JP3455407B2 - 冷間工具鋼 - Google Patents

冷間工具鋼

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JP3455407B2 JP00060798A JP60798A JP3455407B2 JP 3455407 B2 JP3455407 B2 JP 3455407B2 JP 00060798 A JP00060798 A JP 00060798A JP 60798 A JP60798 A JP 60798A JP 3455407 B2 JP3455407 B2 JP 3455407B2
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【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、耐疲労強度の優れ
た高寿命型用冷間工具鋼に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、冷間加工用工具には、JIS−S
KD11が広く使用されている。しかし、塑性加工技術
の進歩や被加工材の高強度化に伴い、使用される工具へ
の応力負荷が大きくなり、500℃焼き戻しで60HR
Cの硬さが得られるSKD11でさえ、粗大なM7 3
型炭化物により耐摩耗性は確保しているが、一方で、M
7 3 型炭化物は型寿命の低下をもたらす一因となって
いる。このような問題に対して、例えば特開平1−20
1442号公報、特開平2−247357号公報、特開
平2−277745号公報、特開平3−134136号
公報、および特開平5−156407号公報の発明が提
案されている。 【0003】この特開平1−201442号公報は、重
量%で、C:0.90〜1.35%、Si:0.70〜
1.40%、Mn:1.0%以下、S:0.004%以
下、Cr:8.0〜10.0、MoとWの1種または2
種をMo+W/2で1.5〜2.5%、VとNbの1種
または2種をV+Nb/2で0.15〜2.5%を含
み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、さらに焼
入れ焼もどし組織において、M7 3 型炭化物の面積率
を2%以上9%以下、MC炭化物の面積率を2.5%以
下とした転造ダイス用鋼にある。確かに、この発明に
は、炭化物についての面積率、および粒径を規制してい
るが、しかし、主に靱性の向上、炭化物の連鎖状分布を
経路とした亀裂伝播の抑制を目的としたものである。こ
れに対し、本発明は金型寿命のばらつき、極度な低寿命
をもたらす因子がM7 3 型炭化物の割れによる亀裂発
生、および亀裂伝播が大きな要因であることを見出し、
そのためにはM7 3 型炭化物を15μm以下とするこ
とにより、金型寿命のばらつき、および極度な低寿命金
型を低減し、金型の平均寿命の向上をはかると言うもの
である。 【0004】また、特開平2−247357号公報は、
上述の特開平1−201442号公報に、さらに、不純
物であるAs,Sn,Sb,Cu,B,Pb,Biの合
計量が0.13%以下からなる転造ダイス用鋼にある。
さらに、特開平2−277745号公報は、焼入焼もど
し組織において、粒径2μm以上のMC型残留炭化物と
6 C型残留炭化物の1種または2種の合計の面積率が
3%以下、粒径2μm以上のM7 3 型残留炭化物の面
積率が1%以下と規制したものである。いずれも、特開
平1−201442号公報と同様に、主に靱性の向上、
炭化物の連鎖状分布を経路とした亀裂伝播の抑制を目的
としたものである。これに対し、本発明は、前述のよう
に、M7 3 型炭化物の割れによる亀裂発生、および亀
裂伝播が大きな要因であることを見出し、しかも、その
7 3 型炭化物の破壊起点が粒径15μm以下である
ことを見出したものである。 【0005】特開平3−134136号公報も、上述の
特開平1−201442号公報に、さらに、不可避的不
純物のうち、Pは0.02%以下、Sは0.005%以
下、Oは30ppm以下、Nは300ppm以下であ
り、さらに焼入焼もどし組織において、粒径2μm以上
のM7 3 型残留炭化物の面積率が8%以下、粒径2μ
m以上のMC型残留炭化物およびM6 C型残留炭化物の
1種または2種の合計の面積率が3%以下である高硬
度、高靱性冷間工具であり、また、特開平5−1564
07号公報は、焼入焼もどし後において、M7 3 型一
次炭化物が面積率で4.0%以下、MC型一次炭化物が
面積率で0.5%以下、一次炭化物の最大粒径が実質的
に20μm以下で基地中に均一に分散したミクロ組織と
なり、さらに1050℃〜1100℃の焼入温度から、
500℃までの焼入冷却速度を25℃/minとして焼
入れし、これを高温焼もどしした場合の硬さがHRC6
4以上を得ることのできる高性能転造ダイス用鋼にあ
る。 【0006】特開平3−134136号公報、および特
開平5−156407号公報のいずれも、主に靱性の向
上、炭化物の連鎖状分布を経路とした亀裂伝播の抑制を
目的としたものである。これに対し、本発明は前述同様
に、M7 3 型炭化物の割れによる亀裂発生、および亀
裂伝播が大きな要因であることを見出し、しかも、その
7 3 型炭化物の破壊起点が粒径15μmであること
から、M7 3 型炭化物を15μm以下とすることによ
り、金型寿命のばらつき、および極度な低寿命金型を低
減し、金型の平均寿命の向上を図ることにある。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】上述した従来技術は、
靱性また強度の点から炭化物サイズを規制したものであ
る。この理由は、一次炭化物の欠落による微少欠損を生
じたり、クラックの進展経路となることを防ぐためであ
る。これに対し、近年の塑性加工技術の進歩や被加工材
の高強度化に伴い、工具の耐摩耗性向上を目的に、さら
に耐疲労性を兼ね供えた金型に適した工具鋼が必要とさ
れることから、本発明は、耐摩耗性を兼ね供えた引張圧
縮疲労強度の優れた高寿命が得られる冷間工具鋼を提供
することを目的とするものである。 【0008】 【課題を解決するための手段】その発明の要旨とすると
ころは、重量%で、C:0.75〜0.89%、Si:
2.0%以下、Mn:0.1〜2.0%、Cr:7.8
〜11.0%、MoまたはWのいずれか1種または2種
をMo当量(Mo+1/2W):0.7〜5.0%、V
またはNbのいずれか1種または2種をV当量(V+1
/2Nb):0.1〜2.5%、残部Feおよび不可避
的不純物よりなり、M7 3 型炭化物の粒径を5〜15
μm、面積率1〜9%とすることにより耐疲労強度の優
れた型寿命を有することを特徴とする冷間工具鋼にあ
る。 【0009】 【発明の実施の形態】以下に、本発明鋼の各化学成分の
作用およびその限定理由を説明する。Cは、焼入焼戻に
より、十分なマトリックス硬さを与えると共に、Cr,
Mo,V,Nbなどと結合して炭化物を形成し、高温強
度、耐摩耗性を与える元素である。しかし、添加量が多
過ぎると、凝固時に粗大炭化物が過剰に析出し靱性を阻
害することから、Cの上限を0.89%とした。一方、
0.65%未満では、十分な二次硬化硬さが得られない
ので、その下限を0.65%としたが、強度と靱性の最
適バランスを得るためには、0.75〜0.89%の範
囲が望ましい。 【0010】Siは、主に脱酸剤として添加されると共
に、耐酸化性、焼入性に有効な元素であると共に、焼戻
過程において炭化物の凝集を抑え二次硬化を促進する元
素である。しかし、2.0%を越えて添加すると、靱性
を低下させるので、その上限を2.0%とした。Mn
は、Siと同様に脱酸剤として添加し鋼の清浄度を高め
ると共に焼入れ性を高める元素である。しかしながら、
2.0%を越えて添加すると、冷間加工性を阻害するう
えに靱性を低下させるので、その上限を2.0%とし
た。 【0011】Crは、焼入れ性を高めると共に、焼戻軟
化抵抗を高める有効な元素である。この効果を満足する
ためには、好ましくは7.8%以上、より好ましくは
8.3%以上必要である。従って、その下限を7.8
とした。一方、Crは、凝固時にCと結合して巨大一次
炭化物を形成し易く、過剰な添加は、靱性を低下させる
ため、その上限を11.0%、とした。 【0012】MoおよびWは、共に微細な炭化物を形成
し、二次硬化に寄与する重要な元素であると共に、耐軟
化抵抗性を改善する元素である。ただし、その効果はM
oの方がWよりも2倍強く、同じ効果を得るのに、Wは
Moの2倍必要である。この両元素の効果は、Mo当量
(Mo+1/2W)で表すことができる。本発明成分系
においては、Mo当量で少なくとも0.7%以上が必要
である。逆に、Mo当量の過剰添加は、靱性を低下を招
くので、その上限を5.0%とした。 【0013】V、Nbは、共に二次硬化に有効であり、
Cと硬い炭化物を形成して耐摩耗性の向上に大きく寄与
すると共に結晶粒を微細化する。ただし、その効果はV
の方がNbよりも2倍強く、同じ効果を得るのに、Nb
はVの2倍必要である。この両元素の効果はV当量(V
+1/2Nb)で表すことができる。本発明成分系にお
いては、高温焼戻し硬度を得るためには、V当量で少な
くとも0.1%以上が必要である。過剰な添加は靱性を
劣化させるため、その上限を2.5%とした。 【0014】次に、冷間工具鋼において、凝固時に晶出
する共晶炭化物であるが、従来は靱性、または強度の点
から炭化物のサイズを規定していたものである。その理
由は、一次炭化物の欠落による微小欠損を生じたり、ク
ラックの進展経路となることを防ぐために規制したもの
である。しかし、この点を詳しく究明した結果、本発明
の最大の特徴は、特に冷間工具鋼としての金型ダイス等
の工具寿命を左右する要因としての引張圧縮疲労での優
れた寿命が必要で、実際の金型において、疲労に起因し
た破損は、M7 3 型炭化物の割れによる亀裂発生、お
よび亀裂伝播が大きな要因を占めていることを見出し、
そのためには、M7 3 型炭化物の粒径が15μm以下
の場合に著しく軽減することを見出したものである。 【0015】図1は、M7 3 型炭化物サイズと破断繰
返し数および耐摩耗性との関係を示す図である。この図
によれば、引張圧縮疲労試験の結果によれば、M7 3
型炭化物の粒径が15μmを越えると著しく破断繰返し
数(N)が減少することが判明した。一方、大越式摩耗
試験の結果によると、M7 3 型炭化物の粒径が5μm
未満で著しく耐摩耗性の減少が現れることが判明した。 【0016】図2は、M7 3 型炭化物サイズと金型寿
命(ショット数)との関係を示す図である。この図によ
れば、摩耗による金型の廃却、および炭化物の割れに起
因した廃却からの金型寿命を試験した結果、M7 3
炭化物サイズが5μm未満では、摩耗による金型の廃却
において、また、M7 3 型炭化物の粒径が15μmを
越えると、炭化物の割れによる廃却から金型寿命として
の指数であるショット数の減少することが判る。その結
果、両者の要因による金型寿命によって、M73 型炭
化物の粒径を5〜15μmの範囲に規制することが最適
であることを究明した。すなわち、M7 3 型炭化物の
粒径について、引張圧縮疲労と疲労に起因した破損から
15μm以下が好ましい。また、耐摩耗性の観点から5
μm以上が望ましい。 【0017】さらに、M7 3 型炭化物の面積率は、耐
摩耗性の観点からは炭化物が多いほど良好となり、少な
くとも1%以上のM7 3 型炭化物が必要となる。一
方、耐疲労特性の点から、炭化物をできるかぎり均一に
分散させるため、9%以下とすることが望ましい。従っ
て、M7 3 型炭化物の面積率を1〜9%とした。上述
したように、M 7 3 型炭化物の粒径を5〜15μm、
面積率1〜9%とするためには、請求項に示した成分組
成のものを溶製した後、1000〜1040℃で焼入れ
することにより実現することができる。しかし、104
0℃を超えると、炭化物が急速にマトリックス(基地)
中へ溶け込み、炭化物粒径が小さくなるため、所定の炭
化物が得られない。また、焼入れ時に旧オーステナイト
粒が粗大化し、靱性、疲労強度の低下が生じる。さら
に、焼入れ時に残留オーステナイトが多く残存し、焼戻
しても十分な硬さが得られない。一方、1000℃未満
では、炭化物がマトリックス(基地)中へ溶け込まず、
所定の炭化物が得られない。また、炭化物がマトリック
ス中へ溶け込まないので、硬さを得るために必要な炭素
が不足することから、所定の粒径および面積率を得るこ
とができない。 【0018】 【実施例】以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に
説明する。表1に示す組成の鋼600kgを真空誘導溶
解炉にて出鋼した後、加熱温度1100℃、鍛錬比15
sで鍛伸を行い、室温まで徐冷した後、860℃にて焼
鈍を施し供試材とした。この試験片および金型は、10
40℃に30分保持後、空冷して焼入し、520℃で6
0分保持後空冷処理を2回施した。また、引張圧縮疲労
試験は、平行部、径5×15mmの試験片を加工後、油
圧サーボ試験機を用い、応力振幅1300MPa、応力
比R=−1、室温の条件下で行った。 【0019】 【表1】 【0020】大越式摩耗試験は、SCM420(86H
RB)を相手材とし、摩耗距離200m、最終荷重62
Nの条件下で行い、試験結果は比較鋼の摩耗量を10
0として表した。さらに、実機での金型試験は、径12
0×100mmの鍛造用金型を作製し、SCM420を
被加工材として試験を行った。金型は摩耗または割れに
よって廃却となり、割れによって廃却された金型は、廃
却金型の内部を調査した結果、炭化物の割れが破壊起点
となった。また、炭化物の規定方法としては、測定面、
T面1/4部、粒径は画像処理装置による円相当径、面
積率は画像処理装置により測定し、M7 3 炭化物につ
いては、本発明では、2μm以上の炭化物を全てM7
3 型炭化物とみなした。 【0021】その結果を表2に示す。表2に示すよう
に、本発明鋼No1〜はいずれもM7 3 炭化物粒径
5〜15μmであり、しかも、M7 3 炭化物面積率
(%)が1〜9%の範囲であり、その場合の硬さ(HR
C)は、いずれも59HRC以上の硬さを維持した上
で、従来の冷間工具鋼No4〜5よりもはるかに優れた
引張圧縮疲労強度、金型寿命延長をはかることが出来
た。 【0022】 【表2】 【0023】 【発明の効果】以上述べたように、本発明鋼は、冷間工
具鋼としてのM7 3 炭化物の粒径およびM7 3 炭化
物の面積率を一定範囲に規制することにより、極めて優
れた型寿命を確保することが可能となり、金型用工具鋼
として従来のものに比べて経済的で極めて有利なものと
なった。
【図面の簡単な説明】 【図1】M7 3 型炭化物サイズと破断繰返し数および
耐摩耗性との関係を示す図である。 【図2】M7 3 型炭化物サイズと金型寿命(ショット
数)との関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量%で、 C:0.75〜0.89%、 Si:2.0%以下、 Mn:0.1〜2.0%、 Cr:7.8〜11.0%、 MoまたはWのいずれか1種または2種をMo当量(M
    o+1/2W):0.7〜5.0%、 VまたはNbのいずれか1種または2種をV当量(V+
    1/2Nb):0.1〜2.5%、 残部Feおよび不可避的不純物よりなり、M7 3 型炭
    化物の粒径を5〜15μm、面積率1〜9%とすること
    により耐疲労強度の優れた型寿命を有することを特徴と
    する冷間工具鋼。
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