JP3487092B2 - 生物学的水処理装置の制御方法 - Google Patents

生物学的水処理装置の制御方法

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JP3487092B2
JP3487092B2 JP24199296A JP24199296A JP3487092B2 JP 3487092 B2 JP3487092 B2 JP 3487092B2 JP 24199296 A JP24199296 A JP 24199296A JP 24199296 A JP24199296 A JP 24199296A JP 3487092 B2 JP3487092 B2 JP 3487092B2
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  • Activated Sludge Processes (AREA)
  • Purification Treatments By Anaerobic Or Anaerobic And Aerobic Bacteria Or Animals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生物学的水処理装
置の制御方法、とくに嫌気−好気活性汚泥法を用いた生
物学的水処理装置において、下水等の被処理水中の汚濁
物を効率的に除去するための制御方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】「高度処理施設設計マニュアル(案)」
(日本下水道協会、平成6年)にも記載されているよう
に、嫌気−好気活性汚泥法とは、活性汚泥微生物による
リン過剰摂取現象を利用して下水中のリンを除去するこ
とを主たる目的とした処理方法である。
【0003】近年、上水道源である湖沼などで赤潮やか
び臭微生物が繁殖し、社会問題となっている。そのた
め、これらの微生物にとって栄養源となる下水中のリン
や窒素の除去が強く求められている。
【0004】生物学的リン除去のメカニズムについて以
下に説明する。リン過剰摂取を行う能力を持つ微生物を
含む活性汚泥を嫌気状態(酸素の無い状態)に置くと、
活性汚泥は体内から正リン酸態イオン(溶解性PO4 -
P)を放出し、液中の溶解性PO4 -−P濃度は増加す
る。この状態を一定時間継続した後、活性汚泥を好気状
態(酸素のある状態)に置くと活性汚泥微生物は逆に液
中に放出した量以上の溶解性PO4 -−Pを体内に摂取す
る。これを活性汚泥微生物によるリンの過剰摂取現象と
いう。この結果、液中の溶解性PO4 -−P濃度は流入水
中の濃度以下まで減少し、最終的にはほぼ0に近い濃度
にまで低下する。
【0005】一方、生物学的窒素除去のメカニズムは以
下の通りである。下水中のアンモニア性窒素は、好気条
件下で、活性汚泥微生物中のアンモニア酸化菌により亜
硝酸性窒素に酸化される。さらに、亜硝酸性窒素は活性
汚泥微生物中の亜硝酸酸化菌により硝酸性窒素に酸化さ
れる。この反応を硝化反応と呼ぶ。
【0006】硝酸性窒素は、嫌気条件下で、活性汚泥微
生物中の脱窒菌により窒素ガスに還元される。この反応
を脱窒反応と呼ぶ。下水中の窒素は、硝化反応から脱窒
反応を経て大気中に放散することにより除去される。
【0007】図16は、従来の嫌気−好気活性汚泥法を
用いた生物学的水処理装置の一例を示す構成図である。
図16において、1は2つの生物反応タンクのうちの嫌
気タンク、2は好気タンク、3は最終沈殿池、4は空気
供給装置である。また、aは下水を生物反応タンクに導
くための配管、bは生物反応タンクからの処理水を最終
沈殿池3に送るための配管、cは活性汚泥を沈殿分離し
たあとの上澄水を放流するための配管である。5は活性
汚泥の一部を余剰汚泥として引き抜くためのポンプであ
り、dはポンプ5に接続された配管である。6はその他
の汚泥を生物反応タンクへ返送するためのポンプであ
り、eはポンプ6に接続された配管である。
【0008】次に、動作について説明する。下水は配管
aを介して生物反応タンクに導入される。嫌気タンク1
では、下水中の有機物が活性汚泥内に摂取されるととも
に、活性汚泥中からリンが吐出される。好気タンク2で
は、活性汚泥内に摂取された有機物と液中に残留してい
る有機物が酸化分解されるとともに、リンが活性汚泥内
に過剰摂取される。このようにリンが除去された処理水
は、活性汚泥とともに配管bを介して最終沈殿池3へ送
られる。最終沈殿池3では、活性汚泥を沈降分離した
後、配管cを介して上澄水を放流する。活性汚泥の一部
はポンプ5、配管dを介して系外へ引き抜かれる。その
他の汚泥はポンプ6、配管eを介して嫌気タンク1へ返
送される。
【0009】なお、好気タンク2で硝化反応(アンモニ
ア性窒素→硝酸性窒素)を進ませ、嫌気タンク1では脱
窒反応(硝酸性窒素→窒素ガス)を進ませることによっ
て、生物学的窒素除去処理を行うことも可能である。し
かし、この場合、好気タンクから返送される硝酸性窒素
が嫌気タンク1内でのリンの吐出反応に悪影響を及ぼす
ため、生物学的リン除去効果が低減してしまうことが知
られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来は、上記のような
生物学的水処理装置を運転するにあたって、上記水処理
装置の運転管理者が、いわば自らの経験やカンを頼りに
運転条件を決定していた。しかも、好気タンク1への空
気供給量、最終沈殿池から生物反応タンクへ返送される
返送汚泥量などの各々の運転条件は、別々の判断基準に
基づいて設定されていた。そのため、流量や性状が著し
く変動する一般下水を対象としてリン除去反応を適切に
コントロールし、常に良好な水質を得ることは難しいと
いう問題点があった。また、上記水処理装置において、
生物学的リン除去反応と生物学的窒素除去反応とを両立
させることは難しいという問題点もあった。
【0011】本発明は、かかる問題点を解決するために
なされたもので、生物学的水処理装置の運転条件を、経
験やカンに頼ることなく、適切に設定することにより、
下水中のリンを常に良好に除去し、場合によっては窒素
除去との両立も可能ならしめ、常に良好な水質が得られ
る制御方法を得ることを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明に係る生物学的
水処理装置の制御方法は、生物学的水処理装置の運転
を、第1の運転条件である生物反応タンク内の溶存酸素
濃度と、第2の運転条件である生物反応タンク内に流入
する被処理水の流量に対する最終沈殿池から生物反応タ
ンクへ返送される返送汚泥量の比と、第3の運転条件で
ある生物反応タンク内の微生物濃度とに基づいて制御す
る方法であって、生物反応タンク内に流入する被処理水
の条件、環境条件、および目標とする処理水質のうちの
少なくとも1つを用いて、上記第1の運転条件の初期設
定値、上記第2の運転条件の初期設定値、および上記第
3の運転条件の設定値を算出し、この算出の周期より短
い周期で、生物反応タンク内に流入する被処理水の条
件、環境条件、および目標とする処理水質のうちの少な
くとも1つと、現在の水処理装置の運転条件とを用い
て、上記第1の運転条件および上記第2の運転条件を調
整するものである。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】また、生物学的水処理装置の各運転条件の
演算に、所定の入力項目と出力項目に対して予め作成さ
れたニューラルネットワークモデルを供するものであ
る。
【0017】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.発明者らは、長年、動力学モデルに基づ
く計算機シミュレーションを繰り返し、嫌気−好気活性
汚泥法を用いた生物学的水処理装置において良好な処理
水質を安定に得るための制御方法について研究してき
た。その結果、いくつかの重要な現象を発見し、この発
明に想到した。以下、実施の形態1に係わる研究成果を
説明するとともに、本発明に想到した経緯について述べ
る。
【0018】図1にシミュレーションに用いた水処理装
置の構成を、また表1にシミュレーション条件を示す。
生物反応タンクは2つの嫌気タンクと4つの好気タンク
で構成され、容積は49000m3 、最終沈殿池の容積
は16000m3 、流入下水の組成はCOD濃度260
g/m3 、アンモニア態窒素16g/m3 、正リン酸態
リン3.6g/m3 で、流入流量は3000m3/h
する。動力学モデルは、文献”THE ACTIVAT
ED SLUDGE MODEL NO.2:BIOL
OGICAL PHOSPHORUS REMOVA
L”(WaterScience Technolog
y,Vol.31,No.2,pp.1−11,199
5)に記載のモデルを用いた。
【0019】
【表1】
【0020】図2〜図4に種々の運転条件での定常状態
のシミュレーション結果を示す。図2(a)(b)は、
水温20℃の条件で生物反応タンク内の微生物濃度(以
下MLSS濃度)を1000mg/Lとしたときの処理
水リン濃度ならびに窒素濃度である。図3(a)(b)
は、水温20℃の条件でMLSS濃度を1500mg/
Lとしたときの処理水リン濃度ならびに窒素濃度であ
る。図4(a)(b)は、水温20℃の条件でMLSS
濃度を2000mg/Lとしたときの処理水リン濃度な
らびに窒素濃度である。また、図2〜図4において、横
軸は好気タンク出口の溶存酸素濃度、縦軸は処理水リン
濃度もしくは窒素濃度であり、返送比(生物反応タンク
内に流入する被処理水の流量に対する、最終沈殿池から
生物反応タンクへ返送される返送汚泥量の比)をパラメ
ータとして両者の関係を示している。
【0021】図2〜図4において、処理水リン濃度はM
LSS濃度が低い方が良好であった。一方、処理水窒素
濃度はMLSS濃度が高い方が良好であり、このとき処
理水リン濃度は、逆に、若干悪化した。これは、増殖速
度の遅い硝化菌が増え窒素除去が活発になったものの、
生成する硝酸性窒素が嫌気タンクでのリンの吐出を妨害
したためと考えられる。従って、処理水リン濃度のみを
高率に除去するのであれば、例えばMLSS濃度を10
00mg/L、返送比を0.4、好気タンク出口溶存酸
素濃度を2mg/Lに設定すれば処理水リン濃度として
0.11mg/Lが得られることがわかった。一方、処
理水窒素濃度もある程度低減させたければ、例えばML
SS濃度を1500mg/L、返送比を0.3、好気タ
ンク出口溶存酸素濃度を4mg/Lに設定すれば処理水
リン濃度として1.6mg/L、処理水窒素濃度として
8.24mg/Lが得られることがわかった。これらの
シミュレーション結果より、発明者らは次のような考察
を導いた。すなわち、 (1)好気タンク出口溶存酸素濃度、返送比、およびM
LSS濃度という3つの項目が処理水質を左右する重要
な制御因子である。 (2)上記制御項目を、従来のように別々の判断基準で
独自に設定しては良好な処理水質は得られない。3つを
同時に設定、変更することにより、良好な処理水質が得
られる。 (3)ただし、MLSS濃度は生物反応タンク内の微生
物濃度であるから、余剰汚泥として引き抜くことにより
減らすことはできても、急に増やすことはできない。そ
のときは、好気タンク出口溶存酸素濃度ならびに返送比
の2つを同時に設定、変更するだけでも相当の効果を奏
する。
【0022】次に、別の環境条件でのシミュレーション
結果を示す。図5〜図7は水温10℃での種々の運転条
件での定常状態のシミュレーション結果である。図5
(a)(b)は、水温10℃の条件でMLSS濃度を1
000mg/Lとしたときの処理水リン濃度ならびに窒
素濃度である。図6(a)(b)は、水温10℃の条件
でMLSS濃度を1500mg/Lとしたときの処理水
リン濃度ならびに窒素濃度である。図7(a)(b)
は、水温10℃の条件でMLSS濃度を2000mg/
Lとしたときの処理水リン濃度ならびに窒素濃度であ
る。また、図5〜図7において、横軸は好気タンク出口
の溶存酸素濃度、縦軸は処理水リン濃度もしくは窒素濃
度であり、返送比をパラメータとして両者の関係を示し
ている。
【0023】図5〜図7において、水温が10℃のとき
は、処理水リン濃度はほとんどのケースで0.1mg/
Lを下回り良好であった。その中で最も低いリン濃度
(0.017mg/L)が得られたのは、MLSS濃度
を1000mg/L、返送比を0.4、好気タンク出口
溶存酸素濃度を4mg/Lに設定したときであった。一
方、窒素濃度はほとんどのケースで低減せず、唯一低減
したのは(11.60mg/L)、MLSS濃度を20
00mg/L、返送比を0.4、好気タンク出口溶存酸
素濃度を4mg/Lに設定したときであった。これらの
シミュレーション結果より、図2〜図4のシミュレーシ
ョン結果と同様、好気タンク出口溶存酸素濃度、返送
比、およびMLSS濃度という3つの項目が処理水質を
左右する重要な制御因子であり、これらを適切に設定す
ることにより、良好な処理水質が得られることがわかっ
た。さらに、図2〜図4のシミュレーション結果と図5
〜図7のシミュレーション結果とを比較すると、同じ運
転条件でも水温が異なると処理水リン濃度および窒素濃
度は全く異なっており、処理水質は水温に大きく左右さ
れる、言い換えると水温などの環境条件により上記生物
学的水処理装置の運転条件を変更する必要のあることが
わかった。
【0024】以上の詳細な研究成果より、発明者らは、
上記生物学的水処理装置において良好な処理水質を得る
ための制御方法として、生物反応タンク内に流入する被
処理水の条件、環境条件、目標とする処理水質などを用
いて、上記水処理装置の2つ(好気タンク出口溶存酸素
濃度、返送比)または3つ(好気タンク出口溶存酸素濃
度、返送比、MLSS濃度)の運転条件を同時に設定、
変更する方法に想到した。運転条件の算出は、上記のよ
うな動力学モデルに基づく計算機シミュレーションを繰
り返して行うこともできる。ただし、モデルは長大かつ
複雑なので計算には長時間を要する。そこで発明者ら
は、上記演算を短時間に行うための方法として、運転条
件、流入する排水の条件、環境条件ならびに処理水質の
複雑な相互関係を1つに集約したニューラルネットワー
クモデルを用いる方法に想到した。
【0025】図8に本発明の実施の形態1に係わるニュ
ーラルネットワークモデルの一例を示す。このモデル
は、流入する排水の条件として流入流量を、環境条件と
して水温を、目標とする処理水質として処理水リン濃度
ならびに処理水窒素濃度を入力すると、上記処理水質を
達成するための運転条件として好気タンク出口溶存酸素
濃度(第1の運転条件)、返送比(第2の運転条件)、
およびMLSS濃度(第3の運転条件)を出力するもの
である。
【0026】流入流量1500〜4500m3/h 、水
温10〜20℃、MLSS濃度1000〜2000mg
/L、返送比0.2〜0.4、好気タンク出口溶存酸素
濃度0.5〜4mg/Lの範囲で設定した計算機シミュ
レーション結果から得られた処理水質(処理水リン濃度
ならびに処理水窒素濃度)を基に教師データを作成し、
バックプロパゲーション法を用いて上記ニューラルネッ
トワークモデルの学習を行った。図9に学習曲線の一例
を示す。図9において、横軸は学習回数、縦軸は誤差を
示す。このように、教師データとニューラルネットワー
クモデルの出力値とがよく一致したことから、本モデル
を用いた制御が可能であることが示唆された。
【0027】図10は、本発明の実施の形態1に係わる
嫌気−好気活性汚泥法を用いた生物学的水処理装置を示
す構成図である。実施の形態1の生物学的水処理装置に
おいては、流入する排水の条件として流入流量を、環境
条件として水温を、目標とする処理水質として処理水リ
ン濃度ならびに処理水窒素濃度を入力すると、上記処理
水質を達成するための運転条件として好気タンク出口溶
存酸素濃度、返送比、ならびにMLSS濃度が出力さ
れ、出力された値に従って運転が制御される。
【0028】図10において、1〜6、及びa〜eは図
16に示したものと同様のものである。10は、予め、
流入流量、水温、および水処理装置の運転条件(好気タ
ンク出口溶存酸素濃度、返送比、ならびにMLSS濃
度)に応じて得られた処理水リン濃度ならびに処理水窒
素濃度を用いて、図8に示されるように、流入流量、水
温、目標とする処理水リン濃度、ならびに処理水窒素濃
度を入力すると、好気タンク出口溶存酸素濃度、返送
比、ならびにMLSS濃度が出力されるように作成され
たニューラルネットワークモデルを記憶した演算器であ
る。11は流入流量を設定するための設定器であり、信
号線11aを介して演算器10と接続されている。12
は水温を設定するための設定器であり、信号線12aを
介して演算器10と接続されている。13は処理水リン
濃度の目標値を設定するための設定器であり、信号線1
3aを介して演算器10と接続されている。14は処理
水窒素濃度の目標値を設定するための設定器であり、信
号線14aを介して演算器10と接続されている。21
は好気タンクへの空気供給量を制御するためのコントロ
ーラであり、信号線21aを介して演算器10と、信号
線4aを介して空気供給装置4と、また信号線31aを
介して好気タンク出口付近に設置された溶存酸素濃度計
31と接続されている。22は返送汚泥量を制御するた
めのコントローラであり、信号線22aを介して演算器
10と、信号線6aを介してポンプ6と接続されてい
る。23は余剰汚泥引き抜き量を制御するためのコント
ローラであり、信号線23aを介して演算器10と、信
号線5aを介してポンプ5と、信号線32aを介して生
物反応タンク内に設置されたMLSS濃度計32と接続
されている。なお、MLSS濃度計の位置は図10に何
等制限されるものではなく、嫌気タンク、好気タンクの
いずれかに設置してもよい。
【0029】次に、実施の形態1の動作について説明す
る。設定器11、12、13、14に設定された流入流
量、水温、処理水リン濃度の目標値ならびに処理水窒素
濃度の目標値は、信号線11a、12a、13a、14
aを介して演算器10に入力される。演算器10では、
記憶されているニューラルネットワークモデルを用い
て、与えられた条件を満たすための好気タンク出口溶存
酸素濃度、返送汚泥量、MLSS濃度の設定値を算出す
る。好気タンク出口溶存酸素濃度の設定値は、信号線2
1aを介してコントローラ21へ送られる。コントロー
ラ21は、信号線31aを介して送られてくる溶存酸素
濃度計31の値が上記設定値となるように空気供給量を
制御する。制御信号は信号線4aを介して空気供給装置
4へ送られる。返送比の設定値は、信号線22aを介し
てコントローラ22へ送られる。コントローラ22は、
返送比が上記設定値となるように返送汚泥量を制御す
る。制御信号は信号線6aを介してポンプ6へ送られ
る。MLSS濃度の設定値は、信号線23aを介してコ
ントローラ23へ送られる。コントローラ23は、信号
線32aを介して送られてくるMLSS濃度計32の値
が上記設定値となるように余剰汚泥引き抜き量を制御す
る。制御信号は信号線5aを介してポンプ5へ送られ
る。
【0030】これにより、与えられた条件下で処理水リ
ン濃度ならびに窒素濃度の目標値を達成するように、好
気タンク出口溶存酸素濃度、返送比、MLSS濃度が適
切に設定されるので、良好な処理水質を安定して得るこ
とができる。
【0031】実施の形態2.次に本発明の実施の形態2
に係わる研究成果を説明するとともに、本発明に想到し
た経緯について述べる。降雨があり、溶存酸素を含む雨
水が流入すると、嫌気タンクでのリンの吐出が鈍り好気
タンクでの摂取も制限されるために、リンの除去率が低
減することが知られている。図11(a)は、MLSS
濃度1000mg/L、返送比0.3、好気タンク出口
溶存酸素濃度(DO濃度)2mg/Lの定常状態にある
ところへ6時間の降雨があったと仮定したシミュレーシ
ョン結果であり、横軸は時間、縦軸左は処理水リン濃
度、縦軸右は流入流量を示す。降雨中は流入流量が倍増
し、各基質濃度は1/2に希釈されるものとした。ま
た、流入水には1mg/Lの酸素が溶存するとした。ま
た、動力学モデルおよびシミュレーション条件は実施の
形態1で用いたものと同じとした。図において、曲線A
は流入流量、曲線Bは降雨期間中も上記と同じ運転条件
で運転したときの処理水リン濃度、曲線Cは降雨時のみ
返送比0.2、DO濃度4mg/Lで運転し、他の期間
は前記定常状態と同様の運転条件で運転したときの処理
水リン濃度を示す。また、図11(b)は、MLSS濃
度1000mg/L、返送比0.2、好気タンク出口溶
存酸素濃度(DO濃度)1mg/Lの定常状態にあると
ころへ図11(a)と同じ6時間の降雨があったと仮定
したシミュレーション結果である。図において、曲線D
は流入流量、曲線Eは降雨期間中も上記と同じ運転条件
で運転したときの処理水リン濃度、曲線Fは降雨時のみ
返送比0.3、DO濃度4mg/Lで運転し、他の期間
は前記定常状態と同様の運転条件で運転したときの処理
水リン濃度を示す。その他は図11(a)と同様であ
る。
【0032】図11(a)に示すように、降雨期間中も
同じ運転条件を設定した場合(曲線B)は処理水リン濃
度が一時的に上昇した。しかし、返送比を0.2に、好
気タンク出口溶存酸素濃度を4mg/Lに設定する(曲
線C)とリン濃度の上昇は抑制された。また、図11
(b)のケースでは、返送比を0.3に、好気タンク出
口溶存酸素濃度を4mg/Lに設定する(曲線F)とリ
ン濃度の上昇は抑制された。以上のシミュレーション結
果より、次のことがわかった。すなわち、 (1)従来、溶存酸素を含む雨水が流入したときは好気
タンクへの空気供給量を減らすのがよいとされてきた
が、逆に空気供給量を増やして溶存酸素濃度を高めた方
が好気タンクでのリンの吸着量が一時的に増え、処理水
リン濃度の上昇を抑えられる。 (2)同じ降雨があった場合でも、降雨前の運転条件が
異なると、降雨期間に設定するべき、すなわちリン濃度
の上昇が抑制される運転条件は異なる。このように、上
記生物学的水処理装置の新しい運転条件を設定する際に
は、場合によっては、現在の運転条件や現在の処理水質
も考慮する必要がある。
【0033】以上の詳細な研究成果より、発明者らは、
生物学的水処理装置において良好な処理水質を得るため
の制御方法として、生物反応タンク内に流入する被処理
水の条件、環境条件、目標とする処理水質、現在の水処
理装置の運転条件や現在の処理水質などを用いて、上記
水処理装置の2つ(好気タンク出口溶存酸素濃度、返送
比)または3つ(好気タンク出口溶存酸素濃度、返送
比、MLSS濃度)の運転条件を同時に設定、変更する
方法に想到した。
【0034】図12に本発明の実施の形態2に係わるニ
ューラルネットワークモデルの一例を示す。このモデル
は、流入する排水の条件として雨の強さ(実際には降雨
期間中の流入流量)ならびに降雨の継続時間を、また現
在の水処理装置の運転条件として、現在の好気タンク出
口溶存酸素濃度ならびに現在の返送比を入力すると、処
理水リン濃度の上昇を抑制する運転条件として、好気タ
ンク出口溶存酸素濃度(第1の運転条件)、ならびに返
送比(第2の運転条件)を出力するものである。なお、
ここではMLSS濃度(第3の運転条件)は1000m
g/Lで一定としている。
【0035】降雨期間中の流入流量3750〜6000
3/h、継続時間3〜12時間、返送比0.2〜0.
4、好気タンク出口溶存酸素濃度0.5〜4mg/Lの
範囲で設定した計算機シミュレーション結果から得られ
た処理水質(処理水リン濃度ならびに処理水窒素濃度)
を基に教師データを作成し、バックプロパゲーション法
を用いて上記ニューラルネットワークモデルの学習を行
った。図13に学習曲線の一例を示す。図13におい
て、横軸は学習回数、縦軸は誤差を示す。このように、
教師データとニューラルネットワークモデルの出力値と
がよく一致したことから、本モデルを用いた制御が可能
であることが示唆された。
【0036】図14は、実施の形態2に係わる嫌気−好
気活性汚泥法を用いた生物学的水処理装置を示す構成図
である。実施の形態2の生物学的水処理装置において
は、流入する排水の条件として、降雨強度(降雨期間中
の流入流量)ならびに降雨の継続時間を、また現在の水
処理装置の運転条件として好気タンク出口溶存酸素濃度
ならびに返送比を入力すると、処理水リン濃度の上昇を
抑制する運転条件として、好気タンク出口溶存酸素濃度
ならびに返送比が新たに出力され、出力された値に従っ
て運転が制御される。
【0037】図14において、15は降雨強度を設定す
るための設定器であり、信号線15aを介して演算器1
0と接続されている。16は降雨の継続時間を設定する
ための設定器であり、信号線16aを介して演算器10
と接続されている。17は現在の返送比を設定するため
の設定器であり、信号線17aを介して演算器10と接
続されている。18は現在の好気タンク出口溶存酸素濃
度を設定するための設定器であり、信号線18aを介し
て演算器10と接続されている。演算器10には、予
め、降雨強度、降雨の継続時間、および水処理装置の運
転条件(好気タンク出口溶存酸素濃度、返送比、ならび
にMLSS濃度)に応じて得られた処理水リン濃度なら
びに処理水窒素濃度を用いて、図12に示されるよう
に、雨の強さ、継続時間、現在の好気タンク出口溶存酸
素濃度、ならびに現在の返送比を入力すると、処理水リ
ン濃度の上昇を抑制する運転条件として好気タンク出口
溶存酸素濃度ならびに返送比が出力されるように作成さ
れたニューラルネットワークモデルが記憶されている。
その他は図10、および図16と同一または相当部分を
示す。
【0038】次に、実施の形態2の動作について説明す
る。設定器15、16、17、18に設定された降雨強
度、降雨の継続時間、現在の好気タンク出口溶存酸素濃
度、ならびに現在の返送比は、信号線15a、16a、
17a、18aを介して演算器10に入力される。演算
器10では、記憶されているニューラルネットワークモ
デルを用いて、与えられた条件を満たすための好気タン
ク出口溶存酸素濃度ならびに返送比の設定値を算出す
る。好気タンク出口溶存酸素濃度の設定値は信号線21
aを介してコントローラ21へ送られる。また、返送比
の設定値は信号線22aを介してコントローラ22へ送
られる。その他は実施の形態1と同様である。
【0039】これにより、与えられた条件下で処理水リ
ン濃度の上昇が抑制されるように好気タンク出口溶存酸
素濃度ならびに返送比が適切に設定されるので、良好な
処理水質を安定して得ることができる。
【0040】なお、上記実施の形態2では、現在の処理
水質を考慮しなかったが、これを考慮すればより精緻に
処理水質を制御できる。また、現在の運転条件のかわり
に現在の処理水質を用いるようにしても、実施の形態2
と同等の効果を奏する。
【0041】また、上記実施の形態2は、ニューラルネ
ットワークモデルに供する現在の運転条件ならびに新た
に算出する運転条件を、好気タンク出口溶存酸素濃度
(第1の運転条件)と返送比(第2の運転条件)とした
が、その他の運転条件、例えばMLSS濃度、凝集剤添
加量などの運転条件を合わせて用いても、上記実施の形
態と同様の効果もしくはより精緻に処理水質を制御でき
るという効果を奏する。また、ニューラルネットワーク
モデルに供する現在の運転条件、ならびに新たに算出す
る運転条件を、好気タンク出口溶存酸素濃度(第1の運
転条件)とMLSS濃度(第3の運転条件)、あるいは
返送比(第2の運転条件)とMLSS濃度(第3の運転
条件)の組み合わせからなる2つの運転条件を用いるよ
うにしてもよい。
【0042】また、上記実施の形態2では流入する排水
の条件と現在の運転条件を入力し、処理水リン濃度の上
昇を抑制する新たな運転条件を出力するようにしたが、
環境条件、または目標とする処理水質と現在の水処理装
置の運転条件とを入力し、新たな運転条件を出力するよ
うにニューラルネットワークモデルを作成して水処理装
置を制御してもよい。また、排水の条件、環境条件、お
よび目標とする処理水質のうちの2つまたは3つと、現
在の水処理装置の運転条件とを入力し、新たな運転条件
を出力するようにニューラルネットワークモデルを作成
して水処理装置を制御してもよい。
【0043】また、上記実施の形態1では、環境条件と
して水温をニューラルネットワークモデルに供したが、
気温、天候などを供するようにしても、上記実施の形態
と同様の効果もしくはより精緻に処理水質を制御できる
という効果を奏する。
【0044】また、実施の形態1では、運転条件として
好気タンク出口溶存酸素濃度(第1の運転条件)、返送
比(第2の運転条件)、ならびにMLSS濃度(第3の
運転条件)を出力したが、実施の形態2のようにこれら
の項目のうち、好気タンク出口溶存酸素濃度(第1の運
転条件)と返送比(第2の運転条件)、または好気タン
ク出口溶存酸素濃度(第1の運転条件)とMLSS濃度
(第3の運転条件)、または返送比(第2の運転条件)
とMLSS濃度(第3の運転条件)の組み合わせからな
る2つの運転条件を出力するようにすることもできる。
また、その他の運転条件、例えば凝集剤添加量などを出
力するようにしても、上記実施の形態と同様の効果もし
くはより精緻に処理水質を制御できるという効果を奏す
る。
【0045】また、実施の形態1では流入する排水の条
件と環境条件と目標とする処理水質とをニューラルネッ
トワークモデルに入力したが、これらのうちの少なくと
も1つを入力するものでもよい。
【0046】また、上記実施の形態1、2では、流入す
る排水の条件として流入流量をニューラルネットワーク
モデルに供したが、流入排水中の汚濁物の濃度、例えば
有機物濃度、窒素濃度、リン濃度などを供するようにし
ても、上記実施の形態と同様の効果もしくはより精緻に
処理水質を制御できるという効果を奏する。
【0047】また、上記実施の形態1、2では、目標と
する処理水質として処理水リン濃度ならびに処理水窒素
濃度をニューラルネットワークモデルに供したが、どち
らか一方のみを供するようにすることもできる。また、
その他の処理水質、例えば有機物濃度を供するようにす
ることもできる。
【0048】実施の形態3.次に、本発明の実施の形態
3に係わる研究成果を説明するとともに、本発明に想到
した経緯について述べる。実施の形態1では、種々の運
転条件で定常状態に達したときの処理水質について議論
した。このとき、生物反応タンク内に流入する被処理水
の条件、環境条件および目標とする処理水質を用いて適
切な運転条件を決定できることがわかった。一方、実施
の形態2では、雨水が流入したときのような非定常状態
の処理水質について議論した。このとき、生物反応タン
ク内に流入する被処理水の条件、環境条件および目標と
する処理水質だけでは適切な運転条件を決めることはで
きず、現在の運転条件や現在の処理水質も考慮する必要
のあることがわかった。定常状態のプラントを念頭にお
いた制御、すなわち制御設定値計画のようなものと、非
定常状態のプラントを念頭においた制御、すなわち比較
的短い周期での制御設定値の調整とは、方式、対象とす
る制御項目などを変えて行うのが適切かつ効率的である
と考えられる。以上のことから発明者らは以下に述べる
ような制御方法に想到した。
【0049】図15は、本発明の実施の形態3に係わる
嫌気−好気活性汚泥法を用いた生物学的水処理装置を示
す構成図である。図15において、100は対象とする
生物学的水処理装置の運転条件を計画するための演算器
であり、生物反応タンク内に流入する被処理水の条件、
環境条件および目標とする処理水質を入力すると好気タ
ンク出口溶存酸素濃度、返送比ならびにMLSS濃度の
計画値、すなわち与えられた条件が定常的に保たれてい
る場合に目標水質を達成しうる各運転条件(好気タンク
出口溶存酸素濃度、返送比ならびにMLSS濃度)を出
力するように作成されたニューラルネットワークモデル
を記憶している。200は非定常状態において各運転条
件を調整するための演算器であり、演算器100の入力
項目の他に、現在の運転条件および現在の処理水質を入
力すると、好気タンク出口溶存酸素濃度および返送比の
新しい設定値を出力するように作成されたニューラルネ
ットワークモデルを記憶している。101は生物反応タ
ンク内に流入する被処理水の条件、例えば流入下水の流
量などを設定するための設定器であり、信号線101a
を介して演算器100と、信号線101bを介して演算
器200と接続されている。102は環境条件、例えば
水温などを設定するための設定器であり、信号線102
aを介して演算器100と、信号線102bを介して演
算器200と接続されている。103は目標とする処理
水質、例えば処理水リン濃度などを設定するための設定
器であり、信号線103aを介して演算器100と、信
号線103bを介して演算器200と接続されている。
104は現在の処理水質、例えば処理水の分析等によっ
て得られた現在の処理水リン濃度などを入力するための
設定器であり、信号線104bを介して演算器200と
接続されている。302は演算器200の動作を制御す
るためのタイマであり、信号線302aを介して演算器
200と接続されている。402はタイマ302の周期
を設定するための設定器であり、信号線402aを介し
てタイマ302と接続されている。502は演算器20
0が出力した流量、水温、処理水リン濃度等の設定値を
記憶している記憶回路であり信号線502aならびに5
02bを介して演算器200と接続されている。さら
に、演算器100は、信号線100a、100b、10
0cを介して好気タンクへの空気供給量を制御するため
のコントローラ21、返送汚泥量を制御するためのコン
トローラ22、余剰汚泥引き抜き量を制御するためのコ
ントローラ23と接続されている。演算器200は、信
号線100a、100bを介して好気タンクへの空気供
給量を制御するためのコントローラ21、返送汚泥量を
制御するためのコントローラ22と接続されている。そ
の他は図10および図14と同一または相当部分を示
す。
【0050】次に、実施の形態3の動作について説明す
る。設定器101、102、103に設定された生物反
応タンク内に流入する被処理水の条件、環境条件および
目標とする処理水質は、信号線101a、102a、1
03aを介して演算器100に入力される。演算器10
0は記憶されているニューラルネットワークモデルを用
いて、与えられた条件が定常的に保たれている場合に、
上記目標水質を達成しうる各運転条件として好気タンク
出口溶存酸素濃度、返送比ならびにMLSS濃度の計画
値を算出する。すなわち、好気タンク出口溶存酸素濃度
や返送比のように応答の速い制御変数に対しては、運転
条件の初期設定値として該演算値が与えられる。具体的
には信号線100a、100bを介して演算器100の
出力がコントローラ21、22へ送られる。MLSS濃
度のように応答の遅い制御変数に対しては、運転条件の
設定値そのものとして該演算値が与えられる。具体的に
は信号線100cを介して演算器100の出力がコント
ローラ23へ送られる。この動作は、例えば季節毎な
ど、生物反応タンク内に流入する被処理水の条件、環境
条件などが大きく変わったときに行う。また設定器10
1、102、103、104に設定された生物反応タン
ク内に流入する被処理水の条件、環境条件、目標とする
処理水質および現在の処理水質は信号線101b、10
2b、103b、104bを介して演算器200に入力
される。また記憶回路502に記憶されている前回の演
算値、すなわち現在の運転条件を規定している設定値は
信号線502aを介して演算器200に入力される。演
算器200は記憶されているニューラルネットワークモ
デルを用いて好気タンク出口溶存酸素濃度および返送比
の新しい設定値を出力する。各設定値は信号線200
a、200bを介してコントローラ21、22へ送られ
る。また新しい設定値は信号線502bを介して記憶回
路502へ送られ、次回の演算に用いるために記憶され
る。この動作は設定器402に設定された周期に従って
自動的に行われる。すなわち、設定器402に設定され
た制御周期は演算器100を用いて制御される周期より
短い周期であり、例えば1日における被処理水の条件や
環境条件の変動に応じて運転条件が調整されるように設
定される。設定された制御周期は信号線402aを介し
てタイマ302に送られ、タイマ302は信号線302
aを介して演算器200を制御する。これにより、生物
反応タンク内に流入する被処理水の条件、環境条件の変
動に応じて好気タンク出口溶存酸素濃度ならびに返送比
が適切に調節される。
【0051】以上のように、与えられた条件下で処理水
質の目標値を達成するように好気タンク出口溶存酸素濃
度、返送比ならびにMLSS濃度が適切に設定される。
特に好気タンク出口溶存酸素濃度や返送比のように応答
の速い制御変数は短い周期で、またMLSS濃度のよう
に応答の遅い制御変数は長い周期で制御することが可能
なので、計算機の負荷を効率的に配分しつつ処理水質を
良好に維持できるという効果を奏する。
【0052】なお、上記実施の形態3では、演算器10
0にはタイマを設けなかったが、演算器200のように
タイマを用いて周期的に制御演算を行ってもよい。この
場合、タイマには比較的長い周期を設定する必要があ
る。
【0053】また、上記実施の形態3では、現在の運転
条件を演算器200に接続された記憶回路502から入
力するようにしたが、各コントローラ21、22、23
から信号線を介して入力するようにしてもよい。
【0054】また、上記実施の形態3では、制御設定値
の計画を行うために生物反応タンク内に流入する被処理
水の条件、環境条件、目標とする処理水質の全てを用い
るようにしたが、これらのうちの少なくとも一つを用い
るようにしてもよい。また、制御設定値の調整を行うた
めに生物反応タンク内に流入する被処理水の条件、環境
条件、目標とする処理水質、現在の処理水質、現在の運
転条件の全てを用いるようにしたが、生物反応タンク内
に流入する被処理水の条件、環境条件、目標とする処理
水質のうちの少なくとも一つと、現在の処理水質、現在
の運転条件のうちの少なくとも一つを用いるようにして
もよい。
【0055】さらに、上記実施の形態3では、演算器1
00を用いて好気タンク出口溶存酸素濃度、返送比なら
びにMLSS濃度の全てを出力するようにしたが、好気
タンク出口溶存酸素濃度、返送比のうちの少なくとも1
つとMLSS濃度、もしくはMLSS濃度のみを出力す
るようにしてもよい。また、演算器200を用いて好気
タンク出口溶存酸素濃度ならびに返送比を出力するよう
にしたが、これらのうちの一つを出力するようにしても
よい。
【0056】また、上記実施の形態1〜3において、ニ
ューラルネットワークモデルへの入力項目を、水処理装
置もしくはこれに設置されたセンサーから自動的に入力
するようにしても、より精緻に処理水質を制御できると
いう効果を奏する。
【0057】また、その他のプラントデータ、例えば生
物反応タンク内の酸化還元電位などを入力項目として付
加したニューラルネットワークモデルを作成し、本発明
に係る制御方法に供せば、より精密に処理水質を制御で
きるという効果を奏する。
【0058】また、ニューラルネットワークモデルを用
いるかわりに、動力学モデルによる最適化計算を行って
運転条件を算出してもよい。
【0059】また、MLSS濃度のかわりに余剰汚泥引
き抜き量を、返送比のかわりに返送汚泥量を、好気タン
ク出口溶存酸素濃度のかわりに空気供給量を出力して
も、同等の効果を奏する。
【0060】また、生物学的水処理装置としてその他の
方式のもの、例えば標準活性汚泥法や嫌気−無酸素−好
気活性汚泥法などを用いた生物学的水処理装置に、本発
明を適用することも可能である。
【0061】また、上記各実施の形態は、時間連続のア
ナログ式で構成したが、時間不連続のアナログ式(サン
プル値式)やデジタル式で構成しても、上記実施の形態
と同様の効果を奏する。
【0062】また、上記各実施の形態は、制御回路構成
を示したが、これを計算機内にプログラム化して実装し
ても、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0063】また、上記各実施の形態は、制御回路を閉
ループで構成したが、制御操作を運転管理者に提示する
運転支援システムとして構成することもできる。
【0064】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、生物
学的水処理装置の運転を、第1の運転条件である生物反
応タンク内の溶存酸素濃度と、第2の運転条件である生
物反応タンク内に流入する被処理水の流量に対する最終
沈殿池から生物反応タンクへ返送される返送汚泥量の比
、第3の運転条件である生物反応タンク内の微生物濃
度とに基づいて制御する方法であって、生物反応タンク
内に流入する被処理水の条件、環境条件、および目標と
する処理水質のうちの少なくとも1つを用いて、上記第
1の運転条件の初期設定値、上記第2の運転条件の初期
設定値、および上記第3の運転条件の設定値を算出し、
この算出の周期より短い周期で、生物反応タンク内に流
入する被処理水の条件、環境条件、および目標とする処
理水質のうちの少なくとも1つと、現在の水処理装置の
運転条件とを用いて、上記第1の運転条件および上記第
2の運転条件を調整するようにしたので、計算機の負荷
を効率的に配分しつつ、常に良好な水質が得られるよう
になる。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】また、生物学的水処理装置の運転条件の演
算に、所定の入力項目と出力項目に対して予め作成され
ニューラルネットワークモデルを供するようにしたの
で、上記演算を短時間に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 計算機シミュレーションに用いた水処理装置
の構成を示す構成図である。
【図2】 水温20℃、MLSS濃度1000mg/L
のときの処理水リン濃度ならびに窒素濃度のシミュレー
ション結果を示すグラフである。
【図3】 水温20℃、MLSS濃度1500mg/L
のときの処理水リン濃度ならびに窒素濃度のシミュレー
ション結果を示すグラフである。
【図4】 水温20℃、MLSS濃度2000mg/L
のときの処理水リン濃度ならびに窒素濃度のシミュレー
ション結果を示すグラフである。
【図5】 水温10℃、MLSS濃度1000mg/L
のときの処理水リン濃度ならびに窒素濃度のシミュレー
ション結果を示すグラフである。
【図6】 水温10℃、MLSS濃度1500mg/L
のときの処理水リン濃度ならびに窒素濃度のシミュレー
ション結果を示すグラフである。
【図7】 水温10℃、MLSS濃度2000mg/L
のときの処理水リン濃度ならびに窒素濃度のシミュレー
ション結果を示すグラフである。
【図8】 本発明の実施の形態1に係わるニューラルネ
ットワークモデルを示す説明図である。
【図9】 図8のニューラルネットワークモデルの学習
曲線を示すグラフである。
【図10】 本発明の実施の形態1に係わる嫌気−好気
活性汚泥法を用いた生物学的水処理装置を示す構成図で
ある。
【図11】 降雨があったと仮定した場合のシミュレー
ション結果を示すグラフである。
【図12】 本発明の実施の形態2に係わるニューラル
ネットワークモデルを示す説明図である。
【図13】 図12のニューラルネットワークモデルの
学習曲線を示すグラフである。
【図14】 本発明の実施の形態2に係わる嫌気−好気
活性汚泥法を用いた生物学的水処理装置を示す構成図で
ある。
【図15】 本発明の実施の形態3に係わる嫌気−好気
活性汚泥法を用いた生物学的水処理装置を示す構成図で
ある。
【図16】 従来の嫌気−好気活性汚泥法を用いた生物
学的水処理装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1 嫌気タンク、2 好気タンク、3 最終沈殿池、4
空気供給装置、5,6 ポンプ、10,100,20
0 演算器、11,12,13,14,15,16,1
7,18,101,102,103,104,402
設定器、21,22,23 コントローラ、31 溶存
酸素濃度計、32 MLSS濃度計、302 タイマ、
502 記憶回路。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−134706(JP,A) 特開 平6−328091(JP,A) 特公 昭58−15196(JP,B2) 特公 平4−38474(JP,B2) 特公 平6−65399(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C02F 3/12 C02F 3/28 - 3/34

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生物学的水処理装置の運転を、第1の運
    転条件である生物反応タンク内の溶存酸素濃度と、第2
    の運転条件である生物反応タンク内に流入する被処理水
    の流量に対する最終沈殿池から生物反応タンクへ返送さ
    れる返送汚泥量の比と、第3の運転条件である生物反応
    タンク内の微生物濃度とに基づいて制御する方法であっ
    て、生物反応タンク内に流入する被処理水の条件、環境
    条件、および目標とする処理水質のうちの少なくとも1
    つを用いて、上記第1の運転条件の初期設定値、上記第
    2の運転条件の初期設定値、および上記第3の運転条件
    設定値を算出し、この算出の周期より短い周期で、生
    物反応タンク内に流入する被処理水の条件、環境条件、
    および目標とする処理水質のうちの少なくとも1つと、
    現在の水処理装置の運転条件とを用いて、上記第1の運
    転条件および上記第2の運転条件を調整することを特徴
    とする生物学的水処理装置の制御方法。
  2. 【請求項2】 生物学的水処理装置の各運転条件の演算
    に、所定の入力項目と出力項目に対して予め作成された
    ニューラルネットワークモデルを供することを特徴とす
    る請求項記載の生物学的水処理装置の制御方法。
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