JP3498557B2 - 可塑性油脂組成物及びこれを使用したパン、菓子類 - Google Patents

可塑性油脂組成物及びこれを使用したパン、菓子類

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JP3498557B2 JP33878597A JP33878597A JP3498557B2 JP 3498557 B2 JP3498557 B2 JP 3498557B2 JP 33878597 A JP33878597 A JP 33878597A JP 33878597 A JP33878597 A JP 33878597A JP 3498557 B2 JP3498557 B2 JP 3498557B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食感に優れたパン
・菓子類が得られる可塑性あるロールイン用油中水型乳
化油脂組成物及びこれを使用したパン、菓子類に関す
る。
【0002】
【従来の技術】クロワッサン、デニッシュペーストリ
ー、パイは、生地を薄く延ばし、これにロールイン用油
中水型乳化油脂組成物(シート状マーガリン等)を乗せ
て折りたたみ、更に薄く延ばしたり折りたたんだりしな
がら、幾多の層を形成した後、適当な大きさにカット
し、更に丸めたり、ジャムや餡等の他の食品を包み込ん
だ後焼成する事により得られる独特の形状、食感の得ら
れる食品である。このように、折りたたみ工程を伴う食
品を得るために、従来は、展延性に優れた油脂組成物
(ロールイン油脂)が使用されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、従来以上の「浮
き」や従来以上のサクサクとした食感のクロワッサン、
デニッシュペーストリー、パイがユーザーから求められ
るようになってきた。「浮き」を良くする為に、従来は
ロールイン用油中水型乳化油脂組成物の油相に固体脂含
量(以後SFC値と表現する)の高い油脂を使用してい
た。しかしながら、このようにSFC値の高い油脂を使
用したロールイン用油中水型乳化油脂組成物は、通常の
作業条件下では、固くて大変使いづらかった。また、サ
クサクとした食感を得ようとする為に従来は、焼成条件
で水分の蒸発を促す様低温でゆっくり焼いたり、通常の
焼成を行った後、更に乾燥させて水分を蒸発させる方法
をとっていた。しかしながら、従来法は、トータルの工
程時間が長くなり、大変効率が悪かった。通常用いられ
てきたロールイン油中水型乳化油脂組成物は、水分含量
が多く、焼成後も生地中に大量の水分が残存する為に、
通常の焼き方ではサクサクとした食感を得られない為、
この様な特殊な工程を経る必要があった。サクサクした
クロワッサン、デニッシュペーストリー、パイを得るた
めには、焼成後のそれぞれに残存する水分を如何に減ら
すかがポイントとなる。それには、始めから水分の配合
を少なくするのが手っとり早い方法であるが、クロワッ
サン、デニッシュペーストリー、パイ生地をこねる時に
は、配合されている小麦粉の澱粉がα化するのに必要十
分量を添加する必要があり、これを減らすには自ずと限
界がある。一方、クロワッサン、デニッシュペーストリ
ー、パイに層状構造を与える為に使用している、ロール
イン油中水型乳化油脂組成物には、通常10〜17%程
度の水分が含まれているが、これは、ロールイン油中水
型乳化油脂組成物に層状構造を作りやすい物性を与える
目的で加えられているにすぎない。
【0004】本発明者らは、水分含量の少ないロールイ
ン用油中水型乳化油脂組成物を使用したクロワッサン、
デニッシュペーストリー、パイは、サクサクした食感を
与える事が出来ることを見いだした。しかしながら、単
に水分含量を減らしただけのロールイン用油中水型乳化
油脂組成物は、ボソボソした物性となり、生地と一緒に
延びず均一な「浮き」が得られなかった。そこで、以上
の要求を満たすために、従来の焼成条件でも「浮き」が
良く且つ均一で、生地中の残存水分が結果的に少なくな
り、サクサクとした食感となるよう、水分含量の少なく
ても作業性の優れた折り込み(ロールイン)用油脂組成
物を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する為に
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、エタノールをロ
ールイン用油中水型乳化油脂組成物の構成成分として配
合する事により、非常に延びが良く、理想的なロールイ
ン特性が得られることを見いだし、本発明を完成するに
至った。
【0006】 即ち、本発明の第1はエタノール0.1
重量%以上20重量%以下および水分0.1重量%以上
10重量%以下を含有するロールイン用油中水型乳化油
脂組成物に関する。また、本発明の第2は前記ロールイ
ン用油中水型乳化油脂組成物を使用したパン、菓子類に
関する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるエタノールは、エタノール溶液とし
て加えても良いし、ウオッカ、焼酎、ブランデー、ウイ
スキー等の蒸留酒をはじめ、日本酒、ワイン等の発酵
酒、あるいは、税法上酒類に含まれなくても、エタノー
ルを含んでいる食品であれば単独で加えても良いし、そ
れらを組み合わせて使用しても良い。また、酒粕の様な
発酵食品や、食品添加物として市販されているエタノー
ル製剤等エタノールを含む製剤を使用しても良い。
【0008】なお、エタノールは、油中水型乳化油脂組
成物を作る際に乳化時に油相に添加しても良いし、水相
に添加しても良い。また通常の乳化を行ってから、例え
ば急冷捏和工程で添加する等、後で添加しても良い。さ
らにエタノール又はエタノール製剤(例えば水とエタノ
ールが1:1の割合であるもの)と油脂との乳化液とし
たものを油中水型乳化油脂組成物を作る際の急冷捏和工
程で添加することもできる。
【0009】またエタノールは油脂組成物に対し、好ま
しくは0.1重量%以上20重量%以下(エタノールと
して)、さらに好ましくは、0.5重量%以上7重量%
以下で添加するのが良い。エタノール含量が0.1重量
%より少ないと十分な効果が得られにくく、また逆に2
0重量%より多いと柔らかい物性となりロールイン作業
に適さない油脂組成物となりやすい。エタノール含量が
20重量%を越えると柔らかい物性となるのは、エタノ
ールの溶媒としての働きが強くなり、油脂結晶の生成を
阻害するためと推定される。
【0010】また本発明のロールイン用油中水型乳化油
脂組成物は水分含量が0.1重量%以上10重量%以下
であることが好ましい。水分含量が0.1重量%より少
ないともろい物性となるため、事実上ロールイン作業に
適さない物性となり易く、また逆に10重量%より多い
とサクサク感に欠け、十分な効果が得られにくい。
【0011】本発明に用いられる油脂は、例えば、パー
ム油、パーム軟質油、菜種油、コーン油、綿実油、大豆
油、豚脂、牛脂、魚油、これらを水素添加して得られた
硬化油、これらの油脂を原料にエステル交換して得られ
るエステル交換油やこれらの分別油等から選ばれる1種
または2種以上の油脂が挙げられる。本発明に用いられ
る乳化剤は、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖
脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステ
ル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸
エステル、大豆レシチン、卵黄レシチン等から選ばれる
1種または2種以上の乳化剤が挙げられる。
【0012】エタノールを含有する油中水型乳化油脂組
成物は、通常のマーガリンと同様に密閉型マーガリン製
造装置で急冷捏和する事により得られる。このようにし
て得られたロールイン用油中水型乳化油脂組成物は、シ
ート状、ストロー状、スティック状、ブロック状等にし
てパン、菓子類の製造に用いることができる。
【0013】本発明のエタノールを含有するロールイン
用油中水型乳化油脂組成物を使用したパン、菓子類とし
てはクロワッサン、デニッシュペーストリー、ピザクラ
スト、パイ等が挙げられる。なお、パイは練りパイでも
折りパイでも練り折りパイでも使用可能である。
【0014】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明す
るが、これらの実施例は本発明を制限するものではな
い。 (実施例1)コーン硬化油(融点40℃)60部、豚脂
20部、ナタネ白絞油20部からなる調合油にグリセリ
ン脂肪酸エステル0.4部、大豆レシチン0.4部を添
加した油相90部に対し、エタノール(純度99重量
%)50部、水50部からなる水相を10部添加し、約
55℃に温度を調節し、プロペラミキサーにて撹拌混合
した後、常法通り密閉型マーガリン製造装置により急冷
捏和の上シート状加工を施し、ロールイン用油中水型乳
化油脂組成物を調製した。
【0015】なお、ロールイン用油中水型乳化油脂組成
物の水分含量をカールフィッシャー法により測定したと
ころ、水分含量は4.9重量%であった。このようにし
て得られたロールイン用油中水型乳化油脂組成物を使用
し、以下の配合・製法で折りパイを作成した。 <生地配合> 強力粉 60部 薄力粉 40部 ショートニング(鐘淵化学工業株式会社製 スノーライト) 5部 水 50部 前述の配合により得られた生地50部に対し、本発明品
のロールイン用油中水型乳化油脂組成物50部を使用し
て、常法により4つ折りを2回行い、一旦リタードを取
ったのち、更に4つ折りを2回繰り返し、更に必要によ
り生地を休ませた後、最終的に生地厚4mmに延ばした
生地を80mm×120mmの長方形にカット成形し、
190℃のオーブンにて25分間焼成した。作業性や製
品性は、表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】なお、表1において「層」は均一である方
が見栄えが良く、パン、菓子類の品質が良いとされる。
また、「層」が均一な方が一般的には「浮き」も良い
が、不均一な場合には「浮き」にバラツキがあり、非常
に浮く部分があるが、見栄えが悪く、パン、菓子類の品
質も悪いとされる。 (比較例1)実施例1と同様の油相95部に水5部(エ
タノールは添加せず)を水相として加えた以外は、実施
例1と同様の方法で作成したロールイン用油中水型乳化
油脂組成物を使い、実施例1と同様にパイを作成した。
作業性や製品性は、表1に示す。
【0018】なお、ロールイン用油中水型乳化油脂組成
物の水分含量をカールフィッシャー法により測定したと
ころ、水分含量は4.5重量%であった。 (比較例2)実施例1と同様の油相85部に水15部
(エタノールは添加せず)を水相として加えた以外は、
実施例1と同様の方法で作成したロールイン用油中水型
乳化油脂組成物を使い、実施例1と同様にパイを作成し
た。作業性や製品性は、表1に示す。
【0019】なお、ロールイン用油中水型乳化油脂組成
物の水分含量をカールフィッシャー法により測定したと
ころ、水分含量は14.7重量%であった。 (実施例2)実施例1と同様のロールイン用油中水型乳
化油脂組成物を使用し、下記配合製法によりクロワッサ
ンを作成した。 <生地配合> 強力粉 50部 中力粉 50部 上白糖 7部 食塩 2部 マーガリン(鐘淵化学工業株式会社製 エルト゛フレッシュテ゛リシャス) 5部 生イースト(鐘淵化学工業株式会社製 レッドイースト) 3.5部 脱脂粉乳 2部 モルトエキス(Diamalteria Italiana社製 euromalt) 0.5部 前述の配合により得られた生地に対し、本発明品のロー
ルイン用油中水型乳化油脂組成物50部を使用して常法
により3つ折りを3回行った後カット成形し、200℃
のオーブンにて13分間焼成した。作業性や製品性は、
表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】(比較例3)比較例1と同様のロールイン
用油中水型乳化油脂組成物を使用した以外は実施例2と
同様にクロワッサンを作成した。作業性や製品性は、表
2に示す。 (比較例4)比較例2と同様のロールイン用油中水型乳
化油脂組成物を使用した以外は実施例2と同様にクロワ
ッサンを作成した。作業性や製品性は、表2に示す。 (実施例3)実施例1と同様の油相90部に水5部を水
相として加え、エタノール5部を密閉型マーガリン製造
装置の急冷捏和工程中、油脂の結晶がほぼ出揃った時
点、即ち乳化物の温度が約10℃に冷却された時点で添
加した以外は実施例1と同様の方法で作成したロールイ
ン用油中水型乳化油脂組成物を使用し、実施例1と同様
にパイを作成した。作業性や製品性は、表1に示す。 (実施例4)実施例3と同様のロールイン用油中水型乳
化油脂組成物を使用した以外は実施例2と同様にクロワ
ッサンを作成した。作業性や製品性は、表2に示す。
【0022】
【発明の効果】以上の如く本発明のロールイン用油中水
型乳化油脂組成物をクロワッサン、デニッシュペースト
リー、パイ等のパン、菓子類に使用した場合には、従来
のロールイン用油中水型乳化油脂組成物を使用した場合
と比べ、ロールイン作業時の作業性を良好に保ちつつ、
浮きに優れ且つサクサクした食感を与えることができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西村 修身 埼玉県朝霞市三原2−19−60−502 (56)参考文献 特開 平4−316446(JP,A) 特開 昭60−91972(JP,A) 特開 昭59−11142(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A21D 2/00 - 17/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エタノール0.1重量%以上20重量%
    以下および水分0.1重量%以上10重量%以下を含有
    するロールイン用油中水型乳化油脂組成物。
  2. 【請求項2】 エタノール含量が0.5重量%以上7重
    量%以下である請求項1記載のロールイン用油中水型乳
    化油脂組成物。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2記載のロールイ
    ン用油中水型乳化油脂組成物を使用したパン、菓子類
JP33878597A 1996-12-17 1997-12-09 可塑性油脂組成物及びこれを使用したパン、菓子類 Expired - Lifetime JP3498557B2 (ja)

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