JP3470424B2 - 気相成長方法 - Google Patents

気相成長方法

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JP3470424B2 JP30115294A JP30115294A JP3470424B2 JP 3470424 B2 JP3470424 B2 JP 3470424B2 JP 30115294 A JP30115294 A JP 30115294A JP 30115294 A JP30115294 A JP 30115294A JP 3470424 B2 JP3470424 B2 JP 3470424B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】窒素を含むIII −V族化合物半導
体を有機金属熱分解気相成長法(以下MOVPEと略
す。)、有機金属分子線エピタキシャル成長法(以下M
OMBEと略す。)、ハライド或はハイドライド気相成
長法(以下VPEと略す。)等の気相成長法により得る
方法に係わり、特に高品質の結晶質もしくは非晶質半導
体あるいはその膜を得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】GaN、AlNあるいはGaInN等の
窒素元素を含むIII −V族化合物半導体は、青色系等の
発光を呈する発光ダイオ−ド(LED)に利用されてい
る(「電子情報通信学会論文」、第76巻第9号(19
93年)、913頁)。これらの窒素元素を含むIII −
V族化合物半導体の薄膜は、従来からMOVPEや(M
O)MBE等の気相成長法により製造されている(H.
M.Manasevit、J.Electroche
m.Soc.、118(1971)、1864)。
【0003】例えば、MOVPE法でAlNやGaIn
Nのごとき窒素元素を含む化合物半導体薄膜を得るにあ
たっては、Al、あるいはGa、In元素の供給源に加
えて、窒素元素の供給源も必要である。Al、Ga、I
n等の周期表第III 族元素の供給源としては、従来から
それら元素のトリメチル化合物等、例えばトリメチルガ
リウムが用いられている。トリメチルガリウムのような
トリメチル化合物がMOVPE用の原料として常用され
るのは、これらのトリアルキル化合物が、目的とする化
合物半導体薄膜の成長操作上あるいは実用上適度の蒸気
圧あるいは昇華性と適度の熱分解性を併せ持っているか
らである。
【0004】一方、窒素元素の供給源としては従来から
もっぱらアンモニア(NH3 )が用いられている(H.
P.Maruska等、Appl.Phys.Let
t.,15(1969)、327)。この場合には、ア
ンモニアを加熱して熱分解することにより、半導体の構
成元素となる窒素が発生する。アンモニアの分解は、一
般には次の化学式(1)に従って進行する。 NH3 →(1/2)N2 +(3/2)H2 ・・・・・(1)
【0005】上記の化学式(1)における解離平衡定数
(K)は次式(2)で表わされる。 K=(N21/2 ・(H23/2 /(NH3 ) ・・・(2) 式(2)において、( )は各物質の分圧を示す。Kは
例えば温度400°Kにおいて1.63×10-2、60
0°Kにおいて2.33×10、800°Kにおいて
3.28×102 であり(「化学便覧−基礎編」(丸善
発行)、第10節)、アンモニアの熱分解にはかなりの
高温を要するため、窒素元素の供給源としての効率は低
い。
【0006】GaN等のN元素を含む半導体薄膜を得る
に際し、成長環境下において供給されるNが不足してい
ると薄膜内にはNの不足による欠陥が生じる。Nの不足
による結晶欠陥は1019cm-3程度の多量のn型キャリ
アを誘起する原因となる(H.P.Maruska等、
Appl.Phys.Lett.,15(1969)、
327)。N元素を含む半導体薄膜内のNの不足に伴う
欠陥によって、多量のn型キャリアが発生するとp型の
伝導層を得る妨げとなる。何故なら、多量のn型キャリ
アを電気的に補償し、なお且つドナ−の量を越えるアク
セプターを導入しなければならないからである。半導体
薄膜中への多量のアクセプター等の不純物の導入は薄膜
の格子定数の変化や結晶性の悪化をもたらす。よって、
アンモニアをN元素の供給源とする従来の気相成長方法
は、pn接合の形成に要する結晶性に優れたp型の伝導
型を呈する含窒素化合物半導体膜を効率よく得るには問
題があった。
【0007】pn接合からなるLEDを得るには、n型
の伝導型を有する半導体層とp型の伝導型を有する半導
体層とからpn接合を形成する必要がある。AlNやG
aInN等の含窒素III −V族化合物半導体から構成さ
れるpn接合LEDの形成において、上述のごとくp型
の伝導層を形成するに難があると、かかるpn接合LE
Dを効率的に形成できない。従って、アンモニアを窒素
元素の供給源とする従来の気相成長方法によるIII −V
族化合物半導体薄膜製造時のN元素不足の問題点は、す
なわち、含窒素III −V族化合物半導体薄膜からなるL
EDの安定した製造にも支障を来している。
【0008】また、アンモニアと、III 族元素の供給源
として従来からよく用いられているGa、In、Al等
のトリアルキル化合物とは、次の化学式(3)に示され
る配位化合物を形成する(G.E.Coates、「O
rgano−Metallic Compounds」
(Methuen & Co.Ltd.(Londo
n、1960)、p.88)。 R3 M+NH3 →R3(-)(+) NH3 ・・・ (3) ここで、Rはアルキル基を表わし、Mは第III 族元素を
表わす。このような配位化合物は付加物(adduc
t)とも称される。アンモニアとの付加物ではトリメチ
ルガリウムやトリメチルインジウムに比べてトリメチル
アルミニウムが最も結合力が強い(G.E.Coate
s、「Organo−Metallic Compou
nds」(Methuen & Co.Ltd.(Lo
ndon、1960)、p.88)。
【0009】R3(-)(+) NH3 のような付加物
は、MOVPE成長によるIII −V族化合物半導体製造
において一般に採用されている圧力や温度等の条件下で
容易に生成される。アンモニアとの結合力が強いトリメ
チルアルミニウムとの付加物(CH33 Al(-)
(+) NH3 は難解離性付加物の1つであり、従来の窒素
元素の供給源としてアンモニアを含む反応系によるIII
−V族化合物半導体成長方法では、原料相互の反応によ
りかかる難解離性の付加物の生成が避けられないため、
含窒素III −V族化合物半導体の薄膜の安定的な成長と
膜質の高品質化が妨げられる要因となっていた。
【0010】従来のアンモニアを窒素源としてAlN結
晶膜を気相成長させる方法では、(CH33 Al
(-)(+) NH3 複合体を分解してAlN膜を得るため
には約1200℃の高温を必要としていた(H.M.M
anasevit等、J.Electrochem.S
oc.、118(1971)、1864)。気相成長方
法によるGaN薄膜の製造も、従来はもっぱら1000
℃以上の高温で行なわれていた。(M.Illegem
s、J.Cryst.Growth.、13/14(1
972)、360)。また、GaInN混晶膜の製造に
おいても800℃の高温が要求される(S.Nakam
ura等、Jpn.J.Appl.Phys.、31
(1992)、L1457)。
【0011】ところが、GaNは800℃以上で、また
InNは620℃以上の真空加熱で昇華する(「化合物
半導体デバイス」(日本産業技術振興協会新材料技術委
員会編、1973年9月15日発行))。しかしなが
ら、従来の窒素源を用いる方法では、前述のごとく目的
とする物質の昇華温度を越える高温での気相成長を余儀
なくされていた。ところで、従来からLEDの発光層材
料として利用されているGax In1-x N混晶(xはG
aの混晶比)膜において、実用上結晶性が損なわれない
良質の混晶膜を得るには混晶比xを0.8以下に抑える
必要があった(NIKKEI MATERIALS &
TECHNOLOGY、94.4(No.140)、
48〜55頁)が、従来の気相成長方法では上記の理由
から高温でのInN成分の昇華が起こるため混晶比xを
低下させるのが困難であった。従って、混晶比xが0.
8より小さいGax In1-x N混晶は実用に供されてい
ないのが現状である。
【0012】また、発光層とするGax In1-x N混晶
にあっては、Inの混晶比(1−x)によって禁止帯幅
を調節できる。すなわち(1−x)の値を大きくすれば
禁止帯幅を小さくでき、それにより、より長波長の発光
を得ることができる。上記の如くアンモニアの難分解性
やアンモニア付加物の難分解性に起因してIn組成を任
意に調節できないため、Gax In1-x N混晶膜の発光
波長の汎用性が損なわれていた。
【0013】従来から窒素元素の供給源として用いられ
ている難分解性のアンモニアに代えて、最近ではアンモ
ニアの誘導体であるヒドラジン(H2 N−NH2 )をN
の供給源として含窒素III −V族化合物半導体をMOV
PE成長させる方法も報告されている(「応用物理」、
第63巻第2号(1994)、156頁)。ヒドラジン
類としては、その他に1,1−ジメチルヒドラジンや
1,2−ジメチルヒドラジンなどがあるが、ヒドラジン
類は一般に爆発性を有する等の問題点があり、加熱工程
を必要とする気相成長方法では特に危険であり、また、
ヒドラジンは極めて不安定な物質であり、例えばステン
レス鋼との接触により分解する欠点がある(A.C.J
ones等、Advanced Materials、
(3)(1994)、229)ため、取り扱いが煩雑
となる等の欠点を有する。よって、気相成長設備を構成
する金属材質の選択にも制約を受け、円滑な工業生産を
阻害する大きな要因となっている。
【0014】ヒドラジンに限らず、アンモニアの水素原
子が炭化水素基で置換されたアルキルアミン化合物もN
原子を含有しているため窒素元素の供給源として開示さ
れている(特開平3−80198号)。しかしながら、
含窒素III −V族化合物半導体薄膜の気相成長用の窒素
元素の供給源として、従来から提示されているアミンは
ジメチルアミンやトリメチルアミン等のアルキル基を置
換基とする直鎖状の脂肪族アミン(すなわちアルキルア
ミン)である。
【0015】直鎖状脂肪族アミンは強い電子供与性を有
する強塩基であり(大田正樹著「有機化学演習・改訂
版」(培風館、昭和46年発行)、134頁)、このた
め、電子受容性のトリアルキル化合物と容易に付加物を
形成することが知られており、例えば、トリメチルアミ
ンとトリメチルアルミニウムは融点が105℃の難解離
性の付加物を形成する(G.E.Coates、「Or
gano−Metallic Compounds」
(Methuen & Co.Ltd.(Londo
n、1960)、p.136)。前述の如く、かかる難
分解性の付加物の生成は、高品質のAlN結晶やGaA
lN混晶等の薄膜を得るに妨げとなっている。
【0016】Al等のIII 族元素とN元素との結合を予
め有する化合物である[(CH32 AlNH23
原料としたAlN薄膜の気相成長も報告されている(L
eonard V.Interrante等、J.El
ectrochem.Soc.、136(1989)、
472)。また、Ga−NやIn−Nの配位的な結合を
含むMOVPE用原料としては、(CH32 Ga(C
23 N(CH32 (L.Pohl等、J.Cry
st.Growth、107(1991)、309)や
(3−ジメチルアミノプロピル)ジメチルインジウム
(F.Scholz等、J.Cryst.Growt
h、107(1991)、365)などの配位化合物が
提示されている。
【0017】これらの化合物は予めNとAl等のIII 族
の金属元素との配位的結合を含んでいるため、アンモニ
アやその誘導体等のN源を敢えて使用しなくともAlN
等の含窒素III −V族化合物半導体薄膜は得られる、し
かし、化学量論的にNが不足しているため、得られる薄
膜の表面状態は実用には不十分であった。従って、これ
らの化合物を原料として使用する際にも、良質のN系M
OVPE薄膜を得るには、膜内のN原子の不足を補うた
めの窒素元素の供給源が必要とされていた。
【0018】ジエチルアルミニウムアジド(((C2
52 AlN33 )やジエチルガリウムアジド
(((C252 GaN33 )のごとき含窒素化合
物であるアジドを原料としたMOVPE法によるAlN
やGaNの成長例もある(Kwok−Lun Ho等、
J.Cryst.Growth.、107(199
1)、376)。しかし、得られる気相成長膜は非晶質
あるいは多結晶であり、従来のアンモニアをN源とする
方法に比べ膜質が劣る欠点があった。
【0019】窒素元素を含むIII −V族化合物半導体に
はGaNやInN等の2元系化合物のほかに、GaIn
NやAlNP等の3元系混晶、さらにはAlGaNAs
等の4元系混晶もある。従来技術においては、例えば、
GaNP等の混晶薄膜の成長用原料としても脂肪族炭化
水素基を置換基とするジエチルアミン等のアルキルアミ
ンが開示されている(特開平3−80198号)。しか
し、かかる直鎖脂肪族1級アミンは上述のとおり、総じ
てルイス塩基性が強く、III 族金属元素化合物と難分解
性付加物を形成する等の理由により、含窒素III −V族
化合物半導体混晶薄膜の気相成長用のN源としては好ま
しいものではなかった。
【0020】最近では、N濃度が1016cm-3と極めて
低いp型の伝導性を有するII−VI族化合物半導体薄膜を
得るために、p型不純物となるNのドーピング源とし
て、アルキルアミンの他にピペリジンなどの環式窒素含
有化合物が開示されている(特開昭63−220528
号)。しかしながら、これらの環式窒素含有化合物が、
化合物半導体を構成する一元素として多量のN原子を必
要とする含窒素III −V族化合物半導体を製造するため
のN源として使用された例はない。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】GaN、AlNあるい
はその他の含窒素III −V族化合物半導体あるいは混晶
からなる膜、とりわけ薄膜の気相成長方法による製造に
あっては、窒素元素の供給源としては、原料相互の副反
応が起こらない、あるいは目的とする半導体の成長もし
くは品質に悪影響を及ぼすような副反応が極力抑えられ
るような化合物であることが肝要である。例えば、Al
N薄膜を製造する場合には、Al元素の供給源として従
来から常用されているトリメチルアルミニウムと難分解
性の付加物を形成しないか、あるいは付加物等を形成す
る副反応が起きても、それが目的とする半導体の成長も
しくは品質に悪影響を及ぼさない程度であることが要求
される。あるいは、目的の含窒素III −V族化合物半導
体形成に要するN原子を効率よく放出し、効率よくかか
る含窒素III −V族化合物半導体を生成し、もしくは、
気相成長時のかかる含窒素III −V族化合物半導体元素
の構成比の調節が容易な窒素元素の供給源であることが
必要である。本発明では、かかる要求を満足する、混晶
も含めた、含窒素III −V族化合物半導体を気相成長法
により製造することのできる新たなN源を提供し、かか
るN源を用いる含窒素III −V族化合物半導体、特にそ
の結晶及び該半導体膜の気相成長法による製造方法を提
供することを目的とする。
【0022】ここで、本特許明細書において、含窒素II
I −V族化合物半導体とは、少なくとも1種の周期表第
III 族元素、少なくとも1種の同第V族元素及び窒素を
必須の構成要素とする化合物半導体である。また、本明
細書において、窒素元素の供給源、窒素の供給源、Nの
供給源、あるいはN源とは、含窒素III −V族化合物半
導体の気相成長方法において、該化合物半導体を構成す
る窒素の供給源として用いられる化合物をいう。
【0023】
【課題を解決するための手段】Ga、Al、In等の周
期表第III 族元素から選ばれる少なくとも1種の元素の
有機金属化合物、例えば、トリメチルガリウム、トリメ
チルアルミニウム、トリメチルインジウム等の、いわゆ
るルイス(Lewis)酸性を示す化合物との難分解性
付加物形成(複合体化)反応が避けられる、あるいは抑
制されるN源を見出し、あるいは付加物が形成されて
も、従来知られている方法よりも穏やかな条件、例えば
従来よりも低い温度で気相成長を行なえ、あるいは含窒
素III −V族化合物半導体の各元素の構成比の調整が容
易な気相成長を行なえるN源を見い出し、かかるN源を
用いる気相成長方法により、上記課題を解決するもので
ある。
【0024】あるいはまた、付加物が形成されても、目
的の含窒素III −V族化合物半導体形成に要するN原子
とIII 族もしくはV族原子との結合が有利になる等の理
由からN源とする化合物の窒素が効率よく利用され、効
率よくかかる含窒素III −V族化合物半導体を生成し、
もしくは、気相成長時のかかる含窒素III −V族化合物
半導体元素の構成比の調節が容易な気相成長を行なえる
N源を見い出し、かかるN源を用いる気相成長方法によ
り、上記課題を解決するものである。
【0025】かかる課題を解決する一つの手段として
は、従来のN源であるアンモニアあるいはアルキルアミ
ンよりもルイス塩基性の弱い、もしくはルイス酸性を示
す含窒素化合物をN源として用いることが必要であり、
それにより、難分解性の付加物の形成を避け、あるいは
抑制が可能となり、あるいはまた付加物が形成されても
易分解性であり、従来の方法よりも穏やかな条件で気相
成長が可能となり、上記課題を解決できる。
【0026】また、もう1つの解決手段としては、分子
の立体構造上、あるいは電子構造上等の理由から、気相
成長工程において従来のN源に比べてより低温で分解
し、あるいは窒素−炭素結合の開裂、もしくは窒素原子
とその置換基との解離が目的化合物半導体の成長反応も
しくはその品質に有利な状況で起こり、そのため含窒素
III −V族化合物半導体の構成N原子をより有効に供給
できるN源化合物を見出し、かかるN源化合物を気相成
長に使用することにより、例えば従来よりも低い温度で
気相成長を行なえ、あるいは含窒素III −V族化合物半
導体の各元素の構成比の調整が容易な気相成長を行な
え、あるいは高品質の半導体及びその膜が得られ、上記
課題を解決できる。
【0027】また、更に他の手段としては、あるいは前
記第III 族元素の有機金属化合物と易分解性付加物を形
成するN源化合物を見出し、かかるN源化合物を用いる
ことにより目的の含窒素III −V族化合物半導体形成に
要するN原子とIII 族またはV族原子との結合(化合物
化)が有利になる等の理由から、窒素供給源とする化合
物の窒素が効率よく利用され、効率よくかかる含窒素II
I −V族化合物半導体を生成し、もしくは、気相成長時
のかかる含窒素III −V族化合物半導体元素の構成比の
調節が容易な気相成長を行なえ、上記課題を解決でき
る。
【0028】本発明者は、上記の観点から含窒素III −
V族化合物半導体の気相成長方法において用いることの
できる、従来知られていないN源化合物を探索した結果
本発明を完成した。すなわち、本発明は下記の気相成長
方法を提供する。 (1)含窒素III −V族化合物半導体の気相成長方法に
おいて、少なくとも1個の窒素原子と少なくとも1つの
環状構造を有する化合物を窒素の供給源とすることを特
徴とする含窒素III −V族化合物半導体の気相成長方
法。
【0029】(2)含窒素III −V族化合物半導体の気
相成長方法において、ヘテロ原子として少なくとも1個
の窒素原子を含む複素環式化合物を窒素の供給源とする
ことを特徴とする含窒素III −V族化合物半導体の気相
成長方法。 (3)含窒素III −V族化合物半導体の気相成長方法に
おいて、ヘテロ原子として少なくとも1個の窒素原子及
び少なくとも1つの二重結合を含む複素環式化合物を窒
素の供給源とすることを特徴とする含窒素III −V族化
合物半導体の気相成長方法。
【0030】(4)含窒素III −V族化合物半導体の気
相成長方法において、(a)少なくとも2つの1級、2
級もしくは3級アミノ基を有する化合物、または(b)
少なくとも1つの、1級、2級もしくは3級アミノ基、
アゾ基、ヒドラゾ基、ジアゾアミノ基、ヒドラゾノ基ま
たはイミノ基及び環状構造を有する置換基を有する化合
物を窒素の供給源とすることを特徴とする含窒素III −
V族化合物半導体の気相成長方法。 (5)含窒素III −V族化合物半導体の気相成長方法に
おいて、少なくとも1つの芳香族性置換基が窒素原子に
結合している化合物を窒素の供給源とすることを特徴と
する含窒素III −V族化合物半導体の気相成長方法。
【0031】(6)含窒素III −V族化合物半導体の気
相成長方法において、少なくとも1個の窒素原子をヘテ
ロ原子とするビシクロ構造を有する化合物を窒素の供給
源とすることを特徴とする含窒素III −V族化合物半導
体の気相成長方法。 (7)窒素の供給源とする化合物中の窒素含量が7重量
%以上である、前記(1)乃至(6)に記載の気相成長
方法。 (8)窒素の供給源とする化合物中の窒素含量が14重
量%以上である、前記(1)乃至(6)に記載の気相成
長方法。
【0032】(9)窒素の供給源とする化合物中の窒素
含量が19重量%以上である、前記(1)乃至(6)に
記載の気相成長方法。 (10)窒素の供給源とする化合物中の窒素含量が24
重量%以上である、前記(1)乃至(6)に記載の気相
成長方法。 (11)窒素の供給源とする化合物中の窒素含量が30
重量%以上である、前記(1)乃至(6)に記載の気相
成長方法。
【0033】(12)窒素の供給源とする化合物の分子
量が43以上であり、かつ該化合物中の窒素原子数aと
炭素原子数bの比の値a/b(ただしa及びbはそれぞ
れ1以上の整数であり、a+b≧3)が0.08≦a/
b≦5の範囲である、前記(1)乃至(6)に記載の気
相成長方法。 (13)窒素の供給源とする化合物の分子量が43以上
であり、かつ該化合物中の窒素原子数aと炭素原子数b
の比の値a/b(ただしa及びbはそれぞれ1以上の整
数であり、a+b≧3)が0.16<a/b≦4の範囲
である、前記(1)乃至(6)に記載の気相成長方法。
【0034】本発明の気相成長方法において、窒素の供
給源として用いられる含窒素化合物としては、少なくと
も1個の窒素原子と少なくとも1つの環状構造を有する
化合物(以下かかる化合物を環状窒素源化合物とい
う。)が好適である。
【0035】環状窒素源化合物としては、先ず、ヘテロ
原子として少なくとも1個の窒素原子を含む複素環式化
合物が挙げられる。本発明において、ヘテロ原子とは、
炭素原子以外の複素環構成原子をいう。N原子を含む複
素環式化合物は、N原子の結合に寄与しない非結合電子
対が環の他の構成原子上の電子との共役に寄与する等に
より、電子は非局在化する傾向を持ち、N原子上の非結
合電子対の電子密度は小さくなる。そのため、従来のN
源として用いられてきたアンモニアに比較し、弱塩基性
となる。例えば、5員環の複素環式化合物の1つである
ピロールは殆ど塩基性を示さない(『岩波理化学辞典第
3版』(1976年岩波書店発行)、1117頁)。ま
た、インドールも塩基性は呈さず、むしろ弱酸性を示
す。従って、ヘテロ原子として少なくとも1個の窒素原
子を含む複素環式化合物は第III 族元素の供給源として
使用されるGa、Al、In等のトリアルキル化合物、
シクロペンタジエニルIn(J.Cryst.Grow
th、109(1991)、103)等の有機金属化合
物と難解離性の付加物を生成せず、あるいは付加物を生
成しても易解離性もしくは易分解性であり、N元素を含
むIII −V族化合物半導体の気相成長にとって、有利な
窒素元素の供給源である。
【0036】環状窒素源化合物の1種である、ヘテロ原
子として少なくとも1個の窒素原子を含む複素環式化合
物は、3員環、4員環、5員環、6員環、7員環等、3
員環以上の如何なる員数の複素環から構成されていても
よい。
【0037】例えば、かかる複素環化合物のうち、飽和
複素環式化合物である、3員環式複素環化合物の代表的
な数例を挙げれば、エチレンイミン及びその誘導体が、
4員環としてはトリメチレンイミン及びその誘導体が、
5員環としてはピロリジン及びその誘導体が、6員環と
してはピペリジン、ピペラジン及びそれらの誘導体が、
7員環としてはペルヒドロアゼピン及びその誘導体が例
示できる。
【0038】また、環状窒素源化合物の他の1種とし
て、ヘテロ原子として少なくとも1個の窒素原子及び少
なくとも1つの二重結合を含む複素環式化合物を挙げる
ことができる。かかる化合物の中で4員環式複素環化合
物の一例を挙げれば、△3 −1,2−アザアルセチン
(azarsetine)及びその誘導体が挙げられ、
また、5員環式複素環化合物の代表的な数例を挙げれ
ば、ヘテロ原子が1個の窒素原子であるものとしては、
ピロリジン、ピロリン及びそれらの誘導体等のごとき環
内に不飽和二重結合1つを有する化合物、ピロール、2
H−ピロール及びそれらの誘導体のごとき環内に2つの
不飽和二重結合を有する化合物、また、2個の窒素原子
をヘテロ原子として含むものとしては、イミダゾリジ
ン、ピラゾリジン、ピラゾリン、イミダゾリン、ピラゾ
ール、イミダゾール及びそれらの誘導体が挙げられ、3
個以上の窒素原子をヘテロ原子として含むものとして
は、1H−1,2,4−トリアゾール、1H−1,2,
3−トリアゾール、1H−テトラゾール及びそれらの誘
導体が例示できる。
【0039】また、上述の、ヘテロ原子として少なくと
も1個の窒素原子及び少なくとも1つの二重結合を含む
複素環式化合物の中で6員以上の環からなる複素環式化
合物の代表的な数例を挙げれば、ピペリジン、ピペラジ
ン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、
メラミン、トリエチレンメラミン、テトラジン、2,
2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、2H−アゼ
ピン、アゾシン及びそれらの誘導体が例示できる。
【0040】また、環状窒素源化合物の更に他の1種と
して、ヘテロ原子として少なくとも1個の窒素原子及び
化合物によっては少なくとも1つの二重結合を含む縮合
複素環式化合物があり、代表例な数例を挙げれば、キノ
リン、イソキノリン、インドール、イソインドール、1
H−インダゾール、キノキザリン、1H−ベンゾトリア
ゾール、プリン、プテリジン、1,10−フェナントロ
リン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノ
ネン、8−アザアデニン、1,8−ジアザビシクロ
[5,4,0]−7−アンデセン及びそれらの誘導体が
例示できる。
【0041】また、本発明の気相成長方法において、窒
素の供給源として用いられる含窒素化合物としては、少
なくとも2つの1級、2級もしくは3級アミノ基を有す
る化合物が挙げられる。かかる化合物の代表例な数例を
挙げれば、o−、m−もしくはp−フェニレンジアミ
ン,ピペラジン、シクロペンタンジアミン、シクロヘキ
サンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリ
アミン、トリエチレンテトラミン、オリゴもしくはポリ
(エチレンイミン)及びそれらの誘導体が例示できる。
【0042】更にまた、本発明の気相成長方法におい
て、窒素の供給源として用いられる含窒素化合物として
は、1級、2級もしくは3級アミノ基、アゾ基、ヒドラ
ゾ基、ジアゾアミノ基、ヒドラゾノ基及びイミノ基から
なる群から選ばれる少なくとも1つの基及び環状構造を
有する置換基を有する化合物が挙げられる。かかる化合
物の代表例としては、既に例示した化合物の中にも該当
する化合物、例えば5−アミノテトラゾール、8−アザ
アデニン、ジ−2−ピリジルアミン、o−、m−もしく
はp−フェニレンジアミン等が含まれるが、その他の代
表的な数例を挙げれば、ジシクロヘキシルアミン、シク
ロペンタンジアミン、アゾベンゼン、ヒドラゾベンゼ
ン、ジアゾアミノベンゼン、ベンザルフェニルヒドラゾ
ン、N−ベンジリデンメチルアミン、メラミン、トリエ
チレンメラミン及びそれらの誘導体が例示できる。
【0043】更にまた、環状窒素源化合物の他の1種で
ある、窒素の供給源として用いられる含窒素化合物とし
ては、少なくとも1つの芳香族性置換基が窒素原子に結
合している化合物を挙げることができ、かかる化合物の
代表例としては、既に例示した化合物の中にも該当する
化合物、例えばo−、m−もしくはp−フェニレンジア
ミン、アゾベンゼン、ジアゾアミノベンゼン、ジ−2−
ピリジルアミン、メラミン等が含まれるが、その他の代
表的な数例を挙げれば、4−キノリルアミン、2−アミ
ノピリジン、2−アミノ−4−ピコリン及びそれらの誘
導体が例示できる。
【0044】また、環状窒素源化合物の更に他の1種で
ある、窒素の供給源として用いられる含窒素化合物とし
ては、少なくとも1個の窒素原子をヘテロ原子とするビ
シクロ構造を有する化合物を挙げることができる。かか
る化合物の代表的な数例を挙げれば、キヌクリジン、ト
リエチレンジアミン及びそれらの誘導体を例示できる。
【0045】以上のごとく、本発明における含窒素III
−V族化合物半導体の気相成長方法において用いること
のできる窒素の供給源である化合物の代表例を多く挙げ
たが、本発明の解決すべき課題の解決に有用である限り
において、上述の化合物の異性体やその誘導体も、窒素
の供給源である化合物として用いることができる。
【0046】本発明における含窒素III −V族化合物半
導体の気相成長方法においては、用いる窒素の供給源で
ある化合物中の窒素含量については、特に限定されな
い。しかし、一般的に、一分子当たり窒素含量が高い方
が、分子の分解によって放出される窒素の量が増加で
き、従って、効率良く気相成長反応系にN原子を供給で
きるため好ましい。前述の(1)乃至(6)の気相成長
方法において用いられる各種の窒素供給源化合物の窒素
含量(重量%)はいちいち明記するまでもなく自明であ
り、例えば、5−アミノテトラゾール(約82%)、1
H−テトラゾール(約80%)、テトラジン(約68
%)、メラミン(約67%)、8−アザアデニン(約6
2%)、トリアゾール(約61%)、エチレンイミン
(約57%)、トリアジン(約51%)、プリン(約4
7%)、ピラゾール(約41%)、トリエチレンメラミ
ン(約41%)、ピラゾリン(約41%)、イミダゾー
ル(約41%)、ジエチレントリアミン(約41%)、
プテリジン(約40%)、トリエチレンテトラミン(約
39%)、ピリダジン(約35%)、ピリミジン(約3
5%)、ピラジン(約35%)、ベンゾトリアゾール
(約35%)、ピペラジン(約33%)、2−ピペコリ
ン(約28%)、トリエチレンジアミン(DABCO)
(約27%)、フェニレンジアミン(約26%)、2−
アミノ−4−ピコリン(約26%)、シクロヘキサンジ
アミン(約25%)、アゼチジン(約25%)、ジ−2
−ピリジルアミン(約25%)、インダゾール(約24
%)、ジアゾアミノベンゼン(約22%)、キノキサリ
ン(約22%)、ジアザビシクロノネン(約21%)、
ピロール(約21%)、ピロリン(約20%),ピロリ
ジン(約20%)、ビピリジン(約18%)、フェナン
トロリン(約16%)、アゾベンゼン(約15%)、ジ
アザビシクロアンデセン(約15%)、シクロヘキシル
アミン(約14%)、キヌクリジン(約13%)、イン
ドール(約12%)、アザアルセチン(約12%)、キ
ノリン(約11%)、シクロヘキシルアミン(約8
%)、ジシクロヘキシルアミン(約8%)等であるが、
本発明の気相成長方法においては、前述の各種の窒素供
給源とする化合物の中で、上記観点から化合物中の窒素
含量が7重量%以上である化合物がより好ましく用いら
れ、同含量が14重量%以上の化合物が更により好まし
く、更に、同含量が19重量%以上の化合物であること
が望ましく、24重量%以上の化合物が更に望ましく、
30重量%以上の化合物が特に望ましい。
【0047】本発明における含窒素III −V族化合物半
導体の気相成長方法において用いる、前述の窒素の供給
源である化合物の多く、例えば、ピラゾール、イミダゾ
ール、1,2,4,5−テトラジン等は、前述のよう
に、分子内に二重結合があるため窒素の非結合電子対の
電子供与性が弱められ、弱塩基性であるかもしくは塩基
性を示さず、そのためIII 族元素の有機金属化合物であ
るトリメチルアルミニウムやトリメチルガリウム等のル
イス酸との付加反応による難分解性付加物の生成を抑制
できる利点があり、また、窒素含量も高いため、かかる
化合物を窒素源として用いる含窒素III −V族化合物半
導体の気相成長方法は、本発明の特に好ましい実施態様
の1つである。
【0048】また、本発明における含窒素III −V族化
合物半導体の気相成長方法において用いる、前述の窒素
の供給源である化合物の多く、例えば、テトラゾール、
テトラジン、メラミン、2−アミノ−4−ピコリン等
は、適度に昇華性を有しているため、本発明の気相成長
方法において、気相成長反応系への供給に特殊な操作を
必要せず、有利であり、これら昇華性化合物の多くは、
更に前記の弱塩基性あるいは塩基性を示さない特性をも
合わせ持つため、かかる化合物を窒素源として用いる含
窒素III −V族化合物半導体の気相成長方法は、本発明
の特に望ましいもう1つの実施態様である。
【0049】更にまた、本発明における含窒素III −V
族化合物半導体の気相成長方法において用いる、前述の
窒素の供給源である化合物のうち、少なくとも1個の窒
素原子をヘテロ原子とするビシクロ構造を有する化合
物、例えば、キヌクリジンやトリエチレンジアミン(別
称1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(以
下DABCOと略す。)は、ビシクロ環構造に由来する
分子内歪みのため、トリアルキルアルミニウム等のごと
きIII 族元素の有機金属化合物と付加物を形成しても、
気相成長条件下ではその炭素−窒素結合は開裂し易いた
め、炭素、水素原子は炭化水素フラグメント等となり放
出され易く、そのため、成長中の化合物半導体内への炭
素等の異原子による汚染が回避できる利点がある。従っ
て、かかる化合物を窒素源として用いる含窒素III −V
族化合物半導体の気相成長方法は、本発明の特に望まし
いもう1つの実施態様である。また、かかるビシクロ環
構造を有する窒素源化合物には、例えば、キヌクリジン
やDABCOのように昇華性を合わせ持つものがあり、
かかるビシクロ環化合物は本発明の方法において特に有
利に用いられる。
【0050】また、本発明の他の実施態様の1つとして
は、アミン類を窒素の供給源とする含窒素III −V族化
合物半導体の気相成長方法において、o−、m−もしく
はp−フェニレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、
シクロペンタンジアミン、ジエチレントリアミン、トリ
エチレンテトラミン、オリゴもしくはポリ(エチレンイ
ミン)のごとき少なくとも2つの1級、2級もしくは3
級アミノ基を有する化合物を窒素の供給源とする方法が
挙げられる。かかるアミン化合物では、III 族元素化合
物の金属原子とキレート状の錯体構造を形成し、金属原
子に近接して2個以上のN原子が配位するため、従来用
いられているモノアミンに比べてより有効に窒素源中の
窒素が含窒素III −V族化合物半導体形成に利用され
る。このように、本発明の、少なくとも2つの1級、2
級もしくは3級アミノ基を有する化合物を窒素の供給源
とする気相成長方法は、従来のモノアミンを窒素源とす
る気相成長方法における問題点である、化学量論的な窒
素の不足も解消できる利点がある。
【0051】また、本発明の他の実施態様の1つとして
は、アミン類を窒素の供給源とする含窒素III −V族化
合物半導体の気相成長方法において、シクロヘキシルア
ミン類のごとき、環状構造を有する置換基を含むアミン
類を窒素の供給源とする方法が挙げられる。かかるアミ
ン化合物では、例えば、ジシクロヘキシルアミンでは、
N原子の周囲に立体的に大きなシクロヘキシル基が対向
しており、気相成長条件下の温度では分解し易く、シク
ロヘキシル基自体は熱的にかなり安定なため開環せずに
脱離し易い。従って、炭化水素基の開環による種々の炭
化水素フラグメントの発生が抑制され、成長結晶内への
炭素等異原子の汚染が抑制できる利点がある。
【0052】また、本発明の更に他の実施態様の1つと
しては、アミン類を窒素の供給源とする含窒素III −V
族化合物半導体の気相成長方法において、少なくとも1
つの、1級、2級もしくは3級アミノ基、アゾ基、ヒド
ラゾ基、ジアゾアミノ基、ヒドラゾノ基またはイミノ基
とシクロヘキシル基やフェニル基のごとき環状構造を有
する置換基を有する化合物を窒素の供給源とする方法が
挙げられる。例えば、アゾベンゼン、ジアゾアミノベン
ゼンのごとき芳香族アゾ化合物を例として説明すれば、
かかる化合物中の環状構造を有する置換基(例えば、ベ
ンゼン環)は、熱的に安定で容易には炭化水素フラグメ
ントを発生せずに、気相成長条件下で窒素原子(あるい
はアゾ基)から解離する。従って、環状置換基の開環に
よる種々の炭化水素フラグメントの発生が抑制され、成
長化合物半導体内への炭素等異原子の汚染が抑制できる
利点がある。
【0053】また、本発明の更に他の実施態様の1つと
しては、窒素原子と窒素以外のV族元素とを含む化合物
を気相成長反応系に供給し、窒素原子と窒素原子以外の
該V族元素を含む、例えば、GaNP、AlInNAs
のごときIII −V族化合物半導体を得る気相成長方法が
挙げられる。この実施態様において用いられる化合物の
例としては、NとAsを含む前述の△3 −1,2−アザ
アルセチンが挙げられる。この化合物は、GaNPやA
lInNAsのような混晶の気相成長による製造時に窒
素源として提唱されているアルキルアミン類に比較し、
易分解性である。また、分解生成物はジエン類等の揮発
性の高い成分であり、気相成長反応系外に排出し易く、
そのため化合物半導体内への炭素等異原子の汚染が低減
できる利点を有する。
【0054】また、窒素原子と窒素原子以外のV族元素
を含む窒素の供給源化合物は、予め、例えばAs等のV
族原子とN原子との結合が分子内に存在しているため、
化合物半導体の形成に必須なGa−N、Al−N、In
−N等の結合が予め得られる優位性を有している。すな
わち、従来の窒素源であったアンモニアの低分解性に起
因する窒素と金属原子との結合を形成するための分子相
互の遭遇の機会の不充分さを回避できる。すなわち、例
えば、GaNAs結晶膜を得るに際しても結晶成膜の効
率が上昇する利点が生まれる。
【0055】窒素原子と窒素原子以外のV族元素を含む
窒素の供給源化合物は、本発明に係わるその他の窒素の
供給源化合物と共に気相成長反応系に添加、供給しても
よい。あるいは、V族元素であるAsやPの供給源とし
て従来から用いられているアルシンやホスフィンと共に
気相成長反応系に添加してもよい。
【0056】本発明に係わる窒素の供給源化合物は、易
分解性であるという特徴を有する。例えば、1H−1,
2,4−トリアゾールは沸点の260℃近傍の低温で分
解する(「THE MERCK INDEX−EIGH
TH EDITION」(Merck & Co.,I
nc.、1065頁)。このような易分解性の化合物を
窒素の供給源として用いれば、InN等の比較的低温で
昇華する物質について、その結晶成長温度を昇華温度未
満に低下させることができる。これにより、xが0.5
未満である高In組成のGax In1-x N混晶膜の製造
も可能となる。更に、xがゼロに相当するInN膜の製
造も可能となる。
【0057】本発明の含窒素III −V族化合物半導体の
気相成長方法においては、窒素の供給源となる化合物と
しては、酸素原子が含まれていないものが望ましい。窒
素の供給源となる化合物として含酸素化合物を用いる
と、気相成長条件下で分解して、酸素原子が結晶成長雰
囲気中に存在するため、例えば、AlやGaのような易
酸化性の元素を含むAlN、AlGaNあるいはGaI
nN等の結晶あるいは混晶を成長させる際の障害となり
得る。また、III 族元素の供給原料であるトリメチルア
ルミニウム、トリメチルガリウム、トリメチルインジウ
ム等の有機金属化合物や生成結晶薄膜を構成するAl、
Ga、Inが成長系内に存在する酸素により酸化され、
高品質の結晶あるいはその薄膜が得られ難くなることが
ある。また、酸素原子はIII −V族化合物半導体膜内で
深い不純物準位(deep level)を形成し易
く、半導体素子特性の向上を阻害する不純物となり得
る。
【0058】本発明における含窒素III −V族化合物半
導体の気相成長方法においては、用いる窒素の供給源で
ある化合物は、前述の△3 −1,2−アザアルセチンの
ごとく、窒素原子以外のIII 族あるいはV族元素をも含
む化合物であってもよい。
【0059】本発明において用いる窒素の供給源である
化合物中の、窒素、炭素、水素、その他の元素の組成や
分子量は、気相成長反応及び生成半導体品質に不都合な
作用を及ぼさない限り特に限定はされない。しかし、取
扱上、あるいは気相成長における窒素原子の利用効率あ
るいは得られる半導体の不純物レベルや品質面から、本
発明による含窒素III −V族化合物半導体の気相成長方
法においては、窒素の供給源である化合物としては、前
述の(1)乃至(6)の方法の構成要素である窒素の供
給源化合物のうち、分子量が43以上であり、かつ、化
合物中の窒素原子数(aとする。)と炭素原子数(bと
する)の比の値(a/b)(ただしa及びbはそれぞれ
1以上の整数であり、a+b≧3)がある特定の範囲内
にある化合物が、より望ましく用いられる。ここでい
う、特定の範囲とは、a及びbが、0.08<a/b≦
5を満たすことをいい、更に望ましい特定の範囲として
は0.16<a/b≦4を満たすことをいう。a/bが
0.08以下の場合でも、前述の(1)乃至(6)の方
法の構成要素である化合物であれば、勿論本発明の気相
成長方法において、窒素源として用いることができる
が、化合物によっては、分子中の窒素元素の組成が低い
ため、窒素源としての効率が高くなく、あるいは得られ
る半導体結晶の品質にも制約が生じることがある。一
方、a/bが5を越える値を有する化合物は、その合成
が困難であり、または経済性が悪く、本発明の気相成長
方法において、必ずしも有利ではない。
【0060】尚、a/bの値が上記の特定の範囲である
化合物は、前述の(1)乃至(6)の方法における構成
要素である窒素の供給源化合物の中で多くのものがそれ
に該当し、既に例示した各種の窒素供給源とする化合物
それぞれについてのa/bの値はいちいち明記するまで
もなく自明であり、例えば、5−アミノテトラゾール
(5.0)、1H−テトラゾール(4.0)、テトラジ
ン(2.0)、メラミン(2.0)、トリアゾール
(1.5)、8−アザアデニン(1.5)、トリアジン
(1.0)、プリン(0.8)、ジエチレントリアミン
(0.75)、ピラゾール(2/3)、ピラゾリン(2
/3)、イミダゾール(2/3)、プテリジン(2/
3)、トリエチレンメラミン(2/3)、トリエチレン
テトラミン(2/3)、エチレンイミン(0.5)、ピ
リダジン(0.5)、ピリミジン(0.5)、ピラジン
(0.5)、ベンゾトリアゾール(0.5)、ピペラジ
ン(0.5)、アザアルセチン(0.5)、2−ピペコ
リン(0.4)、トリエチレンジアミン(DABCO)
(1/3)、フェニレンジアミン(1/3)、2−アミ
ノ−4−ピコリン(1/3)、シクロヘキサンジアミン
(1/3)、アゼチジン(1/3)、ジ−2−ピリジル
アミン(0.3)、インダゾール(2/7)、ジアザビ
シクロノネン(2/7)、ジアゾアミノベンゼン(0.
25)、キノキサリン(0.25)、ピロール(0.2
5)、ピロリン(0.25)、ピロリジン(0.2
5)、ジアザビシクロアンデセン(2/9)、ビピリジ
ン(0.2)、フェナントロリン(1/6)、アゾベン
ゼン(1/6)、シクロヘキシルアミン(1/6)、キ
ヌクリジン(1/7)、インドール(1/8)、キノリ
ン(1/9)、ジシクロヘキシルアミン(1/12)等
であり、これらの化合物は前記特定の範囲のa/b値を
有する化合物である。
【0061】塩素、フッ素あるいは臭素等のVII 族元素
を含有する、本発明に係わる窒素含有化合物は、原料に
ハロゲン化物を利用するVPEには利用できる。しか
し、ハロゲン化物は以下に述べる通常のMOCVD法や
MBE法の場合に用いると、結晶薄膜の成長機構や薄膜
の表面状態等に好ましい効果がほとんど認められないた
め、使用しない方がよい。
【0062】本発明に係わる窒素の供給源となる化合物
を用いて、本発明の含窒素III −V族化合物半導体の気
相成長を行う方法としては、その気相成長方式に特に制
限はなく、従来から知られている気相成長方式を用いる
ことができる。例えば代表的な方法としては、ハロゲン
あるいはハイドライドVPE気相成長方式が利用でき
る。また、定圧、減圧のいずれのMOCVD方式も利用
できる。あるいはまた、本発明に係わる窒素の供給源化
合物の中で、例えばm−あるいはp−フェニレンジアミ
ンは光を照射すると分解が促進されるため、いわゆる光
MOCVD法等の光CVD方式も利用できる。また、通
常のMBE法の他に、有機金属化合物やハイドライドガ
スを利用するMO(metal−organic)−M
BE法やGS(gas−source)−MBE法も利
用できる。
【0063】本発明にかかわる窒素元素の供給源化合物
は、そのまま単独でN源として、あるいは供給助剤とな
る他の物質とともに、含窒素III −V族化合物半導体の
気相成長による製造に供給できる。ここで、供給助剤と
は、液状の他のN源化合物、溶媒または気体をいう。例
えば、半導体成長反応容器に導入する前では液体状のN
源化合物であれば、この液体をそのまま、または他の液
体のN源化合物もしくは半導体成長反応に悪影響を与え
ない液体と混合した液体を、半導体化合物成長反応容器
に供給する。N源は、必要に応じて、導入前に化合物成
長反応温度もしくは任意の所望の温度に加温することが
望ましい。かかる液体の供給方法としては、そのまま、
滴下するか、または反応容器内まで導いた導管を通じる
等、任意の手段にて成長反応容器内に導入する。あるい
は、かかる液体を、半導体化合物成長工程で用いられる
水素等の反応性気体あるいはアルゴン等の不活性ガスの
ごとき非反応性気体を用いて噴霧するか、またはかかる
液体にかかる気体をバブリングさせて随伴気化させたも
のを成長反応容器内に導入する。あるいはまた、かかる
N源化合物液体を収納した容器の気相に、水素等の反応
性気体あるいはアルゴン等の不活性ガスのごとき非反応
性気体を流通させて、気相に存在するN源化合物をかか
る気体とともに成長反応容器内に導入する。
【0064】一方、本発明にかかわる窒素元素の供給源
化合物が、導入すべき温度では固体である場合には、常
温、あるいは化合物成長反応温度以下の導入すべき温度
で液体の他のN源もしくは溶媒と混合して溶液として用
いる。かかる溶液を反応容器内に導入する方法は、上記
の液体状のN源の導入方法に準じて行うことができる。
例えば、キヌクリジンの融点は159℃であり、これを
融点が−2℃で、常温では液体であるジシクロヘキシル
アミン等に溶解し、得られた溶液を80℃に保温しつつ
アルゴンガスをバブルすることによりN源化合物をアル
ゴンガスに随伴させて反応容器内に導入する。
【0065】一方、本発明にかかわる窒素元素の供給源
化合物の中には、昇華性を有し、一般的な、化合物成長
反応装置を構成するバルブ、配管、容器、流量計等の構
成部品の常用耐熱温度とされる100℃近傍までから常
温までの間の温度で十分な昇華圧を呈する物質が含まれ
る。例えば、キヌクリジンやDABCOは90℃で約7
0Torrの昇華圧を呈する。DABCOの昇華圧は5
0℃で約3Torr、110℃で83Torrであり、
キヌクリジンやDABCOのごとく昇華性化合物にあっ
ては、前記の液体系での供給方式以外にも、昇華した気
体を水素等の反応性気体あるいはアルゴン等の不活性ガ
スのごとき非反応性気体に随伴させて化合物成長反応容
器に導入することができる。
【0066】本発明にかかわるIII 族元素の供給源化合
物及び更に混晶の場合に必要となる窒素以外のV族元素
の供給源化合物を半導体化合物成長反応容器に導入する
方法は、通常知られている方法を用いることができる。
例えば、III 族元素の供給源化合物をステンレス鋼製の
容器に収納し、水素等の反応性気体あるいはアルゴン等
の不活性ガスのごとき非反応性気体を流通またはバブル
させて、かかる気体に随伴された状態でIII 族元素の供
給源化合物を成長反応容器内に導入する。
【0067】半導体化合物成長反応容器についても、通
常知られているものと同様なものを用いることができ
る。例えば、温度制御可能な加熱した支持体上に、目的
とする半導体化合物を生成し成長させる基板を載置し、
支持体を回転させながら、該基板の表面に、必要とする
供給源物質を供給し、該基板面上に目的とする化合物半
導体を成長させる。あるいは、反応容器内面を基板とし
て目的とする化合物半導体を成長させる。
【0068】その場合の反応温度は、目的とする化合物
半導体や原料化合物によって異なるため一概に規定され
ないが、MOVPE法について一般的にいえば、300
から1000℃の範囲で行うのが製造プロセスの経済性
や化合物半導体の生成効率等の面から望ましく、更に原
料の利用効率あるいは生成化合物半導体やその膜の品質
等の面からは、400〜800℃の範囲で行うことが更
に望ましい。また、成長反応圧力も、目的とする化合物
半導体や原料化合物によって異なるため一概に規定され
ないが、MOVPE法について一般的にいえば、常圧か
ら0.1Torrの範囲で行われるのがプロセス経済性
や化合物半導体の生成効率等の面から望ましく、更に、
原料の利用上の利便性あるいは利用効率等の面から、常
圧から10Torrの範囲が更に望ましい。
【0069】成長反応の時間についても、目的とする化
合物半導体や原料化合物によって異なるため一概に規定
されないが、MOVPE法では数秒から数時間の範囲で
行うのが一般的であり、製造プロセスの経済性や生成効
率等の面から、5秒程度から2〜3時間の範囲で行うこ
とが望ましい。
【0070】本発明の含窒素III −V族化合物半導体の
気相成長方法により、化合物半導体結晶膜もしくは混晶
膜が得られるが、目的によっては非晶質の半導体を得る
こともできる。本方法により、任意の膜厚の化合物半導
体膜が得られるが、通常は1Åから1000μmの範囲
内であり、特に10Å〜100μの範囲の膜厚の高品質
の半導体膜が得られるので好ましい。
【0071】
【実施例】以下の実施例により、本発明の方法を説明す
るが、本発明は係る実施例に限定されるものではない。 (実施例1)本発明の一実施態様としてピロールをN源
としたGaInNのMOCVD成長についての実施例を
基に具体的に説明する。図1に本実施例に記載のMOC
VD成長に使用した気相成長設備の模式図を示す。N源
(101)として、精密蒸留精製法により純度を99.
999%としたピロール(C45 N)を使用した。ピ
ロールは内容積が約150ccのステンレス鋼製容器
(102)内に収納した。(103)はGa源としたト
リメチルガリウム((CH33 Ga)である。(CH
33 Gaはステンレス鋼製の容器(104)に収納し
た。In源(105)としてはシクロペンタジエニルイ
ンジウム(CpIn、即ちC55 In)を使用した。
CpInもステンレス鋼製容器(106)内に収納し
た。
【0072】ピロールを収納する容器(102)の温度
は恒温槽(107)によって30℃に保持した。同様の
恒温槽(107)により(CH33 Ga用の容器(1
04)並びにCpIn(105)用の容器(106)を
各々、0℃並びに60℃に保持した。恒温槽の温度設定
は後述する基板の加熱操作を実施する以前に予め、実施
しておいた。
【0073】容器(102)内のピロールに原料搬送用
ガス(110)として高純度のアルゴン(Ar)ガスを
流通し、バブリングした。バブリングに使用したArガ
スの流量は150cc/分に設定した。N源としたピロ
ール(101)をバブリングするガスは必ずしもArに
限定されるものではなく、水素ガスや窒素ガス等の単体
ガス或いはそれらを混合させた混合ガスでも構わない。
容器(104)内の(CH33 Ga(103)には、
原料搬送用ガス(110)とした高純度水素ガスを25
cc/分の流量で流通し、バブリングした。CpIn用
の容器(106)内には昇華したCpInを搬送するた
めに90cc/分の原料搬送用高純度水素ガスを流通さ
せた。尚、ピロール及び(CH33 Gaのバブリング
操作とCpInを収納する容器への原料搬送用ガスの流
通は後述する基板(115)の加熱操作を実施する約3
0分前から開始した。
【0074】基板上へのGaInNの成膜を開始する以
前にあっては、ピロールまたは(CH33 Gaの蒸気
を含む原料搬送用ガス及び昇華したCpInを含む原料
搬送用ガスは、各々の原料に対応する配管((113−
1)乃至(113−3))内を通し、それぞれ開状態に
あるバルブ((114−2)、(114−4)及び(1
14−6))を介して排気用配管(112)に導入して
おいた。
【0075】基板(115)とするサファイア(単結晶
アルミナ)基板を成長反応容器(108)内の加熱体
(117)上に載置した後、成長反応容器(108)内
に配管(111)を通して水素キャリアガス(109)
を導入した。水素キャリアガス(109)の流量は7.
0l/分とした。水素キャリアガス(109)の成長反
応容器(108)への導入を開始してから20分後に、
加熱体(117)に通電を開始し基板(115)を59
0℃に加熱した。成長反応容器(108)内の圧力はほ
ぼ大気圧とした。
【0076】基板(115)の温度が590℃に到達し
てから20分間、同温度に基板(115)を保持した
後、バルブ((114−2)、(114−4)及び(1
14−6))を開状態から閉状態に切り換え、逆にバル
ブ((114−1)、(114−3)及び(114−
5))を閉状態から開とし、上記のピロール、(CH
33 Ga及びCpIn(105)を含む原料搬送用ガ
ス(110)をそれぞれ配管(111)に導入して水素
キャリアガス(109)と合流させた。基板(115)
の温度を590℃に、また成長反応容器(108)内の
圧力をほぼ大気圧に保ちながら、この原料成分を含む水
素キャリアガス(109)を、成長反応容器(108)
内の基板(115)の上方に設けたガスノズル(11
8)の内部に流入させ、サファイア基板(115)の表
面に向けて40分間に亘り継続して供給した。
【0077】以上の気相成長操作によりサファイア基板
(115)上に約0.21μmの膜厚のGaX In1-X
N(xは組成比を表す。)成長層(116)を得た。図
2に得られた積層構造の断面模式図を示す。X線マイク
ロアナライザー(XMA)を利用した成長層の表面近傍
の元素組成分析から、成長層(116)の表面近傍に於
けるxは約0.81と求められた。
【0078】ノマルスキー型の微分干渉顕微鏡によりピ
ロールをN源とする気相成長方法により得た成長層(1
16)の表面を観察した結果、成長層(116)の表面
は細孔や突起も無く平坦性に優れていた。アンドープ状
態の成長層(116)はn形の伝導性を示し、キャリア
濃度は約1×1016cm-3であった。
【0079】尚、ピロール含有バブリングガス、(CH
33 Ga含有バブリングガス及びIn含有水素ガスを
水素キャリアガスに合流させる際の混合順序は図1に示
した流路図に限定されず、如何なる順序で混合させても
構わないが、混晶組成の均一性等を向上させるためには
成長反応容器(108)に入る前に予めキャリアガスに
混合させておくのが好ましい。
【0080】(実施例2)1,2,4,5−テトラジン
(C224 )をN源(101)として使用し、図
1に示すと同様の成長装置の構成をもってInNを成長
させた。1,2,4,5−テトラジンはステンレス鋼製
容器(102)に収納した。容器(102)は恒温槽
(107)により90℃に保持した。容器(102)内
に110cc/分の流量の高純度の水素ガスを原料搬送
用ガス(110)として流通させた。
【0081】インジウム源(105)としてトリメチル
インジウム((CH33 In)を使用した。(CH
33 Inはステンレス鋼製容器(106)に収納し、
恒温槽(107)により、25℃に保持した。(CH
33 Inの容器(106)内に昇華した(CH33
Inの気体を搬送するため、原料搬送用ガス(110)
として90cc/分の流量の水素ガスを流した。
【0082】N源(101)として使用した1,2,
4,5−テトラジンを含む原料搬送用水素ガス(11
0)及び(CH33 Inを含む原料搬送用水素ガス
(110)は、上記の実施例1に記載したと同様のバル
ブの開閉状態とすることにより、成膜を開始する以前に
は配管((113−1)及び(113−3))を通して
排気用配管(112)側に導入しておいた。排気用配管
(112)側のバルブ((114−2)及び(114−
6))を開より閉状態とし、これに対応して配管(11
1)側のバルブ((114−1)及び(114−5))
を開として、上記のそれぞれの原料搬送用ガス(11
0)を配管(111)内を流通する水素キャリアガス
(109)に合流させ、成長反応容器(108)内に導
入してInN成長層の気相成長を開始した。水素キャリ
アガス(109)の流量は8.0l/分とした。
【0083】成長反応容器(108)内の圧力をほぼ大
気圧に保ちながら、上記の1,2,4,5−テトラジン
及び(CH33 Inを含む原料搬送用水素ガス(11
0)を随伴する水素キャリアガス(109)を、ノズル
(118)の内部を通して加熱体(117)により60
0℃に加温された面方位が[111]のn形GaP単結
晶基板(115)の表面に1時間に亘り継続して供給し
た。原料を含む搬送用ガスを随伴した水素キャリアガス
(109)の成長反応容器(108)への供給を開始し
てから1時間を経過した時点で、それぞれバルブ((1
14−1)と(116−2)及び(114−5)と(1
14−6))の開閉状態を逆とし、原料を搬送する原料
搬送用ガス(110)の水素キャリアガス(109)へ
の導入、合流を停止して排気用配管(112)内へ導入
した。これにより、成膜を停止した。
【0084】以上の操作並びに条件により、0.2μm
の膜厚のInN成長層(116)をGaP基板(11
5)上に常圧MOCVD法により堆積し、図2と同様の
積層構造を得た。実施例1と同様にして成長層(11
6)を観察したところ、1,2,4,5−テトラジンを
N源とする気相成長方法は細孔等が少なく且つ表面モホ
ロジーに優れるInN成長層を与えることが認められ
た。
【0085】尚、本実施例では1,2,4,5−テトラ
ジンを搬送するガスとして水素を使用したが、搬送用ガ
スは水素に限らず、また、その流量も本実施例のそれに
限定されるものではない。1,2,4,5−テトラジン
の保持温度その他の成長条件も本実施例によって限定さ
れるものではない。成長させる膜もInNには限定され
ない。
【0086】(実施例3)アゾベンゼン(C65 −N
=N−C65 )をN源(101)として使用した。こ
のN源(101)はスレンレス鋼製の容器(102)に
収納し、その容器(102)を恒温槽(107)により
85℃に保持した。N源(101)としたアゾベンゼン
(101)の収納容器(102)には原料搬送用ガス
(110)としての高純度の窒素ガスを毎分120cc
の流量で流通させ、バブリングした。
【0087】Ga源(103)としたトリメチルガリウ
ム((CH33 Ga)は0℃に保持し、15cc/分
の流量の原料搬送用水素ガス(110)でバブリングし
た。アゾベンゼン及び(CH33 Gaを含む原料搬送
ガス(110)は成膜する以前はそれぞれ配管((11
3−1)または(113−2))を通じて排気用配管
(112)に導入しておいた。配管((113−1)及
び(113−2))内に流した原料を含む原料搬送用ガ
ス(110)はそれぞれバルブ((114−1)と(1
14−2)及び(114−3)と(114−4))の開
閉状態を逆転させ成長反応容器(108)へ通ずる配管
(111)へ導入した。基板には、面方位が{000
1}のサファイア(α−Al23 )を用いた。水素キ
ャリアガス(109)の流量は18l/分とした。基板
温度は550℃とし、成長時間は40分間とした。成長
は約90Torrの減圧環境下で実施した。
【0088】このC65 −N=N−C65 /(CH
33 Ga/H2 反応系を利用した減圧MOCVD法に
より、サファイア基板(115)上に膜厚が0.04μ
mのGaN層(116)が堆積された図2に示す様な積
層構造を得た。このアンドープGaN成長層(116)
のキャリア濃度は1017cm-3未満であった。これは従
来のNH3 をN供給源として825℃の高温で成長させ
たGaN成長層の1019cm-3程度のキャリア濃度
(H.P.Maruska他、Appl.Phys.L
ett.,15(1969)、327.)に比較すれば
約2桁の低い値となった。GaN成長膜(116)は黄
色味を帯びた透明膜であった。
【0089】
【発明の効果】本発明に係わる含窒素化合物をN源とす
る気相成長法によって成膜プロセスの低温化がもたらさ
れ、高温環境下に於いて昇華し易く高品質の膜を得るに
際し、従来では特異な成長条件が必要とされた昇華性の
III −V族窒化物半導体膜例えば、InN膜の成長も容
易に実行できる。またNを含むIII −V族化合物半導体
薄膜がその昇華温度未満の低温で気相成長できるため、
従来の高温成長に因る表面モホロジーの悪化を回避でき
る効果がある。更には、本発明による気相成長プロセス
の低温化は、含窒素III −V族化合物半導体膜の伝導キ
ャリアの低下をももたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係わる成長設備の概略図である。
【図2】実施例に係わる積層構造の模式図である。
【符号の説明】
(101) 窒素(N)源 (102) 容器 (103) ガリウム(Ga)源 (104) 容器 (105) インジウム(In)源 (106) 容器 (107) 恒温槽 (108) 成長反応容器 (109) 水素キャリアガス (110) 原料搬送用ガス (111) 成長反応容器へ通ずる配管 (112) 排気用配管 (113−1) 窒素源を含む原料搬送用ガスを流通さ
せるための配管 (113−2) ガリウム源を含む原料搬送用ガスを流
通させるための配管 (113−3) インジウム源を含む原料搬送用ガスを
流通させるための配管 (114−1) バルブ (114−2) バルブ (114−3) バルブ (114−4) バルブ (114−5) バルブ (114−6) バルブ (115) 基板 (116) 化合物半導体成長層 (117) 加熱体 (118) ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−80198(JP,A) 特開 平5−121340(JP,A) 特開 平2−304092(JP,A) 特開 平7−86180(JP,A) 特開 平5−311445(JP,A) 特開 昭62−176996(JP,A) 特開 昭61−223186(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/205 C23C 16/34 C30B 25/02 C30B 29/40

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】含窒素III −V族化合物半導体の気相成長
    方法において、少なくとも1個の窒素原子をヘテロ原子
    とするビシクロ構造を有する化合物を窒素の供給源とす
    ることを特徴とする含窒素III −V族化合物半導体の気
    相成長方法。
  2. 【請求項2】窒素の供給源とする化合物中の窒素含量が
    7重量%以上である、請求項1に記載の気相成長方法。
  3. 【請求項3】窒素の供給源とする化合物中の窒素含量が
    24重量%以上である、請求項1に記載の気相成長方
    法。
  4. 【請求項4】窒素の供給源とする化合物の分子量が43
    以上であり、かつ該化合物中の窒素原子数aと炭素原子
    数bの比の値a/b(ただしa及びbはそれぞれ1以上
    の整数であり、a+b≧3)が0.08≦a/b≦5の
    範囲である、請求項1に記載の気相成長方法。
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