JP3472644B2 - L−乳酸ポリマー組成物、成形物及びフィルム - Google Patents

L−乳酸ポリマー組成物、成形物及びフィルム

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JP3472644B2 JP10845095A JP10845095A JP3472644B2 JP 3472644 B2 JP3472644 B2 JP 3472644B2 JP 10845095 A JP10845095 A JP 10845095A JP 10845095 A JP10845095 A JP 10845095A JP 3472644 B2 JP3472644 B2 JP 3472644B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はL−乳酸ポリマー組成
物、並びにその成形物及びフィルムに関する。更に詳し
くは透明性と柔軟性に優れた成形物及びフィルムに関す
る。
【0002】
【従来の技術】一般的に、透明性と柔軟性を有する樹脂
を製造するには、樹脂に可塑剤やエラストマー等を添加
する方法が広く用いられている。しかしながら、可塑剤
を添加した場合には、成形体からの可塑剤のブリードに
より、成形体同士の粘着が生じやすい。可塑剤に無機物
を併用したものも知られているが、成形体の透明性が失
われ易い。又、エラストマーの添加は柔軟性に効果があ
るが、成形体が不透明になり易い。透明性と柔軟性が優
れている樹脂としては、軟質塩ビ、特殊ポリオレフィン
等の樹脂が知られている。しかしながら、これらは、廃
棄するときにゴミの量を増すうえに自然環境下での分解
速度が殆どないため、埋設処理しても半永久的に地中に
残留する。また投棄された樹脂により、景観が損なわれ
海洋生物の生活環境が破壊されるなどの問題が生じてい
る。
【0003】一方、自然環境下で分解する生分解性を有
する熱可塑性樹脂として、乳酸のホモポリマー、L−乳
酸とD,L−乳酸のコポリマー又は乳酸とヒドロキシカ
ルボン酸のコポリマー(以下、あわせてL−ポリ乳酸と
略称する。)が開発されている。これらのポリマーは、
動物の体内で数カ月から1年以内に100%生分解し、
また、土壌や海水中に置かれた場合、湿った環境下では
数週間で分解を始め、約1年から数年で消滅し、さらに
分解生成物は、人体に無害な乳酸と二酸化炭素と水にな
るという特性を有している。ポリ乳酸の原料である乳酸
は発酵法や化学合成で製造されているが、最近、特に発
酵法によるL−乳酸が大量に作られ安価になってきてい
る。又、得られたポリマーは剛性が強いという特徴を有
している。これらのことから現在、各種の用途開発が進
められている。
【0004】これらのL−ポリ乳酸の射出成形、押出成
形、ブロー成形等による成形物やフィルムは剛性に優れ
ているものの、柔軟性が低いため、柔軟性を必要とする
用途には、これまでほとんど用いられてこなかった。D
E Pat.3635679号には、L−乳酸ポリマー
外科用単糸の柔軟性改良に可塑剤としてアセチルクエン
酸トリブチルを添加することが開示されている。しかし
これには透明性、柔軟性及び耐熱性の延伸フィルムにつ
いて記載されておらず、又、当該公報記載の方法により
柔軟性を有する外科用単糸を製造することができるが、
成形加工性が十分でないため、この方法を一般の成形物
及びフィルムに応用することができない。すなわち、上
記の方法では、成形加工時にブロッキングがおこり、押
出しが不安定になり易く、また、得られたフィルムも滑
りが悪いため実用性に劣る。
【0005】また、USP5,076,983号には、
可塑剤としてモノマーであるラクチド類を0.1〜8重
量%含有することが開示されている。この方法では、フ
ィルムをドラム上にキャストして成形する場合に、ラク
チド類の濃度によりフィルムから分離したラクチド類が
ロール面にくっつくため、ドラムを汚したり、厚みが不
均一になったりし、その添加量は制限されている。その
ため、添加の効果として例えば、フィルムの伸びが30
〜140%であると記載されている。一般にフィルムと
して使用する場合には、それ以上の伸び率を要求されて
おり、更にフィルム成形加工時の巻取り性、及び製品使
用時の滑性を要求されており、上記方法により得られた
フィルムは、これらの点でまだ実用性に劣っている。
【0006】生分解性を有するポリマーに無機物を充填
剤としてシリカを添加する例は知られている。生分解性
を有するポリマーにこのような添加剤を加える例とし
て、特開平5−70696号公報、特表平4−5047
31号公報、特表平5−508669号公報があげられ
る。特開平5−70696号公報にはプラスチック製容
器の材料としてポリ−3−ヒドロキシブチレート/ポリ
−3−ヒドロキシバレレート共重合体、ポリカプロラク
トンまたはポリ乳酸のような生分解性プラスチックに平
均粒径20μm以下の炭酸カルシウム、含水珪酸マグネ
シウム(タルク)を重量比で10〜40%混合すること
が開示されており、多量の無機充填剤の添加により廃棄
後の生分解性プラスチックの分解を促進するのを目的と
している。特表平4−504731号公報(WO 90
/01521)には、ラクチド熱可塑性プラスチックに
シリカ、カオリナイトのような無機化合物の充填剤の添
加により硬度、強度、温度抵抗性の性質を変えることが
記載されている。また、特表平5−508669号公報
(WO 92/01737)には、分解性発泡材料とし
てのポリ乳酸に加工助剤として珪酸カルシウム、タルク
が使用されており、発泡押出成形における造核剤として
使用される。しかし、これらは、いずれもフィルム同士
の耐ブロッキング性を向上させるものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題に
対し、透明性、柔軟性、成形加工性及び滑り性の改良さ
れたL−乳酸ポリマー組成物、成形物及びフィルムを得
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成するため、鋭意検討した結果、本発明に到ったもの
である。即ち、本発明は、L−乳酸比率が75%以上で
あるL−乳酸ポリマー80〜95重量%と多価アルコー
ルエステル及びヒドロキシ多価カルボン酸エステルから
選ばれる可塑剤5〜20重量%の混合物100重量部
に、SiO2を90%以上含有する平均粒径7〜50n
mの耐ブロッキング剤0.1〜5重量部及び滑剤0.1
〜2重量部を配合したことを特徴とするL−乳酸ポリマ
ー組成物に関する。
【0009】本発明においてL−乳酸ポリマーには、L
−ポリ乳酸、乳酸−ヒドロキシカルボン酸コポリマー、
並びにそれらの混合物を含む。ポリマーの原料としては
乳酸類及びヒドロキシカルボン酸類が用いられる。乳酸
類としては、L−乳酸、D−乳酸,DL−乳酸又はそれ
らの混合物または乳酸の環状2量体であるラクタイドを
使用することができる。原料としての乳酸類は、得られ
るL−乳酸ポリマー中のL−乳酸含有比率が75%以上
になるように、種々の組み合わせで使用することができ
る。
【0010】また乳酸類と併用できるヒドロキシカルボ
ン酸類としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、
4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒド
ロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸を使用するこ
とができ、更にヒドロキシカルボン酸の環状エステル中
間体、例えば、グリコール酸の2量体であるグリコライ
ドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε
−カプロラクトンも使用できる。原料としての乳酸類と
ヒドロキシカルボン酸類の混合物は、得られるコポリマ
ー中のL−乳酸含有率が75%以上になるように、種々
の組み合わせで使用することができる。L−乳酸ポリマ
ーは、上記原料を直接脱水重縮合する方法、または、上
記乳類やヒドロキシカルボン酸類の環状2量体、例えば
ラクタイドやグリコライド、あるいはε−カプロラクト
ンのような環状エステル中間体を開環重合させる方法に
より得られる。
【0011】直接脱水重縮合して製造する場合、原料で
ある乳酸類又は乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を好ま
しくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下
で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した
溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応
系に戻す方法によって重合することにより、本発明に適
した強度を持つ高分子量のL−乳酸ポリマーが得られ
る。L−乳酸ポリマーの分子量は、成形性が可能な範囲
で高分子量のものが好ましく、3万以上500万以下が
より好ましい。分子量が3万未満のもでは成形品の強度
が小さくなり実用に適さない。また、分子量が500万
以上のものは成形加工性に劣る。
【0012】本発明で用いられる可塑剤は、アセチルク
エン酸トリブチル等のヒドロキシ多価カルボン酸エステ
ル類、グセリントリアセテートやグセリントリプロピオ
ネート等の多価アルコールエステルがあげられる。可塑
剤とL−乳酸ポリマーの比率は、L−乳酸ポリマー80
〜95重量%に対して可塑剤20〜5重量%、好ましく
は15〜9重量%である。可塑剤の添加量が5重量%未
満の場合は成形体及びフィルムに柔軟性を与える効果が
少なく、20重量%を越えると耐ブロッキング性に劣
る。
【0013】本発明の耐ブロッキング剤は、成形体及び
フィルムの成形及び延伸加工時の透明性の観点から、S
iO2を90%以上含むことが必要であり、95%以上
含むことが好ましい。また、その平均粒径が7〜50n
mであることが好ましい。さらには、Si02が無水シ
リカであることがより好ましい。その使用量はL−乳酸
ポリマーと可塑剤の混合物100重量部に0.1〜5重
量部、好ましくは、0.1〜2重量部である。添加量が
0.1重量部未満の場合は耐ブロッキング性の効果が発
現されず、添加量が5重量部を越えると成形体の外観、
特に透明性が劣る。又、粒径が7nm未満の場合は粒子
が凝集し易くなり作業性が劣り、50nmを超える場
合、特に数μmの粒径になると成形体やフィルムの表面
に微細の凹凸が生じ外観が不透明になる。
【0014】本発明において滑剤は、特に限定されない
が、炭素数17〜22の脂肪酸アミドが好ましく、ステ
アルアミド、エルカアミドが特に好ましい。その使用量
はL−乳酸ポリマーと可塑剤の混合物100重量部に
0.1〜2重量部である。添加量が0.1重量部未満の
場合はフィルムの滑り性に効果が発現されず、2重量部
を超えると成形が不安定になり加工性が劣る。可塑剤、
耐ブロッキング剤、滑剤の添加量を上記範囲にて実施す
ることが必要であり成形加工性、透明性、柔軟性、耐ブ
ロッキング性及び滑り性に加え、成形時に該添加剤によ
る分子量の低下が殆ど生じず、また結晶化及び溶解性等
による成形物の白化現象(曇り)が生じない成形物が得
られる。又、本発明のポリマーに酸化防止剤、紫外線吸
収剤等の改質剤を添加することもできる。
【0015】L−乳酸ポリマーと上記可塑剤、耐ブロッ
キング剤、滑剤等の混合には公知の混練技術を全て適用
できる。添加された可塑剤、耐ブロッキング剤及び滑剤
の混練時の分散性を良くし、これらの添加剤の効果が発
揮されるためには、L−乳酸ポリマーの平均粒径が15
〜100μmの微細粉末が用いられる。本発明によるL
−乳酸ポリマー組成物は造粒することにより、ペレッ
ト、棒状のものが得られ、成形に用いられる。
【0016】次に、本発明によるL−乳酸ポリマー組成
物を用いて成形物、フィルム、延伸フィルムを製造する
方法を詳細に説明する。本発明の目的の1つであるL−
乳酸ポリマー組成物から得られた成形物及びフィルム
は、L−乳酸ポリマーに可塑剤、耐ブロッキング剤及び
滑剤等を混合機で均一に混合してペレット化し、次いで
射出成形、押出成形、ブロー成形、更に必要に応じて延
伸加工することにより製造される。
【0017】成形物は、例えば次の方法により得られ
る。平均粒径15〜100μmのL−乳酸ポリマーに可
塑剤と耐ブロッキング剤と滑剤をリボンブレンダー等で
混合した後、36mmφ同方向回転2軸押出機でシリン
ダー設定温度150〜230℃、スクリュー回転数10
0rpmで組成物を押出しペレット化する。本発明にお
いては、ペレットにした後40〜65℃で、約2ないし
10時間加熱処理を行なう。これにより、ペレット中の
ポリマーの結晶化を促進し、耐熱性が向上して、ペレッ
ト同士の融着が防止されて押出安定性が向上する。押出
成形をする場合は、押出機のシリンダー温度を150〜
230℃に設定して押出機先端に特定の金型を取り付け
る事により、インフレ成形、シート成形、パイプ成形を
行なうこどができる。射出成形、ブロー成形をする場合
は、通常の成形機にてシリンダー温度150〜230℃
で溶融し、金型温度を10〜30℃に設定する事により
得られる。
【0018】インフレ成形、シート成形等の押出成形に
より得られた厚み0.1〜0.3mmのフィルムは、延
伸フィルム用に使用される。本発明において、温度12
0℃における熱収縮率が10〜45%の収縮性の延伸フ
ィルムと、熱収縮率1%未満の非収縮性の延伸フィルム
は次の方法により製造できる。
【0019】1.収縮性延伸フィルムの製法 1)前記押出成形により厚みが0.1〜0.3mmの透
明なL−乳酸ポリマーフィルムを製造する。透明でない
フィルムを使用した場合は、本発明の延伸フィルムを得
ることは困難である。 2)1)で得られたフィルムを一軸延伸、または二軸延
伸する。この時の延伸温度は35〜60℃、好ましく
は、40〜50℃、延伸倍率は1.5〜4倍、好ましく
は2〜3倍である。また好ましい延伸速度は2〜100
mm/secである。 3)上記、延伸されたフィルムの熱固定は延伸温度であ
る35℃〜60℃、好ましくは、40〜50℃の範囲で
処理される。この時の熱固定時間は1分〜30分の範囲
である。 このようにして得られたフィルムは、成形加工性、透明
性、柔軟性、更に耐ブロッキング性及び滑り性に優れて
いる。
【0020】2.非収縮性延伸フィルムの製法 前記1.の収縮性延伸フィルムの製法で、延伸後の熱固
定を120℃〜130℃で行なうことにより製造され
る。
【0021】このようにして得られたフィルムは、成形
加工性、透明性、柔軟性、耐ブロッキング性及び滑り性
に加え、耐熱性に優れる。得られた成形物の柔軟性は、
可塑剤を含有していない延伸フィルムの伸び率が90%
であるのに対して、本発明のL−乳酸ポリマー組成物か
ら得られた延伸フィルムの伸び率は150〜180%で
あり、可塑剤を含有していない延伸フィルムの伸び率に
対して約2倍に向上している。
【0022】また、本発明の組成物は滑剤を含有してい
るので、得られた成形物、未延伸フィルムは滑り性はも
ともと良好であるが、これを延伸することにより更に滑
り性が改良される。このため、延伸フィルムを製造する
場合に、通常の樹脂に用いられる量に比べて、滑剤の添
加量を大幅に減少させる事ができる。したがって、滑剤
を大量に加える事により生ずる成形性の不安定性やフィ
ルムの曇りを抑える事が可能となる。
【0023】
【実施例】本発明を以下実施例により説明するが、実施
例は本発明をこれらのものに限定するものではない。な
お、文中で、部とあるのはいずれも重量基準である。 〔L−乳酸ポリマーの製造〕はじめに、本発明で使用す
るL−乳酸ポリマーの製造を示す。尚、ポリマーの重量
平均分子量Mwはポリスチレンを標準としてゲルパーミ
エーションクロマトグラフィーにより以下の条件で測定
した。 装置 :島津LC−10AD 検出器:島津RID−6A カラム:日立化成GL−S350DT−5、GL−S3
70DT−5 溶媒 :クロロホルム 濃度 :1% 注入量:20μl 流速 :1.0ml/min
【0024】製造例1 L−ラクタイド100部およびオクタン酸第一スズ0.
01部と、ラウリルアルコール0.03部を、攪拌機を
備えた肉厚の円筒型ステンレス製重合容器へ装入し、真
空で2時間脱気した後窒素ガスで置換した。この混合物
を窒素雰囲気下で攪拌しつつ200℃で3時間加熱し
た。温度をそのまま保ちながら、排気管およびガラス製
受器を介して真空ポンプにより徐々に脱気し反応容器内
を3mmHgまで減圧にした。脱気開始から1時間後、
モノマーや低分子量揮発分の留出がなくなったので、容
器内を窒素置換し、容器下部からモノマーを紐状に抜き
出してペレット化し、L−乳酸ポリマーAを得た。この
ポリマーの重量平均分子量Mwは約10万であった。
【0025】製造例2 Dien−Starkトラップを設置した100リット
ル反応器に、90%L−乳酸10kgを150℃/50
mmHgで3時間攪拌しながら水を留出させた後、錫末
6.2gを加え、150℃/30mmHgでさらに2時
間攪拌してオリゴマー化した。このオリゴマーに錫末2
8.8gとジフェニルエーテル21.1kgを加え、1
50℃/35mmHg共沸脱水反応を行い留出した水と
溶媒を水分離器で分離して溶媒のみを反応機に戻した。
2時間後、反応機に戻す有機溶媒を4.6kgのモレキ
ュラシーブ3Aを充填したカラムに通してから反応機に
戻るようにして、150℃/35mmHgで40時間反
応を行い平均分子量11万のL−乳酸ポリマー溶液を得
た。この溶液に脱水したジフェニルエーテル44kgを
加え希釈した後40℃まで冷却して、析出した結晶を濾
過し、10kgのn−へキサンで3回洗浄して60℃/
50mmHgで乾燥した。この粉末を0.5N−塩酸1
2kgとエタノール12kgを加え、35℃で1時間攪
拌した後濾過し、60℃/50mmHgで乾燥して、平
均粒径30μmのポリマー粉末6.1kg(収率85
%)L−乳酸ポリマーBを得た。このポリマーの重量平
均分子量Mwは11万であった。
【0026】製造例3 L−乳酸100部をDL−乳酸100部に変え製造例2
と同様にして、L−乳酸ポリマーCを得た。このポリマ
ーの重量平均分子量Mwは11万であった。
【0027】製造例4 L−乳酸100部をL−乳酸90部とヒドロキシカルボ
ン酸成分としてグリコール酸10部に変えた他は製造例
2と同様にして、L−乳酸ポリマーDを得た。このポリ
マーの重量平均分子量Mwは約10万であった。
【0028】製造例5 L−乳酸100部をL−乳酸80部とヒドロキシカルボ
ン酸成分として6−ヒドロキシカプロン酸20部に変え
た他は製造例2と同様にして、L−乳酸ポリマーEを得
た。このポリマーの重量平均分子量Mwは約10万であ
った。
【0029】以下、製造例1〜5で得たL−乳酸ポリマ
ーを用いて、本発明に係わるL−乳酸ポリマーの延伸フ
ィルムを製造した。なお、主な物性値は下記の条件で測
定した。 1)霞度(ヘイズ):東京電色製Haze Meter
を使用して測定し、厚み300μmに換算したヘイズ値
を求めた。 2)柔軟性:JIS−L1096に記載の剛軟性試験
(A法45°カンチレバー法)による。 3)耐熱性:試料100mm×100mmを120℃の
オーブンに1時間入れて外観と熱収縮率を測定した。 4)耐ブロッキング性:JIS−Z0219に準ずる。 5)滑り性:東洋精機製摩擦測定機で、傾斜板とブロッ
ク(荷重1kg)に試料を張り傾斜板を水平の状態から
一定角速度(2.7°/sec)で傾斜させてブロック
が滑りだす角度を求めた。 6)分解性試験:2cm×5cmの試験片を採取し、こ
れを温度35℃、水分30%の土壌中に3か月間埋設し
た後、外観変化と重量の減少率を求めた。
【0030】実施例 1〜5 〔延伸フィルム〕製造例1〜5で得られたL−乳酸ポリ
マーA〜Eに、可塑剤としてアセチルクエン酸トリブチ
ル(以下ATBCと略記する)を、耐ブロッキング剤と
して、平均粒径7nm(日本アエロジル株式会社製;S
iO2分99%以上、商品名アエロジル300)、平均
粒径12nm(同、商品名アエロジル200)、平均粒
径16nm(同、商品名アエロジル130)、平均粒径
40nm(同、商品名アエロジルOX50)を、また滑
剤としてニュートロンS(日本精化株式会社製)を、各
々表−1に示す割合でリボンブレンダーで混合後、2軸
押出機によりシリンダー設定温度170〜210℃でペ
レット化した。該ペレットを50℃のオーブンで熱処理
し結晶化を進めた。得られたペレットを、押出機によ
り、シリンダー設定温度160〜200℃で溶融し、押
出機先端のTダイから厚み0.13mmのフィルムを得
た。該フィルムを二軸延伸測定装置(岩本製作所製)に
より、延伸温度50℃、延伸速度7mm/sec、延伸
倍率2.5倍で2軸延伸し、さらに延伸されたフィルム
を熱固定温度50℃、熱固定時間5分で処理し、厚み
0.02mmの熱収縮性延伸フィルムを得た。評価結果
を表1に示す。
【0031】実施例 6 製造例2で得られたL−乳酸ポリマーB85重量%と、
可塑剤ATBC15重量%との混合物100重量部に、
耐ブロッキング剤アエロジル200を0.5重量部、及
び滑剤ニュートロンSを0.5重量部をリボブレンダー
で混合後、実施例2と同様にペレット化し、Tダイ押出
機にて厚み0.20mmのフィルムを得た。該フィルム
を実施例2の延伸装置を用いて延伸温度70℃、延伸速
度7mm/sec、延伸倍率2.5倍で1軸延伸し、更
に延伸されたフィルムを、熱固定温度70℃、熱固定時
間5分で処理し、厚み0.08mmの熱収縮性延伸フィ
ルムを得た。得られた延伸フィルムは、ヘイズ0.7
%、熱収縮率30%、耐ブロッキング性に優れ、滑り性
16゜であった。
【0032】比較例 1 〔ポリマー組成による成形性〕製造例2で得られたL−
乳酸ポリマーBを20重量部と製造例3で得られたL−
乳酸ポリマーCを80重量部混合し、Lー乳酸比率60
%の乳酸ポリマーを得た。前記乳酸ポリマー85重量%
と可塑剤ATBC15重量%との混合物100重量部
に、耐ブロッキング剤として平均粒径12nmのアエロ
ジル200を0.5重量部、滑剤ニュートロンS0.5
重量部を表2に示す割合で添加して、実施例1と同様に
ペレットを得た。さらに該ペレットを熱処理し、フィル
ム成形をした。試験結果を表2に示す。該乳酸ポリマー
はLー乳酸比率が60%と低く、非晶性のため熱処理効
果がなく、成形機内の樹脂の供給が不安定なために成形
加工性が不安定で厚みと巾の均一なフィルムが得られな
かった。
【0033】比較例 2〜3 〔可塑剤の種類〕製造例2で得られたL−乳酸ポリマー
B85重量%と可塑剤、脂肪酸エステル系例えばステア
リン酸エチル、又は脂肪族二塩基酸エステル系例えばア
ジピン酸イソデシル15重量%との混合物100重量部
に、耐ブロッキング剤アエロジル200を0.5重量
部、滑剤としてニュートロンSを0.5重量部をリボン
ブレンダーで混合後、実施例2と同様にペレットを得
た。更に、該ペレットを熱処理し、フィルムを成形し
た。得られたフィルムは、可塑剤がステアリン酸エチル
の時は、ヘイズが60%と曇っており、透明性が劣って
いた。また、アジピン酸イソデシルは剛軟度15mmと
柔軟性に効果がなかった。
【0034】比較例 4 〔耐ブロッキング剤中のSiO2の割合〕耐ブロッキン
グ剤のSiO2量を60%に変えた他は実施例2と同様
にして延伸フィルムを得た。得られたフィルムのヘイズ
は6%で透明性が悪かった。
【0035】比較例 5〜7 〔添加剤が含まれない時の延伸フィルム性能評価〕製造
例2で得られたL−乳酸ポリマーB、可塑剤ATBC、
耐ブロッキング剤、滑剤を表2に示す割合で添加して、
実施例1と同様に延伸フィルムを得た。試験結果を表2
に示す。比較例5は該ポリマーに可塑剤が含まれていな
い為、得られた延伸フィルムは硬い。比較例6は耐ブロ
ッキング剤が含まれていない為、得られた延伸フィルム
は耐ブロッキング性が悪い。比較例7は滑剤が含まれて
いない為、得られた延伸フィルムの滑り性が悪く実用性
に劣った。
【0036】比較例 8 〔耐ブロッキング剤の粒径による影響〕耐ブロッキング
剤粒径の範囲7〜50nmを超えた3μmに変えた他は
実施例2と同様にして延伸フィルムを得た。試験結果を
表2に示す。得られた延伸フィルムは透明性に劣ってい
た。
【0037】比較例 9〜10 〔ペレットの熱処理温度による影響〕製造例2で得られ
たL−乳酸ポリマ−B、可塑剤ATBC、耐ブロッキン
グ剤、滑剤を表2に示す割合で添加して、実施例2と同
様にリボンブレンダーで混合後、2軸押出機シリンダー
温度170〜210℃の条件にてペレット化した。該ペ
レットの熱処理を、本発明の熱処理温度範囲40〜65
℃外の、40℃未満の35℃と65℃を越えた70℃に
変えた他は実施例2と同様にTダイ押出機でシート化し
た。試験結果を表2に示す。比較例9は熱処理による結
晶化が不十分のため、ホッパー下部でペレット同士が粘
着し易くなり押出性が不安定になりやすく、また比較例
10は可塑剤がペレットから揮発し易くなり該表面に付
着して押出性が不安定になった。
【0038】実施例 7 〔耐熱性延伸フィルム〕製造例2で得られたL−乳酸ポ
リマーB、可塑剤ATBC、耐ブロッキング剤及び滑剤
を表1に示す割合で添加して、実施例1と同様に厚み
0.13mmのシートを得た。滑り性は22゜であっ
た。該フィルムを二軸延伸測定装置により、延伸温度5
0℃、延伸速度7mm/sec、延伸倍率2.5倍の条
件にて2軸延伸し、さらに延伸されたフィルムの熱固定
温度を120℃、熱固定時間を5分にて処理し、厚み
0.02mm延伸フィルムを得た。延伸フィルムの評価
結果を表1に示す。更に得られた延伸フィルムは120
℃加熱試験後における透明性を維持し、また収縮率も
0.5%と耐熱性が良好である。
【0039】比較例 11 実施例1のL−乳酸ポリマーAの変わりにポリプロピレ
ン樹脂を用いて、シリンダー温度を180〜230℃に
した他は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得
られた延伸フィルムは土壌分解性が悪く、3カ月後変化
が無かった。
【0040】実施例 8 〔成形物〕製造例2で得られたL−乳酸ポリマーB、可
塑剤としてアセチルクエン酸トリブチル(以下ATBC
と略記する)、耐ブロッキング剤として、平均粒径12
nm(日本アエロジル株式会社製;SiO2分99%以
上、商品名アエロジル200)、滑剤をニュートロンS
(日本精化(株)製)を表3に示す割合でリボンブレン
ダーで混合後、2軸押出機シリンダー設定温度170〜
210℃の条件にてペレット化した。該ペレットを50
℃のオーブンで熱処理し、(株)日本製鋼所JSW−7
5射出成形機、シリンダー温度160〜200℃の条件
にて溶融し、設定温度20℃の金型に充填し、厚み1m
mの平板成形物を得た。成形物の評価結果を表3に示
す。
【0041】尚、成形物の物性測定条件でフィルム物性
と異なる項目は以下の通りである。 1)霞度は厚み1mmの時のヘイズ値を求めた。 2)柔軟性はシート曲げ弾性率を求めた。 4)5)6)はフィルム物性と同様な方法で測定した。
【0042】実施例 9 製造例2で得られたL−乳酸ポリマーB、可塑剤ATB
C、耐ブロッキング剤及び滑剤を表3に示す割合で添加
して、実施例8と同様にペレット化と熱処理し、日精樹
脂工業(株)IBA型射出ブロー成形機、シリンダー温
度160〜200℃の条件にて溶融し、コアー温度40
℃に設定し、ブローエアー圧力9kg/cm2で、内容
積約200cc、肉圧約1mmの六角柱状の容器を得
た。容器の評価結果を表3に示す。曲げ弾性率の測定
は、容器の一部から平板部を切削し測定した。
【0043】比較例 12〜13 〔可塑剤無添加時の成形物〕実施例8〜9の組成物で可
塑剤を含まない他は、実施例8〜9と同様にペレット化
と熱処理し、射出成形物と射出ブロー成形物を得た。得
られた成形物の評価結果を表3に示す。成形物は硬く、
柔軟性に劣っていた。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【発明の効果】本発明の組成物は、成形加工性がよく、
汎用樹脂であるポリプロピレン樹脂等を成形する成形機
で効率よく成形が可能であり、得られた成形物及びフィ
ルムは、透明性、柔軟性、さらに耐ブロッキング性及び
滑り性に優れており、化粧品、日用品、雑貨品等の容
器、ボトル、シート、フィルム、積層品、包装材料等に
好適に利用される。更に、本発明のL−乳酸ポリマー組
成物から作られた延伸フィルムは耐熱性に優れているも
のも得られ、耐熱用途のフィルム、積層品、包装材に利
用される。これらは、廃棄物として地中に埋設されたり
海や川に投棄された場合、紙や木等の天然物と同じよう
に自然環境下で比較的短い期間の内に無害な水と炭酸ガ
スに分解する生分解性を有している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 味岡 正伸 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三 井東圧化学株式会社内 (72)発明者 井門 修平 愛知県名古屋市南区丹後通2丁目1番地 三井東圧化学株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−247245(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 5/18 C08L 67/04

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 L−乳酸比率が75%以上であるL−乳
    酸ポリマー80〜95重量%と多価アルコールエステル
    及びヒドロキシ多価カルボン酸エステルからなる群より
    選ばれた可塑剤5〜20重量%の混合物100重量部
    に、SiO2を90%以上含有し、平均粒径7〜50n
    mの耐ブロッキング剤0.1〜5重量部及び滑剤0.1
    〜2重量部配合したことを特徴とするL−乳酸ポリマー
    組成物。
  2. 【請求項2】 耐ブロッキング剤のSiO2含有率が9
    5%以上である請求項1記載のL−乳酸ポリマー組成
    物。
  3. 【請求項3】 滑剤が炭素数17〜22の脂肪酸アミド
    である請求項1記載のL−乳酸ポリマー組成物。
  4. 【請求項4】 L−乳酸ポリマーの平均粒径が15〜1
    00μmである請求項1記載のL−乳酸ポリマー組成
    物。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のL−乳酸ポリマー組成物
    を40〜65℃で加熱処理することにより結晶化し、次
    いで成形することにより得られるL−乳酸ポリマー成形
    物。
  6. 【請求項6】 成形物の霞度(ヘイズ)が厚み1mm当
    たり4%以下である請求項5記載のL−乳酸ポリマー成
    形物。
  7. 【請求項7】 成形が射出成形又はブロー成形であるこ
    とを特徴とする請求項5記載のL−乳酸ポリマー成形
    物。
  8. 【請求項8】 成形物がシートである請求項5記載のL
    −乳酸ポリマー成形物。
  9. 【請求項9】 請求項8記載のシートを延伸することに
    より得られる、L−乳酸ポリマー延伸フィルム。
  10. 【請求項10】 フィルムの霞度(ヘイズ)が厚み30
    0μm当たり2%以下である請求項9記載のL−乳酸ポ
    リマー延伸フィルム。
  11. 【請求項11】 請求項9記載のL−乳酸ポリマー延伸
    フィルムを更に120〜130℃で熱処理して得られ
    る、熱収縮率が、120℃に加熱した際、1%未満であ
    る非収縮性L−乳酸ポリマー延伸フィルム。
  12. 【請求項12】 請求項9記載のL−乳酸ポリマー延伸
    フィルムを更に35〜60℃で熱処理して得られる、熱
    収縮率が、120℃に加熱した際、10%〜45%であ
    る収縮性L−乳酸ポリマー延伸フィルム。
  13. 【請求項13】 L−乳酸比率が75%以上である平均
    粒径15〜100μmのL−乳酸ポリマーに多価アルコ
    ールエステル及びヒドロキシ多価カルボン酸エステルか
    らなる群より選ばれた可塑剤と、SiO2を90%以上
    含有し、平均粒径7〜50nmの耐ブロッキング剤と滑
    剤を混合、造粒し、更に40〜65℃で加熱処理により
    結晶化した後、150〜230℃でシートを成形し、次
    いで該シートを温度35〜60℃、倍率1.5〜4倍に
    延伸し、更に120〜130℃の温度で熱処理すること
    を特徴とする非収縮性L−乳酸ポリマー延伸フィルムの
    製造方法。
  14. 【請求項14】 L−乳酸比率が75%以上である平均
    粒径15〜100μmのL−乳酸ポリマーに多価アルコ
    ールエステル及びヒドロキシ多価カルボン酸エステルか
    らなる群より選ばれた可塑剤と、SiO2を90%以上
    含有し、平均粒径7〜50nmの耐ブロッキング剤と滑
    剤を混合、造粒し、更に40〜65℃で加熱処理により
    結晶化した後、150〜230℃でシートを成形し、次
    いで該シートを温度35〜60℃、倍率1.5〜4倍に
    延伸し、更に該延伸温度で熱処理することを特徴とする
    収縮性L−乳酸ポリマー延伸フィルムの製造方法。
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