JP3456958B2 - R−Fe−B系焼結磁石の製造方法、およびR−Fe−B系焼結磁石用合金粉末材料の調製方法並びに保存方法 - Google Patents

R−Fe−B系焼結磁石の製造方法、およびR−Fe−B系焼結磁石用合金粉末材料の調製方法並びに保存方法

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JP3456958B2 JP2000257267A JP2000257267A JP3456958B2 JP 3456958 B2 JP3456958 B2 JP 3456958B2 JP 2000257267 A JP2000257267 A JP 2000257267A JP 2000257267 A JP2000257267 A JP 2000257267A JP 3456958 B2 JP3456958 B2 JP 3456958B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、R−Fe−B系焼
結磁石の製造方法および、R−Fe−B系焼結磁石の製
造に用いられる原料の合金粉末材料の調製方法並びに保
存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】希土類合金の焼結磁石(永久磁石)は、
一般に、希土類合金の粉末をプレス成形し、得られた粉
末の成形体を焼結し、時効処理することよって製造され
る。現在、サマリウム・コバルト系磁石と、ネオジム・
鉄・ボロン系磁石の二種類が各分野で広く用いられてい
る。なかでも、ネオジム・鉄・ボロン系磁石(以下、
「R−Fe−B系磁石」と称する。RはYを含む希土類
元素、Feは鉄、Bはボロンである。)は、種々の磁石
の中で最も高い磁気エネルギー積を示し、価格も比較的
安いため、各種電子機器へ積極的に採用させている。R
−Fe−B系希土類磁石は、主にR2Fe14Bの正方晶
化合物からなる主相、Nd等からなるRリッチ相、およ
びBリッチ相から構成されている。なお、Feの一部が
CoやNiなどの遷移金属と置換されてもよい。本発明
が好適に適用されるR−Fe−B系希土類焼結磁石は、
例えば、米国特許第4,770,723号および米国特
許第4,792,368号に記載されている。
【0003】このような磁石となる希土類合金を作製す
るために、従来は、原料合金の溶湯を鋳型に入れ、比較
的ゆっくりと冷却するインゴット鋳造法が用いられてき
た。インゴット鋳造法によって作製された合金インゴッ
トは公知の粉砕工程を経て粉末化される。こうして作製
された合金粉末は、種々の粉体プレス装置によって圧縮
成形された後、焼結室内に搬送され、そこで焼結工程を
受ける。
【0004】近年、合金の溶湯を単ロール、双ロール、
回転ディスク、または回転円筒鋳型の内面などの接触さ
せることによって、比較的速く冷却し、合金溶湯から、
インゴットよりも薄い凝固合金(「合金フレーク」と称
することにする。)を作製するストリップキャスト法や
遠心鋳造法に代表される急冷法が注目されている。この
ような急冷法によって作製された合金片の厚さは、一般
に、約0.03mm以上約10mm以下の範囲にある。
急冷法によると、合金溶湯は冷却ロールに接触した面
(ロール接触面)から凝固し始め、ロール接触面から厚
さ方向に結晶が柱状に成長してゆく。その結果、ストリ
ップキャスト法などによって作製された急冷合金は、短
軸方向のサイズが約0.1μm以上約100μm以下
で、長軸方向のサイズが約5μm以上約500μm以下
のR2Fe14B結晶相と、R2Fe14B結晶相の粒界に分
散して存在するRリッチ相とを含有する組織を持つにい
たる。Rリッチ相は希土類元素Rの濃度が比較的高い非
磁性相であり、その厚さ(粒界の幅に相当する)は約1
0μm以下になる。
【0005】急冷合金は、従来のインゴット鋳造法(金
型鋳造法)によって作製された合金(インゴット合金)
に比較して相対的に短い時間(冷却速度:102℃/秒
以上、104℃/秒以下)で冷却されているため、組織
が微細化され、結晶粒径が小さいという特徴を有してい
る。また、粒界の面積が広く、Rリッチ相は粒界内に広
く広がっているため、Rリッチ相の分散性にも優れると
いう利点がある。これらの特徴が故に、急冷合金を用い
ることによって、優れた磁気特性を有する磁石を製造す
ることができる。
【0006】なお、本明細書において、溶湯を冷却する
ことによって得られる凝固合金の塊を「合金塊」と呼
び、従来のインゴット鋳造法によって得られる合金イン
ゴットおよびストッリプキャスト法などの急冷法によっ
て得られる合金フレークなど、種々の形態の固体合金を
含むものとする。プレス成形に供される合金粉末は、こ
れらの合金塊を、例えば水素化粉砕法および/または種
々の機械的粉砕法を用いて粉砕することによって得られ
た粗粉末(例えば、平均粒径10μm〜500μm)を
微粉砕することによって得られる。
【0007】しかしながら、ストリップキャスト合金に
代表される急冷法によって作製された合金の粉末は、特
に酸化されやすいという問題がある。一般に希土類合金
の粉末は、酸化されやすく、発熱や発火の危険性がある
が、急冷合金の粉末粒子の表面には、酸化され易いRリ
ッチ相が表れやすいため、特にその危険性が高いと考え
られる。
【0008】この問題を回避するために、例えば、希土
類合金の粉末の表面に薄い酸化膜を形成する方法が、特
公平6−6728号公報(出願人:住友特殊金属株式会
社、出願日:1986年7月24日)に開示されてい
る。また、この公報は、優れた磁気特性を得るために、
プレス成形に供される希土類合金の粉末の平均粒径が、
1.5μm〜5μmの範囲内にあることが好ましいこと
を開示している。1.5μmより平均粒径が小さいと、
酸化物の割合が多くなりすぎて磁気特性の低下を招き、
また、5μmよりも大きいと、容易に磁化反転が生じ、
保持力の低下を招くので好ましくない。
【0009】また、米国特許5、666、635号(譲
受人:住友特殊金属株式会社)の明細書には、希土類合
金の粉末の圧縮性(プレス成形性)を改善するために、
平均粒径10μm〜500μmのR−Fe−B系焼結磁
石用合金の粗粉末に、少なくとも1種の脂肪酸エステル
を液状化した潤滑剤を、0.02wt%〜5.0wt%
添加混合後、不活性ガスを用いたジェットミル粉砕を行
い、平均粒径1.5μm〜5μmの微粉末を作製する技
術が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明
者が検討した結果、上記従来の技術を用いても、プレス
成形時における圧縮性不良に起因すると思われる、合金
粉末の成形体の割れや欠けなどが発生しやすいという問
題があった。この問題は、特に、上述した平均粒径を得
るために、希土類合金粉末の小粒径側および大粒径側を
除去した比較的シャープな粒度分布を有する希土類合金
粉末を用いる場合に顕著であった。
【0011】本発明は、上記の問題を解決するためにな
されたものであり、本発明の主な目的は、R−Fe−B
系焼結磁石用合金粉末材料のプレス成形性、特に圧縮性
を向上させることによって、成形体の割れや欠けなどを
減らし、生産性を向上することができるR−Fe−B系
焼結磁石の製造方法およびR−Fe−B系焼結磁石用合
金粉末材料の調製方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記従来技
術の問題点に鑑みて種々の検討を行った結果、希土類合
金粉末の潤滑剤で表面が被覆された合金粉末材料を調製
した後、プレス成形を行うまでの間に合金粉末材料に含
まれる潤滑剤の含有量が変動し、その結果生じる潤滑剤
の含有量のばらつき(および/または均一性)が粉末材
料の圧縮性に関係しており、粉末材料の成形体に割れや
欠けなどを発生させるのではないかと考えるに至った。
【0013】そこで、さらに検討を行ったところ、潤滑
剤で表面が被覆された合金粉末をプレス成形する前に、
合金粉末材料に含まれる潤滑剤を所定量以下にまで揮散
することによって、圧縮性をさらに向上させることがで
き、成形体の割れや欠けなどの発生を減少することがで
きることを知見し、本発明に至った。
【0014】なお、本願明細書においては、希土類合金
のみからなる粉末(但し、希土類合金粉末の表面が酸化
されることによって形成された酸化膜を含む)を「希土
類合金粉末」と称し、粒子の表面が潤滑剤に覆われた希
土類合金粉末を「希土類合金粉末材料」と称する。な
お、「希土類合金粉末材料」は、希土類合金粉末の表面
以外に余剰の潤滑剤を含有しても良く、場合によって
は、結合剤(バインダ)をさらに含有してもよい。
【0015】本発明のR−Fe−B系焼結磁石の製造方
法は、(a)R−Fe−B系焼結磁石用の合金粉末の表
面に、第1の量以上の潤滑剤が付与された第1状態の合
金粉末材料を用意する工程と、(b)前記第1状態の合
金粉末材料の前記潤滑剤の一部を揮散させることによっ
て前記潤滑剤の量が第2の量以下まで低減された第2状
態の合金粉末材料を調製する工程と、(c)前記第2状
態の合金粉末材料をプレス成形することによって、成形
体を形成する工程と、(d)前記成形体を焼結する工程
とを包含する。
【0016】ある実施形態において、前記工程(a)
は、前記潤滑剤を供給しながら前記合金の粗粉末を微粉
砕する工程を包含してもよい。
【0017】他のある実施形態において、前記工程
(a)は、予め用意された前記合金粉末に前記潤滑剤を
供給しながら、前記合金粉末と前記潤滑剤とを混合する
工程を包含してもよい。
【0018】前記工程(b)は、前記第1状態の合金粉
末材料を収容した、気密性を有する容器内に不活性ガス
を流気させる工程を包含することが好ましい。
【0019】前記工程(b)の後に、前記容器または他
の気密性を有する容器内に不活性ガスを流気させた状態
で前記第2状態の合金粉末材料を保存する工程をさらに
包含してもよい。
【0020】前記容器内に保存されている前記第2状態
の合金粉末材料をサンプリングし、組成分析を行う工程
をさらに包含し、この後、前記工程(c)が実行される
ようにしてもよい。
【0021】前記合金粉末の平均粒径は、3μm〜6μ
mの範囲内にあることが好ましい。
【0022】前記合金粉末のBET法による比表面積
は、0.45〜0.55m2/gの範囲内にあるものを
好適に使用できる。
【0023】前記第1の量は、前記合金粉末の重量の
0.15wt%以上であることが好ましい。
【0024】前記第2の量は、前記合金粉末の重量の
0.12wt%以下であることが好ましい。
【0025】前記潤滑剤としては、脂肪酸エステルを主
成分とするものを用いることができる。
【0026】前記工程(a)において、前記潤滑剤は、
溶剤で希釈された状態で前記合金粉末の表面に付与され
ていてもよい。溶剤で希釈された潤滑剤は、前記合金の
粗粉末を微粉砕する工程で供給されても良いし、予め用
意された前記合金粉末に供給しながら、前記合金粉末と
混合されてもよい。前記第2状態の合金粉末材料が含む
前記溶剤と前記潤滑剤との合計は、前記合金粉末の重量
の0.5wt%以下であることが好ましい。前記溶剤と
して、石油系溶剤を用いることができる。この場合に
も、前記潤滑剤として、脂肪酸エステルを主成分とする
ものを用いることができる。
【0027】本発明の他の局面においては、合金粉末の
表面に潤滑剤が付与された、R−Fe−B系焼結磁石用
合金粉末材料の調製方法が提供される。
【0028】本発明による合金粉末材料の調製方法は、
(a)R−Fe−B系焼結磁石用の合金粉末の表面に、
第1の量以上の潤滑剤が付与された第1状態の合金粉末
材料を用意する工程と、(b)前記第1状態の合金粉末
材料の前記潤滑剤の一部を揮散させることによって前記
潤滑剤の量が第2の量以下まで低減された第2状態の合
金粉末材料を調製する工程とを包含する。
【0029】ある実施形態において、前記工程(a)
は、予め用意された前記合金粉末に前記潤滑剤を供給し
ながら、前記合金粉末と前記潤滑剤とを混合する工程を
包含する。
【0030】前記工程(b)は、前記第1状態の合金粉
末材料を収容した、気密性を有する容器内に不活性ガス
を流気させる工程を包含することが好ましい。
【0031】前記合金粉末の平均粒径は、3μm〜6μ
mの範囲内にあることが好ましい。
【0032】前記合金粉末のBET法による比表面積
は、0.45〜0.55m2/gの範囲内にあるものを
好適に使用できる。
【0033】前記第1の量は、前記合金粉末の重量の
0.15wt%以上であることが好ましい。
【0034】前記第2の量は、前記合金粉末の重量の
0.12wt%以下であることが好ましい。
【0035】前記潤滑剤としては、脂肪酸エステルを主
成分とするものを用いることができる。
【0036】前記工程(a)において、前記潤滑剤は、
溶剤で希釈された状態で前記合金粉末の表面に付与され
ていてもよい。溶剤で希釈された潤滑剤は、前記合金の
粗粉末を微粉砕する工程で供給されても良いし、予め用
意された前記合金粉末に供給しながら、前記合金粉末と
混合されてもよい。前記第2状態の合金粉末材料が含む
前記溶剤と前記潤滑剤との合計は、前記合金粉末の重量
の0.5wt%以下であることが好ましい。前記溶剤と
して、石油系溶剤を用いることができる。この場合に
も、前記潤滑剤として、脂肪酸エステルを主成分とする
ものを用いることができる。
【0037】本発明のさらに他の局面によると、R−F
e−B系焼結磁石用合金粉末材料の保存方法が提供され
る。
【0038】本発明による合金粉末材料の保存方法は、
R−Fe−B系焼結磁石用の合金粉末の表面に所定量以
下の潤滑剤が付与された合金粉末材料を、気密性を有す
る容器内に不活性ガスを流気させた状態で保存する。
【0039】前記合金粉末の平均粒径は、3μm〜6μ
mの範囲内にあることが好ましい。
【0040】前記合金粉末のBET法による比表面積
が、0.45〜0.55m2/gの範囲内にあるものを
好適に使用できる。
【0041】前記所定の量は、前記合金粉末の重量の
0.12wt%以下であることが好ましい。前記潤滑剤
として、脂肪酸エステルを主成分とするものを用いるこ
とができる。
【0042】前記合金粉末材料は、前記潤滑剤と溶剤と
を含んでもよく、この場合、前記潤滑剤と前記溶剤との
合計は、前記合金粉末の重量の0.5wt%以下である
ことが好ましい。前記溶剤として、石油系溶剤を用いる
ことができる。この場合にも、前記潤滑剤として、脂肪
酸エステルを主成分とするものを用いることができる。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発
明のR−Fe−B系焼結磁石の製造方法の実施形態を説
明する。なお、本発明によるR−Fe−B系焼結磁石用
合金粉末材料の調製方法および保存方法は、R−Fe−
B系焼結磁石の製造方法における他の工程と独立して実
施できるが、説明を簡潔にするために、R−Fe−B系
焼結磁石の製造方法の一部として説明する。
【0044】本発明による実施形態のR−Fe−B系焼
結磁石の製造方法は、(a)R−Fe−B系焼結磁石用
の合金粉末の表面に、第1の量以上の潤滑剤が付与され
た第1状態の合金粉末材料を用意する工程と、(b)前
記第1状態の合金粉末材料の前記潤滑剤の一部を揮散さ
せることによって前記潤滑剤の量が第2の量以下まで低
減された第2状態の合金粉末材料を調製する工程と、
(c)前記第2状態の合金粉末材料をプレス成形するこ
とによって、成形体を形成する工程と、(d)前記成形
体を焼結する工程とを包含する。
【0045】すなわち、本発明によると、所定のプレス
成形性(圧縮性および欠けや割れの発生のし難さ)を得
るために必要な量以上の量(第1の量)の潤滑剤が付与
された合金粉末材料(第1状態)を調製し、余剰の潤滑
剤を揮散させることによって、必要量(第2の量以下の
量)の潤滑剤が付与された合金粉末材料(第2状態)を
得る。
【0046】これは、後に具体的なデータをもって示す
ように、潤滑剤の量が所定量(第2の量)以下の場合に
優れたプレス成形性が得られるという知見に基づいてい
る。すなわち、潤滑剤の量が所定量よりも多すぎるとプ
レス成形性が大きく低下する。但し、この所定量は比較
的少ないので、所定量の潤滑剤を合金粉末の表面に、均
一に直接的に付与することは困難である。そこで、合金
粉末の表面を十分に均一に被覆できる量(第1の量)以
上の潤滑剤を付与した合金粉末材料(第1の状態)を調
製し、この合金粉末材料から、潤滑剤を揮発させること
によって余剰の潤滑剤を均一に除去し、合金粉末の表面
が所定量の潤滑剤によって均一に被覆された合金粉末材
料が得られる。潤滑剤の揮発性は均一なので、余剰の潤
滑剤を均一に除去することができる。
【0047】工程(a)は、公知の方法を用いて、例え
ば、以下の様にして実行され得る。
【0048】まず、プレス成形に供するための合金粉末
は、例えば、従来のインゴット鋳造法によって作製され
た合金インゴットやストリップキャスト法に代表される
急冷法によって作製された合金フレークの合金塊を、例
えば水素化粉砕法および/または種々の機械的粉砕法
(スタンプミル装置、ジョークラッシャー装置、ブラウ
ンミル装置等を用いる方法)を用いて粉砕することによ
って得られた粗粉末を、ジェットミルを用いて微粉砕す
ることによって得られる(米国特許第5、666、635
号参照)。このとき、粗粉末の平均粒径は、10μm〜
500μmの範囲内にあることが好ましく、最終的にプ
レス成形に供される合金粉末の平均粒径は、約1μm〜
約10μmの範囲内にあることが好ましく、約3μm〜
約6μmの範囲内にあることがさらに好ましい。尚、こ
の平均粒径の範囲は、上記米国特許第5、666、635
号の記載(1.5μm〜5μm)と若干異なるが、本発
明者および他の共同研究者の検討によって、プレス成形
性および磁気特性の観点から、上記範囲が好ましいこと
が確認されたものである。特に、優れた圧縮性を確保す
るためには、平均粒径を約3μm以上とすることが好ま
しい。
【0049】潤滑剤の希土類合金粉末の表面への付与
は、潤滑剤を供給しながら合金の粗粉末を微粉砕するこ
とによって行ってもよい。例えば、米国特許第5、66
6、635号に記載されているように、粗粉末に潤滑剤
を添加した後、それをジェットミルを用いて微粉砕する
ことによって実行され得る。また、合金粗粉末を微粉砕
しながら、ジェットミル内に潤滑剤を噴霧することによ
って、潤滑剤を希土類合金粉末の表面に付与してもよ
い。
【0050】あるいは、潤滑剤の希土類合金粉末の表面
への付与は、予め用意された合金粉末(上記微粉砕され
た粉末)に潤滑剤を供給しながら、合金粉末と潤滑剤と
を混合することによっても実行され得る。予め用意され
た所定の平均粒径(粒度分布)を有する合金粉末に対し
て潤滑剤を添加混合する方法の方が、添加した潤滑剤の
一部が揮散するなどして、その全量が合金粉末に混合さ
れないといったようなおそれもなく、合金粉末の表面へ
の潤滑剤の被覆をより均一に、より迅速に、より確実に
行うことができるので好ましい。なお、潤滑剤は、ジェ
ットミル装置の回収タンクなどに合金粉末を回収した
後、この回収タンク内の合金粉末に対して添加混合して
もよいし、別の容器に移し替えた後に合金粉末に対して
添加混合してもよい。
【0051】潤滑剤は、後の工程で、少なくともその一
部が揮散するものであれば特段限定されるものではな
く、たとえば、脂肪酸エステルを主成分とするものが挙
げられる。後述するように、特に、不活性ガスを流気さ
せることによって、潤滑剤が揮散することが好ましく、
室温で揮発性を有する液状の潤滑剤が好ましい。脂肪酸
エステルとしては、具体的には、カプロン酸メチル、カ
プリル酸メチル、ラウリン酸メチルなどが挙げられる。
潤滑剤に加えて、結合剤などのその他の化合物を添加し
てもよい。
【0052】潤滑剤は、それ自体を単独で添加混合して
もよいが、溶剤で希釈したものを添加混合すれば、比較
的少ない量の潤滑剤で、合金粉末の表面を均一に被覆す
ることができる利点もある。また、潤滑剤それ自体では
合金粉末に均一に混合できないような固形状態のもので
あっても、合金粉末の表面を均一に被覆することができ
る利点がある。但し、潤滑剤が固形状態であれば、流気
によって潤滑剤が揮散し難いので、室温で揮発性を有す
る液状の潤滑剤を用いることが好ましい。溶剤として
は、イソパラフィンに代表される石油系溶剤やナフテン
系溶剤などを用いることができる。
【0053】この工程(a)で得られる第1状態の合金
粉末材料が含む潤滑剤の第1の量は、当然に、最終的に
プレス成形に供せられる第2状態の合金粉末材料が含む
潤滑剤の第2の量よりも多い。また、第1の量は、潤滑
剤を合金粉末の表面に付与するために用いられる方法
(混合方法や粉砕方法などの表面処理方法)によって、
合金粉末の粒子のほぼ全ての表面に潤滑剤が付与され得
る量に設定される。このとき、潤滑剤は余剰に付与され
ているので、合金粉末の場所によって潤滑剤が存在する
量にばらつきが存在するが、実質的に全ての表面に必要
最低限の量の潤滑剤が付与されていれば良い。必要最低
限の量の潤滑剤は、合金粉末の表面との相互作用(物理
吸着または化学吸着)によって、容易に揮散することが
なく、合金粉末の表面に安定に存在する。従って、一
旦、十分な量の潤滑剤が合金粉末の表面に付与されれ
ば、その後の揮散工程において、必要最低限の量以下に
なることはなく、十分なプレス成形性が得られる量の潤
滑剤が合金粉末の表面に付与された合金粉末材料が得ら
れる。
【0054】上記の第1の量および第2の量は、合金粉
末の種類(例えば平均粒径や比表面積)によって適宜変
わり得ると考えられるが、種々のR−Fe−B系焼結磁
石用の合金粉末(平均粒径約2.8〜約6.0μm、B
ET法による比表面積(約0.45m2/g〜約0.5
5m2/g)について検討した結果、第1の量として
は、希土類合金粉末に対して、約0.15wt%〜約
5.0wt%の範囲にあることが好ましい。表面積単位
で換算すると、約0.27g/m2〜約0.90g/m2
の範囲にあることが好ましい。潤滑剤の添加量が約0.
15wt%よりも少ない場合、合金粉末の表面を潤滑剤
で均一に被覆することが困難となる結果、最終的にプレ
ス成形性が低下するおそれがある。また、磁界を印加し
ながらプレス成形する際に、合金粉末の各粒子を磁界方
向に配向させることが困難となり、最終的に得られる磁
石の磁気特性を低下させてしまうおそれがある。潤滑剤
の添加量が約5.0wt%よりも多いと、潤滑剤を第2
の量以下にまで揮散させるのに時間がかかり、生産性が
低下する。第1の量は、第2の量の約2倍以上約4倍以
下であることが好ましい。なお、本願明細書において、
「平均粒径」とは「質量中位径(mass median diamete
r:MMD)」を指す。
【0055】工程(b)は、種々の方法で実行すること
ができる。例えば、第1状態の合金粉末が収容された容
器内に不活性ガスを流気させる方法、容器内を真空引き
する方法、スプレードライヤ等を用いて合金粉末を不活
性ガス中で飛行させる方法、ネットの上に合金粉末を置
いて下から不活性ガスを吹き上げる方法などが挙げられ
る。このなかで、合金粉末が収容された容器内に不活性
ガスを流気させる方法が、潤滑剤を効率的に揮散させる
ことができる点および簡単な装置で実行できる点におい
て望ましい。勿論、この容器は、合金粉末に潤滑剤を添
加混合した容器であってもよいし、その後に潤滑剤が付
与された合金粉末が移し替えられた容器であってもよ
い。なお、本明細書でいう「不活性ガス」は、狭義の不
活性ガス(Ar、Heなど)だけでなく窒素ガスを含
む。安価な窒素ガスを好適に用いることができるので、
以下では、窒素ガスとして説明する。
【0056】例えば、ステンレス製などの気密性の容器
に、例えば窒素ボンベから窒素ガスを供給しつつ、排気
口から窒素ガスを流出させることによって、容器内に流
気を生成することができる。窒素ガスの流量を制御する
ことによって揮散速度を調節することができる。窒素ガ
スの流量は、容器の体積、合金粉末材料の量、揮散させ
るべき潤滑剤の量および揮散させる速度等に応じて適宜
設定すればよい。
【0057】なお、ここでいう気密性の容器とは、窒素
ガスの流入口および流出口以外から容器内に空気が入ら
ない程度の気密性を有する容器を指す。外部から供給さ
れ得る窒素ガスによって容器内部は陽圧となるので、そ
れほど高い気密性は要求されない。比較的気密性の低い
容器を用いられることも流気を利用する利点である。
【0058】良好なプレス成形性(特に圧縮性)を得る
ためには、上述した合金粉末につて検討した結果による
と、潤滑剤の量(第2の量)が合金粉末に対して、約
0.12wt%以下であることが好ましい。表面積単位
で換算すると、約0.27g/m2以下であることが好
ましい。または潤滑剤を溶剤で希釈(約4倍〜約20
倍)して添加した場合には、両者の合計が合金粉末に対
して約0.5wt%以下であることが好ましい。これを
表面積単位で換算すると、約0.90g/m2以下が好
ましい。
【0059】この容器内で流気によって、潤滑剤を第2
の量以下まで揮散された合金粉末材料をこの容器内で安
定に保存することもできる。例えば、気密性の高い容器
内に合金粉末材料を保存すると、その気密性が非常に高
くない限り、合金粉末が大気中の酸素を吸収して容器内
が減圧状態となり、さらに大気を吸引するという現象が
起きる。合金粉末が酸化されると磁気特性が低下すると
ともに、発熱や発火のおそれすら生じる。窒素ガスの流
気を用いると比較的簡単な容器で、合金粉末材料を大気
と遮断した状態で保存することができる。窒素ガスの流
気によって、潤滑剤を揮発させる必要がないので、窒素
ガスの流量は、大気が容器内に浸入しない程度に調節す
ればよい。
【0060】通常、合金粉末の組成が磁気特性に影響す
るので、製品管理のために、合金粉末の組成を分析す
る。すなわち、作製された合金粉末材料の組成分析が完
了してから、プレス成形工程に供せられる。少なくとも
この間(典型的には一昼夜)、酸化されやすい合金粉末
材料を安定に保存する必要があり、窒素ガスの流気を用
いて潤滑剤の量を制御する方法を用いるとそのままの状
態で保存できるので、便利である。流気を用いることに
よって、2週間以上に亘って(場合によっては1ヶ月以
上)、合金粉末材料を安定に保存することできる。ま
た、合金粉体材料の作製を行う場所とプレス成形工程以
降の工程を実行する場所が異なる場合などにおいて、簡
単な気密性の容器と窒素ボンベさえあれば、合金粉末を
安定に保存した状態で運搬することができる。
【0061】工程(c)および(d)は、公知の方法で
実行することができる。これらの工程は、例えば、米国
特許5、666、635号に記載されている方法を用い
て実行することができる。
【0062】合金粉末材料のプレス成形は、例えば、電
動プレスを用い、約0.8MA/m〜1.3MA/mの
磁界中で配向させつつ、0.5ton/cm2〜1.0
ton/cm2の圧力で圧縮成形すれば、3.9g/c
3〜4.6g/cm3の成形体密度を有する成形体を得
ることができる。このようにして得られる成形体を、例
えば約1000℃〜約1180℃の温度で、約1〜2時
間焼結する。得られた焼結体を、例えば約450℃〜約
800℃の温度で、約1〜8時間時効処理することによ
って、R−Fe−B系焼結磁石が得られる。なお、焼結
磁石に含まれる炭素の量を減らし、磁気特性を向上する
ために、上記焼結工程の前に、合金粉末の表面を覆う潤
滑剤を加熱除去(除去)することが好ましい。加熱除去
工程は、約 200℃から600℃の温度で、約2Paの
圧力下で、約3〜約6時間実行される。
【0063】本実施形態の製造方法によると、R−Fe
−B系焼結磁石用の合金粉末材料が優れたプレス成形性
(特に圧縮性)を有しているので、成形体の割れや欠け
などが減少し、R−Fe−B系焼結磁石の生産性が向上
することができる。
【0064】
【実施例】以下、本発明のR−Fe−B系焼結磁石の製
造方法について、実施例を挙げて説明するが、本発明は
以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0065】Nd:30wt%、B:1.0wt%、D
y:1.2wt%、Al:0.2wt%、Co:0.9
wt%、残部Feおよび不可避不純物からなる組成の合
金フレークをストリップキャスト法で製造した。この合
金フレークを水素化粉砕法によって粉砕することによっ
て合金粗粉末を得た。この合金粗粉末をジェットミル装
置を用いて窒素ガス雰囲気中で微粉砕することによっ
て、平均粒径が3.5μmの合金粉末を得た。この微粉
砕工程は、特願平11−62848号に記載されている
装置および方法を用いて好適に実行される。
【0066】得られた合金粉末をロッキングミキサー内
に移し、この合金粉末に対して、カプロン酸メチル:イ
ソパラフィン=1:9(重量比)で希釈した潤滑剤を噴
霧しながら混合することによって、過剰の潤滑剤が合金
粉末の表面に付与された合金粉末材料(第1状態の合金
粉末材料)を得た。この潤滑剤と合金粉末との混合工程
は、特願平11−50171号に記載されている装置お
よび方法を用いて好適に実行され得る。
【0067】図1を参照しながら、実施例を更に説明す
る。得られた合金粉末材料(約250kg)を図1の模
式図で示されるようなステンレス製の気密性の容器(内
容量約700リットル)1に収容し、容器1上部に着脱
自在に設けられた蓋5に固定されたガス流入パイプ3か
ら不活性ガスとして窒素ガスを10リットル/minで
容器1内に供給し、ガス排出パイプ4からこれを排出す
ることで、容器1内の合金粉末材料2に対して窒素ガス
を流気させた。
【0068】このときの、合金粉末材料2に含まれる潤
滑剤と溶剤との合計量(合金粉末に対する重量%で表
示)と流気時間との関係を図2のグラフに示す。
【0069】図2から明らかなように、流気時間ととも
に両者の含有量は減少し、潤滑剤および溶剤が揮散して
いることがわかる。上記の流気条件では、約2wt%付
与された潤滑剤および溶剤が、約120分後に0.5w
t%にまで減少し、約300分後には、約0.2wt%
まで減少している。その後、約1200分まで徐々に揮
散し、約0.06wt%まで減少した後は、約72時間
後、さらに2週間後においてもほとんど変化しなかっ
た。
【0070】約1200分後から以降に、潤滑剤が揮散
されず一定値となったのは、合金粉体の表面と潤滑剤と
の相互作用によって、潤滑剤が粉体の表面に比較的強く
保持されているためと考えられる。従って、合金粉末の
表面に過剰に付与された潤滑剤を揮散させることによっ
て除去する方法を採用すると、表面との相互作用によっ
て、少なくとも最小限の潤滑剤が合金粉末の表面に安定
に保持されるので、潤滑剤が不足することがない。この
現象を利用することによって、余剰の潤滑剤を除去し、
好ましい量の潤滑剤を含む合金粉体材料を簡便に調製す
ることができる。また、窒素ガスを流気させることによ
って、大気が容器内に浸入することを防止できるので、
長期間に亘って、好ましい量の潤滑剤を含む合金粉体材
料を安定に保存することができる。
【0071】なお、潤滑剤および溶剤の含有量の測定
は、熱分解ガスクロマトグラフィー法を用い、分解温
度:250℃、500℃および800℃、カラム温度:
50℃→5℃/min→200℃の条件で行った。
【0072】次に、合金粉末材料のプレス成形性を評価
した結果を説明する。
【0073】上述のように、容器1内で窒素ガスの流気
によって、潤滑剤および溶剤が揮散され、異なる量の潤
滑剤および溶剤を含む合金粉末材料のプレス成形性を評
価した。図2に示したそれぞれの点の流気時間におい
て、容器1から合金粉末材料2を採取し、約7.5gの
合金粉末材料2を内径10mmの円筒形容器に投入し、
約9.8×105Paで加圧してプレス成形した。合金
粉末材料中の潤滑剤と溶剤との合計含有量と、得られた
成形体の高さ(圧縮性と逆相関関係にある)の関係を調
べた結果を図3に示す。
【0074】図3から明らかなように、潤滑剤と溶剤と
の合計含有量が低下するにつれて、成形体の高さは低く
なり、圧縮性が向上していることがわかる。特に、潤滑
剤と溶剤との合計含有量が約0.5wt%以下になると
圧縮性が向上し、約0.3wt%以下でその効果が顕著
であることがわかる。
【0075】また、合金粉末材料中の潤滑剤の含有量と
得られた成形体の高さ(圧縮性)の関係を図4に示す。
図4には、先と同様の方法で、潤滑剤(0.2wt%)
のみを合金粉末に添加して得られた合金粉末材料につい
て得られた結果を示し、それぞれの点は、図3と同様
に、流気時間が、0分、約60分、約120分、約18
0分、約300分、約600分および約1200分に対
応する。潤滑剤のみを付与した場合にも、溶剤で希釈し
た場合と同様に、窒素ガスの流気によって潤滑剤が揮散
された。但し、溶剤で希釈していない場合は、溶剤で希
釈した場合よりも揮散され難い傾向が認められた。
【0076】この場合も、図4から明らかなように、潤
滑剤の含有量が低下するにつれて、成形体の高さは低く
なり、圧縮性が向上していることがわかる。特に、潤滑
剤の含有量が約0.12wt%以下になると圧縮性が向
上し、約0.08wt%以下でその効果が顕著であるこ
とがわかる。
【0077】また、図3および図4の評価に用いたそれ
ぞれの合金粉末材料について、プレス成形における欠け
または割れの発生を評価(試料数約1000個)した。
窒素ガスの流気によって余剰の潤滑剤を除去する前に
は、約100個の成形体に欠けや割れが発生したが、溶
剤で希釈した潤滑剤を添加した試料(図3)では、その
合計量が約0.5wt%以下では10個以下(不良率1
%以下)、約0.3wt%以下では5個以下(不良率
0.5%以下)まで減少した。潤滑剤のみを添加した試
料(図4)では、潤滑剤の量が約0.12wt%以下で
不良率が1%以下、約0.08wt%以下で不良率が
0.5%以下となった。
【0078】以上の結果から、合金粉末材料に含まれる
潤滑剤を揮散させることによって、合金粉末のプレス成
形性を改善ができることが明らかになった。これは、合
金粉末材料中に潤滑剤が必要以上に含まれていると、主
に圧縮性に悪影響を及ぼし、潤滑剤を揮散させることに
よって、その含量を一定量以下にすることで、その圧縮
性の改善を図ることができることによると考えられる。
【0079】潤滑剤の含量が少なくなるほど圧縮性が向
上するという事実は、潤滑剤を添加混合せずに合金粉末
粉末をプレス成形した場合、圧縮性を問題とする以前の
問題として、成形体の割れや欠けなどが頻繁に起こると
いう事実とまったく異なったものであるが、合金粉末の
表面には、合金粉末との作用によって結合(吸着)し、
解離しない潤滑剤が存在しており、これは揮散されず、
圧縮性の向上に寄与するものと推測される。
【0080】上述のように、容器1内で窒素ガスを24
時間流気させた後の合金粉末材料2を電動プレスを用い
て、約1.3MA/mの磁界中で配向させつつ、1.0
ton/cm2の圧力で圧縮成形し、約4.3g/cm3
の成形体密度を有する幅10mm×高さ10mm×長さ
20mmの成形体を得た。
【0081】得られた成形体をAr雰囲気中で約108
0℃にて約1時間焼結し、次いでAr雰囲気中で約60
0℃にて、約1時間、時効処理を行って焼結磁石を得
た。
【0082】得られた焼結磁石の磁気特性は、iHc
(保磁力)約1MA/m、Br(残留磁束密度)1.2
5T、(BH)max(最大エネルギー積)約260k
J/m 3であった。
【0083】
【発明の効果】上述したように、本発明によると、優れ
たプレス成形性(特に圧縮性)を有する、R−Fe−B
系焼結磁石用の合金粉末材料の調製方法およびそれを用
いたR−Fe−B系焼結磁石の製造方法が提供される。
また、本発明によると、優れたプレス成形性(特に圧縮
性)を有する、R−Fe−B系焼結磁石用の合金粉末材
料を安定に保存する方法が提供される。その結果、本発
明によると、R−Fe−B系焼結磁石用の合金粉末材料
の成形体の割れや欠けなどが減少し、R−Fe−B系焼
結磁石の生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】合金粉末材料2に含まれる潤滑剤を窒素ガスを
流気することにより揮散させるための容器1の模式図で
ある。
【図2】窒素ガスの流気時間と合金粉末材料中の潤滑剤
および溶剤の合計含有量との関係を示すグラフである。
【図3】合金粉末材料中の潤滑剤および溶剤の合計含有
量と得られた成形体の高さ(圧縮性)との関係を示すグ
ラフである。
【図4】合金粉末材料中の潤滑剤の含有量と得られた成
形体の高さ(圧縮性)との関係を示す図である。
【符号の簡単な説明】 1 容器 2 合金粉末材料 3 ガス流入パイプ 4 ガス排出パイプ 5 蓋
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01F 1/053 H01F 1/08 B 1/06 1/04 H 1/08 1/06 A

Claims (19)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 R−Fe−B系焼結磁石の製造方法であ
    って、 (a)R−Fe−B系焼結磁石用の合金粉末の表面に、
    第1の量以上の潤滑剤が付与された第1状態の合金粉末
    材料を用意する工程であって、前記潤滑剤の主成分は脂
    肪酸エステルであり、前記第1の量は前記合金粉末の重
    量の0.15wt%以上である工程と、 (b)前記第1状態の合金粉末材料の前記潤滑剤の一部
    を揮散させることによって前記潤滑剤の量が第2の量以
    下まで低減された第2状態の合金粉末材料を調製する工
    程であって、前記第2の量は前記合金粉末の重量の0.
    12wt%以下である工程と、 (c)前記第2状態の合金粉末材料をプレス成形するこ
    とによって、成形体を形成する工程と、 (d)前記成形体を焼結する工程と、を包含する、製造
    方法。
  2. 【請求項2】 前記工程(a)は、前記潤滑剤を供給し
    ながら前記合金の粗粉末を微粉砕する工程を包含する、
    請求項1に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記工程(a)は、予め用意された前記
    合金粉末に前記潤滑剤を供給しながら、前記合金粉末と
    前記潤滑剤とを混合する工程を包含する、請求項1に記
    載の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記工程(b)は、前記第1状態の合金
    粉末材料を収容した、気密性を有する容器内に不活性ガ
    スを流気させる工程を包含する、請求項1に記載の製造
    方法。
  5. 【請求項5】 前記工程(b)の後に、前記容器または
    他の気密性を有する容器内に不活性ガスを流気させた状
    態で前記第2状態の合金粉末材料を保存する工程をさら
    に包含する、請求項4に記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記容器内に保存されている前記第2状
    態の合金粉末材料をサンプリングし、組成分析を行う工
    程をさらに包含し、この後、前記工程(c)が実行され
    る、請求項5に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記合金粉末の平均粒径は、3μm〜6
    μmの範囲内にある、請求項1に記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記合金粉末のBET法による比表面積
    は、0.45〜0.55m2/gの範囲内にある、請求
    項1に記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記工程(a)において、前記潤滑剤
    は、溶剤で希釈された状態で前記合金粉末の表面に付与
    されている、請求項1に記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記第2状態の合金粉末材料が含む前
    記溶剤と前記潤滑剤との合計は、前記合金粉末の重量の
    0.5wt%以下である、請求項に記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記溶剤は石油系溶剤である請求項
    に記載の製造方法。
  12. 【請求項12】 合金粉末の表面に潤滑剤が付与され
    た、R−Fe−B系焼結磁石用合金粉末材料の調製方法
    であって、 (a)R−Fe−B系焼結磁石用の合金粉末の表面に、
    第1の量以上の潤滑剤が付与された第1状態の合金粉末
    材料を用意する工程であって、前記潤滑剤の主成分は脂
    肪酸エステルであり、前記第1の量は前記合金粉末の重
    量の0.15wt%以上である工程と、 (b)前記第1状態の合金粉末材料の前記潤滑剤の一部
    を揮散させることによって前記潤滑剤の量が第2の量以
    下まで低減された第2状態の合金粉末材料を調製する工
    程であって、前記第2の量は前記合金粉末の重量の0.
    12wt%以下である工程と、を包含する、調製方法。
  13. 【請求項13】 前記工程(a)は、予め用意された前
    記合金粉末に前記潤滑剤を供給しながら、前記合金粉末
    と前記潤滑剤とを混合する工程を包含する、請求項12
    に記載の調製方法。
  14. 【請求項14】 前記工程(b)は、前記第1状態の合
    金粉末材料を収容した、気密性を有する容器内に不活性
    ガスを流気させる工程を包含する、請求項12に記載の
    調製方法。
  15. 【請求項15】 前記合金粉末の平均粒径は、3μm〜
    6μmの範囲内にある、請求項12に記載の調製方法。
  16. 【請求項16】 前記合金粉末のBET法による比表面
    積は、0.45〜0.55m2/gの範囲内にある、請
    求項12に記載の調製方法。
  17. 【請求項17】 前記工程(a)において、前記潤滑剤
    は、溶剤で希釈された状態で前記合金粉末の表面に付与
    されている、請求項12に記載の調製方法。
  18. 【請求項18】 前記第2状態の合金粉末材料が含む前
    記溶剤と前記潤滑剤との合計は、前記合金粉末の重量の
    0.5wt%以下である、請求項17に記載の調製方
    法。
  19. 【請求項19】 前記溶剤は石油系溶剤である請求項
    に記載の調製方法。
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