキ力)をブレーキ液の流れとして徐々に開放することで、ブレーキ力を漸減解除する。
【0042】
先ず、液圧式ブレーキ装置BKの説明を行う(図3参照)。液圧式ブレーキ装置BKのブレーキ液圧回路BCは、マスタシリンダMCとホイールシリンダWCとこれを結ぶブレーキ液圧通路FPよりなる。ブレーキは安全走行のために極めて重要な役割を有するので、液圧式ブレーキ装置BKはそれぞれ独立したブレーキ液圧回路を2系統設け(BC(A)、BC(B))、一つの系統が故障したときでも残りの系統で最低限のブレーキ力が得られるようになっている。
【0043】
マスタシリンダMCの本体にはピストンMCPが挿入されており、ドライバがブレーキペダルBPを踏込むことによりピストンMCPが押されてマスタシリンダMC内のブレーキ液に圧力が加わり機械的な力がブレーキ液圧(ブレーキ液に加わる圧力)に変換される。ドライバがブレーキペダルBPから足を放して踏込みを開放すると、戻しバネMCSの力でピストンMCPが元に戻され、同時にブレーキ液圧も元に戻る。図3に示すマスタシリンダMCは、独立したブレーキ液圧回路BCを2系統設けるというフェイルアンドセーフの観点から、ピストンMCPを2つ並べてマスタシリンダMCの本体を2分割した、タンデム式のマスタシリンダMCである。
【0044】
プレーキペダルBPの操作力を軽くするために、ブレーキペダルBPとマスタシリンダMCの間にマスターパワーMP(ブレーキブースタ)が設けられる。図3に示すマスターパワーMPは、バキューム(負圧)サーボ式のものであり、エンジン1の吸気マニホールドから負圧を取出して、ドライバによるブレーキペダルBPの操作を容易にしている。
【0045】
ブレーキ液圧通路FPは、マスタシリンダMCとホイールシリンダWCを結び、マスタシリンダMCで発生したブレーキ液圧を、ブレーキ液を移動させることによりホイールシリンダWCに伝達する流路の役割を果たす。また、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧の方が高い場合には、ホイールシリンダWCからマスタシリンダMCにブレーキ液を戻す流路の役割を果す。ブレーキ液圧回路BCは前記のとおりそれぞれ独立したものが設けられるため、ブレーキ液圧通路FPもそれぞれ独立のものが2系統設けられる。図3に示すブレーキ液圧通路などにより構成されるブレーキ液圧回路BCは、一方のブレーキ液圧回路BC(A)が右前輪と左後輪を制動し、他方のブレーキ液圧回路BC(B)が左前輪と右後輪を制動するX配管方式のものである。なお、ブレーキ液圧回路はX配管方式ではなく、一方のブレーキ液圧回路が両方の前輪を他方のブレーキ液圧回路が両方の後輪を制動する前後分割方式とすることもできる。
【0046】
ホイールシリンダWCは車輪8ごとに設けられ、マスタシリンダMCにより発生しブレーキ液圧通路FPを通してホイールシリンダWCに伝達されたブレーキ液圧を、車輪8を制動するための機械的な力(ブレーキ力)に変換する役割を果す。ホイールシリンダWCの本体には、ピストンが挿入されており、このピストンがブレーキ液圧に押されて、ディスクブレーキの場合はブレーキパッドをドラムブレーキの場合はブレーキシューを作動させて、車輪8を制動するブレーキ力を作り出す。
なお、上記以外に前輪のホイールシリンダWCのブレーキ液圧と後輪のホイールシリンダWCのブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御バルブなどが、必要に応じて設けられる。
【0047】
次に、ブレーキ力制御装置BCUの説明を行う(図3参照)。ブレーキ力制御装置BCUは、電磁弁SV並びに必要に応じてチェック弁CVを備え、マスタシリンダMCとホイールシリンダWCを結ぶブレーキ液圧通路FPに組込まれる。
【0048】
電磁弁SV(ブレーキ力制御手段RU)は制御手段CUからの電気信号により作動するが、この電磁弁SVはブレーキ液の流れを遮断する遮断状態と、ブレーキ液の流れを許容する連通状態、そして、ブレーキ液の流れに対して流量制限を行なう流量制限状態の3つの状態を有する。
1)電磁弁SVが遮断状態に切換わるときはブレーキ液の流れを一気に遮断して、ホイールシリンダWCに加えられたブレーキ液圧をブレーキ力として保持する。電磁弁SVが遮断状態にある限りは、ブレーキ力はずっと保持される。2)電磁弁SVが連通状態に切換わるときはブレーキ液の流れを一気に許容して、ブレーキ力を瞬時に解除する。電磁弁SVが連通状態にある限りは、ブレーキ力が保持されることはない。3)電磁弁SVが流量制限状態に切換わるときは、ホイールシリンダWCからマスタシリンダMCへのブレーキ液の流れに対して流量制限を行ない、ブレーキ力を漸時減少させて解除、つまりブレーキ力を漸減解除する。
電磁弁SVが連通状態から遮断状態に切換わる際には、流量制限状態を経由することなく切換わる。一方、電磁弁SVが遮断状態から連通状態に切換わる際には、流量制限状態を経由して切換わる場合と、流量制限状態を経由することなく切換わる場合の二通りがある。
【0049】
流量制限を行なうことができる電磁弁SVとしては、比例電磁弁などがある。比例電磁弁(図3の電磁弁SV)は、一例として、弁に内蔵するバネSによる付勢力と印加されるパイロット圧に受圧面積を掛け合わせた積との和(以下「付勢力等」という)が、弁に内蔵する電磁コイル(図示外)により生ずる電磁力と均衡するように弁の開閉を繰返す。比例電磁弁が常時開型のものであれば、付勢力等が電磁力よりも大きければ弁が開いて連通状態になる。連通状態は電磁力>付勢力等になるまで持続される。一方、付勢力等が電磁力よりも小さければ弁が閉じて遮断状態になる。遮断状態は電磁力<付勢力等になるまで持続される。
ここでパイロット圧は、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧である。
【0050】
比例電磁弁の電磁力は、電磁コイルに供給される電流値により変化させることができる。常時開型の比例電磁弁の場合、電流値が最大の遮断位置から電流値を徐々に低下させて行けば電磁力も徐々に弱まるため、付勢力等と電磁力との釣合いで、比例電磁弁を通過する流体の流量制限を行なうことができる(流量制限状態)。なお、常時開型の比例電磁弁の場合、電磁コイルに供給される電流値がゼロの場合が連通状態である。
本実施の形態においては電磁弁SVが比例電磁弁であることを前提とするが、必ずしも比例電磁弁に限定されるものではなく、前記説明した遮断状態、連通状態、流量制限状態を作り出せるものであれば弁の種類は問わない。ちなみに、図3に示す2つの電磁弁SV・SVは共に連通状態にあることを示す。この電磁弁SVにより、登坂発進時にドライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放した場合でも、ホイールシリンダWCにブレーキ液圧が保持され(つまりブレーキ力が保持され)、車両の後ずさりを防止することができる。なお、後ずさりとは、車両の自重によりドライバが進もうとする方向とは逆の方向に車両が進んでしまうこと(坂道を下ってしまうこと)を意味する。
【0051】
電磁弁SVには、通電時に連通状態になる常時閉型と通電時に遮断状態になる常時開型があるが、いずれの電磁弁を使用することもできる。ただし、フェイルアンドセーフの観点からは、常時開型の電磁弁が好ましい。故障などにより通電が絶たれた場合に、常時閉型の電磁弁では、ブレーキが効かなくなったり逆にブレーキが効きっぱなしになったりするからである。本実施の形態においては、電磁弁SVが常時開型のものであることを前提として説明する。
【0052】
ここで、通常の操作において電磁弁SVが遮断状態になるのは、車両が停止したときから発進するまでの間であるが、どのような場合に(条件で)電磁弁SVが遮断状態になるのか、連通状態になるのか、あるいは流量制限状態になるのかは後に説明する。なお、流量制限状態では、電磁弁SVがホイールシリンダWCに閉じ込められたブレーキ液を徐々にマスタシリンダMC側に逃がし、ブレーキ力を徐々に低下させる(ブレーキ力の漸減解除)。
ブレーキ力を漸減解除することで、徐々に低下するブレーキ力と原動機の駆動力とのバランスにより坂道において車両の後ずさりを防止しながら滑らかな車両発進(登坂発進)を図ることが可能になる。また、下り坂では、ドライバがアクセルペダルを踏込むことなくブレーキペダルBPの踏込みを開放するだけで、唐突感を与えることなく滑らかに車両を発進させることができる。
【0053】
流量制限状態において、電磁弁SVによるホイールシリンダWCのブレーキ液圧を低下させる速度(ブレーキ力を漸減解除する速度)は、例えば、上り坂などでドライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放してドライバの操作により駆動力が発生するまでの間(あるいは駆動力が強クリープ状態になるまでの間)、車両の後ずさりを防ぐことができることに加えて、下り坂においてもドライバに唐突感を与えない滑らかな発進を達成することができるものにする。
なお、ブレーキ力を漸減解除する速度が速いと、ブレーキペダルBPの踏込みを開放すると直ぐにブレーキ力がなくなり、充分な駆動力を得るまでに車両が坂道を後ずさりしてしまう。また、下り坂での発進時において唐突感を与えることがある。逆に、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧を低下させる速度が遅い場合は、ブレーキペダルBPの踏込みを開放してもブレーキが良く効いた状態が続くため車両の後ずさりはなくなるが、ブレーキ力に抗する駆動力を確保するために、余分な時間や動力を要することになり好ましくない。また、下り坂での発進にも手間取ることになる。
ブレーキ力を漸減解除する速度や漸減解除のパターン(経路)などは、制御手段CUに基づいて電磁弁SVに供給される電流値の低下速度や電流値の低下パターンにより任意のものとすることができる。
【0054】
次に、チェック弁CVは必要に応じて設けられるが、このチェック弁CVは電磁弁SVが遮断状態にあり、かつドライバがブレーキペダルBPを踏増しした場合に、マスタシリンダMCで発生したブレーキ液圧をホイールシリンダWCに伝える役割を果す。チェック弁CVは、マスタシリンダMCで発生したブレーキ液圧がホイールシリンダWCのブレーキ液圧を上回る場合に有効に作動し、ドライバのブレーキペダルBPの踏増しに対応して迅速にホイールシリンダWCのブレーキ液圧を上昇させる。これによりブレーキ力を増すことができる。
なお、マスタシリンダMCのブレーキ液圧がホイールシリンダWCのブレーキ液圧よりも上回った場合に一旦閉じた電磁弁SVが連通状態になるような構成とすれば、電磁弁SVのみでブレーキペダルBPの踏増しに対応することができるのでチェック弁CVを設ける必要はまったくない。つまり、マスタシリンダMC側のブレーキ液圧値とホイールシリンダWC側のブレーキ液圧値を検出し、前者のブレーキ液圧値が後者のブレーキ液圧値を上回った場合に電磁弁SVが連通状態になる構成とすることで、チェック弁CVを不要とすることができる。
【0055】
本実施の形態においては、リリーフ弁を特に設ける必要はない。ブレーキペダルBPの踏込み開放時に、電磁弁SVの電磁コイルに供給する電流値を制御することにより、リリーフ弁の役割を兼ねさせることができるからである。
【0056】
なお、図3(及び図1)でブレーキスイッチBSWは、ブレーキペダルBPが踏込まれているか否かを検出する。この検出値と、アクセルペダルの踏込み状態の検出値に基づいて、制御手段CUが電磁弁SVの連通状態・遮断状態・流量制限状態の切換え指示を行う。
【0057】
〔ブレーキ力制御装置の基本制御〕
次に、本実施の形態におけるブレーキ力制御装置BCUの基本制御について説明する。
1) 先ず、ブレーキ力制御装置BCUは、ブレーキペダルBPの踏込み開放後も引続きブレーキ力を保持する。電磁弁SVが遮断状態になる条件は、車両停止時ブレーキペダルBPが踏込まれていることである。
▲1▼「車両停止時」という条件は、車速が速いときに電磁弁SVを遮断状態に切換えてしまうとドライバが望む位置に車両を停止できなくるおそれがあるが、車両が停止している状態であれば電磁弁SVを遮断状態にしてもドライバの操作に与える支障はないという理由による。車両停止時には、車両が停止する直前の状態を含む。
また、▲2▼「ブレーキペダルBPが踏込まれている」という条件は、ブレーキペダルBPが踏込まれていない状況では電磁弁SVを遮断状態にしてもブレーキ力が保持されることがないので、電磁弁SVを遮断状態にする意味がないという理由による。
なお、前記▲1▼▲2▼の他に、ブレーキ液圧を保持する際に駆動力が「小さい状態」になっていることを電磁弁SVが遮断状態に切換わる条件に加えると、ドライバは強くブレーキペダルBPを踏込むため坂道においてしっかりと停止することができる。また、燃費の節減を図ることもできる。この駆動力が「小さい状態」には、駆動力がゼロの状態及びエンジン1が停止している状態を含む。
【0058】
2) そして、ブレーキ力制御装置BCU(ブレーキ力保持手段RU)は、ブレーキペダルBPの踏込み開放後、駆動力が「大きい状態」まで増加した後にブレーキ力を漸減解除する。つまり、電磁弁SVがブレーキ力を漸減解除すべく流量制限状態に切換わる条件は、ブレーキペダルBPの踏込み開放後、かつ駆動力が「大きい状態」にまで増加した後である。
▲1▼「ブレーキペダルBPの踏込み開放」という条件は、ブレーキペダルBPの踏込み開放によりドライバに車両を発進させる意図のあることが推認できるという理由による。
また、▲2▼「駆動力が大きい状態にまで増加」という条件は、駆動力が「大きい状態」であれば、電磁弁SVが流量制限状態に切換わり最終的にブレーキ力がなくなっても強クリープ状態における駆動力により坂道に抗することができるという理由による。ここで、「増加」とあるのは、電磁弁SVが遮断状態にあるとき、燃費の向上などの理由により駆動力を「小さい状態」にしていることがあるという理由による。したがって、駆動力が「小さい状態」にあるときはこれを「大きい状態」にまで増加して、強クリープ状態における駆動力により坂道に抗する。
ブレーキ力を漸減解除することにより、上り坂(登坂路)においてはブレーキ力を一気に解除するのと異なり、徐々に低減するブレーキ力によって車両の後ずさりを防止しつつ滑らかな発進操作を行なうことができる。また、平地においても、徐々に低減するブレーキ力により滑らかな車両の発進を行なうことができる。そして特に、車両自体の発進駆動力だけでなく、車両の自重による移動力がさらに加わる下り坂では、発進の際にブレーキ力が一気に解除されるとドライバに唐突感を与え易いが、ブレーキ力を漸減解除することにより唐突感がなくなり滑らかな発進が可能となる。
【0059】
3) 前記1)、2)の制御に加えて、本実施の形態のブレーキ力制御装置BCUは、アクセルペダルの踏込み操作が検出された時、ブレーキ力を一気に解除する制御を行なう。つまり、アクセルペダルが踏込まれた時に電磁弁SVを連通状態に切換える。
「アクセルペダルが踏込まれた時」にブレーキ力を一気に解除するのは、ブレーキの引きずりをなくしてアクセルペダルの踏込みに応じた駆動力による発進を可能とするためである。なお、ドライバがアクセルペダルを踏込むことにより電磁弁SVが一気に連通状態に切換わっても、ドライバに唐突感を与えることはない。アクセルペダルを踏込むことにより、ドライバには、車両の発進に対する心理的な準備ができているからである。さらに、通常、ブレーキペダルBPの踏込みを開放してアクセルペダルを踏込む際(ペダルの踏替え)には、ドライバはブレーキペダルBPの踏込みの開放を一気に行ない、そしてアクセルペダルを踏込む。したがって、ブレーキ力が一気に解除されても通常行なわれる動作と変わるところがなく、ドライバが唐突感を受けることはない。
ここで、電磁弁SVの連通状態への切換えは、電磁弁SVが遮断状態にあるか流量制限状態にあるかは問わない、アクセルペダルの踏込みが開始された時点である。
【0060】
《具体的な車両の制御》
次に、本実施の形態における車両においてどのような制御がなされるのかを具体的に説明する(図4、図5参照)。
〔ブレーキ力が保持される場合〕
先ず、ブレーキ力制御装置BCUによりブレーキ力が保持される場合を説明する。電磁弁SVが遮断状態になりブレーキ力が保持されるのは、図4(a)に示すように、I)車両の駆動力が弱クリープ状態になり、かつ、II)車速が0km/hになった場合である。この条件を満たすときに、電磁弁SVが遮断状態になり、ホイールシリンダWCにブレーキ液圧が保持される(ブレーキ力の保持)。なお、駆動力が弱クリープ状態(F#WCRON=1)になるのは弱クリープ指令(F#WCRP=1)が発せられた後であるが、弱クリープ指令が発せられるのはブレーキペダルBPの踏込みを前提とする(図2、図4(a)参照)。クリープ状態の切換えは、CVT3に組込まれた駆動力制御装置DCUにより行なわれる。
【0061】
I) 上記した「弱クリープ状態」という条件は、坂道においてドライバに充分強くブレーキペダルBPを踏込ませるという理由による。すなわち、強クリープ状態は、例えば傾斜5度の坂道でも車両が後ずさりしないような駆動力を有しているので、ドライバはブレーキペダルBPを強く踏込まないでも坂道で車両を停止させることができる。したがって、ドライバがブレーキペダルBPを弱くしか踏込んでいない場合がある。このような場合に、電磁弁SVを遮断状態にし、さらにエンジン1を止めてしまうと車両が坂道を後ずさりしてしまうからである。
なお、ここでは「弱クリープ状態」を電磁弁SVが遮断状態になる条件としているが、「弱クリープ状態」に代えて「弱クリープ状態」になる基本条件である「ブレーキペダルBPの踏込み(ブレーキSW[ON])」を、電磁弁SVが遮断状態になる条件としてもよい。この場合は、駆動力が「弱クリープ状態」であるか「強クリープ状態」であるかを問わずに、電磁弁SVが遮断状態になってブレーキ力が保持される。
【0062】
II) 「車速が0km/h」であるという条件は、走行中に電磁弁SVを閉じたのでは、任意の位置に車両を停止することができなくなるという理由による。なお、車速が0km/hとは「車両停止時」を意味するが、車両が停止する直前の状態を含む。
【0063】
a) 弱クリープ指令が発せられる条件;
弱クリープ指令(F_WCRP)は、図4(a)に示すように、1)ブレーキ力制御装置BCUが正常であること、2)ブレーキ液温所定値以上であること(F_BKTO)、3)ブレーキペダルBPが踏込まれてブレーキスイッチBSWがONになっていること(F_BKSW)、4)車速が5km/h以下になっていること(F_VS)、5)ポジションスイッチPSWがDレンジであること(F_POSD)、6)アクセルペダルの踏込みが開放されておりスロットルがOFFになっていること(V_TH=0)、の各条件がすべて満たされた場合に発せられる。なお、駆動力を弱クリープ状態にするのは、前記したようにドライバにブレーキペダルBPを強く踏込ませるためという理由に加えて、燃費を向上させるためという理由もある。
以下、1)〜6)の条件を説明する。
【0064】
1) ブレーキ力制御装置BCUが正常でない場合に弱クリープ指令が発せられないのは、例えば、電磁弁SVが遮断状態にならないなどの異常がある場合に弱クリープ指令が発せられて弱クリープ状態になると、ホイールシリンダWCにブレーキ液圧が保持されないために、発進時にドライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放すると一気にブレーキ力がなくなり車両が坂道を後ずさりしてしまうからである。この場合、強クリープ状態を保つことで、坂道での後ずさりを防止して坂道発進(登坂発進)を容易にする。
【0065】
2) ブレーキ液温所定値未満で弱クリープ指令が発せられないのは、ブレーキ液温が低い場合にブレーキ力制御装置BCUを作動させて電磁弁SVを遮断状態にし、その後流量制限状態に切換えると、ブレーキ液の粘性が高いためホイールシリンダWCのブレーキ液圧の低下速度が極端に遅くなることがあり、いつまでもブレーキ力が強い状態に保持されたままになってしまうことがあるからである。このように、ブレーキ液温が低い場合には、弱クリープ状態になることを禁止して、強クリープ状態を維持し、坂道での後ずさりを防止する。
なお、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧などを検出してブレーキ液の流量を加減できる構成を備えるブレーキ力制御装置BCUの場合は、ブレーキ液温がある程度低い場合でも所定のブレーキ液の流量を確保することができるため、弱クリープ指令を発することができる。
【0066】
3) ブレーキペダルBPが踏込まれていないときに弱クリープ指令が発せられないのは、ドライバは少なくとも駆動力の低下を望んでいないからである。
【0067】
4) 車速が5km/h以上で弱クリープ指令が発せられないのは、発進クラッチを経由して駆動輪8・8からの逆駆動力をエンジン1やモータ2に伝達してエンジンブレーキを効かしたり、モータ2による回生発電を行なわせることがあるからである。したがって、車速5km/h以下を条件とした。なお、車速が5km/h以下とは、「所定車速以下」を意味する。
【0068】
5) ポジションスイッチPSWがDレンジである場合と異なり、ポジションスイッチPSWがRレンジ又はLレンジでは、弱クリープ指令は発せられない。強クリープ走行による車庫入れなどを容易にするためである。
【0069】
6) アクセルペダルが踏込まれていないとき(スロットルTH[OFF])に弱クリープ指令が発せられないのは、ドライバはアクセルペダルの踏込みにより駆動力の増加を望んでいるからである。
【0070】
弱クリープ状態であるか否かは発進クラッチに対する油圧指令値により判定する。弱クリープ状態であるフラグF_WCRPONは、次に強クリープ状態になるまで立ちつづける。
【0071】
b) エンジンの自動停止条件;
ブレーキ液圧が保持される条件とは直接的には関係ないが、本実施の形態における車両は燃費をさらに向上させるため、車両の停止時にはエンジン1が原動機自動停止装置により自動停止される。この条件を説明する。以下の各条件がすべて満たされた場合にエンジン停止指令(F_ENGOFF)が発せられ、エンジン1が自動的に停止する(図4(b)参照)。
【0072】
1) ポジションスイッチPSWがDレンジでありモードスイッチMSWがDモード(以下この状態を「DレンジDモード」という)であること; DレンジDモード以外では、イグニッションスイッチを切らない限りエンジン1は自動停止しない。例えば、ポジションスイッチPSWがPレンジやNレンジの場合にエンジン1を自動的に停止させる指令を発せられてエンジン1が自動停止すると、ドライバは、イグニッションスイッチが切られたものと思いこんで車両を離れてしまうことがあるからである。
なお、ポジションスイッチPSWがDレンジでありモードスイッチMSWがSモード(以下この状態を「DレンジSモード」という)の場合は、エンジン1の自動停止を行なわない。ドライバは、DレンジSモードでは、素早い車両の発進などが行えることを期待しているからである。また、ポジションスイッチPSWがLレンジ、Rレンジの場合にエンジン1の自動停止が行なわれないのは、車庫入れなどの際に頻繁にエンジン1が自動停止したのでは煩わしいからである。
【0073】
2) ブレーキペダルBPが踏込まれてブレーキスイッチBSWがONの状態であること; ドライバに注意を促すためである。エンジン1が自動停止しても、ブレーキスイッチBSWがONの場合はブレーキペダルBPが踏込まれており坂道に停止するための充分なブレーキ力があると思われるが、充分なブレーキ力がない場合でも、ドライバはブレーキペダルBPに足を置いた状態にある。したがって、仮に、エンジン1の自動停止により駆動力がなくなってしまい車両が坂道を後ずさりし始めても、ドライバは、ブレーキペダルBPの踏増しを容易に行い得るからである。
【0074】
3) エンジン始動後、一旦車速が5km/h以上に達したこと; クリープ走行での車庫出し・車庫入れを容易にするためである。車両を車庫から出し入れする際の切返し操作などで、停止するたびにエンジン1が自動停止したのでは煩わしいからである。
【0075】
4) 車速0km/hであること; 停止していれば駆動力は必要がないからである。この0km/hという車速には、車両が停止する直前の状態が含まれる。
5) バッテリ容量が所定値以上であること; エンジン1の自動停止後、モータ2でエンジン1を再始動することができないという事態を防止するためである。
6) 電気負荷所定値以下であること; 負荷への電気の供給を確保するためである。電気負荷が所定値以下であれば、エンジン1を自動停止しても支障はない。
【0076】
7) マスターパワーMPの定圧室の負圧が所定値以上であること; 定圧室の負圧が小さい状態でエンジン1を停止すると、定圧室の負圧はエンジン1の吸気管より導入しているため、定圧室の負圧はさらに小さくなり、ブレーキペダルBPを踏込んだ場合の踏込み力の増幅が小さくなりブレーキの効きが低下してしまうからである。
【0077】
8) アクセルペダルが踏込まれていないこと; アクセルペダルが踏込まれていない状態(スロットルTH[OFF])では、ドライバは駆動力の増強を望んでおらず、エンジン1を自動停止しても支障がない。
【0078】
9) CVT3が弱クリープ状態であること(駆動力が小さい状態であること); ドライバに強くブレーキペダルBPを踏込ませて、エンジン1の自動停止後も車両が後ずさりするのを防ぐためである。すなわち、エンジン1が始動している場合、坂道での後ずさりはブレーキ力とクリープ力の合計で防止される。このため、強クリープ状態ではドライバがブレーキペダルBPの踏込みを加減して弱くしか踏込んでいない場合がある。したがって、弱クリープ状態にしてからエンジン1の自動停止を行う。
【0079】
10) CVT3のレシオがローであること; CVT3のレシオ(プーリ比)がローでない場合は、円滑な発進ができない場合があるため、エンジン1の自動停止は行わない。したがって、円滑な発進のためCVT3のレシオがローである場合に、エンジン1の自動停止を行う。
【0080】
11) エンジン1の水温が所定値以上であること; エンジン1の自動停止・始動はエンジン1が安定している状態で行うのが好ましいからである。水温が低いと寒冷地ではエンジン1が再始動しない場合があるため、エンジン1の自動停止を行わない。
【0081】
12) CVT3の油温が所定値以上であること; CVT3の油温が低い場合は、発進クラッチの実際の油圧の立ち上りに後れを生じ、エンジン1の始動から強クリープ状態になるまでに時間がかかり、坂道で車両が後ずさりする場合があるため、エンジン1の停止を禁止する。
【0082】
13) ブレーキ液の温度が所定値以上であること; ブレーキ液の温度が低い場合は、流量制限状態における電磁弁SVでの流体抵抗が大きくなり、ブレーキ力を漸減解除する際に所定のブレーキ液の流量を確保することができないおそれがあるからである。このためブレーキ力制御装置BCUは作動させない(流量制限状態にはしない)。したがって、エンジン1の停止及び弱クリープ状態を禁止して強クリープ状態の駆動力により坂道での後ずさりを防止する。
なお、ブレーキ力制御装置BCUがホイールシリンダWCのブレーキ液圧などを検出してブレーキ液の流量を加減できる構成のものであれば、ブレーキ液の温度がある程度低くてもブレーキ力を漸減解除する際に所定のブレーキ液の流量を確保することができるため、ブレーキ力制御装置BCUを作動させるとともに、エンジン1の停止を行なうことができる。
【0083】
14) ブレーキ力制御装置BCUが正常であること; ブレーキ力制御装置BCUに異常がある場合は、ブレーキ液圧を保持することができないことがあるので、強クリープ状態を継続させて、坂道で車両が後ずさりしないようにする。したがって、ブレーキ力制御装置BCUに異常がある場合は、エンジン1の自動停止を行わない。一方、ブレーキ力制御装置BCUが正常であれば、エンジン1の自動停止を行なっても支障がない。
【0084】
〔ブレーキ力が漸減解除される場合〕
遮断状態にある電磁弁SVは、図5(a)に示すように、▲1▼ブレーキペダルBPの踏込みが開放され、かつ▲2▼駆動力が強クリープ状態になった場合に流量制限状態に切換わり、ブレーキ力制御装置BCUによるブレーキ力が漸減解除される。なお、この条件は、「駆動力が大きい状態まで増加しかつブレーキペダルの踏込み開放後に」ということである。つまり、車両停止時も強クリープ状態が保持されている場合は、ブレーキペダルBPの踏込み開放により電磁弁SVが流量制限状態になる。
【0085】
ブレーキペダルBPの踏込みが開放されかつ駆動力が強クリープ状態になると電磁弁SVを流量制限状態に切換えるのは、駆動力がゼロかほとんどない弱クリープ状態と異なり、強クリープ状態は例えば5度の坂道に抗して車両を停止させることができるような駆動力を備えるため、ブレーキ液圧の保持を解除して最終的にブレーキ力が消滅しても車両の後ずさりが防止されるからである。
【0086】
クリープの駆動力が強クリープ状態になるのは強クリープ指令(F_SCRP)が発せられた後であるが、本実施の形態において強クリープ指令は、DレンジにおいてブレーキペダルBPの踏込みが開放されるか、アクセルペダルが踏込まれた場合に発せられる(図5(b)参照)。ブレーキペダルBPの踏込みの開放が条件となっているのは、ブレーキペダルBPの踏込み開放により発進操作が開始されたと判断されるためである。
なお、流量制限状態に切換わった電磁弁SVは、ブレーキ力が漸減解除された後に連通状態に切換わる。
【0087】
〔エンジンの自動始動条件〕
エンジン1の自動停止後、エンジン1は以下の条件のいずれかを満たす場合に自動的に始動されるが、この条件を説明する(図5(c)参照)。
【0088】
1) DレンジDモードであり、かつブレーキペダルBPの踏込みが開放されたこと; ドライバの発進操作が開始されたと判断されるため、エンジン1を自動始動する。
【0089】
2) DレンジSモードに切替えられた場合; DレンジDモードでエンジン1が自動停止した後DレンジSモードに切替えると、エンジン1は自動始動する。ドライバはDレンジSモードでは素早い発進を期待するからであり、ブレーキペダルBPの踏込みの開放を待つことなくエンジン1を自動始動する。
【0090】
3) アクセルペダルが踏込まれた場合(スロットルTH[ON]); ドライバは、エンジン1による駆動力を期待しているからである。
【0091】
4) Pレンジ、Nレンジ、Lレンジ、Rレンジに切替えられた場合; DレンジDモードでエンジン1が自動停止した後Pレンジなどに切替えると、エンジン1は自動始動する。Pレンジ又はNレンジに切替えた場合にエンジン1が自動始動しないと、ドライバはイグニッションスイッチを切ったものと思ったり、イグニッションスイッチを切る必要がないものと思って、そのまま車両から離れてしまうことがあり、フェイルアンドセーフの観点から好ましくないからである。このような事態を防止するため、エンジン1を自動始動する。また、Lレンジ、Rレンジに切替えられたときエンジン1を自動始動するのは、ドライバに発進の意図があると判断されるからである。
【0092】
5) バッテリ容量が所定値以下になった場合; バッテリ容量が所定値以上でなければエンジン1の自動停止はなされないが、一旦エンジン1が自動停止された後でもバッテリ容量が低減する場合がある。この場合は、バッテリに充電することを目的としてエンジン1が自動始動される。なお、所定の値は、これ以上バッテリ容量が低減するとエンジン1を自動始動することができなくなるという限界のバッテリ容量よりも高い値に設定される。
【0093】
6) 電気負荷が所定値以上になった場合; 例えば、照明などの電気負荷が稼動していると、バッテリ容量が急速に低減してしまい、エンジン1を自動始動することができなくなってしまうからである。したがって、バッテリ容量にかかわらず電気負荷が所定値以上である場合は、エンジン1を自動始動する。
【0094】
7) マスターパワーの負圧が所定値以下になった場合; マスターパワーMPの負圧が小さくなるとブレーキの制動力が低下するため、これを確保するためにエンジン1を再始動する。
【0095】
8) ブレーキ力制御装置が故障している場合; 電磁弁SVやその駆動回路などが故障している場合はエンジン1を自動始動して強クリープ状態を作り出す。エンジン1の自動停止後、電磁弁SVの駆動回路を含むブレーキ力制御装置BCUに故障が検出された場合は、発進時ブレーキペダルBPの踏込みが開放された際にブレーキ液圧を保持することができない場合があるので、強クリープ状態にすべく、故障が検出された時点でエンジン1を自動始動する。すなわち、強クリープ状態で車両が後ずさりするのを防止し、登坂発進を容易にする。
【0096】
〔ブレーキ力の保持が一気に解除される場合〕
遮断状態あるいは流量制限状態にある電磁弁SVは、図5(d)に示すように、I)アクセルペダルが踏込まれた場合、II)電磁弁SVが流量制限状態に切換わった後、あるいはブレーキペダルBPの踏込み開放後、所定の遅延時間が経過した場合、III)車速が5km/h以上になった場合、のいずれかの条件を満たすときに連通状態に切換わり、ブレーキ力制御装置BCUによるブレーキ力の保持が一気に解除される。
【0097】
I) アクセルペダルが踏込まれた場合(スロットルTH[ON])に電磁弁SVを連通状態に切換えるのは、アクセルペダルの踏込みにより駆動力が増加するため電磁弁SVを連通状態にしてブレーキ力の保持を解除しても坂道に抗することができると共に、ブレーキの引きずりをなくしてアクセルペダルの踏込みに応じて発生する駆動力により発進できるようにするためである。
【0098】
II) 遅延時間は、電磁弁SVが流量制限状態に切換わった際、あるいはブレーキペダルBPの踏込みが開放された際(ブレーキスイッチBSWがOFFになった場合)にカウントされ始める。遅延時間は2〜3秒を目安として適宜設定され、フェイルアンドセーフアクションとして電磁弁SVを連通状態に戻して、ブレーキの引きずりをなくする。電磁弁SVの流量制限状態における遅延時間と、ブレーキペダルBPの踏込み開放における遅延時間とは、同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0099】
III) 車速が5km/h以上になると電磁弁SVが連通状態になるのは、無駄なブレーキの引きずりをなくするためのフェイルアンドセーフアクションである。
【0100】
《制御のタイムチャート》
次に、本実施の形態の車両について、走行時を例にどのような制御が行われるのかを、4つの制御のタイムチャート(図6〜図9)を参照して説明する。
なお、図6と図7は車両停止時にエンジン1の自動停止を行なう車両における制御のタイムチャートであるが、このうち図7は車両発進時に「アクセルペダルの踏込みが行なわれる場合」のものである。また、図8と図9は車両停止時にエンジン1の自動停止を行なわない車両における制御のタイムチャートであるが、このうち図9は車両発進時に「アクセルペダルの踏込みが行なわれる場合」のものである。
【0101】
〔制御のタイムチャート1(アクセルペダルの踏込みなし)、図6参照〕
ドライバが発進時にアクセルペダルの踏込みを行なわない場合の制御のタイムチャートである(エンジン1の自動停止あり)。なお、この車両のポジションスイッチPSW及びモードスイッチMSWはDモードDレンジ(走行位置)で変化させないこととする。また、ブレーキ力制御装置BCUは、図3に示す構成のものである。
ここで、図6上段図は、車両の駆動力とブレーキ力の増減を時系列で示したタイムチャートである。図中太い線が駆動力を示し、細い線がブレーキ力を示す。図6下段図は、電磁弁SVの状態を示したタイムチャートである。
なお、電磁弁SVが遮断状態になる条件などは図4を参照して既に説明した通りであり、駆動力が強クリープ状態になる条件などは図5を参照して既に説明した通りである。
【0102】
先ず、図6において、車両走行時ドライバがブレーキペダルBPを踏込むと(ブレーキSW[ON])ブレーキ力が増して行く。減速のためにブレーキペダルBPを踏込む際には、ドライバはアクセルペダルの踏込みを開放するため、駆動力は減衰して行きやがて強クリープ状態になる(通常のアイドリング)。そして、継続してブレーキペダルBPが踏込まれて車速が5km/h以下になると、弱クリープ指令(F_WCRP)が発せられ、弱クリープ状態になり(F_WCRPON)、さらに駆動力が弱まる。
【0103】
そして、車速が0km/hになると電磁弁SVが遮断状態に切換わると共に、エンジン1が自動停止(F_ENGOFF)して駆動力がなくなる。電磁弁SVが遮断状態になることにより、ホイールシリンダWCにはブレーキ液圧が保持される(つまりブレーキ力が保持される)。また、エンジン1は弱クリープ状態を経て停止するので、ドライバは坂道でも車両が後ずさりしない程度に強くブレーキペダルBPを踏込んでいる。したがって、坂道でエンジン1が自動停止しても車両が後ずさりすることはない(後退抑制力)。仮に、後ずさりするようでもブレーキペダルBPを僅かに踏増しするだけで、後ずさりは防止される。ドライバはブレーキペダルBPを踏込んだ状態(ブレーキペダルBPに足を置いた状態)にいるので、慌てることなく容易にブレーキペダルBPの踏増しを行える。なお、エンジン1を自動停止するのは、燃費を向上させること及び排気ガスの発生をなくするためである。
【0104】
次に、ドライバが再発進のためブレーキペダルBPの踏込みを開放する。ブレーキペダルBPの踏込みが完全に開放されると(ブレーキSW[OFF])、エンジン自動始動指令(F_ENGON)が発せられ、信号通信及びメカ系の遅れによるタイムラグの後、エンジン1が自動始動する(ENG自動始動)。そして、駆動力が増して強クリープ状態になる(F_SCRPON)。ブレーキペダルBPの踏込みが開放されて(ブレーキスイッチBSWがOFFになって)から、強クリープ状態になるまでの間は、電磁弁SVが依然として遮断状態にあるのでブレーキ力は低減することがなく、上り坂であっても車両の後ずさりが防止される。
【0105】
そして、強クリープ状態(F_SCRPON)になれば坂道に抗することができる駆動力が生じているので、制御手段CUの判断に基づいてブレーキ力を漸減解除する。ここで、一気にブレーキ力を解除したのではドライバに唐突感を与えることがあるので、滑らかな発進を可能とするため、制御手段CUの指令に基づいてブレーキ力を漸減解除する。ブレーキ力を漸減解除する際には、電磁弁SVは流量制限状態に切換わる。流量制限状態にある電磁弁SVは、ブレーキ力が消滅した後に連通状態になる。
【0106】
ちなみに、図6上段図のブレーキ力を示す線において、「ブレーキペダルの踏込み開放」の部分から右斜め下に降下する仮想線はブレーキ液圧が保持されない場合を示し、この場合はブレーキペダルBPの踏込み力の低下に遅れることなくブレーキ力が一気に低下して消滅するので、登坂発進を容易に行うことはできない。なお、この仮想線はブレーキペダルBPの戻り状況を示すものでもある。次に、図6上段図のブレーキ力を示す線において、強クリープ状態が達成された時点(電磁弁SVが流量制限状態になった時点でもある)から右斜め下に低下して行く仮想線は、電磁弁SVがいきなり連通状態になった場合のブレーキ力の低減状況を示す。この仮想線に示すようにブレーキ力が低下して行くと、ドライバに唐突感を与えることがある。
【0107】
このように、駆動力が強クリープ状態になった時点でいきなり電磁弁SVを連通状態に切換えるのではなく、電磁弁SVを流量制限状態にしてブレーキ力を漸減解除することにより滑らかに車両を発進させることができる。
【0108】
〔制御のタイムチャート2(アクセルペダルの踏込みあり)、図7参照〕
ドライバが発進時にアクセルペダルの踏込みを行なう場合の制御のタイムチャートである(エンジン1の自動停止あり)。なお、この車両のポジションスイッチPSW及びモードスイッチMSWはDモードDレンジ(走行位置)で変化させないこととする。また、ブレーキ力制御装置BCUは、図3に示す構成のものである。
ここで、図7上段図は、車両の駆動力とブレーキ力の増減を時系列で示したタイムチャートである。図中太い線が駆動力を示し、細い線がブレーキ力を示す。図7下段図は、電磁弁SVの状態を示したタイムチャートである。
なお、電磁弁SVが遮断状態になる条件などは図4を参照して既に説明した通りであり、駆動力が強クリープ状態になる条件などは図5を参照して既に説明した通りである。
【0109】
ブレーキペダルの踏込みが開放されて強クリープ状態になるまでは、「制御のタイムチャート1」と同じなので説明を省略する。駆動力が強クリープ状態になると(F_SCRON)、滑らかな発進を可能とするため電磁弁SVが流量制限状態に切換わってブレーキ力が徐々に低減して行く。この際、ドライバが駆動力を増すためにアクセルペダルを踏込む(TH[ON])、すると流量制限状態にある電磁弁SVが制御手段CUの指令に基づいて連通状態に切換わり、ブレーキ力を一気に解除する。
ここで、アクセルペダルが踏込まれて(TH[ON])駆動力が増加している場合も引続いてブレーキ力を漸減解除すると、ブレーキの引っかかりを生じてしまうので好ましくないが、アクセルペダルの踏込みが行なわれた時点(TH[ON])で電磁弁SVを連通状態に切換える制御を行なうことで、ブレーキの引っかかりのないドライバの意に沿った車両の発進を行なうことができる。
【0110】
ちなみに、図7上段図のブレーキ力を示す線において、「ブレーキペダルの踏込み開放」の部分から右斜め下に降下する仮想線はブレーキ液圧が保持されない場合を示し、この場合はブレーキペダルBPの踏込み力の低下に遅れることなくブレーキ力が一気に低下して消滅するので、登坂発進を容易に行なうことができない。なお、この仮想線はブレーキペダルBPの戻り状況を示すものでもある。次に、図7上段図のブレーキ力を示す線において、強クリープ状態が達成された時点(電磁弁SVが流量制限状態になった時点でもある)から右斜め下に下降する仮想線は、電磁弁SVがいきなり連通状態になった場合のブレーキ力の低減状況を示す。この仮想線に示すようにブレーキ力が低下して行くと、ドライバに唐突感を与えることがある。そして、図7上段図のブレーキ力を示す線において、アクセルペダルが踏込まれた時点(TH[ON])から右斜め下に延びる曲線は、ブレーキ力が引続き漸減解除される場合のブレーキ力を示したものであり、このようにブレーキ力が低下して行くとブレーキの引きずりを生じるので好ましくない。
【0111】
このように、アクセルペダルが踏込まれた時点で電磁弁SVを連通状態に切換えることによりブレーキの引きずりを生じない車両の発進を行なうことができる。
【0112】
〔制御のタイムチャート3(アクセルペダルの踏込みなし)、図8参照〕
「制御のタイムチャート1」と同様に、ドライバがアクセルペダルの踏込みを行なわない場合の制御のタイムチャートである(エンジン1の自動停止なし)。なお、この車両のポジションスイッチPSW及びモードスイッチMSWはDモードDレンジ(走行位置)で変化させないこととする。また、ブレーキ力制御装置BCUは、図3に示す構成のものである。
ここで、図8上段図は、車両の駆動力とブレーキ力の増減を時系列で示したタイムチャートである。図中太い線が駆動力を示し、細い線がブレーキ力を示す。図8下段図は、電磁弁SVの状態を示したタイムチャートである。
なお、電磁弁SVが遮断状態になる条件などは図4を参照して既に説明した通りであり、駆動力が強クリープ状態になる条件などは図5を参照して既に説明した通りである。
【0113】
車両が停止するまでは、「制御のタイムチャート1」及び「制御のタイムチャート2」と同じなので説明を省略する。本「制御のタイムチャート3」の車両は車両が停止してもエンジン1の自動停止を行なわないので、停止中も駆動力は弱クリープ状態を維持する。弱クリープ状態での駆動力はほとんどないため、坂道における車両の後ずさりはドライバがブレーキペダルBPを踏込んだ際に生じたブレーキ力により阻止される(後退抑制力)。
【0114】
次に、ドライバが再発進のためブレーキペダルBPの踏込みを開放する。ブレーキペダルの踏込みが完全に開放されると(ブレーキSW[OFF])、駆動力が増加して強クリープ状態になる(F_SCRPON)。ブレーキペダルBPの踏込みが開放されて(ブレーキスイッチBSWがOFFになって)から、強クリープ状態になるまでの間は、電磁弁SVが依然として遮断状態にあるのでブレーキ力は低減することがなく、上り坂であっても車両の後ずさりが防止される。
【0115】
そして、強クリープ状態(F_SCRPON)になれば坂道に抗することができる駆動力が生じているので、ブレーキ力を漸減解除する。ここで、一気にブレーキ力を解除したのではドライバに唐突感を与えることがあるので、滑らかな発進を可能とするため、制御手段CUの指令に基づいてブレーキ力を漸減解除する。ブレーキ力を漸減解除する際には、電磁弁SVが流量制限状態に切換わる。流量制限状態にある電磁弁SVは、ブレーキ力が消滅した後に連通状態になる。
【0116】
ちなみに、図8上段図のブレーキ力を示す線において、「ブレーキペダルの踏込み開放」の部分から右斜め下に降下する仮想線はブレーキ液圧が保持されない場合を示し、この場合はブレーキペダルBPの踏込み力の低下に遅れることなくブレーキ力が一気に低下して消滅するので、登坂発進を容易に行うことはできない。なお、この仮想線はブレーキペダルBPの戻り状況を示すものでもある。次に、図8上段図のブレーキ力を示す線において、強クリープ状態が達成された時点(電磁弁SVが流量制限状態になった時点でもある)から右斜め下に低下して行く仮想線は、電磁弁SVがいきなり連通状態になった場合のブレーキ力の低減状況を示す。この仮想線に示すようにブレーキ力が低下して行くと、ドライバに唐突感を与えることがある。
【0117】
このように、駆動力が強クリープ状態になった時点でいきなり電磁弁SVを連通状態に切換えるのではなく、電磁弁SVを流量制限状態にしてブレーキ力を漸減解除することにより滑らかに車両を発進させることができる。
【0118】
〔制御のタイムチャート4(アクセルペダルの踏込みあり)、図9参照〕
ドライバが発進時にアクセルペダルの踏込みを行なう場合の制御のタイムチャートである(エンジン1の自動停止なし)。なお、この車両のポジションスイッチPSW及びモードスイッチMSWはDモードDレンジ(走行位置)で変化させないこととする。また、ブレーキ力制御装置BCUは、図3に示す構成のものである。
ここで、図9上段図は、車両の駆動力とブレーキ力の増減を時系列で示したタイムチャートである。図中太い線が駆動力を示し、細い線がブレーキ力を示す。図9下段図は、電磁弁SVの状態を示したタイムチャートである。
なお、電磁弁SVが遮断状態になる条件などは図4を参照して既に説明した通りであり、駆動力が強クリープ状態になる条件などは図5を参照して既に説明した通りである。
【0119】
ブレーキペダルの踏込みが開放されて強クリープ状態になるまでは、「制御のタイムチャート3」と同じなので説明を省略する。駆動力が強クリープ状態になると(F_SCRON)、滑らかな発進を可能とするため、制御手段CUの指令に基づいて電磁弁SVが流量制限状態に切換わってブレーキ力が徐々に低減して行く。この際、ドライバが駆動力を増すためにアクセルペダルを踏込む(TH[ON])、すると流量制限状態にある電磁弁SVが連通状態に切換わり、ブレーキ力を一気に解除する。
ここで、アクセルペダルが踏込まれて(TH[ON])駆動力が増加している場合も引続いてブレーキ力を漸減解除すると、ブレーキの引っかかりを生じてしまうので好ましくないが、アクセルペダルの踏込みが行なわれた時点(TH[ON])で電磁弁SVを連通状態に切換える制御を行なうことで、ブレーキの引っかかりのないドライバの意に沿った車両の発進を行なうことができる。
【0120】
ちなみに、図9上段図のブレーキ力を示す線において、「ブレーキペダルの踏込み開放」の部分から右斜め下に降下する仮想線はブレーキ液圧が保持されない場合を示し、この場合はブレーキペダルBPの踏込み力の低下に遅れることなくブレーキ力が一気に低下して消滅するので、登坂発進を容易に行なうことができない。なお、この仮想線はブレーキペダルBPの戻り状況を示すものでもある。次に、図9上段図のブレーキ力を示す線において、強クリープ状態が達成された時点(電磁弁SVが流量制限状態になった時点でもある)から右斜め下に下降する仮想線は、電磁弁SVがいきなり連通状態になった場合のブレーキ力の低減状況を示す。この仮想線に示すようにブレーキ力が低下して行くと、ドライバに唐突感を与えることがある。そして、図9上段図のブレーキ力を示す線において、アクセルペダルが踏込まれた時点(TH[ON])から右斜め下に延びる曲線は、ブレーキ力が引続き漸減解除される場合のブレーキ力を示したものであり、このようにブレーキ力が低下して行くとブレーキの引きずりを生じるので好ましくない。
【0121】
このように、アクセルペダルが踏込まれた時点で電磁弁SVを連通状態に切換えることによりブレーキの引きずりを生じない車両の発進を行なうことができる。
【0122】
以上、本発明は必ずしも前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明にいう目的を達成し、本発明にいう効果を有する範囲において適宜に変更実施することが可能なものである。
【0123】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、ブレーキ力を漸減解除することにより、ブレーキ力を一気に解除することで生じていた車両発進時の唐突感が解消される。また、請求項2に記載の発明によれば、停止時に一層の燃費の低減を図ることができる。また、請求項に記載の発明によれば、アクセルペダルが踏込まれた時点でブレーキ力を一気に解除することにより、ドライバがアクセルペダルを踏込んで迅速な発進を意図しているときに、不要なブレーキ力の引きずりがなく、ドライバの意図に沿った迅速な車両の発進を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態におけるブレーキ力制御装置を搭載する車両のシステム構成例を示す図である。
【図2】 駆動力制御装置における基本制御の例を示すフローチャートである。
【図3】 ブレーキ力制御装置の構成例を示す図である。
【図4】 本実施の形態におけるブレーキ力制御装置を搭載する車両の停止時における制御を示す図である。(a)は電磁弁を遮断状態にするロジックを示し、(b)はエンジンを自動停止するロジックを示す。
【図5】 本実施の形態におけるブレーキ力制御装置を搭載する車両の発進時における制御を示す図である。(a)は電磁弁を流量制限状態にするロジックを示し、(b)は駆動力を強クリープ状態にするロジックを示し、(c)はエンジンを自動始動するロジックを示し、(d)は電磁弁を連通状態にするロジックを示す。
【図6】 本実施の形態におけるブレーキ力制御装置を搭載した車両の走行時の制御のタイムチャートで、車両発進時にアクセルペダルの踏込み行なわない場合のものである。上段図は車両の減速→停止→発進の時系列に沿っての駆動力・ブレーキ力の変化を示し、下段図は電磁弁の状態を示す。
【図7】 車両発進時にアクセルペダルの踏込みを行なう場合の図6に相当する制御のタイムチャートである。
【図8】 車両停車時にエンジンの自動停止を行なわない場合における図6に相当する制御のタイムチャートである。
【図9】 車両停止時にエンジンを自動停止を行なわない場合における図7に相当する制御タイムチャートである。
【図10】 従来例における車両発進時のブレーキ力の解除を示す図である。
【符号の説明】
DCU 駆動力制御装置
BCU ブレーキ力制御装置
RU ブレーキ力保持手段(電磁弁)
BP ブレーキペダル

Claims (3)

  1. 所定車速以下でアクセルペダルの踏込みが開放されている状態でも変速機において走行レンジが選択されている場合は、原動機から駆動輪へクリープの駆動力を伝達すると共に、駆動輪に伝達する前記駆動力の大きさをブレーキペダルの踏込み状態に応じて予め設定されている大きい状態と小さい状態とに切換え、ブレーキペダルの踏込み時はブレーキペダルの踏込み開放時よりも前記駆動力を小さくする駆動力制御装置と、
    車両停止時に、ブレーキペダルの踏込みと前記駆動力が小さい状態とを条件にブレーキ力の保持を開始すると共に、ブレーキペダルの踏込み開放後も引続き車両にブレーキ力を保持できるブレーキ力保持手段を備えたブレーキ力制御装置を有する車両において、
    前記駆動力制御装置は、前記車両の停止時、前記アクセルペダルの踏込みが開放されている状態において、前記ブレーキペダルの踏込みが開放されると、前記駆動力を前記予め設定されている大きい状態に増加し、
    前記ブレーキ力制御装置は、前記アクセルペダルの踏込みが開放されている状態において、前記駆動力が前記予め設定されている大きい状態まで増加するとブレーキ力を漸減解除すること
    を特徴とするブレーキ力保持装置を有する車両
  2. 車両停止時に、前記ブレーキペダルが踏込まれて前記駆動力が前記予め設定されている小さい状態であることを条件にエンジンを自動停止し、前記踏込んだブレーキペダルの開放を条件に前記停止したエンジンを始動する原動機停止装置をさらに備えること
    を特徴とする請求項1に記載のブレーキ力制御装置を有する車両。
  3. アクセルペダルの踏込み操作が検出されたとき、前記ブレーキ力保持手段はその時点でブレーキ力を一気に解除すること
    を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブレーキ力制御装置を有する車両
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