JP3494946B2 - 粘着性が低減された軟質眼内レンズ及びその製法 - Google Patents

粘着性が低減された軟質眼内レンズ及びその製法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、粘着性が低減された軟質眼内レ
ンズ及びその製法に係り、特に、重合成分の少なくとも
一部にアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エス
テルを用いて重合して得られるアクリル系重合体からな
る軟質性の眼内レンズにおいて、その表面における粘着
性を有利に低減させることの出来る技術に関するもので
ある。
【0002】
【背景技術】従来から、白内障の手術等では、眼組織に
設けた切開口を通じて、嚢内の水晶体を摘出した後、該
水晶体に代替する眼内レンズを、かかる切開口より眼内
に挿入して嚢内や嚢外に位置せしめる手法が、広く用い
られてきている。
【0003】ところで、そのような手法を用いた白内障
手術等においては、近年、眼組織に設ける切開口を出来
る限り小ならしめることが、術後における回復が早く、
術後乱視が効果的に軽減される等の理由から、強く求め
られてきており、また、そこで用いられる眼内レンズと
しては、小さな切開口からの挿入が可能となるように、
折り畳みや巻き上げ等によって容易にコンパクト化する
ことが出来、なお且つ眼内への挿入後において、元の形
状が容易に復元され得るものであることが、望まれてい
る。
【0004】そして、こういった要請に応え得る眼内レ
ンズとして、所定の軟質材料にて形成されて、柔軟性と
弾性とを備えてなる軟質性の眼内レンズ(軟質眼内レン
ズ)が、これまでに各種提案されてきており、例えば、
特開平5−146461号公報や特開平1−15894
9号公報には、アクリル酸エステルとメタクリル酸エス
テルとからなるコポリマーを、更にジアクリル酸エステ
ルで架橋して得られるアクリル系の材料にて構成した弾
性眼内レンズ(本体)が、提案されている。また、特開
平4−292609号公報においては、芳香環を有する
アクリル酸エステル乃至はメタクリル酸エステルの少な
くとも2種以上と所定の架橋性単量体とを含む単量体混
合物を重合することにより得られる共重合体にて、柔軟
な眼内レンズを構成することが明らかにされている。
【0005】しかしながら、そのような重合成分の一部
にアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルを用いて
重合して得られるアクリル系重合体からなる軟質眼内レ
ンズ(以下において、このような眼内レンズを、アクリ
ル系軟質眼内レンズと呼称する)にあっては、その表面
において、粘着性が余りにも高くなり過ぎているため
に、各種の問題が内在しているのである。
【0006】すなわち、かかる従来のアクリル系軟質眼
内レンズにあっては、それを眼内に挿入するために、折
り畳み等によりコンパクト化せしめると、それによって
重なり合わされた面と面とが互いに強く粘着してしまう
のであり、このため、眼内への挿入後において、レンズ
形状を元に戻すべく、コンパクトな状態を保持させてい
た外力を除去せしめても、レンズの有する弾性に基づく
ところの形状復元力(回復力)が、重なり合ったレンズ
面間に働く粘着力に打ち勝つことが出来ず、従って、そ
の重なったレンズ面同士がくっついたままとなり、結果
的に、所期のレンズ形状が充分に回復され得なくなると
いう問題があった。また、上記の従来品にあっては、眼
内への挿入に際して、その挿入補助用具たる眼内レンズ
挿入器具等にて把持すると、それに粘着して離れなくな
ったり、また、保存用のレンズケースに収容すると、ケ
ース内面に粘着して、取り出し難くなる等の問題もあ
り、取扱性において著しく劣るものであったのである。
【0007】そこで、このような問題に対処するため
に、米国特許第5882421号明細書には、アクリル
系軟質眼内レンズに対してプラズマ放電処理を施すこと
によって、かかる眼内レンズの表面粘着性を低減させる
方法が提案されている。しかしながら、このプラズマ放
電処理にあっては、確かに、レンズ表面において低い粘
着性を実現することが出来るものの、明らかな粘着性の
低減効果を得るには、長時間に亘って、若しくは高いエ
ネルギー密度において強く行なう必要があるところか
ら、そういった長時間処理や高密度処理によって、レン
ズ表面の白濁といった不具合が生ぜしめられるのであ
り、また、そのような粘着性の低減効果にあっても、時
間の経過と共に低下してしまうという不十分なものであ
った。加えて、プラズマ放電処理にあっては、眼内レン
ズの物性的又は力学的強度を低下させたり、濡れ性を始
めとする表面特性を変化させて、術後において、眼内レ
ンズへの細胞の付着,増殖を招来する問題もある。
【0008】一方、特開平1−300957号公報に
は、アクリル樹脂等をレンズ材料とする眼内レンズに対
して電子線を照射せしめることによって、眼内レンズの
剛性を有利に高め得て、レンズ変形後における形状復元
力を効果的に大ならしめることが出来ることが、明らか
にされている。而して、かくの如くアクリル系軟質眼内
レンズに電子線照射処理を施せば、折り畳み等の変形操
作により重ね合わされたレンズ面同士が、表面粘着性に
起因して互いにくっついてしまうようなことがあって
も、その得られる大きな形状復元力によって、それらレ
ンズ面は容易に剥離され得るようになるという効果が得
られるのであるが、かかる電子線照射処理にあっては、
レンズ表面の粘着性自体を変化させるものではないこと
から、眼内レンズ挿入器具やレンズケース等への粘着と
いった問題は何等解消され得ないのである。また、電子
線照射にあっては、アクリル系軟質眼内レンズの黄色化
を引き起こしたり、更には、それが、レンズの剛性を高
くすることが出来る、換言すれば、レンズを硬化させる
ものであるところから、電子線にて処理されたレンズに
あっては、変形させ難いものとなるといった問題をも内
在している。
【0009】このため、本願出願人にあっては、先に、
特開平10−24097号公報において、アクリル酸エ
ステル及び/又はメタクリル酸エステル含有の重合成分
に重合開始剤を添加せしめてなるレンズ用組成物を熱重
合させて、眼用レンズ成形体を作製した後、その得られ
たレンズ成形体に対して、光を照射せしめる、好適には
紫外光を照射することによって、べたつきの極めて少な
い低粘着性の眼用レンズを製造する手法を明らかにし
た。
【0010】しかしながら、そのような本願出願人の提
案した手法について、本発明者が更に検討を加えたとこ
ろ、光を照射する光源として、上記の特開平10−24
097号公報において例示される如き、様々な波長の紫
外光を発し得る低圧水銀ランプ,高圧水銀ランプ,超高
圧水銀ランプ等を用いると、レンズが硬化するといった
レンズ材料(アクリル系重合体)の物性変化が生じるこ
とがあり、また、レンズの粘着性を充分に低下させるた
めには、比較的多量のエネルギーが必要となることが判
明したのである。
【0011】
【解決課題】かかる状況下、本発明者が鋭意研究を重ね
た結果、ピーク波長が300nmよりも大きな光にあっ
ては、アクリル系軟質眼内レンズの表面における粘着性
の低減に何等寄与するものではなく、逆に不要な熱を発
生させるだけであり、また一方、粘着性の低減に効果の
ある300nm以下の光にあっても、ピーク波長が小さ
くなればなる程、具体的には、200nmよりも小さく
なると、レンズ材料たるアクリル系重合体の劣化を惹起
するようになるという知見を得たのであり、従って、上
記水銀ランプ等のような、紫外領域に亘って広がる連続
スペクトル若しくは線スペクトルを有するものを光源に
用いて、アクリル系軟質眼内レンズの光照射処理を行な
うような場合には、200nm未満の低ピーク波長の光
によって、レンズ物性の変化が生じると共に、粘着性の
低減には全く必要のない300nmを超えるピーク波長
の光によって、その分だけ余分にエネルギーが消費され
ることとなるために、全体としてのエネルギー消費量が
無駄に増大してしまうことが、判明したのである。
【0012】そして、本発明者の更なる鋭意検討の結
果、アクリル系軟質眼内レンズに照射される光として、
ピーク波長が200〜300nmの範囲内にある紫外光
を用いれば、200nm未満の波長の光や300nmを
超える波長の光が主として照射されるものではないとこ
ろから、上記したような種々の問題が悉く解消され得る
ことを見出し、本発明に到達するに至ったのである。
【0013】ここにおいて、本発明は、そのような知見
に基づいて完成されたものであって、その解決課題とす
るところは、重合成分の少なくとも一部にアクリル酸エ
ステル及び/又はメタクリル酸エステルを用いて重合し
て得られるアクリル系重合体からなる軟質性の眼内レン
ズにして、その表面における粘着性が充分に低減され得
ていると共に、柔軟性の如き所期のレンズ物性を良好に
備え、しかも、その製造におけるエネルギー消費量の少
ない軟質眼内レンズを提供することにあり、また、その
ような特徴を有する軟質眼内レンズを有利に製造し得る
手法を提供することにある。
【0014】
【解決手段】そして、本発明にあっては、かかる課題を
解決するために、重合成分の少なくとも一部にアクリル
酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを用いて重
合して得られるアクリル系重合体からなる軟質性の眼内
レンズにして、ピーク波長が200〜300nmの範囲
内にある紫外光が照射されて、その粘着性が低減せしめ
られていることを特徴とする粘着性が低減された軟質眼
内レンズを、その要旨とするものである。
【0015】すなわち、この本発明に従う軟質眼内レン
ズは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エス
テルを少なくとも含む重合成分の重合により得られるア
クリル系重合体にて、構成されるものであるが、それ
は、更に、紫外領域、特に200〜300nmの範囲内
のピーク波長を有する紫外光が照射せしめられているこ
とによって、その表面が効果的に改質されて、アクリル
系重合体に由来する高い表面粘着性が、実用上において
問題とならない低さにまで充分に低減され得ていると共
に、レンズの変形を可能と為す適度な柔軟性等といっ
た、アクリル系重合体本来の優れた物性が、その光照射
によって大きく変化せしめられることなく、充分に確保
され得たものとなっているのである。それに加えて、本
発明にあっては、前記特定の紫外光のみが眼内レンズに
照射されることから、そのような光照射においては、レ
ンズ物性に悪影響を及ぼすことのない有利な粘着性の低
減を実現するのに必要なエネルギーが主として与えられ
ることとなるため、かくの如き眼内レンズの製造におけ
るエネルギー消費量は、極めて少ないものとなるという
利点をも有しているのである。
【0016】そして、上記の如き本発明に従う、粘着性
が低減された軟質眼内レンズの好ましい態様の一つによ
れば、前記眼内レンズは、紫外線吸収剤を含有している
ことが望ましい。このような態様を採用することによっ
て、かかる眼内レンズに照射される前記所定の紫外光
が、眼内レンズの表面付近で有利に吸収され得て、眼内
レンズの内部にまで透過しないようになるのであり、そ
れ故に、レンズ物性の変化を良好に防止しつつ、表面粘
着性が効果的に低減され得るのである。
【0017】ところで、本発明にあっては、重合成分の
少なくとも一部にアクリル酸エステル及び/又はメタク
リル酸エステルを用いて重合して得られるアクリル系重
合体からなる軟質性の眼内レンズに対して、200〜3
00nmの範囲内のピーク波長を有する紫外光を照射せ
しめて、かかる眼内レンズの粘着性を低減させることを
特徴とする粘着性が低減された軟質眼内レンズの製法
も、また、その要旨とするものである。
【0018】要するに、かくの如き本発明に従う軟質眼
内レンズの製法にあっては、重合成分として、アクリル
酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを少なくと
も含むものを用いて、その重合操作を実施することによ
り、アクリル系重合体からなる軟質眼内レンズを形成し
た後、更に、かかるアクリル系軟質眼内レンズに対し
て、紫外光の中でも、そのピーク波長が200〜300
nmの範囲内にある紫外光を照射せしめるものであるこ
とから、アクリル系軟質眼内レンズの表面粘着性を有利
に低減せしめて、白内障手術等における各種作業・操作
を妨げない程度と為すことが出来るばかりでなく、その
ような粘着性の低減を、レンズ材料(アクリル系重合
体)を著しく劣化させることなく、しかもエネルギー消
費量を少なく抑えつつ、達成することが出来るのであ
る。
【0019】従って、このような本発明に従う製法によ
れば、実用上有利となる低い粘着性と良好なレンズ物性
とを兼ね備える軟質眼内レンズが、少ないエネルギー消
費量において効率良く製造され得るのである。
【0020】なお、かかる本発明に従う、粘着性が低減
された軟質眼内レンズの製法において、前記眼内レンズ
が、紫外線吸収剤を含有していることが望ましいこと
は、前記と同様である。
【0021】また、本発明に従う粘着性が低減された軟
質眼内レンズの製法における望ましい態様の一つによれ
ば、前記紫外光を照射する光源に対して、前記眼内レン
ズを相対的に回転せしめつつ、前記紫外光の照射を行な
うことが好ましく、また、別の望ましい態様の一つにお
いては、前記紫外光を照射する光源が、前記眼内レンズ
から離隔した位置において、レンズ光軸上に配置せしめ
られて、その状態下において、前記紫外光の照射が行な
われることとなる。
【0022】
【発明の実施の形態】ところで、上述の如き本発明に係
る軟質眼内レンズにおいて、その形成材料たるアクリル
系重合体を与える重合成分は、必須の成分として、アク
リル酸エステル及びメタクリル酸エステル〔以下、これ
らのエステル単量体を総称して、(メタ)アクリル酸エ
ステルと呼ぶこととする〕のうちの少なくとも1種以上
を含むものであるが、この(メタ)アクリル酸エステル
としては、従来からアクリル系軟質眼内レンズにおいて
用いられている何れのものも採用され得、例えば、以下
のものを挙げることが出来る。なお、本明細書におい
て、「・・・(メタ)アクリレート」とは、「・・・ア
クリレート」並びに「・・・メタクリレート」の2つの
化合物を総称するものであり、また、その他の(メタ)
アクリル誘導体についても、同様である。
【0023】すなわち、かかる(メタ)アクリル酸エス
テルの代表的なものとしては、メチル(メタ)アクリレ
ート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)ア
クリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の
直鎖状,分岐鎖状又は環状のアルキル(メタ)アクリレ
ート類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒド
ロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)
アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレ
ート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等
のフッ素含有(メタ)アクリレート類;フェノキシエチ
ル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレー
ト、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の芳香環含
有(メタ)アクリレート類;トリメチルシロキシジメチ
ルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロ
キシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート等の
シリコン含有(メタ)アクリレート類等が挙げられ、こ
れらのうちの1種乃至は複数が適宜に選択されて、用い
られることとなる。
【0024】また、このような(メタ)アクリル酸エス
テルを含んで構成される重合成分にあっては、通常のア
クリル系軟質眼内レンズの場合と同様、更に必要に応じ
て、上記(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体、例
えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メ
タ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド又はそ
の誘導体、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルラクタ
ム類や、スチレン又はその誘導体の他、ブタンジオール
ジ(メタ)アクリレートやエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート等の架橋性モノマー等を含有するもの
であっても、何等差し支えないのである。
【0025】なお、アクリル系軟質眼内レンズの形成に
利用可能な(メタ)アクリル酸エステルやその他の単量
体としては、例えば、特開平10−24097号公報や
特開平11−56998号公報等において、より具体的
に例示されており、本発明では、それらの如何なるもの
をも、前記重合成分の構成単量体として採用し得るもの
であることは、言うまでもないところである。
【0026】そして、そのような重合成分を用いて、ア
クリル系軟質眼内レンズを形成するに際しては、通常の
眼内レンズの製造において用いられている各種の手法、
例えば、上記所定の重合成分を重合せしめて、棒状,ブ
ロック状,板状等のアクリル系重合体からなるレンズブ
ランクを形成した後、旋盤等を用いて、その得られたレ
ンズブランクに対して切削加工を施すことにより、所望
形状の眼内レンズを形成する切削加工成形法や、目的と
するレンズ形状に対応した成形キャビティを有するモー
ルド成形型を用いて、その成形キャビティ内に重合成分
を導入し、そして適当な重合操作を実施することによ
り、アクリル系重合体からなる眼内レンズを重合成形せ
しめるモールド成形法等が採用され得るが、アクリル系
重合体が常温において粘着性を示すものであるところか
ら、製造性の点で、前記のモールド成形法が有利に用い
られる。
【0027】さらに、そのようなアクリル系軟質眼内レ
ンズの形成において、重合成分の重合操作は、一般によ
く知られている各種の重合手法に従って行なわれ得るも
のであり、例えば、熱重合や光重合、或いはそれらを組
み合わせた手法等を、適宜に採用することが出来る。ま
た、重合成分の重合時には、その重合成分に対して、熱
重合開始剤や光重合開始剤、色素等の公知の各種の添加
剤を添加せしめることも可能である。
【0028】ところで、本発明において、上記の如くし
て形成されるアクリル系軟質眼内レンズにあっては、有
利には、紫外線吸収剤を含有していることが望ましいの
である。即ち、そのような紫外線吸収剤を含有するアク
リル系軟質眼内レンズに対して、前述の本発明に従う光
照射処理を実施する場合には、前記特定波長の紫外光
が、レンズの表面付近にある紫外線吸収剤に有利に吸収
され得て、かかる表面付近に光のエネルギーがより一層
付与され易くなる、換言すれば、レンズ内部には光が作
用され難くなるのであり、その結果として、粘着性の低
減が良好なエネルギー効率において達成され得るように
なると共に、レンズ内部における材料劣化が効果的に防
止乃至は解消され得ることとなるのである。特に、本発
明にあっては、アクリル系軟質眼内レンズに照射する光
として、紫外光が利用されるところから、眼内レンズに
含有せしめる紫外線吸収剤としては、水銀ランプ等を用
いて光照射を行なう場合のように、様々な波長の光を吸
収し得るものである必要はなく、少なくとも照射する紫
外光に対して有効な吸収作用を発揮し得るものであれば
良いのであり、従って、その選定が比較的容易なものと
なることから、上述の如き優れた効果を有利に且つ確実
に得ることが出来るという特徴がある。
【0029】そして、この種の紫外線吸収剤としては、
例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノ
ン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等
のベンゾフェノン類;2−(2′−ヒドロキシ−5′−
メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2
(3′−t−ブチル−2′−ヒドロキシ−5′−メチル
フェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール
類;サリチル酸誘導体類;ヒドロキシアセトフェノン誘
導体類等の非重合性のものや、それらと同様な化学構造
部分を有すると共に、前記重合成分を構成する(メタ)
アクリル酸エステル等との共重合が可能な重合性のも
の、具体的には、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリ
ロイルオキシベンゾフェノン、2−(2′−ヒドロキシ
−5′−メタクリルオキシエチレンオキシ−t−ブチル
フェニル)−5−メチルベンゾトリアゾール等を挙げる
ことが出来、これらの中から、アクリル系軟質眼内レン
ズに照射せしめる紫外光を有利に吸収し得るものが適宜
に選定されて、単独で若しくは複数を組み合わせて、用
いられることとなる。
【0030】なお、このような紫外線吸収剤にあって
は、通常、前記重合成分の重合時に、その重合成分に対
して添加せしめられることにより、得られるアクリル系
軟質眼内レンズ中に、単なる配合形態において、或いは
(メタ)アクリル酸エステル等との共重合よる化学的結
合形態において含有せしめられることとなる。
【0031】また、かくしてアクリル系軟質眼内レンズ
に含有せしめられる紫外線吸収剤の含有量としては、特
に限定されるものではないが、一般に、前述した含有効
果が効果的に奏され得るように、0.01重量%以上、
好ましくは0.05重量%以上の割合が採用される。ま
た一方、紫外線吸収剤の含有量が多過ぎる場合には、最
終的に得られる眼内レンズの眼内への挿入後において、
YAGレーザ等による眼内へのレーザ照射時に、かかる
紫外線吸収剤が房水中に溶出し、それによって、眼内の
細胞に悪影響が及ぼされたり、或いはまた、レンズにお
ける光の透過率の変化が惹起されることにより、好まし
くない波長の光までが吸収されるようになる等の恐れが
あるところから、その含有量の上限は、5重量%以下、
好ましくは3重量%以下の割合とされる。
【0032】そして、本発明にあっては、以上のように
して得られたアクリル系軟質眼内レンズに対して、望ま
しくはその両面に対して、紫外領域にある所定波長の紫
外光を照射せしめることによって、目的とする粘着性の
低減された軟質眼内レンズが形成されることとなるので
あるが、本発明では、紫外光のうちで、ピーク波長が2
00〜300nmの範囲内にあるものが用いられるので
ある。けだし、300nmを超えるピーク波長の光にあ
っては、アクリル系軟質眼内レンズの粘着性を下げる効
果が全くなく、一方、ピーク波長が200nm未満の光
は、レンズを硬化させる等といったレンズ材料の劣化を
惹起するようになるからである。
【0033】なお、そのような特定の紫外光を用いた本
発明に従う光照射処理は、一般に、ピーク波長:λが上
記範囲内の紫外光だけを照射することの出来る公知の各
種の光源を用いて、実施されるものであり、またそのよ
うな光源としては、例えば、殺菌灯(λ=253.7n
m);Kr−Clレーザ(λ=222nm)、Kr−F
レーザ(λ=249nm)、Cl2 レーザ(λ=259
nm)、Xe−Brレーザ(λ=282nm)等のエキ
シマレーザ;YAGレーザ(第4高調波:λ=266n
m)等を利用することが出来る。そして、特に好ましく
は、安価な殺菌灯の使用が推奨されるのである。
【0034】また、かかる光源を用いて、本発明に従
い、アクリル系軟質眼内レンズの光照射処理を行なうに
際しては、一般的な光の照射手法が採用され得、通常、
使用する光源の種類等に応じた適宜な方法が選定され
て、用いられることとなる。
【0035】例えば、処理対象たる眼内レンズを、光源
に対して、位置固定的に配置せしめたり、或いは、相対
的に回転せしめつつ、光照射を行なう手法を採用するこ
とが可能であるが、それら何れの場合においても、有利
には、眼内レンズの光軸(幾何学的中心軸)上におい
て、光源が、レンズから所定距離だけ離隔して位置する
形態となるように、それら光源及び眼内レンズを配置す
る手法が、好適に採用されるのである。このような手法
を採用することによって、眼内レンズの表面に対して紫
外光を万遍なく照射せしめることが出来ることから、レ
ンズ表面の粘着性が、その全体に亘って均一に低減され
得ることとなる。
【0036】また、眼内レンズを光源に対して相対的に
回転させながら光照射を実施する上記の手法にあって
は、複数個の眼内レンズに対して同時に光照射処理を施
すような場合等において特に有用であり、例えば、光源
下の所定位置に配された回転機構を備えるテーブル上
に、処理すべき眼内レンズの複数を、該テーブルの回転
方向で順に並ぶようにして載置せしめた後、回転機構を
駆動させてテーブルを回転せしめつつ、かかるテーブル
の上方に位置する光源にて所定の紫外光を眼内レンズに
照射せしめること等により有利に実現され得て、何れの
レンズに対しても光をムラなく均一に照射することが出
来るという効果を奏し得るのである。即ち、このような
手法によれば、得られるレンズ間の品質のバラツキが可
及的に少なくなるところから、本発明に従う軟質眼内レ
ンズ製品の工業的大量生産が可能となるのである。
【0037】更にまた、このような本発明に従う光照射
処理において、前記特定の紫外光の照射強度や照射時間
といった照射条件は、得ようとする眼内レンズに要求さ
れる表面粘着性の程度等に応じて、それら条件間の相関
関係を加味しつつ、総合的に設定され、具体的には、照
射強度と照射時間との積にて求められる照射エネルギー
量を考慮する等して適宜に設定されるものであるが、一
般に、照射強度としては、0.1〜120mW/c
2 、好適には0.2〜60mW/cm2 程度の強度が
採用され、また、照射時間は、通常、1分〜60分、好
適には5分〜30分程度とされる。
【0038】かくの如く、本発明に従って、特定の紫外
光による光照射処理をアクリル系軟質眼内レンズに対し
て施せば、かかる眼内レンズの粘着性を、柔軟性等のレ
ンズ物性に多大な影響を及ぼすことなく、エネルギー的
に有利に低減することが出来るのである。
【0039】従って、このようにして得られる、本発明
に従う粘着性の低減された軟質眼内レンズにあっては、
白内障手術等において有利に用いられて、小さく折り畳
む若しくは巻き上げることにより、小さな切開口からで
も容易に眼内に挿入され得るばかりでなく、そういった
折り畳みや巻き上げ操作によって、レンズ面が重ね合わ
されても、それら重なり合った面同士が互いに強く粘着
してしまうようなことがないことから、レンズの挿入後
において、折り畳み乃至は巻き上げ状態を保持させてい
た外力を除去するだけで、レンズの持つ形状復元力或い
は回復力に基づいて、元の形状が容易に復元され得るの
であり、しかも、眼内レンズ挿入器具や保存用のレンズ
ケース等に粘着するような問題も何等惹起され得ないた
め、取扱性においても優れるという特徴をも発揮し得る
のである。
【0040】なお、このような本発明に従う軟質眼内レ
ンズには、それを眼内の眼組織に支持,固定せしめるた
めの支持部が、従来と同様に、適宜に設けられるもので
あることは、言うまでもないところであるが、かかる支
持部にあっては、従来と同様、所定の重合性材料を用い
て、前記重合成分の重合によるレンズ形成時において同
時に乃至は一体的に形成されたり、或いはレンズとは別
体形成されて、光照射処理前若しくは処理後において、
熔着等によりレンズに取り付けられることとなる。
【0041】
【実施例】以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本
発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明
が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも
受けるものでないことは、言うまでもないところであ
る。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には
上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない
限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更,
修正,改良等を加え得るものであることが、理解される
べきである。
【0042】実施例 1 先ず、下記表1に示される如き配合組成のレンズ形成用
重合組成物を調製,準備した。なお、かかる重合組成物
の調製に際しては、重合成分として、2−フェノキシエ
チルアクリレート(POEA)、2−ヒドロキシエチル
メタクリレート(HEMA)、エチルアクリレート(E
A)、並びに架橋性モノマーたるブタンジオールジアク
リレート(BDDA)を用いた。また、熱重合開始剤と
しては、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロ
ニトリル)を用いる一方、紫外線吸収剤としては、2−
(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリルオキシエチレン
オキシ−t−ブチルフェニル)−5−メチルベンゾトリ
アゾールを使用した。
【0043】
【0044】次いで、上記で準備した重合組成物を用い
て、それを所定のモールド成形型内において、50℃の
温度で、24時間加熱せしめる熱重合操作を実施するこ
とにより、直径:6mm×厚さ:1mmのアクリル系軟
質眼内レンズをモールド成形した。
【0045】さらに、このようにして得られたアクリル
系軟質眼内レンズを用い、その3個を一群として、各群
のレンズに対して、以下のA〜Cの光照射処理を実施す
ることにより、それぞれ試験レンズA〜Cを作製した。
【0046】・光照射処理A 光源として、ピーク波長が253.7nmの紫外光を照
射し得る殺菌灯(株式会社東芝社製)を取り付けた露光
ボックスを用いて、かかる露光ボックス内における光源
の真下で約20cm離れた位置に、処理対象のアクリル
系軟質眼内レンズを配置して、レンズ面の一方を光源に
対向せしめた後、空気雰囲気下、照射強度:1.5mW
/cm2 及び照射時間:15分の照射条件を採用して、
光源より発せられる光をレンズの片面に照射せしめた。
そして更に、他方のレンズ面についても、同様の光照射
を行なうことにより、試験レンズAを得た。
【0047】・光照射処理B 紫外領域に亘って広がる線スペクトルを持つ高圧水銀ラ
ンプと、かかる光源の下20cm離隔して位置する照射
台とを備えた光照射装置を用いて、その照射台上に、所
定のアクリル系軟質眼内レンズを、一方の面を上に向け
て載置した後、照射強度:60mW/cm2 及び照射時
間:60秒の条件下、空気中において、照射台上のレン
ズに光照射する操作を、レンズの両面について実施し
て、試験レンズBを作製した。
【0048】・光照射処理C 前記光照射処理Aで用いた露光ボックスにおいて、殺菌
灯の代わりに、ピーク波長が300nmよりも大きな紫
外光を発するブラックライトランプを光源として取り付
けた後、照射条件以外は処理Aと同様にして、対象とす
るアクリル系軟質眼内レンズの両面に光照射を施すこと
により、試験レンズCを得た。なお、かかる光照射にお
いて採用した照射条件は、照射強度:0.3mW/cm
2 及び照射時間:3時間であった。
【0049】そして、上述の如くして所定の光照射処理
をそれぞれ施して得られた試験レンズA〜Cを用いて、
以下の取扱性試験、折曲試験、及び耐破損性試験をそれ
ぞれ行ない、それらの結果を、下記表2に示した。
【0050】−取扱性試験− 眼内レンズ挿入器具として一般に使用されているプレフ
ォールド鑷子(ハンスゴイダー社製)を用いて、上記試
験レンズA〜Cをそれぞれ把持せしめ、その後、挿入用
鑷子(ハンスゴイダー社製)に持ち換え、そして離す操
作を行い、それより、試験レンズの鑷子による取扱性に
ついて評価した結果を、下記表2に示した。なお、かか
る表2において、それぞれの評価結果は、○:鑷子への
粘着は認められず、取り扱い易い、×:鑷子に粘着する
ため、取り扱い難いとして、表わされている。
【0051】−折曲試験− 先ず、上記取扱性試験において用いたものと同様なプレ
フォールド鑷子を用いて、試験レンズA〜Cのそれぞれ
を半分に折り曲げて、その折り曲げ易さについて評価
し、その結果を、下記表2に示す。なお、この折り曲げ
易さの評価は、○:容易に折り曲げ可能、×:折り曲げ
難い、の2段階において行なった。
【0052】また、かくの如くして試験レンズを半分に
折り曲げて、向かい合うレンズ面同士を重ね合わせた
後、その2つ折りの状態をプレフォールド鑷子により保
持せしめつつ、レンズの外表面を目視にて観察し、その
結果を、折曲後の表面状態として、下記表2に、併せ示
した。なお、かかる表2における観察結果において、
◎:レンズ表面に何等異常は認められない、○:僅かな
皺の発生が認められるが、実用上問題はない、×:多数
の皺の発生が認められる、をそれぞれ表わしている。
【0053】さらに、この後、取扱性試験で用いたもの
と同様な挿入用鑷子に持ち換えて、上記2つ折り状態の
保持を解除せしめることにより、試験レンズが、かかる
2つ折りの状態から開くかどうか、即ち、互いに重なり
合った面と面とが離れて、元のレンズ形状が復元される
か否かについて、調べた。そして、その結果を、形状復
元性として、下記表2に示すが、かかる表2において
は、重なり合うレンズ面同士が直ぐに離れて、元のレン
ズ形状が復元されたものを○、重なり合うレンズ面同士
が離れず、元のレンズ形状が復元されなかったものを×
として、それぞれ表わした。なお、この表2における形
状復元性の結果が×であるということは、試験レンズの
表面における粘着性が高いことを示唆している。
【0054】−耐破損性試験− 先ず、前記取扱性試験において使用したものと同様なプ
レフォールド鑷子を用いて、各種試験レンズをそれぞれ
半分に折り曲げ、次に、それら試験レンズの各々につい
て、取扱性試験で用いたものと同様な挿入用鑷子によ
り、折り曲げた状態のまま、常温で3分間把持せしめ、
更に、そのような挿入用鑷子による把持形態を維持した
状態で、37℃の温度とされた生理食塩水中に1分間浸
漬せしめた後、挿入用鑷子から開放して、それぞれの破
損状況を調べた。そして、破損が認められなかった場合
には○、破損が認められた場合には×として、各試験レ
ンズの耐破損性を評価し、その評価結果を、下記表2に
示した。
【0055】
【0056】かかる表2の結果からも明らかなように、
本発明に従って、前記特定のピーク波長を有する紫外光
が照射されてなる試験レンズAにあっては、鑷子による
取扱性及び形状復元性において良好な結果を示すもので
あることが認められるのであり、このことから、レンズ
表面における粘着性が効果的に低減され得ていることが
分かる。また、かかる試験レンズAにあっては、折り曲
げ易く、且つ耐破損性にも優れることが認められ、これ
より、光の照射前と同程度の良好な柔軟性を備えるもの
であることが認識されると共に、折曲後の表面状態にお
いても、実用上問題のない程度の皺の発生が認められる
に過ぎないことから、前記特定のピーク波長を有する紫
外光にあっては、レンズ物性を大きく変化させないもの
であることが、理解される。
【0057】これに対して、高圧水銀ランプを用いて光
照射処理を施した試験レンズBにあっては、鑷子による
取扱性及び形状復元性についての結果より、レンズ表面
の粘着性が有利に低減され得ていることが確認されるも
のの、レンズが光の照射前に比して硬くなっているため
に、折り曲げ難く、その上、破損し易くなっており、し
かも折り曲げると、レンズ表面に多数の皺が発生するこ
とを認めた。また一方、ブラックライトランプにより3
00nmを超えるピーク波長の紫外光を照射せしめてな
る試験レンズCにあっては、折曲試験(折り曲げ易さ,
折曲後の表面状態)及び耐破損性試験の結果より、光照
射によるレンズ物性の変化は全くないものであることが
認められるが、レンズ表面における粘着性が、光の照射
前と比べて何等変わりがないために、鑷子による取扱性
が悪く、また、折曲後において元のレンズ形状が容易に
復元され得ないものとなっていることを、認めた。
【0058】実施例 2 先ず、実施例1と同様にしてアクリル系軟質眼内レンズ
を作製し、次いで、その得られたアクリル系軟質眼内レ
ンズの複数に対して、以下の光照射処理a〜dを、それ
ぞれ所定の照射強度で最大13時間実施して、下記の粘
着力測定方法に従って得られるレンズの処理表面におけ
る粘着力が、0.098〜0.147N程度となる照射
時間を調べた。なお、眼内レンズ表面における粘着性
(粘着力)は、本発明の目的からしても、出来るだけ低
いものであることが望ましいのであるが、それが余りに
も低くなり過ぎると、眼内レンズ挿入器具等にてレンズ
を把持し難くなる等の不具合が発生するようになるとこ
ろから、かかる粘着力の値が前記範囲内にあることが、
特に好ましいとされる。
【0059】・光照射処理a 実施例1の光照射処理Aと同様な方法により、殺菌灯か
ら発せられるピーク波長が253.7nmの紫外光を、
1.5mW/cm2 の照射強度において、アクリル系軟
質眼内レンズの片面に照射せしめた。
【0060】・光照射処理b 分光分布が200〜600nmに亘る様々な波長の光
を、光ファイバーの先端より照射することが出来る市販
の紫外線照射装置(ウシオ電機株式会社製スポットUV
照射機:SP3−250U)を用いて、処理すべきアク
リル系軟質眼内レンズの上方10cmの高さに、光ファ
イバーの先端を固定して、レンズの一方の面とファイバ
ー先端面とを対向せしめた後、47mW/cm2 の照射
強度を採用して、レンズへの光照射を実施した。
【0061】・光照射処理c 200〜500nmの広域に亘る分光分布を持つ光源を
備えると共に、該光源の下、20cm離れた位置に、水
平方向で回転可能とされた回転テーブルが設けられてな
る紫外線照射装置(伊藤電機工作所製自動出入回転装置
付UV装置)を用いて、その回転テーブル上に、処理対
象のアクリル系軟質眼内レンズを一方の面を上に向けて
載置した後、かかる回転テーブルを回転させつつ、光照
射を行なった。なお、この光照射処理時における照射強
度は、60mW/cm2 であった。
【0062】・光照射処理d 実施例1の光照射処理Cと同様にして、ブラックライト
による光照射を、アクリル系軟質眼内レンズの片面に対
して施した。なお、照射強度としては、0.3mW/c
2 を採用した。
【0063】−粘着力測定方法− 眼内レンズ表面における粘着力の測定は、引張試験機
(ミネベア社製万能引張試験機:TCM−20)、ロー
ドセル(ミネベア社製:UL−20GR)、チェックボ
ックス(ミネベア社製)、アンプ(ミネベア社製計装用
増幅器:CS−5001型)及びペンレコーダ(横河電
機製作所製:TYPE3066)を有して構成される粘
着力測定装置を用いて、23℃の温度に保持された恒温
室内において行なった。
【0064】より具体的には、粘着力測定装置は、前記
引張試験器内の下方部位においてロードセルが配置され
る一方、かかるロードセルに対して、チェックボック
ス、アンプ及びペンレコーダが順に接続されることによ
って、ロードセルの腕部材に作用せしめられる荷重の大
きさを測定して、その測定値をペンレコーダにて記録す
ることが出来るように構成されている。
【0065】そして、かくの如き粘着力測定装置を用い
て、レンズ表面の粘着力を測定するに当たっては、先
ず、引張試験器の上方部位に備えられた圧縮荷重測定用
治具の下面に、長手棒状の治具を鉛直方向で延びる形態
において固定した後、更に、該棒状治具の下端面に対し
て、一方の先端が円錐形状とされてなるロッド状のステ
ンレス製プローブを、その先細り先端が下側となるよう
にして取り付けた。また、測定対象の眼内レンズを、そ
れの粘着力を測定すべき面(処理表面)が上を向くよう
にして、ロードセルの腕部材に固定された皿部材上に載
置し、そして適当な両面テープにて該皿部材に固定する
ことにより、前記プローブの下方に眼内レンズを位置せ
しめて、プローブの中心軸と眼内レンズの幾何学的中心
軸とを一致させた。なお、ここでは、かかるセッティン
グ状態下においてロードセルの腕部材に作用する荷重を
基準(0)とし、その基準状態から更に鉛直方向下方側
に向かって付与される荷重の大きさが正の値として記録
されるように、ペンレコーダを調整した。
【0066】次いで、粘着力測定操作として、引張試験
器を起動させることにより、プローブを5mm/分の速
度で下降せしめて、その先端をレンズ上面に接触させた
後、更にロードセルの腕部材に掛かる荷重が+0.04
9Nとなるまで、プローブの下降を継続させた。そし
て、かかる荷重が+0.049Nに到達したところで、
プローブの下降を停止させて、その状態を30秒間保持
した後、プローブを50mm/分の速度で上昇せしめ
て、プローブの先端をレンズ上面から引き離し、その引
き離しの瞬間における負の荷重値の絶対値を、ペンレコ
ーダによる記録から読み取り、測定した。そして、この
ような一連の測定操作を3回繰り返して行なって、それ
より、それらの測定結果の平均値とその標準偏差とを求
めて、かかる平均値を粘着力とした。
【0067】以上のようにして各光照射処理を行なって
求めた、前記好適な粘着力を得るのに要する照射時間よ
り、次式:照射エネルギー量(mJ/cm2 )=照射強
度(mW/cm2 )×照射時間(秒)に従って、照射エ
ネルギー量をそれぞれ算出し、その結果を、下記表3に
おいて、照射強度及び照射時間と共に示した。なお、1
3時間に亘る照射によっても、前記範囲内の粘着力を得
ることが出来なかった処理については、下記表3におい
て、照射時間を13時間と示すと共に、上式において照
射時間を13時間として計算した結果を、照射エネルギ
ー量として示した。
【0068】
【0069】かかる表3の結果から明らかなように、ア
クリル系軟質眼内レンズに対する光照射を、本発明に従
って、前記特定のピーク波長を有する紫外光にて行なう
光照射処理aにあっては、少なくとも紫外領域に亘って
広がる光を利用する光照射処理b,cや、ピーク波長が
300nmを超える紫外光を照射する光照射処理dと比
べて、非常に少ない照射エネルギー量(即ち、エネルギ
ー消費量)にて、目的とする低い粘着力を実現し得るも
のであることが、分かる。なお、光照射処理dにおいて
は、照射エネルギー量を充分に多くしても、粘着力の低
下が一切認められなかったのであるが、このことから、
300nmよりも大きなピーク波長の光にあっては、ア
クリル系軟質眼内レンズ表面の粘着性を低減させる働き
がないものと、解することが出来る。
【0070】実施例 3 先ず、実施例1と同様にして、アクリル系軟質眼内レン
ズの6個を作製した後、実施例1の光照射処理Aと同様
な方法を用いて、得られたアクリル系軟質眼内レンズの
うちの5つの片面に対して、253.7nmのピーク波
長を有する紫外光を、殺菌灯により、所定の照射条件下
において照射せしめた。なお、照射条件については、照
射強度として、1.5mW/cm2 を採用する一方、照
射強度としては、15分,30分,1時間,2時間,3
時間をそれぞれ採用した。
【0071】次に、このようにして前記特定の紫外光を
所定時間照射せしめた各眼内レンズと、光照射していな
い眼内レンズ(照射時間:0)とについて、先の粘着力
測定方法に従って、光照射を施した表面(光照射してい
ないものは、一方の面)の粘着力をそれぞれ測定し、そ
の測定結果(平均値及び標準偏差)を、照射時間並びに
上記実施例2と同様にして求めた照射エネルギー量と共
に、下記表4に示した。更にまた、その得られた照射エ
ネルギー量と粘着力との関係を、図1において、グラフ
にて示した。
【0072】
【0073】上記表4及び図1の結果からも明らかなよ
うに、本発明に従って、前記所定のピーク波長を有する
紫外光をアクリル系軟質眼内レンズに照射せしめれば、
照射エネルギー量の増加に伴って、レンズ表面の粘着力
が顕著に下がるようになることが認められるのであり、
これより、本発明にあっては、アクリル系軟質眼内レン
ズ表面の粘着性をエネルギー効率良く低減させることが
出来るものと、考えられる。
【0074】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明
にあっては、アクリル系重合体からなる軟質眼内レンズ
に対して、200〜300nmという特定の範囲内のピ
ーク波長を有する紫外光を照射することによって、白内
障手術等に適した低い表面粘着性と良好なるレンズ物性
とを共に備える軟質眼内レンズを、有利に実現し得るも
のであって、しかも、そのような軟質眼内レンズの実現
を可能にする前記紫外光の照射が、少ないエネルギー消
費量において効率的に行なわれ得るといった利点をも、
奏し得るものなのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において得られた、照射エネルギー量と
粘着力との関係を示すグラフである。

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重合成分の少なくとも一部にアクリル酸
    エステル及び/又はメタクリル酸エステルを用いて重合
    して得られるアクリル系重合体からなる軟質性の眼内レ
    ンズにして、ピーク波長が200〜300nmの範囲内
    にある紫外光のみが照射されて、その粘着性が低減せし
    められていることを特徴とする粘着性が低減された軟質
    眼内レンズ。
  2. 【請求項2】 前記眼内レンズが、紫外線吸収剤を含有
    している請求項1に記載の粘着性が低減された軟質眼内
    レンズ。
  3. 【請求項3】 前記紫外光が、空気雰囲気下にて照射さ
    れている請求項1又は請求項2に記載の粘着性が低減さ
    れた軟質眼内レンズ。
  4. 【請求項4】 前記眼内レンズの粘着力が、0.098
    〜0.147Nである請求項1乃至請求項3の何れかに
    記載の粘着性が低減された軟質眼内レンズ。
  5. 【請求項5】 重合成分の少なくとも一部にアクリル酸
    エステル及び/又はメタクリル酸エステルを用いて重合
    して得られるアクリル系重合体からなる軟質性の眼内レ
    ンズに対して、ピーク波長が200〜300nmの範囲
    内にある紫外光のみを照射せしめて、かかる眼内レンズ
    の粘着性を低減させることを特徴とする粘着性が低減さ
    れた軟質眼内レンズの製法。
  6. 【請求項6】 前記眼内レンズが、紫外線吸収剤を含有
    している請求項に記載の粘着性が低減された軟質眼内
    レンズの製法。
  7. 【請求項7】 前記紫外光が、空気雰囲気下にて照射せ
    しめられる請求項5又は請求項6に記載の粘着性が低減
    された軟質眼内レンズの製法。
  8. 【請求項8】 前記ピーク波長が200〜300nmの
    範囲内にある紫外光のみが、照射強度:0.1〜120
    mW/cm 2 、照射時間:1分〜60分において、照射
    せしめられる請求項5乃至請求項7の何れかに記載の粘
    着性が低減された軟質眼内レンズの製法。
  9. 【請求項9】 前記紫外光を照射する光源に対して、前
    記眼内レンズが、相対的に回転せしめられつつ、前記紫
    外光の照射が行なわれる請求項5乃至請求項8の何れか
    に記載の粘着性が低減された軟質眼内レンズの製法。
  10. 【請求項10】 前記紫外光を照射する光源が、前記眼
    内レンズから離隔した位置において、レンズ光軸上に配
    置せしめられる請求項乃至請求項9の何れかに記載の
    粘着性が低減された軟質眼内レンズの製法。
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