JP2016182015A - 埋込磁石型電動機、及びこの埋込磁石型電動機を用いたエレベータ用巻上機、及びこのエレベータ用巻上機を用いたエレベータ、及びこの埋込磁石型電動機を用いたインホイールモータ装置 - Google Patents

埋込磁石型電動機、及びこの埋込磁石型電動機を用いたエレベータ用巻上機、及びこのエレベータ用巻上機を用いたエレベータ、及びこの埋込磁石型電動機を用いたインホイールモータ装置 Download PDF

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英樹 北村
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Abstract

【課題】材料費の増大を抑えることができる新規な埋込磁石型電動機、及びこの埋込磁石型電動機を用いたエレベータ用巻上機、及びこのエレベータ用巻上機を用いたエレベータ、及びこの埋込磁石型電動機を用いたインホイールモータ装置を提供することにある。【解決手段】環状に配置した複数の磁極ピースの隣り合う磁極ピースの間にセグメント磁石を夫々配置して磁極組立体を構成し、磁極組立体の両側の側面の磁極ピース及びセグメント磁石が位置する環状領域に、磁極ピースの半径方向長さより短い半径方向長さを有する非磁性金属材料からなる円環状の固定リングを配置すると共に、非磁性金属材料からなる連結部材によって磁極ピースを挟み込んだ固定リングを所定の長さの空隙を介して被回転部材に連結した。固定リングの面積を少なくして使用する非磁性金属材料の使用量を少なくでき材料費の増大を抑えることができる。また、磁極ピースの側面側及び内周面或いは外周面が空気層であるため漏洩磁束を少なくでき、効率よくトルクを得ることができる。【選択図】図2

Description

本発明は環状に配置した複数の磁極ピースの隣り合う磁極ピースの間にセグメント磁石を配置した埋込磁石型電動機、及びこの埋込磁石型電動機を用いたエレベータ用巻上機、及びこのエレベータ用巻上機を用いたエレベータ、及びこの埋込磁石型電動機を用いたインホールモータ装置に関するものである。
永久磁石を使用した永久磁石式電動機は、永久磁石を設けた回転子と電機子巻線を設けた固定子との間の磁力によって回転トルクを生み出す構成である。この回転トルクは、回転子と固定子の構造が同一であれば、回転子と固定子が相互に向かい合っている面の面積、すなわち、エアギャップ面の面積とおよそ比例関係にある。
したがって、同一構造の永久磁石式電動機で回転トルクを大きくするにはエアギャップ面の面積を大きくすれば良いものである。エアギャップ面の面積を大きくする方法は2つあり、1つ目の方法はエアギャップ面の回転軸方向の寸法、すなわち、回転子及び固定子の軸方向の長さを長くする方法である。また、2つ目の方法はエアギャップ面の半径を長くして周方向の長さを長くする方法である。
このように、環状であるエアギャップ面の面積は回転子及び固定子の軸方向の長さに比例し、エアギャップ面の半径の2乗に比例する。したがって、大きな回転トルクを必要とする場合は、永久磁石式電動機ではエアギャップ面の半径を長くすれば良いものである。
一方、エアギャップ面の単位面積当りの回転トルクを大きくする永久磁石の配置構成は、永久磁石をスポーク状に回転子の鉄心に埋め込んだ構成である。スポーク状に永久磁石を配置すると、電動機の回転軸と直交する断面で見た場合、略長方形の永久磁石の短辺の垂直二等分線が回転軸中心を通るように永久磁石が配置され、その周囲を囲うように積層鋼板で構成される回転子鉄心が配置されるものである。一般的に永久磁石を回転子内に埋め込んだ電動機は埋込磁石型電動機と呼ばれている。
そして、このような永久磁石をスポーク状に回転子鉄心に埋め込んだ埋込磁石型電動機の回転トルクを大きくするために、エアギャップ面の半径を長くする場合、加工機械の寸法制約等によって大きな外径の回転子鉄心を一体形成するのが困難である。このため、回転子を周方向に分割し、環状に配置した複数の磁極ピースの隣り合う磁極ピースの間にセグメント磁石を配置した回転子が提案されている。尚、複数の磁極ピースと複数のセグメント磁石の組み合わせとした理由は、磁石トルクとリラクタンストルクを発生することで回転トルクを大きくするためである。
例えば、特開2014−68473号公報(特許文献1)には、環状に配置された磁極ピースの隣り合う磁極ピースの間にセグメント磁石を配置した構成の埋込磁石型電動機が記載されている。この特許文献1では、磁極ピースやセグメント磁石を一体的に結合するため、合成樹脂を使用して一体化する構成だと強度や耐熱性に限界があるとの理由で、ステンレス鋼等の非磁性金属材料で作られた基台(筒状部材)に磁極ピースやセグメント磁石を一体化するものである。
また、特開2000−217286号公報(特許文献2)には、磁極ピースやセグメント磁石の側面の全面に密着する非磁性金属材料からなる円板状の保持板を使用し、この保持板によって磁極ピースやセグメント磁石を結合した構成の埋込磁石型電動機が記載されている。特許文献2では、一方の保持板は回転軸と一体化された円板であり、他方の保持板(保持リング)は円環である。円板状の保持板には磁極ピースやセグメント磁石が密着して固定され、これによって回転トルクを回転軸に伝えるものである。一方、円環状の保持リングはこれも磁極ピースやセグメント磁石に密着して固定され、磁極ピースとセグメント磁石とを一体的に保持するものである。これらの固定にはネジや接着剤が使用されている。
特開2014−068473号公報 特開2000−217286号公報
ところで、特許文献1に記載された埋込磁石型電動機では、非磁性金属材料を用いて作成する基台は、大きなトルクを伝達できるようにステンレス鋼のような大きな強度を備えた非磁性金属材料で作成する必要があるので、材料費が増大するという理由から製品価格が高くなる課題がある。尚、特許文献1では磁極ピースと基台の嵌合部を高精度に加工する必要があるため、製造のための加工費が増大するという副次的な課題もある。
また、特許文献2に記載された埋込磁石型電動機では、大きなトルクを伝達する円板状の保持板の強度を確保するため、保持板を板厚の厚い金属材料で構成する必要がある。また、この保持板は磁極ピースとセグメント磁石とが密着して固定されているので、効率良く回転トルクを得るには、磁極ピースからの漏洩磁束を抑制する必要がある。このために、保持板をステンレス鋼のような大きな強度を備えた非磁性金属材料で厚く製作する必要があるので、材料費が増大して製品価格が高くなる課題がある。
更に、両特許文献に記載の埋込磁石型電動機においては、ステンレス鋼等の大きな強度を備えた非磁性金属材料から作られた基台や円板状の保持板を使用しているため、重量がかなり重くなり、組み込まれる製品の重量にも影響を与えるという課題もあった。
本発明の主たる目的は、材料費の増大を抑えることができる新規な埋込磁石型電動機、及びこの埋込磁石型電動機を用いたエレベータ用巻上機、及びこのエレベータ用巻上機を用いたエレベータ、及びこの埋込磁石型電動機を用いたインホールモータ装置を提供することにある。
本発明の主たる特徴は、環状に配置した複数の磁極ピースの隣り合う磁極ピースの間にセグメント磁石を夫々配置して磁極組立体を構成し、磁極組立体の両側の側面の磁極ピース及びセグメント磁石が位置する環状の領域に、磁極ピースの半径方向長さより短い半径方向長さを有する非磁性金属材料からなる円環状の固定リングを配置すると共に、非磁性金属材料からなる連結部材によって磁極ピースを挟み込んだ固定リングを所定の長さの空隙を介して被回転部材に連結した、ところにある。
本発明によれば、磁極ピース及びセグメント磁石の半径方向長さより短い半径方向長さの固定リングによって磁極ピースや、セグメント磁石を固定しているので、固定リングの面積を少なくして使用する非磁性金属材料の使用量を少なくでき、材料費の増大を抑えることができる。また、磁極ピースの側面側及び内周面或いは外周面が空気層であるため漏洩磁束を少なくでき、効率よくトルクを得ることができる。
本発明の一実施例になる埋込磁石型電動機の回転子の正面図である。 図1に示す回転子の一部を分解して斜めから見た分解斜視図である。 図1のA−A断面を示す断面図である。 図1に示す回転子における永久磁石が生成する磁力線の説明図である。 図1に示す回転子の組み立て方法を説明する説明図である。 図1に示す円環状の固定リングを分割した構成を示す正面図である。 本発明になるエレベータ用巻上機を使用した機械室レスエレベータの構成図である。 本発明の埋込磁石型電動機を使用したエレベータ用巻上機の第1の実施例を示す断面図である。 本発明の埋込磁石型電動機を使用したエレベータ用巻上機の第2の実施例を示す断面図である。 本発明の埋込磁石型電動機を使用したインホイールモータ装置の実施例を示す断面図である。
次に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
本発明の一実施例になる埋込磁石型電動機の回転子の構成を図1乃至図4を用いて説明する。
図1において、回転子は、磁性材料から形成され環状に配置された複数の磁極ピース1と、この磁極ピース1の隣り合う磁極ピースの間に配置された複数のセグメント磁石2を備えている。そして、これらの磁極ピース1とセグメント磁石2は組み合わされて円環状の磁極組立体3として構成されている。
磁極組立体3は回転中心軸4と直交する平面上にあって、回転中心軸4と同心である円周上に位置する円環状領域に磁極ピース1とセグメント磁石2が交互に環状に配置されている。それぞれのセグメント磁石2は、自身の磁力、接着剤、磁極ピース1間への圧入、後述する固定リングによる拘束等の固定手段を用いて磁極ピース1と相互に固定されている。本実施例ではこれらの固定手段を単一で用いるか、或いは組み合わせて用いるか任意である。磁極ピース1とセグメント磁石2とが相互に強固に固定されていれば良いものである。
また、セグメント磁石2の磁極は夫々のセグメント磁石2の配置方向に沿って着磁されている。そして、隣接するセグメント磁石2では互いのS極、もしくはN極が向かい合っている。つまり、セグメント磁石2の磁極の配置は、周方向に…[N-S][S-N][N-S][S-N]…の順序で配置されている。
更に、磁極組立体3の軸方向の両側の側面には、非磁性金属材料からなる円環状の固定リング5が配置されている。この固定リング5は、夫々の磁極ピース1とセグメント磁石2を一体的に結合、保持するための機能を有している。非磁性金属材料としては、強度が大きく靱性に富むステンレス鋼が使用されている。
また、固定リング5は、回転中心軸4と直交する平面に投影したとき、磁極組立体3と重なり、更に磁極ピース1及びセグメント磁石2の半径方向の長さL1に対して、固定リング5の半径方向の長さL2の方が短く形成されている。固定リング5の機能は、基本的には磁極ピース1とセグメント磁石2を挟み込んで一体的に結合するものである。
磁極組立体3の両側に配置された固定リング5は、図示しない連結ロッドとナットによって固定部6で磁極ピース1を挟むように固定されている。固定部6の具体的な構成は後述するが、固定部6は磁極ピース1に等角度毎に複数個所に設けられている。本実施例では磁極ピース1の1個を挟んで8か所の固定部6が設けられている。
このようにして、複数の磁極ピース1、複数のセグメント磁石2が1対の円環状の固定リング5によって一体化されて回転子組立体7を形成している。上述した通り、固定リング5は、回転中心軸4と直交する平面に投影したとき、磁極組立体3と重なる。
このため、例えば、特許文献2にあるような従来の保持板では、磁極組立体3の側面の全体をすべて覆う形状であったが、本実施例で使用する固定リング5は、磁極組立体3の磁極ピース1及びセグメント磁石2が存在する領域内にだけ存在するため、ステンレス鋼のような価格の高い材料の使用量を低減することができるものである。また、円板ではなく、円環状の固定リング5としているため、その重量も低減できるものである。
上述した回転子組立体7は、被回転部材8と連結され、被回転部材8から回転出力として外部に出力されるものである。被回転部材8は回転子組立体7の回転によって回転されることを意味し、被回転部材8は自身で回転出力を出力しても良いが、被回転部材8の回転中心軸4に回転軸を設けて出力するようにしても良いものである。尚、回転子組立体7の内側の円形状の空間には、種々の機構部を収納することができるので、この電動機を組み込んだ駆動機器の軸方向長さを短縮することができる。
次に、回転子組立体7と被回転部材8を連結する構成について、図2、図3を用いて説明する。図2において、一対の固定リング5には挿通孔5Aが形成され、磁極ピース1にも挿通孔1Aが形成され、更に被回転部材8に固定孔8Aが形成されている。これらの挿通孔5A、挿通孔1A、固定孔8Aは、回転子組立体7を被回転部材8に組み込んだ時にそれぞれの中心がほぼ一致する寸法に決められている。
したがって、被回転部材8の固定孔8Aに連結部材である棒状の連結ロッド9を固定し、この状態で回転子組立体7の被回転部材8側の固定リング5の挿通孔5A、磁極ピース1の挿通孔1A及び被回転部材8とは反対側の固定リング5の挿通孔5Aを連結ロッド9に挿通し、連結ロッド9の先端をナット締めすれば被回転部材8と回転子組立体7が強固に連結されるものとなる。このように、磁極ピース1を固定するためには、単に磁極ピース1に挿通孔1Aを設け、これに連結ロッド9を通して固定するだけなので、磁極ピース1の加工に高い精度がさほど必要なく、加工費が増加するのを抑制することができる。
図3を用いて更に詳細に説明すると、被回転部材8に設けた固定孔8Aは内部にネジ溝が切ってあり、このネジ溝に連結ロッド9の根本側に切られたネジを螺合させて、連結ロッド9を被回転部材8に植立、固定する。被回転部材8と被回転部材8側の固定リング5との間には所定の長さの空間Gを形成するための大径段部9Aが形成されている。空間Gは空気層であるため磁気抵抗が大きく、磁極ピース1の側面から漏れ出る漏洩磁束を低減できる。このため、特許文献2にあるような非磁性体の円板状の保持板を用いる必要がなくなり、ステンレス鋼のような価格の高い非磁性金属材料の使用量を低減することができるものである。
そして、この大径段部9Aを介して連結ロッド9が固定リング5、磁極ピース1及び固定リングの挿通孔1A、5Aを挿通している。連結ロッド9の先端側にもネジが切られており、このネジ部分にナット10が螺合されて、固定リング5、磁極ピース9が大径段部9A側に寄せられている。そして、大径段部9Aとナット10の間で一対の固定リング5で磁極ピース1を挟み込んで固定している。この連結ロッド9は図1にあるように固定部6に対応しており、複数の連結ロッド9によって回転子組立体7の回転が被回転部材8に伝達されるものである。
図4に固定子と回転子の間を部分的に拡大した図を示している。固定子側の固定子鉄心11a、11bには図示しないコイルが巻回されており、固定子鉄心11a、11bは回転子組立体7の磁極ピース1a、1b、1c及びセグメント磁石2a、2bと所定の空隙を介して対向している。固定子鉄心11a、11bと磁極ピース1a、1b、1cの間の空隙はエアギャップ12と呼ばれている。
図4において、1つのセグメント磁石2aのN極から出た外周側磁力線13aと内周側磁力線14aは、このN極が接している磁極ピース1aに入る。一方、この磁極ピース1aは隣のセグメント磁石2bのN極からの外周側磁力線13bと内周側磁力線14bも入ってきている。したがって、両者が反発しあって、外周側磁力線13a、13bは磁極ピース1aの外周表面から出て行く。同様に内周側磁力線14a、14bは磁極ピース1aの内周表面から出て行くが、内周面は空気層だけであるため磁気抵抗が大きく、外周側磁力線13a、13b側に流れるようになる。
外周側磁力線13a、13bは固定子鉄心11a、11bが近くにあるので、多くの外周側磁力線13a、13bが磁気ピース1aの外周表面から出て、エアギャップ12を介して固定子鉄心11a、11bを経由して、隣の磁極ピース1b、1cの外周表面に入り、元のセグメント磁石2a、2bのS極へ入るものである。
同様に、磁極ピース1の側面も非磁性金属材料からなる固定リング5以外は空気層であるため、漏洩磁束の漏れ出しが抑制されて外周側磁力線13a、13b側に流れるようになる。
このように、本実施例の回転子組立体によれば、円環状の固定リングが固定されている両側面と、内周面の近傍に磁性体がなく空気層となっている。このため、これらの方向の磁気抵抗が大きくなり、電動機のトルクに寄与しない磁力線が無駄に漏洩しないので、セグメント磁石2の磁力を有効に利用できるようになる。
尚、回転子組立体が固定子組立体の外周側に位置する場合は、円環状の固定リングが固定されている両側面と、外周面の近傍に磁性体がなく空気層となる。このため、これらの方向の磁気抵抗が大きくなり、電動機のトルクに寄与しない磁力線が無駄に漏洩しないので、セグメント磁石2の磁力を有効に利用できるようになる。
以上述べた通り、本実施例によれば、磁極ピース1及びセグメント磁石2の半径方向長さより短い半径方向長さの固定リング5によって磁極ピース1や、セグメント磁石2を固定しているので、固定リング5の面積を少なくして使用する非磁性金属材料の使用量を少なくでき、材料費の増大を抑えることができる。
また、回転子組立体7の円環状の固定リングが固定されている両側面と、内周面或いは外周側の近傍に磁性体がなく空気層となっている。このため、これらの方向の磁気抵抗が大きくなり、電動機のトルクに寄与しない磁力線が無駄に漏洩しないので、セグメント磁石2の磁力を有効に利用できるようになる。
次に、回転子組立体の組立方法の一例を図5に基づき説明する。図5において、揃え治具20は、回転子組立体7の完成時の磁極ピース1の外径と等しい内径を有した円筒壁21と、この円筒壁21と直交する底面壁22とを備えた円筒形状に構成されている。
磁極ピース1と同数の押し治具23は、底面壁22に等角度間隔で放射状に配置された軌道24の上を中心側から外周側へ放射状に移動可能に構成されている。そして、それぞれの押し治具23はこの軌道24に対して対称な2つの案内面25を備えており、この2つの案内面25がなす角は、磁極ピース1のセグメント磁石2と接する2面のなす角よりも僅かに大きく設定されている。
そして、揃え治具20の内部に配置された複数の押し治具23に磁極ピース1を配置し、複数の押し治具23を軌道24に沿って外周側へ移動すると、それぞれの磁極ピース1は、対応する押し治具23に押されて、揃え治具20の円筒壁21に接するとともに、磁極ピース1のセグメント磁石2と接する2面の中央は等角度間隔で配置されることになる。
次に、磁極ピース1を配置した状態で、一方の固定リング5を磁極ピース1に局所的に加締め等の方法で固定することで、複数の磁極ピース1の外周径、角度間隔とも所望の値として固定リング5と磁極ピース1を仮り固定する。加締めの方法は、例えば夫々の磁極ピース1に凹部を形成しておき、この凹部に向けて固定リング5を押し金具で押し出すことで両者を固定することができる
そして、固定リング5を磁極ピース1に固定した後、押し治具23を揃え治具20の中心側へ移動させ、揃え治具20から仮り固定した固定リング5と磁極ピース1を取り外し、隣り合う磁極ピース1の間にセグメント磁石2を挿入してから、他方の固定リング5を上述した加締めによって磁極ピース1に固定することで、回転子組立体7が完成されるものである。
ここで、図6に示すように固定リング5を円周方向に複数に分割することも可能である。固定リング5を一体的に作成する場合は母材となる板金の無駄が多いが、図6に示すように、4分割された固定リング15とすると板金の無駄を少なくすることができ、材料取りを向上することができる。尚、図6には直線状の分割線16の例を示したが、他の形状であっても同様である。
以上に例示した組立方法によれば、磁極ピース1や固定リング5の寸法公差によらず、磁極ピース1の外径と角度間隔を高精度で得ることができる。このようにして作られた回転子組立体7を図2、図3に示す方法で被回転部材8に組み込めば、回転子と被回転部材8を一体化できるものである。そして、この回転子組立体7を図示しない固定子組立体の内部に組み込むことによって埋込磁石型電動機が完成されるものでる。
尚、図2、図3に示す回転子組立体7と被回転部材8とを連結する連結ロッド9は、全ての磁極ピース1に設けて良く、これによれば固定リング5の必要とする強度を低減しても固定リング5と夫々の磁極ピース1を強固に連結できる。一方、所定の決められた磁極ピース1だけに連結ロッド9を設けることもでき、これによれば、組立工数を削減することができる。いずれの方法で回転子組立体7と被回転部材8を連結するかは任意であり、適切な方法で両者を連結すれば良いものである。
以上に説明した実施例では、回転子組立体7が固定子組立体の内周側にある、所謂、インナーロータ型の電動機について説明したが、回転子組立体7が固定子組立体の外周側にある、所謂、アウターロータ型の電動機についても適用できることは言うまでもない。この場合は、環状の回転子組立体の内周側に固定子組立体が配置される構造となる。
次に、上述した埋込磁石型電動機をエレベータの巻上機に適用した実施例を図7乃至図9に基づき説明する。尚、図8はインナーロータ型の電動機として巻上機に組み込んだものであり、図9はアウターロータ型の電動機として巻上機に組み込んだものである。
図7は機械室レスエレベータの概略を示しており、主ロープ30の両端30a、30bは昇降路の上端の天井付近に固定されている。主ロープ30の途中には乗客等を積載する乗りかご31が乗りかごプーリ31A等を介して懸架されており、また、乗りかご31と重量バランスを取るための釣り合い錘32も釣り合い錘プーリ32A等を介して懸架されている。
そして、主ロープの30の一部が巻上機34のシーブに巻き掛けられ、巻上機34を駆動することで乗りかご31を昇降させている。巻上機34は、図示しない運転制御器からの運転指令によって制御されており、エレベータホールからの呼び階信号や乗りかご31からの行先階信号に応じて運転制御器から運転指令を与えられるものである。
この巻上機34は、昇降路内の乗りかご31や釣合おもり32の昇降動作領域と干渉しない場所に、回転軸を水平にして設置されている。このため、水平方向の寸法、すなわち、電動機の幅厚を長くできないので、エアギャップ面の半径を大きくした上述した磁石埋込型電動機を用いて必要なトルクを得るようにしている。
次に、巻上機34の具体的な構成について説明する。図8はインナーロータ型の電動機として構成した巻上機34の断面を示している。尚、図8では本発明に関係する構成部分について示している。
図8において、主ロープ30はシーブ35の溝部36に巻き掛けられる。このシーブ35は、巻上機34に制動をかけるブレーキ装置のブレーキシューが押し当てられる制動面37と一体化されている。シーブ35と制動面37とは環状の被回転部材38によって結合されており、シーブ35と制動面37とは被回転部材38によって一体的な構成とされている。このため、シーブ35と被回転部材38及び制動面37とは、鍛造や切削等の加工によって一体的に形成するか、制動面37と被回転部材38を一体的に形成し、その後シーブ35にボルトによって固定して一体化することで製作できる。
被回転部材38の外周囲の一部には、図2、図3に示す連結ロッド9が植立して固定されており、これに回転子組立体7が固定されている。この回転子組立体7と被回転部材38の構成と固定構造は図1乃至図3に示したものと同様であるので説明は省略する。そして、被回転部材38と回転子組立体7とは連結ロッド9によって連結されているので、回転子組立体7の回転は被回転部材38を介してシーブ35に伝えられる。
シーブ35には主ロープ30が巻き掛けられており、この主ロープ30は乗りかご31と釣り合い錘32を懸架しているために大きな張力を受けている。このため、この荷重を受けるシーブ35、ブレーキの制動力を受ける制動面37、及びシーブ35と制動面37の間にある被回転部材38は高い剛性を有している。
特に、被回転部材38は上記した剛性の他に、回転子組立体7の回転を伝える機能を備えているため、板厚が厚く形成されている。したがって、この被回転部材38に連結ロッド9を固定するためのネジを充分切れる厚さを備えている。尚、更に厚さが必要な場合は、連結ロッド9のネジが切られる部分だけ板厚を厚く形成することも可能である。
シーブ35はベアリング39を介して回転支軸40に回転自在に支持されている。回転支軸40は本体ハウジング41と一体的に設けられており、本体ハウジング41から外側に延びた平板部42Aの外周端は被回転部材38側に折り曲げられており、この折り曲げ部分43Aの内周側に環状の固定子組立体44Aが固定されている。固定子組立体44Aは複数の固定子鉄心45Aと、これに巻回された複数のコイル46Aとより構成されている。したがって、環状の固定子組立体44Aの内周側に回転子組立体7が収納される構成となる。
以上において、固定子組立体44Aのコイル46Aにインバータ装置から電力が供給されると、回転子組立体7は回転を開始し、この回転は連結ロッド9によって被回転部材38に伝えられる。被回転部材38はシーブ35を回転させ、シーブ35の溝部36に巻き掛けられた主ロープ30を介して乗りかご31を昇降させるものである。
本実施例においては、上述した埋込磁石型電動機で得られる作用、効果に加えて巻上機に採用することによって次のような作用効果を新たに奏することができる。
被回転部材38と回転子組立体7を連結ロッド9で連結するだけなので部品点数を削減できる、構造を簡略化できるといった効果を奏することで、最終的に製品単価の上昇を抑えることができるようになる。
また、従来の巻上機の回転子組立体は、固定子組立体と対向する制動面の内側周面に固定されていたので、制動面の内側周面と回転子組立体の間に固定部材が必要となり、半径方向に大きくなる恐れがある。これに対して、本実施例では被回転部材の側面に固定しているため、半径方向に大型化することがないものである。
以上はインナーロータ型の巻上機であったが、次にアウターロータ型の巻上機について説明する。尚、同じ参照番号は同一の構成部品であるので説明は省略する。
回転支軸40は本体ハウジング41と一体的に設けられており、本体ハウジング41から外側に延びた平板部42Bの外周端は被回転部材38側に折り曲げられており、この折り曲げ部分43Bの外周側に環状の固定子組立体44Bが固定されている。固定子組立体44Bは複数の固定子鉄心45Bと、これに巻回された複数のコイル46Bとより構成されている。したがって、環状の固定子組立体44Bの外周側に回転子組立体7が配置される構成となる。
本体ハウジング41の平板部42Bは、折り曲げ部分43Bの更に外周側に向けて延びるカバー部47を形成している。カバー部47は固定子組立体44Bと回転子組立体7を外周囲から覆うものである。折り曲げ部分43Bとカバー部47で囲まれる空間は空気が循環しにくい構成あるため、制動面37とカバー部47との対向部の隙間48を大きくして空気が出入りしやすい構成とすることも可能である。
以上において、固定子組立体44Bのコイル46Bにインバータ装置から電力が供給されると、回転子組立体7は回転を開始し、この回転は連結ロッド9によって被回転部材38に伝えられる。被回転部材38はシーブ35を回転させ、シーブ35の溝部36に巻き掛けられた主ロープ30を介して乗りかご31を昇降させるものである。
本実施例になるアウターロータ型の巻上機についても、インナーロータ型の巻上機と同様の作用、効果を奏することができる。
次に、上述した埋込磁石型電動機をインホイールモータ装置に適用した実施例を図10に基づき説明する。
図10はインホイールモータ装置の断面を示す図である。インホイールモータ装置は、代表的には電気自動車に使用されるものであり、車軸に設けられるタイヤホイールの内部に電動機を配置し、電動機でタイヤホイールを回転して自動車を走行させるものである。本実施例ではこの電動機に図1乃至図3に示す電動機を適用したものである。
図10において、インホイールモータ装置50の車軸51は図示しない車体に取り付けられている。車軸51の途中には、外周方向に向けて延びる平板部52が設けられており、この平板部52の外周部は車軸51とは反対側に向けて折り曲げられている。この折り曲げ部分53の外周側に環状の固定子組立体54が固定されている。固定子組立体54は複数の固定子鉄心55と、これに巻回された複数のコイル56とより構成されている。
車軸51に先端にはベアリング57の内輪が固定され、外輪には円板状の被回転部材(ハブ)58が固定されている。被回転部材58の車軸51とは反対側にはホイール59が配置されており、ホイール59と被回転部材58とはボルト60によって連結されている。したがって、ホイール59と被回転部材58とは一体的に回転するものである。ホイール59の外周にはタイヤ61が固定されており、ホイール59の回転によってタイヤ61が回転されて自動車が走行されるようになるものである。
被回転部材58の外周囲の一部には図2、図3に示す連結ロッド9が植立して固定されており、これに回転子組立体7が固定されている。この回転子組立体7と被回転部材58の構成と固定構造は図1乃至図3に示したものと同様であるので説明は省略する。そして、被回転部材58と回転子組立体7とは連結ロッド9によって連結されているので、回転子組立体7の回転は被回転部材58を介してホイール59に伝えられる。
以上において、固定子組立体54のコイル56にインバータ装置から電力が供給されると、回転子組立体7は回転を開始し、この回転は連結ロッド9によって被回転部材58に伝えられる。被回転部材58はホイール59を回転させ、ホイール59に固定されたタイヤ61を回転して自動車を走行させるものである。
本実施例においては、上述した埋込磁石型電動機で得られる作用、効果に加えて、インホイールモータ装置に採用することによって次のような作用、効果を新たに奏することができる。被回転部材58の一方の面にホイール59の取り付け固定面が形成され、他方の面に回転子組立体7の取り付け固定面が形成されるので構成が簡単となる、部品点数を削減できる、構造を簡略化できるといった効果を奏することで、最終的に製品単価の上昇を抑えることができるようになる。
以上述べた通り、本発明になる埋込磁石型電動機は、環状に配置した複数の磁極ピースの隣り合う磁極ピースの間にセグメント磁石を夫々配置して磁極組立体を構成し、磁極組立体の両側の側面の磁極ピース及びセグメント磁石が位置する環状の領域に、磁極ピースの半径方向長さより短い半径方向長さを有する非磁性金属材料からなる円環状の固定リングを配置すると共に、非磁性金属材料からなる連結部材によって磁極ピースを挟み込んだ固定リングを所定の長さの空隙を介して被回転部材に連結した、構成としている。
これよれば、磁極ピース及びセグメント磁石の半径方向長さより短い半径方向長さの固定リングによって磁極ピースや、セグメント磁石を固定しているので、固定リングの面積を少なくして使用する非磁性金属材料の使用量を少なくでき、材料費の増大を抑えることができる。また、磁極ピースの側面側及び内周面或いは外周面が空気層であるため漏洩磁束を少なくでき、効率よくトルクを得ることができる。
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…磁極ピース、2…セグメント磁石、3…磁極組立体、4…回転中心軸、5…固定リング、6…固定部、7…回転子組立体、8…被回転部材、9…連結ロッド、9A…大径段部、10…ナット、11…固定子鉄心、35…シーブ、36…溝部、37…制動面、38…被回転部材、39…ベアリング、40…回転支軸、41…本体ハウジング、42…平板部、43A,43B…折り曲げ部分、44A、44B…44B固定子組立体、45A、45B…固定子鉄心、46A、46B…コイル。

Claims (10)

  1. 環状に配置した複数の磁極ピースの隣り合う前記磁極ピースの間にセグメント磁石を夫々配置して磁極組立体を構成し、前記磁極組立体と対向して配置された複数の固定鉄心とこれに巻回されたコイルからなる固定子組立体とを備えた埋込磁石型電動機において、
    前記磁極組立体の両側の側面の前記磁極ピース及び前記セグメント磁石が位置する環状領域に、前記磁極ピースの半径方向長さより短い半径方向長さを有する非磁性金属材料からなる円環状の固定リングを前記磁極ピースを挟み込むように配置すると共に、非磁性金属材料からなる連結部材によって前記磁極ピースを挟み込んだ前記固定リングを所定の長さの空隙を介して被回転部材に連結したことを特徴とする埋込磁石型電動機。
  2. 請求項1において、
    前記固定子組立体は環状に形成されており、前記環状の磁極組立体は前記固定子組立体の外周側、或いは内周側に所定のエアギャップを有して配置されていることを特徴とする埋込磁石型電動機。
  3. 請求項2において、
    前記磁極ピースと、前記磁極ピースを挟み込む前記固定リングには前記連結部材が挿通される挿通孔が形成されており、前記被回転部材に植立された前記連結材に前記挿通孔を通して前記磁極ピースと前記固定リングが前記連結部材に固定されていることを特徴とする埋込磁石型電動機。
  4. 請求項3において、
    前記連結部材は棒状であり、前記被回転部材と前記固定リングとの間に前記空隙を形成するための大径段部を有しており、前記大径段部側に前記固定リングと前記磁極ピースを寄せて固定することで前記空隙を形成することを特徴とする埋込磁石型電動機。
  5. 請求項3において、
    前記連結部材は、すべての前記磁極ピースと前記固定リングを固定するか、或いは前記磁極ピースの特定の磁極ピースと前記固定リングを固定することを特徴とする埋込磁石型電動機。
  6. 運転指令に基づき駆動される電動機と、前記電動機によって回転され乗りかごに連結された主ロープを巻き取るシーブと、前記シーブと被回転部材を介して一体的に構成された制動面を備えたエレベータ用巻上機において、
    前記電動機は、環状に配置した複数の磁極ピースの隣り合う前記磁極ピースの間にセグメント磁石を夫々配置して磁極組立体を構成し、前記磁極組立体と対向して配置された複数の固定鉄心とこれに巻回されたコイルからなる環状の固定子組立体とを備えた埋込磁石型電動機であって、
    前記磁極組立体の両側の側面の前記磁極ピース及び前記セグメント磁石が位置する環状領域に、前記磁極ピースの半径方向長さより短い半径方向長さを有する非磁性金属材料からなる円環状の固定リングを前記磁極ピースを挟み込むように配置すると共に、非磁性金属材料からなる連結部材によって前記磁極ピースを挟み込んだ前記固定リングを所定の長さの空隙を介して前記被回転部材に連結したことを特徴とするエレベータ用巻上機。
  7. 請求項6において、
    前記環状の磁極組立体は、前記固定子組立体の外周側、或いは内周側に所定のエアギャップを有して配置されていることを特徴とするエレベータ用巻上機。
  8. 請求項7において、
    前記磁極ピースと、前記磁極ピースを挟み込む前記固定リングには前記連結部材が挿通される挿通孔が形成されており、前記被回転部材に植立された前記連結材に前記挿通孔を通して前記磁極ピースと前記固定リングが前記連結部材に固定されていることを特徴とするエレベータ用巻上機。
  9. 一端が昇降路に固定された主ロープが通過する乗りかごプーリを備えた乗りかごと、他端が昇降路に固定された前記主ロープが通過する釣り合い錘プーリを備えた釣り合い錘と、前記釣り合い錘と前記乗りかごの間で前記主ロープが巻き掛けられたシーブ及びこのシーブを回転させる電動機より構成されたエレベータ用巻上機とを備えたエレベータにおいて、
    前記エレベータ用巻上機は、請求項6乃至請求項8の何れかに記載されたエレベータ用巻上機であることを特徴とするエレベータ。
  10. 外周にタイヤを固定したホイールを車軸に回転自在に設けると共に、前記ホイールの内部に電動機を配置し、前記電動機からの回転を被回転部材を介して前記ホイールに伝達して前記ホイールを回転することで前記タイヤを回転駆動させるインホイールモータ装置において、
    前記電動機は、環状に配置した複数の磁極ピースの隣り合う前記磁極ピースの間にセグメント磁石を夫々配置して磁極組立体を構成し、前記磁極組立体と対向して配置された複数の固定鉄心とこれに巻回されたコイルからなる固定子組立体とを備えた埋込磁石型電動機であって、
    前記磁極組立体の両側の側面の前記磁極ピース及び前記セグメント磁石が位置する環状領域に、前記磁極ピースの半径方向長さより短い半径方向長さを有する非磁性金属材料からなる円環状の固定リングを前記磁極ピースを挟み込むように配置すると共に、非磁性金属材料からなる連結部材によって前記磁極ピースを挟み込んだ前記固定リングを所定の長さの空隙を介して前記被回転部材に連結したことを特徴とするインホイールモータ装置。
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