JP2021141708A - 磁気減速機およびこの磁気減速機を備えた電機装置 - Google Patents

磁気減速機およびこの磁気減速機を備えた電機装置 Download PDF

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Abstract

【課題】長寿命化が実現された磁気減速機およびこの磁気減速機を備えた電機装置を提供する。【解決手段】磁気減速機100は、複数の磁極を周方向に有する、高速回転子51、低速回転子52、固定子53とを備え、高速回転子51、低速回転子52、固定子53がそれぞれ空隙を介して同軸上に配置され、高速回転子51は当該高速回転子51の外部から回転力が与えられ、高速回転子51および低速回転子52間の磁束が、固定子53により変調されて回転速度が変化されたトルクが低速回転子52に伝達され、低速回転子52は、回転電機30のシャフト25に接続されて、当該回転電機30の回転速度を調整するものである。【選択図】図1

Description

本願は、磁気減速機およびこの磁気減速機を備えた電機装置に関するものである。
従来より、モータ等の回転電機の回転を制動する磁気減速機として、以下のような構成のブレーキ装置が開示されている。
即ち、従来のブレーキ装置は、ブレーキディスクとサイドプレートとアーマチュアとを有する。ブレーキディスクは円板状のディスク部を備える。ブレーキディスクは貫通穴を備え、この貫通穴に回転電機のシャフトが取り付けられる。ブレーキ装置は、無励磁状態ではアーマチュアが反負荷側へ押圧されて移動すると共にアーマチュアが負荷側に移動する。これによりアーマチュアがブレーキディスクに摩擦係合するとともに、サイドプレートがブレーキディスクの摩擦板に摩擦係合する。この結果、ブレーキディスクに摩擦力が付与され回転電機のシャフトの回転が制動される(例えば、特許文献1参照)。
特開2017−79535号公報(段落[0043]〜[0046]、図1、図5)
上記従来のブレーキ装置では、回転を制動するためのブレーキ動作時において、動作している出力軸である回転電機の回転子に取り付けられたブレーキディスクに対し、サイドプレートとアーマチュアとを押し当てて摩擦係合させることでブレーキとして機能させている。しかしながら、このようなサイドプレートとアーマチュアとの摩擦係合による摩耗のため、ブレーキ装置の寿命が短くなってしまう場合があるという課題があった。
本願は、上記のような課題を解決するものであり、装置の長寿命化が実現された磁気減速機およびこの磁気減速機を備えた電機装置を提供することを目的とする。
本願に開示される磁気減速機は、
それぞれ周方向に複数の磁極を有する、第1回転子と、第2回転子と、第1固定子と、を備え、
前記第1回転子、前記第2回転子、前記第1固定子と、がそれぞれ空隙を介して同軸上に配置され、
前記第1回転子は該第1回転子の外部から回転力が与えられ、
前記第1回転子および前記第2回転子間の磁束が、前記第1固定子により変調されて回転速度が変化されたトルクが前記第2回転子に伝達され、
前記第2回転子は、第1回転体の回転軸に接続されて、該第1回転体の回転速度を調整する、
ものである。
また、本願に開示される電機装置は、
上記のように構成された磁気減速機と、
前記磁気減速機が回転軸に取り付けられた前記第1回転体および該第1回転体と同軸上に配置された第2固定子を備えた回転電機と、を備える、
ものである。
本願に開示される磁気減速機およびこの磁気減速機を備えた電機装置によれば、装置の長寿命化が実現された磁気減速機およびこの磁気減速機を備えた電機装置が得られる。
実施の形態1による磁気減速機と、この磁気減速機が取り付けられる回転電機とを備えた電機装置の概略構成を示す断面図である。 実施の形態1による磁気減速機を拡大して示す断面図である。 実施の形態1による磁気減速部の軸方向に垂直な断面図である。 実施の形態1による回転電機の斜視図である。 実施の形態1による回転電機を軸方向に垂直な方向から見た上面図である。 実施の形態1による回転電機にフレームを取り付けた状態を示す上面図である。 比較例のブレーキ部と、このブレーキ部が取り付けられる回転電機とを備えた比較例の電機装置の概略構成を示す断面図である。 実施の形態1による磁気減速機と、この磁気減速機が取り付けられる回転電機としての巻上機とを備えた電機装置の概略構成を示す断面図である。 比較例の電機装置の軸方向に垂直な方向からの概略構成を示す断面図である。 比較例の電機装置の軸方向に平行な方向からの概略構成を示す断面図である。 実施の形態2による磁気減速機と、この磁気減速機が取り付けられる回転電機とを備えた電機装置の概略構成を示す断面図である。 実施の形態2による磁気減速機を拡大して示す断面図である。 実施の形態2による磁気減速機の軸方向に垂直な断面図である。 実施の形態3による磁気減速機と、この磁気減速機が取り付けられる回転電機とを備えた電機装置の概略構成を示す断面図である。 実施の形態3による磁気減速機を拡大して示す断面図である。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による磁気減速機60と、この磁気減速機60が取り付けられる回転電機30とを備えた電機装置100の概略構成を示す断面図である。
図2は、図1に示す磁気減速機60を拡大して示す断面図である。
図3は、図1に示す磁気減速機60が有する磁気減速部50の、軸方向に垂直な断面図である。
図4は、図1に示す回転電機30の斜視図である。
図5は、図1に示す回転電機30を、軸方向に垂直な方向から見た上面図である。
図6は、図5に示す回転電機30にフレーム32を取り付けた状態を示す上面図である。
図1に示すように電機装置100は、モータ等の回転電機30と、この回転電機30の回転軸であるシャフト25に接続される磁気減速機60とを備える磁気減速機付き回転電機である。磁気減速機60は、回転電機30を駆動させる必要がある際には動作せず、回転電機30にブレーキを付加する必要がある場合に動作し、回転電機30の回転を制動する。
なお、以下に用いる図において、詳細を後述する磁気減速機60の回転子における各方向を、周方向Z、径方向X、径方向内側X1、径方向外側X2、磁気減速機60の回転子の回転軸の軸心方向を軸方向Yとし、他の図も当該方向を基準としてそれぞれを示す。
先ず、回転を制動される回転電機30の構成について説明する。
図4〜図6に示すように、回転電機30は、第1回転体としての回転子20と、この回転子20と同軸に、設定された空隙Ga1を隔てて径方向外側X2に配置される第2固定子としての固定子10とを備える。
固定子10は、固定子鉄心1とコイル3とを有する。固定子鉄心1は、複数の磁極片2を周方向Zに複数個、環状に組み立てて構成される。各磁極片2は、薄板状の電磁鋼板を軸方向Yに複数枚積層して構成されたものであり、周方向Zに延在するヨーク部としてのバックヨーク部2bと、このバックヨーク部2bから径方向内側X1に突出するティース部2tとを有する。各ティース部2tに巻線(マグネットワイヤ)が巻回されてコイル3が形成される。各磁極片2は、その径方向外側X2の外周面が図6に示すフレーム32にそれぞれ焼嵌めされて、環状に固定される。
なお、固定子鉄心1は、上記のように各磁極片2により周方向Zに複数に分割される構成であるが、その分割数は問わない。あるいは固定子鉄心1は、複数に分割されない一円形状の構成でもよい。回転子20は、永久磁石、誘導機のように銅やアルミを鋳込んだ状態であるかは問わない。また、8極48スロットの永久磁石型の回転電機について説明するが、回転電機の極数およびスロット数は適宜増減可能である。
また、本実施の形態では永久磁石を回転子鉄心の中に埋め込んだInterior Permanent Magnet式の回転子を採用しているが、回転子鉄心の外周面に永久磁石を配置するSurface Permanent Magnet式を使用しても良い。
また、各磁極片2は薄板状の電磁鋼板を複数枚積層する構成に限らず、一体に作られた塊状のものでもよい。また、固定子鉄心1におけるコイル3は、分布巻き、集中巻きのどちらでも良い。また、各磁極片2をフレーム32に焼嵌めすることで環状に固定する例を記載したが、各磁極片2をフレーム32に圧入することで環状に固定してもよいし、磁極片2間を溶接することで環状に固定してもよい。
図5、図6に示すように、回転電機30の回転子20は、回転子鉄心21と永久磁石22とを備える永久磁石型回転子である。回転子鉄心21は軸心位置にシャフト穴21hが設けられる。このシャフト穴21hにシャフト25が挿通され、例えば焼き嵌め、圧入等でシャフト25と回転子鉄心21とが固定される。これにより回転子20は、シャフト25の軸心C3を中心に回転可能に支持される。
次に、磁気減速機60の構成について説明する。
図1、図2に示すように磁気減速機60は、磁気減速部50と、この磁気減速部50を駆動するための駆動用回転電機40とを備える。
駆動用回転電機40は、第2回転体としての回転子41と、この回転子41の径方向外側X2に配置される固定子42とを備える。回転子41は、回転軸としてのシャフト43に固定され、このシャフト43の軸心C1を中心に回転可能に支持される。
磁気減速部50は、第1回転子としての高速回転子51と、第2回転子としての低速回転子52と、第1固定子としての固定子53とを備える。そして、図3に示すように、径方向内側X1から順番に、高速回転子51、低速回転子52、固定子53が、同軸上に並んで配置される。高速回転子51と低速回転子52との間に、空隙であるエアギャップGa2を有する。また低速回転子52と固定子53との間に、空隙であるエアギャップGa3を有する。固定子53の径方向外側X2の外周面には、第1フレームとしてのフレーム55が固定されている。
高速回転子51は、軸心C2の位置にシャフト穴51hが設けられ、このシャフト穴51hにシャフト54が挿通されて固定される。これにより、高速回転子51は軸心C2を中心に回転可能に支持される。
シャフト54は、図1に示すように、その軸心C2が、前述の駆動用回転電機40のシャフト43の軸心C1と同心となるようにシャフト43と直列に接続される。こうして、駆動用回転電機40の回転力がシャフト43、54を介して高速回転子51に与えられることが可能となる。
なお、高速回転子51は高速で回転するため、駆動用回転電機40には小型の回転電機を使用する。
低速回転子52は、図1に示すように、回転電機30側の軸方向端部において、軸方向Yに突出する端部接続部52Cを有する。そして、この端部接続部52Cの軸心、即ち、低速回転子52の軸心C2が、回転電機30のシャフト25の軸心C3と同軸となるようにカップリング部31を介してシャフト25と直列に接続される。こうして、低速回転子52のトルクを回転電機30の回転子20に伝達させることが可能な構成となる。
また、磁気減速部50の固定子53を保持するフレーム55は、軸方向Yの回転電機30側の端部において、径方向外側X2に環状に延出する鍔状の保持部55fを備える。この保持部55fは、第2フレームとしての回転電機30のフレーム6の内周面6inに当接し、回転電機30側に向かって軸方向Yに延出する突出部55ftを備える。
この突出部55ftは、フレーム6の周方向Zに沿って少なくとも3箇所以上備えられており、回転電機30側のフレーム6と磁気減速機60側のフレーム55との径方向Xに対する位置ずれが防止される。こうして、回転電機30、磁気減速機60間における軸心C3と軸心C2との同心が確保される。
また、高速回転子51および固定子53は、周方向Zに、設定された隙間を隔てて複数個設けられる磁石51M、53Mを備え、磁性を発生させる。また、低速回転子52は、例えば電磁鋼板、圧粉鉄心等の軟磁性材料から成る、磁性体片としての磁性体52Mを周方向Zに、設定された隙間を隔てて複数個備える。こうして、高速回転子51、低速回転子52、固定子53は、磁石51M、磁性体52M、磁石53Mにより周方向Zに複数の磁極が構成される。
なお、保持部55fの突出部55ftは、フレーム6の周方向Zに沿って少なくとも3箇所以上備えられる構成を示したが、フレーム6の周方向Zに沿って延在する構成でもよい。
以下、磁気減速機60による、回転電機30の回転の制動原理について説明する。
回転電機30の回転を制動する際は、先ず、駆動用回転電機40により高速回転子51に回転力を与え、高速回転子51を設定された回転速度で回転させる。高速回転子51の磁極と低速回転子52の磁極との間の磁束は、固定子53の磁極により変調され、回転速度が変化されたトルクが低速回転子52に伝達される。低速回転子52は、高速回転子51の回転速度に対し、設定された減速比Gでの回転速度で回転する。
この減速比Gは、高速回転子51の極数Nhと、低速回転子52の磁性体52Mの個数Nlとで決定され、G=2Nl/Nhと表される。
またこれらの、高速回転子51の極数Nh、低速回転子52の磁性体52Mの個数Nl、駆動用回転電機40により高速回転子51に与えられる回転方向、低速回転子52の磁性体52M間の隙間S1、はそれぞれ、制動対象の回転電機30の回転子20の回転方向に対して逆回転方向のトルクを生じさせるように決定されている。
本実施の形態の磁気減速部50では、減速比G=6(Nl=12、Nh=4)であり、固定子56の極数Nsは、28個(Ns=2(Nl±Nh/2))となっている。
このように、磁気減速機60は、駆動用回転電機40により与えられた回転速度で回転する高速回転子51に対し、低速回転子52を設定された減速比Gでの回転速度で回転させる。そして低速回転子52において、制動対象の回転電機30の回転子20の正回転方向に対して逆回転方向となる大きな逆トルクを生じさせることで、磁気減速機60は回転電機30の回転を制動するブレーキとしての機能を果たす。
なお、低速回転子52の回転方向は、回転の制動対象である回転子20の回転方向の逆方向に限定されるものではない。上記の高速回転子51の極数Nh、低速回転子52の磁性体52Mの個数Nl、高速回転子51に与えられる回転方向、低速回転子52の磁性体52M間の隙間S1、がそれぞれ調整されて、制動対象の回転子20の回転方向に対する逆トルクを生じさせられるのであれば、低速回転子52は、回転子20の回転方向と同方向に回転してもよい。
以下、比較例の電機装置100refを用いて、本実施の形態の電機装置100の効果について説明する。
図7は、比較例の磁気減速機60r1と、この磁気減速機60r1が取り付けられる回転電機30とを備えた比較例の電機装置100refの概略構成を示す断面図である。
この比較例の電機装置100refの要部として、回転電機30のシャフト25に取り付けられるプレート61r1がある。磁気減速機60r1が動作している場合、磁気減速機60r1が有するブレーキユニット62rに備え付けられているブレーキプレート61r2は、バネ63のバネ圧で図中矢印にて示すP1方向に移動する。そして、このブレーキプレート61r2が、回転しているプレート61r1に接触してプレート61r1を押し付ける。これにより、回転電機30の回転が制動され、磁気減速機60r1はブレーキとしての機能を果たす。
回転電機30を再び動作させる場合は、磁気減速機60r1に巻回してある図示しないマグネットワイヤに電流を流すと、その際に発生する磁気吸引力がバネ63のバネ荷重よりも大きくなる。そしてプレート61r1に接触していたブレーキプレート61r2が解放され、回転電機30の回転子が動作する構造である。一方で、この比較例の電機装置100refでは、回転電機30のプレート61r1にブレーキプレート61r2を押し付けて回転電機30の回転子を停止させる構造であることから、プレート61r1及びブレーキプレート61r2が摩擦により消耗する可能性がある。またプレート61r1とブレーキプレート61r2との接触による音、振動が生じ、製品の使用環境が限定される場合がある。
これに対して、本実施の形態の磁気減速機60および電機装置100では、出力軸である回転電機30のシャフト25に対して、磁気減速機60により非接触で逆トルクを負荷できることから、摩耗による装置部品の損傷を防止できる。
以下、エレベータ等のワイヤーロープを巻き上げる巻上機30aの駆動モータに対して本実施の形態の磁気減速機60を適用させた構成例を図を用いて説明する。
図8は、実施の形態1による磁気減速機60と、この磁気減速機60が取り付けられる回転電機としての巻上機30aとを備えた電機装置100aの概略構成を示す断面図である。
図8に示すように、低速回転子52の軸心C2は、巻上機30aの駆動モータのシャフト25の軸心C3と同軸となるようにカップリング部31を介してシャフト25に接続される。このように、エレベータ等の巻上機30aの駆動モータのような、回転の制動に大きなトルクが必要となる場合においても、本実施の形態の磁気減速機60を適用させ、駆動モータの回転方向に対して逆回転方向となる大きな逆トルクを負荷させて、巻上機30aを停止させることが可能である。
以下、この本実施の形態の電機装置100aの効果について、比較例の電機装置を用いて説明する。
図9は、巻上機30aに対して比較例の磁気減速機60r2を取り付けた場合の、比較例の電機装置における軸方向に垂直な方向からの概略構成を示す断面図である。
図10は、巻上機30aに対して、図9の磁気減速機60r2と異なる構成の比較例の磁気減速機60r3を取り付けた場合の、比較例の電機装置における軸方向に平行な方向の概略構成を示す断面図である。
図9に示す比較例の磁気減速機60r2は、巻上機30aの回転子20aの径方向外側X2に配置され、図中矢印P2で示す方向に移動可能なブレーキプレート61r3を備える。そして、磁気減速機60r2は、巻上機30aの回転の制動時には、このブレーキプレート61r3を、巻上機30aの回転子20aの径方向外側X2の外周面に対して押し付けて巻上機30aの回転を制動する。
また、図10に示す比較例の磁気減速機60r3では、巻上機30aの回転子20aの径方向内側X1に配置され、図中矢印P3で示す方向に移動可能なブレーキプレート61r4を備える。そして、磁気減速機60r3は、巻上機30aの回転の制動時には、このブレーキプレート61r4を、巻上機30aの回転子20aの径方向内側X1の内周面に対して押し付けて巻上機30aの回転を制動する。
上記のように、比較例の磁気減速機60r2、60r3のブレーキ構造は、図9に示したように回転子20aの径方向外側X2からブレーキプレート61r3を押し付けて止める場合と、図10に示したように回転子20aの径方向内側X1からブレーキプレート61r4を押し付ける場合とがある。双方のブレーキ構造は、ブレーキプレート61r3、61r4と、回転子20aとの接触による摩擦力により、回転子20aを静止もしくは減速させている。
特に、エレベータ等のワイヤーロープを巻き上げる巻上機30aでは、信頼性が高い運転を確保するために上記摩擦力を一定にする必要がある。そのため、比較例の磁気減速機60r2、60r3では、製造する際においてブレーキプレート61r3、61r4の押し当て面の面粗度等を細かく調整する必要があり、精密な部品精度が要求される。そのため、組立に多くの工数、時間を要している。
前述のように、本実施の形態の磁気減速機60および電機装置100aでは、巻上機30aの回転子20aに取り付けた磁気減速機60により、回転子20aに対してその正回転方向と逆回転方向となる大きな逆トルクを付与できる。そのため、巻上機30aの回転子20aと直結させているカップリング部31の強度を保持できれば、高い信頼性が要求されるエレベータの巻上機に用いられる場合でも十分なブレーキ機能を確保できる。
こうして、ブレーキプレートの押し当て面の面粗度等の細かな調整を不要として、電機装置の組立に要する加工時間を短縮することが可能となる。更に、部品交換は、巻上機の回転子と磁気減速機の低速回転子とを直結させているカップリング部のみを交換すればよく、メンテナンス費用を抑制できる。
上記のように構成された本実施の形態の磁気減速機は、
それぞれ周方向に複数の磁極を有する、第1回転子と、第2回転子と、第1固定子と、を備え、
前記第1回転子、前記第2回転子、前記第1固定子と、がそれぞれ空隙を介して同軸上に配置され、
前記第1回転子は該第1回転子の外部から回転力が与えられ、
前記第1回転子および前記第2回転子間の磁束が、前記第1固定子により変調されて回転速度が変化されたトルクが前記第2回転子に伝達され、
前記第2回転子は、第1回転体の回転軸に接続されて、該第1回転体の回転速度を調整する、
ものである。
また、上記のように構成された本実施の形態の電機装置は、
上記のように構成された磁気減速機と、
前記磁気減速機が回転軸に取り付けられた前記第1回転体および該第1回転体と同軸上に配置された第2固定子を備えた回転電機と、を備えた、
ものである。
このように磁気減速機は、高速回転子に回転力を与えて回転させて、回転速度が変化されたトルクを低速回転子に対して伝達させる構成である。更に低速回転子は、回転電機の回転軸に接続される構成である。こうして、磁気減速機の低速回転子により回転電機の回転速度が調整可能であり、回転速度が変化されたトルクを非接触で回転電機の回転子に伝達させ、回転電機の回転の制動を行える。
また、ブレーキプレート等を用いた物理的な接触による摩擦により回転電機を停止させる構成では、ブレーキプレートの表面状態が使用するごとに摩耗し、摩擦力が低下する。
これに対して、本実施の形態の磁気減速機および電機装置では、制動対象の回転電機の回転子に対して、磁気減速機により非接触で逆トルクを負荷できることから、摩耗による装置部品の損傷を防止できる。これにより、長期に渡って信頼性が高く、安定したブレーキ機能が確保された、長寿命の磁気減速機およびこの磁気減速機を備えた電機装置を提供できる。
また、装置部品の損傷がないことからメンテナンス費用を抑制することが可能であり、磁気減速機および電機装置の低コスト化が図れる。更に、ブレーキプレート等の摩擦がないため、振動、騒音を抑制できる。
また、上記のように構成された本実施の形態の磁気減速機は、
前記第1回転子の回転速度に対して前記第2回転子が設定された減速比での回転速度で回転し、且つ、前記第2回転子が、前記第1回転体の正回転方向に対して逆回転方向の逆トルクを前記第1回転体に付与するように、前記第1回転子の極数、前記第2回転子の磁極を構成する磁性体片の数、前記第1回転子に与えられる回転方向、がそれぞれ決定される、
ものである。
また、上記のように構成された本実施の形態の磁気減速機は、
前記第1固定子の極数、前記第1回転子の極数、前記第2回転子の磁極を構成する磁性体片の数が、以下関係式を満たすように構成される、
Ns=2(N1±Nh/2)
但し、Nsは前記第1固定子の極数、Nhは前記第1回転子の前記極数、N1は前記第2回転子の磁極を構成する磁性体片の数を示す、
ものである。
このように、回転電機の回転子の正回転方向に対して逆回転方向の逆トルクが回転子に付与されるように上記各条件が設定される。こうして、迅速且つ確実に、回転電機の回転子の回転を制動して回転電機を停止できる。
また、高速回転子の回転速度に対して低速回転子が設定された減速比での回転速度で回転するように上記各条件が設定される。よって、ブレーキとして機能する上記減速比を大きく調整することで回転電機を停止させるトルクを大きくすることが可能となる。そのため、様々な仕様の回転電機に対しても、磁性体の個数等、上記各条件を変更することのみで、大きな仕様変更を不要として、本実施の形態の磁気減速機を適用できる。
また、上記のように構成された本実施の形態の磁気減速機は、
前記第1回転子は、該第1回転子に接続される第2回転体により前記回転力が与えられる、
ものである。
このように、駆動用回転電機により高速回転子の回転速度を変化させて、駆動用回転電機による回転電機の回転の制動調整が可能となる。
また、上記のように構成された本実施の形態の電機装置は、
前記第1回転体は、巻上機用の駆動モータである、
ものである。
前述のように、本実施の形態の電機装置は、巻上機の回転子に対してその正回転方向と逆回転方向となる大きな逆トルクを付与できる。そのため、高い信頼性が要求されるエレベータの巻上機に用いられる場合でも、十分なブレーキ機能を確保できる。
更に、出力軸である巻上機の回転電機のシャフトに対して非接触で逆トルクを付与できるため、摩耗による損傷を防止できる。また、ブレーキプレート等の摩擦力により巻上機を停止させる構成ではないため、ブレーキプレートの押し当て面の面粗度等の細かな調整を不要として、加工時間の短縮、加工工程の削減を図れる。
また、上記のように構成された本実施の形態の電機装置は、
前記第1回転体の回転軸の軸心と、該第2回転子の軸心とを同心に位置決めして保持する保持部を備える、
ものである。
このように、回転電機の回転軸の軸心と、低速回転子の軸心とを同心に位置決めする保持部を備えることにより、信頼性の高い回転電機の回転の制動が行える。
また、上記のように構成された本実施の形態の電機装置は、
前記第1固定子を支持する第1フレームと、
前記第2固定子を支持する第2フレームとを備え、
前記保持部は、
前記第1フレームに形成され、前記第2フレームの径方向内側の内周面に当接し、前記第1回転体の回転軸の方向に延在する突出部を、該第2固定子の円周方向に沿って少なくとも3箇所以上備える、
ものである。
このように、保持部は、回転電機のフレームの径方向内側の内周面に当接して軸方向に延在する突出部を、円周方向に沿って少なくとも3箇所以上備える。これにより、回転電機のフレームと磁気減速機のフレームとの位置ずれが防止でき、回転電機の回転軸の軸心と、低速回転子の軸心とを確実に同心に位置決めできる。こうして、信頼性の高い回転電機の回転の制動が行える。
また、保持部は、組み立て後の完成品の回転電機のフレームと、磁気減速機のみで減速機構(固定子、低速ローター、高速ローター)が成立している組み立て後の完成品の磁気減速機のフレームとを同軸に位置決めして保持する構成である。そのため、完成品の回転電機に対して、磁気減速機を後付けで取り付けられる。こうして、回転電機の組み立て時において磁気減速機を組み付けておく必要がなく、磁気減速機を容易に後付けで取り付けられる。
実施の形態2.
以下、本願の実施の形態2を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図11は、実施の形態2による磁気減速機260と、この磁気減速機260が取り付けられる回転電機30とを備えた電機装置200の概略構成を示す断面図である。
図12は、図11に示す磁気減速機260を拡大して示す断面図である。
図13は、図11に示す磁気減速機260が有する磁気減速部250の、軸方向に垂直な断面図である。
本実施の形態における電機装置200の実施の形態1からの違いとして、固定子253の固定子鉄心は、周方向に延在するヨーク部253bと、このヨーク部253bから径方向内側X1に突出し、巻線が巻回される複数のティース部253tとを有する。そして、各ティース部253tに巻線(マグネットワイヤ)が巻回されてコイル253Mが形成される。こうして、各ティース部253tのコイル253Mに電圧を印加して通電させることにより、高速回転子51に回転磁界が供給され、高速回転子51に回転力が与えられる。こうして、制動対象の回転電機30の回転子20の回転方向に対して逆回転方向のトルクを生じさせる構成である。
上記のように構成された本実施の形態の磁気減速機は、
前記第1固定子は、
周方向に延在するヨーク部と、
該ヨーク部から径方向内側に突出し、巻線が巻回される複数のティース部と、を有し、
各前記ティース部の前記巻線を通電させることにより、前記第1回転子に回転磁界が供給されて前記第1回転子に前記回転力が与えられる、
ものである。
このように本実施の形態1では、磁気減速機の固定子から、高速回転子に対して回転磁界を供給し高速回転子を回転させるため、外部の駆動用回転電機を不要とできる。これにより、磁気減速機および電機装置の小型軽量化が可能となる。
実施の形態3.
以下、本願の実施の形態3を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図14は、実施の形態1による磁気減速機360と、この磁気減速機360が取り付けられる回転電機30とを備えた電機装置300の概略構成を示す断面図である。
本実施の形態の磁気減速機360として、アキシャル型磁気減速機を用いる。
図14を用いてアキシャル型磁気減速機の構造を説明する。
図14に示すように、磁気減速機360の磁気減速部350は、軸方向Yの回転電機30側から順番に、高速回転子351、低速回転子352、固定子353が、同軸上に、軸方向Yに対して空隙Ga4、Ga5を介して対抗するように並んで配置されている。
低速回転子352は、シャフト54に取り付けられており、このシャフト54の軸心C2が、回転電機30のシャフト25の軸心C3と同軸となるようにカップリング部31を介してシャフト25と直列に接続される。こうして、低速回転子352のトルクを回転電機30に伝達させることが可能な構成となっている。
なお、図14では、低速回転子352が固定子353と対抗するように配設される例を示したが、高速回転子351が固定子353と対抗するように配設される構成でも良い。
高速回転子351は、シャフト54とフレーム55とに対し、軸受356を介した状態で組み立てられている。低速回転子352は、シャフト54に対し、圧入等、接触させた状態で組み立てられている。固定子353は、シャフト54に対し、軸受356を介した状態取り付けられており、その径方向外側X2の外周面側はフレーム55と接触されている。固定子353とフレーム55との固定は圧入、焼嵌め、接着剤等での固定があるが方法は問わない。
また、これらの高速回転子351、低速回転子352、固定子353は、実施の形態1に示した高速回転子51、低速回転子52、固定子53と同様に、磁石51M、磁性体52M、磁石53M(図示せず)を周方向Zに、設定された隙間を隔てて複数個備える。
磁気減速機360が駆動していない場合は、磁気減速機360の低速回転子352が回転電機30の回転子20に追従して作動する。回転電機30を停止させる場合に、磁気減速機360を起動させる。その場合、高速回転子351から磁性体52Mを介して低速回転子352に磁力が印加される。その際に磁気減速機360の低速回転子352が回転電機30の回転方向とは逆回転方向となる逆トルクを生じさせ、回転電機30の回転子20を停止させる。
上記のように構成された本実施の形態の磁気減速機は、
前記第1回転子と前記第2回転子とは、該第1回転子および該第2回転子の軸方向に対して空隙を介して互いに対抗するように配設され、
前記第1回転子または前記第2回転子の一方が、前記軸方向に対して空隙を介して前記第1固定子と対抗するように配設される、
ものである。
このように、磁気減速機として、高速回転子と低速回転子とが軸方向に空隙を介して対抗して配設され、更に、これら高速回転子または低速回転子の一方が固定子に対して軸方向に空隙を介して対抗するように配設されるアキシャル型磁気減速機を用いた場合でも、実施の形態1と同様の効果を奏し、出力軸である回転電機30のシャフト25に対して非接触で逆トルクを負荷できる。これにより、磁気減速機および電機装置の摩耗による損傷を防止できる。
さらに、アキシャル型の磁気減速機を使用することで、磁気減速機360の磁気減速部350の外径および軸方向Yの長さを抑制することが可能で、小型、軽量化することが可能となる。こうして、装置寿命が長く、小型で軽量な電機装置を実現できる。
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
6 フレーム(第2フレーム)、10 固定子(第2固定子)、
30 回転電機(第1回転体)、52M 磁性体(磁性体片)、
51 高速回転子(第1回転子)、52 低速回転子(第1回転子)、
53 固定子(第1固定子)、60,260,360 磁気減速機、
55 フレーム(第1フレーム)、55f 保持部、55ft 突出部、
100,100a,200,300 電機装置。

Claims (10)

  1. それぞれ周方向に複数の磁極を有する、第1回転子と、第2回転子と、第1固定子と、を備え、前記第1回転子、前記第2回転子、前記第1固定子と、がそれぞれ空隙を介して同軸上に配置され、
    前記第1回転子は該第1回転子の外部から回転力が与えられ、
    前記第1回転子および前記第2回転子間の磁束が、前記第1固定子により変調されて回転速度が変化されたトルクが前記第2回転子に伝達され、
    前記第2回転子は、第1回転体の回転軸に接続されて、該第1回転体の回転速度を調整する、
    磁気減速機。
  2. 前記第1回転子の回転速度に対して前記第2回転子が設定された減速比での回転速度で回転し、且つ、前記第2回転子が、前記第1回転体の正回転方向に対して逆回転方向の逆トルクを前記第1回転体に付与するように、前記第1回転子の極数、前記第2回転子の磁極を構成する磁性体片の数、前記第1回転子に与えられる回転方向、がそれぞれ決定される、
    請求項1に記載の磁気減速機。
  3. 前記第1回転子は、該第1回転子に接続される第2回転体により前記回転力が与えられる、
    請求項1または請求項2に記載の磁気減速機。
  4. 前記第1固定子は、
    周方向に延在するヨーク部と、
    該ヨーク部から径方向内側に突出し、巻線が巻回される複数のティース部と、を有し、
    各前記ティース部の前記巻線を通電させることにより、前記第1回転子に回転磁界が供給されて前記第1回転子に前記回転力が与えられる、
    請求項1または請求項2に記載の磁気減速機。
  5. 前記第1回転子と前記第2回転子とは、該第1回転子および該第2回転子の軸方向に対して空隙を介して互いに対抗するように配設され、
    前記第1回転子または前記第2回転子の一方が、前記軸方向に対して空隙を介して前記第1固定子と対抗するように配設される、
    請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁気減速機。
  6. 前記第1固定子の極数、前記第1回転子の極数、前記第2回転子の磁極を構成する磁性体片の数が、以下関係式を満たすように構成される、
    Ns=2(N1±Nh/2)
    但し、Nsは前記第1固定子の極数、Nhは前記第1回転子の極数、N1は前記第2回転子の磁極を構成する磁性体片の数を示す。
    請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の磁気減速機。
  7. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の磁気減速機と、
    前記磁気減速機が回転軸に取り付けられた前記第1回転体および該第1回転体と同軸上に配置された第2固定子を備えた回転電機と、を備えた電機装置。
  8. 前記第1回転体は、巻上機用の駆動モータである、
    請求項7に記載の電機装置。
  9. 前記第1回転体の回転軸の軸心と、該第2回転子の軸心とを同心に位置決めして保持する保持部を備える、
    請求項7または請求項8に記載の電機装置。
  10. 前記第1固定子を支持する第1フレームと、
    前記第2固定子を支持する第2フレームとを備え、
    前記保持部は、
    前記第1フレームに形成され、前記第2フレームの径方向内側の内周面に当接し、前記第1回転体の回転軸の方向に延在する突出部を、該第2固定子の円周方向に沿って少なくとも3箇所以上備える、
    請求項9に記載の電機装置。
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