JP3497566B2 - 金属粉末焼結部品の製造方法 - Google Patents

金属粉末焼結部品の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、構成部品相互間に摺動
関係を有する金属粉末焼結部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、上記のような金属粉末焼結部品
は、例えば特開昭59−229403号公報に開示され
るように、金属粉末と有機バインダとを特定の配合で混
練したコンパウンドにより射出成形を行い、その後脱脂
工程、焼結工程を経て製造されている。このとき、得よ
うとする焼結部品の形状により、型割り等について金型
の機構が複雑となってしまい、その金型作製が困難な場
合には、焼結部品を複数の部品に分割し、別々の射出成
形を行った後にこれらを組み合わせることになるが、上
記公報には複数部品の組合わせ、組立て方法に関しては
具体的な開示がされていない。一方、プラスチック成形
では、組立て工程を削除するため、既に公知であるイン
サート成形法を用いて複数の部品を射出成形時に一体化
させる方法が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、金属粉
末の射出成形法にインサート成形を適用した場合、射出
成形体(グリーンパーツ)を一体化することはできて
も、焼結により個々の部品の接触部が凝集するため、焼
結後に摺動する製品を製造することはできない。このた
め、結局、個々の部品をそれぞれ別個に焼結した後、別
途組立てを行わなければならない。したがって、工程の
増加により製品コストが高くなってしまうという問題が
生じていた。
【0004】 請求項1、2に係る発明は、かかる従来
の問題点に鑑みてなされたもので、工程数が少なく、低
コストにして製造できる金属粉末焼結部品の製造方法を
提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1に係る発明は、金属粉末と有機バインダと
を混練したコンパウンドを所望の形状に射出成形する工
程と、この射出成形体を脱脂する工程と、得られた脱脂
体を焼結する工程とからなり、摺動部を有する金属粉末
焼結部品の製造方法において、予めセラミツクス被膜が
施された甲部品を射出成形金型のキャビティ部に配置
し、その甲部品の周辺に前記コンパウンドにより乙部品
の射出成形を行う際に、甲部品と乙部品との摺動部に前
記コンパウンドに含有される有機バインダの主成分材料
からなるスペーサを介在させた状態で射出成形を行う
ととした。
【0006】
【0007】 請求項に係る発明は、請求項1にかか
る発明において、前記金型内で射出成形により嵌合した
甲部品および乙部品を一体で取り出した後、これを脱
脂、焼結することを特徴とする。
【0008】すなわち、本発明は、構成部品相互間に摺
動部を有する金属粉末焼結部品を金属粉末射出成形法に
より金型内部で事後摺動可能なように組み立てる方法で
ある。
【0009】図1に斜視図を、図2に縦断平面図を示す
ような製品1の組立てを行う場合を例にして、本発明の
概念を図3および図4に基づき説明する。製品1は、部
品(甲部品)aと部品(乙部品)bとの2つの部品から
なり、両者は嵌合部2において摺動するようになってい
る。
【0010】図3に示すように、先ず予め表面に、粉末
もしくは蒸着によるセラミックス被膜3を施してある部
品aを金型4の可動側入子5(キャビティ)にパーティ
ングより挿入し、次に金型を閉じて部品aと可動側入子
5と固定側入子6とにより囲まれる部分にて部品bを成
形し得るキャビティ部を形成する。このキャビティ部に
おいて、2部品の嵌合部2には、その一部に、コンパウ
ンドに含まれる有機バインダの主成分であるプラスチッ
ク材料にて作製されたスペーサ19を配置し、射出成形
機より金型4の前記キャビティ部にコンパウンドを射出
すると、嵌合部2において、スペーサ19を介して部品
bが形成される。保圧、冷却工程の後、一体化し、図4
に示すように、製品1になり得る形状をなした部品aお
よび部品bを金型より取り出し、この後部品aおよびb
を一体のままで脱脂、焼結を行い、金属製品1を得る。
【0011】
【作用】金型4は、射出成形体が後に焼結で収縮するこ
とを見込んで設計されている。図4に示すように、部品
aと可動側入子5と固定側入子6とにより囲まれる部分
にて部品bを成形し得るキャビティ部にコンパウンドを
射出し、保圧、冷却後取出した成形体は、嵌合部2で部
品a、部品bおよびスペーサ19が組み付いており、部
品bにはこれを形成したスプール7およびランナ8が付
属している。この時、予め挿入した部品aを内側より新
たに成形した部品bが成形体内部圧力により押圧し、ま
た成形後の金型寸法からの収縮が小さく、クリアランス
がないため、部品aと部品bとは一体となり摺動しな
い。この後、金型4から取り出した一体化した製品は、
図4に示すように、ゲート11から部品bを切り離し、
一体のまま脱脂工程に投入される。このとき、スペーサ
19はコンパウンドに含まれる有機バインダの主成分で
あるプラスチックでできているため、脱脂により分解さ
れ、完全に消失し、クリアランスを生じる。更に焼結工
程を経るが、金属粉末焼結体は焼結工程において、粒界
の成長に伴う凝集により収縮する。よって、スペーサ1
9は、収縮に伴い、後にクリアランスを無くす方向への
収縮を生じる部分に配置する必要があり、また、嵌合部
2において部品aと部品bは、予め部品aに施されたセ
ラミックス被膜3にコンパウンド中の金属粉末が直接触
れず、接触面が完全に分離されているために嵌合部2で
の凝集が起こらず、部品bの焼結収縮に伴い嵌合部2に
クリアランスが生じるため、これらクリアランスにより
焼結後にも部品が相互に凝集しあわずに摺動可能な製品
1の製造が可能となる。
【0012】なお、スペーサの使用は、焼結収縮に伴い
嵌合部がクリアランスを失ってしまう方向に収縮する場
合に限る。
【0013】
【実施例】[実施例1] (構成)図5に斜視図を、図6に縦断平面図を示すよう
な製品を製造するものとして、図7および図8に基づき
実施例1を説明する。2つの部品cと部品dとは接点部
9を中心として回転し、その部分にて摺動する。
【0014】部品dを金属粉末焼結法により得、予め焼
結体として準備し、その表面部にはc−BNのセラミッ
クス微粉末が塗布されセラミックス被膜3が施されてい
る。この部品dには、アクリル樹脂(有機バインダの主
成分)で作られたスペーサ19を図5の通り配し、これ
を金型4の可動側にパーティングより挿入し、金型4を
閉じて部品dと可動側入子5と固定側入子6とにより囲
まれる部分にて部品cを成形し得るキャビティ部を形成
する。射出成形機より金型4の前記キャビティ部に、金
属微粉末がSUS316L、有機バインダがワックス、
ポリスチレン、アクリル樹脂であるコンパウンドを射出
して部品cを形成し、部品dの穴部10にて部品cを嵌
合して部品cおよび部品dを一体化する。保圧、冷却工
程の後、一体化した部品cおよび部品dを、部品cのス
プール7およびランナ8を有したまま金型より取り出
す。この後、部品cをゲート11より切り離し、一体化
したまま脱脂、焼結を行い、摺動部を有した金属粉末焼
結部品を得る。
【0015】(作用)アクリル樹脂のスペーサ19を配
した部品dと可動側入子5と固定側入子6とにより囲ま
れる部分にて部品cを成形し得るキャビティ部に、金属
微粉末がSUS316L、有機バインダがワックス、ポ
リスチレン、アクリル樹脂からなるコンパウンドを射出
し、保圧、冷却後取り出した成形体は、嵌合部2で部品
cおよび部品d、スペーサ19が組み付いており、部品
cにはこれを形成したスプール7、ランナ8が付属して
いる。このとき、予め挿入した部品dを穴部10の内側
より新たに成形した部品cがスペーサ19を介して成形
体内部圧力により押圧し、また成形後の穴部10寸法か
らの収縮が小さく、クリアランスがないため、製品は一
体化し、摺動しない。この後、ゲート11から部品cを
切り離し、脱脂工程に投入すると、脱脂により部品cを
形成しているコンパウンド中の有機バインダが分解さ
れ、SUS316Lの微粉末と極若干量の分解しきれな
かったバインダ成分のみが残る。
【0016】一方、スペーサ19は、その成分が有機バ
インダの主成分であるアクリル樹脂であるため、脱脂に
より完全に消失しクリアランスになる。この後、更に焼
結工程を経るが、金属粉末焼結体は焼結工程において、
粒界の成長に伴う凝集により収縮し、また、嵌合部2に
おいて部品cと部品dは、予め部品dに施されたセラミ
ックス被膜3に嵌合部12が完全に分離されているた
め、嵌合部2で部品cおよび部品dが相互に凝集しあう
ことがなく、また、部品cの収縮に伴いクリアランスが
生じることにより製品は摺動可能となり、部品dは予め
形成された部分に部品が脱落しないようなアンダーカッ
ト部13を有しているため、製品は脱落・分離しないで
摺動が可能となる。
【0017】 (効果)上記方法により、摺動を有する製品が金型4内
にて射出成形と共に組み付けることが可能となり、ま
た、これにより組立てが自動化されるため、低コストで
摺動製品の製造が可能となる。
【0018】[実施例2] (構成)本実施例では、実施例1における部品をSUS
316Lの圧延材を機械加工で得る他は実施例1と同じ
構成となるので説明を省略する。
【0019】(作用)実施例1と同じ作用となるので説
明を省略する。
【0020】 (効果)これらの方法により、摺動を有する製品が、部
品の一方が機械加工品でも金型内に挿入して実施例1と
同様に射出成形と共に他方の部品と組付けることが可能
となり、また、これにより組立てが自動化されるため、
実施例1と同様に低コストで摺動製品の製造が可能とな
る。
【0021】[実施例3] (構成)図9に斜視図を、図10に横断側面図を示すよ
うな製品を製造するものとして、図11および図12に
基づき実施例3を説明する。図11は図10におけるA
−A’線矢視を金型内で見たものである。2つの部品
e,fは、部品f上にて部品eが軸方向にスライドする
ものである。
【0022】部品eを金属粉末焼結法による得、予め焼
結体として準備し、表面部にはアルミナ蒸着のセラミッ
クス被膜3が施されている。この部品eを金型4の可動
側にパーティングよりポリスチレン製(有機バインダの
主成分に対応)のスペーサ19を配して挿入し、金型4
を閉じて部品eと可動側入子5とスペーサ19と固定側
入子6とにより囲まれる部分にて部品fを成形し得るキ
ャビティ部を形成する。
【0023】射出成形機より金型4の前記キャビティ部
に、金属微粉末がSUS316L、有機バインダがワッ
クス、ポリスチレン、アクリル樹脂からなるコンパウン
ドを射出して部品fを形成し、部品eのレール部14に
て部品fが嵌合して部品eおよび部品fはスペーサ19
を介して一体化する。保圧、冷却工程の後、一体化した
部品eおよび部品fは部品fのスプール7およびランナ
8と共に金型4より取り出す。この後、部品fはゲート
11より切り離し、一体化したまま脱脂、焼結を行う。
【0024】(作用)部品eと可動側入子5と固定側入
子6とにより囲まれる部分にて部品fを成形し得るキャ
ビティ部にコンパウンドを射出し、保圧、冷却後取り出
した成形体は、嵌合部(レール部14およびレール溝1
5)で部品eおよび部品fがスペーサ19を介して組み
付いており、部品fにはこれを形成したスプール7、ラ
ンナ8が付属している。このとき、予め挿入した部品e
をレール溝15の内側より新たに成形した部品fが成形
体内部圧力によりレール溝15を押圧し、また成形後の
レール溝15からの収縮が小さく、クリアランスがない
ため、製品は摺動しない。
【0025】この後、ゲート11から部品fを切り離
し、脱脂工程に投入する。この際、スペーサ19は、有
機バインダの主成分であるポリスチレンであるため、こ
の脱脂において分解されて完全に消失し、クリアランス
が生じる。この後更に焼結工程を経るが、金属粉末焼結
体は焼結工程において、粒界の成長に伴う凝集により収
縮し、またレール部14およびレール溝15において部
品eと部品fは、予め部品eに施されたセラミックス被
膜3により完全に分離されており、更に上記クリアラン
スにより、焼結での凝集に伴った部品eへの食い込みが
起こらず、部品fの収縮に伴い更にクリアランスが生
じ、これにより製品は摺動可能になり、予め加工された
部品fは予め加工された部品eには脱落しないようなア
ンダーカットおよびストッパー16を有しているため、
製品は脱落・分離しないので摺動が可能となる製品とな
る。
【0026】 (効果)上記方法により、スライド摺動を有する製品が
金型4内にて射出成形と共に組み付けることが可能とな
り、また、これにより組立てが自動化されるため、低コ
ストで摺動製品の製造が可能となる。
【0027】 なお、実施例1〜3において記載したコン
パウンド中の金属微粉末および有機バインダはこれに限
定されるものではなく、その他の物質でも同様の効果を
得ることが可能である。
【0028】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、摺動部
を有する金属部品を金型内部にて事後摺動可能なよう
に、射出成形を行いつつ同時に組立て、これにより組立
て工程を排除することで低コストの金属摺動部品を製造
することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で得る製品を示す斜視図である。
【図2】本発明で得る製品を示す縦断平面図である。
【図3】本発明を概念的に示す射出成形機の縦断面図で
ある。
【図4】本発明で得た製品を示す縦断平面図である。
【図5】実施例1で得る製品を示す斜視図である。
【図6】実施例1で得る製品を示す縦断平面図である。
【図7】実施例1で用いた射出成形機を示す縦断面図で
ある。
【図8】実施例1で得た製品を示す縦断平面図である。
【図9】実施例3で得る製品を示す斜視図である。
【図10】実施例3で得る製品を示す横断側面図であ
る。
【図11】実施例3で用いた射出成形機を示す縦断面図
である。
【図12】実施例3で得た製品を示す横断側面図であ
る。
【符号の説明】
a〜 部品 1 製品 2 嵌合部 3 セラミックス被膜 4 金型 5 可動側入子 6 固定側入子 19 スペーサ

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属粉末と有機バインダとを混練したコ
    ンパウンドを所望の形状に射出成形する工程と、この射
    出成形体を脱脂する工程と、得られた脱脂体を焼結する
    工程とからなり、摺動部を有する金属粉末焼結部品の製
    造方法において、予めセラミツクス被膜が施された甲部
    品を射出成形金型のキャビティ部に配置し、その甲部品
    の周辺に前記コンパウンドにより乙部品の射出成形を行
    う際に、甲部品と乙部品との摺動部に前記コンパウンド
    に含有される有機バインダの主成分材料からなるスペー
    サを介在させた状態で射出成形を行うことを特徴とする
    金属粉末焼結部品の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記金型内で射出成形により嵌合した甲
    部品および乙部品を一体で取り出した後、これを脱脂、
    焼結することを特徴とする請求項1記載の金属粉末焼結
    部品の製造方法。
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