JP5053607B2 - 射出成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリL-乳酸から成る樹脂に機能性フィラーを配合した樹脂からなり、且つ透明である射出成形品に関する。
PETボトルは容器革命と言われるほど世界中に普及し、醤油、食用水、飲料水、ソフトドリンク、更にはビールにまで普及しており、市民生活や流通に大いに貢献している。なおPETボトルを初めプラスティックの発展は人類の生活や産業活動への大きな貢献を行なっている一方で、近年石油資源の枯渇や地球規模の温暖化等の環境問題を引き起こす一要因としても注目されるようになってきている。
この問題の解決策の一つとして、再生可能な資源である植物資源からのプラスティックの開発が行なわれている。ポリ乳酸樹脂は、トウモロコシやジャガイモなどの再生可能な原料から得られる生分解性樹脂の一種で、優れた透明性と硬度を有し、現在食品用容器などに広く使用されているポリスチレンに似た物性を有する。
容器分野ではPETボトルが最も多く使用されており、この分野でも生分解性樹脂への展開が資源・廃棄物問題を解決するキーワードとして期待されている。しかし現在、その期待とはうらはらに、ボトル用途の開発は進んでいない。
ポリ乳酸は結晶性のポリマーであるが、結晶化速度が遅く温度安定性がない。そのために射出成形の手段によってポリ乳酸の成形品を作製する際には、十分に冷却させてから金型から取り出す必要がある。さもないと製品が変形してしまうが、そのために結果として成形サイクルが長くなってしまう。このように結晶化が不十分となり易く、成形時の冷却工程に長時間を有することから、ポリ乳酸のポリマーの使用は実用的でないという欠点があった。
現在使用されているポリ乳酸樹脂はTm=155℃で、結晶化度が約16%程度であり、結晶化による成形サイクルの改善は期待できない。そこでポリ乳酸を原料として用いた容器や射出成形品を開発するには、成形性を維持するための溶融粘度挙動の改善を行い、併せて結晶性の増大と結晶粒子径の微小化という問題を解決する必要がある。
また結晶化速度を上げるために結晶核剤を添加するという方法もあるが、結晶核剤を使用すると得られる製品が不透明となってしまうので、透明性が要求される飲料用容器や食品用カップにはこの方法は不適切である。更に結晶核剤を添加して得られた製品は流動性が悪く、飲料カップなどの肉厚の薄い製品を成形することは困難である。
なおポリ乳酸樹脂を用いた容器を作製した例として、乳酸系ポリマーとポリε-カプロラクトンを混合し、その組成物にSiO2を含有する結晶性無機粉末を混合し、成形物を製造した報告がある(特許文献1)。この成形物には結晶性無機粉末である核剤と共に、分散剤としてポリε-カプロラクトンが添加されているために、耐熱性や耐衝撃性において優れている。しかし、特許文献1の容器は食品トレーなどの用途を想定しているために透明性の検討は行われておらず、飲料用の容器など、透明性が求められる容器には適していない。
特開平8‐193165号公報
よって上記の問題点を解決するために、ポリ乳酸樹脂の流動性を向上させると共に結晶化度を上げることにより、実用的な成形サイクルで、透明な製品を効率良く生産できるポリ乳酸樹脂の射出成形品を開発することが、本発明の課題である。
上記課題を解決するために本発明は、ポリL-乳酸から成る樹脂に2〜4個の水酸基を持つ化合物にD-乳酸を30〜50分子グラフト重合させた機能性フィラーを配合することにより、透明性を維持したまま成形サイクルが短い射出成形品(ただし、開口部を熱処理したものを除く。)を提供するものである。
ポリL-乳酸から成る樹脂に機能性フィラーを配合してなる本発明の射出成形品は、透明性を保ったままで樹脂の流動性や結晶化度が改善されている。よって本発明に従って機能性フィラーを配合することにより、成形サイクルを短縮することが可能であり、且つ透明な射出成形品を効率良く製造することができる。
本発明者らは鋭意検討を行ない、L体含有率が高く、結晶性が高いポリL-乳酸からなる樹脂に、それと強く相互作用する2〜4個の水酸基を持つ化合物にD-乳酸を30〜50分子グラフト重合させた機能性フィラーを添加することにより、透明なまま、ポリL-乳酸からなる樹脂の流動性を向上させることに成功した。また機能性フィラーを添加することにより結晶化速度も速くなるために、成形サイクルも短縮できた。また結晶化によりボトルが不透明化することを防ぐために、機能性フィラーの性状や添加率等を最適化した。更に結晶粒子のサイズを極限まで小さくし、且つ結晶化度を限界まで上げることにより、透明性を保ったままで流動性を向上させ且つ結晶化度を上げて、実用的な短い成形サイクルで効率良く容器などの製品を生産することを可能としたものである。
よって上記で述べたように本発明は、ポリL-乳酸から成る樹脂に機能性フィラーを配合した樹脂からなり、且つ透明であることを特徴とする射出成形品を提供するものである。下記の実施例においてはポリL-乳酸から成る樹脂として、三井化学レイシアH440と三井化学レイシアH400を使用しており、これらの樹脂を使用することは本発明において好ましい態様である。しかし本発明の目的に使用されるポリL-乳酸から成る樹脂はそれらに限定されるものではなく、その他にはNatureWorks社 NatureWorks 7000D, 7032Dなどを使用することができる。
なお下記の実施例において、機能性フィラーを配合しないブランクと比較して、機能性フィラーを配合した本発明の樹脂の射出成形品は、成形サイクルが明らかに短縮していることが示された。よって本発明は製造効率の観点から、実用的なポリL-乳酸から成る樹脂の射出成形品を与えるものである。流動特性についても、ポリL-乳酸から成る樹脂の単独と比較して、機能性フィラーを配合した場合には、温度の上昇に伴って急激に流動性が上昇する温度が認められ、流動性が向上していることが示された。
なお前記ポリ乳酸が60,000〜80,000の数平均分子量を有することは、本発明の好適な態様である。この範囲の数平均分子量を用いた場合に、中空容器用プリフォームなどの射出成形品を好適に作製することが可能である。
前記機能性フィラーは、2〜4個の水酸基を持つ化合物にD-乳酸を水酸基1個あたり30〜50分子グラフト重合させたものである。中でも前記機能性フィラーにおいて、D-乳酸を50分子グラフト重合させることは最も好適である。本発明においては機能性フィラーに含まれているD-乳酸と樹脂のL-乳酸とのステレオコンプレックスの形成により熱結晶化を可能とし、耐熱性などの目的とする効果を得ている。下記の実施例において示差走査熱量計を用いて等温結晶化挙動について検討をした。その結果、D-乳酸を50分子程度グラフト重合させた機能性フィラーを添加した樹脂においては、フィラーを添加しない樹脂と比較して、等温での結晶化ピークまでの時間が短くなることから、機能性フィラーを添加すると結晶化速度が速くなることが確認された。
なおペンタエリスリトールにD-乳酸の重合量が10分子以下の機能性フィラーとH400との配合では、ステレオコンプレックスの形成が示差走査熱量計(DSC)測定において確認できなかった。更にD-乳酸の重合量が50分子以上であると、ステレオコンプレックスそのものの結晶が大きくなり、そこから更にホモポリ乳酸が結晶化されることになるので不透明になる傾向があり、好ましくない。
また前記機能性フィラーにおける前記化合物が多糖又はオリゴ糖から選択される糖類であることは本発明において好ましく、前記オリゴ糖が5炭糖であることは特に好ましい。好適な糖類の具体例としてグルコース、フルクト−スなどの単糖類、スクロースなどの2糖類、澱粉やシクロデキストリンなどの多糖類を挙げることができる。
更に前記機能性フィラーにおける前記化合物がシリカナノ粒子からなる無機化合物であること、および前記化合物がポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールから選択される有機化合物であることも本発明において好ましい態様である。前記化合物がポリエチレングリコールである場合、前記ポリエチレングリコールの分子量が200から1000の範囲にあることは特に好ましい。
更に本発明において、前記機能性フィラーの配合量が前記ポリL-乳酸に対して5〜20重量%であることは好ましく、特に10重量%であることは特に好ましい。機能性フィラーを30重量%以上添加すると、射出成形時の粘度が低くなり、二次成形の加工性にも問題が生じる。なおDSCにより、フィラーの配合量が5重量%、10重量%、20重量%において、フィラーと乳酸樹脂の間におけるステレオコンプレックスの形成が確認されている。
更に本発明の好適な態様において、示差走査熱量計(DSC)測定において、ポリ L-乳酸から成る樹脂の単体での融点以外に融点ピークを1以上有することを特徴とする。ポリ L-乳酸から成る樹脂の単体での融点は145℃から170℃程度であるが、下記の実施例に示すように、機能性フィラーを配合することにより、180℃から200℃程度の高い温度でも1ないし2個の融点ピークが認められた。
ポリ L-乳酸から成る樹脂の単体よりも高温において認められるこのピークは、樹脂のL-乳酸と機能性フィラーのD-乳酸がステレオコンプレックスを形成していることを示している。そして形成されたステレオコンプレックスはポリ乳酸樹脂の結晶化挙動に影響を及ぼして結晶化の促進に寄与しており、よって成形サイクルの短縮を達成することができる。
本発明の射出成形品は種々の形態・形状をとることが可能であり、好ましくは本発明の射出成形品は、飲料用の容器として使用される中空成形品である。また本発明によればポリL-乳酸から成る樹脂の流動性を向上させることができるため、例えば飲料カップなどの肉厚が薄くて細長い形状の容器を射出成形で作製することができる。しかし細長い形状の飲料カップは単なる一例であり、その形態・形状は特に限定されるものではない。
更に本発明は中空成形品を作製するためのプリフォームであることも可能である。そして、プリフォームをブロー成形してなる中空成形品を作製するという態様も、本発明の範囲内である。なおプリフォームをブロー成形する方法は、2軸延伸ブロー成形法やダイレクトブロー成形法などが本技術分野で良く知られている。ブロー成形の方法としては2軸延伸ブロー成形法が好適であるが、これに限るものではない。
以下の実施例において本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1:材料の作製方法)
2軸押出機にて機能性フィラーを添加したペレットを作製した。なおポリ乳酸樹脂として、三井化学(株)の(1)レイシアH400、および(2)レイシアH440を使用した。機能性フィラーとしては、(1)4官能基をもつペンタエリスリトールにD-乳酸を50分子グラフト重合させたO4−50、および(2)2官能基をもつPEG600に50分子グラフト重合させたO2−50を使用した。
レイシアH400とレイシアH440のペレットを単独または6:4の重量比でドライブレンドして混ぜ合わせ、更に機能性フィラーを10重量%になるように混ぜ合わせた。上記で混ぜ合わせた材料をスクリューL/D=43(スクリュー径φ35.5mm)の二軸押出機を用い、メインフィード口より一括投入し、溶融混練させ、ダイスより押出されたストランドを冷却水槽に通して固化させた後、ペレタイザーにて切断し、ペレットを作製した。本実施例においてはメインフィード口より一括投入した。なお、機能性フィラーをサイドフィード口より別に投入する方法や、液添ポンプなどを利用し、メインフィード口やそれ以外のフィード口より投入する事も可能である。
(実施例2:取り出し温度の検討)
ポリ乳酸はガラス転移点が58℃と低いため、ある程度冷却に時間をかけて製品を取出さないと変形を起こしてしまう。そこで、変形を起こさない取り出し温度を検討するために、取り出し温度と寸法の変化の関係について検討を行った。なおレイシアH440を材料として用いて作製した400ml容器用プリフォーム(製品重量26g、肉厚4.28mm)を、サンプルとして使用した。射出時間が11秒、樹脂温度が184℃、金型温度(設定値)が18℃という条件で射出成形を行い、取り出し温度と全高変化率の関係を検討した(図1)。図1より、取り出し温度が高いと全高の収縮が起こってしまうことが認められた。更に全高変化率の許容範囲を±1%以内とし、その基準から70℃以下を適切な取り出し温度とした。
(実施例3:射出成形の成形サイクルとヘイズの検討)
ポリ乳酸(PLA)樹脂として、三井化学レイシアH440と三井化学レイシアH400を使用した。一方機能性フィラーには、4官能基を持つペンタエリスリトールにD-乳酸を50分子グラフト重合させたもの(O4−50)と、2官能基を持つポリエチレングリコール(分子量600)にD-乳酸を50分子グラフト重合させたもの(O2−50)を使用した。そしてPLAにその機能性フィラーを10重量%添加した二軸押出機で作製したペレットを使用し、射出成形機にてプリフォームを作製した。そして機能性フィラーなしのブランクと比較し、成形サイクルが向上するか、検討を行った。更にヘイズの変化についても検討を行った。
なお本実施例においては、成形機として(株)名機製作所 M−100C−DMを用いて、肉厚が3.7mmである500ml飲料用プリフォームを1個取りにて作製し、成形サイクルとヘイズの検討を行った。なおヘイズの測定においては、日本電色工業 濁度計NDH2000を用いた。製造時の成形サイクルとヘイズを検討した結果を以下の表1に示す。
表1に示すように、ポリ乳酸に機能性フィラーを10%添加したところ、成形サイクルが向上した。すなわち全高を95mm付近の寸法で取り出すためには、フィラー未添加品(ブランク:表1の右端のカラム)では、成形サイクルを28.4秒必要としたが、フィラーを添加したものは、22.2秒から22.8秒のサイクルで済んでおり、5.6秒〜6.2秒の短縮が図れた。更に機能性フィラーを添加してもヘイズに大きな低下はなく、透明性に問題はなかった。
肉厚が3.0mmである180mlの化粧品用プリフォーム製品も製造し、製造時の成形サイクルとヘイズを同様に検討した。結果を表2に示す。
表2に示すように、フィラー未添加品(ブランク:表2の左から3番目と4番目のカラム)では、成形サイクルを26.1秒以上必要としたが、フィラーを添加したものは、23.7秒と24.5秒のサイクルで済んでおり、やはり成形サイクルの短縮が図れた。なお機能性フィラーを添加しても、やはりヘイズに大きな低下はなかった。
更に取り出し温度による比容積の変化について検討を行った。(株)東洋精機製作所PVTテストシステムを用いて、ポリ乳酸樹脂を加熱した際の温度と比容積の関係を測定した結果を図2に示す。図2において、レイシアH440単独の樹脂のデータを四角で、レイシアH440に機能性フィラー(O4−50)を添加した樹脂における結果を三角で示す。なお本検討において、50MPaの一定圧力とした。
図2において横向きの点線の矢印で示されるように、機能性フィラー(O4−50)を添加することにより、同じ比容積を得ることができる温度は10℃から20℃上昇することが認められた。比容積が低いことは、樹脂の密度が高くて該樹脂が固いことを示している。よって図2の結果は、機能性フィラーの添加によって樹脂が固化する温度が高くなることを示している。それにより機能性フィラーを配合した樹脂は、機能性フィラーを配合していない樹脂と比較して変形することなく高温で取り出すことができるので、加熱した樹脂を冷却する時間を短縮することが可能であり、ひいては成形サイクルを向上させることができる。
(実施例4:流動性の検討)
三井化学レイシアH400単独の樹脂と、機能性フィラーとしてO2−50あるいはO4−50をレイシアH400に添加した樹脂において、加熱による流動性の変化を検討した。流動性を測定する装置としては島津製作所のフローテスタCFT-500Cを用いた。測定条件は、開始温度が150℃、昇温速度が10℃/分、ピストン荷重が10.0kgf/cm2、ノズルの穴径が1.0mm、長さが2.0mmであった。
各温度における樹脂の流動性をストロークポジションで示したグラフを図3に示す。図3において白四角がレイシアH400単独の樹脂におけるストロークポジション(mm)、黒三角がレイシアH400に2官能基を持つポリエチレングリコール(分子量600)にD-乳酸を50分子グラフト重合させたもの(O2−50)を配合した樹脂におけるストロークポジション(mm)、黒丸がレイシアH400に4官能基を持つペンタエリスリトールにD-乳酸を50分子グラフト重合させたもの(O4−50)を配合した樹脂におけるストロークポジション(mm)を、それぞれ示す。図3におけるストロークポジションとは、各温度において樹脂に一定圧力(10.0kgf/cm2)をかけた際に、樹脂が押し出されることによるピストンの降下量を示す値である。樹脂の流動性が高い場合には、一定の圧力をかけた場合にピストンが降下する距離が大きくなるので、ストロークポジションの値が大きくなる。
図3より、レイシアH400にO4−50を配合した樹脂においては、温度の上昇により流動性が上昇する変曲点が約180℃で認められた。更にレイシアH400にO2−50を配合した樹脂においては、温度の上昇により流動性が上昇する変曲点が約190℃で認められた。一方レイシアH400単独の樹脂においては、200℃を超えても変曲点は認められなかった。よってこれらのデータより、機能性フィラーを配合することにより変曲点は低下し、樹脂の流動性が向上していることが示された。
実際にプリフォームを射出成形する際にも、ポリ乳酸樹脂単独と比較して、機能性フィラーを配合した樹脂においては射出圧力が低下していた。前出の表2に示すように、ポリ乳酸樹脂単独(H440, H400/H440)において射出圧力は57MPaであった。一方機能性樹脂(O4−50)を10%配合することにより、射出圧力は43MPaに低下した。この結果も、機能性フィラーを添加することにより樹脂の流動性が向上していることを示唆するものである。
(実施例5:透明性の検討)
機能性フィラーを添加した本発明のプリフォームと、従来から存在する結晶核剤を添加した材料で成形したプリフォームにおいて、透明性を比較した。両者の写真を図4に示す。なお図4の左側は、PLA樹脂レイシアH400に4官能基を持つペンタエリスリトールにD-乳酸を50分子グラフト重合させた機能性フィラー(O4−50)を添加した本発明のプリフォームであり、図4の左側は、結晶核剤を添加した材料で作製した従来品のプリフォームを示す。この結果から本発明のプリフォームは、結晶核剤を添加した材料から作製したプリフォームよりも、透明性において明らかに優れていることが判る。
(実施例6:結晶化速度の検討)
等温結晶化挙動について検討するために、示差走査熱量計(DSC)を用いた。190℃で加熱溶融させ、100kgf/cm2でプレスし、水冷にて急冷することにより、測定サンプルを作製した。測定条件は以下の通りである。
1) 30℃で1分間維持する。
2) 30℃から設定温度(90℃, 100℃, 110℃, 120℃, 130℃)へ、100℃/分で加熱する。
3) 設定温度を維持し、結晶化ピーク温度までの時間を測定(昇温時測定)する。
4) 設定温度から200℃へ、300℃/分で加熱する。
5) 200℃を3分間維持する。
6) 200℃から設定温度へ、300℃/分で冷却する。
7) 設定温度を維持し、結晶化ピーク温度までの時間を測定(降温時測定)する。
ポリL-乳酸樹脂(レイシアH440)単独の系と、ポリL-乳酸樹脂(レイシアH440)に機能性フィラーを10%添加した系において、等温結晶化挙動を検討した結果を図5に示す。なおこの実験系において機能性フィラーとして、4官能基を持つペンタエリスリトールにD-乳酸を50分子グラフト重合させたもの(O4−50)を用いた。図5において、黒抜きの菱形はレイシアH440にO4−50を添加した系における昇温時の結果を、白抜きの菱形はレイシアH440単独の系における昇温時の結果を、黒抜きの四角はレイシアH440にO4−50を添加した系における降温時の結果を、白抜きの四角はレイシアH440単独の系における降温時の結果を、それぞれ示す。
なお図5において縦軸は、等温結晶化のピーク時間(分)を示す。すなわち図5において、グラフの下側にプロットされていることは一定温度での結晶化時間が短いことを、グラフの上側にプロットされていることは一定温度での結晶化時間が長いことを示す。機能性フィラーを10%添加した系(黒抜き)と樹脂単独の系(白抜き)を比較すると、昇温時(菱形)においても降温時(四角)においても、殆どすべての設定温度において、機能性フィラーの添加により等温結晶化のピーク時間は短くなった。この結果は機能性フィラーの添加により、結晶化速度が速くなることを示している。
(実施例7:DSC測定によるステレオコンプレックス形成の検討)
PLA樹脂レイシアH400とレイシアH440を6:4の比でブレンドした材料を用いて、それらの材料単独の系と該材料に機能性フィラーを10%添加した系を材料とし、500ml飲料用プリフォームを製造した。そしてそのプリフォームにおいて、示差走査熱量測定(DSC)を検討した。測定器はPerkin-Elmer社製のPlyris-DSC7を使用した。測定温度は機能性フィラーを添加した系では30℃→250℃、機能性フィラーを添加しない系では30℃→190℃を採用した。昇温速度は10℃/分とした。機能性フィラーとしては、PEG600またはペンタエリスリトールにD-乳酸を50分子グラフト重合させたものを使用した。機能性フィラーの添加量は10重量%とした。DSC測定の結果を表3に示す。
表3に示されるように、レイシアH400とレイシアH440をブレンドした材料の単独の系では157.8℃(Tm1)と166.1℃(Tm2)にのみ融点が認められた。なおレイシアH400の融点は160℃以上なので後者はレイシアH400に由来する融点であり、レイシアH440の融点は160℃以下なので前者はH440に由来する融点であると考えられる。一方、PEG600にD-乳酸を50分子グラフト重合させた機能性フィラーを添加した系では、その他に1個の融点(Tm3)が、ペンタエリスリトールにD-乳酸を50分子グラフト重合させた機能性フィラーを添加した系では、その他に2個の融点(Tm3、Tm4)が認められた。
(実施例8:機能性フィラー添加量の検討)
H400に有機系フィラーを添加した材料と、H440に有機系フィラーを添加した材料を二軸押出機にてペレットにして、示差走査熱量測定(DSC)を検討した。DSCの測定方法は実施例7と同じである。機能性フィラーとしては、Aerosilシリカ300、PEG600、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールに、D-乳酸を10分子、30分子または50分子グラフト重合させたものを使用した。H400における結果を表4に、H440における結果を表5に、それぞれ示す。
表4に示されるように、レイシアH400単独の系では166.3℃(Tm1)にのみ融点が認められた。一方、Aerosilシリカ300、PEG600、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールにD-乳酸を30分子又は50分子グラフト重合させた系では、その他にも1ないし2個の融点(Tm2、Tm3)が認められた。
更に表5に示されるように、レイシアH440単独の系では147.3℃にのみ融点が認められた。一方、Aerosilシリカ300、PEG600、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールにD-乳酸を30分子又は50分子グラフト重合させた系では、その他にも1又は2の融点が認められた。またペンタエリスリトールにおいては、D-乳酸を10分子グラフト重合させた系においても、レイシアH440単独の融点の他に1の融点が認められた。
これらのDSCの測定結果は、L-乳酸とフィラー中のD-乳酸がステレオコンプレックスを形成していることを示している。そして形成されたこのステレオコンプレックスがポリ乳酸樹脂の結晶性の向上に影響し、結晶化速度を速くして成形サイクルの向上に寄与していると考えられる。
ポリL-乳酸から成る樹脂に2〜4個の水酸基を持つ化合物にD-乳酸を30〜50分子グラフト重合させた機能性フィラーを配合した樹脂からなる本発明の射出成形品(ただし、開口部を熱処理したものを除く。)は良好な結晶性を有し、結晶化の速度が速いために、透明性を保ったままで成形サイクルを向上させることができる。よって製品の透明性を損なう核剤を使用しなくても、透明性が高いポリ乳酸樹脂の射出成形品を効率良く生産することができる。本発明により従来のポリ乳酸樹脂の射出成形品、例えば中空容器やプリフォーム、の欠点を克服することが可能であり、本発明の技術は環境に配慮した容器であるポリ乳酸の射出成形品の実用化に資するものである。
図1はレイシアH440を材料として作製したプリフォームにおいて、取り出し温度による寸法変化率を測定したグラフである。 図2はレイシアH400単独の系と機能性フィラーを添加した系において、それらの樹脂を加熱した際の温度と比容積の関係を示したグラフである。 図3はレイシアH400単独の系と機能性フィラーを添加した系において、加熱による樹脂の流動性の変化をストロークポジションで示したグラフである。 図4はレイシアH400に機能性フィラーを添加した本発明のプリフォームと、従来品のプリフォームにおいて透明性を比較した写真である。 図5はレイシアH440において、機能性フィラー(O4−50)の添加が等温結晶化挙動に及ぼす影響を検討したグラフである。

Claims (15)

  1. ポリL-乳酸から成る樹脂に2〜4個の水酸基を持つ化合物にD-乳酸を30〜50分子グラフト重合させた機能性フィラーを配合した樹脂からなり、且つ透明であることを特徴とする射出成形品(ただし、開口部を熱処理したものを除く。)
  2. 前記ポリL-乳酸が60,000〜80,000の数平均分子量を有することを特徴とする請求項1記載の射出成形品。
  3. 前記化合物が多糖又はオリゴ糖から選択される糖類であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の射出成形品。
  4. 前記オリゴ糖が5炭糖であることを特徴とする請求項3記載の射出成形品。
  5. 前記化合物がシリカナノ粒子からなる無機化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の射出成形品。
  6. 前記化合物がポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールから選択される有機化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の射出成形品。
  7. 前記機能性フィラーが、4個の水酸基を持つペンタエリスリトールにD-乳酸を50分子グラフト重合させたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の射出成形品。
  8. 前記機能性フィラーが、2個の水酸基を持つポリエチレングリコールにD-乳酸を50分子グラフト重合させたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の射出成形品。
  9. 前記フィラーが2種以上の機能性フィラーをブレンドしてなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の射出成形品。
  10. 前記ポリエチレングリコールの分子量が200から1000の範囲にあることを特徴とする請求項記載の射出成形品。
  11. 前記機能性フィラーの配合量が前記ポリL-乳酸に対して5〜20重量%であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の射出成形品。
  12. 前記機能性フィラーの配合量が前記ポリL-乳酸に対して10重量%であることを特徴とする請求項11記載の射出成形品。
  13. 示差走査熱量計測定において、ポリL-乳酸から成る樹脂の単体での融点以外に融点ピークを1以上有することを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の射出成形品。
  14. 前記射出成形品が2軸延伸ブロー成形用のプリフォームであることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1つの請求項記載の射出成形品。
  15. 前記射出成形品がカップであることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1つの請求項記載の射出成形品。
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