JP3446383B2 - 自動車排気材料用熱延フェライト鋼 - Google Patents

自動車排気材料用熱延フェライト鋼

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JP3446383B2 JP08331495A JP8331495A JP3446383B2 JP 3446383 B2 JP3446383 B2 JP 3446383B2 JP 08331495 A JP08331495 A JP 08331495A JP 8331495 A JP8331495 A JP 8331495A JP 3446383 B2 JP3446383 B2 JP 3446383B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車の排気系材
料、特に高温に加熱されるエキゾーストマニフォール
ド、エキゾーストパイプ等の材料として熱延焼鈍板、そ
のパイプ(以下これらを熱延焼鈍状態という)で用いる
ことができるフェライト鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車は、燃費、排ガス浄化特
性、高出力化に関して、いずれもその改善が求められて
いる。この手法の一つとして、エンジンの空燃比の最適
化がある。それによって、エンジンから排出される排気
温度が 800℃以上に上昇し、従来使用されていた 5mm厚
程度の球状黒鉛鋳鉄の鋳物製エキゾーストマニフォール
ド、あるいはアルミメッキ普通鋼製のエキゾーストパイ
プでは、耐酸化性、高温耐力等の特性において耐熱性不
足となってきた。このような理由から、エキゾーストマ
ニフォールドには 1.5〜 2.5mm厚程度の耐熱性、加工性
に優れた薄肉ステンレス鋼で製造したパイプまたは板を
加工した物が、またエキゾーストパイプにも、それと同
様なステンレス鋼が一部には使用されてきた。特に、球
状黒鉛鋳鉄製の鋳物エキゾーストマニフォールドでは、
5mm厚以上の肉厚であるため、 1.5〜2.5mm厚程度のス
テンレス鋼製にすることで、その重量を数十%軽減する
ことが可能であり、自動車全体の燃費改善の効果は大き
い。さらに、ステンレス鋼製とすれば薄肉であるので、
その熱容量が小さくなり排気温度の低下を防ぎ、排ガス
中の NOx等を浄化する触媒の活性効果を早期に引き出
し、排ガス浄化特性が大きく向上する。このような用途
に使用されているステンレス鋼は、主として低C, Nの S
UH409L鋼である。
【0003】このように、 SUH409L製のエキゾーストマ
ニフォールド、エキゾーストパイプを用いた自動車は、
前記エンジン性能のいずれの点においても従来材である
鋳物製エキゾーストマニフォールド、アルミメッキ鋼製
のエキゾーストパイプを用いたものより優れており、限
られた石油エネルギーが節約でき、排ガスの環境への悪
影響を現在の技術において最小限に押さえられる非常に
優れた方法である。ところが、以下の 3つの理由からス
テンレス鋼製のエキゾーストマニフォールド、エキゾー
ストパイプの採用は一部車種に限られてしまっている。
なお以下の%は特に断らない限り重量%を示す。
【0004】(1)高コスト 前記したステンレス鋼は、素材自体のコストが鋳鉄、ア
ルミメッキ普通鋼に比べて当然高い。又、エキゾースト
マニフォールドに使用される鋳物は、肉厚は厚いもの
の、形状の自由度は大きいという利点がある。一方、ス
テンレス鋼製では、パイプ、板いずれにおいても、複雑
な曲げ、プレス加工を受けるために、冷延焼鈍板また
は、それを用いたパイプでなければ、通常このような加
工ができず、このような冷延プロセスを通していること
が、製造コストを上げる原因になっている。
【0005】(2)加工の困難さ 自動車排気材料に優れた高温耐力があれば、その分、薄
肉化可能であり軽量化に寄与できる。即ち優れた高温耐
力が必要なことは容易に理解できる。一般にフェライト
系ステンレス鋼の高温耐力を向上させ、高耐熱化させる
ためには、Nbを添加することは周知である。問題はその
高耐熱性を維持したまま室温の加工性劣下をどのように
少なくするかにあり、多くの先行技術がある。しかしな
がら、本願が開示するような、熱延焼鈍状態の材料を用
いて、自動車排気材料に加工することは、従来全く不可
能とされており、検討もされていなかった。
【0006】例えば、自動車排気材料分野における従来
技術として、特開平4−74852号公報がある。この
技術は、冷延焼鈍板を用いて、室温での高加工性を得る
ため、NbとTiとを複合添加して鋼としている。さらに、
特開昭60−145359号公報(USP4640722)も、冷間
圧延ストリップを対象にしている。ここには、Cr/ 6〜
25%、Nb≦ 0.3%等を含む高温用フェライト鋼の成分が
開示されている。この技術では、Ti, Zr, TaのようなNb
以外のC,N 安定化元素を複合添加してもかまわない。
後述するが、このような成分系の熱延焼鈍状態の材料の
加工性では、自動車排気材料用の加工には不十分であ
る。
【0007】また特公平1−41694号公報(USP4286
986)には、Cr/11〜20%,eff.(実効)Nb/0.63〜1.15
%含有することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼
が開示されている。着目する特性は高温でのクリープで
あり、加工性は全く念頭になく、評価もしていない。そ
のために、eff.Nbは0.63%以上含有しているのであり、
本願に較べて相当高いレベルにある。本発明の詳細な説
明の欄で後述するように、このような高Nb化は、未焼鈍
熱延板の靱性、熱延焼鈍状態での加工性を著しく劣化さ
せる。これらの有害性に関して、特公平1−41694
号公報(USP4286986)の技術は全く考慮しておらず、単に
クリープ特性を向上させるだけでは、熱延焼鈍状態で使
用する場合、高加工性が要求される本分野では加工性が
不十分である。
【0008】また特開昭64−68448号公報(USP48
34808)においてCr/10〜25%,Nb/0.1〜 0.6%,Ti/
0.03〜0.35%を主成分として含有する鋼の成分例が開示
されている。ここでは、Nb単独添加は溶接割れを招くた
め、Tiとの複合添加が必要であるとしている。しかし、
本発明者らは、Nb,N 量を適切に管理すれば、即ち本発
明の範囲ならば溶接割れは皆無であることを見出した。
またNb、Tiを複合添加することは、後述するように、熱
延焼鈍状態の加工性を低下させる。熱延焼鈍状態で本用
途に充分な加工性を得るには、 C,N を固定する安定化
元素(Ti,Zr,Al,Nb )の中で、特にNb単独添加、かつその
他の成分範囲を本願のように厳密に限定しなければなら
ないことも発見した。
【0009】ここまで参考に上げてきた従来技術の開示
例の諸特性は、いずれも冷延焼鈍板を用いており、熱延
焼鈍状態の特性を示す何の例もない。一般に冷延焼鈍板
は、その冷間圧延により、熱延組織が破壊され、充分な
冷延圧下率さえあれば、比較的熱延焼鈍板の特性を懸念
する必要は少ない。このような理由から熱延焼鈍状態で
加工性が必要な用途を念頭におかないかぎり、熱延焼鈍
状態での加工性を評価する事はない。このような点から
以上の開示例にはいずれも熱延板を自動車排気材料に使
用する意図はなかったものと考えられる。と同時に、後
述するように、これらの開示例では、たとえ高耐熱性が
あったとしても、熱延焼鈍状態で自動車排気材料として
充分な加工性を得ることが出来ない。
【0010】USP4417921には、比較的低Crとして加工性
の向上をはかった鋼の例が開示されている。これは、Cr
/11.5〜13.5%,Nbおよび/またはTi/ 0.1〜0.75%を
主成分としている。即ちNb、Tiを等価なものとしてお
り、本願の技術思想とは異なる。本願の詳細は後述する
が、Nb以外の安定化元素、例えばTi,Zr,Alは熱延焼
鈍状態での加工性に有害であって、可能な限り排除する
こと、さらに従来諸特性に有害とされ、不可避的不純
物とされてきた、または上限を制限されてきたP(例え
ば、JISG4304に明記されている熱間圧延ステンレス鋼板
ではSUS447J1,SUSXM27の 2種についてはP/0.03%以下
またその他のフェライト系ステンレス鋼板についてはP
/0.04%以下に規定されている)を、適性量含有させる
ことで、逆に熱延焼鈍状態での加工性が向上すること、
その他の成分元素を厳密に制限することによって、自
動車排気材料用熱延フェライト鋼が得られるものであ
り、USP4417921とは全く異なった技術思想から本願が成
り立っている。単にCr含有量を低下させただけでは、後
述する図2の実験結果が示すように、熱延焼鈍状態の加
工性はわずかしか向上せず、自動車排気材料用途に熱延
焼鈍状態での適用は、加工性の点から不十分である。
【0011】またUSP3997373には、比較的低Crを含有
し、Cr/12〜14%,Nb/ 0.2〜 1.0%, C+ N+Si+Mn
+Mo+Ni+Cu≦0.75%を主成分として含有する深絞り性
を向上させた鋼の成分例が開示されている。この例も冷
延焼鈍板での深絞り性を評価している。また、 C,N ,
Si,Mn,Mo,Ni,Cu量がこの範囲では、Crレベルによっ
ては、高温において、鋼が一部γ相に変態し、フェライ
ト単相にならない。自動車排気材料では溶接による組み
立て工程が必ず存在するため、急冷により、γ相がα’
相に変態し、溶接部はα、α’の2相になり、加工性の
劣化が生じる。本願は、自動車排気材料を用途に考えて
いるため、全温度域においてフェライト単相になるよう
な成分範囲に制限している。また、このように、高温に
おいて鋼の一部がγ相に変態すると、熱延終了後のγ相
が冷却時にマルテンサイト(α’)相に変態し、コイル
巻き取り、巻戻し時に靱性不足から破断の懸念が生じ
る。あるいは、熱延時の加工歪みは軟質なα相に集中
し、γ相への加工歪みは少なく、焼鈍時にはγ相、また
はα’相がα相に変態するから、充分歪みがはいったα
相と変態によるα相の2種類のα相が存在することにな
る。即ち、不均質な熱延焼鈍組織となり、加工性が低下
する。さらに、USP3997373では、Alは不純物とされてい
るが、その表1に示される実施例では0.05〜0.25%含ま
れている。これは脱酸に使用したものと考えられるが、
本願のように、熱延時にフェライト単相状態で、充分な
加工性を得るには、このような脱酸に使用されるレベル
のAlさえ有害である。この理由は、熱延過程において充
分な加工歪みを導入し、熱延過程での回復も可能な限り
防止し、熱延終了後の焼鈍過程において再結晶させなけ
れば、熱延焼鈍状態では、自動車排気材料用途の加工に
耐えないからである。そのために、Nbの効果を減ずる他
の安定化元素であるAl,Ti,Zrは本願のように厳密に制
限する必要がある。このような知見なしには、高加工性
が要求される自動車排気材料に熱延焼鈍状態での使用は
到底不可能である。その意味から、USP3997373と本願で
は全く異なった技術思想といえる。
【0012】このように、本願は、熱延焼鈍状態での高
加工性、高耐熱性を得るため、後でも詳述するが、主と
して先に簡単に述べた〜の新知見を基に、Nb単独添
加、かつ他成分範囲の最適化を行ったことに特徴があ
り、これらの先行技術とは全く異なった技術思想を有し
ている。さて、コスト削減案の一つとして、熱延焼鈍状
態の材料をこのような自動車排気材料に使用する場合、
前述したように従来技術では加工性の困難さが伴う。こ
の点は、前述してきたように、自動車の排気系材料を用
途にするものはいずれも冷延焼鈍板で加工性を評価して
おり、熱延焼鈍状態での使用が念頭になかった。また後
述する比較例で示すように実際に低加工性しかなく、本
用途に、適用不可能であったことを物語っている。
【0013】ところで、熱延板の加工性を評価した開示
例としては、特開昭57−85960号公報(USP433147
4)がある。Cr/12〜26%,Nb/ 0.2〜0.45%,Al/ 0.1
〜 0.5%を主成分として含有する鋼の開示である。ここ
では、熱延板の伸びが表2に示してあるが、非常に低い
値であり、自動車排気材料にはまったく加工できない。
この表2に示される成分例は、いずれもAl/ 0.1%程度
がNbと複合添加されており、本発明者らの知見によれ
ば、熱延時に充分な加工歪みが導入されず、熱延板で
は、その焼鈍条件に係わらず自動車排気材料用途にとっ
て充分な加工性を有しえない。
【0014】また、特開平4−232231号公報に
は、コスト、加工性の点から低CrとしたCr/ 5〜11%,
V/0.01〜0.10%,かつ(Ti,Nb,Zr,Al,B から選
択)を主成分として含有するクロム含有鋼板の開示があ
る。ここでは、熱延鋼板の使用が考慮されている。その
ために、熱間圧延の仕上げがγ単相域になるように成分
限定し、熱延焼鈍板の加工性を向上させている。このよ
うにγ単相であることが重要とする技術思想であるた
め、Nbとその他のTi,Zr,Alを等価なものとして考えて
おり、本願技術思想とは異なる。特開平4−23223
1号公報に明記してあるように、この用途は、自動車の
車体や、建築用材料であり、溶接部の加工性は重要視さ
れていない。即ち、この用途では、溶接部にγ相から変
態したマルテンサイト(α’)相が多量に生成してもそ
の後厳しい曲げ加工が要求されず、トラブルにならな
い。しかし、溶接部の曲げ加工性が要求される自動車排
気材料用途では、その部分にα’相が存在すると、後述
する本明細書の表4の結果に示すように、曲げ加工性が
劣化する。また自動車排気材料では高温と室温の繰り返
し加熱・冷却を受けるため、α+α’の2相であると、
α’がαまたはγ相へ変態し、その熱膨張、収縮量が他
部位と異なり、歪み発生の原因となり、それが破損に導
く。このような溶接部の加工性、熱サイクル時の変形が
考慮され、自動車排気材料には低 C,N の SUH409Lのよ
うな全温度域で完全フェライト鋼が使用されている。そ
れゆえ本願では全温度範囲において完全フェライト鋼に
なり、その上で高加工性が得られるような成分範囲に限
定しており、特開平4−232231号公報に開示され
た技術とは技術思想が全く異なる。
【0015】さらに、USP3650731では、熱延
板使用を前提としたフェライト系ステンレス鋼の開示が
ある。ここでは、シャルピー靱性を改善するために、熱
延中の1600−2200°Fにおいて、少なくとも50%がγ
相である事を特徴としている。従って、溶接を行なう
と、マルテンサイト相が生成しやすく、その部分を含む
加工時に、延性不足による割れ等の問題が発生しやす
い。本願は、全温度域でフェライト単相であり、前述の
ような問題は起こらない。さらに、0.02%以下の低Cを
基本成分とし、他成分範囲を厳密に制限しているため、
本願の請求項に規定する成分範囲では、フェライト単相
であっても、本願の表3に示したように、十分な靱性を
有している。
【0016】(3)高加工性を得るための特殊な製造法に
よるデメリット スラブ加熱温度、あるいは熱間圧延開始温度は通常12
50℃程度であるが、これを低下させれば、高加工性が
得られる事は周知である。しかし、このような特殊な製
造方法を行うと、熱延ロールの磨耗、圧下荷重の増大に
よる設備への負荷の増大を導くこともまた周知である。
従って、熱延焼鈍状態で使用可能としたメリットを阻害
し、結局高価なコストになってしまう。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、現状で
は、通常の熱延工程、即ちスラブ加熱温度または熱間圧
延開始温度(SRT) が1250℃において、熱延焼鈍状態の材
料で自動車の排気材料に使用可能な高温特性と加工性を
同時に満足する安価な材料は存在していない。限りある
資源を有効に活用すべく、省資源、省エネルギーが脚光
を浴びている今日、冷延焼鈍板、またはそのパイプで使
用される部材に、熱延焼鈍状態での使用可能な安価な材
料の開発が強く求められていた。従って、このような材
料が開発されれば、材料の製造コストの低減が可能とな
り、それによる製造エネルギーが節約されるばかりでな
く、ステンレス鋼製の軽量エキゾーストマニフォールド
およびエキゾーストパイプの採用が拡大され、その採用
によって、燃料消費率の改善、排ガス浄化特性の改善、
さらに高性能エンジンによる快適なドライブが可能とな
り、産業上、かつ現代文明にとって、極めて有益なもの
となる。従って、本発明は、自動車排気系材料に必要な
高温特性、即ち高温耐力、耐酸化性、高温塩害特性を有
し、さらに通常の製造方法を利用しても常温での高加工
性を確保できる安価な熱延フェライト鋼の開発を目的と
したものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく、材料成分と熱延板焼鈍後の特性を鋭意検
討した。その結果、本発明の特徴はNbの単独添加にあ
り、特にNb, P を適性量添加し、かつ後述するように各
種元素を最適化量とした場合のみ、通常の熱延焼鈍工程
により製造可能である自動車排気材料用熱延フェライト
鋼が得られることを知見し、本発明に至った。本発明の
第1の態様は、 C :0.02重量%以下 Si:0.4 重量
%〜 2重量% Mn:0.8 重量%以下 Cr:6重量%
〜17重量% N :0.015 重量%以下 Al:0.02重量
%以下 P :0.025 重量%〜 0.10 重量% Ti:0.02重量
%以下 Zr:0.02重量%以下 Nb:0.35重量%〜0.60重量%で、成分の重量%が下記式
(1) および(2) を満足し、 式(1) 13(C+N)≦ Nb 式(2) 11重量%≦ Cr + 3Si+ 4Nb− 50(C+N+P)− M
n ≦ 16.5 重量% 残部はFeと不可避的不純物からなる自動車排気材料用熱
延フェライト鋼を提供する。
【0019】本発明の第2の態様は、 C :0.02重量%以下 Si:0.4 重量
%〜 2重量% Mn:0.8 重量%以下 Cr:6重量%
〜17重量% N :0.015 重量%以下 Al:0.02重量
%以下 P :0.025 重量%〜 0.10 重量% Ti:0.02重量
%以下 Zr:0.02重量%以下 Nb:0.35重量%〜0.60重量%で、成分の重量%が下記式
(1) および(2) を満足し、 式(1) 13(C+N)≦ Nb 式(3) 11重量%≦Cr+3Si +4Nb −50(C+N+P) −Mn+
(Mo+Cu)≦16.5重量% さらに、Mo: 0.1重量%〜 3.0重量%およびCu: 0.1重
量%〜1.0重量%から選択される少なくとも1種、残
部はFeと不可避的不純物からなる自動車排気材料用熱延
フェライト鋼を提供する。
【0020】本発明の第3の態様は、 C :0.02重量%以下 Si:0.4 重量
%〜 2重量% Mn:0.8 重量%以下 Cr:6重量%
〜17重量% N :0.015 重量%以下 Al:0.02重量
%以下 P :0.025 重量%〜 0.10 重量% Ti:0.02重量
%以下 Zr:0.02重量%以下 Nb:0.35重量%〜0.60重量%で、成分の重量%が下記式
(1) および(3) を満足し、 式(1) 13(C+N)≦ Nb 式(4) 11重量%≦Cr+3Si+4Nb-50(C+N+P)-Mn-Ni-Co+(Mo+
Cu) ≦16.5重量% さらに、Mo: 0.1重量%〜 3.0重量%およびCu: 0.1重
量%〜1重量%から選択される少なくとも1種、Ni,Co:
Ni 1 重量%以下およびCo 0.5重量%以下から選択され
る少なくとも1種を含有し、残部はFeと不可避的不純物
からなる自動車排気材料用熱延フェライト鋼を提供す
る。
【0021】ここで、Mnを 0.1%以下とする上述の第
1、第2または第3の態様に記載の自動車排気材料用熱
延フェライト鋼が好ましい。
【0022】また、Crを10%〜15%とする上述の自動車
排気材料用熱延フェライト鋼が好ましい。
【0023】さらに、Pを 0.030%〜 0.070%とする上
述の自動車排気材料用熱延フェライト鋼が好ましい。
【0024】また、Pを 0.040%〜 0.060%とする上述
の自動車排気材料用熱延フェライト鋼が好ましい。
【0025】さらに、13.5≦ Cr + 3Si + 4Nb + (Mo+C
u) - 50(C+N+P) - Mn - Ni - Co≦15.5である上述の自
動車排気材料用熱延フェライト鋼が好ましい。
【0026】
【作用】自動車排気材料にとって重要な特性は、 (A)加
工性 (B)高温耐力、高温塩害特性、耐酸化性 (C)製造性
があげられる。以下に (A)−(C) の評価基準とそれを達
成するための本願の技術思想を詳述する。
【0027】(A) 自動車排気材料用途の加工には、深絞
り加工は少なく、主に曲げ、拡管等の伸び性に支配され
る加工性が要求される。そのような点から各種自動車排
気材料の加工に耐えた材料の伸び性を調査したところ、
2mmt厚の鋼板において、破断伸び34%以上が必要であ
る。と同時に、加工設備自体の能力の問題から降伏応力
(YS)が350MPa以下の材料であれば、ほとんどの加工に耐
えうる。本願では、熱延板を焼鈍した状態での伸び、YS
を評価するが、未焼鈍熱延板を用いて、造管し、その後
焼鈍した場合も、本願に含有されることはいうまでもな
い。さらに、この場合、造管時の歪みも除かれるため、
熱延焼鈍板を造管した場合よりも、より高加工性が得ら
れる。
【0028】(B) 必要とされる高温特性は以下のように
まとめられる。エンジンの排気温度はせいぜい 800℃以
下であるものの、今後燃費改善、排ガス浄化特性の改
善、高出力化を目的として、 850℃以上へと排気温度が
上昇する傾向にある。従って、高温耐力は 700℃、 900
℃で、また耐酸化性は大気中 730℃、 830℃、 930℃で
200時間加熱して評価した。また路面からのはね水等が
自動車排気材料に付着し、その後高温に加熱される事に
より高温塩害腐食が生じる。熱延焼鈍板と冷延焼鈍板で
は表面性状に相違があるため、熱延板では、高温塩害特
性の劣化が懸念される。そこで冷延焼鈍板の SUH409Lも
含めて 700℃でのこの特性を評価した。
【0029】(C) 熱延焼鈍板を製造する際、熱延直後の
靱性が充分でないと、熱延板の巻き取り、巻戻し時に、
冬期、脆性破断する場合がある。このような破断が発生
すると、人的な危険以外に、操業を著しく害し、結局コ
スト高になってしまい、熱延焼鈍板使用の低コスト化効
果を相殺してしまう。経験上、通常の熱延、また焼鈍工
程が可能になるには、未焼鈍熱延板の0℃でのシャルピ
ー吸収エネルギーが50J/cm2 以上であることが必要であ
る。
【0030】さてこのような高加工性かつ高い高温特性
を有した熱延焼鈍板を通常の熱延方法、即ち、やみくも
に低温での熱延を指向せず、通常工程である SRTが1250
℃の場合で得られなければ、コスト的に熱延焼鈍板を使
用するメリットが減じられてしまう。従って、本発明に
おいて、最も重要な点は、 (1)充分な靱性を有して通常
の熱延工程が可能であり、高加工性を発揮する成分系を
見出す事、かつ、 (2)高温耐力に関しては、熱延焼鈍板
の状態で充分な高温耐力を発揮させる成分系を見出すこ
と、さらに (3)自動車排気材料としての充分な耐酸化
性、高温塩害特性を有する成分系を見出す点も重要であ
る。このような (1)〜(3) を満足する成分系を検討した
結果、以下の知見を得て、本発明が完成できた。
【0031】(1) 通常の熱延中において、即ち、 SRT12
50℃程度において、2mmt厚まで熱延した時に、熱延板焼
鈍後必要な加工性を得るには、図1に示すようにNb/ C
+Nで13以上とする必要がある。この理由は、高温で析
出するNb微細析出物が回復再結晶挙動を遅延し、熱延
中において、充分な歪みが素材に負荷されるためであろ
うと考えられるが充分には解明されてはいない。図1中
に併記しているように、 C,N を固定する他の元素、T
i,Zr,Alではまったく加工性が向上しない点に注目す
る必要がある。一般にNb,Ti,Zr,Alの添加は、冷延焼
鈍板における加工性の向上を目的とするものであるが、
熱延焼鈍板では、図1のように従来知見とはまったく異
なった挙動を示す。図1中に、熱延板厚を 5mmとして冷
延焼鈍を行った 2mmの冷延焼鈍板の伸びをカッコ内に示
した。冷延焼鈍板の伸びは従来の知見同様に、Nb/ C+
N ,Ti/ C+N ,Zr/ C+N ,Al/ C+N の増加に従っ
て、向上する。また表1にはNb添加鋼にTi,Zr,Alを複
合添加した場合の熱延焼鈍板の加工性を示す。いずれも
Nb単独添加鋼に較べて、加工性が低下することが注目さ
れる。このように熱延焼鈍板の加工性向上は、従来の冷
延焼鈍板での知見を利用できず、Nbを厳密に単独添加し
た鋼組成にしなければ熱延焼鈍板の加工性向上は達成で
きないという新規な知見が得られた。図3は、Nb/ C+
N =20.9(鋼A(a))と現用鋼SUH409L(b)の熱延焼鈍板
の圧延方向組織を示す顕微鏡写真である。図3から鋼A
の方が、著しく均等粒になっていることがわかる。
【0032】表2にはNb含有量が変化した鋼の未焼鈍
熱延板の0℃シャルピー吸収エネルギーの変化を示す。
Nb量が多い時は、析出量が増え、脆化する。Nbの絶対量
が 0.6%を超えると、急激に脆化し、また加工性が劣化
することがわかる。
【0033】次に本願にとって重要なP量の効果につい
て詳述する。従来Pは不可避的不純物とされ、近年では
0.02%以下にまで低減した鋼も見られる。しかし、本発
明者らはいたずらにP量を低下させることは本用途にと
っては無意味にコスト高を導くとともに、むしろ熱延焼
鈍板の加工性を劣化させることを、さらに重要な点は、
適当量まではPは熱延焼鈍板の加工性をむしろ向上させ
ることを見出した。本願程度までPの添加が許容できる
ことは、コストのかかる脱P工程の簡略化が可能であ
り、より低コスト化が可能であることを意味する。表3
には、P含有量を変化させた鋼の伸び、靱性の測定結果
を示す。P量を 0.042%、 0.058%のようにJISG4304を
超えて含有させても加工性の劣化どころかむしろ JISに
規定されているPレベル 0.026%、 0.036%(鋼H,B)よ
りも優れた伸びを示し、またYSもほとんど変化しないこ
とを見出した。このようなPの効果は現在のところ解明
されてはいないが、以下のように推測できる。即ち、本
質的には、Pは侵入型元素であり、加工性、靱性に悪影
響を及ぼすはずである。しかし、熱延時には、材料の回
復、再結晶挙動が熱延焼鈍板の特性に大きく影響する。
この意味において、Pがその本来の侵入型元素の悪影響
を打ち破る程に熱延時の回復、再結晶挙動を遅らせ、熱
延時の歪みが充分に導入され、その焼鈍組織が均一な再
結晶組織を呈したものと考えられるが、現在のところ解
明されてはいない。
【0034】表4には、本発明鋼と比較鋼の成分Cr, S
i,Nb,C ,N ,P ,Mnの重量%で、下記式(2) また
は、Mo,Cu,Ni, Co 添加鋼の場合は、これらの添加元
素を考慮した後述する式(3) または式(4) 、 式(2) 11重量%≦ Cr + 3Si+ 4Nb− 50(C+N+P)− M
n ≦ 16.5 重量% の条件を充たす組成のものと、充たさない組成のものの
熱延焼鈍板の伸び、溶接部加工性を測定した結果を示
す。表4は、加工パラメーターPa=Cr+ 3Si+ 4Nb−50
(C+N+P) −Mnと熱延焼鈍板の伸びと溶接部の加工性の関
係を示す。Paが16.5を越えると、いずれの鋼も破断伸び
が34%未満であり、加工性が劣り、熱延焼鈍状態では自
動車排気材料用途の加工に耐えない。一方、Paが11未満
では、溶接部の加工性が劣化している。ここで溶接部の
加工性評価は、図5の(a) に示す形状のサンプルを、溶
接速度 600mm/min 、溶接電流200A、片面の表面をArで
15L/minでシールした条件で、(a) に示すように TIG突
き合わせ溶接し、表4中に示したサンプルが、図5 の
(b) に示すように割れずに 180度曲げ加工できるか否か
で評価した。
【0035】図2には、熱延焼鈍板の加工性に及ぼすCr
量の影響を示す。Ti,Zr,Al添加鋼の場合、Cr量低下に
よりわずかに伸びは向上するが、Nb,P添加鋼と較べれ
ば、Cr量減少による加工性の向上はわずかであり、目標
とする34%以上の破断伸びには遠く及ばない。即ち、Cr
量の低減による高加工性化だけでは、熱延焼鈍板で自動
車排気材料に使用することは不可能といえる。さらに、
表5には溶接部の凝固割れに及ぼすN,Nbの影響を示
す。Nが0.015%以下、かつNb 0.6%以下では凝固割れ
は発生しないことが判る。
【0036】(2) 熱延焼鈍板の高温耐力を測定した結果
を、表6に示す。本発明鋼であるNb添加鋼の 700℃高温
耐力は、Ti,Zr,Al添加鋼や現用鋼 SUH409Lと比較して
2倍以上を示し、また 900℃の高温耐力も 2倍近く優れ
ていることがわかる。
【0037】(3)耐酸化性に関しても、熱延焼鈍板を用
いて検討した。表7に現用鋼SUH409Lと比較して本発明
鋼の耐酸化性の一例を示す。表7に示す組成の鋼を、大
気中で730、 830、 930℃で、 200時間放置し、表面状
態を観察した。Feの酸化物を主体とするスケールこぶ
が生成した状態を異常酸化とした。本発明鋼はいずれも
930℃、 200時間大気中で加熱しても異常酸化しなかっ
た。現用鋼 SUH409Lが 830℃、 200時間で異常酸化した
事と比較して、著しく高耐熱化していることがわかる。
【0038】このような検討結果、即ち、Nb単独添加、
P添加、低Cr化、他成分のバランスの適性化を総合して
はじめて、通常の製造方法を用いた熱延焼鈍状態でも、
自動車排気材料用途に適用可能な安価な高加工性熱延フ
ェライト鋼が得られるものである。即ち、本発明は、現
用鋼 SUH409Lより著しく高耐熱化しつつ、通常の熱延工
程で自動車排気材料用途の加工に対応可能な高加工性を
有し、さらに現用鋼よりも著しく安価に製造可能な低コ
スト熱延フェライト鋼を提供するものである。以下に本
発明鋼における各化学成分値の含有量の限定理由を述べ
る。
【0039】C:Cはフェライト相の安定性、加工性、
耐酸化性を劣化させることから上限を0.02%とする。望
ましくは、0.01%以下である。最も望ましくは、 0.006
%以下である。
【0040】Si:Siは、耐酸化性、高温塩害特性を向上
させ、またフェライト相を安定化させるため有効な元素
であり、本用途には最低 0.4%必要である。表8に示す
ように特に高温塩害特性の向上には、望ましくは 0.6%
以上である。なお、高温塩害特性の評価方法は実施例の
項で述べる。また、Siは室温のYSを上昇させるが、1%
程度までは伸びの劣化は小さい。しかし、1%を越える
と、伸びが劣化し、特に2%を越えて含有させると、伸
びの劣化、YSの上昇が大きい。よって 0.4%以上2%以
下とする。望ましくは、 0.8%以上 1.3%以下である。
【0041】Mn:Mnは、フェライト相の安定性、耐酸化
性、加工性に有害な元素であるが、0.8%までの含有で
あれば、本用途において問題とならない。高加工性を得
るため、望ましくは 0.1%以下である。最も望ましくは
0.05%以下である。
【0042】Cr:Crは耐酸化性を確保するために必要な
元素である。6%未満では他元素をどのように調製して
も本用途向けの加工性、耐酸化性を確保できない。一
方、17%を越えると、図2に示したように加工性の劣化
が大きく、またコスト高になるため6%以上17%以下に
限定する。特に、加工性を最優先させるには、望ましく
は10%以上15%以下である。最も望ましい範囲は10%以
上12%以下である。
【0043】P:Pは、本発明において重要な元素の一
つである。従来不可避的不純物とされていたが、熱延焼
鈍状態での加工性には、むしろ一定量含有されている方
が好ましいとの知見を得た。Pが 0.025%以下では、脱
P工程によるコスト上昇が大きく、また加工性も低下す
る。一方0.10%を越えると、製造コストは低下しても、
加工性の劣化が大きい。従って、 0.025%以上0.10%以
下に限定する。表3に示したように、加工性の点から、
望ましくは、0.03%以上0.07%以下である。さらに望ま
しくは、0.04%以上0.06%以下である。
【0044】N:NはC同様低い方が好ましい。特にNb
含有鋼では、溶接部の凝固割れを発生させやすくするた
め、特に 0.015%以下であることが必要である。望まし
くは0.010%以下である。
【0045】Al:Alは、熱延焼鈍板の加工性に有害であ
るため、可及的に含有量を低くする必要がある。しかし
必要以上の低下はロスト上昇をもたらすため上限を0.02
%とする。望ましくは 0.005%以下である。
【0046】Ti:TiもAl同様の理由により0.02%以下で
ある。望ましくは 0.005%以下である。最も望ましくは
0.001%以下である。
【0047】Zr:ZrもAl、Ti同様の理由により0.02%以
下である。望ましくは 0.005%以下である。
【0048】Nb:Nbも本発明にとって重要な元素の一つ
である。図1に示したように、熱延焼鈍板において充分
な加工性を得るには、安定化元素としてNbを単独で添加
しなければならない。熱延時の回復、再結晶過程の違い
において、Ti,Zr,Alのような他の安定化元素では、冷
延焼鈍板の加工性は向上できても、熱延焼鈍板の加工性
にはまったく効果がない。さらに、表1に示したよう
に、Nb添加鋼に、Ti,Zr,Alが複合添加されると、Nb単
独添加での効果が減じられてしまう。従って、熱延焼鈍
板の加工性向上のため、Ti,Zr,Alは可能な限り低く限
定し、Nbは C+Nの13倍以上の添加が必要である。同時
に、高温耐力の向上のため、0.35%以上添加する。また
表2に示したように、Nb添加量は 0.6%を越えると、加
工性の低下とともに、靱性が著しく劣化する。また、表
5に示したように、溶接部の凝固割れも発生する。従っ
て、上限を 0.6%とする。好ましくは0.40%〜0.55%、
より好ましくは、0.45%〜0.50%とする。図4に比較鋼
20の凝固割れの写真を示しその一例を示す。
【0049】下記式(4) に示す加工パラメーター(Pa)が
11未満であると、表4に示したように、溶接部がα、
α’の2相になり、その部分の加工性が劣化する。一
方、加工パラメーターが16.5を越えると、加工性の劣化
が大きく、もはやNb,Pを最適化しても、熱延焼鈍板の
加工性が、自動車排気材料用途には不十分なものとな
る。従って、加工パラメーター(Pa)は11以上16.5以下に
限定する。望ましくは、13以上15.5以下である。 式(4) Pa =Cr+ 3Si+ 4Nb+Mo+Cu−50(C+N+P) −Mn
−Ni−Co ただし、Mo,Cu,Ni,Coは、Mo,Cu,Ni,Co添加鋼の場
合にのみ考慮すればよい。
【0050】次に選択元素の限定理由を述べる。 Cu,Mo:高温耐力の向上、高温塩害特性の向上のため添
加してもよい。その効果は等価と考えてよく、Moで 0.1
%、Cuでも 0.1%以上で表れるが、高価な元素であるか
ら、Moの上限を3%、Cuの上限は1%に限定する。望ま
しい範囲はMoが0.5%〜 2.5%であり、Cuは 0.3%〜 0.
6%、より望ましくは、Moが 1.0%〜 1.5%、Cuが 0.4
%〜 0.6%である。
【0051】Ni,Co:Ni,Co.はいずれも溶接部の靱性
を向上させる。表9に各々の効果を示す。溶接条件は表
4の場合と同様とした。Ni,Coは高価な元素であるから
Niは1%に、Coは0.5%に上限を限定する。これらの
効果は等価であるので、それぞれ単独、あるいは複合添
加してもよい。望ましくは、Ni 0.5%以下、Co 0.2%以
下である。
【0052】
【実施例】以下実施例により、さらにこの発明を具体的
に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるもので
はない。表1〜9に示したような組成の鋼A 〜 Z,FA,
FB,RA,VA,ZA(本発明鋼)および鋼1〜25(比較
鋼)および現用鋼 SUH409Lを真空溶解炉で溶製し、30kg
鋼塊とした。熱間鍛造により27mm厚に調製し、その後ス
ラブ加熱温度(SRT) を1250℃とし熱間圧延により 2mm厚
にした。ここで圧延方向に垂直にノッチを入れ0℃でシ
ャルピー衝撃特性を調べた。またNb含有鋼は 980℃、Nb
無添加鋼は 930℃で焼鈍し、粒径をほぼ一定にそろえて
から、室温での圧延方向の伸びとYSと、 700、 900℃の
高温耐力(歪み速度は0. 3%/min)および大気中で、 7
30℃、 830℃、 930℃、 200時間酸化試験後の重量変化
を測定した。さらに、 700℃での高温塩害特性を調べ
た。また、この熱延焼鈍板を用いて、 TIG溶接を行い、
凝固割れの有無、 TIG溶接部の曲げ特性、 TIG溶接部の
シャルピー衝撃特性を調べた。
【0053】高温塩害特性評価は、2mmt×2mmw×30mmL
材を用いて、飽和食塩水に 5分浸漬し、その後 700℃で
2時間加熱し 5分の空冷を1サイクルとし、10サイクル
後の最大浸食深さで評価した。
【0054】既に表1〜9で代表的な特性を明記した
が、本発明の組成範囲である本発明鋼A〜Yのいずれの
鋼も自動車排気材料用途に必要な以下の特性を得た。 (1) 未焼鈍熱延板の0℃シャルピー吸収エネルギー50J/cm2 以上 (2) 熱延焼鈍板の伸び、YS 34%以上、350MPa以下 (3) 熱延焼鈍板の TIG溶接特性 凝固割れ無し 180度曲げ可 (4) 熱延焼鈍板の 700℃の高温耐力 SUH409L のそれの 2倍以上 熱延焼鈍板の 900℃の高温耐力 SUH409L のそれの 2倍程度 (5) 熱延焼鈍板の 930℃、200 時間後の耐酸化性 異常酸化しない (現用鋼である SUH409Lの冷延焼鈍板の耐酸化性は 830℃、 200時間後 異常酸化した。) (6) 700℃の高温塩害特性 SUH409L より著しく優れる 表1〜9に示した比較鋼1〜25はいずれかの成分が本
発明の範囲外であり、上述の(1) 〜(6) の特性のひとつ
以上を満さない鋼は、熱延焼鈍状態で自動車排気材料用
途への適用が困難である。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
【表8】
【0063】
【表9】
【0064】
【表10】
【0065】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、通常の
熱延工程を用いても、高加工性、高耐熱性、良好な製造
性を持つ自動車排気材料用途の安価な熱延板が得られ
る。安価、高加工性、高耐熱性を兼備することによっ
て、従来その高価さ、加工の困難さのため自動車排気材
料用途向けにはまったく適用されていなかった熱延状態
の高耐熱材料が適用され、エンジン性能の向上をもたら
し、石油資源の節約、大気環境の保全に著しく貢献で
き、産業上極めて有益な効果がもたらされる。
【0066】本発明は、熱延板を再結晶焼鈍した材料を
自動車排気材料に用いることに関したものであるから、
熱延焼鈍板から造管したパイプに関して、そのパイプの
焼鈍の有無に限定されるものではなく、また未焼鈍熱延
板を用いてパイプに造管し、その後再結晶焼鈍したパイ
プも当然本発明に含まれ、本用途に好適に使用可能であ
る。また、本発明での高温特性評価は 700〜 930℃で行
っているが、本発明は、この温度にさらされる部材に限
定されるものではない。例えばマフラーのようにせいぜ
い 500℃程度までしか加熱されない自動車排気材料部材
でも、加工性、高温塩害特性、コストに優れた本発明鋼
は好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 熱延焼鈍板、または冷延焼鈍板の伸びに及ぼ
すNb/ C+N ,Zr/ C+N ,Al/ C+N ,の影響を示す
グラフである。
【図2】 熱延焼鈍板の伸びに及ぼすCrの影響を示す
グラフである。
【図3】 (a),(b)はそれぞれ熱延焼鈍後の圧延
方向の金属組織を示す図面代用写真である。
【図4】 TIG 溶接部凝固割れの一例である金属組織を
示す図面代用写真である。
【図5】 表4の溶接加工性を評価するための TIG溶接
条件および 180度曲げの試験条件を説明する斜視図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐 藤 進 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 大 和 康 二 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C :0.02重量%以下
    Si:0.4 重量%〜 2重量% Mn:0.8 重量%以下 Cr:6重量%
    〜17重量% N :0.015 重量%以下 Al:0.02重量
    %以下 P :0.025 重量%〜 0.10 重量% Ti:0.02重量
    %以下 Zr:0.02重量%以下 Nb:0.35重量%〜0.60重量%で、成分の重量%が下記式
    (1) および(2) を満足し、 式(1) 13(C+N)≦ Nb 式(2) 11重量%≦ Cr + 3Si+ 4Nb− 50(C+N+P)− M
    n ≦ 16.5 重量% 残部はFeと不可避的不純物からなることを特徴とする自
    動車排気材料用熱延フェライト鋼。
  2. 【請求項2】C :0.02重量%以下
    Si:0.4 重量%〜 2重量% Mn:0.8 重量%以下 Cr:6重量%
    〜17重量% N :0.015 重量%以下 Al:0.02重量
    %以下 P :0.025 重量%〜 0.10 重量% Ti:0.02重量
    %以下 Zr:0.02重量%以下 Nb:0.35重量%〜0.60重量%で、成分の重量%が下記式
    (1) および(2) を満足し、 式(1) 13(C+N)≦ Nb 式(3) 11重量%≦Cr+3Si +4Nb −50(C+N+P) −Mn+
    (Mo+Cu)≦16.5重量% さらに、 Mo: 0.1重量%〜 3.0重量%およびCu: 0.1重量%〜
    1.0重量%から選択される少なくとも1種、 残部はFeと不可避的不純物からなることを特徴とする自
    動車排気材料用熱延フェライト鋼。
  3. 【請求項3】C :0.02重量%以下
    Si:0.4 重量%〜 2重量% Mn:0.8 重量%以下 Cr:6重量%
    〜17重量% N :0.015 重量%以下 Al:0.02重量
    %以下 P :0.025 重量%〜 0.10 重量% Ti:0.02重量
    %以下 Zr:0.02重量%以下 Nb:0.35重量%〜0.60重量%で、成分の重量%が下記式
    (1) および(3) を満足し、 式(1) 13(C+N)≦ Nb 式(4) 11重量%≦Cr+3Si+4Nb-50(C+N+P)-Mn-Ni-Co+(Mo+
    Cu) ≦16.5重量%さらに、 Mo: 0.1重量%〜 3.0重量%およびCu: 0.1重量%〜1
    重量%から選択される少なくとも1種、 Ni,Co: Ni 1 重量%以下およびCo 0.5重量%以下から選
    択される少なくとも1種を含有し、 残部はFeと不可避的不純物からなることを特徴とする自
    動車排気材料用熱延フェライト鋼。
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