JP3469183B2 - 液晶表示装置 - Google Patents

液晶表示装置

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JP3469183B2
JP3469183B2 JP2000280673A JP2000280673A JP3469183B2 JP 3469183 B2 JP3469183 B2 JP 3469183B2 JP 2000280673 A JP2000280673 A JP 2000280673A JP 2000280673 A JP2000280673 A JP 2000280673A JP 3469183 B2 JP3469183 B2 JP 3469183B2
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隆史 岡田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄膜トランジスタ
とその製造方法、及びそれを用いた液晶表示装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】(第1の従来技術)従来、アモルファス
シリコン(以下、「a−Si」と称する)で形成されて
いるアクティブマトリクス型の液晶表示装置の画素の駆
動性能は、a−Siで十分に満たされているが、同一の
基板上に同じプロセスで信号線の駆動回路を構成するこ
とは性能上困難であり、単結晶Siによって形成された
外付けの駆動回路(ドライバー)を用いてパネルを駆動
している。
【0003】しかしながら、a−Siの移動度は0.5
〜1cm2・s-1・V-1であり、今後、液晶パネルの画
素数が増大した場合、一般的には最大1水平期間に相当
する画素のTFTをONする時間はますます短くなり、
画素への書き込み能力が不足する。
【0004】これに対して、画素のTFTをポリシリコ
ン(以下、「p−Si」と称する)で作成することによ
り、このTFTの移動度は、a−Siで作成された場合
に比較して1桁から2桁以上高いため画素への充電能力
が高くなる。従って、液晶パネルの高精細化が進むにつ
れて、画素TFTをp−Siで形成することは有利であ
る(FPD Expo Forum97、2−14)。
【0005】一般的にp−SiTFTの構造としては、
ゲート電極がチャネル層上方に位置するトップゲート
型、ゲート電極がチャネル層に対して基板側に存在する
ボトムゲート型の2種類が存在する。トップゲート型構
造は、ボトムゲート型構造に比較して、不純物をゲート
電極をマスクとして自己整合的にドーピングすることに
より寄生容量の小さいTFTを作成することが可能であ
り微細化に有利である。
【0006】上記トップゲート型のTFTを例えば液晶
表示装置に適用し該TFTの裏面より光を照射した場
合、バックライトの光は直接TFTのチャネル領域に照
射される。そして、前記チャネル領域に光が照射される
と、この部分で光伝導電流が発生しOFF電流が大きく
なるという問題があった。ここで、「光伝導電流」につ
いて説明する。
【0007】半導体中での光伝導電流の発生のメカニズ
ムは太陽電池などを中心にこれまで多くの論文(たとえ
ば、田中一宣編著、“アモルファス半導体の基礎、”1
982年)などに紹介されているが、p−SiTFTで
の光伝導電流の発生メカニズムについて論じられたもの
は少ない。
【0008】一般的に、光伝導電流の発生は、電界の印
加された状態でバンドギャップを介して電子/正孔対が
生成され、生成された電子/正孔対が電界によりドリフ
トし、それぞれの領域で多数キャリヤの増加に対しキャ
リヤの再結合電流という形で観測されるものである。ゲ
ート電極下のチャネル領域は、逆バイアス条件下におい
てチャネル直下に正孔が誘起されるがそのキャリヤの濃
度は非常に低い。これに対しドレイン側の多数キャリヤ
である電子は、n−領域のシート抵抗が20kΩ/□〜
100kΩ/□の範囲では1016/cm3〜1018/c
3程度のキャリヤ密度であると推定される。この場
合、n−領域の多数キャリヤである電子はチャネル側に
向かって拡散し拡散電位Vdを形成する。尚、空乏層の
幅はWdで表される。
【0009】光が照射されることにより、この空乏化し
た領域で電子/正孔対が発生する。発生した電子/正孔
対は互いに電界に惹かれ電子はドレイン方向、ホールは
チャネル方向に移動する。ドレイン側に移動した電子な
らびにチャネル側に移動した正孔はそれぞれの領域で再
結合して消滅する。この再結合に消費される電荷がそれ
ぞれソースおよびドレイン電極により供給され、これが
光伝導電流として観測される。
【0010】(第2の従来技術)また、p−SiTFT
は高移動度であるので、画面内のアクティブマトリック
ス素子と信号駆動回路の一部あるいは全部をガラス基板
上に同時に形成することができる。しかしながら、p−
SiTFTは、a−SiTFTやMOS型電解効果トラ
ンジスタに比較してOFF電流が大きいという欠点を有
している。
【0011】そこで、このOFF電流低減のために、特
開平5−136417に開示されているように、TFT
のソース領域またはドレイン領域の少なくとも一方に隣
接して、低濃度不純物領域(LDD領域)を設ける方法
が行われている(第1の従来の方法)。
【0012】また、LDD領域を形成する他の方法とし
て、LDD領域をTaOxの有無によりコントロールす
る方法(Euro Display' 96 pp547)が開示されている
(第2の従来の方法)。
【0013】LDD領域がOFF電流低減に有効である
メカニズムについては、特開平5−136417に開示
されているように、LDD領域がドレイン領域に対して
高抵抗であるため、チャンネル/LDD領域の接合部に
かかる電界が、LDD領域を設けない場合に対して小さ
くなるためと考えられている。
【0014】以上の2つの方法では、いずれの方法もL
DD領域をマスク合わせによりTaOxの有無を制御、
あるいはレジスト膜の有無を制御することによりドーピ
ング濃度の違う部分を形成している。この方法では確実
にLDDの領域を確保するために、LDD領域の長さは
マスクあわせの寸法精度以上の長さを確保しなければな
らない。
【0015】これに対し、特開平7−140485に示
すように、LDD領域をゲート電極に対して自己整合的
に形成する第3の従来の方法がある。本方法は、ゲート
電極となるAlを陽極酸化することによって、その側面
にAlの酸化物層を形成し、これをマスクとしてN型或
いはP型の不純物元素を導入して、ソース領域、ドレイ
ン領域及び前記側面の酸化物層とほぼ同じ厚みを持った
低濃度不純物層を作成することを可能とするものであ
る。
【0016】この方法を用いれば、ゲート電極に対して
自己整合的にLDD領域を形成することが可能で、LD
D領域形成のためのマスクを削減できると共に、不純物
濃度の高い領域の長さを、陽極酸化したAlの側面に存
在する酸化物の膜厚に相当する0.1μm〜0.5μm
程度とかなり小さく形成することが可能である。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】(第1の従来例に対す
る課題)上記のような光伝導電流によってOFF電流が
増加(オフ特性の劣化)した場合、次のような問題が発
生する。オフ特性の劣化により引き起こされる画質劣化
は、輝度傾斜とクロストークである。輝度傾斜とは、図
38(a)に示すように、画面の上部と下部で、液晶の
電流/輝度特性が異なることにより発生するものであ
り、画面の上部と下部で輝度の差が生じる。一方、クロ
ストークとは、図38(b)のように白の中央部に黒の
ボックスパターンを表示した場合、黒の画像が上下ある
いは左右方向に尾を引くような現象である。また、その
他、オフ特性の劣化はフリッカーの増加、輝度むらの発
生など画質に大きな影響を与える。
【0018】(第2の従来例に対する課題)LDD構造
はOFF電流低減に関して効果が高いのであるが、TF
Tのゲート電極下のチャンネルが反転するON状態にお
いては、比較的高抵抗層であるLDD領域がチャンネル
領域に直列に挿入されることによりON電流が低下する
という欠点を有している。
【0019】本来、LDD領域はソースならびにドレイ
ン領域である部分に対して高抵抗でありTFTの特性が
上がるに従ってその抵抗の影響が顕著に現れる傾向をも
つ。よって、この高抵抗領域であるLDD領域の長さ
は、そのOFF電流を低減させるに十分であり、かつ高
いON電流を確保するに十分に低い抵抗値を持つもので
なければならない。
【0020】しかしながら、現状ではLDD領域の長さ
の指針を決める方法が皆無であり、OFF電流低減のた
めに必要以上にLDD領域を確保する必要がある。一般
的には1.5μmよりも長いLDD領域を確保する必要
があり、その結果、TFTのON電流を低下させる原因
となっている。
【0021】また、第3の従来例に示す方法によれば、
LDD領域を0.1μm〜0.5μm程度とかなり小さ
く形成することが可能であるが、一般に液晶パネルのド
ライバ或いは画素のTFTとして用いる場合、その駆動
電圧は5〜15V程度であり、一般のICと比較してか
なり高い。従って、LDD領域が0.1μm〜0.5μ
mの場合、その効果が不十分となり本プロセスでは十分
にOFF電流を下げることができない。
【0022】そこで、本発明では、上記の点に鑑み、光
照射時のOFF電流(光伝導電流)を抑える構成をとる
ことにより、輝度傾斜やクロストーク等の画質劣化を抑
制し、高性能、高信頼性を実現した液晶表示装置の提供
を目的としている。
【0023】
【0024】
【課題を解決するための手段】即ち、上記課題を解決す
るために、請求項1に記載の発明は、薄膜トランジスタ
をスイッチング素子として備えたTN液晶パネル部と、
前記TN液晶パネル部に裏面側により光を供給するバッ
クライト部と、を備えた液晶表示装置であって、 前記T
N液晶パネル部の薄膜トランジスタは、チャネル領域
と、該チャネル領域の両側に配置されたソース領域およ
びドレイン領域とが形成されるとともに、該ドレイン領
域にはLDD領域が形成されてなる多結晶シリコン半導
体層を有し、前記LDD領域のシート抵抗をR(kΩ/
□)、前記チャネル領域のチャネル幅をW(μm)とし
た場合、式(2)の関係を満たし、前記バックライト部
はその輝度が最高5000cd/m 2 とされていること
を特徴とする。 (R+30)・W<1×103…(2)
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】上記(2)式のように、新たに制御できる
因子(ドレイン領域(LDD領域)のシート抵抗)とチャ
ネル領域のチャネル幅との関係によって、光照射時のO
FF電流(光伝導電流)を抑制する範囲を規定すること
ができる。そして、上記(2)式の関係を満たす薄膜ト
ランジスタは、光照射時のOFF電流の増加を抑えるこ
とができるので、クロストークや輝度傾斜を防ぐことが
でき、従って、高性能、高信頼性を実現することができ
る。
【0029】また、請求項2に記載の発明は、請求項1
に記載の液晶表示装置であって、前記チャネル領域のチ
ャネル幅Wが2μm以下であることを特徴としている。
【0030】上記(2)式の関係は、チャネル領域のチ
ャネル幅Wを2μm以下とする場合であっても、シート
抵抗Rとチャネル幅Wによって、光照射時のOFF電流
の増加を抑えることができる。
【0031】また、請求項3に記載の発明は、請求項1
または請求項2に記載の液晶表示装置であって、前記L
DD領域のシート抵抗が20kΩ/□以上、100kΩ
/□以下であることを特徴とする。
【0032】このように規制するのは、シート抵抗が2
0kΩ/□以下ではOFF電流は急激に大きくなり、ま
た、シート抵抗を100kΩ/□以上にした場合、トラ
ンジスタのON電流が低下しパネルの動作が不安定とな
るためである。ドレイン領域のシート抵抗の範囲を20
kΩ/□以上100kΩ/□以下とすることにより、O
FF電流の低減を図ることができるとともに、ON電流
の減少は起こらない薄膜トランジスタを提供することが
できる。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【発明の実施の形態】[第1の発明群] (第1の発明群の概念)まず、第1の発明群の概念につい
て説明した後、具体的な実施の形態について図面に基づ
いて説明する。
【0052】第1の発明群では、TFTへの光照射時の
光伝導電流を抑えることを目的としている。
【0053】そこで、上記目的を達成するために、本願
発明者らは、前記光伝導電流と相関性を有するパラメー
タを探索し、その結果、空乏層幅が光伝導電流と比例関
係を有することを新たに見い出した。この比例関係に基
づいて空乏層幅を制御(小さく)することによって、光
伝導電流を許容値以下とすることが達成され、輝度傾斜
やクロストーク等の画質劣化のない薄膜トランジスタを
提供することができる。
【0054】尚、前記「空乏層幅」とは、後述する図2
(a)に示すように、電界強度が立ち上がる2点のそれぞ
れの接線間の距離と定義する。
【0055】また、従来、バックライトの輝度B及びチ
ャネル領域のチャネル幅Wは、光伝導電流と相関性があ
ることは分かっており、これら2つの制御パラメータに
基づいてTFTの設計を行っていた。しかし、前記2つ
の制御パラメータだけでは光伝導電流抑制に対して十分
でなく、TFTを設計する上で誤差が生じることもあ
る。
【0056】そこで、本願発明者らは、前記「空乏層幅
と光伝導電流との比例関係」に関して更に鋭意検討を加
え、ドレイン領域のシート抵抗も光伝導電流に対して相
関性があることを新たに見出した。これにより、シート
抵抗Rという新たな因子を評価基準とすることにより制
御パラメータが3つとなり、従来の制御パラメータが2
つのものに比較して薄膜トランジスタの設計の精度が向
上し、光伝導電流を顕著に抑制することができる。以下
に、空乏層幅と光伝導電流との関係についてまず説明
し、その後、バックライトの輝度Bと、ドレイン領域の
シート抵抗Rと、チャネル領域のチャネル幅Wとの関係
について説明する。そして、光伝導電流を抑制するため
のTFTの具体的な作製手法の原理について説明する。
【0057】まず、本願発明者らは、TFTを構成する
チャネル領域のチャネル幅と光伝導電流の関係を測定す
るとともに、ドレイン領域のシート抵抗と光伝導電流の
関係を測定した。更に、シミュレーションにより動作解
析を行い、空乏層幅の範囲を求めた。
【0058】図1(a)は、TFTを構成するチャネル
領域のチャネル幅Wと光伝導電流(OFF電流:
OFF)との関係を示すグラフである。尚、実線は60
00cd/cm2、破線は4000cd/cm2、1点鎖
線は2000cd/cm2の光を照射した場合のチャネ
ル幅Wと光伝導電流IOFFの関係を示している。
【0059】図1(a)より、光照射時のOFF電流I
OFFは、チャネル幅Wに比例することが明らかである。
また、図1(b)は、バックライト輝度と光伝導電流と
の関係を示すグラフであるが、OFF電流IOFFは、バ
ックライト輝度Bに比例することが確認できた。
【0060】図2(a)はTFTをOFF状態にした場
合の電界をシミュレーションした結果を示すグラフであ
る。図2(a)に示すシミュレーション結果により、電
界はほぼチャネル/ドレイン領域の接合部にのみ集中し
ており、LDD領域のシート抵抗が20kΩ/□(実
線)の場合、空乏層幅は約0.5μm程度であり、その
空乏層領域は主にチャネル側に伸びていることが分か
る。これに対して、シート抵抗が100kΩ/□(破
線)の場合、空乏層幅は0.9μm程度であり、LDD
領域に拡がっていることが確認される。
【0061】これにより、シート抵抗が変化することに
より空乏層幅も変化することが新たに見い出された。そ
こで、本願発明者らは、シート抵抗と空乏層幅との関係
を調査した。その結果を図3に示す。図3はシミュレー
ションにより得られたシート抵抗と空乏層幅との関係を
示す。空乏層幅Wdはシート抵抗Rに比例することが確
認された。これはp/n接合の場合における空乏層の拡
がりと同様、キャリヤ濃度の低い領域に空乏層は伸びる
ためであると考えられる。そして、図3のシート抵抗と
空乏層幅との関係を下記(7)式に示す。 Wd=8×10-3・R+0.24…(7)
【0062】図4はシミュレーション(W=4μmの場
合)により求められた空乏層幅と、該空乏層幅に対応す
るシート抵抗での光伝導電流と、の関係を測定した結果
を示す。
【0063】空乏層幅と光伝導電流をそれぞれ対数でプ
ロットすると、ほぼ傾きが1の直線が得られた。これ
は、光伝導電流が空乏領域により発生することを示唆す
るものである。そして、空乏層幅Wdと光伝導電流の関
係は下記(8)式のように表すことができる。 Iphoto=5×10-15・Wd…(8)
【0064】尚、上記(8)式で、Iphotoは、チャネ
ル幅が4μmでの光強度が1(cd/m2)当たりの値
である。
【0065】このように上記(8)式より、空乏層幅W
dが光伝導電流Iphotoと比例関係を有することが見い
出され、これにより、空乏層幅を制御(小さく)するこ
とで光伝導電流を許容値以下とすることができ、輝度傾
斜やクロストーク等の画質劣化ない、高性能、高信頼性
を実現した薄膜トランジスタを提供することができる。
尚、前記「許容値」とは、例えば後述するが、10pA
以下の値である。
【0066】また、前述した図1(a)より、Ioff
チャネル幅W及び光強度Bに比例するので、IoffとI
photoとは下記(9)式の関係を満たす。 Ioff=Iphoto・(W/4)・B…(9)
【0067】そこで、上記(9)式と(8)式よりI
photoを消去すると、下記(10)式のようになる。
【0068】 Ioff(4/(W・B))=5×10-15・Wd…(10) そして、上記(7)、(10)式より空乏層幅Wdを消
去すると、下記(11)式が得られる。ここで、図1
(a)よりIoffはチャネル幅Wに比例する。 R=Ioff・1017/(B・W)−30…(11)
【0069】ところで、一般的に高品位の画質を維持す
るためには、Ioffは10pA以下の値が必要である。
その理由について以下に説明する。図5にアクティブマ
トリックスの等価回路を示す。
【0070】TFTのOFF抵抗Roffが小さくなる
と、次の書き込みまで電荷が保持できなくなり電圧ロス
となる。時間T後の画素電圧Vは(12)式で記述され
る。 V=V0{1−exp(T/(Roff×Ctot))…(12) ここで、Ctot=Cs+Clc
【0071】また、TFTのOFF電流(Roff=Vsd/
off)をパラメータとした場合の、時間と電圧ロスの
シミュレーション結果を図6に示す。図6より、16m
sec(1/60Hz)の保持時間で、電圧ロスを0.0
2V以下に抑制するためには、バックライト照射状態で
OFF電流を10pA以下にする必要があることが確認
される。
【0072】よって、前記(11)式のIoffを10p
A以下とすると次式が得られる。 (R+30)・B・W<10・10-12・1017=1×106 …(6) となる。また、薄膜トランジスタが使用される条件によ
っては、OFF電流を抑制する値は変化するので、下記
(5)式のように表すことができる。 (R+30)・B・W<C …(5) 尚、Cは光伝導電流によって定められる定数である。
【0073】このようにして、上記(6)式を満たす薄
膜トランジスタは、光伝導電流を抑制することができる
ものであり、従って、クロストークや輝度傾斜を防ぐこ
とができ、画質が優れ、高性能、高信頼性を実現するこ
とができる。
【0074】また、上記式(6)は液晶パネルとしての
バックライト輝度を含んだ式であるが、一般的に薄膜ト
ランジスタは常にバックライトを備えた透過型のみとは
限らない。従って、バックライト輝度Bを最高5000
cd/m2と仮定すると、前記(6)式は (R+30)・W<2×102…(2’) となり、前記(2’)式を満たす薄膜トランジスタは、
バックライトの輝度Bに関係なく、即ち、透過、反射型
を問わない薄膜トランジスタとすることができる。
【0075】尚、好ましくは、上記(2’)式は、薄膜
トランジスタの設計上の余裕を考慮して、下記(2)式
で表すことができる。 (R+30)・W<1×103…(2)
【0076】
【0077】
【0078】また、前記TFTの構成において、LDD
領域を形成することにより、該LDD領域以上には空乏
層は広がらず、前述したように空乏層幅と比例関係にあ
る光伝導電流を抑制することができることとなる。図1
6は、チャネル領域とLDD領域において、TFTをO
FF状態にした場合(Vg=−10V、Vd=6V時)
の電界をシミュレーションした結果を示す。
【0079】前記シミュレーション結果より、電界のか
かる領域はシート抵抗に依存しており、LDD領域のシ
ート抵抗が20kΩ/□の場合は0.4μm程度、シー
ト抵抗が100kΩ/□の場合では1.0μmであるこ
とが確認できた。
【0080】尚、前記チャネル幅は4μmで行っている
が、チャネル領域のチャネル幅Wを微細化し、2μm以
下とする場合には、特に、前記関係式(2)式は薄膜ト
ランジスタを作製する上での有効な指針となる。また、
以下の実施の形態では、前記シミュレーションに基づ
き、TFTを作製したものについて具体的に説明する。
【0081】(実施の形態1−1)図7は、本発明の実施
の形態1に係る薄膜トランジスタを画素スイッチング素
子として使用した液晶表示装置の概略断面図、図8は、
本発明の実施の形態1に係る薄膜トランジスタの概略断
面図、図9は、図8の概略平面図である。
【0082】図7に示すように、液晶表示装置50は、
液晶パネル部51と、該液晶パネル部51の裏面側に配
置されたバックライト部52等とを備えた透過型液晶表
示装置である。前記液晶パネル部51は、偏光板53・
53、ガラス基板2・54b、マトリックス状に配置さ
れた薄膜トランジスタ1、画素電極55、配向膜56、
液晶層57、共通電極58等より構成されている。
【0083】前記ガラス基板2上には薄膜トランジスタ
1(以下、TFTと称する)および画素電極55を形成
し、前記基板54bには共通電極58を形成している。
また、前記基板2・54bにはそれぞれ、ポリイミド樹
脂等よりなる配向膜56・56を形成し、前記配向膜5
6・56を配向方向が互いに直交する方向に予めラビン
グ処理しており、基板2・54bは、図示せぬスペーサ
ーを介して対向配置されている。
【0084】また、前記基板2・54b間には液晶層5
7が挟持されており、前記液晶層57内の液晶は90度
捻じれ配向している。さらに、前記2・54bの外側面
には偏光板53・53が、規制する光の振動方向が互い
に平行となるように配置されている。
【0085】また、前記液晶パネル部51の裏面(下
方)側にはバックライト部52を配置している。前記バ
ックライト部52は、冷陰極管等の発光素子と、光を均
一化するための光分散板等より構成されている。
【0086】次に、前記薄膜トランジスタについて、図
8、図9を用いて説明する。
【0087】薄膜トランジスタ1は、ガラス基板2上
に、膜厚が500Åの多結晶シリコン層3、膜厚が10
00ÅのSiO2 (二酸化シリコン)から成るゲート絶
縁層4、アルミニウムから成るゲート電極5a、及びS
iO2 から成る層間絶縁層6が順に積層されて構成され
ている。
【0088】また、前記多結晶シリコン層3は、ゲート
電極5aの直下に位置するチャネル領域3cと、濃度が
高いソース領域3a(n+層)と、不純物濃度が高いド
レイン領域(n+層)3bとから構成されている。ま
た、本実施の形態においては、LDD領域(n−層)3
d・3eの長さΔLは0.4μmに設定されている。ま
た、前記チャネル領域3cのチャネル幅Wは5μmに設
定されている。
【0089】ここで、前記ドレイン領域のシート抵抗を
R(kΩ/□)、このアクティブマトリックスTFTが
使われる液晶表示装置50のバックライト部52の輝度
をB(cd/m2)、前記チャネル領域3cのチャネル
幅をW(μm)とした場合、下記(6)式を満たすよう
に設計する。 (R+30)・B・W=Ioff<1×106 …(6)
【0090】また、TFT1には、更に、例えばアルミ
ニウムから成るソース電極7及びドレイン電極8が設け
られており、ソース電極7は、ゲート絶縁層4及び層間
絶縁層6に形成されているコンタクトホール9aを介し
て、ソース領域3aに接続され、また、ドレイン電極8
は、ゲート絶縁層4及び層間絶縁層6に形成されている
コンタクトホール9bを介して、ドレイン領域3bに接
続されている。
【0091】次に、薄膜トランジスタの製造方法を説明
する。図10は本発明の実施の形態1−1に係る薄膜ト
ランジスタの製造方法を示す概略断面図、図11は同じ
く薄膜トランジスタの製造方法を示す概略断面図、図1
2は同じく薄膜トランジスタの製造方法を示すフローチ
ャートである。
【0092】(1)先ず、プラズマCVD法により、ガ
ラス基板2上に膜厚が500Åのa−Si層15を堆積
させ、次いで400℃で脱水素処理を行なう(図10
(a))。この脱水素処理は、結晶化を行う際に水素の
脱離によるSi膜のアブレーションの発生を防ぐことを
目的としている。尚、a−Siを形成する工程はプラズ
マCVD以外でも減圧CVDやスパッタなどのプロセス
を用いることは可能である。また、プラズマCVDその
他の方法を用いてポリシリコン膜を直接堆積することも
できる。この場合は、後述するレーザーによるアニール
工程が不要となる。
【0093】(2)次いで、波長308nmのエキシマ
レーザーを用いたレーザーアニールによりa−Si層1
5の溶融再結晶化(p−Si化)を行ない、多結晶シリ
コン層16を形成する(図10(b))。
【0094】(3)次いで、多結晶シリコン層16を所
定形状に島化して、多結晶シリコン層3を形成する(図
10(c))。
【0095】(4)次いで、ガラス基板2上に、多結晶
シリコン層3を覆うようにして、ゲート絶縁層4とな
る、厚さが1000ÅのSiO2(二酸化シリコン) 層を
形成する(図10(d))。
【0096】(5)次いで、ゲート電極5aとなる、ア
ルミニウムから成る金属層17を製膜する(図10
(e))。
【0097】(6)次いで、金属層17を所定形状にパ
ターニングしてゲート電極5aを形成する(図10
(f))。
【0098】(7)次いで、ゲート電極5aをマスクと
して使用し、不純物のドープを行なう(図10
(g))。具体的にはイオンドーピング法により不純物
としてリンイオンをドーピングする。これにより、ゲー
ト電極5aの直下に位置するチャネル領域3cは、不純
物がドープされない領域となる。そして、多結晶シリコ
ン層3のチャネル領域3cを除く領域は、不純物がドー
プされた層となる。尚、この場合のドーピング加速電圧
は80kVでビーム電流密度は1μA/cm2とし、高加
速でn型領域を作成するものである。
【0099】(8)次いで、ゲート電極5aを覆って、
フォトレジスト18を製膜する(図10(h))。
【0100】(9)次いで、フォトレジスト18を異方
性エッチングによりパターン状に形成して、レジスト膜
5bを形成する(図11(i))。この際、異方性エッ
チングにより正確なレジスト膜5bのパターンを形成す
ることができる。
【0101】(10)次いで、図11(j)に示すよう
に、レジスト膜5bをマスクとして使用し、第2回目の
不純物のドープを行なう。具体的には、イオンドーピン
グ法により不純物としてリンイオンをドーピングする。
この場合のドーピング加速電圧は12kVでビーム電流
密度は0.5μA/cm2とし、低加速で高濃度のn型
領域を作成するものである。
【0102】(11)次いで、層間絶縁層(SiOx )
6を製膜する(図11(k))。
【0103】(12)次いで、層間絶縁層6及びゲート
絶縁層4にコンタクトホール9a・9bを開口する(図
11(L))。
【0104】(13)そして、スパッタ法により、例え
ばAlなどの金属層をコンタクトホール9a・9bに充
填し、金属層の上部を所定形状にパターニングしてソー
ス電極7及びドレイン電極8を形成する(図11
(m))。こうして、TFT1が作製される。
【0105】前記の例では、nチャネルTFTについて
説明したけれども、pチャネルTFTについても同様の
製造プロセスにより製造することができる。
【0106】前記製造方法により作成した薄膜トランジ
スタの裏面より、5000cd/m 2の光を照射した場
合、OFF電流はほぼ5pAとなる。前述したように、
バックライト照射状態でOFF電流を10pA以下にす
る必要があるので、本実施の形態に係る薄膜トランジス
タは、良好な表示特性を確保できる。
【0107】また、薄膜トランジスタの電圧/電流特性
を図13に、更にOFF電流の基板面内のばらつきを図
14に示す。図13に示すように、本実施の形態に係る
TFT1(L3のグラフ)は、安定した大きいON電流
と小さいOFF電流を確保できた。また、図14より、
このようにして作製されたTFT1は、基板面内上での
ばらつきを小さくすることができる。
【0108】図15にn型領域の濃度をパラメータとし
た、薄膜トランジスタのVg−Id特性をシミュレーシ
ョンした結果を示す。LDD領域のシート抵抗が20k
Ω/□以下でOFF電流は急激に大きくなる。従って、
LDD領域のシート抵抗は少なくとも20kΩ/□以上
の値が必要である。一方、LDD領域のシート抵抗を1
00kΩ/□以上にした場合、トランジスタのON電流
が低下しパネルの動作が不安定となった。従って、LD
D領域のシート抵抗の範囲は、20kΩ/□以上100
kΩ/□以下とすることが望ましい。
【0109】一般的に、バックライト輝度は最大500
0cd/m2程度であり、その場合、光伝導電流を10
pA以下に抑えるための空乏層幅Wdを求めると以下の
ようになる。即ち、前記(10)式にW=4、B=50
00、Ioff=10×10 -12を代入することにより
空乏層幅を求めることができ、Wd=0.4μmとな
る。
【0110】前記空乏層幅は、LDD領域の長さ以上に
ならないので、LDD領域の長さΔLを0.4μm以下
とすることにより実効的な空乏層領域が0.4μm以下
となり、光伝導電流を抑制(10pA以下と)した構成
とすることができる。尚、LDD領域が0.1μmより
小さくなると電界緩和効果がなくなり、図2(b)に示
すように、OFF電流が増大するので、前記LDD領域
は0.1μmより大きい方が望ましい。
【0111】また、前記(10)式において、バックラ
イト輝度Bが、例えば2000cd/m2の場合には、
空乏層幅Wdは1μmとなる。
【0112】従って、空乏層幅は、LDD領域の長さ以
上にならないので、LDD領域の長さΔLを1.0μm
以下とすることにより実効的な空乏層領域が1.0μm
以下となり、光伝導電流を抑制することができる。尚、
より好ましくは0.4μm以下とするのが良い。
【0113】また、検査工程において、LDD領域が
1.0μmを超えるようなデバイスはOFF特性を満足
できない。従って、LDD領域の長さΔLが1.0μm
以下であるものを良品とする検査工程を行うことによ
り、良品、不良品を選別することが可能となり、パネル
工程での材料ロスを削減することができる。
【0114】また、表1に示すように、実験例1〜3
(即ち、前記(2)式を満たすもの)は、光照射時のO
FF電流を抑制することができるが、実験例4、5(即
ち、前記(6)式を満たさないもの)は、光照射時のO
FF電流を抑制することができないことが確認された。
【表1】
【0115】このようにして、前記(6)式により、新
たに制御できる因子(ドレイン領域のシート抵抗)とチャ
ネル領域のチャネル幅との関係によって、光照射時のO
FF電流(光伝導電流)を抑制する範囲を規定すること
ができる。よって、上記(6)式の関係を満たす薄膜ト
ランジスタを作製することにより、OFF電流の増加を
抑えることができるので、クロストークや輝度傾斜を防
ぐことができ、高性能、高信頼性を実現した薄膜トラン
ジスタの提供をすることができる。
【0116】(実施の形態1−2)本発明の実施の形態
1−2に係る薄膜トランジスタの製造方法について説明
する。
【0117】本実施の形態1−2の薄膜トランジスタは
陽極酸化によって、LDD領域の長さを0.2μm〜
0.5μmと小さく形成されたものである。これより、
ドレイン側の領域は高濃度不純物領域となるので、LD
D領域の長さ以上に空乏層幅が広がることがないので、
光伝導電流を抑制することができるものである。具体的
な製造方法の説明を以下に説明する。図17は本発明の
実施の形態1−2に係る薄膜トランジスタの製造方法を
示す概略断面図、図18は同じく、薄膜トランジスタの
製造方法を示す概略断面図である。
【0118】前述した実施の形態1−1と同様にして、
ガラス基板2上にa−Si層15を堆積させ、次いで、
波長308nmのエキシマレーザーを用いたレーザーア
ニールによりa−Si層15の溶融再結晶化(p−Si
化)を行ない、多結晶シリコン層16を形成する。次い
で、多結晶シリコン層16を所定形状に島化して、多結
晶シリコン層3を形成する。次いで、ガラス基板2上
に、多結晶シリコン層3を覆うようにして、ゲート絶縁
層4を形成する。(図17(a)〜(d))。
【0119】次いで、金属層17を製膜し、該金属層1
7上にフォトレジスト17aをパターン状に形成し、エ
ッチング技術により前記金属膜17をパターニングして
ゲート電極5aを形成する。次いで、ゲート電極5aの
側面を陽極酸化して、酸化絶縁層5bを形成する。(図
17(f))。
【0120】次いで、図17(g)に示すようにして、
ゲート電極5aをマスクとして使用し、不純物のドープ
を行なう。具体的にはイオンドーピング法により不純物
としてリンイオンをドーピングする。これにより、ゲー
ト電極5aの直下に位置するチャネル領域3cは、不純
物がドープされない領域となる。そして、酸化絶縁層5
b・5b直下に位置する領域にLDD領域3d・3eが
形成され、それらの外側にチャネル領域3a、ドレイン
領域3bが形成される。
【0121】次いで、図18(h)〜(j)に示すよう
にして、層間絶縁層(SiOx )6を製膜し、次いで、
層間絶縁層6及びゲート絶縁層4にコンタクトホール9
a・9bを開口し、そして、スパッタ法により、例えば
Alなどの金属層をコンタクトホール9a・9bに充填
し、金属層の上部を所定形状にパターニングしてソース
電極7及びドレイン電極8を形成する。こうして、TF
Tが作製される。
【0122】本実施の形態の陽極酸化によれば、LDD
領域の長さを0.2μm〜0.5μmと小さくすること
が可能である。これよりドレイン側の領域は高濃度不純
物領域となるので、本長さ以上に空乏層幅が広がること
がない。従って、光伝導電流を小さく抑えることができ
る。
【0123】これにより、薄膜トランジスタのOFF時
には、前記低濃度不純物領域がキャリアの枯渇する高抵
抗層となるためOFF電流の低減を図ることができる。
そして、前記(2)式より、LDD領域の長さの指針を
決めることができ、OFF電流低減のために必要以上に
LDD領域を確保する必要はなくなる。また、前記
(2)式は、更に(6)式を満たすことにより、薄膜ト
ランジスタのON時には、ゲート電極からの電界の作用
により、ゲート電極下の低濃度不純物領域はキャリアと
なる電子が蓄積して低抵抗領域となり、ON電流の減少
は起こらない。よって、(2)式および(6)式を満た
す薄膜トランジスタは、ON電流を十分確保すると共に
OFF電流を少なく押さえることが可能となる。
【0124】加えて、不純物ドーピングは、加速電圧が
10kV以上30kV以下及びビーム電流密度が0.0
5μA/cm2以上1μA/cm2以下の低速でのイオン
ドーピング法を用いることにより、イオンドーピング時
でのイオンの加速電圧が低いために、ドーピング時にお
ける損傷を少なくすることができる。また、不純物ドー
ピング時でレジストをマスクとした場合でも、レジスト
が変質することなくきれいに除去できる。
【0125】(実施の形態1−3)本発明の実施の形態
3について、図19〜図22を参照しながら説明する。
図19は本発明の実施の形態1−3に係る薄膜トランジ
スタを用いたC−MOSインバータの配線パターンを示
す平面図であり、図20はその等価回路図であり、図2
1は図19の矢視X−X’断面図である。
【0126】C−MOSインバータ50は、例えば液晶
表示装置の駆動回路を構成する。このC−MOSインバ
ータ50は、nチャネルTFT22とpチャネルTFT
23とから構成されている。nチャネルTFT22は、
上記実施の形態1のnチャネルTFT1と同様の構成を
有しており、対応する部分には同一の参照符号を付す。
【0127】pチャネルTFT23は、LDD構造でな
い通常タイプのTFTである。即ち、TFT23は、ガ
ラス基板2上に、多結晶シリコン層24、SiO2 (二
酸化シリコン)から成るゲート絶縁層4、アルミニウム
から成るゲート電極25、及びSiO2 から成る層間絶
縁層6が、順に積層されて構成されている。多結晶シリ
コン層24は、ゲート電極25の直下に位置するチャネ
ル領域24c、チャネル領域24cの両側に配置される
ソース領域24a(p+層)及びドレイン領域24b
(p+層)とから構成されている。更に、このTFT2
3には、例えばアルミニウムから成るソース電極26及
びドレイン電極27が設けられている。ソース電極26
は、ゲート絶縁層4及び層間絶縁層6に形成されている
コンタクトホール28aを介して、ソース領域24aに
接続されている。また、ドレイン電極27は、ゲート絶
縁層4及び層間絶縁層6に形成されているコンタクトホ
ール28bを介して、ドレイン領域24bに接続されて
いる。そして、nチャネルTFT22のゲート電極5及
びpチャネルTFT23のゲート電極25は、図20に
示すように入力端子30に共通に接続されている。ま
た、nチャネルTFT22のドレイン電極8及びpチャ
ネルTFT23のドレイン電極27は、図19に示すよ
うに出力端子31に共通に接続されている。
【0128】本実施の形態1−3においては、nチャネ
ルTFTのドレイン側のみを前記実施の形態1−1で説
明したLDD構造とし、TFTのサイズを小さくするこ
とができ、ソース・ドレイン間距離を6μm程度に抑え
ることが可能であり、ソース、ドレインの両方にLDD
領域を形成する場合に比較して約50%以下のサイズと
することができ、TFTの微細化を図ることができる。
【0129】尚、nチャネルTFT及びpチャネルTF
Tの両者ともLDD構造とするようにしてもよい。但
し、アレイ基板に占める回路面積を小さく抑えるため
に、nチャネルTFT及びpチャネルTFTのいずれか
一方のみをLDD構造とする場合には、nチャネルTF
T側とするのが望ましい。なぜなら、pチャネルTFT
のキャリアであるホールと、nチャネルTFTのキャリ
アである電子の各移動度を比較すると、電子の方が格段
に大きい。従って、pチャネルTFTとnチャネルTF
Tとに、同じ電界が印加された場合、nチャネルTFT
の方がキャリアによって受ける衝撃が大きく、そのため
nチャネルTFTの方が劣化し易い。よって、TFTの
劣化を防止して信頼性の向上を図る観点からすると、n
チャネルTFTの方をLDD構造とするのが望ましいか
らである。
【0130】C−MOSインバータにおけるon/of
f時でのn−chトランジスタのバイアス状態における
動作ポイントを図22に示す。このようにインバータに
おけるn−chTFTにおいては、マイナス側の電源に
対しゲート電極の極性は常に0Vより高い電圧で動作す
る。したがってマイナス側の電源は常にn−chTFT
のソース電極となって作用し、出力側は常にドレイン電
極となって作用する。従ってこの部分を出力側部分のみ
を上記構成とした回路を用いることは、アレイ基板にお
ける回路部分のしめる面積の縮小に寄与する。またこの
部分での寄生容量の減少に寄与する。
【0131】(その他の事項)実施の形態1−1〜1−3
では、1種類の濃度を有するLDD領域について説明し
たが、本発明はこれに限定されるものではなく、濃度差
が異なる複数のLDD領域を設けるようにしてもよい。
即ち、LDD領域を、チャネル領域に向かうに連れて不
純物濃度が段階的に低下していく複数の接合領域から構
成することによって、多段階的に不純物濃度を変化させ
ることができるので、半導体層での電界の集中をより緩
和することができる。
【0132】また、前記LDD領域はドレイン領域とチ
ャネル領域との間にのみ形成されても良く、このように
構成することにより、OFF電流の低減等の効果を奏す
ると共に、薄膜トランジスタの面積を小さくすることが
可能となる。
【0133】また、実施の形態1−1〜1−3では、ト
ップゲート型のTFTを用いて説明したが、ボトムゲー
ト型のTFTに本発明を適用することもできる。
【0134】また、実施の形態1−1〜1−3で説明し
た薄膜トランジスタは、液晶表示装置以外にも、EL装
置にも適用することが可能である。即ち、実施の形態1
−1〜1−3に記載の薄膜トランジスタをスイッチング
素子として基板上に複数形成し、該基板を備えたEL装
置とすることにより、光伝導電流を抑制した構成とする
ことができる。
【0135】[第2の発明群] (第2の発明群の概念)本発明は、薄膜トランジスタ
(以下「TFT」と称する)のOFF電流を抑えるとと
もに、LDD領域の長さを必要最小限に押さえてON電
流の減少を抑制する構成をとることにより、高性能、高
信頼性を有するTFTを実現することを目的とするもの
である。そこで、本発明者らは、真に必要なLDD領域
の長さを求めるために、LDD領域部分をシミュレーシ
ョンにより動作解析を行い、電界のかかる領域がどの程
度かを求めた。
【0136】図23は、シート抵抗をパラメータとして
LDD領域を0.5μmから3μmまで変化させた場合
のVg−Id特性をシミュレーションした結果を示すグ
ラフである。
【0137】この結果より、Vg−Id特性はLDD領
域の濃度に対して大きな依存性を持つが、LDD領域の
長さに対しては依存性を持たないことが確認された。以
下にこの原因について考察する。
【0138】図24にチャンネル領域とLDD領域にお
いて、TFTをOFF状態にした場合(Vg=−10
V、Vd=6V時)の電界をシミュレーションした結果
を示す。
【0139】前記シミュレーション結果より、電界のか
かる領域はシート抵抗に依存しており、シート抵抗が2
0kΩ/□の場合は0.4μm程度、シート抵抗が10
0kΩ/□の場合では1.0μmであることが確認でき
た。
【0140】従って、電界のかかる領域以上にLDD領
域を大きくしても電界の緩和効果には効果が無く、単に
トランジスタのチャンネル領域に抵抗が直列に挿入され
るだけであることが解った。
【0141】また、図25は、実際のLDD領域を持つ
TFTの、LDD領域の長さ(ΔL)とOFF電流及び
LDD領域の長さ(ΔL)とON電流との関係を示すグ
ラフである。尚、LDD領域のシート抵抗は100kΩ
/□である。
【0142】図25(a)に示すように、LDD領域を
1μmより長くしても、OFF電流の低減効果は無く、
前述したシミュレーション結果を反映している。また、
図25(b)に示すように、LDD領域が1.5μmよ
り長くなると、ON電流を十分確保することができずに
ON電流は低減した。この結果より、LDD領域の範囲
を1μm以上1.5μm以下とすることにより、ON電
流を十分確保すると共にOFF電流を小さく押さえるこ
とが可能となる。尚、以下の実施の形態では、前記シュ
ミレーションに基づき、TFTを作製したものについて
具体的に説明する。また、実際のTFTの作製工程にお
いては、前述のLDD領域を確実に確保するために、後
に説明するが、マスク合わせの際の合わせマークにより
決定することができる。
【0143】(実施の形態2−1)図26は、実施の形態
2−1に係る薄膜トランジスタの簡略化した断面図、図
27は、図26の概略平面図である。
【0144】本実施の形態2−1では、本発明をnチャ
ネル薄膜トランジスタに適用した例が示されている。こ
の薄膜トランジスタ(以下、TFTと称する)101
は、ガラス基板102上に、膜厚が500Åの多結晶シ
リコン層103、膜厚が1000ÅのSiO2 (二酸化
シリコン)から成るゲート絶縁層104、アルミニウム
から成るゲート電極105、及びSiO2 から成る層間
絶縁層106が順に積層されて構成されている。前記ゲ
ート電極105aは、レジスト膜105bに覆われて形
成されている。尚、前記レジスト膜105bの代わりに
金属膜を用いても良い。
【0145】また、前記多結晶シリコン層103は、ゲ
ート電極105aの直下に位置するチャネル領域103
cと、不純物濃度が高いソース領域103a(n+層)
と、不純物濃度が高いドレイン領域(n+層)103b
と、不純物濃度が低い低濃度不純物領域(LDD領域:
n−層)103d,103eとから構成されている。低
濃度不純物領域103dは、ソース領域103aとチャ
ネル領域103cとの間に介在し、低濃度不純物領域1
03eは、ドレイン領域103bとチャネル領域103
cとの間に介在している。これら低濃度不純物領域10
3d,103eは、レジスト膜105bのゲート電極1
05aからはみ出た部分105b1 ,105b2 の直下
に位置している。従って、低濃度不純物領域103dと
ソース領域103aとの接合面は、レジスト膜105b
の端面(図1の左側端面)とほぼ一致しており、低濃度
不純物領域103dとチャネル領域103cとの接合面
は、ゲート電極105aの端面(図1の左側端面)とほ
ぼ一致している。また、低濃度不純物領域103eとド
レイン領域103bとの接合面は、レジスト膜105b
の端面(図1の右側端面)とほぼ一致しており、低濃度
不純物領域103dとチャネル領域103cとの接合面
は、ゲート電極105aの端面(図1の右側端面)とほ
ぼ一致している。また、本発明においては、前記低濃度
不純物領域の長さΔLは、1μm以上1.5μm以下、
チャネル幅Wは5μmに設定されている。
【0146】また、TFT101には、更に、例えばア
ルミニウムから成るソース電極107及びドレイン電極
108が設けられており、ソース電極107は、ゲート
絶縁層104及び層間絶縁層106に形成されているコ
ンタクトホール109aを介して、ソース領域103a
に接続され、また、ドレイン電極108は、ゲート絶縁
層104及び層間絶縁層106に形成されているコンタ
クトホール109bを介して、ドレイン領域103bに
接続されている。
【0147】次に、本発明の実施の形態2−1に係る薄
膜トランジスタの製造方法を説明する。図28、図29
は本発明の実施の形態2−1に係る薄膜トランジスタの
製造方法を示す概略断面図、図30は、本発明の実施の
形態2−1に係る薄膜トランジスタの製造方法を示すフ
ローチャートである。
【0148】(1)先ず、プラズマCVD法により、ガ
ラス基板102上に膜厚が500Åのa−Si層105
を堆積させ、次いで400℃で脱水素処理を行なう(図
28(a))。この脱水素処理は、結晶化を行う際に水
素の脱離によるSi膜のアブレーションの発生を防ぐこ
とを目的としている。尚、a−Siを形成する工程はプ
ラズマCVD以外でも減圧CVDやスパッタなどのプロ
セスを用いることは可能である。またプラズマCVDそ
の他の方法を用いてポリシリコン膜を直接堆積すること
もできる。この場合は、後述するレーザーによるアニー
ル工程が不要となる。
【0149】(2)次いで、波長308nmのエキシマ
レーザーを用いたレーザーアニールによりa−Si層1
15の溶融再結晶化(p−Si化)を行ない、多結晶シ
リコン層116を形成する(図28(b))。
【0150】(3)次いで、多結晶シリコン層116を
所定形状に島化して、多結晶シリコン層103を形成す
る(図28(c))。
【0151】(4)次いで、ガラス基板102上に、多
結晶シリコン層103を覆うようにして、ゲート絶縁層
104となる、厚さが1000ÅのSiO2(二酸化シリ
コン) 層を形成する(図28(d))。
【0152】(5)次いで、ゲート電極105aとな
る、アルミニウムから成る金属層117を製膜する(図
28(e))。
【0153】(6)次いで、金属層117を所定形状に
パターニングしてゲート電極105aを形成する(図2
8(f))。
【0154】(7)次いで、ゲート電極105aをマス
クとして使用し、第1回目の不純物のドープを行なう
(図28(g))。具体的にはイオンドーピング法によ
り不純物としてリンイオンをドーピングする。これによ
り、ゲート電極105aの直下に位置するチャネル領域
103cは、不純物がドープされない領域となる。そし
て、多結晶シリコン層103のチャネル領域103cを
除く領域A,Bは、不純物がドープされたn−層とな
る。尚、この場合のドーピング加速電圧は80kVでビ
ーム電流密度は1μA/cm2とし、高加速で低濃度のn
型領域を作成するものである。
【0155】(8)次いで、ゲート電極105aを覆っ
て、フォトレジスト118を製膜する(図28
(h))。
【0156】(9)次いで、フォトレジスト118をパ
ターニングしてレジスト膜105bを形成する(図29
(a))。ここで、(9)の工程については、図31〜
図34を用いて詳しく説明する。図31は、LDD領域
を形成する工程を説明する概略断面工程図、図32は、
フォトマスクと基板の斜視図、図33は同じく平面図、
図34は、LDD領域形成後の薄膜トランジスタの概略
断面図である。
【0157】図7に示すように、フォトマスク140と
基板102とは対向するように配置され、フォトマスク
140の上方位置には位置合わせ用光源(図示せぬ)が
配置されており、前記位置合わせ用光源よりフォトマス
ク140及び基板102にそれぞれ形成された位置合わ
せマーク141・142にレーザービームを入射し、そ
れぞれの位置合わせマークの位置信号を読むことによっ
て位置合わせを行うようにしている。
【0158】前記フォトマスク140の所定位置(フォ
トマスクの隅の102箇所)には、略正方形状の位置合
わせマーク141が形成されている。また、フォトマス
ク140の中央位置には、基板102に転写する遮蔽膜
のパターン(図示せぬ)が形成されている。
【0159】また、ガラス基板102上には、前記位置
合わせマーク141と対応する位置に、位置合わせマー
ク142が形成されている。該位置合わせマーク142
は、周囲を黒い領域で囲まれた略正方形状の透明な領域
とされている。尚、図示せぬが、前記位置合わせマーク
141・142の形状は正方形状に限定されるものでは
なく、例えば、円形状等とすることもできる。
【0160】そして、図33(a)に示すように、フォト
マスク140と基板102との位置がずれていない場合
には、フォトマスク140に形成された位置合わせマー
ク141は、基板102に形成された位置合わせマーク
142の透明な領域の中央に位置し、その状態でLDD
領域を形成した場合には、該LDD領域103d・10
3eの長さΔLは1.25μmとなるように設定されて
いる。
【0161】また、前記基板102とフォトマスク14
0の位置がずれ、位置合わせマーク142内に位置合わ
せマーク141が入っていなければ、形成されるLDD
領域の長さは1.5μmより大きくなることが分かり、
従って、そのような場合には、位置合わせマーク142
内に位置合わせマーク141が入るように基板とフォト
マスクの位置を合わせるようにする。尚、前記位置合わ
せマーク141を位置合わせマーク142の中央に合わ
せるようにしても、実際には、図33(b)に示すよう
に、紙面上、左右にぶれる場合がある。しかし、本発明
の場合、位置合わせ装置の精度は±0.25μmである
ので、位置合わせマーク42内に位置合わせマーク41
を位置するようにすることができる。このようにして、
図34に示すように、形成されるLDD領域3d・3e
の長さを1〜1.5μm以内とすることができるのであ
る。尚、位置合わせ装置の精度は、±0.25μmであ
るが、さらに精度の良い位置合わせ装置を用いれば、L
DD領域のばらつきを更に小さくすることができる。
【0162】次に、前記基板とフォトマスクの位置合わ
せの工程について説明する。
【0163】図31(a)に示すように、ゲート電極1
05a上に遮蔽膜となるフォトレジストを形成する。
【0164】次に、図31(b)、(c)に示すよう
に、該フォトレジストにフォトマスク140を介して露
光を行い、現像を行って所定のパターン状の遮蔽膜10
5bを形成する。
【0165】この場合、前述したように、位置合わせマ
ーク142の透明部分内に位置合わせマーク141が入
っていることを確認してから露光を行うようにする。
【0166】(10)次いで、図29(b)に示すよう
に、レジスト膜105bをマスクとして使用し、第2回
目の不純物のドープを行なう。具体的には、イオンドー
ピング法により不純物としてリンイオンをドーピングす
る。この場合のドーピング加速電圧は12kVでビーム
電流密度は0.5μA/cm2とし、低加速で高濃度の
n型領域を作成するものである。
【0167】これにより、多結晶シリコン層103のう
ち、レジスト膜105bの直下に位置する領域を除く領
域にイオンがドープされる。よって、1回目のイオンド
ーピングにより不純物が既にドープされている領域A,
Bのうち、レジスト膜105bに覆われていない領域
(ソース領域103a、ドレイン領域103bに相当す
る)では、更に不純物がドープされることになり、不純
物高濃度領域(n+層)となる。一方、領域A,Bのう
ち、レジスト膜105bに覆われている領域(低濃度不
純物領域103d,103eに相当する)では、2回目
のイオンドーピングによっては、不純物がドープされ
ず、低濃度不純物領域(n−層)となる。こうして、ソ
ース領域103a(n+層)とチャネル領域103cの
間に、低濃度不純物領域103d(n−層)を形成し、
また、ドレイン領域103b(n+層)とチャネル領域
103cの間に、低濃度不純物領域103e(n−層)
を形成することができる。しかも、ゲート電極105a
をマスクとして第1回目のイオンドーピングを行ない、
更に、レジスト膜5bをマスクとして第2回目のイオン
ドーピングを行なうので、ソース領域103a、低濃度
不純物領域103d,103e及びドレイン領域103
bを自己整合的に形成することができ、ゲート電極5と
ソース領域103aの重なり部分、並びにゲート電極1
05とドレイン領域103bの重なり部分を、考慮にい
れない程度に小さく抑えることができる。よって、LD
D領域の長さが1〜1.5μmとした薄膜トランジスタ
を形成することができ、OFF電流を低くすることがで
きると共に、ON電流の低下を可及的に抑えることがで
きる。
【0168】(11)次いで、層間絶縁層(SiOx )
106を製膜する(図29(c))。
【0169】(12)次いで、層間絶縁層106及びゲ
ート絶縁層104にコンタクトホール109a,109
bを開口する(図29(d))。
【0170】(13)そして、スパッタ法により、例え
ばAlなどの金属層をコンタクトホール109a,10
9bに充填し、金属層の上部を所定形状にパターニング
してソース電極107及びドレイン電極108を形成す
る(図29(e))。こうして、TFT101が作製さ
れる。
【0171】前記の例では、nチャネルTFTについて
説明したけれども、pチャネルTFTについても同様の
製造プロセスにより製造することができる。
【0172】前記製造方法により作成した薄膜トランジ
スタの電圧/電流特性を図35に示す。更にそのOFF
電流の基板面内のばらつきを図36に示す。
【0173】図35に示すように、本実施の形態2−1
に係るTFT101(L3のグラフ)は、高抵抗領域で
あるLDD領域が1〜1.5μmと小さいので、安定し
た大きいON電流と小さいOFF電流を確保できた。
【0174】また、アライナのあわせ精度が向上すれば
更にLDD領域の長さを小さくすることが可能であるこ
とは言うまでもない。また、n−領域のキャリヤ濃度を
大きくすることによって、電界のかかる領域は小さくな
るが、一方電界のピーク値は高くなる為に、OFF電流
は増加する。
【0175】図37にLDD領域の濃度をパラメータと
した、薄膜トランジスタのVg−Id特性をシミュレー
ションした結果を示す。
【0176】LDD領域のシート抵抗が20kΩ/□以
下でOFF電流は急激に大きくなる。従って、n−領域
のシート抵抗は少なくとも20kΩ/□以上の値が必要
である。一方、LDD領域のシート抵抗を100kΩ/
□以上にした場合、トランジスタのON電流が低下しパ
ネルの動作が不安定となった。従って、LDD領域のシ
ート抵抗の範囲は、20kΩ/□以上100kΩ/□以
下とすることが望ましい。
【0177】加えて、最初の不純物ドーピングは、加速
電圧が10kV以上30kV以下及びビーム電流密度が
0.05μA/cm2以上1μA/cm2以下の低速での
イオンドーピング法を用いることにより、イオンドーピ
ング時でのイオンの加速電圧が低いために、ドーピング
時における損傷を少なくすることができる。
【0178】また、1回目の不純物ドーピング時でレジ
ストをマスクとした場合でも、レジストが変質すること
なくきれいに除去できる。
【0179】あるいは2回目の不純物ドーピングは加速
電圧が30kV以上及びビーム電流密度が1μA/cm
2以上の高速でのイオンドーピング法を用い、2回目の
イオンドーピング時でも十分なイオンをポリシリコンに
注入することも可能である。
【0180】また、本実施の形態2−1で、TFT10
1を構成するLDD領域の長さΔLは1μm以上1.5
μm以下とし、ソース−ドレイン間電圧Vlcを6V、
チャネル幅Wを6μmの条件で行っている。ところで、
一般的にOFF電流は、ソース/ドレイン間の電界によ
り決定され、Vlcは、チャネル領域/LDD領域にの
み印加されるため、電界の強さはVlc/ΔLと表わさ
れる(Solid State Electron, 38, 2075(1995)。そし
て、電界の強さは、次式で表される。 4×106<Vlc/ΔL<6×106
【0181】そして、OFF電流は、チャネル幅Wに比
例するので、前記LDD領域の長さΔLと前記ソース−
ドレイン間電圧Vlcとチャネル幅Wとの関係を以下の
式(3)に表すことができる。 ΔL>(W・Vlc)/36……(3)
【0182】前記(3)式の意味について説明する。T
FTの小型化が進んだ場合には、前記ΔL、Wの値は小
さくなり、それに伴って、ソース−ドレイン間電圧Vl
cは低下する。そこで、LDD領域の長さΔLとソース
・ドレイン間電極Vlcとチャネル幅Wとを変化させた
TFTの特性を表2に示す。
【表2】
【0183】表2に示すように、実験例1〜5、7(即
ち、前記(1)式を満たすもの)は、OFF電流を抑制
することができるが、実験例6(即ち、前記(3)式を
満たさないもの)は、OFF電流を抑制することができ
ない。
【0184】また、前記チャネル領域のチャネル幅をW
とした場合、LDD領域の長さΔLとチャネル領域のチ
ャネル幅Lとチャネル幅Wとの関係は、下記(4’)式
で表すことができる。 ΔL<3・(W/L)……(4’)
【0185】前記(4)式は、ON電流の制限を示すも
のであり、ON電流はW/Lに比例することにより導か
れる条件であり、ON電流の条件は、W/L=0.5で
ΔLが1.5μm以下で減少する実験結果より導かれた
ものである。そして、表1に示すように、前記(4)式
を満たす実験例1、3、4、6は、ON電流を確保する
ことができた。
【0186】尚、上記(4’)式よりもさらにON電流
を確保するための好ましい条件として、下記(4)式に
より、ON電流を確保することができる。 ΔL<1.5・(W/L)…(4)
【0187】このように、薄膜トランジスタのOFF時
には、前記低濃度不純物領域がキャリアの枯渇する高抵
抗層となるためOFF電流の低減を図ることができる。
そして、前記(3)式より、LDD領域の長さの指針を
決めることができ、OFF電流低減のために必要以上に
LDD領域を確保する必要はなくなる。また、前記
(3)式は、更に(4)式を満たすことにより、薄膜ト
ランジスタのON時には、ゲート電極からの電界の作用
により、ゲート電極下の低濃度不純物領域はキャリアと
なる電子が蓄積して低抵抗領域となり、ON電流の減少
は起こらない。よって、(3)式および(4)式を満た
す薄膜トランジスタは、ON電流を十分確保すると共に
OFF電流を小さく押さえることが可能となる。尚、前
記チャネル幅は5μmで行っているが、チャネル領域の
チャネル幅Wを微細化し、2μm以下とする場合には、
特に、前記関係式(3)式、(4)式は薄膜トランジス
タを作製する上での有効な指針となる。
【0188】(実施の形態2−2)本実施の形態2−2で
は、前記実施の形態2−1の製造工程において、レジス
ト膜105bを形成する場合に、前記位置合わせマーク
を用いてLDD領域の長さを1μm以上1.5μm以下
とせずに、LDD領域の長さが1μm以上1.5μm以
下の条件を満たしているものを良品とする検査工程によ
って、LDD領域を前記範囲内とする薄膜トランジスタ
を得ることができる。従って、ON電流を十分確保する
と共にOFF電流を小さく押さえることが可能となる。
尚、本実施の形態2−2では、LDD領域を1μm以上
1.5μm以下に限定するものではなく、前記実施の形
態2−1で説明した(3)式、(4)式の範囲とするこ
とができる。
【0189】(その他の事項)前記実施の形態2−1、2
−2では、1種類の濃度を有する低濃度不純物領域につ
いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではな
く、濃度差が異なる複数の低濃度不純物領域を設けるよ
うにしてもよい。即ち、低濃度不純物領域を、チャネル
領域に向かうに連れて不純物濃度が段階的に低下してい
く複数の接合領域から構成することによって、多段階的
に不純物濃度を変化させることができるので、半導体層
での電界の集中をより緩和することができる。
【0190】また、前記低濃度不純物領域はドレイン領
域とチャネル領域との間にのみ形成されても良く、この
ように構成することにより、OFF電流の低減等の効果
を奏すると共に、薄膜トランジスタの面積を小さくする
ことが可能となる。さらに、このような薄膜トランジス
タは液晶表示装置以外への適用も可能である。
【0191】また、C−MOSインバータ回路であっ
て、pチャネル薄膜トランジスタとnチャネル薄膜トラ
ンジスタのうち、少なくともnチャネル薄膜トランジス
タを、実施の形態2−1、2−2に係る薄膜トランジス
タで構成することもできる。
【0192】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の構成に
よれば、本発明の課題を十分に達成することができる。
【0193】即ち、第1の発明群では、ON電流を十分
確保すると共に、光照射時の光伝導電流を小さく押さえ
ることが可能となり、消費電力が小さく、信頼性向上並
びに特性向上に対して、極めてその効果は大である。
【0194】また、第2の発明群では、ON電流を十分
確保すると共に、OFF電流を小さく押さえることが可
能となり、消費電力が小さく、合わせて信頼性向上並び
に特性向上に対して、極めてその効果が大である薄膜ト
ランジスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】TFTを構成するチャネル領域のチャネル幅W
と光伝導電流(OFF電流:I OFF)との関係、及びバ
ックライト輝度と光伝導電流との関係を示すグラフであ
る。
【図2】TFTをOFF状態にした場合の電界をシミュ
レーションした結果を示すグラフである。
【図3】シミュレーションにより得られたシート抵抗と
空乏層幅との関係を示すグラフである。
【図4】シミュレーション(W=4μmの場合)により
求められた空乏層幅と該空乏層幅に対応するシート抵抗
での光伝導電流との関係を測定した結果を示すグラフで
ある。
【図5】アクティブマトリックスの等価回路を示す図で
ある。
【図6】画素電圧ロスのシュミレーション結果を示すグ
ラフである。
【図7】本発明の実施の形態1−1に係る薄膜トランジ
スタを画素スイッチング素子として使用した液晶表示装
置の概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1−1に係る薄膜トランジ
スタの概略断面図である。て説明するための概略図であ
る。
【図9】図8の概略平面図である。
【図10】本発明の実施の形態1−1に係る薄膜トラン
ジスタの製造方法を示す概略断面図である。
【図11】同じく薄膜トランジスタの製造方法を示す概
略断面図である。
【図12】同じく薄膜トランジスタの製造方法を示すフ
ローチャートである。
【図13】薄膜トランジスタの電圧/電流特性を示すグ
ラフである。
【図14】OFF電流の基板面内のばらつきを示すグラ
フである。
【図15】n型領域の濃度をパラメータとした、薄膜ト
ランジスタのVg−Id特性をシミュレーションした結
果を示すグラフである。
【図16】TFTをOFFした場合の電界をシミュレー
ションした結果を示すグラフである。
【図17】本発明の実施の形態1−2に係る薄膜トラン
ジスタの製造方法を示す概略断面図である。
【図18】同じく、薄膜トランジスタの製造方法を示す
概略断面図である。
【図19】本発明の実施の形態1−3に係る薄膜トラン
ジスタを用いたC−MOSインバータの配線パターンを
示す平面図である。
【図20】図19の等価回路図である。
【図21】図19の矢視X−X’断面図である。
【図22】C−MOSインバータにおけるon/off
時でのn−chトランジスタのバイアス状態における動
作ポイントを示すグラフである。
【図23】シート抵抗をパラメータとしてLDD領域を
0.5μmから3μmまで変化させた場合のVg−Id
特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図24】チャンネル領域とLDD領域において、TF
TをOFF状態にした場合(Vg=−10V、Vd=6
V時)の電界をシミュレーションした結果を示す。
【図25】実際のLDD領域を持つTFTの、LDD領
域の長さ(ΔL)とOFF電流及びLDD領域の長さ
(ΔL)とON電流との関係を示すグラフである。
【図26】実施の形態2−1に係る薄膜トランジスタの
簡略化した断面図である。
【図27】図26の概略平面図である。
【図28】図28は本発明の実施の形態2−1に係る薄
膜トランジスタの製造方法を示す概略断面図である。
【図29】本発明の実施の形態2−1に係る薄膜トラン
ジスタの製造方法を示す概略断面図である。
【図30】本発明の実施の形態2−1に係る薄膜トラン
ジスタの製造方法を示すフローチャートである。
【図31】LDD領域を形成する工程を説明する概略断
面工程図である。
【図32】フォトマスクと基板の斜視図である。
【図33】同じく平面図である。
【図34】LDD領域形成後の薄膜トランジスタの概略
断面図である。
【図35】実施の形態2−1に係る薄膜トランジスタの
電圧/電流特性を示すグラフである。
【図36】実施の形態2−1に係る薄膜トランジスタの
OFF電流の基板面内のばらつきを示すグラフである。
【図37】LDD領域の濃度をパラメータとした、TF
TのVg−Id特性をシミュレーションした結果を示す
グラフである。
【図38】輝度傾斜とクロストークについて説明するた
めの概略図である。
【符号の説明】
1:薄膜トランジスタ 2:ガラス基板 3:多結晶シリコン層 3a:ソース領域 3b:ドレイン領域 3c:チャネル領域 3d・3e:低濃度不純物領域(LDD領域:n−層) 4:ゲート絶縁層 5a:ゲート電極 5b:レジスト膜 6:層間絶縁層 7:ソース電極 8:ドレイン電極 9a・9b:コンタクトホール 15:a−Si層 16 多結晶シリコン層 17:金属層 18:フォトレジスト 22:ポリシリコン 23:酸化シリコン膜 24・24:コンタクトホール 25:ゲート電極 26:ゲート電極パターン 27:ドレイン電極 30:層間絶縁膜 31:ソース電極 32:ドレイン電極 50:液晶表示装置 51:液晶パネル部 52:バックライト部 53:偏光板 54b:ガラス基板 55:画素電極 56:配向膜 57:液晶層 58:共通電極 101:ガラス基板 ΔL:LDD領域の長さ L:チャネル領域の長さ W:チャネル領域の幅 101:薄膜トランジスタ 102:ガラス基板 103:多結晶シリコン層 103a:ソース領域 103b:ドレイン領域 103c:チャネル領域 103d・103e:低濃度不純物領域(LDD領域:
n−層) 104:ゲート絶縁層 105a:ゲート電極 105b:レジスト膜 106:層間絶縁層 107:ソース電極 108:ドレイン電極 109a・109b:コンタクトホール 115:a−Si層 117:金属層 118:フォトレジスト 122:nチャネルTFT 123:pチャネルTFT 124:多結晶シリコン層 125:ゲート電極 126:ソース電極 127:ドレイン電極 140:フォトマスク 141・142:位置合わせマーク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山野 敦浩 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 29/786 H01L 21/336 G02P 1/1368 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 薄膜トランジスタをスイッチング素子と
    して備えたTN液晶パネル部と、 前記TN液晶パネル部に裏面側により光を供給するバッ
    クライト部と、 を備えた液晶表示装置であって、 前記TN液晶パネル部の薄膜トランジスタは、 チャネル領域と、該チャネル領域の両側に配置されたソ
    ース領域およびドレイン領域とが形成されるとともに、
    該ドレイン領域にはLDD領域が形成されてなる多結晶
    シリコン半導体層を有し、前記LDD領域のシート抵抗
    をR(kΩ/□)、前記チャネル領域のチャネル幅をW
    (μm)とした場合、式(2)の関係を満たし、 前記バックライト部はその輝度が最高5000cd/m
    2 とされている ことを特徴とする液晶表示装置。 (R+30)・W<1×103…(2)
  2. 【請求項2】 前記チャネル領域のチャネル幅Wが2μ
    m以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表
    示装置。
  3. 【請求項3】 前記LDD領域のシート抵抗が20kΩ
    /□以上、100kΩ/□以下であることを特徴とする
    請求項1または請求項2に記載の液晶表示装置。
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