JP3472072B2 - 毛髪成長期延長剤 - Google Patents

毛髪成長期延長剤

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JP3472072B2
JP3472072B2 JP09153397A JP9153397A JP3472072B2 JP 3472072 B2 JP3472072 B2 JP 3472072B2 JP 09153397 A JP09153397 A JP 09153397A JP 9153397 A JP9153397 A JP 9153397A JP 3472072 B2 JP3472072 B2 JP 3472072B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、毛髪成長期延長剤
に関する技術分野に属する発明である。より詳細には、
毛髪伸長の促進をすることによって毛周期における成長
期を維持又は延長する毛髪成長期延長剤に関する技術分
野に属する発明である。
【0002】
【従来の技術】高齢化社会、ストレス社会といわれる現
代社会では、頭部毛髪が様々な原因により脱毛の危機に
さらされる機会がますます多くなってきている。これに
対応して、より優れた「育毛料」を提供すべく様々な試
みがなされている。育毛料が毛髪に与える効果として主
なものに、発毛誘導効果(発毛促進効果,成長期誘導
効果),毛髪を太くする効果,毛髪成長期延長効
果,5α−レダクターゼ阻害効果,血行促進効果,
殺菌効果,フケ防止効果,保湿効果,抗酸化効
果等の効果が挙げられる。
【0003】しかしながら、前記のように種々の試みが
なされているにもかかわらず、従来の育毛料では、その
脱毛防止,発毛効果等の育毛作用は必ずしも十分なもの
ではなかった。これはおそらく脱毛の原因がさまざまで
あり、また発毛の機構も非常に複雑であるためと考えら
れている。今まで提供されている「育毛料」は、脱毛を
比較的大雑把な概念、言い換えれば漫然と「脱毛」とい
う現象のみを捉えて開発されており、そのメカニズムに
まで突っ込んで着目して開発されたものは決して多くな
い。
【0004】その大きな理由が、これらのメカニズムに
着目した育毛効果を簡便に検定することが可能な育毛薬
剤検定方法が十分に提供されていなかったという面を否
定できないことである。特に上記の毛髪成長期延長効
果を検定する育毛薬剤検定方法の確立は難しく、結果と
してこれまで提供されてきた育毛料は、毛周期の成長期
へと毛髪を誘導して育毛する上記発毛誘導効果に着目
したものが多かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者はin
vitroで行う簡便な上記の毛髪成長期延長効果を検定
する育毛薬剤検定方法を確立し、その育毛薬剤検定方法
を用いて上記の毛髪成長期延長効果を有する成分を有
効成分とする毛髪成長期延長剤を見出すことを目指し
た。
【0006】本願は、その一連の課題のうち、特に上記
の毛髪成長期延長効果を有する成分を見出し、これを
有効成分とする毛髪成長期延長剤を提供することをその
課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、種々の物質
における上記の毛髪成長期延長効果を有する成分につ
いて、本発明者が見出した育毛薬剤検定方法を用いて鋭
意検討したところ、コリアンダー等のコエンドロ属に属
する植物の抽出物に、所望する毛髪成長期延長効果が認
められることを見出し、本発明を完成した。
【0008】すなわち本発明は、コエンドロ属に属する
植物の抽出物を有効成分とする毛髪成長期延長剤を提供
する発明である。
【0009】前記したように、本発明において「毛髪成
長期延長剤」は、主に後述する育毛薬剤検定方法によっ
て少なくとも毛包上皮系細胞の分裂増殖活性を維持又は
促進することで毛髪の成長期を維持又は延長する効果を
有する成分を有効成分として配合した、特に上記の毛
髪成長期延長効果に着目した毛髪関連薬剤であり、いわ
ば「個別効能育毛料」としての特徴を有する。
【0010】この「毛髪成長期延長剤」は、例えば毛根
近傍における毛包上皮系細胞の増殖が緩徐であること等
により成長期が短くなって、相対的に成長期毛よりも休
止期毛の割合が多くなってしまうことに起因する脱毛症
に特に有効な薬剤である。また、他の個別効能を有する
育毛料と組み合わせて用いることにより、幅広くの脱毛
症においては,総合的かつ相乗的な効果を上げることが
可能である。すなわち、この「毛髪成長期延長剤」は、
前記した〜の効果を包含する概念を有する一般的な
育毛料用途とは一線を画する用途を有するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。本発明毛髪成長期延長剤は、セリ科(Umbel
liferae)のコエンドロ属(Coriandrum)に属する植物の抽
出物をその有効成分とする毛髪関連薬剤である。
【0012】このコエンドロ属に属する植物の具体的な
ものとしては、一般にはコエンドロと称されているコリ
アンダー サチバム(Coriandrum sativum L.)を挙げ
ることができるが、その抽出物が後述する毛周期におけ
る成長期を延長する作用を有する限りにおいて、それら
の変種,亜種等の他の種に属するものであってもよい。
【0013】また、このコエンドロ属に属する植物の抽
出物は、これらの植物の全草又は未熟果実から有利に得
ることが可能であるが、成熟果実から抽出することもで
きる(これらの抽出物の原料となる部分を全て総称し
て,「コエンドロ属に属する植物」ということもあ
る。)。
【0014】コエンドロ属に属する植物の抽出物を抽出
する際には、植物由来の抽出物を抽出する際に一般的に
用いられる方法で行うことができる。すなわち、前記し
たコエンドロ属に属する植物を、生のまま,又は必要に
より乾燥した後、そのまま若しくは粉砕して溶媒抽出に
供することにより得ることができる。この際用い得る溶
媒は、植物からその植物の成分を抽出する際に用いられ
る一般的な溶媒を用いることが可能であり特に限定され
ず、例えば熱水;メタノール,エタノール,イソプロパ
ノール,n−ブタノール等の低級アルコール;プロピレ
ングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価ア
ルコール;これらのアルコール類の含水物;n−ヘキサ
ン,トルエン等の炭化水素系溶媒等を挙げることができ
るが、メタノールやエタノール等の低級アルコールを抽
出溶媒として用いるのが好ましい。これらの低級アルコ
ールを抽出溶媒として用いる場合、得られる抽出液をそ
のまま本発明毛髪成長期延長剤の有効成分として配合す
ることができるが、抽出溶媒を一旦留去し,必要により
乾燥後に配合することも可能である。
【0015】このようにして得られるコエンドロ属に属
する植物の抽出物は、少なくともd−リナロール,ピネ
ン等の精油、ペトロセリン酸,油酸等の脂肪油、その他
タンパク質,糖,長鎖脂肪族アルデヒド等を一体として
含むことが確認されている。
【0016】本発明毛髪成長期延長剤の有効成分として
配合される抽出物の、後述する毛包上皮系細胞の増殖作
用はこれらのいずれの成分に由来するのかは定かではな
いが、上述のように全体として強い毛包上皮系細胞の増
殖作用を有している。なお、本発明毛髪成長期延長剤に
おいては、コエンドロ属に属する植物の抽出物の市販品
をも用いることができることは勿論である。
【0017】本発明毛髪成長期延長剤におけるコエンド
ロ属に属する植物の抽出物の配合量は、本発明毛髪成長
期延長剤の具体的形態等に応じて適宜選択し得るもので
あり、特に限定されるべきものではないが、概ね本剤全
体に対して抽出物の乾燥物として0.00005重量%
以上,20.0重量%以下、好ましくは同0.01重量
%以上,10.0重量%以下となるように配合される。
【0018】本剤全体に対して抽出物の乾燥物として
0.00005重量%未満の配合量では、本発明の所期
の効果である毛包系細胞増殖作用に基づく毛髪成長期延
長効果が十分に発揮されず好ましくなく、同20.0重
量%を超えて配合しても、配合量の増加に見合った効果
の増大を見込めないばかりではなく、製剤上支障をきた
す傾向が顕著となり好ましくない。
【0019】このようにして、コエンドロ属に属する植
物の抽出物を有効成分として配合した本発明毛髪成長期
延長剤は、優れた毛包上皮系細胞増殖作用に基づく毛髪
成長期延長効果を有し、前記したように、例えば毛根近
傍における毛包上皮系細胞の増殖が緩徐であること等に
より成長期が短くなって,相対的に成長期毛よりも休止
期毛の割合が多くなってしまうことに起因する脱毛症に
特に有効な薬剤である。また、他の個別効能を有する育
毛料と組み合わせて用いることにより、特定の脱毛症に
おいては相乗的な効果を上げることもまた可能である。
【0020】本発明毛髪成長期延長剤の所期の効果であ
る毛髪成長期延長効果における本質的作用である、毛周
期における成長期の維持又は延長作用を特定する手段
は、その特定法自体がその作用を特定するために妥当な
ものである限り特に限定されず、例えばin vitro にお
ける特定法も,in vivo における特定法も用いることが
できるが、その簡便性と有効性を考慮すると、in vitr
o における特定法を用いることが好ましい。
【0021】以下、このin vitro における特定法の一
つである、毛包系上皮培養細胞の増殖効果を検討するこ
とを特徴とする特定法について簡単に説明する(より具
体的には、実施例において記載する。)。すなわちこの
特定法は、「毛包上皮系培養細胞に無血清培地中で対象
物質を接触させることによる、その細胞の増殖活性の有
無及び/又は強弱を特定することにより、その対象物質
の毛周期における成長期を延長する効果を検定する育毛
薬剤検定方法」、すなわち毛髪の伸長に直接的に関係す
る毛包上皮系細胞に着目し、この培養細胞を用いること
によって、所望する毛周期における成長期を延長する効
果を特定する、in vitroの育毛薬剤検定方法である。
【0022】この育毛薬剤検定方法においては、動物
(ヒトを含む,以下同様である)の毛包上皮系細胞を単
離して得た培養細胞である「毛包上皮系培養細胞」に対
象物質を接触させて、その増殖の有無及び/又は強弱を
特定する。毛包上皮系細胞は、特に毛根近傍の外毛根鞘
細胞とマトリクス細胞等の細胞のことを指し、内側の毛
乳頭細胞は除外される。
【0023】毛周期における成長期は、まさにこの毛髪
が伸長している時期,すなわち毛包上皮系細胞が分裂し
て増殖している時期であり、同退行期及び休止期はこれ
が鈍化して休止する時期である。つまり、毛周期におけ
る成長期を延長させる物質は、その投与により毛包上皮
系細胞の分裂及び増殖活性を維持することによって、毛
髪が毛周期における退行期及び休止期への移行を防ぐ物
質、すなわち毛包上皮系細胞の増殖を促進又は維持し続
ける物質であることが結論付けられる。
【0024】なお、他のin vitroの育毛薬剤検定方法と
して、例えば対象物質を動物の毛乳頭細胞に作用させ
て、その増殖効果を判定する方法を挙げることもでき
る。
【0025】また、in vivo における特定法としては、
例えば「ヌードマウスに対象物質を投与し,このヌード
マウスの体表の発毛部位の状態を特定して,対象物質の
毛周期における成長期を延長する効果を検定する育毛薬
剤検定方法」、すなわち原則的には無毛であるが、その
体表に経時的にその発毛部位が移動する特徴的な発毛を
するヌードマウスにおける発毛部位の広さと発毛部位の
移動速度を特定することによって、毛周期における成長
期の長さを検定する方法等を挙げることができる。
【0026】本発明毛髪成長期延長剤が採り得る剤型
は、外皮に適用可能な剤型であれば特に限定されず、例
えば液状,乳液,軟膏等を選択可能である。また、本発
明毛髪成長期延長剤の形態は任意であり、例えばトニッ
ク,ヘアークリーム,ムース,シャンプー,リンス,ク
リーム,乳液,化粧水,パック等の形態を採ることがで
きる。
【0027】本発明毛髪成長期延長剤前記の必須成分に
加えて必要に応じて、かつ本発明の所期の効果を損なわ
ない限りにおいて、化粧品,医薬部外品,医薬品等にお
いて一般的に用いられる各種油性若しくは水性成分.保
湿剤,増粘剤,防腐剤,酸化防止剤,香料,色剤,各種
薬剤等を配合することができる。
【0028】例えば、高級脂肪酸,固形パラフィン,流
動パラフィン,シリコーン油,スクワラン,モノオレイ
ン酸グリセリル,オリーブ油,イソプロピルミリステー
ト,高級脂肪酸,高級アルコール等の油分;グリセリ
ン,ヒアルロン酸,プロピレングリコール,マルチトー
ル,アテロコラーゲン,乳酸ナトリウム等の保湿剤;マ
ルメロ粘質物,カルボキシビニルポリマー,キサンタン
ガム等の増粘剤;ニコチン酸アミド,ニコチン酸ベンジ
ル,ビタミンEアセテート,センブリ抽出物,塩化カル
プロニウム,アセチルコリン誘導体等の血管拡張剤;セ
リン,メチオニン,アルギニン等のアミノ酸類;ビタミ
ンB6 ,ビタミンE(若しくはその誘導体),ビオチ
ン,パントテン酸(若しくはその誘導体)等のビタミン
類;ニコチン酸,ニコチン酸メチル,ニコチン酸トコフ
ェロール等のニコチン酸エステル類;セファランチン等
の皮膚機能亢進剤;エストラジオール等の女性ホルモン
剤;グリチルレチン酸(若しくはその誘導体)等の消炎
剤;ヒノキチオール,ヘキサクロロフェン,ベンザルコ
ニウムクロリド,ビチオノール等の抗菌剤;メントール
等の清涼剤;サリチル酸,亜鉛(若しくはその誘導
体),乳酸(若しくはそのアルキルエステル)等;クエ
ン酸等の有機酸類等を配合することができる。本発明毛
髪成長期延長剤の具体的処方は後述する。
【0029】
【実施例】以下、実施例等により本発明をさらに具体的
に説明するが、この実施例等により本発明の技術的範囲
が限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下の
実施例等において「%」と表示され,かつ内容量を示す
ものは、特に断らない限り重量%を意味する。まず、本
実施例等において用いたコエンドロ属に属する植物の抽
出物の毛髪成長期延長作用を評価するためのin vitro
細胞増殖試験について説明する。
【0030】〔試験例1〕毛包上皮系培養細胞を用いた
細胞増殖試験 A.ヒト毛包上皮系細胞 1.ヒト毛包上皮系細胞の採取 外科手術の副産物として得られたヒト男性頭皮から毛周
期における成長期の毛包を実体顕微鏡下で機械的に採取
した。この成長期の毛包を1000 U/ml dispase・0.2 %
コラゲナーゼを含むダルベッコの改変MEM(DME
M)で30分間,37℃で処理し、注射針の先を用いて
dermal sheath やdermal papilla、毛球部上皮組織を除
去して、0.05%トリプシン・0.02%EDTAを含むリン
酸緩衝液〔PBS(−):(−)とはカルシウムイオン
やマグネシウムイオンを含まない意味である〕で5分
間,37℃で処理した。
【0031】次にコラーゲン(Type I)コーティングし
た培養皿に毛包を静置し、外殖片培養を行った。なおこ
の際の培地は、無血清培地〔Keratinocyte Growth Medi
um(KGM)〕を用いた(Keratinocyte Serum Free Me
diumを用いることもできる)。この培養の4〜5日後
に、毛包の培養皿への接着及び細胞の増殖が確認できた
時点で培地を交換し、これ以降2日おきに培地交換を行
った。
【0032】このようにして増殖させた細胞を、0.05wt
%トリプシン-0.02 %EDTAで37℃で5分間処理し
た後、等量の0.1 %トリプシンインヒビターで反応を停
止させ、遠心処理(800×g,5 分間) を施して細胞を回収
した。次に、細胞を上記の無血清培地に浮遊させて、50
00 cells/cm2の密度でコラーゲンコーティング(Type
I)した培養皿に播種し、細胞がsubconfluentになるま
で2日おきに培地交換を行い、再び0.05wt%トリプシン
-0.02 %EDTAで37℃で5分間処理した後、等量の
0.1 %トリプシンインヒビターで反応を停止させ、遠心
処理(800×g,5 分間) を施して、これにより得られたヒ
ト毛包上皮系細胞に細胞凍結液(セルバンカー:ダイヤ
トロン製)を添加し、1.0×106 cell/ml の濃度に
調整して、各凍結チューブに1.0×106 cellずつ入
れ、これを凍結保存した。なお、これらの細胞数は、血
球算定板で算出した。
【0033】2.対象物質のアッセイ 上記工程により得た毛包上皮系細胞の線維芽細胞混入率
(FB混入率)を測定(3000倍,5視野)し、その
結果FB混入率が3%以上のものは、アッセイの対象か
ら除外した。そして、この毛包上皮系細胞を培養フラス
コ中に播種後、これを0.05%トリプシンと0.02
%EDTAで処理した後、0.1%トリプシンインヒビ
ターで反応を停止後、系を1500rpm で5分間遠心処
理を施し、上清を除去し、残渣にKGM培地20mlを添
加して、細胞懸濁液を調製した。
【0034】0.2ml/well の割合で、96well-plate
(I型コラーゲンコーティングプレート:ファルコン社
製)に播種し(1.0×104cell/well)、細胞がウエ
ルの底に沈むまで約20分間室温下で放置した。その
後、37℃,5%CO2 で1日間培養を行い、所望する
ヒト毛包上皮系培養細胞を得た。
【0035】B.ラット毛包上皮系細胞 1.ラット毛包上皮系細胞の採取: (1)毛包の採取 新生児(3〜4日令)のラットの背部皮膚を採取し、こ
の採取した背部皮膚を1%PSF含有PBS(−)に2
枚ずつ浸した。その後、皮膚脂肪層から下の皮下脂肪や
皮膜等を解剖用ハサミで除去した。次いで、再びこの背
部皮膚を1%PSF含有PBS(−)に浸し、さらにこ
れを0.25%トリプシン含有PBS(−)(0.02
%EDTA含む。以下、同様である。)中に4℃で一晩
浸した。
【0036】このトリプシン溶液中における浸漬後、背
部皮膚の真皮層と表皮層をピンセットで剥がした後、真
皮層を0.35%のコラゲナーゼを含有させたHam'
sF12培地〔組成(mg/L):l-Alanin(8.9),l-Arginine
(HCl:211),l-Asparagine(13.2),l-Asparatic acid(13.
3),l-Cysteine (HCl:31.5),l-Glutamic acid(14.7),l-
Glutamine(146),Glycine(7.5),l-Histidine (HCl:19),
l-Isoleucine(3.9),l-leucine(13.1),l-Lysine(HCl:36.
5),l-Methionine(4.5),l-Phenylalanin(5.0),Proline(3
4.5),l-Serine(10.5),l-Threonine(11.9),l-Tryptophan
e(2.0),l-Tyrosine(5.4),l-Valine(11.7),Biotine(0.00
73),Choline(Cl:14.0),VitaminB12(1.36),葉酸(1.32),I
nositol(18.0),Nicotinamide(0.037),パントテン酸(Ca:
0.477),VitaminB6(HCl:0.062),VitaminB2(0.038),Vitam
inB1(HCl:0.337),CaCl2(2H2O:44.0),CuSO4・5H2O(0.002
5),FeSO4・7H2O(0.834),KCl(224.0),MgCl2(6H2O:12
2),"Proc.Natl.Acad.Sci.USA,53,288(1965)" 以下同様
である〕が入った100 mm dish 移し、ハサミで裁断し
た。この裁断物を含む培地を37℃で35分間浸透を行
った(60rpm )。浸透後、このコラゲナーゼ反応物中
に塊状のものが見えなくなるまでピペッティングを行
い、これを50ml遠沈管に移し、DNase (10000unit)
を含有させたHam's F12培地を添加し、5分間
放置した。
【0037】放置後、得られた懸濁液をさらにピペッテ
ィングした後、ナイロンメッシュ(Nytex 157 mesh) で
濾過し、これを50ml遠沈管に移した。懸濁液を半量ず
つに分け、それぞれについてPBS(−)を容量が30
mlになるまで懸濁液を希釈し、次いでこの希釈した懸濁
液に遠心処理を施した(4℃,400rpm ,5分間)。
遠心後、上清を除いて脂肪分を系から除去した。次い
で、残渣にPBS(−)を25ml添加して懸濁後、これ
にさらに遠心処理を施した〔(4℃,400rpm ,5分
間)×3回〕。この遠心操作により得られた残渣が、ラ
ットの背部皮膚における毛包である。
【0038】(2)毛包上皮系細胞の採取 上記操作により得られた毛包に、0.25%トリプシン
含有PBS(−)を5ml添加して、細胞懸濁液を37℃
で5分間インキュベートした。インキュベート終了後、
5mlの等量の牛胎児血清(FBS)とHam's F12
培地を添加して、細胞懸濁液をセルストレーナー(100
μm Nalgene 社製)で濾過後、50ml遠沈管に入れて、
この細胞懸濁液に遠心処理を施した(4℃,1500rp
m ,5分間)。この系から上清を除去して、残渣として
所望する毛包上皮系細胞を得た。
【0039】この毛包上皮系細胞に細胞凍結液(セルバ
ンカー:ダイヤトロン製)を添加し、1.5×107 ce
ll/ml の濃度に調整して、各凍結チューブに1.5×1
7cellずつ入れ、これを凍結保存した。なお、これら
の細胞数は、血球算定板で算出した。
【0040】2.毛包上皮系細胞の前培養:系に混入し
ている線維芽細胞を可能な限り系から除去するために、
上記工程により得られた毛包上皮系細胞の前培養を行っ
た。以下、その手順について説明する。37℃の恒温槽
で、上記工程により得た凍結細胞を融解した。次いでF
AD培地〔Ham's F12培地(後述)とMEN培地
を容量比で3対1で混合したものに、インシュリン(5.0
μg/ml),ハイドロコルチゾン(0.45μg/ml),エピダ
ーマルグロウスファクター(EGF)(10.0ng/ml),コレラト
キシン(10-9M)及びウシ胎児血清(10 %) を含有させ
た培地、以下同様である〕を10ml添加し、細胞溶液を
希釈して系に遠心処理を施した(10℃以下,1500
rpm ,5分間)。遠心後、上清を除去し、系にFAD培
地を10ml添加して、細胞塊が認められなくなるまでピ
ペッティングを繰り返した。
【0041】得られた細胞数を血球算定板で算出し、F
AD培地で2.5×105 cell/mlの濃度になるように
調整した。I型コラーゲンでコーティングした75cm3
のフラスコに細胞を播種して、これを37℃,5%CO
2 で一晩培養した。
【0042】培養後、系をPBS(−)10mlで2回洗
浄し、0.25%トリプシン含有PBS(−)を2ml添
加して、これを37℃,5%CO2 で4分間インキュベ
ートした。次に、系に牛胎児血清(FBS)を2ml添加
して、1回軽くゆすった後で上清を除去して、系に混入
している線維芽細胞を除去した。
【0043】さらに、系にKGM培地〔表皮角化細胞基
礎培地(Keratinocyto growth medium):Keratinocyto b
asal medium (KBM培地(改変MCDB153培地
(クローネティックス社製)))に,ウシ脳下垂体エキ
ス(BPE)(0.4vol%),インシュリン(0.5μm/ml),ハイドロ
コルチゾン(0.5μm/ml),h-EGF(0.1 ng/ml)を添加した培
地、以下同様である〕を15ml添加し、37℃,5%C
2 で3日間培養した。
【0044】3.対象物質のアッセイ 上記工程により得た毛包上皮系細胞を播種した培養フラ
スコの線維芽細胞混入率(FB混入率)を測定(300
0倍,5視野)し、その結果FB混入率が3%以上のも
のは、アッセイの対象から除外した。
【0045】系をPBS(−)10mlで2回洗浄し、
0.25%トリプシン含有PBS(−)を2ml添加し
て、これを37℃で3分間インキュベートした。次いで
上皮系細胞と線維芽細胞とのトリプシンに対する反応性
の違いを利用して,系から線維芽細胞を除去するため
に、トリプシンを除去し、再び0.25%トリプシン含
有PBS(−)を2ml添加して、37℃,20rpm で5
分間振盪した。
【0046】次いで、細胞のはがれを顕微鏡下で確認し
た後、10%FBS含有DMEM培地を10ml添加し
て、50ml遠心チューブ中でピペッティングを行い、系
を1500rpm で5分間遠心処理を施した。上清を除去
し、KGM培地20mlを添加して、細胞塊がなくなるま
でピペッティングを行った。
【0047】懸濁液をセルストレーナー(100 μm Nalg
ene 社製)で濾過後、50ml遠沈管に入れて、懸濁液中
の生細胞数を血球算定板で算出し、系にKGM培地を添
加して、系の中の細胞濃度が5.0×104cell/mlにな
るように調整した。次いで、0.2ml/well の割合で、
96well-plate(I型コラーゲンコーティングプレー
ト:ファルコン社製)に播種し(1.0×104cell/we
ll)、細胞がウエルの底に沈むまで約20分間室温下で
放置した。その後、37℃,5%CO2 で1日間培養を
行い、所望するヒト毛包上皮系培養細胞を得た。
【0048】C.試験培地の調製: (1)抽出物の調製 市販のコリアンダー(乾燥物)500g を、10l の7
0%メタノールに室温(23℃)で24時間の浸漬を2
回行った。抽出液から溶媒を留去し、コリアンダーの7
0%メタノール抽出乾燥物57.5g を得た。
【0049】(2)対象物質添加培地の調製 上記のコリアンダー抽出物を約1.5mgスクリュー管に
秤量し、有機溶剤(DMSO)で0.2%溶液になるよ
うに調製した。また同様に対照として、チャ抽出物(抽
出法:水抽出),バクモンドウ抽出物(抽出法:10%
エタノール抽出)の0.2%DMSO溶液を調製した。
【0050】次いで、上記の生薬抽出物のDMSO溶液
を1000倍量の上記したKBM培地に添加した〔抽出
物濃度:2.0×10-4%(DMSO 0.1%)〕。
これらの対象物質添加培地0.2mlを、0.1%DMS
O含有KBM培地1.8mlに添加し、対象物質の濃度を
2.0×10-5%になるように調製した(10倍希
釈)。
【0051】(3)コントロール培地の調製 ・ネガティブコントロール:KBM培地2mlに、DMS
Oを 2μl 添加して調製した(DMSO 0.1
%)。 ・ポジティブコントロール:ネガティブコントロール培
地に、インシュリン(5mg/ml)を2μl ,ハイドロコー
チゾン(0.5mg/ml)を2μl 添加して調製した。
【0052】D.対象物質培地交換:上記A,Bにおい
てヒト毛包上皮系培養細胞及びラット毛包上皮系培養細
胞を調製した96well-plate中のKGM培地を、対象物
質添加培地及びコントロール培地(200μl/well)と
交換して、交換後37℃,5%CO2 で2日間培養し
た。なおこの培地の交換は、ウエル内のKGM培地を,
底面に付着している細胞を傷つけないように留意しつつ
アスピレーターで抜いて、その後速やかに対象物質添加
培地等をウエルの両端から添加することにより行った。
【0053】E.細胞増殖の測定:アラマーブルー(ala
mar blue:アラマーバイオサイエンス社製) を培地量
(容量)に対して1/10量を添加して、37℃(5%
CO2 )で6時間インキュベートした。インキュベート
後、系の595nm及び570nmでの吸光度をマイクロプ
レートリーダー(Micro plate reader:Bio RAD社製) を
用いて測定し、下記計算式に従って,細胞増殖度を算出
した。
【0054】
【数1】 さらに下記計算式に従って、コリアンダー抽出物の毛包
上皮系細胞増殖促進作用を判定した。
【0055】
【数2】
【0056】7.結果:判定したコリアンダー抽出物の
上記細胞増殖度は、ヒト由来毛包上皮系培養細胞におい
ては0.5及びラット由来毛包上皮系培養細胞において
も0.5であった。この結果より、コエンドロ属に属す
る植物の抽出物であるコリアンダー抽出物に毛包上皮系
培養細胞の増殖活性が明らかに認められることが判明し
た。
【0057】すなわち、コエンドロ属に属する植物の抽
出物には、毛髪成長期延長活性が認められることが明ら
かになった。以下、本発明毛髪成長期延長剤の処方を実
施例として示し、さらにこれらの育毛効果の検討を行っ
た。
【0058】〔実施例1〕 液状毛髪成長期延長剤の調
製 上述したコリアンダーの70%メタノール抽出乾燥物
0.1%を、70%エタノール90%、オレイン酸ナト
リウム0.1%、ドデシルベンゼンスルホン酸0.49
%、硬化ヒマシ油エチレンオキシド(40モル)付加物
0.5%及びイオン交換水(残余)と混合攪拌して溶解
させた。さらにイオン交換水(10%)を添加混合し
て、液状の毛髪成長期延長剤を得た。この液状の毛髪成
長期延長剤の処方において、上述したバクモンドウの1
0%エタノール抽出物の乾燥物0.1%を、上記のコリ
アンダーの70%メタノール抽出乾燥物に代えて調製し
た液状の剤を対照として調製した(比較例1)。
【0059】〔実施例2〕 乳液状毛髪成長期延長剤の
調製 上述したコリアンダー抽出物の製造工程において,70
%メタノールに代えてエタノールを用いた抽出物を得
て、これを以下の処方の乳液状毛髪成長期延長剤におい
て用いた。 配合成分 配合量(重量%) (A相) コリアンダー抽出乾燥物 1.0 ポリオキシエチレン(60モル)付加硬化ヒマシ油 2.0 グリセリン 10.0 ジプロピレングリコール 10.0 1,3−ブチレングリコール 5.0 ポリエチレングリコール1500 5.0 (B相) セチルイソオクタネート 10.0 スクワラン 5.0 ワセリン 2.0 プロピルパラベン 2.0 (C相) カルボキシビニルポリマー1%水溶液 30.0 ヘキサメタリン酸ソーダ 0.03 イオン交換水 8.35 (D相) イオン交換水 4.5 (E相) KOH 0.12 イオン交換水 5.0
【0060】<製造法>A相、B相をそれぞれ60℃で
加熱溶解し、混合してホモミキサー処理しゲルを作る。
これにD相を徐々に添加しホモミキサーで分散した。次
にこれに溶解したC相を加え、最後に溶解したE相を添
加し,ホモミキサーで乳化してO/W乳液型の毛髪成長
期延長剤を調製した。
【0061】〔実施例3〕 クリーム状毛髪成長期延長
剤の調製 実施例2と同様に、コリアンダーのエタノール抽出乾燥
物を,以下の処方のクリーム状毛髪成長期延長剤におい
て用いた。 配合成分 配合量(重量%) (A相) 流動パラフィン 5.0 セトステアリルアルコール 5.5 グリセリルモノステアレート 3.0 EO(20モル)−2−オクチルドデシルエーテル 8.0 プロピルパラベン 0.3 香料 0.1 (B相) コリアンダー抽出乾燥物 5.0 グリセリン 8.0 ジプロピレングリコール 20.0 ポリエチレングリコール4000 5.0 ドデシル硫酸ナトリウム 0.1 ヘキサメタリン酸ソーダ 0.005 イオン交換水 39.995
【0062】<製造法>A相、B相をそれぞれ加熱溶解
し混合し、ホモミキサーで乳化して、クリーム状の毛髪
成長期延長剤を得た。
【0063】〔試験例2〕 本発明毛髪成長期延長剤の
育毛作用の検討 本発明毛髪成長期延長剤の脱毛防止、発毛効果等の育毛
作用を調べるために、以下の方法でヒトに対してトリコ
グラム試験及び実使用テストを実施した。被験試料及び
対照試料は、実施例1〜3の本発明毛髪成長期延長剤、
比較例1の剤及び70%エタノールである。
【0064】試験方法 上記試料の使用前と使用後の抜去毛髪の毛根を顕微鏡下
で観察し、毛根の形態から,成長の止まった毛の毛根で
ある「休止期毛根」数を計数し、その割合の増減によっ
てこれらの試料の育毛作用を比較した。すなわち、被験
試料及び対照試料をそれぞれ男性被験者10名の頭皮に
1日2回,1回2mlずつ6カ月間連続して塗布し、塗布
直前及び6カ月間塗布終了直後に、被験者1名につき1
00本ずつ毛髪を抜去し、それぞれの毛根を顕微鏡下で
観察した。また、上記試料の育毛効果が有効か又は無効
かに関する実使用テストを行った。これらの試験の結果
を、下記第1表に示す。
【0065】
【表1】
【0066】この第1表の結果から、本発明毛髪成長期
延長剤には、その有効成分の毛髪成長期延長効果に基づ
く育毛効果が認められた。
【0067】
【発明の効果】本発明により、毛包上皮系細胞増殖の活
発化により、毛周期における成長期を延長する毛髪成長
期延長剤が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 順 神奈川県横浜市金沢区福浦2−12−1 株式会社資生堂 第2リサーチセンター 内 (72)発明者 中沢 陽介 神奈川県横浜市港北区新羽町1050番地 株式会社資生堂 第1リサーチセンター 内 (72)発明者 田島 正裕 神奈川県横浜市港北区新羽町1050番地 株式会社資生堂 第1リサーチセンター 内 (56)参考文献 特開 昭61−103833(JP,A) 特開 平9−176031(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 7/00 - 7/50 A61K 35/78

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コエンドロ属に属する植物の全草又は果実
    の抽出物を有効成分とする毛髪成長期延長剤。
  2. 【請求項2】コエンドロ属に属する植物が、コリアンダ
    ー サチバムである、請求項1記載の毛髪成長期延長
    剤。
  3. 【請求項3】毛包系上皮細胞に、コエンドロ属に属する
    植物の全草又は果実の抽出物を接触させて当該細胞増殖
    を亢進させる、毛包系上皮細胞の増殖方法。
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