JP3446491B2 - 化合物半導体エピタキシャルウエハの製造方法 - Google Patents

化合物半導体エピタキシャルウエハの製造方法

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、低温で形成された窒化
物化合物半導体からなる薄膜緩衝層を含む積層体から構
成される化合物半導体エピタキシャルウエハに係わり、
特に表面状態に優れる積層体構成層をもたらす窒化物化
合物薄膜緩衝層を備えた化合物半導体エピタキシャルウ
エハに関する。 【0002】 【従来の技術】結晶基板上に形成された窒化ガリウム
(GaN)等の窒化物化合物半導体を構成層とする積層
体は、従来から、電界効果型トランジスタ(FET)、
発光並びに受光素子等の化合物半導体素子の作製に利用
されている。この様な積層体は、一般にα−アルミナ単
結晶(サファイア)、炭化珪素(SiC)や酸化亜鉛
(ZnO)などからなる基板上に形成される。これらの
基板と積層体を構成する窒化物化合物半導体は格子定数
を異にする。例えば、GaNとサファイアとの格子不整
合性は相互の配向性を考慮しても約13.8%に達する
(「日本結晶成長学会誌」、Vol.20、No.4
(1993)、28〜36頁)。従って、窒化物化合物
半導体積層体は総じて格子不整合系構造となる。 【0003】格子不整合の関係にある基板上に、表面の
平坦性に優れる連続膜を成膜するのは容易ではない。例
えば、サファイア基板上に直接、GaNを成長させる
と、孤立した成長島からなる不連続膜となることが知ら
れている(前出の「日本結晶成長学会誌」のFig.1
(30頁))。 【0004】従来技術に於いては、基板との格子不整合
性を緩和し、多少なりとも連続性のある窒化物化合物半
導体膜を成膜するために、例えばサファイア基板に低温
で形成した薄膜緩衝層上に積層体が構築されている。こ
れらの薄膜緩衝層はAlx Ga1-x N(0≦x≦1)か
ら構成されるのが一般的である(特開平2−22947
6号公報、特開平4−297023号公報、特開平5−
41541号公報及び特開平6−151962号公報な
ど)。薄膜緩衝層はまた、通常、400℃〜900℃
(特開平2−229476号公報)や400℃〜800
℃(特開平6−151962号公報)の比較的、低温で
成長されるため特に、低温緩衝層と呼称されている。 【0005】低温緩衝層は、約1000℃を越える高温
で成膜される一般的な窒化物化合物半導体緩衝膜とは成
膜温度のみならず、結晶学的な形態、膜厚を異にするも
のである。従来の低温緩衝層の結晶形態は、非晶質(ア
モルファス)である(特開平6−151962号公
報)。或いは、無定型(非晶質)体を主体として、単結
晶または多結晶の微結晶粒が混在したものから構成され
ている(特開平2−229476号公報)。低温薄膜緩
衝層を非晶質とする主たる理由は、堆積する膜の成長時
に成長核の均一な発生、形成を促進でき、且つ縦横の2
次元的成長を優先的に進行できるためであるとされる。 【0006】1000℃程度の高温で低温緩衝層上に堆
積される通常の窒化物化合物半導体層は、数μmであ
る。一方、均一な成長核の発生が期待できる非晶質低温
緩衝層の膜厚は、狭い範囲に限定されている。低温緩衝
層の膜厚は具体的には、100〜500オングストロー
ムと薄いものである(特開平2−229476号公
報)。非晶質にあっては、それを構成する原子の相互間
の結合力は弱い。従って、高温での成膜に備えて低温緩
衝層を加熱する際に、昇温過程で熱解離や昇華に基づき
低温緩衝層が揮散し易い状況を招く。特に、上記の様に
膜厚が薄い非晶質の低温緩衝膜にあっては、高温への昇
温過程でその一部が消失することが経験されている。基
板結晶上に堆積する低温緩衝膜の一部が消失すれば、そ
の部分では基板結晶が露出する。この様に部分的に基板
結晶表面が露呈している状態にある下地上には、格子不
整合系の窒化物化合物半導体膜の均一な成長は達成され
ない。低温緩衝膜が残存する領域では、窒化物化合物半
導体膜の2次元的な(平面的な)成長が促進されるが、
露呈した基板表面上では孤立した島状の成長核が散在す
るのみとなり、連続性が損なわれるからである。 【0007】高温での膜の熱解離を抑制する手段として
は、揮発性の高い膜の構成元素を含む雰囲気内で昇温を
実施することである。ヒ化ガリウム(GaAs)の熱処
理を第V族元素のヒ素(As)の水素化物であるアルシ
ン(AsH3 )を含む雰囲気内で実施するのがその一例
である。しかし、GaN等の窒化物化合物半導体の加熱
は窒素の水素化物であるアンモニア(NH3 )を含む雰
囲気内では実施されない。不十分なアンモニアの熱分解
に因る窒素と水素とが結合(N−H結合)したフラグメ
ントが窒化物化合物半導体膜内に取り込まれることによ
り、マグネシウム(Mg)等のアクセプター不純物の電
気的活性化が阻害されるからである。このため、従来技
術にあっては、窒素を含む物質であるとの観点から窒素
ガスを含む雰囲気内での熱処理が一般化している。しか
し、窒素分子は原子状窒素に熱分解させるのは困難であ
ることは以前から知られている事実である。このため、
非晶質からなる低温緩衝層の高温への昇温時に於ける変
質を抑制するに至っていない。この変質が表面状態や結
晶性に優れる積層体の構成を阻害している。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】従来の窒化物化合物半
導体膜の積層体から構成される化合物半導体エピタキシ
ャルウエハにあって、その特性の不均一性の原因は低温
緩衝膜の熱解離による消失に集約される。低温緩衝層の
部分的な消失による基板表面の低温緩衝膜の被覆率の不
均一性が、その上に堆積する積層体構成層の品質の不均
一さを招いている。窒化物化合物半導体低温緩衝膜を備
えた積層体から構成される化合物半導体エピタキシャル
ウエハから得られる化合物半導体素子にあって、素子特
性は低温緩衝層の品質に強く依存する。従って、低温緩
衝層に起因する従来の問題点を払拭するには、第一に高
温での熱解離に因る変質を抑制、回避でき、表面状態に
優れる連続膜からなる格子不整合系積層体を得るに足る
低温緩衝層を得る必要がある。本発明では、この要求を
満足するために低温緩衝層が備えるべき結晶学的な品質
を明確とすることをもって、ウエハ面内で均一な特性の
化合物半導体エピタキシャルウエハを提供するものであ
る。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明は、結晶基板上に
低温で成長された窒化物化合物半導体からなる低温薄膜
緩衝層を備えた積層体から構成される化合物半導体エピ
タキシャルウエハにおいて、該低温緩衝層が、断面が紡
錘状の複数の単結晶粒を主体として構成されていて、隣
接する単結晶粒の頂点の間隔Lが該単結晶粒の横幅W以
上かつW+100nm以下であることを特徴とする化合
物半導体エピタキシャルウエハを提供する。特に本発明
は、上記の紡錘状の単結晶粒の横幅のばらつきΔWが4
0nm以下であることを特徴とする化合物半導体エピタ
キシャルウエハを提供するものである。また特に本発明
は、上記紡錘状の単結晶粒が、ΔW及びLが上記の範囲
にあって、高さのばらつきΔHが40nm以下である化
合物半導体エピタキシャルウエハを提供するものであ
る。 【0010】 【発明の実施の形態】本発明では、窒化物化合物半導体
からなる複数の単結晶粒を主体として低温緩衝膜を構成
する。窒化物化合物半導体は、一般式Alx Gay In
z N(但し、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦
1、0≦z≦1)で総括されるものがある。また、窒素
以外の第V族元素を含む一般式Alx Gay Inza
1-a (0<a≦1)や一般式Alx Gay Inza
As1-a (0<a≦1)等も窒化物化合物半導体に該当
する。構成主体とは、低温緩衝層を構成する主たる物質
である。従って、本発明の低温緩衝層は、従来の窒化物
化合物半導体低温緩衝膜とは、そもそも構成主体を異に
するものである。即ち、本発明の低温緩衝膜は、例え
ば、600℃で形成されたアモルファス質を主体とする
従来のAlN低温緩衝層とは異なる形態から構成するも
のである(前出の「結晶成長学会誌」及び同誌13
(4)(1986)、8〜15頁、「結晶成長学会誌」
15(1988)、74〜82頁、「結晶成長学会誌」
21(5)(1994)、S369〜S384頁、「豊
田合成技報」、35(2)(1993)、85〜90
頁、並びに特開平2−229476号公報など参照)。 【0011】低温緩衝層を単結晶粒を主体として構成す
ることにより得られる第一の利点は、熱解離に対して耐
性が向上することにある。低温緩衝層が単結晶からなっ
ているが故に、非晶質体に比較すれば構成原子の相互の
結合力が強いためである。従って、高温環境下に於いて
も、例えばアンモニア等の窒素を含む分子から構成され
る雰囲気を敢えて創出しなくとも緩衝層の熱解離による
変質を抑制できる。 【0012】本発明に係わる低温緩衝層は、明らかに結
晶化による特定の面方位からなる結晶面を側面とする、
角錘状の頂部を備えた断面形状を略六角形とする角柱状
の単結晶粒から構成するのではない。例えば、AlN非
晶質膜は1000℃を越える成膜温度に昇温する過程で
c軸に配向した角錘柱状結晶となることが知られている
(前出の結晶成長学会誌)。しかし、本発明では、従来
の低温緩衝層の成膜温度に於いて、当初より既に単結晶
である紡錘状の窒化物化合物半導体の微細粒を主体とし
て緩衝層を形成する。図1に、サファイアからなる結晶
基板(101)上に堆積した本発明に係わるGaNから
なる低温緩衝層の透過電子顕微鏡により観察された断面
像を模式的に示す。低温緩衝膜層(109)の構成主体
は、結晶基板(101)との界面(102)から成長す
る、水平断面を概ね略円形状或いは円形に近い多角形状
とする単結晶粒(104)である。単結晶粒(104)
の断面は頂部が錘状である紡錘状である。例えば、(0
001)面(C面)サファイア基板上に高温で成長され
る、頂部が面方位を(10−11)とする特定の結晶面
から構成される角錘柱状のGaN単結晶とは、明らかに
断面形状を異にするものである(J.Crystal
Growth、133(1993)、59〜70頁参
照)。また、単結晶粒(104)以外の付属的な構成要
素は(図1の(105))、多結晶粒或いは無定形結晶
等である。 【0013】従来の六角柱状の単結晶粒も本発明の紡錘
状単結晶粒も、いずれも成膜時には膜成長を促す成長核
を提供する。しかし、六角柱状の単結晶粒を核とする成
長様式にあっては、平面形状を略六角形とする直立した
板状結晶が重層した様な突起或いはまた六角柱が直立し
た様な突起が成長層の表面に出現し易い。このため、成
長層表面は平坦となり難い。一方、断面を紡錘状とする
単結晶粒からは台形状の成長島が発生する。この台形状
の成長島の天板表面は平坦であるため、これらの成長島
が相互に接合して形成される表面も平坦となる。即ち、
成長層表面の平坦性は、成長核を提供する単結晶粒の形
状に由来するのであって、本発明では、表面の平坦性を
確保する目的からも断面が紡錘状の単結晶粒を主体とし
て低温緩衝膜を構成するものである。 【0014】本発明に用いる基板材料には特に制限は加
わらない。サファイアの他、同じく六方晶系に属する炭
化珪素(SiC)や酸化亜鉛(ZnO)等が使用でき
る。ヒ化ガリウム(GaAs)やリン化ガリウム(Ga
P)等の面心立方格子構造の III−V族化合物半導体か
らなる基板も使用できる。窒化物化合物半導体の成長用
途として使用可能な基板材料は、既に特開平−2294
75号公報に詳述されている。基板の面方位等にも制限
はなく、或るオフ角を付した結晶面を持ったものでも差
し支えない。 【0015】紡錘状単結晶粒の横幅(W:図1の(10
7))とは、各紡錘状単結晶粒についての横幅の最大値
を指す。紡錘状単結晶の横幅は概ね、2〜40nmとす
るのが望ましい。本発明では、低温緩衝層の主体構成要
素である紡錘状単結晶粒にあって、その錘部の頂点の間
隔(L:図1に(108)で示す。)をW(単位:n
m)以上、W+100nm以下とする。Lは隣接する単
結晶粒の距離を表している。L=Wであれば、単結晶粒
は互いに接していることを意味する。またLは、本発明
に係わる単結晶粒の面密度に関連するものである。低温
緩衝層を被堆積層(下地層)として堆積層を成膜する場
合、連続性のある堆積層の形成の有無は、被堆積層(低
温緩衝層)に成長島が均等に存在するか否かに依存す
る。上記のLに関する規定は、連続性のある膜をもたら
すに足る成長島(単結晶粒成長核)の均等な配置をもた
らすものである。本発明に規定される間隔値を越える
と、即ち、成長島相互の距離がより隔てられると連続な
膜を得るのは困難となるか、非現実的な長時間に亘る成
長が余儀なくされる。また、成長の核となる単結晶粒の
相互の間隔が大きいと、それらの核を起点として成長す
る結晶体が合体する機会が少なくなる。この様な成長膜
には、通常は結晶体の合体の不完全さを示唆する略六角
形状の細孔が認められることとなる。連続性の有る堆積
層が得られるためにLを規定する本発明は、この細孔の
密度を低減するにも波及的な作用を及ぼすものである。 【0016】横幅の差異(ΔW)とは、紡錘状単結晶粒
の横幅の最大値と最小値との差である。本発明では特
に、横幅の差異(ΔW)を40nm以下として、横幅の
揃った紡錘状単結晶粒を主体として低温緩衝層を構成す
る。単結晶粒の大小は、結局は成長島に大小を生じさせ
る。横幅の規定はこれら成長島の大きさを均一化するた
めに設けられたものであって、成長島の合体の均質化が
達成される。成長島が相互に合体して連続性を創出する
に際し、成長島の大きさがほぼ均一であれば、合体によ
って発生する粒界等が均一に分布する均質な膜がもたら
される。一例を挙げれば、これは成長層におけるキャリ
アの移動度の均一性を向上させる等、低温緩衝層を被堆
積層とする堆積層の電気的特性の向上に寄与するもので
ある。ΔWが40nmを越えると、均質な膜の形成に安
定性を欠くと共に、表面の平坦性も損なわれる。単結晶
粒の横幅の差異が顕著となると、それを核として発生す
る成長島は大小様々となる。横幅が大きな単結晶粒から
は底面積が大きく、且つ厚い(高い)成長島が成長し易
い。大きさが不揃いの成長島にあっては、合体に要する
時間も不均一となるため、膜の連続性の不均等化をもた
らす。 【0017】この紡錘状の窒化物化合物半導体単結晶粒
の高さ(H:図1に(106)で示す。)とは、紡錘状
単結晶の底部から頂部に至る距離である。すなわち、基
板結晶界面からの紡錘状単結晶粒の頂点の高さである。
高低差(ΔH)とは、各紡錘状単結晶粒の高さの最大と
最小の差である。単結晶粒の高さには、特段の制限は無
いが、概ね、2〜150nmの範囲とするのが望まし
い。高さの差異(ΔH)を40nm以下とする窒化物化
合物半導体単結晶粒から低温緩衝層を構成することによ
り、この低温緩衝層を被堆積層として、その上に形成さ
れる層の表面粗度をRMS(Root Mean Sq
uare;凹凸の程度を表す一つの数値で、仮想基準面
からの直線距離の自乗(次乗)値の平均値の平方根値
(自乗平均平方根値)である。)で20nm以下にでき
る利点がある。即ち、表面の平坦性に優れる積層体構成
膜が得られる。ΔHが40nmを越える単結晶粒で低温
単結晶膜を構成した場合、必ずしも領域的に均一に表面
平坦性に優れる構成層を得られるとは限らない。ΔHが
約60nmを越える単結晶粒を主体として構成される低
温緩衝膜上には、少なくともRMSが20nm以下であ
る表面平坦性に優れる構成膜は得られ難い。好ましく
は、ΔHを10nm以内に収納すれば、RMSを約5n
m未満とする、FET等の特性が表面の平坦度に敏感に
影響される半導体素子に好都合な平坦膜が得られる。 【0018】アズーグローン(as−grown)状態
で紡錘状の窒化物化合物半導体単結晶粒を主体とする低
温緩衝層は、主に次の成長環境条件を細心の注意を払っ
て整えることにより安定して形成され得る。即ち、低温
緩衝層の成長時の(イ)成長温度、(ロ)被堆積物表面
と原料ガス供給口(吹き出し孔)との間隔(所謂、ギャ
ップ)、(ハ)成長反応系へ添加する第V族元素原料と
第 III族元素原料との供給比率(所謂、V/III 比)、
及び(ニ)成長雰囲気を創出するガスの他のガスに対す
る流量の条件を整える必要がある。 【0019】窒化物化合物半導体からなる紡錘状の単結
晶粒は350℃程度の低温でも形成はされ得るが、安定
性に欠ける。概ね、400℃弱の温度を越えると紡錘状
の単結晶粒が形成される。紡錘状単結晶粒の構成比率は
成長温度の上昇と共に一旦、増大するが、更に高温とな
ると低下する傾向を呈する。窒化ガリウム(GaN)低
温緩衝層の成長を例にすれば、紡錘状単結晶粒の構成比
率は約400℃で30%強であり、約420℃〜430
℃でほぼ80%を越える構成比率となるが、約450℃
を越える成長温度下では約30%に低下する。成長温度
を500℃以上とすると、単結晶ではあるが角柱状の単
結晶体が出現する割合が増加し、紡錘状単結晶粒の構成
比率は相対的に低下する。角柱状の単結晶本体の出現は
低温緩衝層表面に突起の発生を誘因するため好ましくは
ない。従って、紡錘状単結晶粒の構成比率並びに良好な
表面状態を確保する観点から、推奨される成長温度は約
400℃〜450℃の範囲である。 【0020】被堆積物表面と原料ガス供給口(吹き出し
孔)との間隔(所謂、ギャップ)とはより具体的に示せ
ば、例えば、原料ガスやキャリアガスを被堆積物表面の
ほぼ全域に拡散させるための拡散板等の拡散装置を備え
た成長装置にあって、被堆積物表面とこの拡散装置との
間隔を指す。このギャップ距離は主に紡錘状単結晶粒の
被堆積物(基板)表面に於ける発生密度に影響を与え
る。この密度に依り、紡錘状単結晶粒の頂部の間隔は変
化する。密度が大きければそれに対応して頂部間隔は縮
まる。例えば、キャリアガスとして水素を用いた場合、
ギャップが大であると被堆積物表面上の遊空間の体積が
大となり、キャリアガスに随伴して搬送される原料ガス
の当該遊空間に於ける濃度が減少し、或いはまた当該空
間から原料ガスが逃避し易くなる等の理由により、紡錘
状単結晶粒の発生密度は低下する。逆に、ギャップが小
であると被堆積物表面と原料供給口との距離が短縮さ
れ、原料供給口の周囲に原料ガスが飛散するよりも被堆
積物表面に直接、原料ガスが吹き付けられる確率が高く
なる。この様にキャリアガスによって搬送される原料ガ
スが充分に被堆積物表面の全域にほぼ均等に拡散するに
距離的に不充分な状況となると、原料ガスが特定の狭い
領域に集中して供給され易くなる状態を招き、紡錘状単
結晶粒を被堆積物表面の全域に均一な密度で発生させる
に困難となる。端的に事例を示せば例えば、被堆積物表
面上の単結晶粒の発生確率が開口された拡散口の直下付
近に相当する領域で他の領域に比べ高くなり、被堆積物
表面全域に不均一な密度をもって紡錘状単結晶粒が形成
される事態となる。好ましいギャップの一例を示せば、
キャリアガスとして水素を使用し、その流量を毎分8リ
ットル(l)とした場合、上記の温度範囲では約10ミ
リメートル(mm)以内でおおよそ、2mm以上の範囲
内でミリメートル単位で精密に調整する必要がある。更
に望ましいギャップは約5mm前後であって、このギャ
ップの調整により、結果的に被堆積物表面全域での紡錘
状単結晶粒の均等な発生が促され、単結晶粒の頂部間の
距離(L)を紡錘状単結晶粒の横幅(W)以上、W+1
00ナノメートル(nm)以下の範囲に収納させること
ができる。以上、要約すれば、成長温度を400℃〜4
50℃とし、所謂ギャップをキャリアガスの流量に応じ
て適宣、最適値に調整することが、本発明の請求項1記
載の紡錘状単結晶粒を主体として構成される低温緩衝層
を形成するに当たっての重要で且つ必要な成長条件であ
る。 【0021】紡錘状単結晶粒の形成にあって、その単結
晶粒の横幅(W)を均一化するのに効力を発揮するのは
V/III 比の適正化である。紡錘状単結晶粒の横幅の差
異(ΔW)を減少させるには、実験結果からV/III 比
を約1000以下とするのが好ましいことが判明してい
る。上記の温度範囲に於いてV/III 比を1.0〜1.
5×104 程度に、また、500℃で約5×103 程度
に高く設定すると、第V族元素の成長系内の濃度が高く
なり、結晶粒の横方向(被堆積物表面に平行な方向)へ
の2次元的な成長がそもそも進行し易くなる。第V族元
素原料が高濃度に存在する成長環境下に於いて、垂直方
向(サファイアのC軸方向)よりも横方向の成長がより
速く進行することは、被堆積物としてC面((000
1)面)サファイアを基板として使用した場合に顕著に
認められる。上記のギャップの調整の不具合による原料
ガスの被堆積物表面に向けての偏流等が存在する上に、
尚更のこと第V族元素の原料が供給過多である状況で
は、横方向への成長速度がより増進され、領域毎の単結
晶粒の横幅の差異を増長する結果を招くため、好ましい
成長環境とは成難い。更には、上記の値を越える程に極
端に高いV/III 比の下では、表面紡錘状単結晶粒が形
成されるよりも、横幅(W)を異にする単結晶粒が相互
に合体、融合した、むしろ層状の単結晶層が形成される
傾向が認められる。従って、紡錘状単結晶粒の横幅の均
一化を図るためには、第V族元素の原料ガスの濃度が或
る程度の希薄な成長環境が要求される。しかし、例え
ば、約10〜100程度の極端に小さなV/III 比下で
は第 III族元素が第V族元素に対して相対的に豊富とな
り化学量論的な均衡からのズレが大きくなるため、III
族元素の液滴が発生する。液滴の発生により固体層の形
成は果たされず、このため、緩衝層の層形成自体が阻害
される。例えば、窒化ガリウム(GaN)低温緩衝層を
80程度の低V/III 比で得ようと試みると、被堆積物
表面は多量のガリウムの液滴で被覆される。従って、液
滴の発生の回避等を考慮し尚且、横幅の差異(ΔW)の
減少並びに均一化の達成をもたらすための適度に希釈さ
れた第V族元素の原料濃度の成長環境を創出することを
考慮してV/III 比の最適化を図る必要がある。本発明
に係わる低温緩衝層を形成するに好ましいV/III 比は
概ね、500以上で1000以下の範囲にある。この好
ましい範囲にV/III 比を設定すれば、紡錘状単結晶粒
の横幅の差異(ΔW)を40nm以下とすることが可能
となる。 【0022】第V族元素の成長系内への供給過多を緩和
するには、成長雰囲気を創出するガスの流量の他のガス
流量、特にアンモニア、ヒドラジンや有機窒素化合物等
の第V族元素の原料ガスに対する比率も重要となる。例
えば、成長雰囲気を創出するガスを水素とした場合、本
発明に係わる低温緩衝層を形成するに際しては、第V族
元素の原料として一般に利用されているアンモニアの流
量の約8倍の流量の水素が必要である。アンモニアガス
の流量に対して、水素の流量を相対的に過大とするとア
ンモニアガスを被堆積物表面のほぼ全面に充分に拡散さ
せ、均等に分配させる作用を得ることが出来る。即ち、
水素のアンモニアに対する流量を従来に比し極端に大と
することによる第V族元素原料の希釈効果と被堆積物表
面への均等な配分効果により、特定領域での紡錘状単結
晶粒の横方向成長の進行が妨げられ、これより、横方向
の成長速度が被堆積物表面のほぼ全面に亘り均等化され
る。更に、第V族原料ガスに対する水素ガスの供給過多
による第V族元素原料ガスの均等分配は同時に単結晶粒
の垂直方向(C面サファイア基板にあってはC軸方向)
の成長速度の均等化にも寄与する。これにより、紡錘状
単結晶粒の高低差(ΔH)の均一化が達成される。逆
に、水素に対するアンモニアの流量が相対的に過小とな
ると、成長環境内の第V族元素(窒素)の濃度は層形成
の進行に必要な濃度に充分に満たない希薄なものとな
る。このため、緩衝層表面に表面からの窒素の逸脱に因
ると推定される細孔(ピット)が多数、発生し、表面モ
フォロジに優れる低温緩衝膜を得るに際して好ましから
ぬ事態を招く。従って、本発明に係わる低温緩衝層を得
るために、アンモニアよりも気体密度を小とする水素等
のガスにより成長雰囲気を創出する際には、水素の流量
をアンモニアよりも多くし、尚且、その水素流量をアン
モニアガスの流量の約3倍以上に多大とする必要があ
る。これにより、紡錘状単結晶粒の横幅(ΔW)の均一
化が促進されると共に、高低差(ΔH)を40nm以下
とする紡錘状単結晶粒の形成が可能となる。 【0023】本発明に係わる低温緩衝層を得るために好
ましい成長条件例を表1に従来例(特開平4−2970
23号及び特開平7−312350号公報参照)と対比
させて纏める。気体のモル(mol)数は25℃で1気
圧下のモル体積を24.46リットル(l)として算出
してある。表1に掲示する条件について更に説明を加え
るに、同表に掲げる条件は第 III族元素の原料としてト
リメチルガリウム((CH33 Ga)を、また、第V
族元素の原料としてアンモニアガスを用いた場合のもの
である。成長温度は従来のように200℃〜900℃、
好ましい温度範囲としても400℃〜800℃と云う、
数百度にも及ぶ広い温度範囲は許容されない。第III 族
元素原料ガス(トリメチルガリウム)の好ましい供給量
の範囲も概ね、6.0〜8.0×10-5モル(mol)
の極めて限定された範囲にある。ちなみに、この第 III
族元素の供給比をもってして表1に掲げる条件下で例え
ば、420℃の成長温度で層厚を5nmとする窒化ガリ
ウム低温緩衝層を形成するには20分間の成長時間を要
す。更に、従来条件に比較すれば、好ましいV/III 比
の範囲が明らかに相違する。本発明で開示した好ましい
V/III 比は従来例(特開平4−297023号及び特
開平7−312350号公報参照)に比べて、1/6強
と充分に低いものである。成長条件上、より鮮明に従来
例(表1参照)と異なるのは、水素とアンモニアガス等
の第V族元素原料の供給量との量的関係並びに比率であ
る。本発明に係わる低温緩衝層を形成するには、アンモ
ニアと水素との量的関係を従来例と逆転させる必要があ
ると共に、水素の流量をアンモニアの流量より多大とす
るのが必須である。水素の流量をアンモニアの流量の1
/4程度と少量とする従来例とは対照的に、好ましくは
水素の流量をアンモニアの供給量の5〜6倍とする必要
がある。上記した如く、V/III 比並びに水素ガスと第
V族原料ガス(アンモニアガス)との量的関係は本発明
に規定される横幅及び高さの差異(ΔW及びΔH)を有
する紡錘状単結晶粒を得るには必須の要件である。即
ち、従来とは顕著に異なる条件を実現することにより、
従来の如くの非晶質或いは多結晶からなる低温緩衝層
(例えば、特開平2−229476号及び特開平6−1
51962号公報参照)ではなく、本発明に係わる紡錘
状の単結晶粒を主体として構成されるIII 族窒化物低温
緩衝層を形成することができる。表1に掲げた条件はま
た、窒化ガリウムに限らず例えば、窒化アルミニウム・
ガリウムや窒化アルミニウム・インジウム等の一般式A
x Gay Inz N(0≦x,y,z≦1、x+y+z
=1)で表されるIII 族窒化物化合物半導体や窒素以外
の第V族元素を含むIII 族窒化物化合物半導体らなる低
温緩衝層の形成にも適用できるものである。 【0024】 【表1】【0025】 【実施例】 (実施例)本発明を窒化物化合物半導体の積層体からな
る化合物半導体エピタキシャルウエハを例にして説明す
る。基板には、(0001)サファイアC面を使用し
た。基板を洗浄し、鏡面研磨面を清浄とした後、GaN
からなる低温緩衝層を形成した。低温緩衝層は、半導体
工業用のトリメチルガリウム((CH33 Ga)をガ
リウム(Ga)源とし、アンモニア(NH3 )を窒素
(N)源とする常圧MOCVD法により成長させた。低
温緩衝膜の主要な成長条件は次の通りとした。(1)成
長温度=450℃、(2)ギャップ=3mm、(3)V
/III 比=720、(4)成長雰囲気(キャリア)ガス
=水素である。アンモニアと水素の流量は表1に記載の
通りとしたため、アンモニア:水素流量比は1:8とな
った。上記の原料ガスは水素キャリアガスと共に基板の
鉛直上方から供給した。基板への原料ガスの供給を20
分間に亘り継続して平均膜厚を約20nmとする低温緩
衝層を得た。 【0026】一般的なイオンシニング(ion thi
nning)法により低温緩衝層を薄層化した後に、通
常の透過電子顕微鏡を利用して断面を観察した。入射電
子線の加速電圧は200キロボルト(KV)として断面
観察に充分な拡大倍率を得た。上記の如く成長された低
温緩衝層の断面観察結果を以下に要約する。(A)主構
成要素=断面が紡錘状の単結晶からなる微小粒、(B)
紡錘状単結晶粒の横幅(本文中のW)の最大値及び最小
値=14nm(最大の横幅)及び2nm(最小の横
幅)、(C)横幅の差異(本文中のΔW)=12nm、
(D)紡錘状単結晶粒の頂部間の最大の距離(本文中の
L)=14nm、(E)紡錘状単結晶粒の高さ(本文中
のH)の最大値及び最小値差=18nm(最大値)及び
4nm(最小値)、(F)紡錘状単結晶粒の高さの差異
(本文中のΔH)=14nm。紡錘状単結晶粒以外の低
温緩衝層の構成要素は非晶質体若しくは多結晶体となっ
ていた。 【0027】低温緩衝層の形成後、アンモニア:水素の
流量比を1:8とするアンモニアを含む雰囲気中で基板
の温度を積層体構成層の成膜温度迄、上昇させた。然る
後、低温緩衝層上に次の各構成層を順次、堆積した。 (ア)キャリア濃度2×1018cm-3、層厚約2.5μ
mの珪素(Si)ドープn形GaN高温緩衝層、 (イ)キャリア濃度3×1016cm-3、層厚0.1μm
の亜鉛(Zn)とマグネシウム(Mg)とインジウム
(In)をドープしたn形GaN発光層 (ウ)キャリア濃度1×1017cm-3、層厚0.3μm
のMgドープp形Al0.08Ga0.92N上部クラッド層 (エ)キャリア濃度2×1017cm-3、層厚0.2μm
のMgドープp形GaNコンタクト層。 上記の積層体構成層は温度1000℃で成膜した。 【0028】800℃〜1000℃の高温環境下での上
記積層体構成層を堆積した後に於ける、積層体の断面T
EM像を図2に示す。高温成膜環境に曝すことにより、
低温緩衝層(109)の成長時の断面形状をほぼ維持す
る紡錘状単結晶粒(104)もあるが、頂部がやや先鋭
となった角錘状単結晶粒(114)も発生することが認
められる。また、断面側面がより直線的に構成されてな
る柱状単結晶粒(115)も出現する。中には、低温緩
衝膜(109)の成長時には非晶質体として混在してい
たものが、高温環境により結晶化したと推察される単結
晶或いは多結晶の結晶粒(116)も確認される。 【0029】積層体構成層にあって、最表層であるp形
GaNコンタクト層(113)は連続膜となっており、
表面の平滑度はRMSにして0.38nmであった。ま
た、表面の凹凸の程度を表すPV(eak−to−
alley)値(凹凸の高低の最大値)は3.18nm
であり、平坦で平滑な表面となっていた。最表層より基
板(101)側へ深さ方向にステップエッチング技法を
駆使して各構成層((110)〜(112))の表層部
のモフォロジーを観察したところ、各層の表面は平坦性
が維持されており、且つ開口部が略六角系状のピットは
殆ど認められない連続膜となっていた。特に、ピットは
低温緩衝層(109)直上のn形GaN層(110)で
既に、殆ど認められない状態であった。 【0030】上記の化合物半導体エピタキシャルウエハ
を用いて発光ダイオード(LED)を作製した。上記積
層体に公知のフォトリソグラフィー技術を活用してパタ
ーニング加工を施した後、パターニングされた領域をア
ルゴン(Ar)/メタン(CH4 )/H2 混合ガスを利
用した一般的なマイクロ波プラズマ法によりエッチング
した。このプラズマエッチングによりn形電極の形成予
定領域に在る積層体構成層((111)〜(113))
を除去し、n形GaN高温緩衝層(110)の露出させ
た後、アルミニウム(Al)を真空中で被着させn形電
極を形成した。p形電極は、p形GaNコンタクト層
(113)上の周縁部2ケ所に低抵抗の窒化チタン(T
iN)薄膜電極を介して設置した。図3に形成したLE
Dの平面模式図を、図4にその断面模式図を各々示す。 【0031】上記LEDへの順方向電流の流通により、
青紫色の発光が得られた。発光出力は0.8〜1ミリワ
ット(mW)であった。順方向電流を20ミリアンペア
(mA)とした際の、順方向電圧(いわゆるVf )は
3.8ボルト(V)程度であった。また、図5に示す電
流−電圧特性から、本発明に係わる素子では、逆方向耐
圧は10マイクロアンペア(μA)通電時に5V以上で
あることなど正常な整流性が得られている。 【0032】(比較例)上記実施例と同様に、(000
1)サファイアC面を基板として使用した。基板を洗浄
し、鏡面研磨面を清浄とした後、GaNからなる低温緩
衝層を形成した。低温緩衝層は、半導体工業用のトリメ
チルガリウム((CH33 Ga)をガリウム(Ga)
源とし、アンモニア(NH3 )を窒素(N)源とする常
圧MOCVD法により成長させた。低温緩衝膜の主要な
成長条件は次の通りとした。(1)成長温度=520
℃、(2)ギャップ=9mm、(3)V/III 比(アン
モニア/(CH3 )Ga比)=1540、(4)成長雰
囲気ガス=水素(キャリアガス)及び窒素、(5)雰囲
気ガス構成比(流量比)=4(水素):1(窒素)であ
る。水素の流量は毎分1リットル、アンモニアの流量は
毎分4リットルとし、アンモニアに対する水素の供給流
量比は0.25に設定した。上記の原料ガスは水素キャ
リアガスと共に基板の略水平方向から供給した。窒素ガ
スとアンモニアガスは基板表面に鉛直な上方方向から供
給した。基板への原料ガスの供給時間を調節、制御し
て、実施例と同じく平均膜厚を約20nmとする低温緩
衝層を得た。 【0033】低温緩衝層の構成要素を確定するために、
一般的なイオンシニング(ionthinning)技
法により低温緩衝層を薄層化し、通常の透過電子顕微鏡
を利用して断面を観察した。入射電子線の加速電圧は2
00キロボルト(KV)として断面観察に充分な拡大倍
率を得た。図6にその断面TEM像を模式的に示す。上
記の如く成長された低温緩衝層(109)の断面観察結
果を以下に要約する。(A)主構成要素=非晶質体(1
05)及び頂部を略六角錘状とする角錘状の柱状単結晶
(114)、(B)角錘状単結晶粒の横幅(本文中の
W)の最大値及び最小値=47nm(最大の横幅)及び
5nm(最小の横幅)、(C)横幅の差異(本文中のΔ
W)=42nm、(D)角錘柱状単結晶の角錘頂部間の
距離(本文中のL)の最大値=1052nm、(E)角
錘柱状単結晶の高さ(本文中のH)の最大値及び最小値
差=24nm(最大値)及び4nm(最小値)、(F)
角錘柱状単結晶の高さの差異(本文中のΔH)=20n
m。非晶質体(105)と角錘柱状単結晶の主構成要素
にあって、低温緩衝層は非晶質体(105)が主体とし
て構成されていた。非晶質体(105)は角錘柱状単結
晶(114)の間隙に被着しており、低温緩衝層の成膜
時には、基板(101)表面を被覆していた。 【0034】低温緩衝層(109)上に温度1000℃
で前記実施例と同様に積層体構成層を順次、堆積しLE
D用途の積層体を得た。これら構成層のキャリア濃度、
層厚及びドーパントは実施例の(ア)〜(エ)と同一と
した。高温での成膜が終了後の断面TEM像を図7に模
式的に示す。高温環境に曝された後にあっても、柱状単
結晶(114)は低温緩衝膜成膜時の形状をほぼ維持し
ているが、その数は増量している。非晶質体が高温で結
晶化するためであると考慮される。また、基板(10
1)表面とn形GaN高温緩衝層(110)とが接して
いる領域(120)が存在するのが特徴的である。n形
GaN高温緩衝層(110)が、本来接合するはずの低
温緩衝層ではなく、基板(101)表面との直接接合が
形成されるのは、低温成膜時に基板表面を被覆する非晶
質体が高温で消失するためである。即ち、領域(12
0)はn形GaN高温緩衝層(110)の堆積時に既
に、非晶質体(105)が消失され、基板(101)の
表面が露呈した領域である。要約すれば、本比較例に於
ける低温緩衝層は上記実施例に記した低温緩衝層とは、
成膜時並びに高温環境に曝した後でも構成主体及び構成
を異にするものであった。 【0035】この非晶質体が消失された領域(120)
に相当するn形GaN高温緩衝層(110)の領域は、
天板をほぼ平板とする六角柱状の単結晶柱が互いに孤立
して散在していた。このため、同領域(120)の相当
する領域では連続な膜が得られず、n形GaN高温緩衝
層(110)全体として連続性を欠くものとなった。孤
立した六角形状の単結晶柱が乱立する状態は、n形Ga
N高温緩衝層(110)の上方に配置した積層体構成層
((111)〜(113))にも及ぶのが認められた。
図8は、積層体の最表層であるp形GaNコンタクト層
の表面のSEM(走査電子顕微鏡)像の模写図である。
表面には、六角柱状の柱状単結晶からなる平坦性に欠け
る領域(121)と、或る程度平坦性が認められる領域
(122)とが混在している。平坦性に欠ける領域(1
21)には、開口部を略六角形状とするピット(12
3)や平面形状が略六角形状の突起(124)が多数存
在した。ピット(123)や突起(124)の発生は成
長島の合体の不完全性を反映するものである。本比較例
の場合、成長核を提供する単結晶体間の距離が本発明の
規定以上に隔てられているために、成長核を起点として
発生した成長島相互の合体が連続膜を与えるに至る程、
完全に進行しなかったことに主たる原因があると考察さ
れた。ピットの深さはまちまちであって直下の構成層を
貫通して更に下部の構成層に達するピットも多く存在し
た。特に、p形GaNコンタクト層表面から、p形クラ
ッド層を貫通し、n形発光層に到達するピットが多く認
められた。 【0036】上記の化合物半導体エピタキシャルウエハ
から得られたLEDの順方向電流通電時の発光は青色が
かった白色であった。発光強度は数〜数十マイクロワッ
ト(μW)と微弱であった。素子の電流−電圧特性(図
9)に示される様に、逆方向耐圧が1V未満と異常に低
い、順方向電流が順方向電圧の増大に連れて直線的に増
加するなど、電流の通電方向の変更に対応した正常な整
流性は得られなかった。これは、pn接合の形成の不完
全性に起因すると判断された。上記の様にpn接合の形
成の不完全性は、非晶質体を主体として構成される低温
緩衝層にあって、非晶質体の消失に起因する隣接する成
長島相互の合体の不完全性によるものである。 【0037】 【発明の効果】積層体をピットや突起の少ない表面状態
に優れる連続膜から構成した化合物半導体エピタキシャ
ルウエハを得ることが出来る。その結果、電気的特性に
優れる半導体素子が得られる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係わるGaNからなる低温緩衝層の構
成要素を示す断面模式図である。 【図2】本発明に係わる低温緩衝層の高温の成膜環境に
曝された後の断面模式図である。 【図3】本発明に係わる低温緩衝層を備えた窒化ガリウ
ム系化合物半導体積層体からなる化合物半導体LEDの
平面模式図である。 【図4】図3に示す化合物半導体LEDの断面模式図で
ある。 【図5】本発明に係わる化合物半導体LEDの電流−電
圧特性の一例である。 【図6】比較例に係わる従来の低温緩衝層の断面模式図
である。 【図7】比較例に係わる従来の低温緩衝層の高温の成膜
環境に曝された後の断面模式図である。 【図8】比較例に於ける積層体最表層の表面モフォロジ
ーを示す模式図である。 【図9】比較例に係わる化合物半導体LEDの電流−電
圧特性の一例である。 【符号の説明】 (101) 結晶基板 (102) 基板/低温緩衝層界面 (103) 低温緩衝層表面 (104) 紡錘状単結晶粒 (105) 非晶質体 (106) 単結晶粒の高さ (107) 単結晶粒の横幅 (108) 単結晶粒間の間隔 (109) 低温緩衝層 (110) n形GaN高温緩衝層 (111) n形GaN発光層 (112) p形Al0.08Ga0.92N上部クラッド層 (113) p形GaNコンタクト層 (114) 角錘状単結晶粒 (115) 柱状単結晶粒 (116) 単結晶或いは多結晶粒 (117) n形電極 (118) p形電極 (119) 窒化チタン(TiN)薄膜電極 (120) 非晶質体が消失し、基板表面が露呈してい
る領域 (121) 基板表面の露呈領域に対応する表面が平坦
でない領域 (122) 或る程度の平坦性がある領域 (123) 開口部を略六角形状とするピット(細孔) (124) 平面形状を略六角形状とする突起
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 X.H.Wu,D.Kapolne k,E.J.Tarsa,B.Heyi ng,S.Keller,B.P.Ke ller,U.K.Mishra,S. P.DenBaars,”Nuclea tion layer evoluti on in metal−organi c chemical vapor d eposition grown Ga N”,Applied Physics Letters,1996年 3月 4 日,Vol.68,No.10,pp.1371 −1373 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/20 H01L 21/205 H01L 33/00 H01S 5/30 - 5/347 Web of Science

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】結晶基板上に、成長環境に第V族元素原料
    であるアンモニア、第III族元素原料および水素を供給
    して、低温で窒化物化合物半導体からなる低温緩衝層を
    成長し、該低温緩衝層上に、該低温緩衝層を成長する温
    度より高い温度で、窒化物化合物半導体層を成長する化
    合物半導体エピタキシャルウエハの製造方法において、
    該低温緩衝層を、成長温度を400℃〜450℃とし、
    V/III比を500以上で1000以下とし、水素の流
    量をアンモニアガスの流量の3倍以上として、常圧MO
    CVD法により成長させ、該低温緩衝層を断面が紡錘状
    の複数の単結晶粒から構成し、隣接する該単結晶粒の頂
    点の間隔Lを該単結晶粒の横幅W以上かつW+100n
    m以下とし、該単結晶粒の横幅のばらつき△Wを40n
    m以下とし、該単結晶粒の高さのばらつき△Hを40n
    m以下とすることを特徴とする化合物半導体エピタキシ
    ャルウエハの製造方法。
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