JP3496335B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

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JP3496335B2 JP14049695A JP14049695A JP3496335B2 JP 3496335 B2 JP3496335 B2 JP 3496335B2 JP 14049695 A JP14049695 A JP 14049695A JP 14049695 A JP14049695 A JP 14049695A JP 3496335 B2 JP3496335 B2 JP 3496335B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、亜鉛めっき鋼板の製造
方法に関し、鋼板に溶融亜鉛めっき又は合金化溶融亜鉛
めっきを施す方法に関するものであって、めっき密着性
に優れた溶融亜鉛めっき鋼板又は耐パウダリング性に優
れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供するも
のである。
【0002】
【従来の技術】溶融亜鉛めっき鋼板は、自動車用、建材
用として広く用いられている。また、溶融亜鉛めっき鋼
板を加熱処理してめっき層を合金化したいわゆる合金化
溶融亜鉛めっき鋼板も同様の分野で広く用いられてい
る。一般に従来から行われている連続式溶融亜鉛めっき
鋼板の製造方法は、冷延鋼板を前処理工程で表面を洗浄
し、非酸化性あるいは還元性の雰囲気中で焼鈍し、次い
で鋼板を酸化させることなく冷却して、ほぼ溶融亜鉛浴
の温度まで鋼板温度を下げてめっき浴中に浸漬させ、浴
中で鋼板表面に付着した過剰の溶融亜鉛を付着量調整装
置にて除去して付着量を調整し、そのまま冷却したもの
である。その際、めっき浴中に0.1〜0.2重量%程
度の微量のAlを添加することにより、めっき浴浸漬初
期にFe−Al−Zn反応を引き起こし、素地鋼板界面
にFe−Al−Zn合金層(Al富化層)を形成する。
このAl富化層の量をAl富化量という。このFe−A
l−Zn合金層は、固くて脆いFe−Zn合金層の生成
を抑制する効果があり、Fe−Al−Zn合金層を形成
することによりめっき密着性の良好な溶融亜鉛めっき鋼
板が製造されている。
【0003】一般的に知られているめっき浴中にシンク
ロールを有する連続式溶融金属めっき装置の概略図を図
2、図4に示す。鋼板1はスナウト4から溶融亜鉛浴2
中に引き込まれ、シンクロール3により鉛直方向に方向
変換しサポートロール5に支持されながら引き上げられ
めっきが施され、付着量調整装置6でワイピングされ
る。このようなシンクロールを有する連続式溶融金属め
っき装置を使用する場合、溶融金属浴槽は数百トンとな
り、例えば、鋼板速度が100m/minであると鋼板
がめっき浴中に浸漬する時間は2〜3秒程度である。図
4の装置は図2の装置にさらに加熱帯12、保熱帯、冷
却帯13を付加した合金化溶融亜鉛めっき装置である。
【0004】これに対し、浸漬時間を短縮しようとする
技術がある。図1、図3はこのような技術の例を示すも
ので図2、図4の溶融亜鉛浴2の代りに空中ポット11
中に溶融亜鉛浴10を保持し、この溶融亜鉛浴10中に
鋼板1を下方から上方に貫通させて短時間浸漬させるも
のである。従前は浸漬時間を短縮すると、めっきの品質
を害するという問題があった。従来のシンクロール方式
におけるめっき品質に関する従来の知見は次のとおりで
ある。
【0005】(a)溶融亜鉛めっき Al富化量の増加と共にめっき密着性は向上するが、A
lは高価なので、コスト面からなるべくAl富化量が少
ない操業が望まれている。表面外観については、ドロス
附着量が増加すると、ドロス附着部で不めっきが発生し
密着性も低下する。
【0006】(b)合金化溶融亜鉛めっき Al富化量の増加と共に耐パウダリング性が向上する。
しかし、Al富化量が多すぎると合金化不足となるので
好ましくない。耐フレーキング性については、Fe含有
量の増加と共に向上するが、Fe含有量が高過ぎると、
耐パウダリング性が不良となる。表面外観はドロス附着
量が増加すると劣化し、ドロス附着部でさざ波、白斑点
等の欠陥が発生する。
【0007】シンクロールを有しない、特開昭63−3
03045号公報及び特開昭63−310949号公報
に開示された電磁力を利用して溶融金属を保持した浴を
使用し鋼板にめっきを施す方法、特開平4−356号公
報に開示されたシール板により溶融金属を保持した浴を
使用し鋼板にめっきを施す方法、あるいは特開平1−1
39744号公報に開示された1枚のドラム間に溶融金
属溜まりを形成し鋼板にめっきを施す方法等は、シンク
ロールを有する連続式溶融亜鉛めっき装置を用いた場合
に比べめっき浴容量が小さくなるため、鋼板と溶融亜鉛
浴との接触時間が極端に短くなる。さらに、特開昭61
−20755号公報に開示されたメニスカスを利用して
鋼板にめっきを施す方法を用いた場合には、溶融亜鉛浴
との接触時間はさらに短くなりほとんど0秒に近づく。
【0008】このように鋼板と溶融亜鉛浴との接触時間
が短いめっき方法を用いた場合、従来から行なわれてい
るシンクロールを有する連続式溶融亜鉛めっき浴と同一
の浴組成でめっきを行うと、めっき層中のAlの濃化が
不十分となり、それに伴いめっき時にFe−Zn合金層
の生成を十分に抑制することができず、めっき密着性が
低下するという問題点があった。さらにめっき層中のA
lの濃化が不十分である溶融亜鉛めっき鋼板を用いて、
引き続き合金化処理を行うと、硬くて脆いFe−Zn合
金層の生成が促進されるので、加工性が著しく劣るとい
う問題点があった。
【0009】従来、浸漬時間を短縮しようとする技術は
次のようなものがある。例えば、特開昭63−1578
47号公報には、Al:0.001〜0.08%、残Z
n及び不純物からなる亜鉛めっき浴へ、浸漬時間0.1
〜2.0秒でめっきを施す合金化溶融亜鉛めっき鋼板の
製造方法が開示されている。特開平4−103748号
公報では、Al:0.02〜0.11%を含有し、残部
が亜鉛よりなる亜鉛めっき浴中に、板温度420〜45
0℃とした鋼板を浸漬時間3秒以内で浸漬し、引き続き
鋼板温度550〜600℃にて、加熱炉で合金化処理を
行うことを特徴とする耐パウダリング性、耐フレーキン
グ性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が開
示されている。
【0010】また、特開平7−70725号公報では、
鋼板表面にあらかじめAlあるいは1重量%以上のAl
を含むAl合金をAl量として0.3g/m2 以上付着
させた後、1重量%以下のAlを含む溶融Znを上層め
っきとして付着させることによりFe−Zの合金化反応
を抑制しめっき附着性を向上させる技術が開示されてい
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】溶融亜鉛めっきでは、
めっき品質上の観点から、鋼板が溶融金属浴中に浸漬し
ている時間が重要である。めっき浴中の浸漬時間が1.
0秒以下というような短時間めっきとなる場合、Al:
0.001〜0.08重量%の亜鉛浴及びAl:0.0
2〜0.11重量%の亜鉛浴を用いた溶融亜鉛めっき鋼
板では、Al添加量の不足が原因で、Fe−Al−Zn
反応が不十分となりめっき密着性が低下する。さらにF
e−Al−Znの反応が不十分である溶融亜鉛めっき鋼
板を用いて引き続き合金化処理を行うと、Fe−Zn合
金化反応がさらに進行することになり、耐パウダリング
性を著しく低下させるという問題があった。また、特開
平7−70725号公報に開示された方法では、あらか
じめ下層めっきを施すことから、処理工程が増加し、製
造コスト面から必ずしも好適ではない。また、装置が複
雑になるため、メンテナンス費の増加が避けられない当
の問題があった。
【0012】そこで、本発明の主たる課題は、Fe−A
l−Zn合金層を充分厚く生成するような条件のもと
で、短時間めっき浴中に浸漬させることによって、めっ
き密着性の優れた溶融亜鉛めっき鋼板又は耐パウダリン
グ性の優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法
を提供することにある。本発明は、短時間の浸漬で亜鉛
めっき鋼板を製造する方法について研究し、短時間浸漬
であっても、Al富化層を十分に形成することができ、
めっきの密着不良、耐パウダリング不良を防止する技術
を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解
決するために開発されたもので、その技術手段は次のと
おりである。すなわち本発明は、純Zn及び不可避不純
物からなる溶融亜鉛めっき浴中へ溶解Al濃度0.12
〜1.0重量%のAlを添加し、このめっき浴中に浸漬
時間1.0秒以下浸漬し、溶融亜鉛めっきを施す溶融亜
鉛めっき鋼板の製造方法において、純Zn及び不可避的
不純物からなる溶融亜鉛めっき浴と鋼板との接触時間
(t):0.001〜0.5秒でめっきを施す際、該浴
中に0.002<([Al(重量%)]−0.12)×(t
(秒)+0.12) <0.04 を満足するAlを添加することを特徴とする溶融亜鉛め
っき鋼板の製造方法である。
【0014】この場合、めっき層中Al富化層の量をA
l量で0.05g/m 2 以上とすると好適である。
お、本発明において、Al富化層の量とはAl富化層中
のAl量を意味する。分析方法は発煙硝酸で表層のη−
Zn層を溶解除去した試料を定電位溶解し、溶解液中の
Al量を分析する。
【0015】また、本発明の別の発明は、上記発明と技
術分野及び主要な技術手段が共通するもので、純Zn及
び不可避不純物からなる溶融亜鉛めっき浴中へ溶解Al
濃度0.12〜1.0重量%のAlを添加し、該めっき
浴中に浸漬時間1.0秒以下浸漬し、ついで合金化加熱
処理し、合金化溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき鋼
板の製造方法において、純Zn及び不可避的不純物から
なる溶融亜鉛めっき浴と鋼板との接触時間(t):0.
001〜0.5秒でめっきを施す際、該浴中に 0.002<([Al(重量%)]−0.12)×(t
(秒)+0.12) <0.04 を満足するAlを添加し、次いで合金化処理を施すこと
を特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供す
る。
【0016】この場合、めっき層中Al富化層の量をA
l量で0.2g/m 2 以下とすると好ましい。
【0017】
【作用】浴中の溶解Al濃度:0.12〜1.0重量%
としたのは以下の理由による。すなわち、溶融亜鉛めっ
き浴浸漬初期に浴中に添加されたAlは鋼板から溶出し
たFeと反応して素地鋼板界面にAl富化層を形成す
る。このAl富化層はFe−Znの合金化反応を抑制す
る効果があり、溶融亜鉛めっき鋼板のめっき密着性及び
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の耐パウダリング性と密接な
関係がある。浴中に添加されるAl量が溶解Al濃度:
0.12重量%未満の場合、めっき浴中におけるFe−
Al反応は抑制され、Al富化層は形成されない。従っ
て、Fe−Zn反応が過度に進行することとなる。すな
わち、溶融亜鉛めっき鋼板において素地鋼板界面にFe
−Zn合金層が過度に形成され、めっき密着性を著しく
低下させる。また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板において
溶融めっき後の加熱処理でさらにFe−Zn合金化反応
が進行することとなり、耐パウダリング性が著しく低下
する。
【0018】Al濃度が1.0重量%を越えると、Al
によるドロスの生成が多く、鋼板に付着してドロス付着
欠陥を引き起こすという問題がある。めっき浴面を不活
性ガスで充たしたとしても、不活性ガス中には数ppm
程度の微量酸素が含まれており、Alによる酸化ドロス
を多量に生成する。また、鋼板から浴出した過剰のFe
と反応してFe−Alドロスを多量に生成するため問題
となる。
【0019】また、Al濃度が1.0重量%を越える
と、Al富化層が過度に生成される。Al富化層が過度
に生成されると、溶融亜鉛めっき後引き続き行われる合
金化処理の際、Fe−Znの合金化反応を過度に抑制す
る。そのため、長大な合金化炉を必要とするか、又はラ
イン速度を遅くして合金化処理時間を長くする必要があ
り、設備コストの増大、生産効率の低下を招き好ましく
ない。
【0020】本発明ではめっき浴中の浸漬時間を1.0
秒以下とする。この場合、めっき装置は特に限定される
ものではないが、シンクロールを有しないめっき装置を
使用する場合に有効である。すなわち、めっき浴中での
反応時間が短いため、浴中のAl濃度を増加させること
によってAl富化層を十分形成するわけである。浸漬時
間が1.0秒を越えると溶解Al濃度が0.12〜1.
0重量%であっても浸漬時間が長いため、めっき浴中で
局所的に素地鋼板界面に硬くて脆いFe−Zn合金層が
必要以上に形成される。その結果、めっき密着性が低下
するという問題があり、また、合金化処理をする場合に
は局所的に合金化が進み耐パウダリング性が低下するの
で不可である。一方、浸漬時間が短時間であるために、
めっき浴中での鋼板からのFeの溶出量が極めて少なく
なるので、Feによるドロスが発生しないという極めて
大きな利点がある。
【0021】さらに、溶融亜鉛浴接触時間が0.001
〜0.5秒の場合には、浴中の溶解Al量(重量%)
を、図5に示した斜線範囲内に制御するとさらに効果的
で最適である。図5の斜線範囲は、本発明の浴中Al濃
度と接触時間との関係式 0.002<([Al(%)]−0.12)×(t
(秒)+0.12)<0.04 をグラフ化したものである。なお、この関係式は多数の
実験によって求められた実験式である。本発明は、図5
に示すように溶融亜鉛浴と鋼板との接触時間に応じて、
溶融亜鉛めっき浴中のAl量を規制した溶融亜鉛めっき
鋼板の製造方法である。図5に斜線を施して示した範囲
を下廻る浴中Al量(重量%)でめっきを施すと、Al
富化層が不十分となり浴中でのFe−Zn合金層の形成
を抑制する効果が弱くなり、硬くて脆いFe−Zn合金
層が形成されてめっき密着性が低下し、効果的でない。
さらに溶融亜鉛めっき後の合金化処理においてFe−Z
n合金層の形成が過度に進行し、合金化溶融亜鉛めっき
鋼板の耐パウダリング性が低下し、有効でない。また、
図5に斜線を施して示した範囲を上廻る浴中Al量(重
量%)でめっきを施すと、Al量によるドロスの生成量
が増加したり、あるいは過度のAl富化層が形成される
ためめっき後の合金化反応が十分に行われない場合もあ
るので最適ではないが、1.0重量%以下で好適にめっ
きを行うことができる。
【0022】また、本発明のような鋼板のめっき浴中浸
漬時間が1.0秒以下と短時間の場合、めっき浴中の溶
融亜鉛量は小容量となり、めっき浴温度を保持するため
の入熱量は少なくて良い。この結果、加熱電力量が低下
し、電力コストが低下するという利点がある。一方で、
めっき浴中の溶融亜鉛量が小容量であるため、めっき浴
への入熱量の変化により浴温変動を受けやすくなる。す
なわち、鋼板のめっき浴への侵入板温を浴温より極端に
低温とした場合、浴温を低下させる原因となるため、め
っき浴への加熱熱量を大きくする必要がある。この結
果、余剰の電力コストが必要となり好ましくない。逆に
めっき浴中侵入板温を浴温より極端に高温とした場合、
めっき浴への入熱量が増加するため、めっき浴に冷却手
段を有する装置を付加する必要があるので好ましくな
い。すなわち、本発明におけるめっき浴中への侵入板温
は、外乱による影響がない場合に浴温と等しくするかあ
るいは浴温±15℃に制御すると好適である。また、浴
温は450〜550℃、望ましくは460〜530℃で
あると好適である。さらに、めっき後の溶融亜鉛めっき
鋼板は、付着量調整装置、例えばガスワイピング装置に
て所定の付着量、例えば20〜80g/m2 に制御され
る。浴温が450℃未満であると、ガスワイピング装置
を用いて付着量を調整する場合、めっき後鋼板に付着し
た溶融亜鉛の凝固が起こりやすく、所定の付着量、例え
ば20〜80g/m2 に制御することが困難となる。ま
た、浴温が550℃を越えるとめっき浴中でFe−Zn
合金層が過度に生成されるため好ましくない。
【0023】次に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、めっ
き層中のFe含有率が7〜15重量%となるように合金
化炉内で加熱処理することが好ましい。Fe含有率が7
重量%未満であると合金化反応が不十分となり、耐フレ
ーキング性が低下するという新たな問題が発生する。一
方、Fe含有率が15重量%を越えると、めっき浴中で
Al富化層を厚く生成したとしても合金化加熱処理にお
いてFe−Zn合金化反応が過度に進行することとなり
耐パウダリング性が低下する。具体的には、合金化処理
温度が450〜600℃、望ましくは450〜520℃
で、めっき表層まで合金化される時間(望ましくは2〜
30秒)で加熱、保持した後、400℃以下に急冷し、
合金化の進行を停止させる。合金化処理温度が450℃
未満であると、合金化反応が進行し難く、長大な合金化
炉を必要とするか、もしくはライン速度を遅くする等し
て合金化処理時間を長くする必要があり、設備コストの
増大、生産効率の低下を招き好ましくない。また、60
0℃を越えると、合金化反応が進行しすぎて耐パウダリ
ング性が低下する。
【0024】このようにして合金化処理することによ
り、付着量20〜80g/m2 でめっき層中のFe含有
率7〜15重量%の合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得ら
れ、耐パウダリング性が良好なものとなる。次に溶融亜
鉛めっき鋼板の場合、Al富化層の量をAl量で0.0
5g/m2以上としたのは、図6に示したように、Al
富化層の量をAl量で0.05g/m2 以上とすればめ
っき密着性は問題がなくなるからである。上限は制限す
るものではないが、製造コスト面からAl量は低いほど
良く、Al富化層の量をAl量で0.05〜0.12g
/m2 とすると好適である。Al富化層の量は浸漬時間
に応じて溶融亜鉛浴中のAl濃度を適切に定めることに
よって得ることができる。
【0025】合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合、Al富
化層中のAl量は耐パウダリング性に大きな影響があ
る。図7はAl富化層の量と耐パウダリング性(剥離量
cps)との関係を示した。Al富化層の量を多く形成
した方が耐パウダリング性が向上する。一方、Al富化
層を極端に多く形成した場合、合金化加熱処理でFe−
Znの合金化反応を過度に抑制するため合金化しにくく
なり好ましくない。これを防止するために、合金化溶融
亜鉛めっき鋼板を製造する場合、溶融めっきの際に形成
されるAl富化層中のAl量は0.2g/m2 以下に限
定し、引き続き合金化加熱処理を施すと好適である。下
限は制限されるものではないが、図7より0.08g/
2 以上とすると好適である。
【0026】Al富化層の量を調節する手段としては、
上記の浸漬時間及びAl濃度を調節する手段の他に、浴
温や鋼組成、めっき後の冷却方法、めっき付着量等を調
整する手段がある。
【0027】
〔実施例1〕
板厚:0.7mm、板幅:100mmの極低炭素鋼板を
2 −5%H2 雰囲気中で800℃−20秒の焼鈍を行
った後溶融亜鉛めっき浴中の浸漬時間:0.001〜
.0秒でめっきを施した。めっき後、ガスワイピング
装置にて付着量を40〜70g/m2 になるように調整
した。このようにして得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼
板の任意位置をサンプリングし、めっき表面外観の目視
評価及びデュポン衝撃テスト−セロテープ剥離試験によ
りめっき密着性を評価した。
【0028】<めっき密着性>剥離段階は次の4段階評
価とした。 ◎:めっき層の亀裂なし(良好) 〇:めっき層の剥離なし(わずかに亀裂あり) △:めっき層の亀裂あり ×:めっき層の剥離あり <めっき表面外観> ◎:良好 〇:軽度のドロス付着あり ×:ドロス付着欠陥あり 得られた結果を表1に示す。
【0029】〔実施例2〕 板厚:0.7mm、板幅:100mmの極低炭素鋼板を
2 −5%H2 雰囲気中で800℃−20秒の焼鈍を行
った後、溶融亜鉛めっき浴中の浸漬時間:0.001〜
3.0秒でめっきを施した。めっき後、ガスワイピング
装置にて付着量を40〜50g/m2 になるように調整
した。次いで合金化処理を施し、得られた合金化溶融亜
鉛めっき鋼板の任意位置をサンプリングし、めっき表面
外観の目視評価、耐パウダリング性及び焼けむらの目視
評価をした。
【0030】それぞれの評価基準を以下に示す。 <耐パウダリング性の評価>合金化溶融亜鉛めっき鋼板
の圧縮曲げ側にセロテープを貼り、90°曲げ戻しテス
ト後、セロテープ剥離し、テープに付着した剥離量を測
定して評価した。 ◎:優 〇:良 △:やや不良 ×:不良 <めっき表面外観> ◎:良好 〇:軽度のドロス付着あり ×:ドロス付着欠陥あり <焼けむらの評価> ◎:問題なし 〇:わずかに未合金部あり(問題なし) ×:未合金部あり 得られた結果を表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】以上述べたように、本発明による溶融亜
鉛めっき鋼板及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
によれば、めっき密着性、耐パウダリング性に優れ、自
動車用鋼板等の用途に好適な溶融亜鉛めっき鋼板及び合
金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造が可能になる等の優れた
効果をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例装置の縦断面図である。
【図2】従来例装置の縦断面図である。
【図3】実施例装置の縦断面図である。
【図4】従来例装置の縦断面図である。
【図5】溶融亜鉛めっき浴と鋼板の接触時間とめっき浴
中へのAl添加量との関係を示したグラフである。
【図6】Al富化層中のAl量とめっき密着性との関係
を示すグラフである。
【図7】Al富化層量と耐パウダリング性との関係を示
すグラフである。
【符号の説明】
1 鋼板 2 溶融亜鉛浴 3 シンクロール 4 スナウト 5 サポートロール 6 付着量調整装置(ガスワイピング装置) 7 デフレクタロール 8 ガイドロー
ル 9 電磁場印加装置 10 溶融亜鉛浴 11 空中ポット 12 加熱帯 13 保熱帯、冷却帯
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 千昭 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 鉄鋼開発・生産本部 鉄 鋼研究所内 (72)発明者 望月 一雄 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 鉄鋼開発・生産本部 鉄 鋼研究所内 (72)発明者 宮川 和也 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 千葉製鉄所内 (72)発明者 清水 益人 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 千葉製鉄所内 (56)参考文献 特開 平6−101009(JP,A) 特開 平6−81101(JP,A) 特開 平6−14810(JP,A) 特開 平4−36446(JP,A) 特開 平3−211264(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 純Zn及び不可避不純物からなる溶融亜
    鉛めっき浴中へ溶解Al濃度0.12〜1.0重量%の
    Alを添加し、該めっき浴中に鋼板を浸漬時間1.0秒
    以下浸漬し、溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき鋼板
    の製造方法において、 純Zn及び不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき浴と
    鋼板との接触時間(t):0.001〜0.5秒でめっ
    きを施す際、該浴中に 0.002<([Al(重量%)]−0.12)×(t
    (秒)+0.12) <0.04 を満足するAlを添加する ことを特徴とする溶融亜鉛め
    っき鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 めっき層中Al富化層の量をAl量で
    0.05g/m2 以上とすることを特徴とする請求項1
    記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 純Zn及び不可避不純物からなる溶融亜
    鉛めっき浴中へ溶解Al濃度0.12〜1.0重量%以
    上のAlを添加し、該めっき浴中に鋼板を浸漬時間1.
    0秒以下浸漬して溶融亜鉛めっきを施した後、加熱合金
    化処理する合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法におい
    て、 純Zn及び不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき浴と
    鋼板との接触時間(t):0.001〜0.5秒でめっ
    きを施す際、該浴中に 0.002<([Al(重量%)]−0.12)×(t
    (秒)+0.12)<0.04 を満足するAlを添加し、溶融亜鉛めっきを施した後、
    加熱合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛
    めっき鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記溶融亜鉛めっきの際、めっき層中A
    l富化層の量がAl量で0.2g/m 2 以下である溶融
    亜鉛めっきを施した後、加熱合金化処理することを特徴
    とした請求項3記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造
    方法。
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