JP3444009B2 - シリコン半導体の異方性エッチング方法 - Google Patents

シリコン半導体の異方性エッチング方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシリコン半導体のエッチ
ング方法に係り、特にシリコン半導体表面の結晶面方位
に対し異なったエッチング速度を有し、エッチング面が
平坦で、かつエッチング底面が基板の主面と平行となる
エッチング方法、および引火の危険性がなく、支持電解
質を添加することなくエレクトロ・ケミカル・エッチン
グが可能で、自然酸化膜除去の前処理を必要としない効
率的で高精度のアルカリ系のエッチング液を用いたシリ
コン半導体の異方性エッチング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シリコン単結晶基板を化学薬品で
エッチングする場合、フッ酸と硝酸、さらに必要があれ
ば酢酸等の成分を加えた酸系の混合溶液にてエッチング
する方法と、水酸化カリウムで代表される金属水酸化物
の水溶液、あるいは抱水ヒドラジン(ヒドラジン水和
物)といったアルカリ系溶液にてエッチングする方法な
どが一般的である。このうち、前者の酸系混合溶液は、
シリコン単結晶基板の結晶面方位に関係なく等方的なエ
ッチング速度を有するのに対し、後者のアルカリ系溶液
は、シリコン単結晶基板の結晶面方位に依存したエッチ
ング速度を有している。シリコン単結晶基板の結晶面方
位に関係なく等方的なエッチング速度を有するフッ酸−
硝酸系のエッチングにおいては、そのエッチング特性が
エッチング液中の微量の亜硝酸イオン濃度によって大き
く変化するためエッチング制御が難しい(なお、上記の
エッチング制御方法としては、例えば本発明者らによる
米国特許第5266152号が挙げられる)。また、フ
ッ酸−硝酸系のエッチングにおいては、シリコン酸化膜
をも浸食する強い酸化力を有することから、深いエッチ
ングを行う場合には、この浸食に耐えるマスク材料が必
要となり、いまだこのようなマスク材料は見付かってい
ない。一方、シリコン単結晶基板の結晶面方位に依存し
たエッチング速度を有するアルカリ系溶液においては、
シリコン酸化膜をマスク材として用いることが一般的で
ある。しかし、水酸化カリウムで代表される金属水酸化
物の水溶液は、シリコン酸化膜を浸食するため、圧力セ
ンサの製造プロセスで代表されるような半導体の深いエ
ッチングを行う場合には、シリコン酸化膜を極めて厚く
形成するか、場合によっては窒化シリコン膜をマスク材
として用いる必要がある。他方、同じ異方性エッチング
を行うアルカリ系溶液であっても、抱水ヒドラジンは、
シリコン酸化膜をほとんど浸食しないという優れたエッ
チング特性を有しており、深いエッチングを行う場合で
あっても薄いシリコン酸化膜をマスク材として用いるこ
とができる。しかし、抱水ヒドラジンによるシリコン単
結晶基板のエッチング面は平坦にならず、例えば{10
0}面を主面とするシリコン単結晶基板を用いた場合の
エッチング面には、{111}面から構成される無数の
四角錐(マイクロ・ピラミッド)が現われ、平坦面が得
られないだけでなく、場合によってはエッチングの進行
そのものがほとんど停止してしまうという問題がある。
このマイクロ・ピラミッドの問題は、抱水ヒドラジンの
みならず、水酸化カリウムで代表される金属水酸化物の
水溶液等のアルカリ系異方性エッチング液が一般的に持
っている問題点である。また、上記マイクロ・ピラミッ
ドの問題は、上記のアルカリ系異方性エッチング液によ
る無バイアス、すなわち無電解エッチングのみならず、
pn接合を有する半導体基板に電圧を印加し、p型半導
体層のみを溶解し、n型半導体層を残す、いわゆるエレ
クトロ・ケミカル・エッチングにおいても、全く同様で
ある。なお、エレクトロ・ケミカル・エッチング技術に
ついては、例えば、Siマイクロマシニング先端技術
(株式会社サイエンス・フォーラム)p.120〜123
に詳しく総説されている。また、ヒドラジンを用いたエ
レクトロ・ケミカル・エッチングについては、例えば、
特公平5−27246号公報が挙げられる。また、マイ
クロ・ピラミッドを発生させるエッチング液であって
も、エレクトロ・ケミカル・エッチングでは、pn接合
部でエッチングを停止するのであるから、最終的には平
坦なエッチング停止面が現われると考えられがちであ
る。しかし実際には、オーバ・エッチングを充分に行っ
てもpn接合上のマイクロ・ピラミッドを消し去ること
は極めて難しい。また、エレクトロ・ケミカル・エッチ
ングにおいては、用いるエッチング液の電気抵抗が高い
ものとなる。水酸化カリウムで代表される金属水酸化物
の水溶液等のように、極めて電離度が高く、したがって
電気抵抗の低い場合には問題は生じないが、抱水ヒドラ
ジンのように電離度が低く、したがって液の電気抵抗の
高いエッチング液の場合には問題となる。この場合、エ
レクトロ・ケミカル・エッチング時のエッチング液中で
の電位降下を防ぐために、塩化カリウム水溶液で代表さ
れる支持電解質を添加することが一般的である。しか
し、塩化カリウム水溶液で代表される支持電解質を添加
することによって、抱水ヒドラジン液の電気抵抗を下げ
た場合には、上記マイクロ・ピラミッドの問題がますま
す大きくクローズアップされる。また、塩化カリウム水
溶液で代表される支持電解質を添加するすることなく、
抱水ヒドラジン液そのままでエレクトロ・ケミカル・エ
ッチングを行った場合は、液の電気抵抗が高く、したが
ってエッチング液中での電位降下が大きいのみならず、
シリコンが溶解するにつれて液の電気抵抗が徐々に低下
していくため、エッチング液中での電位降下の度合が徐
々に変化することになり、半導体基板の電位を制御する
ことは極めて難しいという問題がある。また、抱水ヒド
ラジンによるエッチング工程では、上述の「シリコン酸
化膜をほとんど浸食しないという優れたエッチング特
性」により、シリコン基板表面に存在する自然酸化膜で
さえもマスクとして作用するため、エッチング工程の直
前に自然酸化膜を除去する処理、すなわちフッ酸系のエ
ッチング液による前処理を行う必要がある。このこと
は、処理工程が増えるのみならず、酸系、アルカリ系の
2つのエッチャント系を用いるために、倍の設備が必要
となり、その上、自動化が大掛かりなものとなって、原
価償却費を含む製造工程のコストを大幅に押し上げる結
果となる。前処理の必要のないエッチャント系であれ
ば、処理工程が少なく、設備も簡略化できるので自動化
も容易となる。このような視点から見れば、マスクとし
てのシリコン酸化膜をあまり浸食することなく、しかも
自然酸化膜を速やかに溶かし、シリコンのエッチングが
速やかにスタートできるエッチャント系が望まれる。ま
た、抱水ヒドラジンは引火点が低い(引火点75.2
℃、発火点77.2℃)といった危険性の問題がある。
抱水ヒドラジンの引火性を抑制する(引火点を上げる)
ためには、水を加えることが極めて効果的である。図7
に、ヒドラジン−水系の組成と引火点の関係を示す。重
量%で、ヒドラジン100%が無水ヒドラジン(水分量
0%)、64%が抱水ヒドラジンそのもの(水分量36
%)であり、水の占める割合が増加するにつれ、引火点
は急激に上昇し、およそヒドラジンが40%以下(水が
60%以上)ともなれば、もはや引火点は存在しなくな
る。しかし、抱水ヒドラジンに水を加えると、上記マイ
クロ・ピラミッドの形成の問題が、より大きくなり、エ
ッチング液として用いることができなくなる。アルカリ
系異方性エッチング液が一般的に有している、上記マイ
クロ・ピラミッドの問題を解決する方法として、例え
ば、岸らにより提案された方法〔Siの異方性エッチン
グにおけるマイクロピラミッドの抑制法、真空、第29
巻、第2号、p.85−91(1986)〕がある。これ
は、KOH−H2O系、すなわち水酸化カリウムの水溶
液を用いたSiの異方性エッチングにおいて、その温度
と濃度を規定することにより、マイクロ・ピラミッドの
無い平坦なエッチング面を得る方法である。しかし、こ
のエッチング特性は、アルカリ金属水酸化物の水溶液そ
のものであるから、例えば、材料の選択性について記す
ならば、シリコン酸化膜を浸食し、半導体圧力センサの
製造プロセスで代表されるような、基板のほぼ厚さ程度
の深いエッチングを行う場合には、シリコン酸化膜を極
めて厚く形成するか、場合によっては窒化シリコン膜を
マスク材として用いる必要がある。しかし、上記のシリ
コン酸化膜を極めて厚く形成する方法は、シリコン酸化
膜の厚みが熱酸化時間の平方根に比例する、いわゆる2
乗則の関係があって、厚くなればなるほど酸化時間を多
く必要とすることになり実用的ではない。また、上記マ
イクロ・ピラミッド問題の解決法として、例えば特公昭
55−48694号公報に開示されている方法がある。
これは、「抱水ヒドラジン1容積に対し、無水エチレン
ジアミンを0.5ないし1容積を混合したエッチング液
により半導体をエッチングすることを特徴とする半導体
のエッチング方法。(上記特許公報の特許請求の範囲よ
り抜粋)」である。この従来技術によれば、「…結晶方
位によりエッチング速度が異なる異方性エッチングを行
うことができ、そのエッチング表面には、四角錐を生じ
ることなく、平坦な鏡面を呈する面を得ることができ、
…薄い酸化物薄膜にて…充分マスク効果を持たせること
ができる。(上記特許公報の発明の詳細な説明より抜
粋)」という優れたエッチング方法を提供することがで
きると述べている。しかし、以下に示す問題がある。ま
ず、第1に、引火点が低いという問題点が挙げられる。
このエッチング液の一成分である抱水ヒドラジンの引火
点については上述した通りであるが、もう一つの成分で
ある無水エチレンジアミンの引火点は、抱水ヒドラジン
よりも低い34℃である。この無水エチレンジアミンの
蒸気と空気とは、燃焼許容範囲の混合気体を生成するも
ので、抱水ヒドラジン以上に取り扱いに注意を必要す
る。これら抱水ヒドラジンと無水エチレンジアミンのみ
から構成された混合溶液で、かつ希釈用の水分を含まな
いものであるから、その引火点は、構成成分である抱水
ヒドラジンあるいは無水エチレンジアミンと同等である
と言える。また、「四角錐を生じることなく、平坦な鏡
面を呈する面を得ることができる」と述べているが、エ
ッチング底面が基板表面と並行になるというわけではな
い。例えば、{100}面を主面とし、<110>軸方
向を辺とする正方形パターンを用いた場合に、そのエッ
チング形状は、{111}面からなる側面と、{10
0}面からなる底面と、{100}面からなる底面を取
り囲み、{111}面へ接続される緩やかな斜面(勾配
は、約1/36)とから構成される。エッチングが進行
するにつれて、エッチング底面であるところの{10
0}面からなる底面は小さくなっていき、{100}面
からなる底面を取り囲み{111}面へ接続される緩や
かな斜面(勾配は、約1/36)がエッチング底面の主
たる部分を占めるようになる。最終的なエッチング形状
は、{100}面からなる底面は消滅し、{111}面
からなる側面と、{111}面へ接続される緩やかな斜
面(勾配は、約1/36)とから構成される。このこと
は、例えばダイアフラムの形状が、1辺が500μm、
平均厚さが10μmの設計であったとすれば、最も深く
エッチングされている部位を3μmとし、最も厚いダイ
アフラムの中央を約17μmで形成することになる。つ
まり、エッチング液のイントリンシックなエッチング特
性として、ダイアフラムの厚さの、そのダイアフラム面
内での不均一性が±70%にもなることを示している。
時間のコントロールでダイフラムを形成する場合、エッ
チング底面がシリコン基板の主面と並行となるエッチン
グ液が望まれ、この点において、このエッチャント系
は、あまり望ましいものではない。なお、このエッチン
グ底面を構成する緩やかな斜面の問題は、抱水ヒドラジ
ンによるエッチングにおいても同様である。また、エッ
チング速度が非常に遅い(同じプロセス温度であれば、
抱水ヒドラジンの約6分の1)ため、半導体圧力センサ
の製造プロセスで代表されるような深いエッチングを行
う場合には、プロセス時間が長く掛かり過ぎる。例え
ば、半導体圧力センサであれば、エッチングに要する時
間は約24時間以上にも達し、エッチング液の昇温時
間、洗浄に要する時間、あるいはウエハのハンドリング
時間まで考えれば、丸1日かかってもエッチング工程は
終了できない。また、抱水ヒドラジンも無水エチレンジ
アミンも、そのままではその電離度が低く、したがって
このエッチング液の電気抵抗は高く、塩化カリウム水溶
液で代表される支持電解質を加えなければ、エレクトロ
・ケミカル・エッチングのエッチング液として用いるこ
とは難しい。また、無水エチレンジアミンは電子工業用
として供せられる薬品ではなく、通常、化学実験用とし
て用いられる試薬であるため、その純度、あるいは電子
デバイスの電気特性に影響を与える不純物の含有が危惧
される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したごとく、従来
技術における抱水ヒドラジンを用いたアルカリ系のエッ
チング液によるシリコン単結晶基板の異方性エッチング
方法において、抱水ヒドラジンは、シリコン酸化膜をほ
とんど浸食しないという優れたエッチング特性を有する
が、エッチング面に無数の四角錐(マイクロ・ピラミッ
ド)が形成されて平坦面が得られず、場合によってはエ
ッチングそのものが停止するという問題があり、さらに
エッチング底面が基板表面と平行にならず、緩やかな傾
斜面となるという問題がある。また、エレクトロ・ケミ
カル・エッチングにおいては、エッチング液の電気抵抗
を下げるために塩化カリウム等の支持電解質を添加する
必要があり、この支持電解質を加えると、上記のマイク
ロ・ピラミッドの形成の問題が、ますます大きくなると
いう問題がある。特に、支持電解質を添加することなく
抱水ヒドラジンそのままでエレクトロ・ケミカル・エッ
チングを行った場合には、エッチング液の電気抵抗が高
く、したがってエッチング液中での電位降下が大きくな
るのみならず、シリコンが溶解するにつれ液の抵抗が徐
々に変化していくので、半導体基板の電位を制御するこ
とが困難となる。また、マスクとして作用する自然酸化
膜を除去する前処理工程が必要であるため工程コストが
増大する問題があり、さらに抱水ヒドラジンには引火点
が低いという問題があった。
【0004】本発明の目的は、上述した従来技術におけ
る問題点を解消するものであって、シリコン半導体の結
晶面方位に対して異なったエッチング速度を有し、エッ
チング面が平坦で、かつエッチング底面が基板の主面と
平行となるエッチング方法を提供するものであり、さら
にシリコンのエッチング速度が速く、マスクとしてのシ
リコン酸化膜を浸食する度合が極めて少なく、引火点を
高くし、またエッチング液の電気抵抗が低く、支持電解
質を添加することなくエレクトロ・ケミカル・エッチン
グが可能であり、さらに自然酸化膜等の除去のための前
処理工程を必要としないアルカリ系のエッチング液を用
いた高精度で効率的なシリコン半導体の異方性エッチン
グ方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明が解決しようとする
課題を達成するために、本発明は基本的に、シリコン半
導体の異方性エッチング方法において、シリコン半導体
の優れた異方性エッチング液である抱水ヒドラジンを主
とし、これに水酸化カリウムで代表される金属水酸化物
の水溶液を添加した組成のアルカリ系のエッチング液を
用いるものである。そして、具体的には本発明の特許請
求の範囲に記載のような構成とするものである。すなわ
ち、本発明は請求項1に記載のように、アルカリ系のエ
ッチング液を用いてシリコン半導体を異方性エッチング
する方法において、上記アルカリ系のエッチング液の組
成は、少なくともヒドラジン(N24)、水酸化カリウ
ム(KOH)および水(H2O)の3成分を含み、上記
水酸化カリウム(KOH)の含有量を、重量%で、少な
くとも0.3%以上とするものである。また、本発明は
請求項2に記載のように、請求項1記載のシリコン半導
体の異方性エッチング方法において、アルカリ系のエッ
チング液の組成は、ヒドラジン(N24)、水酸化カリ
ウム(KOH)および水(H2O)の3成分を含有し、
これら3成分の合計量を100とし、各成分(N24
2O、KOH)の含有量を、それぞれ重量%で表わし
た3成分状態図において、点(64、36、0)と点
(0、36、64)を結ぶ直線と、点(32、68、
0)と点(32、0、68)を結ぶ直線と、点(0、9
9.7、0.3)と点(99.7、0、0.3)とを結ぶ直
線と、点(0、90、10)と点(90、0、10)と
を結ぶ直線で囲まれた範囲内にある組成のエッチング液
とするものである。また、本発明は請求項3に記載のよ
うに、請求項1または請求項2に記載のシリコン半導体
の異方性エッチング方法において、耐食性のマスクの下
に進行する、いわゆるアンダーエッチングによるエッチ
ング形状の制御を、上記エッチング液の組成の制御によ
り行うものである。また、本発明は請求項4に記載のよ
うに、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の
シリコン半導体の異方性エッチング方法において、上記
シリコン半導体がp型領域とn型領域を有し、上記n型
領域に、該n型領域の溶解を阻止する電位を印加してエ
ッチングを行うものである。また、本発明は請求項5に
記載のように、請求項1ないし請求項4のいずれか1項
に記載のシリコン半導体の異方性エッチング方法におい
て、KOHの含有量を、重量%で、8.9%以上とした
エッチング液を用いるものである。また、本発明は請求
項6に記載のように、請求項1ないし請求項5のいずれ
か1項に記載のシリコン半導体の異方性エッチング方法
において、エッチング液を、ヒドラジン(N24)と水
(H2O)との2成分の比よって定められるエッチング
液の引火点が上記エッチング方法を実施するエッチング
温度よりも高くなる組成に調合するか、もしくは上記エ
ッチング方法を実施するエッチング温度を、上記2成分
の比によって定められるエッチング液の引火点よりも低
くなる組成に調合するものである。また、本発明は請求
項7に記載のように、請求項1ないし請求項6のいずれ
か1項に記載のシリコン半導体の異方性エッチング方法
において、エッチング液を、ヒドラジン(N24)と水
(H2O)との2成分の比によって定められるエッチン
グ液の引火点が存在しない組成に調合するものである。
【0006】
【作用】本発明者らは、種々の実験により、シリコン半
導体の優れた異方性エッチング液である抱水ヒドラジン
を主とし、これに水酸化カリウムで代表される金属水酸
化物の水溶液を添加することによって、マイクロ・ピラ
ミッドの形成を防止するのみならず抱水ヒドラジンのエ
ッチング特性、すなわち材料の選択比とシリコンのエッ
チング速度の結晶面方位依存性等を改善、あるいは制御
することが可能であることを見出した。以下、その作用
について説明する。アルカリ系異方性エッチング液が一
般的に有しているマイクロ・ピラミッドの問題につい
て、その発生機構は、いまだ充分に解明されていない。
しかし、上記マイクロ・ピラミッドの発生は、エッチン
グ中に生成・消滅を繰り返し、エッチング面の形状・平
坦性はマイクロ・ピラミッドの成長と淘汰によって決ま
ると考えられる。また、マイクロ・ピラミッドが形成さ
れる現象として、その頂点にエッチング・マスクとなる
核が存在するものと推定される。この核としては、
(1)シリコン基板中の析出した酸素、(2)シリコン
基板中の酸素析出核以外の結晶欠陥、(3)エッチング
面に付着したエッチング液中の微粒子、(4)エッチン
グ面に特異吸着したエッチング液中のイオンや分子、と
いったものが考えられる。このうち、上記(1)は、酸
化シリコン系のクラスタ、上記(3)は、エッチング液
中に溶け込んだシリコンであるポリケイ酸、あるいはリ
フト・オフした酸化物マスク、といったシリコン酸化物
系の化合物が主といえる。上記(4)は、異方性の制御
のためにエッチング液中に添加されたアルコール類であ
るとか、あるいはエッチング液中に溶け込んだシリコ
ン、すなわちモノケイ酸あるいはポリケイ酸といったも
のが考えられる。いずれにせよ、シリコン酸化物系の化
合物がマイクロ・ピラミッドを生成させるエッチング・
マスクとしての主たる核となるものと考えられる。抱水
ヒドラジンを主とし、これにアルカリ異方性エッチング
液であり酸化物を浸食させる水酸化カリウムの水溶液を
添加することによって、優れた異方性エッチング液であ
る抱水ヒドラジンのエッチング特性の大方を保持し、か
つ、上記マイクロ・ピラミッドの生成・消滅のバランス
を崩し、マイクロ・ピラミッドの発生現象を抑え込み、
消滅する現象を助けることにより、マイクロ・ピラミッ
ドの無い平坦なエッチング面を得ることができるものと
考えられる。また、エレクトロ・ケミカル・エッチング
では、pn接合部でエッチングが停止するのであるか
ら、マイクロ・ピラミッドを発生させるエッチング液で
あっても、最終的には平坦なエッチング停止面が現われ
るものと考えられがちであるが、実際には、オーバ・エ
ッチングを充分にかけてもpn接合上のマイクロ・ピラ
ミッドを消しさることは難しい。エレクトロ・ケミカル
・エッチングにおけるエッチングの停止機構は、いまだ
充分に解明されている訳ではないが、シリコン基板の表
面に酸化膜(陽極酸化)が形成されるためにエッチング
が停止するものと一般的に考えられている。シリコン基
板の表面に酸化膜が形成される電位(パッシベーション
・ポテンシャル)の半導体の導電型による電位の差を利
用して、p型シリコン基板のみ溶解してn型シリコン基
板を残す方法であるから、pn接合を介しての電気化学
的エッチングの停止は、そのエッチング停止面がpn接
合面であることが期待されるが実際にはかなり複雑であ
る。pn接合近傍にまでエッチングが進行してきたと
き、もしマイクロ・ピラミッドが存在していたとすれ
ば、pn接合に、室内燈の明かり、宇宙線、あるいは放
射線等が到達し、電子・正孔対を発生したり、あるいは
微小な欠陥の存在により、p型シリコン半導体であるp
n接合上のマイクロ・ピラミッドにリーク電流が流れ、
マイクロ・ピラミッドはエッチング停止モードとなり、
したがってオーバ・エッチングを充分にかけてもpn接
合上のマイクロ・ピラミッドを消し去ることができない
ものと考えられる。いずれにせよ、pn接合近傍までエ
ッチングが進行してきたときにマイクロ・ピラミッドが
存在しないことが望ましく、したがってイントリンシッ
クなエッチング液の特性として、エッチング面にマイク
ロ・ピラミッドが発生しない本発明のエッチング液を用
いたエレクトロ・ケミカル・エッチングでは、エッチン
グ停止面にはマイクロ・ピラミッドが存在せず、したが
って平坦なエッチング停止面となる。また、抱水ヒドラ
ジンに金属水酸化物の水溶液を添加したのであるから、
結果として抱水ヒドラジンに水が添加されたことにな
り、したがって引火点は上昇し、水との混合比によって
は引火点が存在しなくなる。また、抱水ヒドラジンに水
を添加していることもさることながら、極めて電離度の
高い水酸化カリウムで代表される金属水酸化物の水溶液
を添加しているので、塩化カリウム水溶液で代表される
支持電解質を添加しなくても本発明のエッチング液の電
気抵抗は著しく低い値となる。次に、本発明の特許請求
の範囲における請求項別の作用効果について説明する。
本発明のシリコン半導体の異方性エッチング方法は、請
求項1に記載のように、アルカリ系のエッチング液を用
いてシリコン半導体を異方性エッチングする方法におい
て、上記アルカリ系のエッチング液の組成を、少なくと
もヒドラジン(N24)、水酸化カリウム(KOH)お
よび水(H2O)の3成分を含み、水酸化カリウム(K
OH)を、重量%で、少なくとも0.3%以上含有する
組成のアルカリ系のエッチング液とするものである。し
たがって、従来の水酸化カリウムで代表される金属水酸
化物水溶液、あるいは無水ヒドラジン、抱水ヒドラジン
といったアルカリ異方性エッチング液と同様に、シリコ
ン半導体の結晶面方位に対してエッチング速度の異なる
異方性エッチングを行うことができ、そのエッチング面
には、無数の四角錐(マイクロ・ピラミッド)等の凸凹
を生じることなく、平坦なエッチング面を得ることがで
き、しかもシリコン基板の主面と平行なエッチング底面
を得ることができる。例えば時間コントロールによって
ダイアフラムを形成する場合、ダイアフラムの上面(エ
ッチングされるシリコン基板の主面に対して、その裏
面)と下面(エッチングされるシリコン基板のエッチン
グ底面)とが平行な平面から構成することができ、した
がって均一な厚さのダイアフラムが得られる。また、無
水ヒドラジン、あるいは抱水ヒドラジンに比べて、引火
点が高く、ないしは引火点がなく、その取扱いに過大な
注意を要しないエッチング工程を提供することができ
る。また、本発明のエッチング液は、エッチング液の電
気抵抗が低く、したがって塩化カリウム水溶液で代表さ
れる支持電解質を加えることなく、エレクトロ・ケミカ
ル・エッチングのエッチング液として用いることができ
る。また、本発明のエッチング液は、ナトリウム濃度の
低い薬品が容易に入手可能な薬品から構成されており、
したがって電子デバイスの電気特性を劣化させるナトリ
ウムの含有濃度の低いエッチング液が容易に調合可能で
ある。また、自然酸化膜除去の前処理工程が不要である
ため、エッチング工程が極めて簡素化され、プロセス装
置は単純で自動化が容易となる。したがって、設備の減
価償却費を含む工程コストを低く抑えることができる。
また、請求項2に記載のように、請求項1記載のシリコ
ン半導体の異方性エッチング方法において、アルカリ系
のエッチング液の組成を、ヒドラジン(N24)、水酸
化カリウム(KOH)および水(H2O)の3成分を含
有し、これら3成分の合計量を100とし、各成分(N
24、H2O、KOH)の含有量を、それぞれ重量%で
表わした3成分状態図において、点(64、36、0)
と点(0、36、64)を結ぶ直線と、点(32、6
8、0)と点(32、0、68)を結ぶ直線と、点
(0、99.7、0.3)と点(99.7、0、0.3)と
を結ぶ直線と、点(0、90、10)と点(90、0、
10)とを結ぶ直線で囲まれた範囲内にある組成のエッ
チング液を用いるものである。したがって、上記請求項
1の共通の効果に加えて、酸化物を浸食する程度が、水
酸化カリウムで代表される金属水酸化物水溶液に比べて
比較的少なく、シリコン酸化膜をマスクとして用いるこ
とができる。また、シリコンのエッチング速度が速いた
め、半導体圧力センサで代表されるシリコン基板をほぼ
貫通する程度の深いエッチングであっても、シリコン酸
化膜をマスクとして用いることができ、またエッチング
液の昇温時間を含めても、短時間でエッチングを終了す
ることができる。また、請求項3に記載のように、請求
項1または請求項2に記載のシリコン半導体の異方性エ
ッチング方法において、耐食性のマスクの下に進行す
る、いわゆるアンダーエッチングによるエッチング形状
の制御を、上記エッチング液の組成を制御することによ
って行うものである。したがって、上記請求項1の共通
の効果に加えて、本発明のエッチング液の組成を変える
ことにより、最終的なエッチング形状、すなわちマスク
下のアンダーエッッチング形状、あるいはエッチング形
状を構成する面指数等を変化させることが可能である。
抱水ヒドラジンに金属水酸化物の水溶液を添加すること
は、マイクロ・ピラミッドを発生させないエッチング液
を提供する手段のみならず、材料の選択比とシリコンの
エッチング速度の結晶面方位依存性で代表されるエッチ
ング特性を任意に制御する手段でもある。したがって、
アルカリ系のエッチング液を用いてシリコン半導体を異
方性エッチングする工程に要求されるエッチング特性が
得られる混合比のエッチング液を用いればよい。例え
ば、マスクが同一であっても、例えば静電式半導体加速
度センサであれば、そのおもり質量やキャパシタ面積
を、たとえ同一のマスクであっても、本発明のエッチン
グ液の組成を変えることによって制御することが可能で
あり、したがって感度等のデバイス特性をも制御して製
造することができる。また、請求項4に記載のように、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のシリコ
ン半導体の異方性エッチング方法において、上記シリコ
ン半導体はp型領域とn型領域を有し、上記n型領域
に、該n型領域の溶解を阻止する電位を印加してエッチ
ングを行う方法である。したがって、上記請求項1の共
通の効果に加えて、無数の四角錐(マイクロ・ピラミッ
ド)等の凹凸のない平坦な電気化学的エッチング停止面
が得られる。また、エッチング液の電気抵抗が低いだけ
でなく、エッチング中の液の電気抵抗の変化が少なく、
したがって半導体基板の電位制御が行い易い。また、自
然酸化膜程度のシリコン酸化膜は容易に浸食するため、
万が一間違ってパシベーション・ポテンシャル以上の電
位を印加してしまい陽極酸化膜を形成しエッチングが停
止してしまった場合であっても、印加電圧を下げてその
まま保持しているだけでエッチングの再開が容易に可能
である。また、請求項5に記載のように、請求項1ない
し請求項4のいずれか1項に記載のシリコン半導体の異
方性エッチング方法において、KOHの含有量を、重量
%で、8.9%以上としたエッチング液を用いてエッチ
ングする方法である。したがって、上記請求項1の共通
の効果に加えて、マスクとして使用するシリコン酸化物
に対し本発明のエッチング液による目減り速度が、エッ
チング液の流動やマスクパターンに影響されずほぼ均一
である。また、請求項6に記載のように、請求項1ない
し請求項5のいずれか1項に記載のシリコン半導体の異
方性エッチング方法において、エッチング液を、ヒドラ
ジン(N24)と水(H2O)との2成分の比よって定
められるエッチング液の引火点を、上記エッチング方法
を実施するエッチング温度よりも高くなる組成に調合す
るか、もしくは上記エッチング方法を実施するエッチン
グ温度を、上記2成分の比によって定められるエッチン
グ液の引火点よりも低くなる組成に調合するものであ
る。したがって、上記請求項1の共通の効果に加えて、
本発明のエッチング液のプロセス温度が、その引火点よ
りも低く制御されているため、その取扱いに過大な注意
を要しないという効果が得られる。また、請求項7に記
載のように、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に
記載のシリコン半導体の異方性エッチング方法におい
て、エッチング液を、ヒドラジン(N24)と水(H2
O)との2成分の比によって定められるエッチング液の
引火点が存在しない組成に調合するものである。したが
って、上記請求項1の共通の効果に加えて、本発明のエ
ッチング液は引火点を持たず、したがってエッチングの
プロセス中に、過大な注意を要せずに、その取扱いがで
きる。
【0007】
【実施例】以下に本発明の一実施例を挙げ、図面を用い
てさらに詳細に説明する。 〈実施例1〉本実施例では、ダイアフラム型半導体圧力
センサの製造方法で代表される、時間コントロールエッ
チングによるダイアフラムの形成方法について説明す
る。図1は、本実施例における半導体のエッチングを実
施する装置の構成を示す模式図である。図において、エ
ッチング液1は、エッチング槽2に満たされ、マグネチ
ック・スターラ・バー3によって攪拌、ヒータ4によっ
て加熱される。もちろん、外部のモータによりインペラ
を回転する撹拌方法を用いても良いし、エッチング液1
のPID制御による温度制御を行ってもよい。5は温度
計、6は冷却管である。{100}面を主面とするシリ
コン基板10には、熱酸化あるいはCVD(Chemical Va
peur Deposition)法により、主面にシリコン酸化膜11
を、裏面にシリコン酸化膜12を形成する。シリコン基
板10の裏面、すなわちエッチング主面のシリコン酸化
膜12は、シリコン基板10をエッチングしない領域の
みを残して他は除去する。上記構造体を、上記エッチン
グ液1に浸漬し、エッチング時間を制御することによ
り、エッチング深さを、ひいてはエッチングの残部であ
るダイアフラムの厚さに制御する。図2(a)〜(e)
は、エッチング過程を示す模式図である。図2(a)
は、エッチングされる上記構造体、すなわちシリコン基
板10に、シリコン酸化膜11およびシリコン酸化膜1
2を形成している。図2(b)は、上記図2(a)で示
される構造体を、エッチング液として抱水ヒドラジンを
用い、エッチング温度80℃で、ある程度エッチングし
た場合のエッチング形状を示す。20は、アルカリ異方
性エッチング特有の{111}面で構成されるエッチン
グ側壁を示し、21は、エッチング底面を示す。エッチ
ング底面21は、{100}面からなる底面22と、
{111}面で構成されるエッチング側壁20に接続す
る緩やかな斜面23から構成され、しかも無数のマイク
ロ・ピラミッド24が発生している。なお、エッチング
に際し、自然酸化膜除去のためのフッ酸系エッチャント
の前処理は必要であり、前処理を行わなかった場合は全
くエッチングが進行しなかった。図2(c)は、上記図
2(b)で示される構造体を、さらにエッチングし、ダ
イアフラムを形成した場合のエッチング形状を示す。ダ
イアフラムとなるエッチング底面21は、図2(b)で
示された{100}面からなる底面22が消失し、{1
11}面で構成されるエッチング側壁20に接続する緩
やかな斜面23のみから構成されるようになり、やはり
無数のマイクロ・ピラミッド24が発生している。図2
(b)に示した形状を経て、図2(c)に示す形状とな
っていくのであるが、この間マイクロ・ピラミッド24
は生成と消滅を繰り返し、ランダムな位置にランダムな
サイズで存在している。マイクロ・ピラミッド24のサ
イズは、数〜数十μm、場合によっては100μmを越
えるものも存在する。このようなエッチング形状では、
半導体圧力センサのダイアフラム(厚さ数〜数十μm)
として供することはできなかった。図2(d)は、特公
昭55−48694号公報に開示された「抱水ヒドラジ
ン1容積に対し、無水エチレンジアミンを0.5ないし
1容積を混合したエッチング液」でエッチングし、ダイ
アフラムを形成した場合のエッチング形状を示す。上記
図2(b)、図2(c)で特徴的であった無数のマイク
ロ・ピラミッド24が発生しないものの、エッチング底
面21は、{111}面で構成されるエッチング側壁2
0に接続する緩やかな斜面23のみから構成されてい
る。例えば、抱水ヒドラジン1容積に対し、無水エチレ
ンジアミンを1容積を混合したエッチング液を用いて、
80℃にてエッチングした場合、緩やかな斜面23の勾
配は1/36で、エッチング速度は0.3μm/min
であった。 また、1辺が500μmのダイフラムを、
平均厚さが10μmとなるように時間コントロール・エ
ッチングにより製作した場合には、エッチングに27時
間も要したうえに、最も深くエッチングされている部位
は、{111}面で構成される側壁20と、エッチング
底面21との交線〔図2(d)のA−A部〕の3μmで
あり、最も厚いダイアフラム部位は中央部〔図2(d)
のB−B部〕の17μmであり、ダイアフラム面内での
不均一性が、±70%にもなった。なお、エッチングに
際し、自然酸化膜除去のためのフッ酸系エッチャントに
よる前処理は必要であった。図2(e)は、本発明のエ
ッチング液でエッチングしダイフラムを形成した場合の
エッチング形状を示す。エッチング底面21に、上記図
2(d)と同様、図2(b)および図2(c)で特徴的
であった無数のマイクロ・ピラミッド24が発生してい
ないだけでなく、エッチング底面21と、エッチングを
開始した主面、すなわちシリコン基板10の裏面とが平
行となった。本発明の実施例のエッチング液として、例
えば、抱水ヒドラジンに、20wt%KOHを、容量比
5:4で混合した液を用いて、80℃でエッチングした
場合、 エッチング速度は1.2μm/minであり、
またエッチング底面は、触針法で計測した測定限界以下
に、完全に平坦で、かつエッチング底面21とエッチン
グを開始した主面とが平行であり、緩やかな斜面23の
存在は認められなかった。なお、上記ダイアフラム面内
での不均一性は、用いるシリコン基板の主面と裏面との
平行度、すなわちシリコン基板10の研削・研磨精度
に、むしろ大きく依存する。また、エッチングに要する
時間も、上記の「抱水ヒドラジン1容積に対し、無水エ
チレンジアミンを1容積を混合したエッチング液」の1
/4に過ぎなかった。さらには、エッチングに際し、自
然酸化膜除去のためのフッ酸系エッチャントの前処理は
不要であった。
【0008】〈実施例2〉本実施例では、ダイアフラム
型半導体圧力センサの製造方法で代表される、エレクト
ロ・ケミカル・エッチングによるダイアフラムの形成方
法を示す。図3は、本実施例における半導体のエッチン
グ方法を実施した装置の構成を示す模式図である。図に
おいて、エピタキシャル基板30は、{100}面を主
面とするp型シリコン基板31と、n型エピタキシャル
層32から構成されている。p型シリコン基板31は、
例えば厚さが500μmで、比抵抗が10Ωcmであ
り、n型エピタキシャル層32は、例えば厚さが20μ
mで、比抵抗が2Ωcmである。上記エピタキシャル基
板30の主面に、シリコン酸化膜33を、裏面にシリコ
ン酸化膜34を形成する。エピタキシャル基板30の裏
面、すなわちエッチング主面のシリコン酸化膜34は、
p型シリコン基板31をエッチングしない領域のみを残
して他は除去する。上記構造体をエッチング液1に浸漬
し、白金電極35が陰極、n型エピタキシャル層32が
陽極となるように電源36を接続する。このとき、p型
シリコン基板31のシリコン酸化膜34に覆われていな
い部位が、ほぼ無バイアスの状態でエッチングされる
が、これはp型シリコン基板31がn型エピタキシャル
層32に対して逆バイアスされた状態、すなわち電気的
にはpn接合が分離されているために、陽極酸化の電流
は流れず、したがって陽極酸化現象が起こらないからだ
と考えられる。 p型シリコン基板31のシリコン酸化
膜34に覆われていない部位が、p型シリコン基板31
の厚さに比べて充分大きいと、エッチングはn型エピタ
キシャル層32に達するまで進み、n型エピタキシャル
層32がエッチング液1に接触すると、陽極酸化により
n型エピタキシャル層32のエッチング表面にシリコン
酸化膜が形成され、エッチングが停止する。このような
エレクトロ・ケミカル・エッチングの場合、理想的に
は、ダイアフラムの厚さがn型エピタキシャル層32の
厚さで主に定められるため、時間コントロールをするこ
となく、高精度で均一なダイアフラムを形成することが
できるはずである。図4(a)〜(c)は、エッチング
の過程を示す模式図である。図4(a)は、エッチング
される上記構造体、すなわちp型シリコン基板31、n
型エピタキシャル層32、シリコン酸化膜33およびシ
リコン酸化膜34から構成されている。図4(b)は、
上記図4(a)で示される構造体を、エッチング液1と
して、例えば、飽和(室温)塩化カリウム水溶液を支持
電解質として1vol%添加(抱水ヒドラジンのみでは
液の電気抵抗が高く電気化学的操作が困難であるため)
した抱水ヒドラジンを用い、エッチング温度80℃で、
エレクトロ・ケミカル・エッチングし、n型エピタキシ
ャル層32のダイアフラム40を形成した場合のエッチ
ング形状を示す。p型シリコン基板31をエッチングし
ている途中のエッチング形状は、無バイアス下のエッチ
ング形状とほぼ同様であり、上記図2(b)、図2
(c)で示された形状となっている。一番深いエッチン
グ部位より、順次n型エピタキシャル層32に達し、陽
極酸化によるエッチングの電気化学的停止が起こり、ダ
イアフラムが形成されるのであるが、エッチング途中に
生成・消滅を繰り返していたマイクロ・ピラミッド24
がn型エピタキシャル層32のエッチング停止面上に残
留した状態となった。このエッチング停止面上に残留し
たマイクロ・ピラミッド44は、n型エピタキシャル層
32がエッチングされない電位を印加したままの状態
で、いくらオーバエッチングをしても溶解除去すること
はできなかった。このようなエッチング形状では、半導
体圧力センサのダイアフラム(厚さ数〜数十μm)とし
て実用に供することはできなかった。また、飽和(室
温)塩化カリウム水溶液の添加量が多い程、液の電気抵
抗は下がるが、マイクロ・ピラミッドの発生密度が増加
する傾向にあり、極めて多い場合には、マイクロ・ピラ
ミッドの{111}面で構成される側壁同志が折り重な
り、エッチング底面が無数の{111}面で構成される
と、ついにはエッチングが停止してしまうということも
ある。なお、エッチングに際し、自然酸化膜除去のため
のフッ酸系エッチャントによる前処理は、抱水ヒドラジ
ンによる無バイアス下のエッチングと同様に必要であっ
た。図4(c)は、図4(a)で示される構造体を、エ
ッチング液として本発明の、例えば抱水ヒドラジンに、
20wt%KOHを、容量比5:4で混合した液を用い
て、エッチング温度80℃にてエレクトロ・ケミカル・
エッチングし、n型エピタキシャル層のダイアフラム4
0を形成した場合のエッチング形状を示す。エッチング
底面に、マイクロ・ピラミッド44が発生していないこ
とはもちろんのこと、エッチング停止面は完全に平坦と
なった。また、エッチングに際し、自然酸化膜除去のた
めのフッ酸系エッチャントによる前処理も不要であっ
た。
【0009】〈実施例3〉本実施例では、抱水ヒドラジ
ンに水酸化カリウムの水溶液を添加することにより得ら
れる効果について、ヒドラジン(N24)−水(H
2O)−水酸化カリウム(KOH)の3成分状態図(重
量%)を用いて説明する。なお、エッチング方法は、主
として図1に示す装置を用いて行った。図5は、特許請
求の範囲第1および2項に示した本発明のエッチング液
の組成範囲を示した図である。抱水ヒドラジンは、ヒド
ラジン64wt%、水36wt%であるから、点(6
4、36、0)で表わされる。20wt%KOH水溶液
は、KOH20wt%、水80wt%であるから、点
(0、80、20)で表わされる。調合の容易なKOH
水溶液は、無限希釈のKOH水溶液を示す点(0、10
0、0)と、室温(あるいは、室温からせいぜい100
℃程度まで)での飽和KOH水溶液を示す点(0、4
6、54)とを結んだ直線上の組成に対応する。抱水ヒ
ドラジンと、20wt%KOH水溶液とを混合するとい
う操作により、抱水ヒドラジンを示す点(64、36、
0)と20wt%KOH水溶液を示す点(0、80、2
0)とを結んだ直線上の任意の組成を、その混合比によ
って調合することができる。例えば、最も頻繁に使用し
た「抱水ヒドラジンと、20wt%KOH水溶液とを、
容量比5:4で混合したエッチング液」は、点(33.
3、57.1、9.6)で示される。(抱水ヒドラジンの
比重は1.031、20wt%KOH水溶液の比重は1.
188であった。)また、抱水ヒドラジンと、40wt
%KOH水溶液とを混合するという操作であれば、抱水
ヒドラジンを示す点(64、36、0)と40wt%K
OH水溶液を示す点(0、60、40)とを結んだ直線
上の任意の組成を調合することができる。抱水ヒドラジ
ンを示す点(64、36、0)におけるエッチング形状
は、上述したように無数のマイクロ・ピラミッドからな
るものであった。しかし、20wt%KOH水溶液を加
えた組成の場合、点(63.0、36.7、0.3)を越
えるようになると、全くマイクロ・ピラミッドが発生し
なくなり平坦なエッチング底面が得られることが分かっ
た。また、40wt%KOH水溶液であっても全く同様
であり、マイクロ・ピラミッドを発生させないためのK
OHの必要量は0.3wt%であった。さらに、20w
t%KOH水溶液を加えた組成の場合、点(32、5
8、10)を越えると、シリコン酸化膜のエッチング速
度が急激に上昇し20wt%KOH水溶液そのものと大
差がなくなった。このような種々の実験結果から、ヒド
ラジン(N24)−水(H2O)−水酸化カリウム(K
OH)の3成分状態図(重量%)において、点(64、
36、0)と点(0、36、64)を結ぶ直線と、点
(32、68、0)と点(32、0、68)を結ぶ直線
と、点(0、99.7、0.3)と点(99.7、0、0.
3)とを結ぶ直線と、点(0、90、10)と点(9
0、0、10)とを結ぶ直線とから囲まれた領域内でエ
ッチング液を調合すれば、マイクロ・ピラミッドの発生
がなく、シリコン酸化膜の目減りの少ないエッチング液
が得られることが判明した。また、どの組成を用いるか
によって、エッチング速度の面方位依存性を変化させる
ことが可能であった。ダイアフラム式半導体圧力センサ
では問題とならないが、例えば容量式半導体加速度セン
サのように重りと重り底面のキャパシタを形成するプロ
セスでは、高次の面方位、特に(311)面のアンダー
エッチング速度と{100}面のエッチング速度の比が
重りの重さとキャパシタ面積を決定付ける重要なパラメ
ータとなる。例えば、「抱水ヒドラジンに、20wt%
KOHを、容量比5:4で混合した液」を用いて80℃
でエッチングした場合には、(311)面のアンダーエ
ッチング速度と{100}面のエッチング速度の比が
1.8であったが、、容量比5:4で混合した液であれ
ば1.4であった、という具合である。したがって、同
一のマスクを用いても最終のエッチング形状を、エッチ
ング液の組成を変えることで容易に変化させることがで
きた。
【0010】〈実施例4〉図6は、特許請求の範囲の請
求項4に示した本発明のエッチング液の組成範囲を示し
た図である。これは、マスクとして使用するシリコン酸
化膜の目減りのモードに着目して行った実験である。抱
水ヒドラジンを示す点(64、36、0)においては、
上述したようにシリコン酸化膜の目減りはほとんど皆無
であった。しかし、例えば20wt%KOH水溶液を加
えた組成であれば、ある程度エッチングされるようにな
る。この時、点(35.4、8.9、55.6)までは、
シリコン酸化膜のエッチングが不均一に進行し、この組
成の点を越えるようになると、均一に目減りしていくこ
とが分かった。この不均一なエッチングは、エッチング
液の組成はもちろんのこと、エッチング液の流動、ある
いはエッチングパターンにも大きく依存し、流れの下方
が速くエッチングされる場合もあれば、その逆となる場
合もあって、かなり複雑なエッチング挙動を示した。し
たがって、マスクとして必要とするシリコン酸化膜の最
低の厚さを決定することは困難であった。しかし、KO
H濃度が8.9wt%を越えるように調合すれば、シリ
コン酸化膜の目減りが均一となるため、シリコンとシリ
コン酸化膜のエッチング選択比から、マスクとして必要
とするシリコン酸化膜の最低の厚さを容易に決定するこ
とができる。ただし、エッチング装置依存性を有してお
り、前もって装置のパラメータを測定する必要がある。
例えば、「抱水ヒドラジンと、20wt%KOH水溶液
とを、容量比5:4で混合したエッチング液」は、点
(33.3、9.6、57.1)で表わされ、KOH濃度
が8.9wt%を越えているので、シリコン酸化膜は均
一に目減りする。シリコンとシリコン酸化膜のエッチン
グ選択比は、ある実験装置では、1500:1(80
℃)であり、例えば、500μm厚さのシリコン基板を
ほぼエッチングするような深いエッチングであっても、
5000Å程度の通常のフィールド酸化膜程度で十分に
マスクとして使用することができた。
【0011】〈実施例5〉次に、本発明のエッチング液
は引火点が高いという性質について説明する。なお、引
火点を測定する実験は困難であるので、ここでは文献値
を用いて説明する。図7に、ヒドラジン−水系の組成
(wt%)と引火点(℃)の関係を示す。重量%で、1
00%が無水ヒドラジン(水分0%)、64%が抱水ヒ
ドラジンそのもの(水分36%)であり、水の占める割
合が増えるにつれ、引火点が急激に上昇し、およそヒド
ラジンが40%以下(水分60%以上)ともなれば、も
はや引火点は存在しなくなる。なお、引火点のなくなる
組成についても、文献によりまちまちであるが、およそ
上記の値と考えられる。引火点をTf.p(℃)、ヒドラ
ジン濃度をCN2H4(wt%)、水濃度をCH2O(wt
%)とすれば、これらの相関関数は、およそ次の(数
1)式で近似することができる。
【0012】
【数1】
【0013】ヒドラジン−水系のエッチング液を用いた
場合、エッチングを行うプロセス温度をTetch(℃)と
すれば、次の(数2)式を満たす条件(図7のハッチン
グされた領域A)でエッチングを行った場合、
【0014】
【数2】
【0015】プロセス温度がエッチング液の引火点より
も高いことは、その取扱い上の点から望ましくない。次
の(数3)式を満たし、
【0016】
【数3】
【0017】かつ、ヒドラジン濃度が40wt%以上の
条件(図7のハッチングされた領域B)でエッチングを
行なった場合、プロセス温度がエッチング液の引火点よ
りも低いことが望ましい。さらに、ヒドラジン濃度が4
0wt%以下の条件(図7のハッチングされた領域C)
でエッチングを行った場合、引火点そのものが存在せ
ず、より望ましい。本発明のエッチング液は、ヒドラジ
ン−水系に、第3成分としてKOHを加えた組成のもの
であると言える。この第3成分は、いわゆるモル沸点上
昇として作用し、ひいては唯一の引火成分であるヒドラ
ジンの蒸気圧を下げ、したがって引火点を上昇させる作
用があるものと考えられる。したがって本発明の3成分
系であっても、引火点はヒドラジン濃度と水濃度の比に
のみ大きく依存するものとし、上記(1)〜(3)式で
代替しておけば、実際にはそれよりも安全サイドに振ら
れており、マージンがあると考えてよい。図8に、プロ
セス温度が引火点よりも低い領域である3成分状態図を
示す。プロセス温度を、例えば100℃とすると、上記
(数3)式より、次に示す(数4)式が得られる。
【0018】
【数4】
【0019】ヒドラジン(N24)−水(H2O)−水
酸化カリウム(KOH)の3成分状態図(重量%)にお
いて、(数4)式を満たす領域は、点(48.4、51.
6、0)…〔この点は、ヒドラジンと水との比が0.9
39であって、KOHを含まない組成に対応〕と、点
(0、0、100)…〔この点は、第3成分であるKO
Hで無限希釈した組成に対応〕とを結ぶ直線よりもヒド
ラジン濃度の低い領域で与えられる。したがって、マイ
クロ・ピラミッドの発生が無く、シリコン酸化膜の目減
りの少ないエッチング特性が得られ、かつプロセス温度
が引火点よりも低い領域は、図中にハッチングされた領
域である。同様に、プロセス温度が、例えば90℃、あ
るいは80℃とすると、上記(数3)式より、それぞ
れ、次に示す(数5)式、(数6)式が得られ、図8中
に、これらの境界を示す直線を示した。
【0020】
【数5】
【0021】
【数6】
【0022】図9に、引火点そのものが無い領域である
3成分状態図を示す。ここでは、引火点が無いのではな
く、無限大に発散しているとし、集合論的には、図8に
含まれるものと考える。ヒドラジンと水との重量比が、
次の(数7)式
【0023】
【数7】
【0024】を満たしていればよいのであるから、点
(40、60、0)と点(0、0、100)とを結ぶ直
線よりもヒドラジン濃度の低い領域で与えられる。上記
説明は、抱水ヒドラジンに水酸化カリウムの水溶液を添
加することを例に採っているが、水酸化カリウムに限ら
れるわけではなく、他の金属水酸化物であっても同様で
ある。また、上記説明のうちエレクトロ・ケミカル・エ
ッチングを、2極法を例に説明したが、これに限定され
るものではなく、エッチングを安定して再現性よく行う
ために3極法としてもよいし、場合によっては4極法と
してもよい。3極法の場合、Ag/AgCl標準電極で代
表される基準電極を使用し、図3に示すように、白金電
極35が対極、n型エピタキシャル層32が作用極とな
るように、電源としてポテンショスタットに接続し、作
用極の電位を、n型エピタキシャル層32が陽極酸化さ
れる電位に制御すればよい。また、{100}面を主面
とする2層シリコン基板を例にとって説明してきたが、
もちろん基板面方位は{100}面に限定されるもので
はなく、他の基板面方位であってもよく、また2層シリ
コン基板に限定されるものではなく、単層であっても、
3層以上であってもよい。また、p型n型各導電層の不
純物濃度、厚さも上記説明に限定されるものではない。
また、印加電圧は、p型n型各導電層が逆バイアスされ
ることを例に採って説明してきたが、もちろんp型n型
各導電層が順バイアスされても構わない。また、ダイア
フラム式半導体圧力センサを例に挙げて説明してきた
が、これに限定されるものではなく、半導体加速度セン
サや赤外線センサ等の他の半導体センサ、あるいはセン
サデバイスのみならず他の半導体機能デバイスにも適用
することが可能である。また、抱水ヒドラジンを例に説
明してきたが、それに限定されるものではない。無水ヒ
ドラジンに水酸化カリウムの水溶液を添加してもよい
し、あるいは、ヒドラジンそのものにに水と水酸化カリ
ウムを添加してもよく、ヒドラジン(N24)−水(H
2O)−水酸化カリウム(KOH)の3成分の組成さえ
同じであれば、そのエッチング特性は同一であり、その
調合方法に依存しないことは、同業者であれば容易に理
解することができる。
【0025】
【発明の効果】以上詳細に説明したごとく、本発明は以
下に示す効果を有するものである。本発明のシリコン半
導体の異方性エッチング方法は、請求項1に記載のよう
に、アルカリ系のエッチング液を用いてシリコン半導体
を異方性エッチングする方法において、上記アルカリ系
のエッチング液の組成を、少なくともヒドラジン(N2
4)、水酸化カリウム(KOH)および水(H2O)の
3成分を含み、水酸化カリウム(KOH)を、重量%
で、少なくとも0.3%以上含有する組成のアルカリ系
のエッチング液とするものである。したがって、従来の
水酸化カリウムで代表される金属水酸化物水溶液、ある
いは無水ヒドラジン、抱水ヒドラジンといったアルカリ
異方性エッチング液と同様に、シリコン半導体の結晶面
方位に対してエッチング速度の異なる異方性エッチング
を行うことができ、そのエッチング面には、無数の四角
錐(マイクロ・ピラミッド)等の凸凹を生じることな
く、平坦なエッチング面を得ることができ、しかもシリ
コン基板の主面と平行なエッチング底面を得ることがで
きる。例えば時間コントロールによってダイアフラムを
形成する場合、ダイアフラムの上面(エッチングされる
シリコン基板の主面に対して、その裏面)と下面(エッ
チングされるシリコン基板のエッチング底面)とが平行
な平面から構成することができ、したがって均一な厚さ
のダイアフラムが得られる。また、無水ヒドラジン、あ
るいは抱水ヒドラジンに比べて、引火点が高く、ないし
は引火点がなく、安全なエッチング工程を提供すること
ができる。また、本発明のエッチング液は、エッチング
液の電気抵抗が低く、したがって塩化カリウム水溶液で
代表される支持電解質を加えることなく、エレクトロ・
ケミカル・エッチングのエッチング液として用いること
ができる。また、本発明のエッチング液は、ナトリウム
濃度の低い薬品が容易に入手可能な薬品から構成されて
おり、したがって電子デバイスの電気特性を劣化させる
ナトリウムの含有濃度の低いエッチング液が容易に調合
可能である。また、自然酸化膜除去の前処理工程が不要
であるため、エッチング工程が極めて簡素化され、プロ
セス装置は単純で自動化が容易となる。したがって、設
備の減価償却費を含む工程コストを低く抑えることがで
きる。また、請求項2に記載のように、請求項1記載の
シリコン半導体の異方性エッチング方法において、アル
カリ系のエッチング液の組成を、ヒドラジン(N
24)、水酸化カリウム(KOH)および水(H2O)
の3成分を含有し、これら3成分の合計量を100と
し、各成分(N24、H2O、KOH)の含有量を、そ
れぞれ重量%で表わした3成分状態図において、点(6
4、36、0)と点(0、36、64)を結ぶ直線と、
点(32、68、0)と点(32、0、68)を結ぶ直
線と、点(0、99.7、0.3)と点(99.7、0、
0.3)とを結ぶ直線と、点(0、90、10)と点
(90、0、10)とを結ぶ直線で囲まれた範囲内にあ
る組成のエッチング液を用いるものである。したがっ
て、上記請求項1の共通の効果に加えて、酸化物を浸食
する程度が、水酸化カリウムで代表される金属水酸化物
水溶液に比べて比較的少なく、シリコン酸化膜をマスク
として用いることができる。また、シリコンのエッチン
グ速度が速いため、半導体圧力センサで代表されるシリ
コン基板をほぼ貫通する程度の深いエッチングであって
も、シリコン酸化膜をマスクとして用いることができ、
またエッチング液の昇温時間を含めても、短時間でエッ
チングを終了することができる。また、請求項3に記載
のように、請求項1または請求項2に記載のシリコン半
導体の異方性エッチング方法において、耐食性のマスク
の下に進行する、いわゆるアンダーエッチングによるエ
ッチング形状の制御を、上記エッチング液の組成を制御
することによって行うものである。したがって、上記請
求項1の共通の効果に加えて、本発明のエッチング液の
組成を変えることにより、最終的なエッチング形状、す
なわちマスク下のアンダーエッッチング形状、あるいは
エッチング形状を構成する面指数等を変化させることが
可能である。抱水ヒドラジンに金属水酸化物の水溶液を
添加することは、マイクロ・ピラミッドを発生させない
エッチング液を提供する手段のみならず、材料の選択比
とシリコンのエッチング速度の結晶面方位依存性で代表
されるエッチング特性を任意に制御する手段でもある。
したがって、アルカリ系のエッチング液を用いてシリコ
ン半導体を異方性エッチングする工程に要求されるエッ
チング特性が得られる混合比のエッチング液を用いれば
よい。例えば、マスクが同一であっても、例えば静電式
半導体加速度センサであれば、そのおもり質量やキャパ
シタ面積を、たとえ同一のマスクであっても、本発明の
エッチング液の組成を変えることによって制御すること
が可能であり、したがって感度等のデバイス特性をも制
御して製造することができる。また、請求項4に記載の
ように、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載
のシリコン半導体の異方性エッチング方法において、上
記シリコン半導体はp型領域とn型領域を有し、上記n
型領域に、該n型領域の溶解を阻止する電位を印加して
エッチングを行う方法である。したがって、上記請求項
1の共通の効果に加えて、無数の四角錐(マイクロ・ピ
ラミッド)等の凹凸のない平坦な電気化学的エッチング
停止面が得られる。また、エッチング液の電気抵抗が低
いだけでなく、エッチング中の液の電気抵抗の変化が少
なく、したがって半導体基板の電位制御が行い易い。ま
た、自然酸化膜程度のシリコン酸化膜は容易に浸食する
ため、万が一間違ってパシベーション・ポテンシャル以
上の電位を印加してしまい陽極酸化膜を形成しエッチン
グが停止してしまった場合であっても、印加電圧を下げ
てそのまま保持しているだけでエッチングの再開が容易
に可能である。また、請求項5に記載のように、請求項
1ないし請求項4のいずれか1項に記載のシリコン半導
体の異方性エッチング方法において、KOHの含有量
を、重量%で、8.9%以上としたエッチング液を用い
てエッチングする方法である。したがって、上記請求項
1の共通の効果に加えて、マスクとして使用するシリコ
ン酸化物に対し本発明のエッチング液による目減り速度
が、エッチング液の流動やマスクパターンに影響されず
ほぼ均一である。また、請求項6に記載のように、請求
項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のシリコン半
導体の異方性エッチング方法において、エッチング液
を、ヒドラジン(N24)と水(H2O)との2成分の
比よって定められるエッチング液の引火点を、上記エッ
チング方法を実施するエッチング温度よりも高くなる組
成に調合するか、もしくは上記エッチング方法を実施す
るエッチング温度を、上記2成分の比によって定められ
るエッチング液の引火点よりも低くなる組成に調合する
ものである。したがって、上記請求項1の共通の効果に
加えて、本発明のエッチング液のプロセス温度が、その
引火点よりも低く制御されるという効果が得られる。ま
た、請求項7に記載のように、請求項1ないし請求項6
のいずれか1項に記載のシリコン半導体の異方性エッチ
ング方法において、エッチング液を、ヒドラジン(N2
4)と水(H2O)との2成分の比によって定められる
エッチング液の引火点が存在しない組成に調合するもの
である。したがって、上記請求項1の共通の効果に加え
て、本発明のエッチング液は引火点を持たないという効
果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で例示したエッチング装置の
構成を示す模式図。
【図2】本発明の実施例1で例示したエッチングの過程
を示す模式図。
【図3】本発明の実施例2で例示したエッチング装置の
構成を示す模式図。
【図4】本発明の実施例2で例示したエッチングの過程
を示す模式図。
【図5】本発明の実施例3で例示したヒドラジン(N2
4)−水(H2O)−水酸化カリウム(KOH)の3成
分状態図。
【図6】本発明の実施例4で例示したヒドラジン(N2
4)−水(H2O)−水酸化カリウム(KOH)の3成
分状態図。
【図7】本発明の実施例5で例示したヒドラジン−水系
の組成と引火点の関係を示すグラフ。
【図8】本発明の実施例5で例示したプロセス温度が引
火点よりも低い領域を示すヒドラジン−水−水酸化カリ
ウムの3成分状態図。
【図9】本発明の実施例5で例示した引火点の存在しな
い領域を示すヒドラジン−水−水酸化カリウムの3成分
状態図。
【符号の説明】
1…エッチング液 2…エッチング槽 3…マグネチッ
ク・スターラ・バー 4…ヒータ 5…温度計 6…冷却管 10…{100}面を主面とするシリコン基板 11
…シリコン酸化膜 12…シリコン酸化膜 20…{111}面で構成さ
れるエッチング側壁 21…エッチング底面 22…{100}面からなる
底面 23…緩やかな斜面 24…マイクロ・ピラミッド 3
0…エピタキシャル基板 31…{100}面を主面とするp型シリコン基板 32…n型エピタキシャル層 33…シリコン酸化膜
34…シリコン酸化膜 35…白金電極 36…電源 40…ダイ
アフラム 44…マイクロ・ピラミッド
フロントページの続き (72)発明者 野口 隆利 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社内 (72)発明者 内山 誠 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭53−121467(JP,A) 特開 昭61−220335(JP,A) 特開 平7−22605(JP,A) 特開 平7−45582(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/306,21/3063,21/308

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルカリ系のエッチング液を用いてシリコ
    ン半導体を異方性エッチングする方法において、 上記アルカリ系のエッチング液の組成は、少なくともヒ
    ドラジン(N24)、水酸化カリウム(KOH)および
    水(H2O)の3成分を含み、 上記水酸化カリウム(KOH)の含有量を、重量%で、
    少なくとも0.3%以上とすることを特徴とするシリコ
    ン半導体の異方性エッチング方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載のシリコン半導体の異方性エ
    ッチング方法において、 アルカリ系のエッチング液の組成は、ヒドラジン(N2
    4)、水酸化カリウム(KOH)および水(H2O)の
    3成分を含有し、これら3成分の合計量を100とし、
    各成分(N24、H2O、KOH)の含有量を、それぞ
    れ重量%で表わした3成分状態図において、 点(64、36、0)と点(0、36、64)を結ぶ直
    線と、 点(32、68、0)と点(32、0、68)を結ぶ直
    線と、 点(0、99.7、0.3)と点(99.7、0、0.3)
    とを結ぶ直線と、 点(0、90、10)と点(90、0、10)とを結ぶ
    直線で囲まれた範囲内にある組成のエッチング液とする
    ことを特徴とするシリコン半導体の異方性エッチング方
    法。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2に記載のシリコン
    半導体の異方性エッチング方法において、 耐食性のマスクの下に進行する、いわゆるアンダーエッ
    チングによるエッチング形状の制御を、上記エッチング
    液の組成を制御することによって行うことを特徴とする
    シリコン半導体の異方性エッチング方法。
  4. 【請求項4】請求項1ないし請求項3のいずれか1項に
    記載のシリコン半導体の異方性エッチング方法におい
    て、 上記シリコン半導体はp型領域とn型領域を有し、 上記n型領域に、該n型領域の溶解を阻止する電位を印
    加してエッチングを行うことを特徴とするシリコン半導
    体の異方性エッチング方法。
  5. 【請求項5】請求項1ないし請求項4のいずれか1項に
    記載のシリコン半導体の異方性エッチング方法におい
    て、 KOHの含有量を、重量%で、8.9%以上としたエッ
    チング液を用いてエッチングすることを特徴とするシリ
    コン半導体の異方性エッチング方法。
  6. 【請求項6】請求項1ないし請求項5のいずれか1項に
    記載のシリコン半導体の異方性エッチング方法におい
    て、 エッチング液を、ヒドラジン(N24)と水(H2O)
    との2成分の比よって定められるエッチング液の引火点
    を、上記エッチング方法を実施するエッチング温度より
    も高くなる組成に調合するか、 もしくは上記エッチング方法を実施するエッチング温度
    を、上記2成分の比によって定められるエッチング液の
    引火点よりも低くなる組成に調合することを特徴とする
    シリコン半導体の異方性エッチング方法。
  7. 【請求項7】請求項1ないし請求項6のいずれか1項に
    記載のシリコン半導体の異方性エッチング方法におい
    て、 エッチング液を、ヒドラジン(N24)と水(H2O)
    との2成分の比によって定められるエッチング液の引火
    点が存在しない組成に調合することを特徴とするシリコ
    ン半導体の異方性エッチング方法。
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