JP3467293B2 - アシルイソシアネート類の製造方法 - Google Patents

アシルイソシアネート類の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアシルイソシアネートの
新規な製造方法に関する。特に塩化オキサリルによるア
シルイソシアネートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】その優れた反応性により、アシルイソシ
アネート類は尿素、カルバメート、及びポリマーの合成
に非常に有用である。アシルイソシアネート類の第1の
製造方法は、塩化アシルとシアン酸銀との反応からなる
(J.Am.Chem.Soc.,62,1595(1
940))。しかしながら、この方法は、シアン化銀の
コストが高いために工業的に使用することができない。
他の方法では、シアン酸銀をイソシアン酸に置き換えて
いる(米国特許第3,155,700号)。しかし、こ
の酸は、非常に不安定であると共に、620℃という非
常な高温でイソシアヌル酸を分解することによって製造
されるため、この合成は非常に困難である。
【0003】1962年〜1965年の間、A.J.S
pezialeらはアミド類と塩化オキサリルの反応に
よるアシルイソシアネート類の製造方法を開発した
(J.Org.Chem.,27,3742(196
2),28,1805(1963),30,4306
(1965))。しかしながらこの方法は使用する原料
アミドによっては非常に多種の副生成物が生成する。特
に脂肪族アミド類からのアシルイソシアネート類の収率
は非常に低い。更に、反応は一般に大きな発熱を伴い、
熱に不安定なイソシアネート類を得るのは非常に困難で
あり、この発熱を制御するのも非常に困難である。その
ため、反応媒体の冷却に用いる熱変換器の容量が十分で
なく、危険な暴走反応が進行する可能性がある。
【0004】浦野ら(S.Urano et al)は
最近、アクリロイル及びメタクリロイルイソシアネート
の生成におけるこの方法を改良し(米国特許第4,92
5,982号)、これらのイソシアネート類を好ましい
収率で得ることができるようになった。しかし、これら
は純品では得らていない。実際、副生成物としてβ−ハ
ロプロピオニルイソシアネートが同時に形成される。従
ってこの2つのタイプのイソシアネートを分離する必要
がある。
【0005】そこで、浦野ら(S.Urano et
al)は、アミドを塩化オキサリル溶液に徐々に添加す
ることによって生成したハロゲン化水素化オキサゾリン
ジオンの分解によりアルケノイルイソシアネート類を製
造することを提案した(米国特許第4,769,485
号)。しかしながらこの合成方法も大きな発熱を伴い、
この温度制御が困難である。更にこの方法では、必要な
塩化オキサリルをすべて反応容器中に一度に入れるた
め、危険である。従って塩化オキサリルは大量の溶媒で
希釈しなければならず、そのため溶解性及び撹拌につい
て問題が生じ、この方法での生産性は非常に悪い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前述
の方法の不都合を有さず、かつ高純度のアシルイソシア
ネート類を危険を伴わず高収率で得ることができるアシ
ルイソシアネートの製造方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によるアシルイソ
シアネート類の製造方法は、塩化オキサリルを、窒素上
に置換基を有さないアミド類及び/又はカルバメート類
のハロゲン化水素塩及び硫酸塩、及びその混合物からな
る群から選択される塩と反応させる工程と、その後30
〜150℃の温度で反応混合物を加熱する工程からな
る。
【0008】本発明で出発物質として用いるアミド及び
/又はカルバメートの塩は市販されているものを入手す
るか、または特にアミド類とカルバメート類を、硫酸又
はハロゲン化水素(例えば塩酸、臭化水素、ヨウ化水素
等)と反応させることによって簡単に製造することがで
きる。前記酸と塩を形成することができる、窒素上に置
換基を有さないアミド類及びカルバメート類はすべて塩
化オキサリルと反応させることができる。経済的な理由
から、アミド類、カルバメート類の塩化水素塩を用いる
のが好ましい。これらの塩化水素塩は、例えば塩化水素
ガス(好ましくは無水物)を、不活性有機溶媒中に懸濁
又は溶解したアミド又はカルバメート懸濁液又は溶液中
に流すことによって製造することができる。アミド又は
カルバメートの割合に対して最小限のハロゲン化水素を
用いなければならない。塩は塩化オキサリルとの反応で
使用する溶媒中で製造することができ、従って、塩と溶
媒を分離し、新たな溶媒を用いる必要はない。この場
合、アミド又はカルバメートを完全に塩に変化させた
後、これを塩化オキサリルと反応させることができる。
【0009】本発明による方法は特に次の構造式の塩に
変化させるのが好適である: Z(CONH2n,y(HmX) ここでZは1価又は2価の基で、1〜20の炭素原子を
有する、直鎖又は分岐形、飽和又は不飽和、置換又は非
置換の脂肪族基、5〜7の炭素原子を有する、飽和又は
不飽和、置換又は非置換の環状脂肪族基、7〜20の炭
素原子を有する、直鎖又は分岐形、飽和又は不飽和、置
換又は非置換の芳脂肪族基、置換又は非置換フェニル、
フェニレン、ナフチル、ナフチレン基、酸素、窒素、硫
黄から選択されるヘテロ原子を1個又は数個含有した5
又は6原子からなる飽和又は不飽和、置換又は非置換の
ヘテロ環を表し、またZはRO−、−O−R−O、又は
−R−O基を表し、ここでRは1価又は2価の基で、1
〜8の炭素原子を有する、直鎖又は分岐形、飽和又は不
飽和、置換又は非置換の脂肪族基、5〜7の炭素原子を
有する、飽和又は不飽和、置換又は非置換の環状脂肪族
基、7〜11の炭素原子を有する、直鎖又は分岐形、飽
和又は不飽和、置換又は非置換の芳脂肪族基、置換又は
非置換フェニル、フェニレン、ナフチル、ナフチレン基
を表し、nは1又は2の整数、mは1又は2の整数、y
はn/m値、Xはハロゲン原子、SO4又はHSO4基を
表す。
【0010】Z基は特に、ハロゲン原子、及び1〜20
の炭素原子を有するオキシ炭化水素基及びオキシハロゲ
ン化炭化水素基(例えば、メトキシ、フェニルオキシ、
クロロフェニルオキシ等)からなる群から選択される。
Zが1以上の芳香族、又はヘテロ芳香族基を含む基を表
す場合には、これらの基の置換基はまた、1〜20の炭
素原子を有する炭化水素基及びハロゲン化炭化水素基
(例えば、メチル、エチル、トリフルオロメチル、フェ
ニル、クロロフェニル、フルオロフェニル)及びニトロ
基から選択することができる。
【0011】脂肪族基または芳脂肪族基の不飽和結合は
エチレン型またはアセチレン型であってもよい。環状脂
肪族又は非芳香族ヘテロ環基では、不飽和結合はエチレ
ン型である。ハロゲン原子は塩素、臭素、フッ素原子か
ら選択するのが好ましい。ヘテロ環基のヘテロ原子は酸
素、窒素原子から選択するのが好ましい。Xはハロゲン
原子、例えば塩素、臭素、ヨウ素を表し、経済的な理由
から、Xは塩素原子であるのが好ましい。
【0012】反応は以下の一般式で表すことができる: Z(CONH2n,y(HmX)+nClCOCOCl
→Z(CONCO)n+2nHCl+nCO+yHmX 本発明による方法で有効に製造されるアシルイソシアネ
ート類には、例えば次のものがある:アセチルイソシア
ネート(Z=メチル)、プロピオニルイソシアネート
(Z=エチル)、ブチリルイソシアネート(Z=プロピ
ル)、イソブチリルイソシアネート(Z=イソプロピ
ル)、ピバロイルイソシアネート(Z=t−ブチル)、
ステアロイルイソシアネート(Z=CH3(CH2
16−)、トリクロロアセチルイソシアネート(Z=−C
Cl3);シクロペンタンカルボニルイソシアネート
(Z=シクロペンチル)、シクロヘキサンカルボニルイ
ソシアネート(Z=シクロヘキシル);フェニルアセチ
ルイソシアネート(Z=ベンジル);アクリロイルイソ
シアネート(Z=ビニル)、メタクリロイルイソシアネ
ート(Z=イソプロペニル)、シンナモイルイソシアネ
ート(Z=C65−CH=CH−);ベンゾイルイソシ
アネート(Z=フェニル)、p−メトキシベンゾイルイ
ソシアネート(Z=p−メトキシフェニル)、2,6−
ジフルオロベンゾイルイソシアネート(Z=2,6−ジ
フルオロフェニル)、2,6−ジクロロ−3−ニトロベ
ンゾイルイソシアネート(Z=2,6−ジクロロ−3−
ニトロフェニル)、及び1−又は2−ナフトイルイソシ
アネート(Z=ナフチル)、5−クロロ−2−ニトロベ
ンゾイルイソシアネート(Z=5−クロロ−2−ニトロ
フェニル);5−ニトロフロイルイソシアネート(Z=
5−ニトロフリル);スクシニルイソシアネート(Z=
−CH2CH2−,n=2)、アジポイルイソシアネート
(Z=−(CH24−,n=2)、テレフタロイルイソ
シアネート(Z=p−C64−,n=2);フマリルイ
ソシアネート(Z=−CH=CH−,n=2);メトキ
シカルボニルイソシアネート(Z=CH3O−)、エト
キシカルボニルイソシアネート(Z=C25O−)、t
−ブトキシカルボニルイソシアネート(Z=t−ブトキ
シ−)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルイ
ソシアネート(Z=Cl3CCH2O−)、ベンジルオキ
シカルボニルイソシアネート(Z=C65−CH2
−)、フェノキシカルボニルイソシアネート(Z=C6
5−O−);ビス1,4−(オキシカルボニル)ブチ
レンジイソシアネート。
【0013】本発明による方法は溶媒なしで行うことが
できるが、(その成分について言えば)非プロトン性で
かつ不活性の1溶媒、又は有機溶媒の混合物(好ましく
は無水物)を用いるのが好ましい。好適な溶媒には、ハ
ロゲン化または非ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば
ヘキサン、ジクロロメタン及び1,2−ジクロロエタ
ン);シクロアルカン類(例えばシクロヘキサン、及び
メチルシクロヘキサン);及び芳香族炭化水素(例えば
トルエン、キシレン、クロロベンゼン、及びo−ジクロ
ロベンゼン)がある。アルケノイルイソシアネート類、
特にメタクリロイルイソシアネートを製造するのに、o
−ジクロロベンゼンと炭素数20以下のアル、例えばn
−ヘキサン、n−ヘプタン又はシクロヘキサンの混合物
は全体的に好適である。
【0014】塩化オキサリルをアミド又はカルバメート
塩を含有した媒体中に添加するのが好ましく、特に、添
加と同時に消費されるように徐々に行い、これによって
更に危険性を抑制できる。塩化オキサリルは液体状態で
あるので、添加は非常に簡単である。塩化オキサリルの
ほぼ化学量論量が、反応するアミド塩又はカルバメート
塩の割合に対して必要とされ、:好ましくは1〜1.2
当量の塩化オキサリルをアミド又はカルバメート塩に対
して(即ち、0〜20%の範囲の過剰量を)添加する。
塩化オキサリルのアミドとの反応でその反応媒体でかな
りの熱放出を伴う従来の方法と違って、本発明で用いた
方法による塩化オキサリルのアミド又はカルバメートと
の反応は、僅かな吸熱反応で、熱の移送、特に冷却の必
要がない。従って反応開始温度は、例えば−20〜30
℃で任意に設定でき、容易にその温度を維持することが
できる。このときこの温度の反応条件下で化合物は安定
でかつ暴走反応の危険性がない。また、温度を室温、一
般に15℃〜30℃に設定すれば、工業的に非常に有利
なプロセスとなる。
【0015】塩化オキサリルを添加した後、塩がすべて
反応するように、反応混合物を必要であれば撹拌しなが
ら放置する。その後反応混合物を30℃〜150℃、好
ましくは35℃〜130℃の温度で加熱する。溶媒は一
般に、このような温度に比べて充分に高い沸点を有する
ものを選択する。溶媒沸点が低すぎる場合には、溶媒を
加熱前に変更してもよく、また好適な溶媒を添加しても
よい。
【0016】次に得られたアシルイソシアネートを反応
混合物から通常の技術(例えば、大気圧又は部分的真空
下での濾過、又は蒸留)で分離する。一般に反応中に形
成される中間媒体化合物の析出後、反応混合物を加熱す
ることによって、特定のイソシアネート類、例えばメタ
クリロイルイソシアネートの収率を向上させることがで
きる。析出が自発的に起こらない場合には、何らかの既
知の方法、例えば反応混合物に前述の操作で得られた中
間媒体化合物を少量添加し、及び/又は30℃までの温
度で静かに加熱することによって、析出を促進させても
よい。
【0017】本発明で記載した方法はまた、2つの別個
の工程で行ってもよい。この場合には、塩化オキサリル
とアミド塩またカルバメート塩との反応を前述のように
行い、生成物を通常の技術で反応混合物から分離する。
そして生成物を必要なだけ放置した後、前述のように加
熱してもよい。
【0018】本発明で記載した方法は、経済的な観点
と、副生成物が少ないことから工業的製法として好適で
ある。特にこの新規な方法によって、従来、A.J.S
pezialeらの方法からは低い収率でしか得られな
かった脂肪族アミド類から得られるアシルイソシアネー
ト類も高収率で得ることができる。
【0019】アシルイソシアネート類は薬学、農薬及び
高分子の技術分野で、多くの生成物の製造に非常に有用
である。例えばアセチルイソシアネートはトリアゾリノ
ン類の製造では鍵となる中間媒体として用いられる
(J.Heterocyl.Chem.1990,27
/(7),2017)。トリクロロアセチルイソシアネ
ートは、抗生物質、特に「セフルオキシム」(CA
84147 e)の合成中、カルバメート成分を形
成するに広く用いられる。また、他の抗生物質がt−ブ
トキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカ
ルボニル及びベンジルオキシカルボニルイソシアネート
類を用いて生成される。高反応性のメタクリロイルイソ
シアネートを共重合することにより架橋被膜として好適
な材料が製造され、歯科用接着剤やアクリルのエラスト
マーに用いられる。新規の薬剤、例えばリポキシゲナー
ゼ抑制剤はベンゾイルイソシアネート類から合成され
る。置換ベンゾイルイソシアネート、例えば2,6−ジ
フルオロベンゾイルイソシアネートは多くの尿素化ベン
ゾイル殺虫剤の製造に広く用いられている。保護された
アミン類を直接ベンゾイルオキシカルボニルイソシアネ
ートから合成することもできる(Synthesis,
12月号.1988,p.992)。
【0020】
【実施例】以下の実施例に本発明を例示して表すが、こ
れに限定するものではない。すべての反応は不活性雰囲
気中で、容易に入手可能な原料を用いて行う。使用した
塩化水素は無水物である。
【0021】(実施例1:ベンゾイルイソシアネートの
製造)36.3g(0.3mol)のベンズアミドと2
00gのジクロロメタンを250mlの反応容器に入れ
た。この媒体を撹拌しながら、13.8g(0.378
mol)の塩化水素ガスを44分間かけて、吹き込ん
だ。このとき系の温度は、21.3℃から38℃に上昇
した。ベンズアミドの塩化水素塩が白色の固体として析
出した。その1H NMRスペクトルはベンズアミドが
消失し、その塩化水素塩が得られたことを示した。: (CDCl3,ppm):7.53(2H 芳香族性,
t) 7.58(1H 芳香族性,t) 8.10(2H 芳香族性,t) 11.0−8.5(NHのH) 次に、42g(0.33mol)の塩化オキサリルを、
懸濁液に、撹拌を続けながら39分間にわたって冷却せ
ずに添加した。媒体の温度は、21.3℃から16℃に
徐々に低下し、塩化水素が勢いよく放出した。更に撹拌
を30分間続け、還流加熱させ(媒体の温度:38℃か
ら46℃;油浴温度:60℃)て懸濁していた固体を消
失させた。加熱を3時間後に中断し、媒体を冷却した。
ベンズアミドのベンゾイルイソシアネートへの転換率は
1H NMRによって決定されるように94.0%(C
DCl3;ppm)である(7.33−7.47、7.5
1−7.64、及び7.91−8.02での芳香族性プ
ロトン)。
【0022】(実施例2:ベンズアミドからのベンゾイ
ルイソシアネートの製造方法(比較例))この実施例は
本発明に関するものではなく、単に、本発明に記載した
方法によって得られる効果を示すためのものである。装
置は実施例1で使用したものと同様である。200gの
ジクロロメタンに36.3g(0.3mol)のベンズ
アミドを入れた懸濁液を撹拌しながら、これに42g
(0.33mol)の塩化オキサリルを38分間にわた
って滴下した。1/3の塩化オキサリルを滴下した時点
で温度は19.6℃から30.5℃に上昇した。すべて
の塩化オキサリルを滴下した後は、実施例1と同様の手
順を行った。しかし、この場合には生成した白色の固体
は完全には消失しなかった。前記と同様の方法で測定し
たベンゾイルイソシアネートへの転換率は88.6%で
ある。
【0023】(実施例3:メタクリロイルイソシアネー
トの製造)102g(1.2mol)のメタクリルアミ
ド、240gのo−ジクロロベンゼン、及び50gのヘ
キサンを1000mlの反応容器内に入れた。懸濁液を
室温で撹拌し、塩化水素ガスを冷却せずに媒体中に吹き
込んだ。メタクリルアミドに対して1.2〜1.3当量
の塩化水素を吹き込んだ後、媒体を18℃に冷却した。
得られたメタクリルアミドの塩化水素塩を、1H NM
Rスペクトルを用いて特定した: (CDCl3;ppm):2.15(CH3) 6.0(H,エチレン性) 6.5(H,エチレン性) 165g(1.1当量)の塩化オキサリルを撹拌しなが
ら45分間かけて滴下した。この際反応系の発熱は観察
されなかった。得られた生成物を、先の処理で得られた
同じ生成物に少量添加し、及び/又は30℃まで僅かに
加熱することによって析出させた。析出の完了後、31
0gのヘキサンを1時間にわたって添加した。次に反応
媒体を、昇温し、ほぼ+5℃の温度上昇が観察されるま
で約2時間、72−74℃で加熱した。加熱を更に20
分間続け、その後媒体を室温まで冷却した。メタクリル
アミドのメタクリロイルイソシアネートへの転換率は、
1H NMRスペクトルで調べた結果、90−100%
であった。
【0024】(実施例4:トリメチルアセチルイソシア
ネートの製造)30g(0.29mol)のトリメチル
アセトアミドと、200gのo−ジクロロベンゼンを5
00mlの反応容器に入れ、撹拌しながら、14g
(0.38mol)の塩化水素ガスを35分間かけて吹
き込んだ。この間、温度は20.0℃から31.5℃に
上昇した。懸濁した固体、即ちトリメチルアセトアミド
(これは完全には媒体に溶解していない)は消失した。
これは1H NMRスペクトルで同定されるように、媒
体に溶解する塩化水素化トリメチルアセトアミドが生成
したためである。41g(0.32mol)の塩化オキ
サリルを、得られた溶液に19.6℃で35分間かけて
滴下した。この際反応系の温度変化がほとんど観察され
ず、19℃〜21℃の間であった。更に30℃で反応溶
液を10分間撹拌し、その後80℃の油浴で1時間加熱
することによって、媒体の温度を65℃から80℃に上
昇させた。生成物の構造は赤外線分光法(2,220c
-1でのNCOバンド)により確認した。そしてトリメ
チルアセチルイソシアネートを減圧下で蒸留することに
よって単離した(沸点bp:62℃/110mmH
g)。 収率:75%1 H NMR(CDCl3):1.15ppm(s,t−
ブチル)
【0025】(実施例5:メトキシカルボニルイソシア
ネート(CH3−O−CO−NCO)の製造)40g
(0.53mol)のメチルカルバメートと、200g
のオルト−ジクロロベンゼンを500mlの反応容器に
入れた。実施例4に記載したように、28g(0.75
mol)の塩化水素ガスを90分間かけて吹き込んだと
ころ、反応系の温度は20℃から29℃に上昇した。こ
のとき生成したスラリー状のカルバメートの塩酸塩を、
1H NMRスペクトルで確認した((CDCl3):
5.04ppm,−NH2プロトン基)。74.5g
(0.59mol)の塩化オキサリルを、前記懸濁液に
50分間かけて滴下した。この間に温度は20℃から2
2℃に上昇した。懸濁液を更に30分間26℃で撹拌
し、その後、媒体を70℃から130℃に上昇させて4
時間30分間加熱した。得られたメトキシカルボニルイ
ソシアネートを大気圧下で蒸留することによって単離し
た(沸点:68−70℃)。 収率:55%1 H NMR(CDCl3):3.82ppm(s,メチ
ル)
【0026】(実施例6:フェニルアセチルイソシアネ
ート(C65−CH2−CO−NCO)の製造)20g
(0.148mol)のフェニルアセトアミドと、15
0gの1,2−ジクロロエタンを250mlの反応容器
に入れた。実施例4に記載したように、12g(0.3
2mol)の塩化水素ガスを60分間かけて吹き込ん
だ。この際、反応系内の温度は21.5℃から42.2
℃に上昇し、そして塩化水素塩の白色の固体が析出し懸
濁液を生成した。その構造を1H NMRスペクトル
(CDCl3)で同定した: CH2プロトン:3.75ppm NH2プロトン:3.8−3.9ppm(幅広)。 前記懸濁液を撹拌しながら、22g(0.173mo
l)の塩化オキサリルを、35分間で滴下した。この操
作中、媒体の温度は19℃前後のままで、懸濁した固体
の色は白色から黄色に変化した。溶液を更に30分間3
0℃で撹拌した。中間生成物を濾別し、これを撹拌して
いる150gのo−ジクロロベンゼン中に加え再び懸濁
させた。懸濁液を136℃〜146℃の温度に8時間保
持した。溶媒を真空下で蒸発させ、フェニルアセチルイ
ソシアネートを減圧下で蒸留することによって精製した
(沸点:78℃/3−5mmHg)。 収率:47%1 H NMR(CDCl3): 芳香族性プロトン:7.37−7.04ppm(m) CH2プロトン:3.66ppm
【0027】(実施例7:フェニルアセトアミドからの
フェニルアセチルイソシアネートの製造(比較例))こ
の実施例は本発明に関するものではい。20g(0.1
48mol)のフェニルアセトアミドと150gの1,
2−ジクロロエタンを250mlの反応容器に入れ、撹
拌しながら、これに22g(0.173mol)の塩化
オキサリルを、35分間かけて滴下した。この際反応系
内の温度は22℃から33.7℃に上昇した。次に中間
生成物の分離からは実施例6と同様に行った。前述と同
様の条件で減圧蒸留の後、生成されたフェニルアセチル
イソシアネートの収率は28%であった。
【0028】(実施例8:フェノキシカルボニルイソシ
アネート(C65−O−CO−NCO)の製造)41.
14g(0.3mol)のフェニルカルバメートと、2
00gの1,2−ジクロロエタンを300mlの反応容
器に入れ、15.3g(0.42mol)の塩化水素ガ
スを100分間かけて懸濁液中に吹き込んだ。この間、
温度は22℃から26℃に上昇し、固体の白色の塩化水
素化フェニルカルバメートが析出した。この構造は1
NMRスペクトルで確認された。 (CDCl3,ppm):7.12−7.15(2H
芳香族性) 7.15−7.22(1H 芳香族性) 7.35−7.39(2H 芳香族性) 5.16(NHのH) 40分にわたって、冷却せずに、41.91g(0.3
3mol)の塩化オキサリルを、得られた塩化水素化フ
ェニルカルバメート懸濁液に滴下した。このときの反応
温度は20℃〜22℃の間であり、反応系を更に30分
間22℃で撹拌した。その後、反応混合物を45℃から
93℃で7時間にわたって加熱した。溶媒を真空下で蒸
発させ、フェノキシカルボニルイソシアネートを減圧下
で蒸留することによって精製した(沸点:125℃/5
mmHg)。 収率:57.6%1 H NMR(CDCl3):7.26−7.35ppm
(フェニル)
【0029】(実施例9:5−クロロ−2−ニトロベン
ゾイルイソシアネート
【0030】
【化1】
【0031】の製造)39.965g(0.199mo
l)の5−クロロ−2−ニトロベンズアミドと、200
gの1,2−ジクロロエタンを500mlの反応容器に
入れ、11.0g(0.31mol)の塩化水素ガスを
80分間かけて懸濁液液中に吹き込んだ。この間、温度
は25℃から35℃に上昇した。そして固体の白色の塩
化水素化5−クロロ−2−ニトロベンズアミドが析出し
た。この構造を1H NMRスペクトルで確認した。 (DMSO,ppm):7.708−7.738(H
芳香族性) 7.787−7.811(H 芳香族性) 7.824−8.104(H 芳香族性) 8.207(NHのH) 40分にわたって、冷却せずに、27.94g(0.2
2mol)の塩化オキサリルを、塩化水素塩の懸濁液に
滴下した。反応温度は18℃から26℃に上昇した。反
応系を更に30分間25℃で撹拌した後、65℃で1.
5時間加熱した。生成したイソシアネートを同定するた
めに、それをアニリンと反応させ、23.8gのN−
(5−クロロ−2−ニトロベンゾイル)−N’フェニル
ウレアを得た。得られたこの生成物の量から計算される
収率は38.4%であった。
【0032】(実施例10:2,6−ジフルオロベンゾ
イルイソシアネート
【0033】
【化2】
【0034】の製造)55分にわたって、11.8g
(0.32mol)の塩化水素ガスを、39.25g
(0.25mol)の2,6−ジフルオロベンズアミド
を300gのジクロロメタンに入れた懸濁液中に吹き込
んだ。反応媒体の温度は21℃から25℃に上昇した。
塩化水素塩の構造は1H NMR分析で確認された。塩
のNH2プロトンのシグナルは、6.33ppmのアミ
ドのNH2プロトンのシグナルから6.38ppmにシ
フトした。HClプロトンのシグナルは1.79ppm
(幅広s)であった。2,6−ジフルオロベンズアミド
塩化水素塩懸濁液を20分間放置し、次に、35g
(0.276mol)で23℃の塩化オキサリルを50
分間かけて滴下した。温度は23℃から19.6℃に降
下し、塩化水素が放出されるの観察された。この反応混
合物を1.5時間放置し、次に40℃で3.5時間加熱
した。次いで38gの2,6−ジフルオロベンゾイルイ
ソシアネートを減圧下で蒸留することによって単離し
た:(沸点:103−106℃/3mmHg) 収率:83% IR:2,250cm-1(NCO)
【0035】(実施例11:シンナモイルイソシアネー
【0036】
【化3】
【0037】の製造)30分間にわたって10.3g
(0.28mol)の塩化水素ガスを、25g(0.1
7mol)のシンアミドを150gの1,2−ジクロロ
エタンに入れた懸濁液中に、吹き込んだ。温度が21℃
から38℃に上昇するので、媒体を冷却した。シンアミ
ド塩化水素塩の構造を1H NMR分析で確認した。 (CDCl3,ppm):2.045(幅広 s HC
l) 5.65−6.1(幅広,2H,NH2) 6.48(d,1H,ビニルJ=15.7Hz) 7.36−7.44及び7.48−7.58(m,5
H,芳香族性) 7.67(d,1H,ビニルJ=15.7Hz) 反応混合物を50分間室温で放置し、次に24g(0.
189mol)の塩化オキサリルを23℃で30分間か
けて滴下した。温度は23℃から22℃となった。反応
混合物を次いで80−85℃で1.6時間加熱し、その
後冷却した。媒体を減圧下で蒸留し、13.7gのシン
ナモイルイソシアネートを得た。 (沸点:159−167℃/3mmHg) 収率:46.6% IR:2,250cm-1(NCO)
【0038】(実施例12:シクロヘキサノイルイソシ
アネートの製造)50分間にわたって10.2g(0.
28mol)の塩化水素ガスを、25.4g(0.20
mol)のシクロヘキサンカルボン酸アミドを100g
の1,2−ジクロロエタンに入れた懸濁液中に、吹き込
んだ。反応混合物の温度は23℃から45℃に上昇し、
透明な溶液となった。塩化水素塩の構造を1H NMR
分析で確認した。 (CDCl3,ppm):1.20−2.06(m,1
0H,CH2) 2.67−2.82(m,1H,CH) 9.0−9.4(幅広,1H,NH2) 9.65−10.1(幅広,1H,NH2) 11.5−11.9(幅広 s,1H,HCl) 次に27.9g(0.22mol)の塩化オキサリルを
28℃で40分間で滴下した。温度は28℃から18℃
に降下した。反応混合物を次いで85−91℃で4時間
加熱し、その後冷却した。10.71gのシクロヘキサ
ノイルイソシアネートを減圧下で蒸留することによって
単離した: (沸点:88−90℃/3mmHg) 収率:35% IR:2,238cm-1(NCO)
【0039】(実施例13:p−メトキシベンゾイルイ
ソシアネートの製造)25分間にわたって10.1g
(0.28mol)の塩化水素ガスを、30.2g
(0.2mol)のp−メトキシベンズアミドを200
gのジクロロメタンに入れた懸濁液中に、吹き込んだ。
反応混合物の温度は17℃から31℃に上昇した。塩化
水素塩の構造を1H NMR分析で確認した。 (CDCl3,ppm):3.78ppm(s,3H,
CH3O) 4.2−4.8ppm(幅広,1H,NH2HCl) 6.98−7.88( それぞれ d,2H,芳香族性
J=8.65Hz) 反応混合物を55分間室温で放置し、次に27.9g
(0.22mol)の塩化オキサリルを22.6℃で5
0分間にかけて滴下した。媒体の温度は24℃から19
℃に降下した。反応媒体を次に39−43℃で3時間加
熱し、その後冷却した。31.5gのp−メトキシベン
ゾイルイソシアネートを減圧下で蒸留することによって
単離した。 (沸点:113−116℃/2mmHg) 収率:89% IR:2,245cm-1(NCO)
【0040】(実施例14:ステアロイルイソシアネー
トの製造)2.9時間にわたって14.1g(0.38
mol)の塩化水素ガスを、28.3g(0.1mo
l)のステアリルアミドを200gのジクロロメタンに
入れた懸濁液中に、吹き込んだ。媒体が徐々に固化する
ので、更に100gのジクロロメタンを添加した。温度
は17℃から21.7℃に上昇した。塩の構造を1HN
MR分析で確認した。 (CDCl3,ppm):0.88(t,3H,CH3
J=6.8Hz) 1.22−1.3(幅広,m,30H,CH2) 1.64(幅広,1H,NH2) 2.09(幅広,1H,NH2) 2.24(m,2H,CH2CO) 5.6(幅広,1H,HCl) 次に13.9g(0.11mol)の塩化オキサリルを
20.7℃で反応混合物に30分間にわたって滴下し
た。媒体の温度は20.6℃から19℃に低下した。次
に39−40℃で4時間加熱したが、イソシアネートは
生成していなかったため、より高温で加熱するために、
溶媒を変更した(ジクロロメタンを1,2−ジクロロエ
タンに共沸蒸留を用いて置き換えた)。次に反応混合物
を84−86℃で6時間加熱し、その後冷却した。1
2.2gのステアロイルイソシアネートを減圧下で蒸留
することによって単離した。 (沸点:79−82℃/4mmHg) 収率:39% IR:2,245cm-1(NCO)
【0041】(実施例15:フェニルアセチルイソシア
ネートの製造)12g(0.07mol)のフェニルア
セトアミドの塩化水素化塩の懸濁液を80gのo−ジク
ロロベンゼンを用いて合成した。この懸濁液を撹拌しな
がら、10g(0.079mol)の塩化オキサリルを
30分間かけて滴下した。更に30分間、30℃で撹拌
をつづけた後、懸濁液を136−146℃で更に8時間
加熱した。溶媒を減圧下で蒸発除去し、5.64gのフ
ェニルアセチルイソシアネートを減圧下で蒸留すること
によって得た。 (沸点:78℃/3−5mmHg) 収率:50%
【0042】(実施例16:2−メチルプロパノイルイ
ソシアネート
【0043】
【化4】
【0044】の製造)1.9時間にわたって11.4g
(0.31mol)の塩化水素ガスを、17.4g
(0.2mol)の2−メチルプロピオンアミドを20
0gの1,2−ジクロロエタンに入れた懸濁液中に、吹
き込んだ。反応媒体の温度は20.4℃から41.9℃
に上昇した。塩化水素塩の構造を1H NMR分析で確
認した。 (CDCl3,ppm):1.35(d,6H,CH3) 2.9−3.1(m,1H,CH) 9.6−10.3(幅広,NH2HCl) 反応混合物を30分間放置し、次に27.9g(0.2
2mol)の塩化オキサリルを20.7℃で30分間に
かけて滴下した。媒体の温度は25.1℃から18℃に
降下した。反応媒体を次に83−86℃で3.2時間加
熱し、その後冷却した。得られた2−メチルプロパノイ
ルイソシアネートを1H NMR及びIR分析で同定し
た: (CDCl3,ppm):1.14(d,3H,CH3) 1.77(d,3H,CH3) 2.32−2.68(m,1H,CH) IR:2245cm-1(NCO) 次に18.4g(0.4mol)のエタノールを反応混
合物に添加し、イソシアネートからカルバメートを合成
した。得られたカルバメートの量から計算した収率は5
7.6%であった。
【0045】(実施例17:1−ナフチロイルイソシア
ネートの製造)4.496g(0.026mol)の1
−ナフチルアミドと50gのトルエンを100mlの反
応容器に入れた。次に、1−ナフチルアミド懸濁液を撹
拌しながら、ここに6.1g(0.17mol)の塩化
水素ガスを45分間かけて吹き込んだ。この間に、媒体
の温度は24℃から31℃に上昇した。その結果、1−
ナフチルアミドの塩化水素塩が白色の固体の懸濁液とし
て得られた。これを1HNMRスペクトルで同定した。 (DMSO,ppm):7.2(H,ナフタレン性) 次に1−ナフチルアミドの塩化水素塩の懸濁液を撹拌し
ながら、これに3.69g(0.031mol)の塩化
オキサリルを、40分間かけて、冷却せずに滴下した。
媒体の温度は27℃から24℃に低下した。反応媒体を
更に30分間24℃で撹拌し、次に75−95℃で3.
5時間加熱した。残った固体を減圧下で濾過することに
よって除去した。得られたナフチロイルイソシアネート
のIRスペクトルは2240cm-1にイソシアネートの
吸収を示した。ナフチロイルイソシアネートとアニリン
との反応によって生成する尿素の量から計算した収率は
98%であった。
【0046】(実施例18:スクシニルイソシアネート
の製造)15.1g(0.31mol)のスクシンアミ
ドと300gの1,2−ジクロロエタンを500mlの
反応容器に入れた。次に、スクシンアミド懸濁液を撹拌
しながら、ここに14.6g(0.41mol)の塩化
水素ガスを20分間かけて吹き込んだ。この間に、媒体
の温度は24℃から28℃に上昇した。その結果スクシ
ンアミドの塩化水素塩が白色固体の懸濁液として得られ
た。これを1HNMRスペクトルで同定した。 (DMSO,ppm):2.24(H,メチレン性) 次にスクシンアミドの塩化水素塩の懸濁液を撹拌しなが
ら、これに66.3g(0.052mol)の塩化オキ
サリルを、60分間かけて、冷却せずに滴下した。媒体
の温度は26℃から25℃に低下した。これを更に60
分間25℃で撹拌し、次に81℃で9時間加熱した。残
った固体を減圧下で濾過することによって除去した。得
られたスクシニルイソシアネートのIRスペクトルは2
240cm-1にイソシアネートの吸収を示した。スクシ
ニルイソシアネートとアニリンとの反応によって生成す
る尿素の量から計算した収率は77.3%であった。
【0047】(実施例19:テレフタロイルイソシアネ
ートの製造)32.38g(0.2mol)のテレフタ
ルアミドと200gの1,2−ジクロロエタンを500
mlの反応容器に入れた。次に、テレフタルアミド懸濁
液を撹拌しながら、ここに16.7g(0.47mo
l)の塩化水素ガスを40分間かけて吹き込んだ。この
間に、媒体の温度は20℃から25℃に上昇した。そし
てテレフタルアミドの塩化水素塩が白色固体の懸濁液と
して得られた。これを1H NMRスペクトル(CDC
3,ppm)で同定した:3.37(NHのH)。次
にテレフタルアミドの塩化水素塩の懸濁液を撹拌しなが
ら、これに101.6g(0.8mol)の塩化オキサ
リルを、30分間かけて、冷却せずに滴下した。媒体を
更に30分間25℃で撹拌し、次に68℃で135分間
加熱した。残った固体を減圧下で濾過することによって
除去した。得られたテレフタロイルイソシアネートのI
Rスペクトルは2230cm-1にイソシアネートの吸収
を示した。テレフタロイルイソシアネートとアニリンと
の反応によって生成する尿素の量から計算した収率は7
8%であった。
【0048】(実施例20:アジポイルイソシアネート
の製造)8.64g(0.06mol)のアジポアミド
と100gの1,2−ジクロロエタンを300mlの反
応容器に入れた。次に、アジポアミド懸濁液を撹拌しな
がら、ここに11.9g(0.32mol)の塩化水素
ガスを50分間かけて吹き込んだ。この間に、媒体の温
度は28℃から31℃に上昇した。その結果、アジポア
ミドの塩化水素塩が白色固体の懸濁液として得られた。
これを1H NMRスペクトル(DMSO,ppm)で
同定した: 1.45;2.03(H,メチレン性)、5.51(N
HのH)。 次にアジポアミドの塩化水素塩の懸濁液を撹拌しなが
ら、これに68.5g(0.54mol)の塩化オキサ
リルを、20分間かけて、冷却せずに滴下した。媒体の
温度は33℃から30℃に低下した。媒体を更に30分
間30℃で撹拌した。そして80℃で1.5時間加熱し
た。そのIRスペクトルは2250cm-1(NCO)に
アジポイルイソシアネートの吸収を示した。
【0049】(実施例21:アジポイルイソシアネート
の製造(比較例))この実施例は本発明に関するもので
はない。8.64g(0.06mol)のアジポアミド
と100gの1,2−ジクロロエタンを300mlの反
応容器に入れた。次に、アジポアミド懸濁液を撹拌しな
がら、これに68.5g(0.54mol)の塩化オキ
サリルを滴下した。反応媒体から放出される多量の熱を
除去するために、この滴下は180分間かけて行った。
媒体の温度は28℃から31℃に上昇した。媒体を更に
30分間31℃で撹拌した後、80℃で加熱した。12
時間の加熱後ようやく、そのIRスペクトルは2250
cm-1(NCO)にアジポイルイソシアネートの吸収を
示した。
【0050】(実施例22:フマロイルイソシアネート
の製造)10.27g(0.09mol)のフマルアミ
ドと400gの1,2−ジクロロエタンを500mlの
反応容器に入れた。次に、10.44g(0.28mo
l)の塩化水素ガスを、フマルアミド懸濁液に25分間
かけて吹き込んだ。この間に、媒体の温度は25℃から
32℃に上昇した。そしてフマルアミドの塩化水素塩が
白色固体の懸濁液として得られた。これを1H NMR
スペクトル(DMSO,ppm)で同定した:6.77
(H,メチレン性)。 次にフマルアミドの塩化水素塩の懸濁液を撹拌しなが
ら、これに111.8g(0.90mol)の塩化オキ
サリルを、20分間かけて、冷却せずに滴下した。温度
は24℃のままであった。媒体を更に60分間24℃で
撹拌した。そして83℃で3.5時間加熱した。残った
固体を減圧下で濾過することによって除去した。得られ
たフマロイルイソシアネートのIRスペクトルは224
0cm-1にイソシアネートの吸収を示した。フマロイル
イソシアネートとアニリンの反応で得られた尿素の量か
ら計算した収率は61.5%であった。
【0051】(実施例23:t−ブチルオキシカルボニ
ルイソシアネートの製造)4.0g(0.034mo
l)のt−ブチルカルバメートと80gの1,2−ジク
ロロエタンを100mlの反応容器に入れた。塩酸存在
時のt−ブチルカルバメートは室温で不安定であるの
で、t−ブチルカルバメートの懸濁液を0℃に冷却し、
次に懸濁液を撹拌しながら、これに1.9g(0.05
1mol)の塩化水素ガスを、90分間かけて吹き込ん
だ。この間に、媒体の温度は0℃から3℃に上昇した。
そしてt−ブチルカルバメートの塩化水素塩が白色固体
の懸濁液として得られた。次に塩化水素化t−ブチルカ
ルバメート懸濁液を0℃で撹拌しながら、これに8.3
g(0.063mol)の塩化オキサリルを、20分間
かけて滴下した。媒体の温度は0℃から2℃に上昇し
た。媒体を更に0℃で90分間撹拌した。そして80℃
で11時間加熱した。次に残った固体を減圧下で濾過す
ることによって除去した。得られたt−ブチルオキシカ
ルボニルイソシアネートのIRスペクトルは2250c
-1にイソシアネートの吸収を示した。t−ブチルオキ
シカルボニルイソシアネートとアニリンの反応で得られ
た尿素の量から計算した収率は47.8%であった。
【0052】(実施例24:n−ブチリルイソシアネー
トの製造)25.8g(0.30mol)のt−ブチル
アミドと200gの1,2−ジクロロエタンを500m
lの反応容器に入れた。13.6g(0.36mol)
の塩化水素ガスをn−ブチルアミドの懸濁液に、40分
間かけて吹き込んだ。この間に、媒体の温度は20℃か
ら23℃に上昇した。そしてブチルアミドの塩化水素塩
が白色固体の懸濁液として得られた。これを1H NM
Rスペクトルで同定した。次にブチルアミドの塩化水素
塩の懸濁液を撹拌しながら、これに42.0g(0.3
3mol)の塩化オキサリルを、60分間かけて、冷却
せずに滴下した。媒体の温度は23℃から20℃に低下
した。媒体を更に20℃で60分間撹拌した。そして1
20℃で3時間加熱した。次に残った固体を減圧下で濾
過することによって除去した。n−ブチリルイソシアネ
ートを減圧下で蒸留することによって単離した。 沸点:64℃/40mmHg 収率:86%
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 フィリップ・ル・ゴフ フランス91140ヴィルボン・シュール・ イヴェット、リュ・デ・ブリュイエ10番 (72)発明者 ダニエル・デビルド フランス77176ナンディ、リュ・デ・ロ ーリエ1番 (72)発明者 坪庭 章介 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本 ペイント株式会社内 (72)発明者 浦野 哲 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本 ペイント株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−238254(JP,A) 特開 昭60−115557(JP,A) 特開 昭61−122257(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 263/10 C07C 265/16

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩化オキサリルを、窒素原子上に置換基
    を有さないアミド類及び/又はカルバメート類のハロゲ
    ン化水素塩及び硫酸塩からなる群から選択される塩と反
    応させ、次いでそれらの混合物及び反応混合物を30℃
    から150℃の間の温度で加熱することを特徴とするア
    シルイソシアネート類の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記塩が塩化水素塩であることを特徴と
    する請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記製造を不活性でかつ非プロトン性溶
    媒中で行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記溶媒が脂肪族ハロゲン化又は非ハロ
    ゲン化炭化水素類、シクロアルカン類、芳香族炭化水素
    類、及びその混合物からなる群から選択されることを特
    徴とする請求項3記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記塩と前記塩化オキサリルとの反応
    を、前記反応混合物を冷却せずに行うことを特徴とする
    請求項1記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 1〜1.2当量の前記塩化オキサリル
    を、反応するアミド塩の当量数又はカルバメート塩の当
    量数に対して用いることを特徴とする請求項1記載の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 前記塩化オキサリルを前記塩に添加する
    ことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記アミド及び/又はカルバメート塩が
    構造式: Z(CONH2n,y(HmX) (ここで、Zは1価又は2価の基で、 1〜20の炭素原子を有する、直鎖又は分岐形、飽和又
    は不飽和、置換又は非置換の脂肪族基、 5〜7の炭素原子を有する、飽和又は不飽和、置換又は
    非置換の環状脂肪族基、 7〜20の炭素原子を有する、直鎖又は分岐形、飽和又
    は不飽和、置換又は非置換の芳脂肪族基(aralip
    hatic)、 置換又は非置換フェニル、フェニレン、ナフチル、ナフ
    チレン基、 酸素、窒素、硫黄から選択されるヘテロ原子を1個又は
    数個含有した5又は6原子からなる飽和又は不飽和、置
    換又は非置換のヘテロ環を表す。またZはRO−、−O
    −R−O、又は−R−O基を表し、ここでRは1価又は
    2価の基で、 1〜8の炭素原子を有する、直鎖又は分岐形、飽和又は
    不飽和、置換又は非置換の脂肪族基、 5〜7の炭素原子を有する、飽和又は不飽和、置換又は
    非置換の環状脂肪族基、 7〜11の炭素原子を有する、直鎖又は分岐形、飽和又
    は不飽和、置換又は非置換の芳脂肪族基、 置換又は非置換フェニル、フェニレン、ナフチル、ナフ
    チレン基を表し、 nは1又は2の整数、 mは1又は2の整数、 yはn/m値、 Xはハロゲン原子、SO4又はHSO4基を表す。)を有
    することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記Zが炭素数1〜20の炭化水素、ハ
    ロゲン化炭化水素の他に、ハロゲン、又は炭素数1〜2
    0のオキシ炭化水素、オキシハロゲン化炭化水素で置換
    されたもの、あるいはZが芳香族あるいはヘテロ芳香族
    の場合には、ニトロ基で置換されることを特徴とする請
    求項8記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記Xが塩素であることを特徴とする
    請求項8記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記Zがイソプロペニル基で、かつ使
    用する溶媒がo−ジクロロベンゼン及び炭素数20以下
    のアルの媒体であることを特徴とする請求項8記載の製
    造方法。
  12. 【請求項12】 前記塩化オキサリルと前記塩との反応
    生成物を析出させてから、反応混合物を加熱することを
    特徴とする請求項1又は11記載の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記塩化オキサリルと前記塩との反応
    生成物を反応混合物から分離し、次いで前記生成物を3
    0℃から150℃の範囲の温度で、必要であれば溶媒中
    で加熱することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
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