JP3472993B2 - インジウム・スズ酸化物膜形成用のスパッタリングターゲットおよびその製造方法 - Google Patents
インジウム・スズ酸化物膜形成用のスパッタリングターゲットおよびその製造方法Info
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Description
レクトロルミネッセンス表示装置等に使用され、透明電
極となるインジウム・スズ酸化物膜を形成するのに用い
られるインジウム・スズ酸化物膜形成用のスパッタリン
グターゲットおよびその製造方法に関する。
nO2をドープした膜であるインジウム・スズ酸化物膜
(以下ITO膜と称する)は高い透光性と高い導電性を
備えており、液晶表示素子やエレクトロルミネッサンス
などの表示装置、あるいは航空機などの窓ガラスの氷結
防止用ヒータなどへの導電経路として広く使用されてい
る。このようなITO膜は通常スパッタリング法、電子
ビーム蒸着法、CVD法等により形成されるものであ
る。
スズ酸化物膜形成用のスパッタリングターゲットは焼結
体(以下、ITOターゲットの焼結体と称することがあ
る)からなり、In2O3粉末とSnO2粉末の混合粉末
を、或いはInとSnと酸素からなる複合酸化物粉末
を、或いは混合粉末と複合酸化物粉末の混合粉を成形
し、この成形体を酸化性雰囲気中にて1250℃〜17
00℃で焼結し、更にスパッタされる面の機械加工を施
したものである。
ーゲットの長寿命化が望まれており、それに伴いITO
ターゲットの焼結体の高密度化が強く要求され、種々の
提案がなされている。例えば、特開平5−311428
号では、焼結密度が90〜100%のITOターゲット
を得る方法として、ITO粉末を成形して得た成形体を
CIPし、焼結するITO焼結体の製造方法が提案され
ている。
5−311428号に記載の方法では、外周部は緻密で
あるが内部では密度の低い密度ムラのある焼結体しか得
られない。外側が緻密であっても、内部の密度が低い場
合、スパッタリング中に密度の低い面が現れ、ITO膜
の特性劣化につながる。したがって、本発明は、密度が
95%以上と高く、かつ均一な密度分布を有するインジ
ウム・スズ酸化物膜形成用のスパッタリングターゲット
およびその製造方法を提供することを目的とする。
を用いずに予備焼結を行い、その後粒成長を伴うHIP
処理をすることにより、高密度かつ密度が均一なITO
焼結体が得られることを知見し、本発明を完成した。す
なわち、本発明は、酸化インジウム・酸化スズ粉末を成
形し、密封容器を用いず1300〜1700℃で予備焼
結して密度を80%以上、平均結晶粒径1〜20μmの
予備焼結体とした後、得られた予備焼結体を前記平均結
晶粒径の1.3〜3倍の粒成長を伴いながらHIPする
インジウム・スズ酸化物膜形成用のスパッタリングター
ゲットの製造方法である。また、本発明は、直径5mm
の球体を少なくとも一部に包含しうる3次元形状を外形
として有するインジウム・スズ酸化物膜形成用のスパッ
タリングターゲットにおいて、前記球体の中心に相当す
る位置の気孔数と前記球体の外部の任意の位置の気孔数
とがいづれも100個/cm2以下であるインジウム・
スズ酸化物膜形成用のスパッタリングターゲットであ
る。さらに、曲げ強度が192MPa以上、ビッカーズ
硬さが580Hv以上である機械的強度に優れたインジ
ウム・スズ酸化物膜形成用のスパッタリングターゲット
である。本発明において、直径5mmの球体の中心に相
当する位置の気孔数と前記球体の外部の任意の点に相当
する位置の気孔数とがいづれも100個/cm2以下と
したのは、本発明のスパッタリングターゲットの密度分
布が均一であることを示すためである。気孔数はSEM
観察により求めるので、実質的には球体の中心に相当す
る位置を含む平面における気孔数である。
次のような理由による。予備焼結をせずに成形体を密封
容器にいれてHIPすると、外周部が先に焼結され、そ
の後内部に気孔を閉じこめたまま内部に焼結が進む。そ
のため、内部に存在する気孔およびSnの分解により新
たに生成した気孔が焼結体内に閉じこめられたまま、高
圧で焼結が進行するので、密度ムラができる。焼結過程
における粒成長に伴って気孔が圧縮され極めて高い内部
応力を持つ焼結体となり、機械的強度、熱衝撃が著しく
低下する。また、予備焼結をせずにHIPを行うために
は、成形体を密封容器中に入れて行うため、得られる焼
結体の大きさに限界があり、大型で一体のターゲットを
得ることができない。本発明のスパッタリングターゲッ
トは、曲げ強度192MPa以上、ビッカーズ硬度58
0Hv以上と機械的強度に優れるので、異常放電回数が
少なく、またスパッタリング時にターゲットにハイパワ
ーをかけても割れを生じにくい。
のスパッタリングターゲットの製造方法を以下に示す。
酸化インジウム・酸化スズ粉末は、In2O3粉末とSn
O2粉末の混合粉末、InとSnと酸素からなる複合酸
化物粉末を、あるいは混合粉末と複合酸化物粉末の混合
粉末等を用いることができる。焼結体密度向上のために
は、酸化インジウム・酸化スズ粉末の平均粒径を0.0
2〜2μmとすることが望ましく、BET表面積を5〜
40m2/g、さらには20〜30m2/gとするのが望
ましい。成形は、プレス成形またはプレス成形後CIP
する成形方法が望ましい。プレス成形およびCIPの圧
力は、0.2ton/cm2以上、より好ましくは1t
on/cm2以上とし、成形密度を40%以上とするの
がよい。成形密度が40%未満であると予備焼結体の密
度が低くなり十分なHIP効果が得られない。
予備焼結は、HIP処理にて十分緻密化させるため予備
焼結体の密度が80%以上となるよう行う。密度を80
%以上とするためには、1300〜1700℃の範囲で
行うのが望ましく、1400〜1550℃の範囲で行う
のがより望ましい。焼結は、常圧焼結、加圧焼結いづれ
でもよい。焼結雰囲気は、大気中で十分であるが、酸素
中、真空中、Ar、N2等の不活性雰囲気中などどのよ
うな雰囲気であってもよい。予備焼結での焼結体密度
は、80%以上あれば後工程のHIPで高密度の焼結体
を得ることができるが、85%以上、さらには90%以
上とするのがより望ましい。また、予備焼結により得ら
れた焼結体の平均結晶粒径は、1〜20μmに制御する
のが望ましく、5〜12μmとするのがさらに望まし
い。。予備焼結後HIPを行う。HIP温度は、予備焼
結により得られた予備焼結体の粒成長が起こる温度範囲
であれば十分であるが、HIP温度≧(予備焼結の温度
−200℃)とするのが望ましく、HIP温度≧(予備
焼結の温度−100℃)、さらにはHIP温度≧(予備
焼結の温度−50℃)とするのが望ましい。このような
温度範囲にすることにより、密度分布が均一でかつSn
の分布が均一な焼結体とすることができる。HIP圧力
は、500atm以上あれば緻密化するが、1000a
tm以上とすることが望ましい。HIP処理の雰囲気
は、Cを含まない雰囲気であれば、大気中、酸素中雰囲
気でもよいが、非還元性雰囲気とするのが望ましく、A
r等の不活性雰囲気がさらに望ましい。また、HIP処
理により得られる焼結体の平均結晶粒径は、予備焼結体
時の平均結晶粒径の1.1〜8倍になるのが望ましく、
1.3〜3倍となるのがさらに望ましい。
50nmの酸化スズ粉末を重量比で95:5となるよう
に成型用バインダーとともに均一に混合し混合粉末を得
た。次にその混合粉末を金型に充填し、一軸加圧にて成
形圧力0.5ton/cm2で予備成形した後CIPにて成形
圧力2ton/cm2で加圧し成形体を得た。次いで密封容器
に入れることなく、酸素濃度70%の酸素雰囲気中、1
400℃×5h焼結し、密度90%以上、100φ×7
t(mm)の予備焼結体を2つ準備した。次に、一方の予備
焼結体を1000atm、1400℃×5hでHIPする
ことにより、ITOターゲットの焼結体を得た。
ーゲットの焼結体を顕微鏡により観察した。図6に焼結
体の観察位置を示す。図6において、1は焼結体、2は
球体であり、位置Aが球体の中心、位置Bが球体の任意
の外部である。予備焼結体は、金属顕微鏡により観察
し、その組織写真を図1に(a)外部B、(b)中心A
として示した。また、HIP後の焼結体も金属顕微鏡に
より観察し、その組織写真を図2に(a)外部B、
(b)中心Aとして示した。予備焼結体とHIP後のI
TOターゲットの焼結体の試料の中心AのSEMによる
組織写真を図3、4に示す。図1、2において、黒色に
見えるのが気孔である。図3、4において、黒色および
白色に見えるのが気孔である(ただし、線状に白く見え
るのは粒界であり気孔ではない)。図1(a)(b)、
図2(a)(b)より、予備焼結体は外部に比し中心の
気孔が多く密度ムラがあることがわかるが、HIP後の
焼結体は中心、外部ともに気孔がほとんどないことがわ
かる。また、図3の予備焼結体の平均結晶粒径は5μm
であり、図4のHIP後の焼結体の平均結晶粒径は8μ
mであることから、HIP過程において粒成長したこと
が確認できる。また、図3、4より、予備焼結体は、気
孔が多数存在するが、HIP後の焼結体は気孔が無いこ
とがわかる。
50nmの酸化スズ粉末を重量比で95:5となるよう
に成型用バインダーとともに均一に混合し混合粉末を得
た。得られた成形体を実施例1と同様に、成形、予備焼
結(密封容器無し)、HIPを行い、予備焼結後の予備
焼結体(試料No.1)およびHIP後の本発明ITOター
ゲットの焼結体(試料No.2)を作製し、それをターゲッ
トとしてスパッタリングによる評価を行った。スパッタ
リング条件は、次の通りである。バッチ式スパッタリン
グ装置により下記条件でITO膜を形成する実験を行っ
た。 スパッタ電力 1.0W/cm2 スパッタガス組成 99%アルゴン+1%酸素の混合ガス スパッタガス圧 1Pa 基板温度 25℃ スパッタリング開始から2時間後と30時間後の成膜速
度と抵抗率とさらにスパッタリングを行ったときの突起
の形成より判断したターゲットの寿命を評価し、表1に
示す。
た場合、従来のターゲットより成膜速度が速くかつ安定
しており、また寿命が長くなったことがわかる。また、
試料No.1、2のスパッタリング時の異常放電回数の
変化を図5に示す。試料No.1はスパッタリング開始
約20時間から異常放電回数が急激に増加しているのに
対し、本発明である試料No.2のターゲットはスパッ
タリング開始70時間においても10回/hであり、本
発明焼結体をターゲットとした場合、格段に異常放電回
数が減少することがわかる。
70nmの酸化スズ粉末を重量比で90:10となるよ
うに成型用バインダーとともに均一に混合し混合粉末を
得た。得られた成形体を実施例1と同様に成形して10
φ×7t(mm)の成形体を得た後、予備焼結(密封容器な
し)およびHIPの温度を表2のように変えて焼結を行
った。予備焼結は大気中で行い、焼結時間は5時間であ
る。また、HIP圧力は1000atmである。なお、予
備焼結後とHIP後の比較のため各試料は2試料づつ準
備し、一方は予備焼結後、結晶粒径および密度を測定
し、もう一方は予備焼結後HIPを行い結晶粒径および
密度の測定を行った。予備焼結後の結晶粒径、密度、H
IP後の結晶粒径、気孔数を焼結温度とともに表2に示
す。密度は試料の図6に示す中心Aと外部Bをそれぞれ
2.5×2.5×2.5(mm)の形状に切り出し、ガンマ線密度
測定装置により測定した。気孔数は、図6の中心Aと外
部Bの気孔数をSEM観察により測定した。なお、表2
のHIP後の焼結体全体の密度を水中置換法により測定
したところ、No.3〜12は97%以上であった。N
o.13は86%、No.14は95%であった。密度
は酸化インジウムと酸化スズの配合比から求めた理論密
度を100%とした時の値である。
ビッカーズ硬度およびターゲットとした場合のスパッタ
リングによる評価を行った。その結果を表3に示す。な
お、スパッタリング条件は、実施例2と同様であり、曲
げ強度はJIS1601により評価した。表2より、本
発明の焼結方法により、高密度かつ密度むらのない焼結
体が得られることがわかる。また、表3より、成膜速度
が速く、膜抵抗率が低く、かつ長寿命の焼結体が得られ
ることがわかる。また、HIP温度1400〜1500
℃、特に1400〜1450℃で機械的強度が得られる
ことがわかる。
く、かつ均一な密度分布を有するインジウム・スズ酸化
物膜形成用のスパッタリングターゲット及びその製造方
法が得られる。
属組織写真である。
Bの金属組織写真である。
パッタリング時間と異常放電回数を示す図である。
である。
Claims (2)
- 【請求項1】 酸化インジウム・酸化スズ粉末を成形
し、密封容器を用いず1300〜1700℃で予備焼結
して密度を80%以上、平均結晶粒径1〜20μmの予
備焼結体とした後、得られた予備焼結体を前記平均結晶
粒径の1.3〜3倍の粒成長を伴うHIP処理を行うこ
とを特徴とするインジウム・スズ酸化物膜形成用のスパ
ッタリングターゲットの製造方法。 - 【請求項2】 直径5mmの球体を少なくとも一部に包
含しうる3次元形状を外形として有するインジウム・ス
ズ酸化物膜形成用のスパッタリングターゲットにおい
て、前記球体の中心に相当する位置の気孔数と前記球体
の外部の任意の位置の気孔数とがいづれも100個/c
m2以下であり、曲げ強度が192MPa以上、ビッカ
ーズ硬さが580Hv以上であることを特徴とするイン
ジウム・スズ酸化物膜形成用のスパッタリングターゲッ
ト。
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