JP3451957B2 - 塩類を含む焼却残渣の溶融炉 - Google Patents

塩類を含む焼却残渣の溶融炉

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、都市ごみ焼却残渣
などのような塩類を含む焼却残渣を溶融する方法及びそ
の方法を実施するための溶融炉に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、都市ごみや産業廃棄物などを焼却
した際に発生する焼却残渣の処分に際し、焼却残渣中の
重金属を不溶化するとともに焼却残渣自体を減溶化する
ことが必要な状況になってきた。このため、一部の焼却
残渣については、減溶化と重金属の不溶化が同時に行わ
れる溶融法によって処理されている。焼却残渣の溶融処
理は種々の方法によって行われているが、これらの方法
うち、電気抵抗式溶融炉を使用する方法や誘導加熱式の
溶融炉を使用する方法においては、炉内に焼却残渣の溶
融物を滞留させながら加熱保持し、焼却残渣を装入して
順次溶融させる処理が行なわれる。例えば、特開平8−
49832号公報に示されている電気抵抗式溶融炉を使
用する方法による操業は次のように行われる。
【0003】炉内に滞留している焼却残渣の溶融物中に
電極を浸漬し、この電極間に通電してそれ自体の電気抵
抗熱によって溶融物を加熱しながら、焼却残渣を装入す
る。焼却残渣の装入は、炉内に常に未溶融のものが存在
するようにし、溶融物が焼却残渣で覆われた状態になる
ように行われる。炉内に装入された焼却残渣は溶融物に
よって加熱され、溶融物と接触している下側の部分から
順次溶融する。この際、焼却残渣が塩類を含むものであ
ると、生成した溶融物が炉内に滞留している間に、溶融
物中の成分が比重差によって分離され、溶融スラグと溶
融塩に分かれる。このため、溶融物の上部には比重が小
さい溶融塩層が形成され、その下に溶融スラグ層が形成
される。分離された溶融塩と溶融スラグは別々に抜出さ
れる。
【0004】一方、焼却残渣が加熱・溶融された際に発
生したガスは排ガスとして排出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来技術
による溶融炉の操業において、炉内に溜まる溶融塩を排
出する場合、溶融スラグの混入を防止するために、溶融
スラグ層上の溶融塩をすべて排出してしまうことはでき
ない。このため、炉内には、常にある程度の厚さの溶融
塩層が存在する。この結果、上記従来技術においては、
溶融塩層の存在に起因する種々の問題が起こる。
【0006】まず、炉内に溶融塩層が生成すると、溶融
塩と接触する部位の炉壁耐火物が侵食され、炉体の補修
コストが嵩む。又、上記従来技術のうち、電気抵抗式溶
融炉を使用する方法においては、溶融塩の電気抵抗値が
溶融スラグの値に比べて著しく小さいので、電極間に通
電された電流が抵抗値の小さい溶融塩層に集中して流れ
る短絡現象が起こる。このため、溶融スラグ層の温度を
所定値に維持することができなくなり、溶融スラグの排
出が困難になる。
【0007】 本発明は、塩類を含む焼却残渣を溶融し
ても、溶融炉内に溶融塩層が殆ど生成しない焼却残渣の
溶融炉を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】
【0010】上記の目的を達成するために、本発明に係
る溶融炉においては、炉上面中央部に焼却残渣の装入管
が設けられ、かつ、ガス吹込み管と排ガス排出管が炉上
面の前記焼却残渣の装入管に関して略対象の位置に設け
られている。
【0011】また、本発明に係る溶融炉においては、炉
上面中央部に焼却残渣の装入管が設けられ、かつ、水噴
霧ノズルと排ガス排出管が炉上面の前記焼却残渣の装入
管に関して略対象の位置に設けられている。
【0012】本発明者らは、溶融塩に係わる問題の発生
を回避するために、塩類を含む焼却残渣を溶融しても、
溶融炉内に溶融塩層が生成しない方法について種々の検
討を行なった。
【0013】まず、溶融処理中に溶融塩の気化が行われ
るのに、炉内には、依然として、溶融塩層が存在すると
言う事実があるので、炉内における塩類の挙動について
調べた。都市ごみ焼却残渣のような塩類を含む焼却残渣
は、主として、融点が1300℃〜1500℃の酸化物
や、融点が700℃〜800℃の塩化ナトリウムや塩化
カリウムなどの塩類よりなる混合物であり、焼却残渣の
溶融処理は焼却残渣中のすべての成分を溶融してしまう
処理であるので、その溶融炉の操業においては、すべて
の成分が溶融する高温域、すなわち酸化物の融点以上の
温度になるまで加熱される。このため、融点が低い塩類
は成り行きのままの状態で加熱されて高温になり、気化
する。しかし、溶融塩層の上は未溶融の焼却残渣で覆わ
れており、この焼却残渣によって高温の溶融物からの熱
移動が妨げられるので、炉内の気相部の温度は溶融物の
温度よりも大幅に低くなり、少なくとも、塩類の沸点以
下になる。このため、炉内の気相部においては、溶融塩
層から気化した塩類が冷却されて凝縮・固化し、微細な
粒子となる。
【0014】しかし、排ガスの集塵機で捕集されたダス
ト中の塩類の量を調べてみると、その量は意外に少な
く、気化した塩類のうち、多量のものが排出されずに炉
内に留まっている。この微細な塩類粒子は排出されずに
炉内の気相部を浮遊している間に凝集して大きくなり、
落下するものと考えられる。そして、落下した塩類粒子
は未溶融の焼却残渣と共に溶融されて溶融塩になり、再
び気化するものと考えられる。
【0015】このように、気化した溶融塩のうち、多量
のものが凝縮・固化、落下、溶融、気化の変化を繰り返
しながら、溶融炉内に留まってしまい、炉外へ排出され
ない。このため、炉内においては、溶融塩層が形成され
たままの状態で溶融処理が行なわれる。
【0016】ところで、溶融塩層から気化した塩類の粒
子が炉外へ排出されないのは、焼却残渣を溶融した際に
発生するガス量が少なく、その流れが非常に緩やかであ
るので、淀みができたり、あるいはガス発生箇所からガ
ス排出口へ向かうガスの流れが塩類の粒子を気流搬送す
ることができるだけの流速には達しないためである。す
なわち、溶融時に発生するガスは、焼却残渣中の有機物
が分解したり、水分が蒸発したりすることによって生成
したものであるので、その量は非常に少なく、通常、焼
却残渣1t当り150〜200Nm3/時程度しか発生し
ない。
【0017】そこで、本発明においては、溶融炉から排
出されるガス量を増加させ、溶融塩層から気化した塩類
の粒子をそのまま炉外へ排出させてしまうことを図って
いる。
【0018】溶融炉から排出されるガス量を増加させる
場合、炉内へ非酸化性ガスを吹込んでもよいし、高温の
炉内でガス化して非酸化性ガスが生成するもの、例え
ば、水を供給してもよい。
【0019】なお、本発明において、非酸化性ガスと
は、実質的に酸素を含まないガスであるものとし、窒素
ガス、可燃性ガス、水蒸気、及び還元雰囲気で操業され
ている溶融炉からの発生ガスなどを指す。上記可燃性ガ
スとしては、石油ガス、天然ガス、都市ガスなどを挙げ
ることができる。
【0020】水を供給する場合、直接炉内へ水を噴霧し
てもよいし、装入する焼却残渣に加えてもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】図1は本発明の溶融炉に係る実施
の形態の一例を示す平面図、図2は図1におけるA−A
部の断面図である。図1、図2に示す溶融炉は電気抵抗
式のものであって、10は溶融炉本体、31は溶融スラ
グ層、32は溶融メタル層、30は投入されて溶融スラ
グ層を覆っている焼却残渣を示す。図1、図2におい
て、11は溶融スラグ中に浸漬して電気抵抗熱を発生さ
せる電極、12は焼却残渣の装入管、13は気相部に非
酸化性ガスを吹込むために炉上部に設けられたガス吹込
み管、14は排ガスの排出管である。又、15は溶融ス
ラグの排出口、16は溶融メタルの排出口である。
【0022】上記の構成による溶融炉によって塩類を含
む焼却残渣を溶融する場合の操業は、次のように行われ
る。
【0023】電極11間の通電によって加熱されて1300
℃〜1400℃に維持されている溶融スラグ31が滞留して
いる炉内に焼却残渣が装入され、溶融処理される。焼却
残渣は焼却残渣装入管12から炉内へ投入され、溶融ス
ラグ31を覆った状態になる。溶融スラグを覆っている
焼却残渣30は、溶融スラグからの伝熱によって予熱さ
れながら、その下部から順次溶融される。焼却残渣が溶
融すると、その成分が比重差によって、溶融塩、溶融ス
ラグ、及び溶融メタルに分かれるが、前述のように、焼
却残渣が溶融した際に生成した溶融塩は高温に加熱され
て順次気化してしまうので、溶融スラグ層31の上には
少量の溶融塩が存在するだけである。このため、炉内に
は、実質的に、溶融スラグ層31と溶融メタル層32が
形成される。そして、溶融スラグはスラグ排出口15か
ら連続的又は間欠的に抜き出される。また、溶融メタル
はメタル排出口16から間欠的に抜き出される。
【0024】このような溶融処理中、ガス吹込み管13
から窒素ガスや可燃性ガスなどの非酸化性ガスを吹込
み、排ガス排出管14から排出するガス量を増やす。こ
のガス吹込みによって、炉内気相部の各所にガス排出口
14へ向かう気流が形成される。そして、気化した塩類
の粒子はこの気流に乗って搬送され、ガス排出口14か
ら炉外へ排出される。
【0025】なお、溶融物を滞留させながら溶融する電
気抵抗式や誘導加熱式溶融炉の操業においては、炉内が
還元性雰囲気に保持されるので、炉内へ吹込むガスは、
非酸化性ガスに限られる。非酸化性ガスとしては、窒素
ガスや可燃性ガスの他に水蒸気が挙げられる。
【0026】図3は本発明に係る実施の形態の他の例を
示す図である。図3において、10は電気抵抗式の溶融
炉本体、31は溶融スラグ層、32は溶融メタル層、3
0は溶融スラグ層を覆っている焼却残渣を示す。11は
溶融スラグ中に浸漬されている電極、12は焼却残渣の
装入管、13はガス吹込み管、14は排ガスの排出管、
15は溶融スラグの排出口、16は溶融メタルの排出口
である。
【0027】この実施の形態においては、排ガスライン
に設けられている集塵機22の出口側に接続されている
排ガス配管が分岐されて、排ガス戻し配管23が設けら
れ、この配管23は非酸化性ガス配管20に接続されて
いる。このため、溶融炉から排出する還元性の排ガスを
非酸化性ガスとして炉内へ吹込むことが可能になってい
る。なお、排ガスの吹込みに際しては、窒素ガスや可燃
性ガスなどの非酸化性ガスの一部として使用するのがよ
い。
【0028】図4は本発明に係る実施の形態のさらに他
の例を示す図である。図4において、図3と同じ部分に
ついては同一の符号を付し、説明を省略する。この実施
の形態においては、炉上部に水噴霧ノズル17が設けら
れている。21は水噴霧ノズル17に接続した水配管で
ある。このため、高温の炉内へ水を噴霧して気化させ、
ガス発生量を増加させることが可能になっている。
【0029】このように、高温の炉内へ水を供給すれ
ば、排ガス量を増加させることができるが、この水の供
給は炉内へ噴霧する手段だけに限定されるものではな
く、所要量の水を焼却残渣に加えて供給してもよい。
【0030】次に、塩類を含む焼却残渣を溶融する処理
を実施中の溶融炉内にガス吹込みを行なった場合の結果
を説明する。
【0031】図1、図2と同様の構成による溶融炉で、
ガス吹込み管を備えた電気抵抗式の炉(内径2.8m×
高さ2.0m、処理能力1t/時、)に、ごみ焼却灰と
飛灰(それぞれの組成は表1示す)を7:3の比率で混
ぜた焼却残渣を1t/時の供給速度で連続的に装入して
溶融しながら、ガス吹込み管から窒素ガスの吹込みを行
なった。窒素ガスの吹込み流量は100Nm3 /時であっ
た。このとき、溶融炉からの排出ガス流量は760m3
/時(水分20%、温度400℃,乾ベース換算流量2
50Nm3 /時)であった。又、排ガス中のダスト濃度は
129g/Nm3(乾ベース)であり、捕集したダストの
組成は表2に示す通りであった。従って、溶融炉から排
出されたダスト量は32kg/時であった。そして、窒素
ガスを吹込みながら操業を継続したが、24時間経過後
においても、電流上昇などによる操業異常は発生しなか
った。
【0032】これに対し、ガス吹込みをしない場合(従
来の操業)の排ガス流量は520m 3 /時(水分29
%、温度400℃,乾ベース換算流量150Nm3 /時)
で、排ガス中のダスト含有量は82g/Nm3 (乾ベー
ス)であった。従って、溶融炉から排出されたダスト量
は12kg/時であった。そして、6時間経過後には電流
の上昇が始まり、18時間経過後には電力供給が不能に
なった。このとき、溶融炉内には溶融塩層が生成してい
た。
【0033】このように、溶融炉内へガスを吹込めば、
気化した塩類が排出されてしまうので、炉内に溶融塩層
が形成されなくなり、電流上昇などによる操業異常が発
生しなくなることが確認された。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、溶融炉内の気相部に非
酸化性のガスを吹込んで溶融炉から排出する排ガス量を
増加させ、溶融塩層から気化した塩類の粒子をそのまま
炉外へ排出させてしまうので、塩類を含む焼却残渣を溶
融しても、溶融炉内に溶融塩層が殆ど生成せず、炉体内
壁の耐火物が侵食されたり、電流が溶融塩層に集中して
流れる操業異常が起こったりする問題が回避される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶融炉に係る実施の形態の一例を示す
平面図である。
【図2】図1におけるA−A矢視部の断面図である。
【図3】本発明の溶融炉に係る実施の形態の他の例を示
す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態のさらに他の例を示す
図である。
【符号の説明】
10 溶融炉本体 11 電極 12 焼却残渣装入管 13 ガス吹込み管 14 排ガス排出管 15 スラグ排出口 16 メタル排出口 17 水噴霧ノズル 20 非酸化性ガス配管 21 水配管 22 集塵機 23 排ガス戻し配管 30 焼却残渣 31 溶融スラグ層 32 溶融メタル層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−28851(JP,A) 特開 平10−205728(JP,A) 特開 平9−280533(JP,A) 特開 平10−25189(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F23G 5/00 115 B09B 3/00 F23J 1/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶融物を滞留させながら被処理物を装入
    する操業を行なう溶融炉において、炉上面中央部に焼却
    残渣の装入管が設けられ、かつ、ガス吹込み管と排ガス
    排出管が炉上面の前記焼却残渣の装入管に関して略対象
    の位置に設けられていることを特徴とする塩類を含む焼
    却残渣の溶融炉
  2. 【請求項2】 溶融物を滞留させながら被処理物を装入
    する操業を行なう溶融炉において、炉上面中央部に焼却
    残渣の装入管が設けられ、かつ、水噴霧ノズルと排ガス
    排出管が炉上面の前記焼却残渣の装入管に関して略対象
    の位置に設けられていることを特徴とする塩類を含む焼
    却残渣の溶融炉
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