JP3475313B2 - ブロック状構造物の健全度評価装置 - Google Patents

ブロック状構造物の健全度評価装置

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豊 中村
健司 富田
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Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】本発明は、ブロック状構造物の上
端面において、短い一定時間の常時微動を測定すること
で、該構造物の転倒に対する健全度を評価する装置に関
する。 【従来の技術】橋脚をはじめとするブロック状構造物の
転倒に対する健全度を評価する上で、構造物の基礎地盤
の状態を的確に把握することは重要である。現在実施さ
れている検査方法は、まず、全数について目視検査を行
い、その評価結果から転倒の危険性の高いものを選び出
し、30kg程度の重錘を該構造物に当てることによっ
て衝撃を与え、その衝撃によって生じる振動から該構造
物の固有振動数を計測し、予め求められている固有振動
数の標準値と比較することで該構造物の転倒に対する健
全度を評価してきた。しかし、目視検査は検査員の技量
に左右されるものであるし、当然、目視検査にかからな
い変状も存在する。また、重錘を構造物に当てて固有振
動数を計測する方法は、該構造物に無用の損傷を与える
危険性が高いばかりでなく、作業者自身にも高所からの
重錘つり下げ作業など作業に危険が伴う。さらに、この
方法での評価精度に関する問題点としては、予め求めら
れている固有振動数の標準値の算出過程における前提条
件が、その構造物とどの程度一致しているのかが不明で
ある点や、測定された固有振動数の標準値からの乖離
が、転倒の危険性の高さとどう結びつくのかが不明であ
る点など、評価方法の本質に関わる問題点がある。 【発明が解決しようとする課題】従来の技術の項でも述
べたように、全数検査は、検査員の技量に左右される目
視検査に頼っている上、重錘を構造物に当てて固有振動
数を計測する方法は、構造物に損傷を与える危険性や
錘つり下げ作業などの高所危険作業を伴うとともに、評
価方法の本質に関わる評価精度に対する問題点があっ
た。本発明は、前記のような従来の技術の問題点を解決
するもので、ブロック状構造物の転倒に対する健全度を
評価する装置について、全数を対象とすることができ、
検査員の技量に左右されない、重錘つり下げ作業などの
高所危険作業のない、評価精度の高い装置を提供する
とを目的としている。 【課題を解決するための手段】本発明は、ブロック状の
構造体から成り立っている構造物の転倒に対する健全度
を評価する場合に、対象とする構造物の上端面に転倒に
対する健全度を評価したい方向に測線をとり、その測線
の両端2カ所に水平方向と鉛直方向の常時微動を検出す
るセンサを置き、短い一定時間の常時微動を同時測定
し、測定した常時微動を利用して、ブロック状構造物の
転倒に対する健全度を評価するR値など、該構造物の転
倒に対する健全度を評価する値を求めることを特徴とす
る装置であって、振動を検出するセンサと、検出した振
動データをA/D変換して記録するA/D変換・記録部
と、A/D変換した振動データからその構造物の転倒に
対する健全度を評価する処理部と、求めた健全度を出力
する出力部とを有することを特徴とする。 【作用】図2は、ブロック状構造物のロッキング振動の
振動形態を示したものである。ここに、1はブロック状
構造物、2はロッキング振動の回転中心位置、3は水平
方向と鉛直方向の常時微動を検出するセンサである。図
2に示すj=1、2は常時微動測定点を示し、H1 、
H2 はそれぞれ測定点j=1、j=2で観測される常
時微動の水平方向の振幅、V1 、V2 はそれぞれ測定
j=1、j=2で観測される常時微動の鉛直方向の振
幅を表す。また、測定点j=1とj=2の水平距離をB
とする。従来のブロック状構造物の健全度評価の考え方
は、該構造物の固有振動数の低下で健全度を判断しよう
とするものである。分かり易い考え方ではあるが、実際
の橋脚をはじめとするブロック状構造物の振動には、さ
まざまな振動が関与しており、転倒の危険性に直接関わ
る振動を見極めるのは容易ではない。また、比較すべき
基準となる固有振動数が明確に求められていないと、正
確な判断を下すことは難しい。本発明は、ブロック状構
造物のロッキング振動に着目している。転倒の危険性の
高いブロック状構造物ほど、ロッキング振動が支配的に
なる。したがって、全体振動の中に占めるロッキング振
動の割合を正確に見積もることができれば、対象とする
構造物の大きさに関わらず、絶対的な判断が可能とな
る。図2に示す構造物上で観測されるHj とVj は、
それぞれ(式1)、(式2)で示すように、ロッキング
振動の水平方向の振幅Hrjと鉛直方向の振幅Vrj、
ならびにそれ以外の振動の水平方向の振幅Hnjと鉛直
方向の振幅Vnjに分けて考えることができる。ここ
に、これら振幅の値の正負は、図2の紙面右方向、同下
方向を正とする。Bj 、Lj は、それぞれj点からの
ロッキング中心までの水平距離と鉛直距離で、振幅の正
負と同じ方向の正負を持つ。θはロッキング振動の回転
角振幅(ラジアン)で、時計回りを正とする。 Hj =Hrj+Hn =Lj θ+Hn (式 1) Vj =Vrj+Vn =Bj θ+Vn (式 2) ブロック状構造物の転倒に対する健全度を評価するR値
は、(式3)のように算出される。ここに、添字iは常
時微動波形データのi番目の値であることを示し、Σは
iをステップ数として、短い一定時間測定した常時微動
波形データのサンプル数の総和をとるという意味であ
る。以下も同様である。 R=Σ(θi 2 )/Σ(Vni2 ) =Σ{(V1i−V2i)2 }/Σ{(B2 V1i−B1 V2i)2 } (式3) R>1は、ロッキング振動が全体振動の5割超を占める
状態であることを示している。(式1)から、(式4)
が求まる。 V1 −V2 =−(B1 −B2 )θ=−Bθ (式4 ) Σ(θi Vni)=0と考えられるから、(式1)と
(式4)から、(式5)、(式6)が導かれる。 B1 =[Σ{V1i(V1i−V2i)}/Σ{(V1i−V2i)2 }]× B (式5) B2 =[Σ{V2i(V1i−V2i)}/Σ{(V1i−V2i)2 }]× B (式6) よって、(式5)、(式6)から、該構造物の中心線か
らのロッキング中心の右側への偏心量eは、(式7)の
ように求まる。 e=(B1 +B2 )/2 (式7) 同様に、Σ(θ1 Hni)=0と考えられるから、
(式2)と(式4)から、(式8)、(式9)が導かれ
る。 L1 =[Σ{H1i(V1i−V2i)}/Σ{V1i(V1i−V2i)2 }] ×(−B) (式8) L2 =[Σ{H2i(V1i−V2i)}/Σ{V2i(V1i−V2i)2 }] ×(−B) (式9) 通常、L1 とL2 は同じ値になるはずであり、両者の
相違は推定精度の高さを示す。ここでは、両者を平均し
たものをロッキング中心の該構造物の上端面からの深さ
Lとする。ここで求められたロッキング中の偏心量e
や深さLは、該構造物の転倒に対する安定性を判断する
重要な指標になる。一方、ロッキング振動の水平方向の
振動Hrはロッキング振動以外の振動の水平方向の振動
Hn の入力による応答と考えることができる。したが
って、それぞれの振動のスペクトルをそれぞれS(Hn
)、S(Hr )で表すと、両者のスペクトル比S(H
n )/S(Hr )は、該構造物の地震応答特性、すな
わち、伝達関数と見なすことができる。よって、卓越す
るピーク振動数は、ロッキング振動の振動数と考えるこ
とができる。さらに、この振動数において、Hr とV
r の相関が極めて高くなっている。したがって、両者
のスペクトルのコヒーレンス関数を求めることによっ
て、相関度の高い振動数を抽出でき、それをロッキング
振動の振動数と考えることができる。また、ロッキング
振動以外の振動の水平方向の振動Hn とロッキング振
動以外の振動の鉛直方向の振動Vn は、該構造物がた
っている基礎地盤の性質に依存した振動である。したが
って、それぞれの振動のスペクトルをそれぞれS(Hn
)、S(Vn )で表すと、両者のスペクトル比S(H
n )/S(Vn )は、該基礎地盤の地震応答特性、す
なわち、伝達関数と見なすことができる。よって、卓越
するピーク振動数は、該基礎地盤の卓越振動数を表し、
そのピークが応答倍率を表している。 【実施例】図1は、本発明の1実施例で、1はブロック
状構造物、2はロッキング振動の回転中心位置、3は水
平方向と鉛直方向の常時微動を検出するセンサ、4は基
礎地盤、5はケーブル、6はA/D変換ならびに記録媒
体への波形記録部、7は記録媒体あるいはケーブル、8
は波形データからR値や偏心量e、Lなどを求める波形
処理部、9は表示部である。図3は、本発明を用いて測
定した橋梁の全体図で、4は基礎地盤、10は桁、11
は橋台、12は橋脚、13は木杭である。図4は、図3
に示した測定した橋梁の1Pと2PのR値とロッキング
中心位置を表したものである。図5は、図3に示した測
定した橋梁の1Pと2Pの固有振動数を本発明と従来の
技術で求めたものを比較したものである。この橋梁は、
過去に変状履歴はないが、1Pは流水路中にあり、橋脚
基礎が露出するほど洗掘されている。測定は、各橋脚の
橋軸直角方向の転倒に対する健全度を求めるように行っ
た。本発明により各橋脚で測定したのは約41秒間の常
時微動で、健全度判定の結果、図4に示すように、1P
のR値が1を越えて要注意と判断された。一方、2Pは
健全と判断され、現状を反映した結果となった。いずれ
の橋脚も、ロッキング中心の偏心量は小さく、また、深
さは橋脚底面付近にあることが分かった。図5に、本発
明により得られた橋脚の固有振動数と、従来の技術であ
る橋脚に衝撃を与えて得られた固有振動数と、従来の技
術である橋脚に衝撃を与えて得られた固有振動数を比較
して示す。両者は極めてよく一致していることが分か
る。以上のように、本発明は、従来の技術を十分に満た
しているだけでなく、該構造物のロッキング振動に着目
して健全度を判断しているので、固有振動数の変化だけ
に着目している従来の技術では得られなかった的確な判
定を下すことができる。 【発明の効果】本発明により、重錘をつり下げるなどの
高所危険作業の必要がなくなり、測定対象のブロック状
構造物の上端面に転倒に対する健全度を評価したい方向
に測線をとり、その測線の両端2カ所に水平方向と鉛直
方向の常時微動を検出するセンサを置き、短い一定時間
の常時微動を測定するだけで、該構造物の転倒に対する
健全度を的確に評価することができる。本発明から得ら
れる情報量は多く、固有振動数の変化だけに頼って健全
度を判断する従来の技術に付きまとう不安感完全に払
拭できる。短時間のうちに常時微動測定から健全度判定
まで行われるので、多くの場所の健全度判定をこなすこ
とができ、全数検査が可能になる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の1実施例である。 【図2】ブロック状構造物のロッキング振動の振動形態
である。 【図3】本発明を用いて測定した橋梁の全体図である。 【図4】測定した橋梁の橋脚のR値、ロッキング中心位
置である。 【図5】本発明により得られた橋脚の固有振動数と、従
来の技術である橋脚に衝撃を与えて得られた固有振動数
の比較である。 【符号の説明】 1 ブロック状構造物 2 ロッキング振動の回転中心位置 3 水平方向と鉛直方向の常時微動を検出するセンサ 4 基礎地盤 5 ケーブル 6 A/D変換ならびに記録媒体への波形記録部 7 記録媒体あるいはケーブル 8 波形データからR値やe、Lなどを求める波形処
理部 9 表示部 10 桁 11 橋台 12 橋脚 13 木杭
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−94583(JP,A) 中村豊、田母神宗幸、立花三裕,「第 9回日本地震工学シンポジウム」,1994 年,vol.1.9th, no.p t.2,p.2131−2136 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01M 19/00 E01D 1/00 G01H 17/00

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】ブロック状構造物の転倒に対する健全度を
    評価するブロック状構造物の健全度評価装置において、 対象とする構造物の上端面に転倒に対する健全度を評価
    したい方向に測線をとり、その測線の両端2カ所におい
    て、水平方向と鉛直方向の常時微動を短い一定時間同時
    測定し、同時測定した常時微動から求めた該構造物の振
    動データを用いて、ブロック状構造物の転倒に対する健
    全度を評価することを特徴とするブロック状構造物の健
    全度評価装置であって、振動を検出するセンサ部と、 検出した振動データをA/D変換して記録するA/D変
    換・記録部と、A/D変換した振動データからロッキン
    グ振動以外の振動の水平成分スペクトルをロッキング振
    動以外の振動の鉛直方向スペクトルで除すことにより、
    該構造物の基礎地盤の地震動特性を把握し、基礎地盤の
    安定性によりブロック状構造物の転倒に対する健全度を
    評価する処理部と、 求めた健全度を出力する出力部と、 を有することを特徴とするブロック状構造物の健全度評
    価装置。
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中村豊、田母神宗幸、立花三裕,「第9回日本地震工学シンポジウム」,1994年,vol.1.9th, no.pt.2,p.2131−2136

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