JP3444173B2 - 渦電流式減速装置用磁石の着磁装置およびそれを用いた着磁方法 - Google Patents

渦電流式減速装置用磁石の着磁装置およびそれを用いた着磁方法

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  • Permanent Field Magnets Of Synchronous Machinery (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の制動装置
として設けられる渦電流式減速装置に組み込まれる永久
磁石の着磁装置およびその装置を用いた磁石材料の着磁
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の制動装置は、主ブレーキである
フットブレーキ、補助ブレーキである排気ブレーキのほ
か長い坂道の降坂時などで安定した減速を行い、かつフ
ットブレーキの焼損を防止するために渦電流式減速装置
(以下、これを「リターダ」と記載する)が使用されて
いる。このリターダには、磁石として永久磁石を使用す
るものと電磁石を使用するものとがある。永久磁石を使
用するリターダの構造については、既にいくつかの例が
本出願人らによって提案されている(たとえば、特開平
1-234043号公報、特開平1-234045号公報、特開平1-2989
48号公報等参照)。
【0003】図5は、永久磁石を使用したリターダの一
例を示す縦断面図である。
【0004】回転子Rは、円筒部3、スポーク2およびデ
ィスク1からなり、ブラケット10aを介して回転軸10の片
側端部に取り付けられている。円筒部3は、その端部が
スポーク2の先端部に片持ち梁状に接合されており、そ
の内部に永久磁石を内蔵するステータSが設けられてい
る。
【0005】ステータSは、永久磁石5、支持リング6お
よびポールピース7とからなり、ケーシング12に納めら
れている。ポールピース7は、短冊状をしており、図5
に示すように、ケーシングカバー12aの内部に周設さ
れている。
【0006】図6は、永久磁石を支持リングに固定した
状態を示す斜視図である。
【0007】永久磁石5は、支持リング6の外円周部に、
それぞれ隣接する表面の極性を反対にして等間隔に、取
り付け金具6aおよび取り付けボルト6bによって固定され
ている。図5に示すように永久磁石5と支持リング6は、
ケーシングに固定された案内棒11によって支持され、駆
動装置9のピストンロッド8によって軸方向に往復運動す
る。
【0008】この往復運動によって永久磁石5がポール
ピース7の位置、すなわち円筒部3と磁気的に対向する位
置まで挿入された状態(図の上半分に示す状態)が制動
オンである。反対に、永久磁石5がポールピース7から離
れた位置にある状態(図の下半分に示す状態)が制動オ
フである。制動オンの状態では、永久磁石5から発する
磁束を横切って円筒部3が回転運動するので円筒部の内
壁部表面近傍に渦電流が流れる。この渦電流と磁束の相
互作用によって回転子Rには制動トルクが発生する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】一般に、永久磁石を装
置へ組み込む作業は、磁石を磁化した後に行われてい
る。この作業は、磁力が小さければ容易にできるが、た
とえば核磁気共鳴装置(MRI)のように形状が大き
く、しかも高性能(強力)な永久磁石を組み込むとき
は、磁束分布を測定、調整しながら人力で組み込みが行
われ、困難な作業となっている。
【0010】本出願人が提案したリターダは、たとえば
希土類元素を含有する永久磁石が用いられ、磁力が強力
で、組み込み量が多い(たとえば12個から32個まで)た
め、組み込みには専用の装置(たとえば、実開平4-1335
28号公報参照)を使用していた。この装置は、永久磁石
を1つづつ吸引ブロックで保持し、支持リングに固定す
る装置であるから、組み込みに多くの時間を必要として
いた。
【0011】本発明の目的は、磁化していない磁石材料
を支持リングに組み込んだ後、着磁できる装置とその装
置を用いて着磁する方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、図1お
よび図2に示す下記の磁化していない磁石材料の着磁
装置およびその装置を用いた下記に示す着磁方法にあ
る。
【0013】円筒体の内側に中心方向に突出する複数
個の磁心が形成され、隣接する磁心の先端部表面が異極
となるようにそれぞれの磁心に導線を巻回して形成され
た着磁用コイルと、の着磁用コイルの内部に同心円状
に設けられた強磁性体からなる円筒状のヨークとを有
し、着磁用コイルとヨークとの間に着磁すべき磁石材料
が外周部に等配設固定された支持リングを置くための環
状の空間部が形成されたコイルベースと、このコイルベ
ースを貫通し、その軸心が着磁用コイルおよびヨークの
軸心と一致する昇降軸を有し、この昇降軸の上端に取り
付け台が装着された昇降装置と、前記の支持リングを吊
り下げ状態に保持し、支持リングの軸心が着磁用コイル
およびヨークの軸心と一致するように前記昇降装置の取
り付け台に載置され、その下降時に支持リングに取り付
けられた着磁すべき磁石材料を着磁用コイルの磁心と対
向する位置に位置させる保持具とを具備する渦電流式減
速装置用磁石の着磁装置(図1および図2参照)。
【0014】上記の保持具は、非磁性材からなり、支持
リングの周方向位置を決定するための楔穴と、支持リン
グを吊り下げ状態に保持するためのボルト穴を有すもの
であことが望ましい(図参照)。
【0015】着磁すべき複数個の磁石材料を円筒状の
支持リングの外周部に等配設固定し、この支持リングを
保持具を用いて吊り下げ状態に保持する一方、支持リン
グの中心部には強磁性体からなる円筒状のヨークを、外
周部には前記それぞれの磁石材料の外周面と対向する内
周部に支持リングの中心に向かって突出し、その周面に
導線が巻回された磁心を有する環状の着磁用コイルをそ
れぞれ同心円状に配置し、前記着磁用コイルの各磁心に
巻回された導線に対して隣接する磁心の極性が反対とな
るように電流を流し、前記複数個の磁石材料を同時に磁
化する渦電流式減速装置用永久磁石の着磁方法。
【0016】上記の磁石材料は、Nb−Fe−B系の永久磁
石素材であることが望ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】図1は、本発明のリターダ用永久
磁石の着磁装置の一例を示す部分図であり、(a)は平面
図、(b)は(a)図のA-A矢視縦断面図である。
【0018】本発明のリターダ用永久磁石の着磁装置
は、円筒状の着磁用コイル13と、同じく円筒状のヨーク
14とから構成され、着磁用コイル13とヨーク14との間に
空間部15が形成されている。
【0019】着磁用コイル13は、電磁鋼板の積層体から
なる円筒の内周部が半径方向に突出して形成された複数
個の磁心13aに、それぞれ導線13bを巻回して構成されて
いる。磁心の先端部の磁極が隣接する磁心で反対になる
ように導線が巻回されるか、電流の方向が調整される。
【0020】ヨーク14は、強磁性材からなる円筒状であ
り、着磁用コイルの内部に同心円状に設けられ、着磁用
コイル13との間に空間部15が設けられている
【0021】図2は、ヨークの中心部に昇降装置を設け
た着磁装置を示す図であり、(a)は上から見た平面図、
(b)は一部縦断面図である。この図は、昇降装置17が油
圧装置18によって押し上げられた状態が示され、この位
置で磁石材料を固定した支持リングが取り付けられる。
【0022】着磁用コイル13およびヨーク14は、図2に
示すように空間部15を設けて同心円状にコイルベース19
装着されており、ヨーク14の中心部に昇降装置17が設
けられている。
【0023】昇降装置17は、コイルベース19に固定され
たブッシュ20に支持された昇降軸21と、台枠22に固定さ
れた油圧装置18とから構成されている。
【0024】昇降軸21の上端部には、後述する磁石材料
を固定した支持リングを保持する保持具を載置する取り
付け台23が設けられ、昇降軸の下端部には、昇降台24が
設けられ、昇降台24の下部に設けられた油圧装置18によ
って昇降軸21を昇降させる。油圧装置18は、台枠22から
垂下した案内棒25に取り付けたブラケット26を介して固
定されている。案内棒25は、昇降台24に設けた案内ブッ
シュ27を摺動移動させ、昇降軸21を垂直に昇降できるよ
うになっている。ブラケット26にはストッパー28を設
け、昇降軸21を降下させたときの磁石材料と着磁用コイ
ル13との高さ方向の位置合わせを行う。
【0025】本発明の着磁装置を用いて磁石材料5Aに着
磁する方法について説明する。
【0026】まず、磁石材料5Aは、たとえば希土類元素
を含む短冊状の磁気を帯びない磁石材料であり、図6に
示すように支持リング6の外周面に非磁性材からなる金
具6Aおよびボルト6bによって等間隔に固定される。磁石
材料は、磁力を有しないので人力によって簡単に支持リ
ングに取り付けることができる。
【0027】図3は、本発明の着磁装置を用いて磁石材
料を着磁する状況を説明する図である。前記のように磁
石材料5Aを固定した支持リング6は、着磁用コイル13と
ヨーク14との空間部15に挿入され、磁石材料5Aの外周面
と着磁コイル13の内周面に形成された磁心とが半径方向
で対向する位置に設置される。この状態で着磁用コイル
電流を流すと、図に示すように隣接する磁心13aに磁場1
6が発生し、複数の磁石材料5Aは同時に垂直に磁化さ
れ、それぞれ隣接する外周部表面とが異極である永久磁
石となる。
【0028】次に、図2に示す着磁装置を用いて着磁す
る工程について説明する。
【0029】図4は、磁石材料を本発明の着磁装置に取
り付ける工程を説明する図であり、(a)は取り付け台
(左半分)と磁石材料を固定した支持リングを保持した
保持具(右半分)との平面図、(b)は磁石材料を固定し
た支持リングを保持した保持具の縦断面図、(c)は昇降
軸の先端に設けられた取り付け台の縦断面図、(d)は保
持具を取り付け台に取り付けた状態を示す縦断面図、
(e)は(d)の平面図である。
【0030】図(b)に示すように、上述の磁石材料5Aを
外周面に固定された支持リング6は、保持具29の下面に
ボルトB1によって同心円状に取り付けられる。
【0031】保持具29には、内部に円形の穴29a、ボル
ト穴29bおよび楔止めするための穴29cが穿たれ、アルミ
ニウムのような非磁性材料から製作するのが望ましい。
【0032】昇降装置17の取り付け台23は、図(c)に示
すように、段部23aと楔止め輪23bを備え、昇降軸21の先
端にボルトB2によって取り付けられている。図(b)に示
すように磁石材料5Aと支持リング6を取り付けた保持具2
9は、取り付け台23に上方向から載置され、取り付け台
の段部23aと保持具の穴29aとが嵌合され、保持具を同心
円状に載置して固定する。図(d)に示すように、保持具2
9に設けた楔止め輪23bを保持具の楔穴29cに貫通させて
載置し、楔Kを楔止め輪23bに打ち込んで固定する。この
固定作業が、図2(b)に示す着磁装置の状態で行われる。
【0033】磁石材料5Aを配設した支持リング6は、保
持具29の下部に吊り下げられた状態で固定されているの
で、図2(b)に両端矢印で示すように昇降装置17を油圧装
置18によって降下させると、着磁用コイル13とヨーク14
との間の空間部15に挿入される。着磁用コイルと磁石材
料とは半径方向に対向する位置に挿入する必要がある
が、昇降軸21は回転しないので、保持具29のボルト穴29
bおよび楔穴29cの位置により決まる。この状態で着磁用
コイル13に電流を流すと、磁石材料5Aは隣接する外周部
の表面が異極に着磁する。
【0034】
【実施例】縦が27mm、横が57mm、厚さが9.5mmの希土類
元素を含む磁石材料を16個と、内径が342mm、外径が365
mm、幅が31mmの強磁性材からなる支持リングを用意し、
磁石材料を支持リングの外周面に等間隔に、非磁性材の
取り付け金具とボルトで人力で固定した。
【0035】磁石材料を固定した支持リングを、図4に
示す工程で図2に示す着磁装置にセットし、着磁用コイ
ルの電源電圧を300Vから750Vまで変化させて着磁試験
を行った。
【0036】比較例として、すでに着磁された永久磁石
を実開平4-133528号公報に開示された装置を用いて支持
リングに固定した。
【0037】これらの永久磁石の磁場強度をフラックス
メーターによって測定し、電源電圧と磁場強度との関係
を図7に示した。
【0038】これらの結果から、電源電圧を300Vから7
50Vまで変化させると、磁場強度が2450Mxから2570Mxま
で変化することがわかる。この磁石材料の飽和着磁(フ
ル着磁)は、2570Mxであり、着磁された永久磁石を支持
リングに固定したものに等しい。すなわち、675V以上
の電圧をかければ、従来と同等の磁場強度を得ることが
できる。
【0039】本発明の着磁装置を用いれば、磁力を帯び
ていない磁石材料を支持リングに固定することができる
ので、作業が容易となり、作業時間が比較例の11分間か
ら5分間に短縮することができる。
【0040】
【発明の効果】本発明の着磁装置は、磁気を帯びていな
い磁石材料を支持リングに組み込んだ後、任意の磁場強
度に着磁することができる。着磁時間の短縮、磁石組み
付け作業の簡素化、または今まで困難であった磁石の組
み付け作業の自動化が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリターダ用永久磁石の着磁装置の一例
を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)図のA-A矢視縦
断面図である。
【図2】ヨークの中心部に昇降装置を設けた着磁装置を
示す図であり、(a)は上から見た平面図、(b)は一部縦断
面図である。
【図3】本発明の着磁装置を用いて磁石材料を着磁する
状況を説明する図である。
【図4】磁石材料を本発明の着磁装置に取り付ける工程
を説明する図であり、(a)は取り付け台(左半分)と磁
石材料を固定した支持リングを保持した保持具(右半
分)との平面図、(b)は磁石材料を固定した支持リング
を保持した保持具の縦断面図、(c)は昇降軸の先端に設
けられた取り付け台の縦断面図、(d)は保持具を取り付
け台に取り付けた状態を示す縦断面図、(e)は(d)の平面
図である。
【図5】永久磁石を使用したリターダの一例を示す縦断
面図である。
【図6】永久磁石を支持リングに固定した状態を示す斜
視図である。
【図7】電源電圧と磁場強度との関係を示す図である。
【符号の簡単な説明】
R.回転子 S.ステータ 1.ディスク 2.スポーク 3.円筒部 4.フィン 5.永久磁石5A.磁石材料 6.支持リング 7.ポールピース 8.ピストンロッド9.駆動装置 10.回転軸 10a.ブラケット 11.案内棒 12.ケーシング 12a.ケーシングカバー 13.着磁用コイル 14.ヨーク 15.空間部 16.磁場 17.昇降装置 18.油圧装置 19.コイルベース 20.ブッシュ 21.昇降軸 22.台枠 23.取り付け台23a.段部 23b.楔止め輪 24.昇降台 25.案内棒 26.ブラケット 27.案内ブッシュ 28.ストッパー 29.保持具 29a.円形穴 29b.ボルト穴 29c.楔穴
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−234043(JP,A) 特開 平11−113224(JP,A) 実開 昭63−157905(JP,U) 実公 昭43−27589(JP,Y1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02K 49/02,49/10 H02K 15/03 H01F 13/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】円筒体の内側に中心方向に突出する複数個
    の磁心が形成され、隣接する磁心の先端部表面が異極と
    なるようにそれぞれの磁心に導線を巻回して形成された
    着磁用コイルと、の着磁用コイルの内部に同心円状に
    設けられた強磁性体からなる円筒状のヨークとを有し、
    着磁用コイルとヨークとの間に着磁すべき磁石材料が外
    周部に等配設固定された支持リングを置くための環状の
    空間部が形成されたコイルベースと、このコイルベース
    を貫通し、その軸心が着磁用コイルおよびヨークの軸心
    と一致する昇降軸を有し、この昇降軸の上端に取り付け
    台が装着された昇降装置と、前記の支持リングを吊り下
    げ状態に保持し、支持リングの軸心が着磁用コイルおよ
    びヨークの軸心と一致するように前記昇降装置の取り付
    け台に載置され、その下降時に支持リングに取り付けら
    れた着磁すべき磁石材料を着磁用コイルの磁心と対向す
    る位置に位置させる保持具とを具備することを特徴とす
    る渦電流式減速装置用磁石の着磁装置。
  2. 【請求項2】前記の保持具は、非磁性材からなり、支持
    リングの周方向位置を決定するための楔穴と、支持リン
    グを吊り下げ状態に保持するためのボルト穴を有するこ
    とを特徴とする請求項1に記載の渦電流式減速装置用磁
    石の着磁装置。
  3. 【請求項3】着磁すべき複数個の磁石材料を円筒状の支
    持リングの外周部に等配設固定し、この支持リングを保
    持具を用いて吊り下げ状態に保持する一方、支持リング
    の中心部には強磁性体からなる円筒状のヨークを、外周
    部には前記それぞれの磁石材料の外周面と対向する内周
    部に支持リングの中心に向かって突出し、その周面に導
    線が巻回された磁心を有する環状の着磁用コイルをそれ
    ぞれ同心円状に配置し、前記着磁用コイルの各磁心に巻
    回された導線に対して隣接する磁心の極性が反対となる
    ように電流を流して前記複数個の磁石材料を同時に磁化
    することを特徴とする渦電流式減速装置用永久磁石の着
    磁方法。
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