JP3473780B2 - 高強度ポリアリーレンスルフィド及びその製造方法 - Google Patents

高強度ポリアリーレンスルフィド及びその製造方法

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JP3473780B2 JP17338594A JP17338594A JP3473780B2 JP 3473780 B2 JP3473780 B2 JP 3473780B2 JP 17338594 A JP17338594 A JP 17338594A JP 17338594 A JP17338594 A JP 17338594A JP 3473780 B2 JP3473780 B2 JP 3473780B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリアリーレンスルフ
ィド(以下ではPASと略すことがある)に関し、更に
詳しくは極めて優れた機械的強度を持つPASに関す
る。
【0002】
【従来の技術】PASの基本的な製造方法として、特公
昭45‐3368号公報には、有機アミド溶媒中でアル
カリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させてP
ASを製造する方法が記載されている。しかし、該方法
では高分子量のPASを製造することができなかった。
【0003】従って、上記のような低分子量PASを熱
酸化処理して架橋し、高分子量PASを製造することが
行われていた。しかし、このような架橋PASは機械的
強度が不十分であり、フィルム、シート、繊維、パイプ
等の製品として適していなかった。
【0004】特公昭52‐12240号公報には、高分
子量のPASを製造するために酢酸ナトリウム、酢酸リ
チウム等のカルボン酸金属塩を共存させて重合を実施す
る方法が記載されている。しかし、上記化合物は高価で
あり、かつ該化合物を無公害に製品から分離、回収、処
理を行うには、多大な付帯設備と技術と費用が必要であ
り、この面からも著しく不利であった。
【0005】特開昭61‐7332号公報には、高分子
量のPASを製造するために重合反応を二段階で行い、
第二段階の反応において積極的に多量の水を添加する方
法が開示されている。即ち、有機アミド溶媒中でアルカ
リ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させてPA
Sを製造する方法において、第一段階ではアルカリ金属
硫化物1モル当り0.5〜2.4モルの水の存在下、1
80〜235℃の温度で反応を行って、ジハロ芳香族化
合物の転化率を50〜98モル%とし、続く第二段階で
は水を追加して2.5〜7.0モルの水の存在下で、2
45〜290℃の温度で更に反応を継続するものであ
る。
【0006】この方法では、反応途中で水を追加しなけ
ればならない。これを行うためには、第一段階後に温度
を一旦下げて常圧とした後に水を加えるか、第一段階と
第二段階とで反応缶を変えるか、あるいは高温高圧下に
ある反応缶に水を圧入するしかなく、設備的、経済的、
操作的に不利益であった。また、第二段階で硫化ナトリ
ウム1モル当り2.5モル以上の水を存在させ、245
℃以上の温度にするので、圧力は20kg/cm2 G以
上にもなる。従って、反応缶は、実際30kg/cm2
G以上の耐圧が必要となり、この点でも設備的、経済的
に不利であった。
【0007】上記問題に鑑み、特開平5‐32781号
公報には、同じく重合反応を二段階で行い、第二段階で
トリクロロベンゼン等を添加する方法が開示されてい
る。即ち、第一段階でアルカリ金属硫化物1モル当り
0.5〜2.4モルの水の存在下、180〜250℃の
温度で反応を行って、続く第二段階では、第一段階で使
用したジハロ芳香族化合物の0.01〜5モル%に相当
するトリクロロベンゼン等を加え、PASの貧溶媒が2
0〜60重量%存在する状態において、250〜290
℃の温度で反応を継続して高分子量PASを製造する方
法である。
【0008】しかし、該方法により得られたPASは、
未だ機械的強度が十分ではない。また、反応途中でトリ
クロロベンゼン等を添加しなければならない。従って、
上記の特開昭61‐7332号の発明と同じく設備的、
経済的、操作的に不利益であった。
【0009】また、特開平5‐43691号公報には、
重合によって得られたPASを、不活性ガス雰囲気下の
有機アミド溶媒中、100〜260℃の温度で10〜3
00分間処理した後に、高温状態のまま固液分離を行っ
て高分子量PASを製造する方法が開示されている。
【0010】しかし、該方法により得られたPASも、
未だ機械的強度が十分であるとはいえなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、簡便かつ安
価に、機械的強度の優れたPASを提供するものであ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、有機アミド系
溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを
反応させ、かつ該反応中に反応缶の気相部分を冷却する
ことにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液
相に還流せしめることにより製造した、溶融粘度V6が
1,000〜2,500ポイズであるポリアリーレンス
ルフィドを気相酸化性雰囲気下で加熱処理することによ
り、溶融粘度V6が5,000〜40,000ポイズで
あるポリアリーレンスルフィドを製造する方法である。
【0013】本発明の方法で製造されたポリアリーレン
スルフィドは、一片が80mmの正方形であり、かつ厚
さが3mmであるポリアリーレンスルフィド製平板に対
する、プローブ径5/8インチ、プローブ速度1m/分
でのハイレートインパクトテスターによる板厚方向の突
きさし破壊強度が1,500ニュートン以上であるポリ
アリーレンスルフィドである
【0014】本発明のPASにおいて、一辺が80mm
の正方形であり、かつ厚さが3mmであるポリアリーレ
ンスルフィド製平板に対する板厚方向の突きさし破壊強
度は、1,500ニュートン以上、好ましくは1,90
0ニュートン以上、特に好ましくは1,900〜3,0
00ニュートンである。上記下限未満では、フィルム、
シート、繊維、パイプ等の製品として適していない。
1,900ニュートン以上では、該PASにより製造し
たASTM1号ダンベル片は二つ折りにしても破壊せ
ず、かつ折曲げ点が白化しないという特性を示す。従っ
て、上記製品の原料として特に有用である。
【0015】ここで、突きさし破壊強度の測定は、AS
TM D1709に準拠して行ったものである。
【0016】ここで、加熱処理前のPASの溶融粘度V
6 は1,000〜2,500ポイズ、好ましくは1,5
00〜2,500ポイズである。該溶融粘度V6 が上記
範囲未満では、上記突きさし破壊強度を持つPASを製
造できず、上記範囲を超えては、成形加工性が悪くなる
ため好ましくない。
【0017】更に、加熱処理後のPASの溶融粘度V6
は5,000〜40,000ポイズ、好ましくは7,0
00〜35,000ポイズである。該溶融粘度V6 が上
記範囲未満ではPASの上記突きさし破壊強度が低く、
上記範囲を超えては成形加工性が悪くなるため好ましく
ない。ここで、溶融粘度V6 は、フローテスターを用い
て320℃、荷重20kgf/cm2 、L/D=10で
6分間保持した後に測定した粘度(ポイズ)である。
【0018】気相酸化性雰囲気の酸素濃度は好ましくは
5〜30体積%、特に好ましくは10〜25体積%であ
る。上記範囲を超えては、ラジカル発生量が増大して加
熱処理時の増粘が著しくなり、また色相が暗色化して好
ましくない。上記範囲未満では、酸化速度が遅くなり処
理に長時間を要し好ましくない。
【0019】また、加熱処理温度は好ましくは100〜
280℃、特に好ましくは170〜250℃である。上
記範囲未満では加熱処理に要する時間が長くなり、上記
範囲を超えては加熱処理後のPASの溶融時の熱安定性
が悪く好ましくない。
【0020】該加熱処理に要する時間は、上記の加熱温
度、酸素濃度、加熱処理前PASの溶融粘度、あるいは
所望する加熱処理後PASの溶融粘度により異なるが、
好ましくは10〜30時間、特に好ましくは10〜25
時間である。上記範囲未満では上記所定の溶融粘度V6
を有するPASが得られず、上記範囲を超えては加熱処
理後のPAS中にミクロゲルの発生が増加するため好ま
しくない。
【0021】加熱処理前のPASは、反応缶の気相部分
を冷却して、気相の一部を液相に還流せしめる方法(特
開平5‐222196号公報)により製造し得る。
【0022】上記の方法は、有機アミド系溶媒中でアル
カリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させPA
Sを製造する方法において、反応缶の気相部分を冷却す
ることにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを
液相に還流せしめることを特徴とする、PASの製造法
である。
【0023】該PAS製造法において、還流される液体
は、水とアミド系溶媒の蒸気圧差の故に、液相バルクに
比較して水含有率が高い。この水含有率の高い還流液
は、反応溶液上部に水含有率の高い層を形成する。その
結果、残存のアルカリ金属硫化物(例えばNa2 S)、
ハロゲン化アルカリ金属(例えばNaCl)、オリゴマ
ー等が、その層に多く含有されるようになる。従来法に
おいては230℃以上の高温下で、生成したPASとN
2 S等の原料及び副生成物とが均一に混じりあった状
態では、高分子量のPASが得られないばかりでなく、
せっかく生成したPASの解重合も生じ、チオフェノー
ルの副生成が認められる。しかし、該方法では、反応缶
の気相部分を積極的に冷却して、水分に富む還流液を多
量に液相上部に戻してやることによって上記の不都合な
現象が回避でき、反応を阻害するような因子を真に効率
良く除外でき、高分子量PASを得ることができるもの
と思われる。但し、該方法は上記現象による効果のみに
より限定されるものではなく、気相部分を冷却すること
によって生じる種々の影響によって、高分子量のPAS
が得られるのである。
【0024】該方法においては、従来法のように反応の
途中で水を添加することを要しない。しかし、水を添加
することを全く排除するものではない。但し、水を添加
する操作を行えば、該方法の利点のいくつかは失われ
る。従って、好ましくは、重合反応系内の全水分量は反
応の間中一定である。
【0025】反応缶の気相部分の冷却は、外部冷却でも
内部冷却でも可能であり、自体公知の冷却手段により行
える。たとえば、反応缶内の上部に設置した内部コイル
に冷媒体を流す方法、反応缶外部の上部に巻きつけた外
部コイルまたはジャケットに冷媒体を流す方法、反応缶
上部に設置したリフラックスコンデンサーを用いる方
法、反応缶外部の上部に水をかける又は気体(空気、窒
素等)を吹き付ける等の方法が考えられるが、結果的に
缶内の還流量を増大させる効果があるものならば、いず
れの方法を用いても良い。外気温度が比較的低いなら
(たとえば常温)、反応缶上部に従来備えられている保
温材を取外すことによって、適切な冷却を行うことも可
能である。外部冷却の場合、反応缶壁面で凝縮した水/
アミド系溶媒混合物は反応缶壁を伝わって液相中に入
る。従って、該水分に富む混合物は、液相上部に溜り、
そこの水分量を比較的高く保つ。内部冷却の場合には、
冷却面で凝縮した混合物が同様に冷却装置表面又は反応
缶壁を伝わって液相中に入る。
【0026】一方、液相バルクの温度は、所定の一定温
度に保たれ、あるいは所定の温度プロフィールに従って
コントロールされる。一定温度とする場合、 230〜275
℃の温度で 0.1〜20時間反応を行うことが好ましい。よ
り好ましくは、 240〜265 ℃の温度で1〜6時間であ
る。より高い分子量のPASを得るには、2段階以上の
反応温度プロフィールを用いることが好ましい。この2
段階操作を行う場合、第1段階は 195〜240 ℃の温度で
行うことが好ましい。温度が低いと反応速度が小さす
ぎ、実用的ではない。 240℃より高いと反応速度が速す
ぎて、十分に高分子量なPASが得られないのみなら
ず、副反応速度が著しく増大する。第1段階の終了は、
重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が1モル%〜40
モル%、且つ分子量が 3,000〜20,000の範囲内の時点で
行うことが好ましい。より好ましくは、重合反応系内ジ
ハロ芳香族化合物残存率が2モル%〜15モル%、且つ分
子量が 5,000〜15,000の範囲である。残存率が40モル%
を越えると、第2段階の反応で解重合など副反応が生じ
やすく、一方、1モル%未満では、最終的に高分子量P
ASを得難い。その後昇温して、最終段階の反応は、反
応温度 240〜270 ℃の範囲で、1時間〜10時間行うこと
が好ましい。温度が低いと十分に高分子量化したPAS
を得ることができず、また 270℃より高い温度では解重
合等の副反応が生じやすくなり、安定的に高分子量物を
得難くなる。
【0027】実際の操作としては、先ず不活性ガス雰囲
気下で、アミド系溶媒中のアルカリ金属硫化物中の水分
量が所定の量となるよう、必要に応じて脱水または水添
加する。水分量は、好ましくは、アルカリ金属硫化物1
モル当り0.5〜2.5モル、特に0.8〜1.2モル
とする。2.5モルを超えては、反応速度が小さくな
り、しかも反応終了後の濾液中にフェノール等の副生成
物量が増大し、重合度も上がらない。0.5モル未満で
は、反応速度が速すぎ、十分な高分子量の物を得ること
ができない。
【0028】反応時の気相部分の冷却は、一定温度での
1段反応の場合では、反応開始時から行うことが望まし
いが、少なくとも 250℃以下の昇温途中から行わなけれ
ばならない。多段階反応では、第1段階の反応から冷却
を行うことが望ましいが、遅くとも第1段階反応の終了
後の昇温途中から行うことが好ましい。冷却効果の度合
いは、通常反応缶内圧力が最も適した指標である。圧力
の絶対値については、反応缶の特性、攪拌状態、系内水
分量、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とのモ
ル比等によって異なる。しかし、同一反応条件下で冷却
しない場合に比べて、反応缶圧力が低下すれば、還流液
量が増加して、反応溶液気液界面における温度が低下し
ていることを意味しており、その相対的な低下の度合い
が水分含有量の多い層と、そうでない層との分離の度合
いを示していると考えられる。そこで、冷却は反応缶内
圧が、冷却をしない場合と比較して低くなる程度に行う
のが好ましい。冷却の程度は、都度の使用する装置、運
転条件などに応じて、当業者が適宜設定できる。
【0029】ここで使用する有機アミド系溶媒は、PA
S重合のために知られており、たとえばN‐メチルピロ
リドン(NMP)、N,N‐ジメチルホルムアミド、
N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルカプロラク
タム等、及びこれらの混合物を使用でき、NMPが好ま
しい。これらは全て、水よりも低い蒸気圧を持つ。
【0030】アルカリ金属硫化物も公知であり、たとえ
ば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫
化ルビジウム、硫化セシウム及びこれらの混合物であ
る。これらの水和物及び水溶液であっても良い。又、こ
れらにそれぞれ対応する水硫化物及び水和物を、それぞ
れに対応する水酸化物で中和して用いることができる。
安価な硫化ナトリウムが好ましい。
【0031】ジハロ芳香族化合物は、たとえば特公昭4
5‐3368号公報記載のものから選ぶことができる
が、好ましくはp‐ジクロロベンゼンである。又、少量
(20モル%以下)のジフェニルエーテル、ジフェニル
スルホン又はビフェニルのパラ、メタ又はオルトジハロ
物を1種類以上用いて共重合体を得ることができる。例
えば、m‐ジクロロベンゼン、o‐ジクロロベンゼン、
p,p´‐ジクロロジフェニルエーテル、m,p´‐ジ
クロロジフェニルエーテル、m,m´‐ジクロロジフェ
ニルエーテル、p,p´‐ジクロロジフェニルスルホ
ン、m,p´‐ジクロロジフェニルスルホン、m,m´
‐ジクロロジフェニルスルホン、p,p´‐ジクロロビ
フェニル、m,p´‐ジクロロビフェニル、m,m´‐
ジクロロビフェニルである。
【0032】PASの分子量をより大きくするために、
例えば1,3,5‐トリクロロベンゼン、1,2,4‐
トリクロロベンゼン等のポリハロ化合物を、パラ及びメ
タジハロ芳香族化合物の合計量に対して好ましくは5モ
ル%以下の濃度で使用することもできる。
【0033】また、他の少量添加物として、末端停止
剤、修飾剤としてのモノハロ化物を併用することもでき
る。
【0034】本発明においては、加熱処理前のPAS
に、予め酸処理を施すこともできる。該酸処理は、10
0℃以下の温度、好ましくは40〜80℃の温度で実施
される。該温度が上記上限を超えると、酸処理後のPA
S分子量が低下するため好ましくない。また、40℃未
満では、残存している無機塩が析出してスラリーの流動
性を低下させ、連続処理のプロセスを阻害するため好ま
しくない。該酸処理に使用する酸溶液の濃度は、好まし
くは0.01〜5.0重量%である。また、該酸溶液の
pHは、酸処理後において、好ましくは4.0〜5.0
である。上記の濃度及びpHを採用することにより、被
処理物であるPAS中の−SNa及び‐COONa末端
の大部分を−SH及び‐COOH末端に転化することが
できると共に、プラント設備等の腐食を防止し得るため
好ましい。該酸処理に要する時間は、上記酸処理温度及
び酸溶液の濃度に依存するが、好ましくは5分間以上、
特に好ましくは10分間以上である。上記未満では、P
AS中の−SNa及び‐COONa末端を−SH及び‐
COOH末端に十分に転化できず好ましくない。上記酸
処理には、例えば酢酸、ギ酸、シュウ酸、フタル酸、塩
酸、リン酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸等が使
用され、酢酸が特に好ましい。該処理を施すことによ
り、PAS中の不純物であるナトリウムを低減できる。
従って、製品使用中のナトリウム溶出及び電気絶縁性の
劣化を抑制することができる。
【0035】本発明のPASには、エンジニアリングプ
ラスチックとしての性能例えば強度、耐熱性、寸法安定
性等を改善するために、更に慣用の添加剤を配合するこ
とができる。例えば、無機充填材としてのシリカ、アル
ミナ、タルク、マイカ、カオリン、クレー、シリカアル
ミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウ
ム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシ
ウム、酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、窒化ケ
イ素、ガラス、ハイドロタルサイト、酸化ジルコニウ
ム、パイロフイライド、ベントナイト、セリサイト、ゼ
オライト、雲母、ネフエリンシナイト、ドロナイト、三
酸化アンチモン、酸化亜鉛、ウオラストナイト、アタル
バルジヤイト、酸化鉄、二酸化モリブデン、黒鉛、石膏
等の粒状、粉末状あるいは鱗片状のもの、又はガラス繊
維、チタン酸カリウム繊維、炭素繊維、マイカセラミッ
ク繊維等の繊維状のものを配合することができる。これ
ら無機充填材は、夫々単独で、あるいは二種以上組合わ
せて用いることができる。また、これらの無機充填材
は、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤
で処理したものであってもよい。充填材の配合割合は、
溶融加工性の観点等から30重量%以下が好ましい。
【0036】更に、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定
剤、滑剤、離型剤、着色剤等の添加剤を配合することも
できる。
【0037】以上のような各成分を混合する方法は、特
に限定されるものではない。一般に広く使用されている
方法、例えば各成分をヘンシェルミキサー等の混合機で
混合する等の方法を用いることができる。
【0038】以下、本発明を実施例により更に詳細に説
明するが、本発明はこれら実施例により限定されるもの
ではない。
【0039】
【実施例】実施例において、溶融粘度V6 は、島津製作
所製フローテスターCFT‐500Aを用いて320
℃、荷重20kgf/cm2 、L/D=10で6分間保
持した後に測定した粘度(ポイズ)である。
【0040】突きさし破壊強度は、一辺が80mmの正
方形であり、かつ厚さが3mmであるPPS製平板を作
成し、これを試料としてハイレートインパクトテスター
(レオメトリックス社製RIT)を使用して、プローブ
径5/8インチ、プローブ速度1m/分にて測定した強
度である。
【0041】
【実施例1】4m3 オートクレーブに、フレーク状硫化
ソーダ(60.8重量%Na2 S)524.6kgと、
N‐メチル‐2‐ピロリドン(以下ではNMPと略すこ
とがある)1,200kgを仕込んだ。窒素気流下で攪
拌しながら204℃まで昇温して、水126.3kgを
留出させた。その後、オートクレーブを密閉して180
℃まで冷却し、パラジクロロベンゼン(以下ではp‐D
CBと略すことがある)597.2kg及びNMP40
0kgを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用いて1
kg/cm2 Gに加圧して昇温を開始した。液温220
℃で3時間攪拌しつつ、オートクレーブ上部の外側に巻
き付けたコイルに20℃の冷媒を流し冷却した。その後
昇温して、液温260℃で3時間攪拌し、次に降温させ
ると共にオートクレーブ上部の冷却を止めた。オートク
レーブ上部を冷却中、液温が下がらないように一定に保
持した。反応中の最高圧力は、8.79kg/cm2
であった。得られたスラリーを常法により濾過、温水洗
を繰り返し、130℃で約4時間熱風循環乾燥器中で乾
燥し、白色粉末状の中間製品を得た。得られたPPS
(P‐01)の溶融粘度V6 は1,020ポイズであっ
た。
【0042】次に、上記の中間製品を5m3 の熱酸化処
理装置に仕込み、槽内温度220℃、酸素濃度20体積
%で15時間攪拌した。その後、冷却して製品を得た。
得られた製品(P‐1)の溶融粘度V6 は7,790ポ
イズであった。
【0043】
【実施例2】加熱処理時間を19時間とした以外は、実
施例1と同一にして実施した。得られた製品(P‐2)
の溶融粘度V6 は16,820ポイズであった。
【0044】
【実施例3】加熱処理時間を23時間とした以外は、実
施例1と同一にして実施した。得られた製品(P‐3)
の溶融粘度V6 は32,600ポイズであった。
【0045】
【実施例4】4m3 オートクレーブに、フレーク状硫化
ソーダ(60.1重量%Na2 S)512.9kgとN
MP1,200kgを仕込んだ。窒素気流下で攪拌しな
がら204℃まで昇温して、水131.6kgを留出さ
せた。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで
冷却し、p‐DCB583.6kg、NMP400kg
と1,2,4‐トリクロロベンゼン0.717kg(硫
化ソーダに対して約0.10モル%)を仕込んだ。液温
150℃で窒素ガスを用いて1kg/cm2 Gに加圧し
て昇温を開始した。液温230℃からオートクレーブ外
側上部に散水してオートクレーブ気相部分を冷却した。
230℃で4時間保持し、その後260℃まで昇温し、
3時間保持した後に降温させ、同時に散水を止めた。オ
ートクレーブ気相部分を冷却中、液温が下がらないよう
に一定に保持した。反応中の最高圧力は、8.82kg
/cm2 Gであった。得られたスラリーを常法により濾
過、温水洗を繰り返し、130℃で約4時間熱風循環乾
燥器中で乾燥し、白色粉末状の中間製品を得た。得られ
たPPS(P‐02)の溶融粘度V6 は2,360ポイ
ズであった。
【0046】次に、上記の中間製品を5m3 の熱酸化処
理装置に仕込み、槽内温度220℃、酸素濃度25体積
%で11時間攪拌した。その後、冷却して製品を得た。
得られた製品(P‐4)の溶融粘度V6 は9,680ポ
イズであった。
【0047】
【比較例1】加熱処理時間を9時間とした以外は、実施
例1と同一にして実施した。得られた製品(P‐C1)
の溶融粘度V6 は3,530ポイズであった。
【0048】
【比較例2】加熱処理時間を5時間とした以外は、実施
例4と同一にして実施した。得られた製品(P‐C2)
の溶融粘度V6 は4,210ポイズであった。
【0049】
【比較例3】4m3 オートクレーブに、フレーク状硫化
ソーダ(60.8重量%Na2 S)523.1kgとN
MP1,200kgを仕込んだ。窒素気流下で攪拌しな
がら204℃まで昇温して、水126.3kgを留出さ
せた。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで
冷却し、p‐DCB597.2kg及びNMP400k
gを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用いて1kg
/cm2 Gに加圧して昇温を開始した。液温220℃で
3時間攪拌しつつ、オートクレーブ上部の外側に巻き付
けたコイルに20℃の冷媒を流し冷却した。その後昇温
して、液温260℃で3時間攪拌し、次に降温させると
共にオートクレーブ上部の冷却を止めた。オートクレー
ブ上部を冷却中、液温が下がらないように一定に保持し
た。反応中の最高圧力は、8.81kg/cm2 Gであ
った。
【0050】得られたスラリーを常法により濾過、温水
洗を繰り返し、130℃で約4時間熱風循環乾燥器中で
乾燥し、白色粉末状の中間製品を得た。得られたPPS
(P‐03)の溶融粘度V6 は960ポイズであった。
【0051】次に、上記の中間製品を5m3 の熱酸化処
理装置に仕込み、槽内温度220℃、酸素濃度20体積
%で15時間攪拌した。その後、冷却して製品を得た。
得られた製品(P‐C3)の溶融粘度V6 は7,340
ポイズであった。
【0052】
【比較例4】加熱処理時間を24時間とした以外は、比
較例3と同一にして実施した。得られた製品(P‐C
4)の溶融粘度V6 は33,200ポイズであった。
【0053】
【比較例5】加熱処理時間を8時間とした以外は、比較
例3と同一にして実施した。得られた製品(P‐C5)
の溶融粘度V6 は3,190ポイズであった。
【0054】次に、上記のようにして得られた各PPS
を二軸押出機を用いて、シリンダー温度320℃で溶融
押出し、ペレットを作成した。更に、出来上がったペレ
ットをシリンダー温度320℃、金型温度130℃に設
定した射出成形機により成形して、試験片を作成し、突
きさし破壊強度の測定に供した。
【0055】結果を表1に示す。
【0056】
【表1】 実施例1は、加熱処理前と後のPPS溶融粘度V6 がい
ずれも本発明の範囲内にあるものである。出来上がった
PPSの突きさし破壊強度は高く、本発明のPPSが得
られた。実施例2及び3は、加熱処理時間を長くした以
外は実施例1と同一にして実施したものである。加熱処
理後のPPS溶融粘度V6 は本発明の範囲内であり、ま
た実施例1より大きい。出来上がったPPSの突きさし
破壊強度は高く、本発明のPPSが得られた。実施例4
で用いた出発PPSは、少量のトリクロルベンゼンをコ
モノマーとして含み、実施例1〜3で使用したPPSと
比べてより高い溶融粘度V6 を持つ。加熱処理後のPP
S溶融粘度V6 は本発明の範囲内であり、出来上がった
PPSの突きさし破壊強度は高く、本発明のPPSが得
られた。
【0057】一方、比較例1は、実施例1に比べて、加
熱処理時間を短くして加熱処理後のPPS溶融粘度V6
を本発明の範囲未満としたものである。出来上がったP
PSの突きさし破壊強度は低く、本発明のPPSは得ら
れなかった。比較例2は、実施例4に比べて、加熱処理
時間を短くして加熱処理後のPPS溶融粘度V6 を本発
明の範囲未満としたものである。出来上がったPPSの
突きさし破壊強度は低く、本発明のPPSは得られなか
った。比較例3は、加熱処理前のPPS溶融粘度V6
本発明の範囲未満のものを使用し、加熱処理を行って加
熱処理後のPPS溶融粘度V6 を本発明の範囲内とした
ものである。実施例1に比べて、出来上がったPPSの
突きさし破壊強度は低く、本発明のPPSは得られなか
った。比較例4は、加熱処理時間を長くした以外は比較
例3と同一にして実施したものである。加熱処理後のP
PS溶融粘度V6 は、本発明の範囲内であり、また比較
例3と比べてかなり大きいものである。しかし、出来上
がったPPSの突きさし破壊強度は低かった。比較例5
は、加熱処理前後のPPS溶融粘度V6 がいずれも本発
明の範囲未満のものである。出来上がったPPSの突き
さし破壊強度は低く、本発明のPPSは得られなかっ
た。この様に、加熱処理前後のPPS溶融粘度V6 がい
ずれも本発明の範囲内になければ、突きさし破壊強度の
高い本発明のPPSが得られないことが分かった。
【0058】
【発明の効果】本発明は、簡便かつ安価に、機械的強度
の優れたPASを提供する。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化
    物とジハロ芳香族化合物とを反応させ、かつ該反応中に
    反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相
    の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめることによ
    り製造した、溶融粘度V6が1,000〜2,500ポ
    イズであるポリアリーレンスルフィドを気相酸化性雰囲
    気下で加熱処理することにより、溶融粘度V6が5,0
    00〜40,000ポイズであるポリアリーレンスルフ
    ィドを製造する方法
  2. 【請求項2】 加熱処理により製造されたポリアリーレ
    ンスルフィドが、一片が80mmの正方形であり、かつ
    厚さが3mmであるポリアリーレンスルフィド製平板に
    対する、プローブ径5/8インチ、プローブ速度1m/
    分でのハイレートインパクトテスターによる板厚方向の
    突きさし破壊強度が1,500ニュートン以上であるポ
    リアリーレンスルフィドであるところの請求項1記載の
    方法
  3. 【請求項3】 上記突きさし破壊強度が1,900ニュ
    ートン以上である請求項2記載の方法。
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