JP3476242B2 - インフルエンザha蛋白の精製方法 - Google Patents

インフルエンザha蛋白の精製方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、組換えDNA技術を用
い、昆虫または昆虫培養細胞で発現させて得られ、イン
フルエンザワクチンとして利用される精製インフルエン
ザHA蛋白の製造法並びに当該蛋白製造用カラムに関す
る。
【0002】
【従来の技術】インフルエンザは、インフルエンザウイ
ルスにより引き起こされる疾患であるが、現在の所、直
接ウイルスに作用する医薬は見出されておらず、ワクチ
ンによる予防接種以外有効な予防・治療方法はない。こ
のインフルエンザワクチンとしては、現在、ウイルスの
外被膜であるインフルエンザHA(ヘムアグルチニン)
蛋白とインフルエンザNA(ノイラミニダーゼ)蛋白
(以下、それぞれ「HA蛋白」、「NA蛋白」と略称す
る)が広く利用されている。
【0003】最近、組換えDNA技術を用い、HA蛋白
やNA蛋白を昆虫、例えばカイコやヨトウガやそれらの
培養細胞で発現させて得る試みがなされている(特開平
3−108480号公報、Kazumichi Kuroda et al. Th
e EMBO Jounal 5,(6),PP 1359--1365,1986.)。この方
法によれば、効率よくHA蛋白等が産生されることが知
られているが、これらの分離、精製に問題があり、精製
度が高いHA蛋白、つまり精製HA蛋白は得られなかっ
た。すなわち、上記方法では昆虫体液や昆虫細胞液から
HA蛋白等を分離する必要があるが、昆虫細胞等に起源
をもつ核酸等の不純物はHA蛋白等と分離しにくく、精
製HA蛋白が得られず、経済性や抗原性等の安全性の面
から問題となっていた。
【0004】HA蛋白等の精製に関しては、例えば、セ
ルロース硫酸エステルや架橋ポリサッカライドを用いる
方法が既に知られている(特公昭62−30752
号)。しかしながら、この方法を組換えDNA技術によ
り得られるHA蛋白に適用した場合、スルホニル基と結
合する化合物もカラム中に残存するため、HA蛋白等が
特異的に得られるわけではなく、種々の夾雑物が含まれ
る可能性があり、抗原性等の面からみて安全性に問題が
ないわけではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、昆虫またはそ
の細胞を利用する組換えDNA技術により、経済的でか
つ安全性の高いインフルエンザワクチンを提供するため
には、HA蛋白やNA蛋白を高度に精製する方法の提供
が必要であり、特に、インフルエンザウイルスの主要な
感染防御抗原であるHA蛋白については、よりその要求
が強かった。
【0006】
【発明を解決するための課題】本発明者らは、上記実情
に鑑み精製HA蛋白の製造について鋭意研究を行った結
果、HA蛋白は特定の配列を有する糖鎖に特異的に吸着
され、しかも簡単な溶離処理によって容易にこの糖鎖か
ら離脱すること、さらにDNA等の夾雑物が効率よく除
去されるので精製HA蛋白が製造できることを見出し本
発明を完成した。
【0007】すなわち本発明は、昆虫または昆虫培養細
胞を用いる組換えDNA技術により得られるインフルエ
ンザHA蛋白含有液を、担体に固定化された遊離末端が
NeuAcα2,3(6)Galβ1,3(4)−である
少なくとも3個以上の糖分子を有する化合物に吸着させ
た後、インフルエンザHA蛋白を溶離、回収することを
特徴とする精製インフルエンザHA蛋白の製造法を提供
するものである。
【0008】本発明の製造法において用いられる、末端
がNeuAcα2,3(6)Galβ1,3(4)−であ
る少なくとも3個以上の糖分子を有する化合物(以下、
「シアロ糖鎖保有化合物」という)としては、シアリル
ラクト系型糖鎖(NeuAcα2,3(6)Galβ1,
3(4)GlNAcβ1,3Galβ1−)を有する
化合物、シアリルガングリオ系糖鎖(NeuAcα2,
3Galβ1,3GalNAcβ1,4Galβ1−)を
有する化合物、ヘマシド系糖鎖(NeuAcα2,3G
alβ1,4Glβ1−)を有する化合物が挙げら
れ、これらは糖類、糖蛋白または糖脂質の何れであって
も良い。 このうち、好ましく使用されるシアロ糖鎖保
有化合物の具体例としては、フェチュイン、グリコホリ
ン、ガングリオシド等が挙げられ、特に好ましくはフェ
チュインが挙げられる。
【0009】一方、シアロ糖鎖保有化合物の固定化に用
いられる担体としては、アガロースゲル、セルロースゲ
ル、デキストリンゲル等の多糖類ゲルや、シリカゲル、
ポリアクリルアミド、アクリル酸ポリマー、スチレンジ
ビニルベンゼンポリマー、ポリメタクリレート等の多孔
性ポリマーが利用され、このうち、セファローズ等の商
品名で販売されているアガロースゲルを用いることがよ
り好ましい。
【0010】シアロ糖鎖保有化合物の固定化は、利用す
る担体に応じ、常法(例えば、「新生化学実験講座・タ
ンパク質1」P227〜237, 東京化学同人発行
等)に従って実施されるが、例えば、多糖類を担体とし
て用いる場合には、多糖類ゲル状の導入基にリガンドと
してのシアロ糖鎖保有化合物の官能基を結合させること
により行われる。
【0011】多糖類ゲルとシアロ糖鎖保有化合物の結合
に当っては、シアロ糖鎖保有化合物の官能基に対応する
導入基を有する多糖類ゲルを選択することが必要であ
る。すなわち、官能基がアミノ基の場合は、臭化シアン
で活性化されたイミノ基、ω−カルボキシアルキル基、
活性化カルボキシル基(カルボキシ フタレート基)、
エポキシ基等を導入基として有する多糖類ゲルを、官能
基がカルボキシル基の場合は、ω−アミノアルキル基、
チオール基等を導入基として有する多糖類ゲルを、官能
基がアルコール性水酸基である場合は、エポキシ基を導
入基として有する多糖類ゲルをそれぞれ選択することが
必要である。
【0012】また、多孔質ポリマーを利用する場合は、
シアロ糖鎖保有化合物を多孔質に吸着させることにより
固定化することができる。
【0013】以上のようにして作成したシアロ糖鎖保有
化合物が固定化された担体(以下、「シアロ糖鎖結合担
体」という)をインフルエンザHA製造用カラムとして
用いた。 精製HA蛋白を得るには、HA蛋白含有液を
シアロ糖鎖結合担体に付し、HA蛋白を選択的に吸着さ
せた後洗浄し、最後にHA蛋白を溶離せしめれば良い。
【0014】本発明で用いるHA蛋白含有液としては、
カイコ、ヨトウガ等の昆虫にHA蛋白で組換えた核多角
体病ウイルスを感染させた後、これらから得た体液や、
これらの昆虫培養細胞にHA蛋白発現用核多角体病ウイ
ルスを感染させ、更に培養して得たホモジュネート等
を、エーテルもしくはエタノール等による有機溶媒処理
または界面活性剤処理し、インフルエンザ外被膜または
細胞膜からHA蛋白を可溶化させた溶液を利用すること
ができる。
【0015】HA蛋白含有溶液をシアロ糖鎖結合担体へ
付すには、通常のカラムクロマトグラフィーの手法(ま
たはバッチ法)にしたがって行えば良い。すなわち、例
えば、まずシアロ糖鎖結合担体をカラムに充填し、リン
酸緩衝液(pH7.0)等の緩衝液を用いて平衡化す
る。
【0016】次いで、濾過、遠心分離等により固型物を
除去したHA蛋白含有液を、適当な緩衝液等を用いてp
H6〜11程度、好ましくはpH6.5〜10程度に調
整した後、平衡化したシアロ糖鎖結合担体カラムに、1
0cm/h程度の流速(線流速)で注入し、HA蛋白を
吸着させる。 この時のHA蛋白含有液のイオン強度
は、透析等の手段により界面活性剤を除去した場合は、
0.001〜2程度、好ましくは0.001〜0.5程度
であり、また、HA蛋白含有液に界面活性剤が含まれて
いる場合の好ましいイオン強度は0.001〜0.1であ
る。ここで使用される緩衝液の具体例としては、150
mM NaClを含む10mM リン酸緩衝液(pH7.
0)や0.1%トリトンX−100を含む20mMトリ
ス−塩酸緩衝液(pH8.2)が挙げられる。
【0017】更に、このカラムをHA蛋白の吸着に用い
たpHと同じか高いpHの洗浄液、あるいはより高いイ
オン強度、例えば0.001〜2程度、好ましくは0.0
01〜0.5程度、より好ましくは0.001〜0.2程
度のイオン強度の洗浄剤でカラムを洗浄し、夾雑物を除
去する。 使用される洗浄剤の例としては、0.1%ト
リトンX−100を含む10mMホウ酸緩衝液(pH1
0.0)や1M NaClを含む10mMリン酸緩衝液
(pH7.0)が挙げられる。
【0018】最後に、カラムの平衡化や洗浄に用いた緩
衝液より、イオン強度が大となるような適当な緩衝液を
用いてHA蛋白をカラムから溶離する。この緩衝液に
は、0.05〜5%程度の界面活性剤、例えばトリトン
XシリーズやトリトンNシリーズとして知られているポ
リオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオ
ン系界面活性剤を含むことが好ましく、そのイオン強度
は0.1〜8程度、特に0.2〜2程度とすることが好ま
しい。このような緩衝液の例としては、4M NaCl
を含むリン酸緩衝液、0.1%トリトンX−100と2
00mM NaClを含む10mMホウ酸緩衝液、0.1
%トリトンX−100を含む100mM ホウ酸緩衝液
等が挙げられる。
【0019】また、上記の緩衝液に代え、50mM以上
のN−アセチルノイラミン酸(NANA)を含む緩衝液
またはデオキシコール酸ナトリウム(DOC)等のイオ
ン性界面活性剤を含む緩衝液を使用することもできる。
これらの場合の緩衝液のpHは、6〜11程度、特に
6.5〜10程度が好ましい。また、DOC等のイオン
性界面活性剤は、0.2%以上、特に0.5%以上とする
ことが好ましい。
【0020】この溶出したHA蛋白画分は、そのままで
もかなり精製されているが、再度同じカラムクロマトグ
ラフィーにより更に精製しても良く、また、必要により
透析、イオン交換クロマトグラフィー等の手段により更
に精製しても良い。特に、精製をDEAE−セファロフ
ァイン等の陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて行
うと、極めて純度の高い精製HA蛋白を製造することが
できるので有利である。
【0021】このようにして得られた精製HA蛋白は、
その精製度が高く、DNA等の夾雑物がほとんど含まれ
ていないので、安全なインフルエンザワクチンとして使
用できるものである。本願精製インフルエンザHA蛋白
をマウスに投与したところ、インフルエンザワクチンと
して使用するに十分なインフルエンザに対する抗体が産
生できた。
【0022】
【作用】本発明は、HA蛋白がシアロ糖鎖に特異的に結
合し、この結合は高塩濃度かつ高pH条件(必要により
更に界面活性剤存在下)で容易に解離することを利用す
るものである。
【0023】すなわち、まず、HA蛋白含有液を、ほぼ
中性条件下でシアロ糖鎖結合担体を充填したカラムに付
すと、HA蛋白は特異的にシアロ糖鎖に結合する。 一
方、夾雑物のうち、正に帯電している蛋白質は、負に帯
電しているシアロ糖鎖に非特異的に結合し、負に帯電し
ている蛋白質は結合できず、溶出する。次いで、高pH
の洗浄液でHA蛋白を結合したカラムを洗浄すると、大
部分の結合夾雑蛋白は、負から正に変化し、カラムから
溶離され、強く負に帯電している夾雑蛋白および特異的
に結合しているHA蛋白のみがカラムに残存する。更
に、洗浄液と同じpHで、イオン強度が高い高塩濃度溶
液をカラムに注入すると、精製インフルエンザHA蛋白
と少量の夾雑蛋白がカラムから溶離される(精製インフ
ルエンザHA蛋白溶離液)。
【0024】この状態の溶離液でもHA蛋白の精製度は
高いが、更に陰イオン交換クロマトグラフィー等に付せ
ば、HA蛋白がカラムに吸着され、強く負に帯電した夾
雑蛋白は溶離されるので、吸着させたHA蛋白を回収す
ると極めて精製度の高い精製インフルエンザHA蛋白が
得られる(精製インフルエンザHA蛋白回収液)。
【0025】
【実施例】次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明
するが、本発明はこれら実施例になんら制約されるもの
ではない。
【0026】実 施 例 1 (1)HA蛋白発現用組換ウイルスを10倍希釈し、カ
イコ幼虫(秋光×竜白;5齢、1日目)に50μl/頭
接種した。 接種後、5〜6日目に動かなくなったもの
を回収、凍結保存し、これをHA蛋白発現用ウイルス感
染カイコとした。このHA蛋白発現用ウイルス感染カイ
コ100頭をホモジェナイズし、39,800×gで1
5分間高速遠心した。 得られた沈澱を、2% トリトン
X−100(和光純薬製)を含む10mM リン酸緩衝
液(pH 7.0)で可溶化し、この可溶化物を141,
000×g,で1時間超遠心し、上清(超遠心上清)を
得た。
【0027】(2)得られた上清を、CNBr活性化セ
ファロース 4B(ファルマシア社製)とフェチュイン
(シグマ社製 NOF2379)をマニュアルに従いカ
ップリングさせ、調製したフェチュイン−セファロース
カラム(CNBr活性化セファロース 4B 1mlに
対し、10mgのフェチュインを結合させたもの)にア
プライした。 このカラムを、まず10倍容の0.1%ト
リトンX−100を含む10mM リン酸緩衝液(pH
7.0)、次いで0.1%トリトンX−100を含む10
mM ホウ酸緩衝液(pH 10.0)で洗浄した。 0.
1%トリトンX−100を含む100mM ホウ酸緩衝
液で溶出したピーク部を集め、精製インフルエンザHA
蛋白溶離液とした。
【0028】(3)得られた精製インフルエンザHA蛋
白溶離液を、0.1%トリトンX−100を含む10m
M リン酸緩衝液に対して透析し、この透析液を更にフ
ェチュイン−セファロース カラムに付し、以下(2)
と同様にしてピーク部を回収し、透析回収物とした。得
られた透析回収物を2倍希釈してDEAE−Cellu
lofine A−800に吸着させ、トリトン X−1
00を含まない20mM Tris−HCl(pH 8.
2)で洗浄し、トリトンX−100を除いた後、200
mM NaClを滴下することにより精製インフルエン
ザHA回収液を得た。
【0029】(4)次に、上記の各工程におけるHA蛋
白濃度、液量、HA蛋白量および総蛋白量を表1に、こ
れらから求めた回収率、精製度および純度を表2にそれ
ぞれ示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【0032】この結果から明らかなように、本発明方法
により精製度の高い精製インフルエンザHA蛋白が高回
収率で得られた。 すなわち、フェチュイン−セファロ
ースカラムの1回の処理でかなり高精製度の精製インフ
ルエンザHA蛋白溶離液を得ることができ、また、DE
AE−セルロファインカラムと組合せることにより極め
て精製度の高い精製インフルエンザHA蛋白回収液が得
られた。
【0033】比 較 例 (1)担体に固定化された遊離末端がNeuAcα2,
3(6)Galβ1,3(4)−であり、糖分子が2個
の化合物について、試験した結果を次に示す。遊離末端
がNeuAcα2,3(6)Galβ1,3(4)−で、
糖分子2個の化合物としては、NeuAc−Gal/G
alNAcの構造式を持つムチン型糖タンパク質を用い
た。 (2)実施例1と同様の方法で、HA蛋白発現用ウイル
ス感染カイコ10頭をホモジナイズし、39,800×
gで15分間高速遠心した。 得られた沈澱を2%トリ
トン×100を含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH
7.0)で可溶化し、この可溶化物を141,000×g
1時間超遠心して上清を得た。
【0034】(3)得られた上清液をCNBr活性化セ
ファロース4B(ファルマシア社製)とムチン型糖タン
パク質(シグマ社製)をマニュアルに従いカップリング
させ、調製したムチン−セファロースカラム(CNBr
活性化セファロース4B1mlに対し、10mgのムチ
ン型糖タンパク質を結合させたもの)にアプライした。 (4)次に0.1%トリトンX−100を含む20mM
トリス塩酸緩衝液で洗浄し、2M NaCl緩衝液で溶
出させた。それぞれの工程におけるHA蛋白質をエンザ
イム・イムノアッセイ法により測定した結果を表3に示
す。
【0035】
【0036】(5)表3の結果からカラム流出液中にH
A蛋白量の75%以上が含まれ、ムチン−セファロース
カラムのHA蛋白に対する吸着性は殆どないことが理解
できる。なお、他の可溶化条件として種々の緩衝液、例
えば10mMリン酸緩衝液等を用いても同様の結果であ
った。 (6)従って、担体に固定化された遊離末端が Neu
Acα2,3(6)Galβ1,3(4)−であっても、
糖分子が3個未満の化合物は、精製インフルエンザHA
蛋白の製造には適さないものと言える。
【0037】実 施 例 2 実施例1で得られた精製インフルエンザHA回収液中に
含まれる核酸量を、抗DNA抗体を用いたスレッシュホ
ールドシステム(モレキュラーデバイス社)にて測定し
た。 表4にその結果を示す。
【0038】
【0039】ワクチンとして使用できるHA抗体価が、
市販のインフルエンザHAワクチンと同等以上に上昇す
る1回投与量(1shot)で換算すると、約3〜4p
gの核酸含量となる。
【0040】組換えDNA技術により作られた医薬品に
おいて、核酸の混入の安全性に対する懸念は、癌遺伝子
をワクチン投与時に摂取者に移入する危険性にあるが、
世界保険機構(WHO)の委員会のまとめによれば、異
種核酸100pg/shotという核酸含量は、摂取者
に腫瘍を発生させる危険性が無視できるレベルであると
されている(WHO Technical Report
No.747、1987.およびDevelopmen
tal Biology Standards,68:4
3−49、1987)。
【0041】一方、わが国の生物学的製剤基準によるイ
ンフルエンザワクチンの国家検定法では、1ml当り2
40μg以上の蛋白質を含んではならないことになって
いるが(田村・倉田「感染・炎症・免疫」21−
(1)、1〜10.1991)、本発明の方法で得られ
た精製インフルエンザHA蛋白回収液の、この最大蛋白
量240μg/ml中に含まれる核酸含量は約3〜4p
gであり、十分に低いと考えられる。つまり、本発明の
方法で得られた精製インフルエンザHA蛋白回収液は核
酸含量が著しく低く、安全性においても非常に優れてい
ることが分かる。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、種々の夾雑物を含むH
A蛋白含有溶液から精製HA蛋白を高純度に精製するこ
とができ、しかもこれを高回収率で取得することができ
る。また、実施例にも示したように、本発明により製造
された精製インフルエンザHA蛋白は、核酸の混入がき
わめて少なく、混入する異種または同種DNAに由来す
る発癌遺伝子等組換えDNA技術により作られた医薬品
としては安全性が高いということができる。従って、本
発明の製造法によれば安全性および有効性の高いインフ
ルエンザワクチンを経済的に得ることが可能となる。 以 上
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井桁 潔 長野県松本市中央4丁目5−25 片倉工 業株式会社生物科学研究所内 (72)発明者 島村 玲郎 埼玉県狭山市大字下奥富字宮後1548 片 倉工業株式会社中央蚕研事業所内 (72)発明者 野村 雄 埼玉県狭山市大字下奥富字宮後1548 片 倉工業株式会社中央蚕研事業所内 (72)発明者 佐伯 欣之 東京都江戸川区北葛西1丁目16番13号 第一製薬株式会社東京研究開発センター 内 (72)発明者 牧野 治雄 熊本県菊池郡旭志村川辺 財団法人化学 及血清療法研究所 菊池研究所内 (56)参考文献 特開 平3−108480(JP,A) The Journal of Bi ological Chemistry ,Vol.256,NO.16(1981), p.8357−8363 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07K 14/005 - 14/19 C07K 1/14 - 1/22 C12P 21/00 - 21/02 BIOSIS(DIALOG)

Claims (29)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組換えDNA技術を用い、昆虫または昆
    虫培養細胞で発現させて得られるインフルエンザHA蛋
    白含有液を、担体に固定化された遊離末端がNeuAc
    α2,3(6)Galβ1,3(4)−である少なくとも
    3個以上の糖分子を有する化合物に吸着させた後、イン
    フルエンザHA蛋白を溶離、回収することを特徴とする
    精製インフルエンザHA蛋白の製造法。
  2. 【請求項2】 遊離末端がNeuAcα2,3(6)G
    alβ1,3(4)−である少なくとも3個以上の糖分
    子を有する化合物が、糖類、糖蛋白または糖脂質である
    請求項1記載の精製インフルエンザHA蛋白の製造法。
  3. 【請求項3】 遊離末端がNeuAcα2,3(6)G
    alβ1,3(4)−である少なくとも3個以上の糖分
    子を有する化合物がフェチュイン、グリコホリンまたは
    ガングリオシドから選ばれるものである請求項1または
    2記載の精製インフルエンザHA蛋白の製造法。
  4. 【請求項4】 遊離末端がNeuAcα2,3(6)G
    alβ1,3(4)−である少なくとも3個以上の糖分
    子を有する化合物がフェチュインである請求項1〜3の
    何れかの記載の精製インフルエンザHA蛋白の製造法。
  5. 【請求項5】 担体が多糖類ゲルまたは多孔質ポリマー
    である請求項1〜4の何れかの項記載の精製インフルエ
    ンザHA蛋白の製造法。
  6. 【請求項6】 担体の多糖類ゲルが、アガロースゲル、
    セルロースゲルまたはデキストリンゲルから選ばれるも
    のである請求項1〜5の何れかの項記載の精製インフル
    エンザHA蛋白の製造法。
  7. 【請求項7】 担体の多孔質ポリマーが、シリカゲル、
    ポリアクリルアミド、アクリル酸ポリマー、スチレンジ
    ビニルベンゼンポリマーまたはポリメタクリレートから
    選ばれるものである請求項1〜5の何れかの項記載の精
    製インフルエンザHA蛋白の製造法。
  8. 【請求項8】 担体が、アガロースゲルである請求項1
    〜6の何れかの項記載の精製インフルエンザHA蛋白の
    製造法。
  9. 【請求項9】 インフルエンザHA蛋白の溶離を、吸着
    時よりも高イオン強度及び高pHで行う請求項1〜8の
    何れかの項記載の精製インフルエンザHA蛋白の製造
    法。
  10. 【請求項10】 インフルエンザHA蛋白の溶離を、界
    面活性剤を含む緩衝液により行う請求項1〜9の何れか
    の項記載のインフルエンザHA蛋白の精製法。
  11. 【請求項11】 インフルエンザHA蛋白の溶離を、非
    イオン系界面活性剤を含む緩衝液により行う請求項1〜
    10の何れかの項記載のインフルエンザHA蛋白の精製
    法。
  12. 【請求項12】 インフルエンザHA蛋白の溶離を、ポ
    リオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含む緩衝
    液により行う請求項1〜11の何れかの項記載のインフ
    ルエンザHA蛋白の精製法。
  13. 【請求項13】 インフルエンザHA蛋白の溶離を、デ
    オキシコール酸塩を含む緩衝液により行う請求項1〜1
    0の何れかの項記載の精製インフルエンザHA蛋白の製
    造法。
  14. 【請求項14】 インフルエンザHA蛋白の溶離を、N
    −アセチルノイラミン酸を含む緩衝液により行う請求項
    1〜10の何れかの項記載の精製インフルエンザHA蛋
    白の製造法。
  15. 【請求項15】 インフルエンザHA蛋白含有液が、昆
    虫核多角体病ウイルスをベクターとする蛋白発現系によ
    り生産したものである請求項1〜14の何れかの項記載
    の精製インフルエンザHA蛋白の製造法。
  16. 【請求項16】 インフルエンザHA蛋白含有液が、カ
    イコ核多角体病ウイルスをベクターとする蛋白発現系に
    より生産したものである請求項1〜15の何れかの項記
    載の精製インフルエンザHA蛋白の製造法。
  17. 【請求項17】 インフルエンザHA蛋白の溶離液を陰
    イオン交換カラムクロマトグラフィーに付し、インフル
    エンザHA蛋白を回収する請求項1〜16の何れかの項
    記載の精製インフルエンザHA蛋白の製造法。
  18. 【請求項18】 陰イオン交換カラムクロマトグラフィ
    ーがDEAEを結合させた担体である請求項17記載の
    精製インフルエンザHA蛋白の製造法。
  19. 【請求項19】 陰イオン交換カラムクロマトグラフィ
    ーがDEAE−セルロファインである請求項17または
    18記載の精製インフルエンザHA蛋白の製造法。
  20. 【請求項20】 請求項1〜16の何れかの項記載の方
    法で得られるインフルエンザHA蛋白を含有する溶離
    液。
  21. 【請求項21】 請求項1〜19の何れかの項記載の方
    法で得られるインフルエンザHA蛋白を含有する回収
    液。
  22. 【請求項22】 遊離末端がNeuAcα2,3(6)
    Galβ1,3(4)−である少なくとも3個以上の糖
    分子を有する化合物を担体に固定化してなるインフルエ
    ンザHA蛋白の製造用カラム。
  23. 【請求項23】 遊離末端がNeuAcα2,3(6)
    Galβ1,3(4)−である少なくとも3個以上の糖
    分子を有する化合物が、フェチュイン、グリコホリンま
    たはガングリオシドから選ばれるものである請求項22
    記載の精製インフルエンザHA蛋白の製造用カラム。
  24. 【請求項24】 遊離末端がNeuAcα2,3(6)
    Galβ1,3(4)−である少なくとも3個以上の糖
    分子を有する化合物が、フェチュインである請求項22
    または23記載の精製インフルエンザHA蛋白の製造用
    カラム。
  25. 【請求項25】 担体が多糖類ゲルまたは多孔質ポリマ
    ーである請求項22〜24の何れかの項記載の精製イン
    フルエンザHA蛋白の製造用カラム。
  26. 【請求項26】 担体の多糖類ゲルが、アガロースゲ
    ル、セルロースゲルまたはデキストリンゲルから選ばれ
    るものである請求項22〜25の何れかの項記載の精製
    インフルエンザHA蛋白の製造用カラム。
  27. 【請求項27】 担体の多孔質ポリマーがシリカゲル、
    ポリアクリルアミド、アクリル酸ポリマー、スチレンジ
    ビニルベンゼンポリマーまたはポリメタクリレートから
    選ばれるものである請求項22〜25の何れかの項記載
    の精製インフルエンザHA蛋白の製造用カラム。
  28. 【請求項28】 担体がアガロースゲルである請求項2
    2〜26の何れかの項記載の精製インフルエンザHA蛋
    白の製造用カラム。
  29. 【請求項29】 遊離末端がNeuAcα2,3(6)
    Galβ1,3(4)−である少なくとも3個以上の糖
    分子を有する化合物がフェチュインであり、固定させる
    担体がアガロースゲルである請求項22〜24の何れか
    の項記載の精製インフルエンザHA蛋白の製造用カラ
    ム。
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