JP3488948B2 - トロイダル型無段変速機の変速制御装置 - Google Patents

トロイダル型無段変速機の変速制御装置

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JP3488948B2
JP3488948B2 JP22466498A JP22466498A JP3488948B2 JP 3488948 B2 JP3488948 B2 JP 3488948B2 JP 22466498 A JP22466498 A JP 22466498A JP 22466498 A JP22466498 A JP 22466498A JP 3488948 B2 JP3488948 B2 JP 3488948B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無段変速機の変速
制御装置、特にトロイダル型無段変速機の変速制御装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トロイダル型無段変速機は、入出力ディ
スク間に挟圧したパワーローラを介してエンジンからの
回転動力を変速し伝達して無段変速を行うことができ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このようなトロイダル
型無段変速機の変速制御においては、パワーローラを回
転自在に支持した部材の変形を主たる要因とし、更にガ
タが加わって生じた、パワーローラとパワーローラ支持
部材との間におけるオフセット方向相対変位が外乱とな
って、変速制御弁へのフィードバック量にずれを生じさ
せ、このずれ分に起因して、トロイダル型無段変速機特
有のトルクシフトが発生する(例えば、特開平9−42
437号公報(文献1))。そこで、前記文献1にも記
載のごとく、このトルクシフトによる変速比のずれを補
償するため、変速機入力トルクを推定し、発生するであ
ろうトルクシフト量を推定し、斯く推定したトルクシフ
ト量に基づきトルクシフト補償を行う構成を採用するこ
とができる。
【0004】しかして、そうしたトルクシフト補償機能
を具備させることで、トロイダル型無段変速機でも、そ
の特有のトルクシフトによる変速制御への影響を回避す
ることができるが、以下の考察によれば、なお、改良を
加えられる余地がある。
【0005】トルクシフト補償に当たり、その変速機入
力トルクの推定につき、エンジンスロットル開度とエン
ジン回転数よりエンジントルクを算出する既知のエンジ
ントルク推定手法により得た推定エンジントルクに基づ
いて、当該入力トルクの推定をし、これに基づき、発生
するであろうトルクシフト量を推定し、変速比制御量を
補正する場合は、トルクシフトによる変速比変化量が低
負荷域で大きいことに着目すれば、トルクシフトが問題
となる当該低負荷領域での精度確保がしづらく、トルク
シフト補償に当たって一層の高精度が要求されるほど、
これに応えにくくなる。
【0006】図17および図18は、後記本発明実施の
形態でも参照される考察図で、図17は、エンジントル
クとスロットル開度との関係を示す。また、図18は、
トルクシフト特性の説明に供するもので、それぞれロー
(Low)側、中間(Mid)およびハイ(High)
側の変速比での入力トルク−変速比特性線図であり、ト
ルクシフトによる変速比変化量は低負荷域で大きい。
【0007】かくのごとく、そもそもトルクシフトによ
る変速比変化量は、これが、図18に示すとおりに低負
荷域で大きい傾向を呈する一方で、図17の考察図に示
すとおり、エンジントルク−スロットル開度特性では、
トルクシフトがそもそも問題となる低負荷領域の、スロ
ットル開度小の低開度領域で精度的に厳しく、それゆえ
に、スロットル開度によるエンジントルク推定の場合に
は、低負荷域での高精度なエンジントルクの推定、従っ
て変速機入力トルクの推定も困難でこれに応えにくく、
従ってまた、そのトルクシフト量の推定自体も高精度を
望めず、結果、トルクシフト補償のための変速比制御量
の補正にも高精度を確保しづらい。また、エンジントル
ク遅れを伴うような場面では、例えば過給機付きエンジ
ンとトロイダル型無段変速機との搭載がされる車両(自
動車)では更に困難なものとなる。
【0008】よって、望ましいのは、低負荷域での精度
も向上でき、特に、トルクシフトによる変速比変化量が
低負荷域で大きい当該領域を含め、良好な変速性能を確
保することができることである。望ましいのはまた、過
給機付きエンジン等での過給遅れによるエンジントルク
遅れを伴うような場合であっても対応可能なことであ
り、あるいはまた、例えばエンジンスロットルが閉じら
れることとなるコースト条件でのエンジン制御側での燃
料カット制御時でも容易に対応可能で、上記のことを実
現できることである。
【0009】 本発明は、上記のような考察に基づき、
また後述する考察にも基づき、それらの点から改良を加
えようというものであり、トルクシフトを補償する場合
に、低負荷域での精度も向上でき、特に、トルクシフト
による変速比変化量が低負荷域で大きい当該領域を含
め、良好な変速性能を確保することのできる、トロイダ
ル型無段変速機の変速制御装置を提供しようというもの
である。
【0010】 また、上記を実現しつつ、エンジントル
ク遅れを伴うような場合であっても、また、コースト条
件でのエンジン制御側の燃料カット制御時でも対応可能
で、対応性にも優れるトロイダル型無段変速機の変速制
御装置を提供しようというものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明によって、下記の
トロイダル型無段変速機の変速制御装置が提供される。
すなわち、本発明は、トロイダル型無段変速機の入力軸
の入力トルクを推定する入力トルク推定手段と、該入力
トルクに応じたトルクシフト量を推定する手段と、斯く
推定したトルクシフト量を抑制する方向に変速比制御量
を補正する手段とを具えるトロイダル型無段変速機の変
速制御装置であって、該入力トルク推定手段は、エンジ
ントルクを推定する第1のエンジントルク推定手段と、
該推定エンジントルクに基づき前記入力トルクを算出す
る手段を含み、該第1のエンジントルク推定手段は、エ
ンジン吸入空気量相当値と、エンジン回転数より、エン
ジントルクを推定する、ことを特徴とする無段変速機の
変速制御装置である。
【0012】また、前記エンジン吸入空気量相当値は、
エンジンの全気筒数に対するエンジントルク発生気筒数
の割合に応じて得られる値とする、ことを特徴とする無
段変速機の変速制御装置である。
【0013】 また、前記入力トルク推定手段は、前記
第1のエンジントルク推定手段以外に、第2のエンジン
トルク推定手段を更に含み、該第2のエンジントルク推
定手段は、エンジンスロットル開度とエンジン回転数よ
り、エンジントルクを推定、前記第1のエンジントル
ク推定手段がエンジントルク推定不可能な場合、当該第
2のエンジントルク推定手段によるエンジントルク推定
値を用いる、ことを特徴とする無段変速機の変速制御装
置である。
【0014】 また、前記エンジン吸入空気量相当値
を、エンジン制御装置から通信により受信する構成とな
し、前記第1のエンジントルク推定手段によるエンジン
トルク推定不可能な場合には、当該エンジン制御装置と
の間の通信が異常である場合が含まれる、ことを特徴と
する無段変速機の変速制御装置である。
【0015】また、前記エンジンが、過給機付エンジン
である、ことを特徴とする無段変速機の変速制御装置で
ある。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、エンジントルク推定に
エンジン制御側の燃料噴射量を決めるための基本制御量
を用い得て、低負荷域での精度も向上でき、特に、トル
クシフトによる変速比変化量が低負荷域で当該領域を含
め、良好な変速性能を確保することができる。
【0017】請求項1では、エンジン吸入空気量相当値
をエンジントルク推定に使用することで、低負荷域での
精度向上も図れ、従って、上記で考察したごとく、特
に、トルクシフトによる変速比変化量が低負荷域で大き
い場合もこれに応えられ、当該領域を含め、良好な変速
性能を確保することを可能ならしめる。
【0018】しかも、エンジン吸入空気量相当値を使用
できることから、たとえエンジントルク遅れがある運転
場面でも対応可能で、上記の作用効果を奏し得て、対応
性を高められる。
【0019】また、請求項1の場合は、万が一、エンジ
ン吸入空気量相当値を用いる第1のエンジントルク推定
系によるエンジントルク推定が不可能な場合にあって
も、エンジンスロットル開度によるエンジントルク推定
をなす第2のエンジントルク推定手段によりエンジント
ルクを推定して、これに基づき入力トルク推定、トルク
シフト量の推定を行い得、従って、第1のエンジントル
ク推定系による場合ほどには精度は望めないとしても、
かかる場合の、その代替的なエンジントルク推定系に基
づきトルクシフトの補償のための措置の継続実施を確保
することを可能ならしめる。
【0020】また、請求項2のようにすると、この場合
は、更に、コースト条件での燃料カット時の種々のエン
ジン制御状態でも、エンジン吸入空気量相当値で対応可
能であり、例えば、エンジンの全気筒がエンジントルク
発生気筒であるとき該エンジン吸入空気量相当値をTP
とした場合において、その半数の気筒がエンジントルク
発生気筒となるときはTP に1/2を乗じて得たTP
2をエンジン吸入空気量相当値となし、また、全気筒燃
料カットで、エンジントルク発生気筒が0ならば、TP
×(0/全気筒数)=0とすればよく、燃料カット時も
含んで、かようなエンジン吸入空気量相当値の処理等
で、容易に対応可能となり、この点でも対応性を高め得
るものとなる。
【0021】更に、この場合において、請求項のごと
く、エンジン吸入空気量相当値を、エンジン制御装置か
ら通信により受信する構成となし、第1のエンジントル
ク推定系によるエンジントルク推定不可能であって当該
第2のエンジントルク推定系に切換えるべき場合とし
て、これを当該エンジン制御装置との間の通信異常の場
合とすれば、かかる切換えは、こうした場合の有効な手
段ともなり、代替的フェイルセーフを確保することもで
きる。
【0022】また、請求項の場合は、過給機付きエン
ジンでの過給遅れによるエンジントルク遅れにも対応可
能であり、よって、トロイダル型無段変速機と組み合わ
されるエンジンが過給機付きエンジンであって、これら
を搭載する車両の場合にも、確実に上記の作用効果を達
成することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づき説明する。図1および図2は、本発明一実施の
態様になる変速制御装置を具えたトロイダル型無段変速
機を例示し、図1は同トロイダル型無段変速機の縦断側
面図、図2は同じくその縦断正面図である。
【0024】先ず、無段変速機の主要部であるトロイダ
ル伝動ユニットを説明するに、これは図示せざるエンジ
ンからの回転を伝達される入力軸20を具え、この入力
軸は図1に明示するように、エンジンから遠い端部を変
速機ケース21内に軸受22を介して回転自在に支持
し、中央部を変速機ケース21の中間壁23内に軸受2
4および中空出力軸25を介して回転自在に支持する。
入力軸20上には入出力コーンディスク1,2をそれぞ
れ回転自在に支持し、これら入出力コーンディスクを、
トロイド曲面1a,2aが相互に対向するよう配置す
る。そして入出力コーンディスク1,2の対向するトロ
イド曲面間には、入力軸20を挟んでその両側に配置し
た一対のパワーローラ3を介在させ、これらパワーロー
ラを入出力コーンディスク1,2間に挟圧するために、
以下の構成を採用する。
【0025】即ち、入力軸20の軸受け(22)端部に
ローディングナット26を螺合し、該ローディングナッ
トにより抜け止めして入力軸20上に回転係合させたカ
ムディスク27と、入力コーンディスク1のトロイド曲
面1aから遠い端面との間にローディングカム28を介
在させ、このローディングカムを介して、入力軸20か
らカムディスク27への回転が入力コーンディスク1に
伝達されるようになす。ここで、入力コーンディスク1
の回転は両パワーローラ3の回転を介して出力コーンデ
ィスク2に伝わり、この伝動中ローディングカム28は
伝達トルクに比例したスラストを発生して、パワーロー
ラ3を入出力コーンディスク1,2間に挟圧し、上記の
動力伝達を可能ならしめる。
【0026】出力コーンディスク2は出力軸25に楔着
し、この軸上に出力歯車29を一体回転するよう嵌着す
る。出力軸25は更に、ラジアル兼スラスト軸受30を
介して変速機ケース21の端蓋31内に回転自在に支持
し、この端蓋31内には別にラジアル兼スラスト軸受3
2を介して入力軸20を回転自在に支持する。ここで、
ラジアル兼スラスト軸受30,32はスペーサ33を介
して相互に接近し得ないよう突き合わせ、また相互に遠
去かる方向へも相対変位不能になるよう、対応する出力
歯車29および入力軸20に対し軸線方向に衝接させ
る。かくて、ローディングカム28によって入出力コー
ンディスク1,2間に作用するスラストは、スペーサ3
3を挟むような内力となり、変速機ケース21に作用す
ることがない。
【0027】各パワーローラ3は図2にも示すように、
トラニオン41に回転自在に支持し、該トラニオンは各
々、上端を球面継手42によりアッパリンク43の両端
に回転自在および揺動自在に、また下端を球面継手44
によりロアリンク45の両端に回転自在および揺動自在
に連結する。そして、アッパリンク43およびロアリン
ク45は中央を球面継手46,47により変速機ケース
21に上下方向揺動可能に支持し、両トラニオン41を
相互逆向きに同期して上下動させ得るようにする。
【0028】かように両トラニオン41を相互逆向きに
同期して上下動させることにより変速を行う変速制御装
置を、図2に基づき次に説明する。各トラニオン41に
は、これらを個々に上下方向へストロークさせるための
ピストン6を設け、両ピストン6の両側にそれぞれ上方
室51,52および下方室53,54を画成する。そし
て両ピストン6を相互逆向きにストローク制御するため
に、変速制御弁5を設置する。ここで、変速制御弁5は
スプール型の内弁体5aとスリーブ型の外弁体5bとを
相互に摺動自在に嵌合して具え、外弁体5bを弁外筐5
cに摺動自在に嵌合して構成する。
【0029】上記の変速制御弁5は、入力ポート5dを
圧力源55に接続し、一方の連絡ポート5eをピストン
室51,54に、また他方の連絡ポート5fをピストン
室52,53にそれぞれ接続する。そして内弁体5a
を、一方のトラニオン41の下端に固着したプリセスカ
ム7のカム面に、ベルクランク型の変速レバー8を介し
て共働させ、外弁体5bを変速アクチュエータとしての
ステップモータ4に、ラックアンドピニオン型式で駆動
係合させる。
【0030】変速制御弁5の操作指令は、アクチュエー
タ駆動位置指令Astep(ステップ位置指令)に応動
するアクチュエータ(ステップモータ)4がラックアン
ドピニオンを介し外弁体5bにストロークとして与える
こととする。この操作指令で変速制御弁5の外弁体5b
が内弁体5aに対し相対的に中立位置から例えば図2の
位置に変位されて変速制御弁5が開く時、圧力源55か
らの流体圧(ライン圧PL )が室52,53に供給され
る一方、他の室51,54がドレンされ、また変速制御
弁5の外弁体5bが内弁体5aに対し相対的に中立位置
から逆方向に変位されて変速制御弁5が開く時、圧力源
55からの流体圧が室51,54に供給される一方、他
の室52,53がドレンされ、両トラニオン41が流体
圧でピストン6を介して図中、対応した上下方向へ相互
逆向きに変位されるものとする。これにより両パワーロ
ーラ3は、回転軸線O1 が入出力コーンディスク1,2
の回転軸線O2 と交差する図示位置からオフセット(オ
フセット量y)されることになり、該オフセットにより
パワーローラ3は入出力コーンディスク1,2からの首
振り分力で、自己の回転軸線O1 と直行する首振り軸線
3 の周りに傾転(傾転角φ)されて無段変速を行うこ
とができる。
【0031】かかる変速中、一方のトラニオン41の下
端に結合したプリセスカム7は、変速リンク8を介し
て、トラニオン41およびパワーローラ3の上述した上
下動(オフセット量y)および傾転角φを変速制御弁5
の内弁体5aに機械的にxで示す如くフィードバックさ
れる。そして上記の無段変速により、ステップモータ4
へのアクチュエータ駆動位置指令Astepに対応した
変速比指令値が達成される時、上記のプリセスカム7を
介した機械的フィードバックが変速制御弁5の内弁体5
aをして、外弁体5bに対し相対的に初期の中立位置に
復帰させ、同時に、両パワーローラ3は、回転軸線O1
が入出力コーンディスク1,2の回転軸線O2 と交差す
る図示位置に戻ることで、上記変速比指令値の達成状態
を維持することができる。
【0032】なお、パワーローラ傾転角φを変速比指令
値に対応した値にすることが制御の狙いであるから、基
本的にプリセスカム7はパワーローラ傾転角φのみをフ
ィードバックすればよいことになるが、ここでパワーロ
ーラオフセット量yをもフィードバックする理由は、変
速制御が振動的になるのを防止するダンピング効果を与
えて、変速制御のハンチング現象を回避するためであ
る。
【0033】ステップモータ4へのアクチュエータ駆動
位置指令Astepは、コントローラ61によりこれを
決定する。これがためコントローラ61には図2に示す
ように、エンジンスロットル開度TVOを検出するスロ
ットル開度センサ62からの信号と、車速VSPを検出
する車速センサ63からの信号と、入力コーンディスク
1の回転数Ni (エンジン回転数Ne でもよい)を検出
する入力回転センサ64からの信号と、出力コーンディ
スク2の回転数No を検出する出力回転センサ65から
の信号と、変速機作動油温TMPを検出する油温センサ
66からの信号と、前記油圧源55からのライン圧PL
を検出する(通常は、ライン圧PL をコントローラ61
で制御するからコントローラ61の内部信号から検知す
る)ライン圧センサ67からの信号と、エンジン回転数
e を検出するエンジン回転センサ68からの信号とを
それぞれ入力する。
【0034】上記に加えて、更に、以下の構成を採用す
るものとし、コントローラ61は、ここでは、例えば、
6気筒の電子燃料噴射制御式エンジン(図示せず)の制
御装置を構成するエンジンコントローラ390と、デー
タ伝送路を通し通信ICを用いて通信可能に結ばれて、
該制御装置側から情報(デジタルデータ)を通信により
受信するものとする。
【0035】不図示のエンジンには、例えばそのクラン
ク軸周囲に取り付けられて、クランク軸の所定角度回転
ごとに所定角度位置でパルス信号を発生するクランク角
センサ368をエンジン回転検出用として設け、また、
その吸気系にエンジンの吸入空気量(エンジン吸気量)
Qを検出する吸気量センサ(例えばエアフローメータか
らなるセンサ)369を設けて、これらセンサからの信
号をエンジンコントローラ390に入力されるものと
し、更にまた、ここでは、該エンジンは、吸気系に過給
機を有する過給機付きのものとする。エンジンコントロ
ーラ390は、これらセンサ368,369からの入力
情報を含むエンジン運転パラメータ(スロットル開度T
VO情報を含む)に基づき、詳しくは後述するようにし
て、エンジン制御での燃料噴射弁に対する燃料噴射量を
決めるための基本制御量(シリンダ空気相当パルス幅)
を演算し、これに基づき燃料噴射弁の開弁時間を制御す
ることで、最適な動力特性、燃費特性が得られるよう燃
料供給制御、燃料カット制御(コースト時(スロットル
開度全閉時)のフューエルカットを含む)等を実行し、
ここでは、更に過給圧制御を実行するとともに、上記コ
ントローラ61との通信制御等も実行する。
【0036】こうしたエンジン制御装置側でのエンジン
制御中、上記コントローラ61へは、該通信制御のも
と、斯くエンジン制御で使用されるシリンダ吸入空気量
相当値に関する情報が送信され、これを受信したコント
ローラ61では、トロイダル型の無段変速機(CVT)
に特有のトルクシフトを補償するに当たり、変速機入力
トルクに応じ発生するであろうところのトルクシフト量
を推定する場合において、当該入力トルクを推定すると
きの情報として、上記受信情報を、その入力トルク推定
の用に第一義的に使用する。すなわち、変速制御を司る
CVT制御装置側のコントローラ61は、入力軸20の
入力トルクを推定し、入力トルクに応じたトルクシフト
量を推定し、推定したトルクシフト量を抑制する方向
(トルクシフトによる変速比のずれをキャンセルする方
向)に変速比制御量を補正するよう変速比制御を実行す
る場合において、エンジンの発生トルクを推定し、これ
から入力トルクを推定して求めるとき、エンジンコント
ローラ390から送信されてくる上記通信情報を、当該
エンジントルク推定の用に供するものとし、当該エンジ
ンのシリンダ吸入空気量相当値と、エンジン回転数Ne
より、エンジントルクを推定する。このような第1のエ
ンジントルク推定系(第1のエンジントルク推定手段)
により、後でも詳述するごとく低負荷領域(図16,1
8)であっても、そのトルクシフト補償での精度向上を
図り、良好な変速特性の確保を図る。
【0037】万が一の通信異常等で、かかるエンジント
ルク推定手段を用い得ず、それゆえに、当該推定系によ
ってはエンジントルク推定不可能で、結果、入力トルク
推定不能(従って、トルクシフト量推定不可能)な場合
にも備えるべく、CVTコントローラ61側は、エンジ
ンコントローラ390側からの通信情報にたよらずに、
自己の系側の情報のみでも、トルクシフト補償のための
エンジントルク推定を遂行できるよう、上記第1のエン
ジントルク推定系に対する第2のエンジントルク推定系
(第2のエンジントルク推定手段)として、既述した方
法、すなわちスロットル開度センサとエンジン回転セン
サからのスロットル開度TVOとエンジン回転数Ne
り、エンジントルクを推定する手段を併せ具備させる。
これにより、第1のエンジントルク推定系による高精度
の推定が万一使用できないこととなった場合、その第2
のエンジントルク推定系を使用し、エンジントルク推定
をこれで代替させ得て、これによるエンジントルク推定
値を適用できる結果、たとえ通信異常のときでも、推定
トルクシフト量に応じたトルクシフト補償の継続実施を
確保する(代替的なフェイルセーフ対応)。
【0038】ここに、上記通信異常を含め、エンジン側
に、万が一、故障が生じて、例えば修理工場等へたどり
着こうとするようなフェイルセーフモードでのエンジン
運転の際(リンプホーム時)、CVT変速制御も、そう
した場面での車両走行を保障することができるように、
その変速制御の用に供するスロットル開度TVO情報、
エンジン回転数Ne 情報を上記コントローラ61に入力
する各センサは、エンジン制御系で使用されるセンサと
は別個、独立したCVT制御装置側自前のセンサとする
のが更に良い。ここでは、図2のスロットル開度センサ
62は、エンジン制御装置側のものとは別のCVT制御
装置側独自のスロットル開度センサとし、同様にまた、
エンジン回転センサ68も、エンジン制御装置側のエン
ジン回転数検出用クランク角センサ368とは別の回転
センサとして設けてある。
【0039】コントローラ61は、エンジンコントロー
ラ390からの送信情報も含め、上記の各種入力情報を
もとに以下の演算によりステップモータ4へのアクチュ
エータ駆動位置指令Astep(変速指令値)を決定す
るものとする。これがため本例では、コントローラ61
を図3および図4に例示するように構成し、一方、エン
ジンコントローラ390は、図4にその一部をブロック
391〜393として例示するシリンダ空気量相当パル
ス幅算出、通信情報作成、および燃料カット機能を含む
構成のものとし、CVT制御装置側では、先ず変速マッ
プ選択部71は図2のセンサ66で検出した油温TMP
や、排気浄化触媒の活性化運転中か否かなど、各種条件
に応じて変速マップを選択する。
【0040】到達入力回転数算出部72は、かようにし
て選択された変速マップが例えば図15に示すごときも
のである場合について述べると、図2のセンサ62,6
3でそれぞれ検出したスロットル開度TVOおよび車速
VSPから、同図の変速線図に対応した変速マップをも
とに、現在の運転状態での定常的な目標入力回転数とす
べき到達入力回転数Ni * を検索して求める。到達変速
比演算部73は、到達入力回転数Ni * を、図2のセン
サ65により検出した変速機出力回転数NO で除算する
ことにより、到達入力回転数Ni * に対応する定常的な
目標変速比である到達変速比DRatioを演算により
求める。
【0041】エンジン制御装置側では、エンジン吸気量
相当燃料噴射パルス幅算出部391は、図2のセンサ3
68,369で検出したエンジン回転数Ne およびエン
ジン吸気量Qから、エンジン出力トルク(Q/Ne )を
演算し、これに定数Kを掛けて基本パルス幅TPO(=K
・Q/Ne )を求め、この基本パルス幅TPOに対してエ
ンジン吸気系の遅れなどの補正を行うことで、エンジン
吸気量相当値の燃料噴射パルス幅TP を求める。エンジ
ン制御側では、これをエンジンの燃料噴射制御に資す
る。
【0042】通信情報作成部392は、上記燃料噴射パ
ルス幅TP の他に、その算出時に情報を提供する図2の
エンジン回転数検出用クランク角センサ368および吸
気量センサ369が異常であるか正常であるかの判定結
果、およびフューエルカット装置393からのフューエ
ルカット気筒数信号を入力され、センサ368,369
の異常時は、エンジン異常であるとして燃料噴射パルス
幅通信情報LANTPOにOFFHをセットし、センサ3
68,369の正常時は、燃料噴射パルス幅TP および
フューエルカット気筒数から、全気筒フューエルカット
であれば燃料噴射パルス幅通信情報LANTPO=0をセ
ットし、半気筒フューエルカットであれば燃料噴射パル
ス幅通信情報LANTPO=TP /2をセットし、全気筒
噴射であれば燃料噴射パルス幅通信情報LANTPO=T
P をセットして、これらがCVT制御装置側への送信の
用に供される。
【0043】CVT制御装置側の通信異常判定部94
は、常時、エンジン制御装置側からの該通信情報LAN
POを監視し、燃料噴射パルス幅通信情報LANTPO
入力があるか否かにより通信が正常に行われているの
か、異常であるのかを判定し、正常であれば燃料噴射パ
ルス幅通信情報LANTPOを情報受け取り部95に入力
し、異常であれば切り換え器96を実線位置から2点鎖
線位置に切り換えることで、エンジントルク算出部97
への入力情報を情報受け取り部95からの燃料噴射パル
ス幅通信情報LANTPOから図2のセンサ62で検出し
たスロットル開度TVOに切り換える。
【0044】エンジントルク算出部97は、切り換え器
96からの燃料噴射パルス幅通信情報LANTPOまたは
スロットル開度TVOと、センサ68(図2も参照)で
検出したエンジン回転数Ne とから、エンジントルクT
e を算出する。ここに、エンジントルクTe の演算(推
定)に当たっては、通信正常時は、エンジン正常時であ
るとの条件下、エンジン制御装置から受信した燃料噴射
パルス幅通信情報LANTPO(ここでは、LANTPO
P 、またはTP /2、または0)とエンジン回転数N
e より、エンジントルクマップ(予め定めた定数)に基
づきエンジントルクTe を算出することでエンジントル
クTe の推定がなされ(第1のエンジントルク推定
系)、燃料噴射パルス幅通信情報LANTPOの入来しな
い通信異常時は、上記に替えて、スロットル開度TVO
とエンジン回転数Ne より、エンジントルクマップ(予
め定めた定数)に基づきエンジントルクTe を算出する
ことでエンジントルクTe の推定がなされることになる
(第2のエンジントルク推定系)。これにより、代替的
なエンジントルク推定を確保され、従ってまた、推定ト
ルクシフト量に基づくトルクシフト補償も確保される。
なお、第1のエンジントルク推定系で用いるエンジント
ルクマップは後で詳細に説明する後記図16の特性傾向
に従って予め定めておくことができる。
【0045】到達変速比制限部98は、情報受け取り部
95への燃料噴射パルス幅通信情報LANTPOがOFF
Hである時、つまりエンジン異常である時や、例えばエ
ンジン回転センサ68が異常である時は、これらを基に
ブロック97で求めるエンジントルクTe が不正確なた
め、これを基にブロック77で後述のごとくに求めるト
ルクシフト補償変速比TSrtoも不正確になって、実
質上トルクシフト補償が行えないことから、詳しくは後
述するように、ブロック73からの到達変速比DRat
ioをエンジン異常や、エンジン回転センサ異常が発生
していない正常時よりも大きく制限し、制限済到達変速
比LmDRatioを求める。これにより、異常時は、
確実に変速比の使用範囲を狭め得て、ハードウエア上の
制限値を超え規定外の変速比になるといった事態の発生
防止を図る。また、正常時は、狭められない範囲の分だ
け、より広い変速比範囲の使用を確保し、変速範囲の有
効利用を図る。
【0046】変速時定数算出部74は、選択レンジ(前
進通常走行レンジD、前進スポーツ走行レンジDS
や、車速VSPおよびスロットル開度TVOや、アクセ
ルペダル操作速度や、後述する目標変速比と実変速比と
の間の変速比偏差など、各種条件に応じて変速制御の時
定数Tsftを決定する。ここで変速時定数Tsft
は、到達変速比DRatioに対する変速の応答性を決
定して変速速度を定めるためのもので、目標変速比算出
部75は、到達変速比DRatioを変速時定数Tsf
tで定めた変速応答をもって実現するための過渡的な時
々刻々の目標変速比Ratio0を算出する。
【0047】速度比算出部99は、エンジンと変速機と
の間に介在させたトルクコンバータ(図示せず)の入力
回転数であるエンジン回転数Ne と、出力回転数である
変速機入力回転数Ni との比で表されるトルクコンバー
タの速度比eを求め、トルク比算出部100は、速度比
eからトルクコンバータ性能線図に対応したマップを基
にトルクコンバータのトルク比tを求め、入力トルク算
出部76は、ブロック97で前述の如くに求めたエンジ
ントルクTe 、つまり、第1のエンジントルク推定系を
もって、エンジン吸入空気量相当値の燃料噴射パルス幅
P 値を用いることで推定したエンジントルクTe に、
また、これが使えない場合においては第2のエンジント
ルク推定系で推定したエンジントルクTe に、それぞれ
トルク比tを乗じて変速機入力トルクTi を算出する。
そしてトルクシフト補償変速比算出部77は、上記の過
渡的な目標変速比Ratio0および当該変速機入力ト
ルクTi から、トロイダル型無段変速機に特有なトルク
シフト(変速比の不正)をなくすためのトルクシフト補
償変速比TSrtoを算出する。
【0048】ここでトロイダル型無段変速機のトルクシ
フトを補足説明するに、トロイダル型無段変速機の伝動
中においては前記した如くにパワーローラ3を入出力コ
ーンディスク1,2間に挟圧することからトラニオン4
1の変形が発生し、これにより当該トラニオンの下端に
おけるプリセスカム7の位置が変化してプリセスカム7
および変速リンク8よりなる機械的フィードバック系の
系路長変化を惹起し、これが上記のトルクシフトを生起
させる。従ってトロイダル型無段変速機のトルクシフト
は、目標変速比Ratio0および変速機入力トルクT
i によって異なり、トルクシフト補償変速比算出部77
はこれらの2次元マップからトルクシフト補償変速比T
Srtoを検索により求めるものとする。
【0049】当該トルクシフト補償変速比TSrto
は、前記した目標変速比算出部75からの目標変速比R
atio0と共にトルクシフト補償済み変速比算出部7
0に入力され、ここでトルクシフト補償変速比TSrt
oと目標変速比Ratio0との加算により、トルクシ
フト補償済み変速比TSRatio0を求める。ところ
で目標変速比Ratio0は勿論のこと、トルクシフト
補償変速比TSrtoも、ともにフィードフォワード制
御により求めた制御量であり、従って本実施の形態にお
いては、トルクシフト補償済み変速比TSRatio0
をフィードフォワード制御により求める目標変速比とす
る。
【0050】以上のようにして、通常は、トルクシフト
補償に当たり、第1のエンジントルク推定系によるエン
ジン吸気量相当値の燃料噴射パルス幅TP 値がエンジン
トルク推定に適用されて、トルクシフト補償変速比TS
rtoが算出され、これにより変速比制御量はトルクシ
フトが抑制される方向に補正され、以下のブロックを通
して変速制御が行われていくこととなり、この場合にお
いては、第2のエンジントルク推定系によるスロットル
開度TVOによるエンジントルク推定の場合に比し、低
負荷域も含んで、良好な変速性能を確保することができ
る。
【0051】図16は、エンジントルクTe とTP 値の
関係を、エンジン回転数Ne が3種類の所定回転数の場
合(破線特性の場合の回転数<実線特性の場合の回転数
<1点鎖線特性の場合の回転数)を例として表す実験結
果をデータ示す考察図であり、これによると、同様のエ
ンジン回転域で、スロットル開度TVOをベースとして
みたエンジントルクとスロットル開度TVOとの関係の
考察図17と比較して、図16の場合は、エンジントル
ク特性が良好なリニアな特性を呈し、かかる燃料噴射パ
ルス幅TP は、これが良くエンジントルクTe を反映す
ることが分かり、上記は、これを基礎とする。
【0052】ここに、考察図18は、トルクシフト特性
の説明に供するもので、それぞれ、ロー(Low)側、
中間(Mid)およびハイ(High)側の変速比での
入力トルク−変速比(CVT速度比)特性線図であり、
トルクシフトは、そもそも、変速比変化量が低負荷域で
大きい(入力トルク=0乃至その近傍の小なる状態の領
域内でかなり急激に変化する特性を示しており、それ以
外の部分では、比較的なだらかに変わる)傾向を示す一
方、図17のエンジントルク−スロットル開度TVO特
性では、図示のごとくの傾斜を有して、スロットル開度
TVOが小の低開度域まででほぼ全開領域のトルクまで
発生する特性を呈し、したがって、ここに、上記のごと
くのトルクシフトが問題となるエンジントルク領域、つ
まり例えばトルクが小さな状態の領域付近に着目する
と、これは、スロットル開度TVO変化でみれば、かな
り小さな微小変化領域であり、よって、これら両者の関
係に照らせば、トルクシフト補償に際し、スロットル開
度TVOから、該補償にするのに必要なエンジントルク
推定をする場合には、要求される精度達成は相当厳しい
ものとなる。
【0053】かくのごとく、そもそもトルクシフトによ
る変速比変化量は、これが、図18に示すとおりに低負
荷域で大きい傾向を呈する一方で、スロットル開度TV
Oによるエンジントルク推定の場合には、図17のエン
ジントルクとスロットル開度の関係を表した考察図に示
すとおり、スロットル開度TVOが小の低開度領域での
特性では、精度的に厳しく、それゆえに、トルクシフト
補償の精度を高め、良好な変速性能を得るべく、トルク
シフト補償に当たって一層の高精度のエンジントルク推
定、変速機入力トルク推定が要求されるほど、正確で高
精度なエンジントルクの推定、従って変速機入力トルク
の推定も、困難でこれに応えにくく、従ってまた、その
トルクシフト量の推定自体も高精度を望めず、結果、ト
ルクシフト補償のための変速比制御量の補正にも高精度
を確保しづらい。
【0054】また、過給機付きエンジンでは更に困難と
なる。すなわち、トロイダル型無段変速機と組み合わせ
るエンジンが特に過給機付きのものの場合にあっては、
過給遅れ(ターボラグ)による影響も生じてき、したが
って、こうしたエンジントルク遅れの伴う運転場面の場
合には、スロットル開度TVOをみてエンジントルクを
推定する方法では、実際の発生トルクを推定するのは、
低負荷域のみならず対応が困難となる。
【0055】これに対し、図16のようなエンジントル
クTe とTP 値の関係を踏まえて採用した、上述の制御
量としてのトルクシフト補償変速比TSrtoの算出処
理は、エンジントルク推定にエンジン制御側の燃料噴射
量を決めるための基本制御量を用いることができ、した
がって、エンジン吸入空気量相当値の燃料噴射パルス幅
P をエンジントルク推定に使用することで、低負荷域
での精度も向上でき、特に、トルクシフトによる変速比
変化量が低負荷域で大きいトロイダル型無段変速機で
も、当該領域を含め、良好な変速性能を確保することが
できる。
【0056】しかも、本例では、エンジンコントローラ
390で制御されるのが既述のごとく過給機付きエンジ
ンであるところ、こうしたエンジンであっても、上記の
ようにエンジン吸入空気量相当値を使用できることか
ら、過給遅れによるエンジントルク遅れがある運転場面
でも対応可能で、上記の作用効果を奏し得る。
【0057】しかも更に、エンジン吸入空気量相当値
は、エンジンの全気筒数(本例では、6気筒)に対する
エンジントルク発生気筒数(燃料カット気筒数以外)の
割合を乗じたものとすることができることから、コース
ト条件での燃料カット時も、エンジン吸入空気量相当値
で対応可能である。
【0058】ここに図16にみるように、本特性は、燃
料カット領域まで含めても、かなりリニアな特性を確保
することができ、したがって、エンジンの全気筒すなわ
ち6気筒がエンジントルク発生気筒であるとき該エンジ
ン吸入空気量相当値をTP とした場合(すなわち、TP
×(6/6)=TP )において、既述のごとく、その半
数の気筒の3気筒がエンジントルク発生気筒となるとき
はTP に3/6=1/2を乗じて得たTP /2をエンジ
ン吸入空気量相当値となし、また、例えば、6気筒すべ
てが燃料カット(全気筒燃料カット)で、エンジントル
ク発生気筒が0ならば、これもまた既に述べたとおり、
P ×(0/6)=0とすればよく、燃料カット時も含
んで、かようなエンジン吸入空気量相当値の情報のやり
取りで、容易に対応可能であり、且つまた、そのときの
二次的な処理も含めて、容易に対応し得て効果的であ
る。
【0059】また、通常時使用する、かかるエンジン吸
気量相当値を用いる第1のエンジントルク推定系以外
に、スロットル開度TVOとエンジン回転数Ne よりエ
ンジントルクTe を推定する第2のエンジントルク推定
系をも具備させ、第1のエンジントルク推定系がエンジ
ントルク推定不可能な場合、当該第2のエンジントルク
推定系によるエンジントルク推定値を用いる構成とした
から、この場合は、万が一、エンジン吸入空気量相当値
を用いる第1のエンジントルク推定系によるエンジント
ルク推定が不可能な場合にあっても、当該第2のエンジ
ントルク推定手段によりエンジントルクTe を推定し
て、これに基づき入力トルクTi の推定、トルクシフト
補償変速比TSrtoの算出、推定を行い得、従って、
第1のエンジントルク推定系による場合ほどには精度は
望めないとしても、かかる場合の、その代替的なエンジ
ントルク推定系に基づきトルクシフト補償の継続実施を
確保することが可能となる。
【0060】更に、この場合において、エンジン吸入空
気量相当値を、エンジン制御装置から通信により受信す
る構成となし、第1のエンジントルク推定系によるエン
ジントルク推定不可能であって当該第2のエンジントル
ク推定系に切換えるべき場合として、これを当該エンジ
ン制御装置との間の通信異常の場合とすれば、かかる切
換えは、こうした場合の有効な手段ともなり、代替的フ
ェイルセーフを確保することもできる。
【0061】図3に戻り、実変速比算出部78は、変速
機入力回転数Ni を変速機出力回転数NO で除算するこ
とにより実変速比Ratio(=Ni /NO )を算出
し、変速比偏差算出部79は、前記した目標変速比算出
部75で得られた目標変速比Ratio0から実変速比
Ratioを差し引いて、両者間における変速比偏差R
toERR(=Ratio0−Ratio)を求める。
【0062】第1フィードバック(FB)ゲイン算出部
80は、変速比偏差RtoERRに応じた周知のPID
制御(Pは比例制御、Iは積分制御、Dは微分制御)に
よる変速比フィードバック補正量を算出する時に用い
る、それぞれの制御のフィードバックゲインのうち、変
速機入力回転数Ni および車速VSPに応じて決定すべ
き第1の比例制御用フィードバックゲインfbpDAT
A1、積分制御用フィードバックゲインfbiDATA
1、および微分制御用フィードバックゲインfbdDA
TA1を求める。これら第1のフィードバックゲインf
bpDATA1,fbiDATA1,fbdDATA1
は、変速機入力回転数Ni および車速VSPの2次元マ
ップとして予め定めておき、このマップを基に変速機入
力回転数Ni および車速VSPから検索により求めるも
のとする。
【0063】第2フィードバック(FB)ゲイン算出部
81は、上記PID制御による変速比フィードバック補
正量を算出する時に用いるフィードバックゲインのう
ち、変速機作動油温TMPおよびライン圧PL に応じて
決定すべき第2の比例制御用フィードバックゲインfb
pDATA2、積分制御用フィードバックゲインfbi
DATA2、および微分制御用フィードバックゲインf
bdDATA2をそれぞれ求め、これら第2のフィード
バックゲインfbpDATA2,fbiDATA2,f
bdDATA2は、作動油温TMPおよびライン圧PL
の2次元マップとして予め定めておき、このマップを基
に作動油温TMPおよびライン圧PL から検索により求
めるものとする。
【0064】フィードバックゲイン算出部83は、上記
第1のフィードバックゲインおよび第2のフィードバッ
クゲインを対応するもの同士掛け合わせて、比例制御用
フィードバックゲインfbpDATA(=fbpDAT
A1×fbpDATA2)、積分制御用フィードバック
ゲインfbiDATA(=fbiDATA1×fbiD
ATA2)、および微分制御用フィードバックゲインf
bdDATA(=fbdDATA1×fbdDATA
2)をそれぞれ求める。
【0065】PID制御部84は、以上のようにして求
めたフィードバックゲインを用い、変速比偏差RtoE
RRに応じたPID制御による変速比フィードバック補
正量FBrtoを算出するために、先ず比例制御による
変速比フィードバック補正量をRtoERR×fbpD
ATAにより求め、次いで積分制御による変速比フィー
ドバック補正量を∫RtoERR×fbiDATAによ
り求め、更に微分制御による変速比フィードバック補正
量を(d/dt)RtoERR×fbdDATAにより求
め、最後にこれら3者の和値をPID制御による変速比
フィードバック補正量FBrto(=RtoERR×f
bpDATA+∫RtoERR×fbiDATA+(d/
dt)RtoERR×fbdDATA)とする。
【0066】変速比フィードバック補正量制限部90
は、補正済目標変速比制限部82において後述する如く
に補正済目標変速比DsrRTOを制限する時に用いる
最終変速比指令上限値LIMRTOMAXおよび最終変
速比指令下限値LIMRTOMINと、当該制限した後
の制限済変速比指令LmDsrRTOと、実変速比Ra
tioとから、詳しくは後述するようにして制御可能限
界変速比Lmrtomax,Lmrtominを求め、
更にこれから、フィードフォワード制御による目標変速
比( トルクシフト補償済み変速比) TSRatio0を
差し引いてフィードバック補正量限界値FbRTOLI
MP(正側),FbRTOLIMM(負側)を求め、最
後に変速比フィードバック補正量FBrtoをこれら限
界値内に制限して制限済変速比フィードバック補正量L
mFBrtoを求める。
【0067】目標変速比補正部85は、トルクシフト補
償済目標変速比TSRatio0を制限済変速比フィー
ドバック補正量LmFBrtoだけ補正して、補正済目
標変速比DsrRTO(=TSRatio0+LmFB
rto)を求める。補正済目標変速比制限部82は、補
正済目標変速比DsrRTOを最終変速比指令上限値L
IMRTOMAXおよび最終変速比指令下限値LIMR
TOMIN間の範囲内に制限して制限済変速比指令Lm
DsrRTOを求める。
【0068】目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動
位置)算出部86は、上記の制限済変速比指令LmDs
rRTOを実現するためのステップモータ(アクチュエ
ータ)4の目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位
置)DsrSTPをマップ検索により求める。
【0069】ステップモータ駆動位置指令算出部87
は、ステップモータ駆動速度決定部88が変速機作動油
温TMPなどから決定するステップモータ4の限界駆動
速度でも1制御周期中にステップモータ4が上記目標ス
テップ数DsrSTPに変位し得ないとき、ステップモ
ータ4の上記限界駆動速度で実現可能な実現可能限界位
置をステップモータ4への駆動位置指令Astepとな
し、ステップモータ4が1制御周期中に上記目標ステッ
プ数DsrSTPに変位し得るときは、当該目標ステッ
プ数DsrSTPをそのままステップモータ4への駆動
位置指令Astepとなすものとする。従って、駆動位
置指令Astepは常時ステップモータ4の実駆動位置
と見做すことができる。
【0070】ステップモータ4は駆動位置指令Aste
pに対応する方向および位置に変位されてラックアンド
ピニオンを介し変速制御弁5の外弁体5bをストローク
させ、トロイダル型無段変速機を前記したように所定通
りに変速させることができる。この変速により駆動位置
指令Astepに対応した変速比指令値が達成される
時、プリセスカム7を介した機械的フィードバックが変
速制御弁5の内弁体5aをして、外弁体5bに対し相対
的に初期の中立位置に復帰させ、同時に、両パワーロー
ラ3は、回転軸線O1 が入出力コーンディスク1,2の
回転軸線O2 と交差する図示位置に戻ることで、上記変
速比指令値の達成状態を維持することができる。
【0071】ここに、本実施の形態においては特に、変
速比フィードバック補正量制限部90で、補正済目標変
速比制限部82における最終変速比指令上限値LIMR
TOMAXおよび最終変速比指令下限値LIMRTOM
INと、制限済変速比指令LmDsrRTOと、実変速
比Ratioとにより後で詳述する如くにして予め求め
た制御可能限界変速比Lmrtomax,Lmrtom
inから、フィードフォワード制御による目標変速比(
トルクシフト補償済み変速比) TSRatio0を差し
引いてフィードバック補正量限界値FbRTOLIMP
(正側),FbRTOLIMM(負側)を求め、変速比
フィードバック補正量FBrtoをこれら限界値内に制
限して得られる制限済変速比フィードバック補正量Lm
FBrtoをフィードバック補正量とし、目標変速比補
正部85で、フィードフォワード制御分であるトルクシ
フト補償済目標変速比TSRatio0を当該制限済変
速比フィードバック補正量LmFBrtoだけ補正し
て、補正済目標変速比DsrRTOとするから、変速制
御を司る補正済目標変速比が制御可能限界変速比を超え
ることがなく、実現不能な変速比までをも指令して変速
制御上の不都合が生ずるという問題を回避することがで
きる。
【0072】しかもこの際、制御可能限界変速比からフ
ィードフォワード制御による目標変速比を差し引いて求
めた、フィードバック制御が使用可能なフィードバック
補正量限界値にフィードバック補正量を制限することで
上記の作用効果を具現するから、例えばフィードフォワ
ード制御による目標変速比自身が限界値にあって、フィ
ードバック制御による補正が実際上は変速制御に反映さ
れないにもかかわらずフィードバック制御が継続されて
変速応答の悪化や変速品質の低下を生ずるといった前記
の懸念を払拭することができる。
【0073】しかも更に補正済目標変速比制限部82
で、補正済目標変速比DsrRTOをそのまま変速指令
とせず、最終変速比指令上限値LIMRTOMAXおよ
び最終変速比指令下限値LIMRTOMINの範囲内に
制限した制限済変速比指令LmDsrRTOを変速制御
に資することから、万が一にも変速比指令が上記の限界
値を超えるようなことがなく、変速比フィードバック補
正量の上記制限と相まって2重の安全対策をなし得る。
【0074】次いでステップモータ追従可能判定部89
につき説明するに、このステップモータ追従可能判定部
89は、ステップモータ4が制限済変速比指令LmDs
rRTOに対応した目標ステップ数(アクチュエータ目
標駆動位置)DsrSTPに追従可能か否かを、以下に
より判定するものである。
【0075】つまり判定部89は先ず、目標ステップ数
(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPと、実駆
動位置と見做すことができる駆動位置指令Astepと
の間におけるステップ数偏差(アクチュエータ駆動位置
偏差)ΔSTPを求める。そして判定部89は、ステッ
プモータ駆動速度決定部88により前記の如くに決定さ
れたステップモータ4の限界駆動速度でもステップモー
タ4が1制御周期中に解消し得ないステップ数偏差(ア
クチュエータ駆動位置偏差)の下限値ΔSTPLIM より
もステップ数偏差(アクチュエータ駆動位置偏差)ΔS
TPが小さい時(ΔSTP<ΔSTPLIM )、ステップ
モータ4が制限済変速比指令LmDsrRTOに対応し
た目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)Ds
rSTPに追従可能であると判定し、逆にΔSTP≧Δ
STPLIM である時、ステップモータ4が目標ステップ
数(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPに追従
不能であると判定する。
【0076】判別部89は、ステップモータ4が制限済
変速比指令LmDsrRTOに対応した目標ステップ数
(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPに追従可
能であると判定する場合、PID制御部84で前記した
通りのPID制御による変速比フィードバック補正量F
Brtoの演算を継続させる。しかして、ステップモー
タ4が目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)
DsrSTPに追従不能であると判定した場合は、積分
制御による変速比フィードバック補正量∫RtoERR
×fbiDATAを当該判定時における値に保持するよ
うPID制御部84に指令する。
【0077】これがため、ステップモータ(変速アクチ
ュエータ)4の実駆動位置Astepが目標駆動位置
(DsrSTP)の変化に追従し得ない場合は、積分制
御による変速比フィードバック補正量∫RtoERR×
fbiDATAが追従不能判定時の値に保持されて、ス
テップモータ(変速アクチュエータ)4が目標駆動位置
DsrSTPに追従し得ないにもかかわらずフィードバ
ック制御不能分が変速比フィードバック補正量FBrt
oに溜まり込むのを回避することができる。かように、
不所望な変速比フィードバック補正量の溜まり込みがな
くなる結果、ステップモータ(変速アクチュエータ)4
の実駆動位置が目標駆動位置に追い付いた瞬時の後にお
いて、変速比制御のオーバーシュートを生ずることがな
くなり、目標変速比への収束が遅れて変速の応答性が低
下したり、変速品質が悪化するという懸念を払拭するこ
とができる。
【0078】図2のコントローラ61、およびエンジン
コントローラ390をマイクロコンピュータで構成する
場合、図3および図4につき前述した変速制御は、コン
トローラ61のマイクロコンピュータが図5,図6,図
8〜図14のプログラムによりこれを実行し、図4につ
き前述した燃料噴射パルス幅信号の算出等の処理は、エ
ンジンコントローラ390のマイクロコンピュータが図
7のプログラムによりこれを実行することができる。図
5は変速制御の全体を示し、ステップ211において
は、図3のブロック71〜73におけると同様の処理に
より到達変速比DRatioを算出する。
【0079】ステップ212〜216は、図3の到達変
速比制限部98に対応するもので、ステップ212,2
13において到達変速比DRatioを、図6により算
出した到達変速比限界値maxdrto(到達変速比上
限値)およびmindrto(到達変速比下限値)と比
較し、到達変速比DRatioがこれら限界値間の範囲
内にある時は、ステップ214において到達変速比DR
atioをそのまま制限済到達変速比LmDRatio
とするが、到達変速比DRatioが到達変速比下限値
mindrto未満である時は、ステップ215におい
て当該下限値mindrtoを制限済到達変速比LmD
Ratioとし、到達変速比DRatioが到達変速比
上限値maxdrtoを超えている時は、ステップ21
6において当該上限値maxdrtoを制限済到達変速
比LmDRatioとする。つまり、到達変速比DRa
tioを到達変速比上限値maxdrtoおよび到達変
速比下限値mindrtoを超えないように制限して、
制限済到達変速比LmDRatioを求める。
【0080】ここで到達変速比限界値maxdrto
(到達変速比上限値)およびmindrto(到達変速
比下限値)の算出要領を図6により説明するに、ステッ
プ231,232において、例えばエンジン回転センサ
異常等の回転センサ系異常があるか否かや、エンジン異
常があるか否か(燃料噴射パルス幅通信情報LANTPO
=OFFHが入力されているか否か)を判定し、いずれ
の異常もなければ、ステップ233で到達変速比上限値
maxdrtoに通常の上限値MAXDRTOをセット
すると共に、到達変速比下限値mindrtoに通常の
下限値MINDRTOをセットし、いずれか一方でも異
常がある場合、ステップ234で到達変速比上限値ma
xdrtoに異常時の上限値FMAXRTOをセットす
ると共に、到達変速比下限値mindrtoに異常時の
下限値FMINRTOをセットする。
【0081】ところで、異常時の上限値FMAXRTO
を通常の上限値MAXDRTOよりも小さくし、異常時
の下限値FMINRTOを通常の下限値MINDRTO
よりも大きくして、到達変速比の許容変化幅を小さくす
る。その理由は、例えばエンジン回転センサ異常等の当
該異常時は前記した通り図4のブロック97(エンジン
トルク算出部)で求めるエンジントルクTe が不正確な
ため、これを基にブロック77(トルクシフト補償変速
比算出部)で前述したごとくに求めるトルクシフト補償
変速比TSrtoも不正確になって、実質上トルクシフ
ト補償が行えないことから、トルクシフト分の余裕を到
達変速比に持たせる必要があるためである。
【0082】図6のステップ231においてチェックす
る回転センサ系異常は、特に、次のような点からみて、
図2のコントローラ61に接続されるエンジン回転セン
サ68を対象とし、これの異常判定(図3の到達変速比
制限部98に入力されるエンジン回転センサの異常判
定)により得られる信号とする。図2のエンジン回転セ
ンサ68は、低負荷領域でも高精度を望める第1のエン
ジントルク推定系(エンジンの吸気量相当値の燃料噴射
パルス幅とエンジン回転数によるエンジントルク推定)
を第一義的に使用する場合(図4の切り換え器96の通
常の実線位置状態)も、これに比べれば精度的には低い
ものの、万一、該第1のエンジントルク推定系が使用で
きないとき適用する、CVT制御装置側自前の代替的な
第2のエンジントルク推定系(エンジンスロットル開度
とエンジン回転数によるエンジントルク推定)を使用す
る場合(図4の切り換え器96の2点鎖線位置への切り
換え状態)も、ともに、その時エンジントルク推定に適
用するエンジン回転数Ne 情報を得るのに用いられる。
【0083】しかるに、もし、エンジン回転センサ68
自体に異常がある場合は、その第1および第2のいずれ
の系によるとしても、該回転センサ異常に起因して、図
4のブロック97でのエンジントルクTe 値の正確な推
定ができなくなる。したがって、図3のブロック76で
求める変速機入力トルクTi の推定も正確を期しがた
く、結果、入力トルクTi に対応したトルクシフト補償
のための正確なトルクシフト補償変速比TSrtoを求
めることもできないと状態であるとみることができる
(トルクシフト量推定不能)。かかる場合、それぞれ予
定された精度範囲のもとでの適正なトルクシフト補償は
実質的にできなことから、図6のステップ231の判断
では、トルクシフト量(トルクシフトによる変速比変化
量)の推定が可能か否か、すなわち、ここではエンジン
回転センサ68が正常か異常かどうかを判定することと
し、そして、その結果、エンジン回転センサ68が異常
なら、ステップ234側を選択し、図5のステップ21
2〜216の制限済到達変速比LmDRatioを求め
る処理により、上記のとおり到達変速比DRatioの
許容変化幅を小さくするものである。つまり、異常時
は、変速比の使用範囲を、その第1のエンジントルク推
定系(もしくは、代替的に適用する場合の第2のエンジ
ントルク推定系)によるエンジントルク推定に基づく適
正なトルクシフト補償が実行できる通常の場合(ステッ
プ233側の処理選択時)に比し、狭くする。
【0084】エンジン回転センサ68の異常の有無だけ
ではなく、実質的に正常なトルクシフト補償をなし得る
かどうかという点に関し、こうした事情はまた、他の回
転センサである入力回転センサ(入力コーンディスク回
転センサ)64、出力回転センサ(入力コーンディス
ク)65の場合も同様で、その異常は、トルクシフト量
の推定不能をもたらしうる。例えば、エンジン回転セン
サ68の場合は、上述のごとく(第1のエンジントルク
推定系でも、第2のエンジントルク推定系でも)エンジ
ントルクが推定できないが、入出力回転センサ系の異常
の場合、例えば変速比算出(到達変速比算出)にも影響
が生じ、あるいはまた、例えば入力回転センサ64で
は、図3のブロック99での前記した速度比e(エンジ
ン回転数Ne と変速機入力回転数Ni との比)の算出に
も影響を与えるなど、結果として、図3のブロック77
で求めるべきトルクシフト補償変速比TSrtoを全体
的に推定算出することができなくなるなどすることか
ら、エンジン回転センサ68を含んで、これら回転セン
サの3つのうち、どれが異常になっても、トルクシフト
量の推定が不能になるとみて、したがって、ここでは、
図6のステップ231の処理としては、これを判断する
判定内容のものとすることができる。
【0085】また、図6のステップ232においてチェ
ックするエンジン異常の信号(燃料噴射パルス幅通信情
報LANTPO=OFFH)は、エンジン制御装置側にお
いて、図7での燃料噴射パルス幅通信情報LANTPO
決定時に作り出す。図7は、図4のブロック391〜3
93におけると同様の処理を行うもので、先ずステップ
241において、当該燃料噴射パルス幅通信情報LAN
POを決定するのに用いる、エンジン制御側での基本セ
ンサであるエンジン回転検出用クランク角センサ368
および吸気量センサ369が異常であるか正常であるか
を判定する。
【0086】これらセンサの一方でも異常である場合は
ステップ242において、エンジン異常であることを示
すように燃料噴射パルス幅通信情報LANTPOにOFF
Hをセットする。該エンジン回転検出用センサ368お
よび吸気量センサ369が共に正常である場合は、ステ
ップ243,244において、これらセンサからの信号
を基にエンジン回転数Ne およびエンジン吸気量Qを算
出し、ステップ245において、エンジン吸気量Qをエ
ンジン回転数Ne により除算することでエンジン出力ト
ルク(Q/Ne )を求め、これに定数Kを掛けて基本パ
ルス幅TPO(=K・Q/Ne )を求める。次いでステッ
プ246において、この基本パルス幅TPOに対しエンジ
ン吸気系の遅れなどの補正を行うことで、エンジン吸気
量相当値の燃料噴射パルス幅TPを求める。
【0087】次いでステップ247において、図4のフ
ューエルカット装置393の作動状況からフューエルカ
ット気筒数信号をチェックし、全気筒フューエルカット
であれば、ステップ248において燃料噴射パルス幅通
信情報LANTPO=0をセットし、半気筒フューエルカ
ットであれば、ステップ249において燃料噴射パルス
幅通信情報LANTPO=TP /2をセットし、全気筒噴
射であれば、ステップ250において燃料噴射パルス幅
通信情報LANTPO=TP をセットし、そして、かくし
て得られる燃料噴射パルス幅通信情報LANTPOが、C
VT制御装置側に通信で送信されると共に、ステップ2
41の基本センサ異常判定結果で異常と判定された場合
にステップ242でセットされる燃料噴射パルス幅通信
情報LANTPO=OFFHも、当該異常時に該当すると
きは、該当通信情報LANTPOとして送信され、CVT
制御装置側では、常時、こうして送信されてくる入来通
信情報LANTPOをチェックし、図6のステップ232
でのエンジン異常の判定に用いることとする。
【0088】しかして、図6のステップ232の判断の
結果、エンジン制御装置側から燃料噴射パルス幅通信情
報LANTPOは入力されるものの、受信した燃料噴射パ
ルス幅通信情報LANTPOが、LANTPO=OFFHを
示していて、基本センサが異常であるためにTP 値自体
が算出できず、従ってエンジン異常の旨を表しているな
ら、そもそも、エンジン制御側で、エンジン発生トルク
自体が不定な状態となっており、従ってエンジントルク
推定もそもそも不可能と判断し、結果、トルクシフト量
を推定できないとみることができる。よって、上記エン
ジン回転センサ68異常の場合と同じく、こうした状態
では、変速機入力トルクTi に対応したトルクシフト補
償のためのトルクシフト補償変速比TSrtoを求める
ことはできないと判断する(トルクシフト量推定不
能)。従って、図6のステップ232では、こうした観
点からトルクシフト量の推定が可能な状態か否か、つま
りエンジン制御の基本センサ368、369が正常(T
P 値の算出可能)か異常(TP 値の算出不能)かどうか
を監視して、そして、LANTPO=OFFHによるエン
ジン異常を示すなら、ステップ234側を選択し、図5
のステップ212〜216の制限済到達変速比LmDR
atioを求める処理により、到達変速比DRatio
の許容変化幅を小さくする。すなわち、変速比の使用範
囲を、適正なトルクシフト補償が実行できる通常の場合
(ステップ233側の処理選択時)に比し、狭くするの
を確保することができる。
【0089】なお、かかるエンジン異常の場合は、次に
述べるごとく、トルクシフト補償変速比TSrto算出
プログラムの図8のステップ116では、エンジン異常
時に変速機入力トルクTi を算出、適用すること自体無
意味とみて、以後の処理の適用において値Ti =0とす
る。これにより、エンジン異常時は、エンジントルクの
推定が不可能なため、過ったトルクシフト補償を防ぐた
め変速機入力トルクを0として扱い、実質トルクシフト
補償を行わない処理とすることができる。
【0090】また、異常時の上限値FMAXRTOを通
常の上限値MAXDRTOより小とし、異常時の下限値
FMINRTOを通常の下限値MINDRTOより大と
して、変速比の使用範囲を狭めるに当たり、その差MA
XDRTO〜FMAXRTO(ロー側),FMINRT
O〜MINDRTO(ハイ側)をどの程度に設定するか
については、トルクシフトがいつ発生するか等は推定で
きず、トルクシフト量の推定がもはやできないことか
ら、トルクシフト分を考慮し、また発生するであろう最
大トルクシフト量をも考慮して狭めるようにすると、よ
り確実な安全対策となる。
【0091】以上のようにして、到達変速比DRati
oの制限処理後、図5のステップ217以下の処理を経
て変速制御が実行されていくときは、入力軸20の入力
トルクTi を推定し、入力トルクTi に応じたトルクシ
フト補償変速比TSrtoを推定して求めて、これに基
づきトルクシフト補償を行う場合に、通常は、適正なト
ルクシフト補償のもと、変速比幅をハードウエア上から
定めた制限値(上限値MAXDRTO〜下限値MIND
RTO)範囲のものとすることができ、かかる変速比範
囲を使用することができることなる一方、トルクシフト
量推定不能な場合は、実質的に正常なトルクシフト補償
が行えないことを考慮し、通常の変速比幅に対しロー側
およびハイ側ともに狭めた制限値(上限値FMAXRT
O〜下限値FMINRTO)範囲内のものとすることが
できる。
【0092】ここで、実質正常なトルクシフト補償が行
えない場合を考察し付言しておくと、次のようである。
例えば、トルクシフト量の推定不能な上記のような異常
時にも、その通常の変速比幅(本例では、MAXDRT
O〜MINDRTO)で制御を継続すると、例えば、も
し、変速比が、通常制限値の上限値(MAXDRTO)
ぎりぎりの最ローの時に、トルクが増加したような場合
に、有効なトルクシフト補償が働かない(例えば、TS
rto=0)ことで、その上限値(MAXDRTO)を
超えて、最ローより更にロー側になってしまう懸念があ
る。すなわち、通常の変速比幅で変速比を制御していて
も、実際は規定外の変速比になるおそれがある。つま
り、そのとき、トルクシフト補償が効かない分、実際の
変速比は指令の変速比(本例では、図3のブロック82
からブロック86へ与えられる変速比指令値)に比べ異
なってしまう場合が発生し、異常時にも、変速比幅は変
更せずに変速指令を行っていると、かかる変速比の差が
生じた場合に、通常の制限値として定められている範囲
を超えた規定外の変速比となり、ハードウエア上使用で
きない変速比位置に突入してしまう可能性がある。
【0093】これに対し、上述した到達変速比制限処理
によれば、上記異常時の上限値FMAXRTOおよび異
常時の下限値FMINRTOを適用して、とりうる変速
比の幅を狭くすることにより、たとえトルクシフト補償
が働かないことによる実際の変速比と指令値のずれが発
生しても、規定外の変速比幅に入らないようになる。す
なわち、異常時に変速比幅を狭くすることにより、上掲
例のごとく、現に発生したトルクシフトによって、仮
に、その異常時制限値の上限値FMAXRTOを超えそ
のトルクシフト分、同程度に、更にロー側へ変速比が変
化したとした場合にでも、通常の制限値として定められ
ている範囲である上限値MAXDRTO〜下限値MIN
DRTOを超えた規定外の変速比になるのを防止でき、
したがって、ハードウエア上使用できない規定外の変速
比位置になるのを適切に防止することができることにな
る。
【0094】よって、本制限処理では、その狭めた範囲
に応じて、トルクシフト分の余裕を実変速比に持たせ得
て、結果、通常許容されるハードウエア上の制限値を超
えて、規定外の変速比(規定外の変速比位置)になるの
を防止でき、したがって、ハードウエア上使用できない
変速比位置になることが原因でハード故障を引き起こす
ような事態も、これを未然に回避でき、フェイルセーフ
を実現できる。従ってまた、換言すれば、通常は、ハー
ドウエア上の制限値MAXDRTO,MINDRTOと
して、トルクシフト量の推定が可能な通常の場合は、狭
められない、かかる範囲の分だけ、そのより広い変速比
範囲の使用を確保して、その変速範囲を十分有効に使い
切ることを可能にもする。
【0095】トルクシフト補償機能は、そもそも、かか
るトルクシフト補償をするからこそ、トロイダル型無段
変速機でも、変速比使用範囲をハードウエア上の制約か
ら設定した最大範囲ぎりぎりまでの使用を可能にもしよ
うというものであり、よって、本制限処理は、これを制
御の基本としつつも、更に一歩を進めて、もし、そのト
ルクシフト補償ができなくなるような可能性があるとき
乃至はそれが想定されるときはトルクシフト量推定不能
とみて、そのときには、上記通常の上限値MAXDRT
O、下限値MINDRTOそれぞれの設定限界値近傍で
は、既述のような懸念があることをも踏まえて、以後、
それをより安全サイドになるよう、使用変速範囲を狭め
るものであり、上記によって、これらの両立が図られる
ことにもなる。
【0096】しかも、本例では、トルクシフト量の推定
が可能か否かは、回転センサの異常判定により判断し、
あるいはまた、エンジン異常と判定されるとき、トルク
シフト量推定不能と判断するものであるから、当該異常
時、正常なトルクシフト補償が不可能なため、かかる場
合に、通常の使用変速比よりも狭い異常時制限値を設定
することができ、したがって、当該異常と判定されると
き、これに合わせて確実に、フェイルセーフを実現でき
る。
【0097】特に、前者の回転センサ系異常の場合は、
エンジン回転センサ68の検出値N e を使用し推定して
得た変速機入力トルクTi に応じてトルクシフト量を推
定しトルクシフト補償を行う場合にあっては、エンジン
回転センサ68に万一異常が生じた場合に、それに起因
し、正確なトルクシフト補償を補償し得ない場合もある
ことから、当該回転センサの異常判定をもってトルクシ
フト量推定不能とみることとするものであり、こうした
場合に、通常の使用変速比よりも狭い異常時制限値を設
定するようになすことを確実なものとすることが可能で
ある。したがって、エンジン回転センサ68が異常と判
定されるとき、これに合わせ、以後確実に、変速比の使
用範囲を狭め得て、上記したことを実現できる。また、
トルクシフト補償のためのトルクシフト補償変速比TS
rto算出に、そのセンサからの入力が使用されること
となる回転センサとして、エンジン回転センサ68も含
め、入出力コーンディスク1,2の各回転数を検出する
入力回転センサ64および出力回転センサ65の、これ
ら3つのセンサうちの1以上を対象として、該当回転セ
ンサが異常と判定されるとき、トルクシフト量推定不能
と判断することとすれば、上記作用効果をより確実なも
のとすることができる。
【0098】また、後者のエンジン異常時の場合は、エ
ンジン制御側も、リンプホーム(フェイルセーフ)的な
動きとなり、変速機に入力されるトルクそのものが、そ
もそも不定となり、結果、同様に、推定入力トルクTi
に応じてトルクシフト量を推定しトルクシフト補償を行
う制御のもとでは、そもそも本来のトルクシフト補償機
能の発揮は不可能なため、かかるエンジン異常をもって
トルクシフト量推定不能とみて、通常の使用変速比より
も狭い異常時制限値を設定することを可能にすることが
でき、したがって、エンジン側もフェイルセーフ実行時
には、確実にそれに合わせて、以後、変速比の使用範囲
を狭め得て、上記したことを実現できる。
【0099】更に、この場合において、入力トルク推定
につき、エンジントルクTe を推定し、且つ該推定エン
ジントルクに基づき入力トルクTi の算出をするように
なすと共に、そのエンジントルク推定に、エンジン制御
側の燃料噴射量を決めるための基本制御量を用いる一
方、上記エンジン異常は、当該基本燃料噴射量決定のた
めのセンサ異常時とするから、例えば、エンジン制御側
での燃料噴射制御に資すべきエンジン吸入空気量相当値
の燃料噴射パルス幅TP が、吸気量センサ369とエン
ジン回転検出用クランク角センサ368からの検出値に
基づき決定される場合において、トルクシフト量の推定
が可能な正常時には、そのエンジン吸入空気量相当値を
用いることによる作用効果、すなわち、トルクシフト補
償に際し低負荷域での精度も向上でき、特に、トルクシ
フトによる変速比変化量が低負荷域で大きいトロイダル
型無段変速機でも、当該領域を含め、良好な変速性能を
確保することを可能する等々の作用効果も得つつ、かか
るエンジン吸入空気量相当値の算出が不能な、これらセ
ンサ368,369のうち少なくとも一方のセンサ異常
時には、エンジン異常として、トルクシフト量推定不能
と判断し、以後、変速比の使用範囲を狭め得て、上記し
た作用効果も得られ、結果、これら両者の作用効果を併
せ奏し得るものとすることができる。
【0100】図5に戻り、同図の次のステップ217
は、図3のブロック75に相当するもので、到達変速比
DRatioを変速時定数Tsftで定めた変速応答を
もって実現するための過渡的な時々刻々の目標変速比R
atio0を算出する。次いでステップ218において
は、図3および図4のブロック76,77,96,9
7,99,100におけると同様の処理によりトルクシ
フト補償変速比TSrtoを算出する。詳しくは図8に
示すように、先ずステップ111において、図7により
決定した燃料噴射パルス幅通信情報LANTPOの入力が
あるか否かにより通信が正常に行われているのか、異常
であるのかを判定し、正常であれば今度はステップ11
2において、燃料噴射パルス幅通信情報LANTPOがO
FFHか否かによりエンジンが異常であるか否かを判定
する。
【0101】通信異常である場合は、ステップ113に
おいて(図4の切り換え器96の実線位置から2点鎖線
位置への切り換えにより)、スロットル開度TVOおよ
びエンジン回転数Ne から、エンジン性能線図に対応し
たマップを基にエンジントルクTe をマップ検索により
求め、次いでステップ114において、トルクコンバー
タの入出力回転数(Ne ,N i )比である速度比からト
ルクコンバータ性能線図に対応するマップの基にトルク
比tを検索により求め、更にステップ115において、
上記のエンジン出力トルクTe にトルク比tを乗じ、変
速機入力トルクTi を演算する。以上より、代替的な第
2のエンジントルク推定系に基づく変速機入力トルクT
i の推定がなされる。
【0102】エンジン異常である場合はステップ116
において、変速機入力トルクTi を無条件に0とする。
これにより、既述のごとく、誤ったトルクシフト補償の
防止を図られる。通信異常もエンジン異常もなければ、
ステップ117において燃料噴射パルス幅通信情報LA
NTPO(エンジン吸気量相当値の燃料噴射パルス幅
P )およびエンジン回転数Ne から、エンジン性能線
図に対応したマップを基にエンジン出力トルクTe を検
索により求め、ステップ114において、トルクコンバ
ータの入出力回転数(Ne ,Ni )比である速度比から
トルクコンバータ性能線図に対応するマップの基にトル
ク比tを検索により求め、更にステップ115におい
て、上記のエンジン出力トルクTe にトルク比tを乗
じ、変速機入力トルクTi を演算する。以上より、通
常、使用される第1のエンジントルク推定系に基づく変
速機入力トルクTi の推定がなされる。
【0103】最後のステップ118においては、ステッ
プ115または116で求めた変速機入力トルクTi
および図5のステップ217で求めた過渡的な目標変速
比Ratio0から、トロイダル型無段変速機に特有な
トルクシフト(変速比の不正)をなくすためのトルクシ
フト補償変速比TSrtoをマップ検索などにより求め
る。かくて、エンジン推定に、第1のエンジントルク推
定系が用いられる場合、既述のごとく、そのエンジン吸
入空気量相当値を用いることで、低負荷域での精度も向
上し得て、当該領域を含め、良好な変速性能の確保が図
られる。しかも、過給機付きエンジン等での過給遅れに
よるエンジントルク遅れにも対応可能となり、しかもま
た、コースト条件での燃料カット時も、例えば、その基
本制御量(シリンダ空気相当パルス幅TP )=0との情
報のやり取り、すなわちエンジン制御装置側からの燃料
噴射パルス幅通信情報LANTPO=0の送信、およびC
VT制御装置側でも該情報LANTPO=0の受信で、対
応可能ともなる。
【0104】図5の次のステップ219においては、後
で詳述する図9〜図14の制御プログラムを実行して、
図3のブロック78〜81,83,84,88,89,
90におけると同様の処理により、PID制御による変
速比フィードバック補正量FBrtoを算出すると共
に、当該変速比フィードバック補正量FBrtoの制限
を行って制限済フィードバック補正量LmFBrtoを
求める。そしてステップ220で、図3のブロック7
0,85におけると同様の処理により、トルクシフト補
償済目標変速比TSRatio0(=Ratio0+T
Srtoを算出すると共に、補正済目標変速比DsrR
TO(=TSRatio0+LmFBrto)を求め
る。
【0105】次いでステップ221〜225において、
図3のブロック82におけると同様の処理により、補正
済目標変速比DsrRTOを最終変速比指令上限値LI
MRTOMAXおよび最終変速比指令下限値LIMRT
OMIN間の範囲内に制限して制限済変速比指令LmD
srRTOを求める。つまり、ステップ221,222
で補正済目標変速比DsrRTOが最終変速比指令上限
値LIMRTOMAXより小さく、且つ、最終変速比指
令下限値LIMRTOMIN以上であると判定する時、
すなわち補正済目標変速比DsrRTOが最終変速比指
令上限値LIMRTOMAXおよび最終変速比指令下限
値LIMRTOMIN間の範囲内にある時は、ステップ
223において補正済目標変速比DsrRTOをそのま
まま制限済変速比指令LmDsrRTOとし、DsrR
TO≧LIMRTOMAXである時は、ステップ224
で制限済変速比指令LmDsrRTOに最終変速比指令
上限値LIMRTOMAXをセットし、DsrRTO<
LIMRTOMINである時は、ステップ225におい
て制限済変速比指令LmDsrRTOに最終変速比指令
下限値LIMRTOMINをセットする。
【0106】更にステップ226において、図3のブロ
ック86におけると同様の処理により、上記の制限済変
速比指令LmDsrRTOを実現するためのステップモ
ータ(アクチュエータ)4の目標ステップ数(アクチュ
エータ目標駆動位置)DsrSTPをマップ検索により
求める。
【0107】次のステップ227においては、図3のブ
ロック88におけると同様にして、変速機作動油温TM
Pなどからステップモータ4の限界駆動速度を決定し、
ステップ228では、図3のブロック87におけると同
様に、当該限界駆動速度でもステップモータ4が1制御
周期中に前記目標ステップ数DsrSTPに変位し得な
いとき、ステップモータ4の上記限界駆動速度で実現可
能な実現可能限界位置をステップモータ4への駆動位置
指令Astepとなし、ステップモータ4が1制御周期
中に上記目標ステップ数DsrSTPに変位し得るとき
は、当該目標ステップ数DsrSTPをそのままステッ
プモータ4への駆動位置指令Astepとして出力す
る。
【0108】次いで、ステップ219において求める変
速比フィードバック補正量FBrtoの算出、およびそ
の制限により制限済変速比指令LmDsrRTOを求め
る処理を、図9〜図14により詳述する。図9は、図3
のブロック78,79に相当する制御プログラムで、ス
テップ121において目標変速比Ratio0を読み込
み、ステップ122において、変速機入力回転数Ni
変速機出力回転数NO で除算することにより実変速比R
atio(=Ni /NO )を算出し、ステップ123に
おいて、目標変速比Ratio0から実変速比Rati
oを差し引いて、両者間における変速比偏差RtoER
R(=Ratio0−Ratio)を求める。そしてス
テップ124で、変速比偏差RtoERRと、その1周
期(例えば10msec)前の値RtoERR(OLD)と
の差分値(d/dt)RtoERR〔=RtoERR−Rt
oERR(OLD)〕を求め、これを変速比偏差Rto
ERRの微分値として用いる。
【0109】図10は、図3のブロック80,81,8
3におけると同様の処理によりPID制御のフィードバ
ックゲインを求めるもので、ステップ131において変
速機入力回転数Ni および車速VSPを読み込み、ステ
ップ132においては、これら変速機入力回転数Ni
よび車速VSPに応じて決定すべき第1の比例制御用フ
ィードバックゲインfbpDATA1、積分制御用フィ
ードバックゲインfbiDATA1、および微分制御用
フィードバックゲインfbdDATA1をマップ検索に
より求める。
【0110】ステップ133においては、変速機作動油
温TMPおよびライン圧PL を読み込み、ステップ13
4においては、変速機作動油温TMPおよびライン圧P
L に応じて決定すべき第2の比例制御用フィードバック
ゲインfbpDATA2、積分制御用フィードバックゲ
インfbiDATA2、および微分制御用フィードバッ
クゲインfbdDATA2をマップ検索により求める。
【0111】ステップ135においては、上記第1のフ
ィードバックゲインおよび第2のフィードバックゲイン
を対応するもの同士掛け合わせて、比例制御用フィード
バックゲインfbpDATA(=fbpDATA1×f
bpDATA2)、積分制御用フィードバックゲインf
biDATA(=fbiDATA1×fbiDATA
2)、および微分制御用フィードバックゲインfbdD
ATA(=fbdDATA1×fbdDATA2)を求
める。
【0112】図11は、図3のブロック84,90にお
けると同様の処理を行って、PID制御による変速比フ
ィードバック補正量FBrtoと、制限済変速比フィー
ドバック補正量LmFBrtoを求めるもので、先ずス
テップ141において、図9で求めた変速比偏差Rto
ERRおよび同偏差の微分値(d/dt)RtoERRを読
み込み、次いでステップ142において、図10で求め
たフィードバックゲインfbpDATA,fbiDAT
A,fbdDATAをそれぞれ読み込む。
【0113】ステップ143では、車速VSPおよび変
速機入力回転数Ni から車両が停車状態であるか否かを
判定する。停車状態でなければステップ144におい
て、ステップモータ4が目標ステップ数DsrSTPに
追従可能か否かを判定する。
【0114】この判定は、図3のブロック89における
と同様にして、図14に詳細を示すごとくに行い、ステ
ップ151において、図5のステップ226で求めた目
標ステップ数DsrSTPを読み込み、ステップ152
において、図5のステップ228で求めたステップモー
タ駆動位置指令Astepを、ステップモータ4の現在
の駆動位置として読み込む。次いでステップ153にお
いて、ステップモータ4の目標ステップ数DsrSTP
に対する実駆動位置Astepの偏差ΔSTP=|Ds
rSTP−Astep|を演算する。
【0115】ステップ154,155では、ステップモ
ータ4の駆動位置偏差ΔSTPが、図5のステップ22
7において決定されるステップモータ4の限界駆動速度
から求めた追従可能判定偏差EStpON以下か、追従
不能判定偏差EStpOF以上か、これら判定偏差間の
値かを判定する。ここで追従可能判定偏差EStpON
および追従不能判定偏差EStpOFは、ステップモー
タ4の限界駆動速度で1制御周期内に無くし得る偏差を
基準にして定めるが、両者間にはヒステリシスを設定す
る。
【0116】ステップモータ4の駆動位置偏差ΔSTP
が追従可能判定偏差EStpON以下であれば、ステッ
プ156において、ステップモータ4が目標ステップ数
DsrSTPに追従可能と判定し、ステップモータ4の
駆動位置偏差ΔSTPが追従不能判定偏差EStpOF
以上であれば、ステップ157において、ステップモー
タ4が目標ステップ数DsrSTPに追従不能と判定
し、ステップモータ4の駆動位置偏差ΔSTPが追従可
能判定偏差EStpONと追従不能判定偏差EStpO
Fとの間であれば、ステップ158において、前回の判
定結果を保持する。
【0117】かかる判定結果が追従可能である場合、図
11のステップ144は制御をステップ145,146
に進め、ステップ145において、積分制御による変速
比フィードバック補正量の今回加算分DintgRをD
intgR=RtoERR×fbiDATAの演算によ
り求め、ステップ146において、この今回加算分Di
ntgRを、積分制御による変速比フィードバック補正
量の前回値IntgR(OLD)に加算して積分制御に
よる変速比フィードバック補正量の今回値IntgRを
求める。
【0118】次いでステップ161〜164において、
上記の積分制御による変速比フィードバック補正量の今
回値IntgRを、概略は図3につき前述したが詳しく
は図12および図13により後述のごとくに求める負側
のフィードバック補正量限界値FbRTOLIMMおよ
び正側のフィードバック補正量限界値FbRTOLIM
P間の値に制限するために、ステップ161,162
で、IntgR<FbRTOLIMMでなく、且つ、I
ntgR>FbRTOLIMPでもないと判定する時
は、つまりIntgRがFbRTOLIMMおよびFb
RTOLIMP間の値である場合、IntgRを制限し
ないでそのまま使用するが、ステップ161でIntg
R<FbRTOLIMMであると判定する時は、ステッ
プ163でIntgRにFbRTOLIMMをセットし
てIntgRが負側のフィードバック補正量限界値Fb
RTOLIMMよりも小さくならないようにし、ステッ
プ162でIntgR>FbRTOLIMPであると判
定する時は、ステップ164でIntgRにFbRTO
LIMPをセットしてIntgRが正側のフィードバッ
ク補正量限界値FbRTOLIMPよりも大きくならな
いようにする。
【0119】そしてステップ147において、かように
制限された積分制御による変速比フィードバック補正量
の今回値IntgRと、図10のように求めたフィード
バックゲインを用い、先ず比例制御による変速比フィー
ドバック補正量をRtoERR×fbpDATAにより
求め、微分制御による変速比フィードバック補正量を
(d/dt)RtoERR×fbdDATAにより求め、こ
れらと、上記制限された積分制御による変速比フィード
バック補正量の今回値IntgRを加え合わせることに
より、PID制御による変速比フィードバック補正量F
Brto(=RtoERR×fbpDATA+(d/dt)
RtoERR×fbdDATA+IntgR)を求め
る。
【0120】ところで、ステップ144においてステッ
プモータ4が目標ステップ数DsrSTPに追従不能で
あると判定した場合は、ステップ148において積分制
御による変速比フィードバック補正量の今回加算分Di
ntgRを0に維持する。これがため、ステップモータ
4が目標ステップ数DsrSTPに追従不能である場
合、ステップ146で求めた積分制御による変速比フィ
ードバック補正量の今回値IntgRが前回値Intg
R(OLD)のままに保持されることとなり、当該追従
不能にもかかわらずフィードバック制御不能分の変速比
フィードバック補正量が溜まり込むのを回避して、前記
した作用効果を達成することができる。
【0121】ステップ165〜169においては、ステ
ップ147で求めたPID制御による変速比フィードバ
ック補正量FBrtoを、積分制御による変速比フィー
ドバック補正量の今回値IntgRに対する制限に際し
て用いたと同じ、負側のフィードバック補正量限界値F
bRTOLIMMおよび正側のフィードバック補正量限
界値FbRTOLIMP間の値に制限するために、ステ
ップ165,166で、FBrto<FbRTOLIM
Mでなく、且つ、FBrto>FbRTOLIMPでも
ないと判定する時は、つまりFBrtoがFbRTOL
IMMおよびFbRTOLIMP間の値である場合、ス
テップ169においてFBrtoをそのまま制限済変速
比フィードバック補正量LmFBrtoにセットする
が、ステップ165でFBrto<FbRTOLIMM
であると判定する時は、ステップ167で制限済変速比
フィードバック補正量LmFBrtoにFbRTOLI
MMをセットしてLmFBrtoが負側のフィードバッ
ク補正量限界値FbRTOLIMMよりも小さくならな
いようにし、ステップ166でFBrto>FbRTO
LIMPであると判定する時は、ステップ168で制限
済変速比フィードバック補正量LmFBrtoにFbR
TOLIMPをセットしてLmFBrtoが正側のフィ
ードバック補正量限界値FbRTOLIMPよりも大き
くならないようにする。
【0122】なお、図11のステップ143で車両が停
車状態になったと判定する時は、ステップ149におい
て、積分制御による変速比フィードバック補正量の今回
値IntgRおよびPID制御による変速比フィードバ
ック補正量FBrto(従ってその制限値LmFBrt
o)をそれぞれ0にリセットする。これがため、変速比
のフィードバック補正量FBrtoに積分誤差が蓄積さ
れるのを防止することができ、当該フィードバック補正
量を正確に保つことが可能である。
【0123】ここで、積分制御による変速比フィードバ
ック補正量の今回値IntgRおよびPID制御による
変速比フィードバック補正量FBrtoを図11のごと
くに制限する時の限界値である負側のフィードバック補
正量限界値FbRTOLIMMおよび正側のフィードバ
ック補正量限界値FbRTOLIMPを求める要領を図
12および図13により説明する。
【0124】図12は負側のフィードバック補正量限界
値FbRTOLIMMおよび正側のフィードバック補正
量限界値FbRTOLIMPを算出するためのプログラ
ムを示し、図13は、当該算出に際して必要な、ハード
ウエア限界などで決まる制御可能限界変速比Lmrto
min(制御可能最小変速比)およびLmrtomax
(制御可能最大変速比)を算出するためのプログラムを
示す。
【0125】図12においては、先ずステップ171で
フィードフォワード制御分としてのトルクシフト補償済
目標変速比TSRatio0をTSRatio0=Ra
tio0+TSrtoにより算出する。次いでステップ
172において、詳しくは図13により後述のように算
出する制御可能限界変速比Lmrtomin,Lmrt
omaxのうちの制御可能最大変速比Lmrtomax
からフィードフォワード制御分TSRatio0を差し
引いて正側のフィードバック補正量限界値FbRTOL
IMPを算出するそしてステップ173で、当該正側の
フィードバック補正量限界値FbRTOLIMPが元々
の正側制限値LIMFBRTOP以上であるか否かを、
更にステップ174でFbRTOLIMPが正側のフィ
ードバック補正量限界値であるにもかかわらず0以下で
あるか否かを判定し、FbRTOLIMP≧LIMFB
RTOPならステップ175でFbRTOLIMPをL
IMFBRTOPにセットしてこれを超えることのない
ようにし、FbRTOLIMP≦0ならステップ176
でFbRTOLIMPを0にセットしてこれよりも小さ
くなることのないようにし、FbRTOLIMPがLI
MFBRTOPと0との間の値なら、上記の制限を行わ
ない。
【0126】次のステップ177では、制御可能限界変
速比Lmrtomin,Lmrtomaxのうち他方の
制御可能最小変速比Lmrtominからフィードフォ
ワード制御分TSRatio0を差し引いて負側のフィ
ードバック補正量限界値FbRTOLIMMを算出する
そしてステップ178で、当該負側のフィードバック補
正量限界値FbRTOLIMMが元々の負側制限値LI
MFBRTOM以下であるか否かを、更にステップ17
9でFbRTOLIMMが負側のフィードバック補正量
限界値であるにもかかわらず0以上であるか否かを判定
し、FbRTOLIMM≦LIMFBRTOMならステ
ップ180でFbRTOLIMMをLIMFBRTOM
にセットしてこれより小さくなることのないようにし、
FbRTOLIMP≧0ならステップ181でFbRT
OLIMMを0にセットしてこれよりも大きくなること
のないようにし、FbRTOLIMMがLIMFBRT
OMと0との間の値なら、上記の制限を行わない。
【0127】次いで図13による、制御可能限界変速比
Lmrtomin(制御可能最小変速比)およびLmr
tomax(制御可能最大変速比)の算出プログラムを
説明する。ステップ191では、実変速比Ratio
(=変速機入力回転数Ni /変速機出力回転数NO )が
一方のハードウエア限界である実用可能下限変速比MI
NRTO以下であるか否かを判定し、通常ならあり得な
いがトルクシフト等の外乱でRatio≦MINRTO
になったらステップ192で、制御可能最小変速比Lm
rtominに前回の制限済変速比指令LmDsrRT
Oをセットする。しかして、Ratio≦MINRTO
でなければステップ193において、制御可能最小変速
比Lmrtominに、図5のステップ221〜225
における最終変速比指令下限値LIMRTOMINをセ
ットする。
【0128】次いでステップ194において、実変速比
Ratio(=変速機入力回転数N i /変速機出力回転
数NO )が他方のハードウエア限界である実用可能上限
変速比MAXRTO以上であるか否かを判定し、通常な
らあり得ないがトルクシフト等の外乱でRatio≧M
AXRTOになったらステップ195で、制御可能最大
変速比Lmrtomaxに前回の制限済変速比指令Lm
DsrRTOをセットする。しかして、Ratio≧M
AXRTOでなければステップ196において、制御可
能最大変速比Lmrtomaxに、図5のステップ22
1〜225における最終変速比指令上限値LIMRTO
MAXをセットする。
【0129】以上のようにして決定した制御可能限界変
速比Lmrtomin(制御可能最小変速比)およびL
mrtomax(制御可能最大変速比)から、図12の
ステップ172,177におけるようにフィードフォワ
ード制御分TSRatio0を差し引いて、正側のフィ
ードバック補正量限界値FbRTOLIMPおよび負側
のフィードバック補正量限界値FbRTOLIMMをそ
れぞれ求め、図11のステップ161〜164におい
て、積分制御による変速比フィードバック補正量の今回
値IntgRをこれらフィードバック補正量限界値Fb
RTOLIMP,FbRTOLIMMに制限すると共
に、同図のステップ165〜169において、当該積分
制御による変速比フィードバック補正量IntgRを含
む、ステップ147で求めたPID制御による変速比フ
ィードバック補正量FBrtoを、同じフィードバック
補正量限界値FbRTOLIMP,FbRTOLIMM
に制限して制限済フィードバック補正量LmFBrto
を求め、この制限済フィードバック補正量LmFBrt
oを図5のステップ220における補正済目標変速比D
srRTOの算出に用いて以後の変速制御に資すること
から、PID制御による変速比フィードバック補正量F
Brtoの制限で、図3につき前述したと同様にフィー
ドバック制御による補正が、実際上は変速制御に反映さ
れないにもかかわらずフィードバック制御が継続される
のを回避し得て、当該フィードバック制御の不用意な継
続により変速応答の悪化や変速品質の低下を生ずるとの
懸念を払拭することができる他に、当該懸念を生起する
主原因であった積分制御による変速比フィードバック補
正量IntgRをも同様に制限するから、積分制御によ
るフィードバック補正量の不要な溜まり込みがなくな
り、当該懸念を払拭するという上記の作用効果を更に確
実なものにすることができる。
【0130】しかも図13におけるように、実変速比R
atioがハードウエア限界である実用可能下限変速比
MINRTOおよび実用可能上限変速比MAXRTOか
ら外れるような外乱発生時は、制御可能限界変速比Lm
rtomin,Lmrtomaxを、予め定めてある変
速比指令限界値LIMRTOMIN,LIMRTOMA
Xでなく、前回の制限済変速比指令LmDsrRTOと
するために、外乱発生時に制御可能限界変速比Lmrt
omin,Lmrtomaxを逐一より実際的なものに
することができる。
【0131】そして、かかる制御可能限界変速比Lmr
tomin,Lmrtomaxの決定によれば結果的
に、実変速比Rarioのモニタにより当該実変速比が
実用可能限界変速比MINRTO,MAXRTOを超え
ないよう変速比指令LmDsrRTOを制限することと
なり、実現不能な変速比までをも指令して変速制御上の
不都合が生ずるという弊害を回避し得ると共に、変速比
指令LmDsrRTOの制限が実変速比Rarioをモ
ニタしながらの制限になるから、実変速比Ratioと
変速比指令LmDsrRTOとが変速応答遅れや、特性
のバラツキや、外乱などに起因して一致しない場合で
も、実変速比Rarioが実用可能限界変速比MINR
TO,MAXRTOを超えないようにするという本来の
目的を確実に達成することができる。従って、上記の不
一致を見込んで、又これに余裕分を加算して変速比指令
の許容幅MINRTO〜MAXRTO(Lmrtomi
n,Lmrtomax)を小さくする必要がなく、ハー
ドウエア上使用可能な変速比範囲を十分に使い切ること
ができる。
【0132】また図12のステップ173〜176や、
ステップ178〜181におけるように、上記の制御可
能限界変速比Lmrtomax,Lmrtominから
フィードフォワード制御分TSRatio0を差し引い
て求めた正側のフィードバック補正量限界値FbRTO
LIMPおよび負側のフィードバック補正量限界値Fb
RTOLIMMMにも所定の制限を加えたことから、こ
れらフィードバック補正量限界値が異常になって上記の
作用効果が阻害されるような事態の発生もなくすことが
できる。
【0133】なお、本発明は、以上の実施の形態に限定
されるものではない。例えば、上記実施の形態では、ト
ルクシフトの補償をするべくエンジントルク推定にエン
ジン吸入空気量相当値に用いるところ、当該エンジンは
過給機付きエンジンとして説明したが、本発明の実施に
当たり、これに限定されるものではない。よって、当該
トロイダル型無段変速機と組み合わされるエンジンは過
給機付きエンジンでなくともよいの言うまでもない。も
っとも、エンジンは過給機付きエンジンの場合には、既
述した作用効果を奏し得ることは勿論である。また、エ
ンジン吸入空気量相当値はエンジンの全気筒数に対する
エンジントルク発生気筒数の割合に応じて得られる値と
し、あるいは、第2のエンジントルク推定手段を更に具
備させ、あるいはまた、エンジン吸入空気量相当値をエ
ンジン制御装置から通信により受信する構成として説明
したが、これに限定されるものでもない。したがって、
これらの態様を必ずしも伴わなくて実施可能であり、例
えば、無段変速機コントローラ側にも吸入空気量センサ
を接続して、当該コントローラ側で、第1のエンジン推
定手段と同様の処理を行わせるようにしても、エンジン
吸入空気量相当値を用いることで、低負荷域での精度も
向上でき、特に、トルクシフトによる変速比変化量が低
負荷域で当該領域を含め、良好な変速性能を確保するこ
とができる作用効果は奏することができる。もっとも、
これら態様を併せ有するときは、それら態様に基づく既
述のごとき対応性を高める等々の作用効果を奏し得るこ
と言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明一実施の態様になる変速制御装置を具え
たトロイダル型無段変速機の縦断側面図である。
【図2】同トロイダル型無段変速機を、その変速制御シ
ステムと共に示す縦断正面図である。
【図3】同例におけるコントローラが実行する変速制御
の機能別ブロック線図の主要部を示す線図である。
【図4】同変速制御の機能ブロック線図の残部を示す線
図である。
【図5】同コントローラをマイクロコンピュータで構成
した場合において、これが実行すべき変速制御プログラ
ムの全体を示すフローチャートである。
【図6】同変速制御プログラム中における到達変速比限
界値の演算処理を示すフローチャートである。
【図7】エンジンの燃料噴射パルス幅信号を算出するプ
ログラムを示すフローチャートである。
【図8】同変速制御プログラム中におけるトルクシフト
補償変速比の演算処理を示すフローチャートである。
【図9】同変速制御プログラム中における、目標変速比
と実変速比との間の変速比偏差を求めるための演算処理
を示すフローチャートである。
【図10】同変速制御プログラム中におけるフィードバ
ックゲイン算出処理を示すフローチャートである。
【図11】同変速制御プログラム中における変速比フィ
ードバック補正量の算出処理を示すフローチャートであ
る。
【図12】同変速比フィードバック補正量算出プログラ
ムにおけるフィードバック補正量限界値の算出処理を示
すフローチャートである。
【図13】同フィードバック補正量限界値算出プログラ
ムにおいて用いる制御可能限界変速比の算出処理を示す
フローチャートである。
【図14】同変速制御プログラム中におけるステップモ
ータ追従可能判定処理を示すフローチャートである。
【図15】無段変速機の変速パターンを例示する変速線
図である。
【図16】エンジントルクとTP の関係を表す実験結果
をデータを示す考察図である。
【図17】エンジントルクとスロットル開度の関係の説
明に供する考察図である。
【図18】トルクシフト特性の説明に供する考察図で、
ロー(Low)側の変速比での入力トルク−変速比特
性、中間(Mid)の変速比での入力トルク−変速比特
性、およびハイ(High)側の変速比での入力トルク
−変速比特性を、それぞれ示す線図である。
【符号の説明】
1 入力コーンディスク 2 出力コーンディスク 3 パワーローラ 4 ステップモータ 5 変速制御弁 6 ピストン 7 プリセスカム 8 変速リンク 20 入力軸 28 ローディングカム 41 トラニオン 43 アッパリンク 45 ロアリンク 61 コントローラ(CVTコントローラ) 62 スロットル開度センサ 63 車速センサ 64 入力回転センサ 65 出力回転センサ 66 油温センサ 67 ライン圧センサ 68 エンジン回転センサ(CVT制御装置側自前のセン
サ) 70 トルク補償済目標変速比算出部 71 変速マップ選択部 72 到達入力回転数算出部 73 到達変速比算出部 74 変速時定数算出部 75 目標変速比算出部 76 入力トルク算出部 77 トルクシフト補償変速比算出部 78 実変速比算出部 79 変速比偏差算出部 80 第1フィードバックゲイン算出部 81 第2フィードバックゲイン算出部 82 補正済目標変速比制限部 83 フィードバックゲイン算出部 84 PID制御部 85 補正済目標変速比算出部 86 目標ステップ数算出部 87 ステップモータ駆動位置指令算出部 88 ステップモータ駆動速度決定部 89 ステップモータ追従可能判定部 90 変速比フィードバック補正量制限部 94 通信異常判定部 95 情報受け取り部 96 切り換え器 97 エンジントルク算出部 98 到達変速比制限部 99 速度比算出部 100 トルク比算出部 391 エンジンコントローラ 368 クランク角センサ(エンジン制御側のエンジン回転
数検出センサ) 369 エンジン吸気量センサ 391 吸気量相当燃料噴射パルス幅算出部 392 通信情報作成部 393 フューエルカット装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F16H 101:04 F16H 101:04 (72)発明者 皆川 裕介 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社内 (72)発明者 渡辺 充 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−176749(JP,A) 特開 平7−174219(JP,A) 特開 平3−279032(JP,A) 特開 平3−278101(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 59/00 - 63/48

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トロイダル型無段変速機の入力軸の入力
    トルクを推定する入力トルク推定手段と、該入力トルク
    に応じたトルクシフト量を推定する手段と、斯く推定し
    たトルクシフト量を抑制する方向に変速比制御量を補正
    する手段とを具えるトロイダル型無段変速機の変速制御
    装置であって、 該入力トルク推定手段は、 エンジントルクを推定する第1のエンジントルク推定手
    段と、該推定エンジントルクに基づき前記入力トルクを
    算出する手段と、前記第1のエンジントルク推定手段以
    外に、第2のエンジントルク推定手段を含み、前記第1の エンジントルク推定手段は、エンジン吸入空
    気量相当値と、エンジン回転数より、エンジントルクを
    推定し、 前記第2のエンジントルク推定手段は、エンジンスロッ
    トル開度とエンジン回転数より、エンジントルクを推定
    し、 前記第1のエンジントルク推定手段がエンジントルク推
    定不可能な場合、当該第2のエンジントルク推定手段に
    よるエンジントルク推定値を用いる、 ことを特徴とするトロイダル型無段変速機の変速制御装
    置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、 前記エンジン吸入空気量相当値は、エンジンの全気筒数
    に対するエンジントルク発生気筒数の割合に応じて得ら
    れる値とする、 ことを特徴とするトロイダル型無段変速機の変速制御装
    置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、 前記エンジン吸入空気量相当値を、エンジン制御装置か
    ら通信により受信する構成となし、 前記第1のエンジントルク推定手段によるエンジントル
    ク推定不可能な場合には、当該エンジン制御装置との間
    の通信が異常である場合が含まれる、 ことを特徴とするトロイダル型無段変速機の変速制御装
    置。
  4. 【請求項4】 前記エンジンが、過給機付エンジンであ
    る、 ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載
    トロイダル型無段変速機の変速制御装置。
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