JP3443150B2 - 方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性珪素鋼板の製造方法

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JP3443150B2 JP00009694A JP9694A JP3443150B2 JP 3443150 B2 JP3443150 B2 JP 3443150B2 JP 00009694 A JP00009694 A JP 00009694A JP 9694 A JP9694 A JP 9694A JP 3443150 B2 JP3443150 B2 JP 3443150B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、方向性珪素鋼板(以下
方向性電磁鋼板と云う)に関するものである。 【0002】 【従来の技術】方向性電磁鋼板の製造においては熱延鋼
帯は必要に応じて焼鈍後1回または中間焼鈍を挟む2回
以上の冷間圧延を行い、所定の板厚とし、次いで一次再
結晶焼鈍を行った後焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍を施
すことで行われている。この一次再結晶焼鈍では脱炭も
行われているのが一般である。しかるに近年溶鋼の状態
で脱炭した素材を使い、一次再結晶焼鈍工程での脱炭を
省略した技術が数多く報告されている。例えば特開昭5
4−112317、特開昭55−073818、特開昭
57−114614、特開昭57−207114、特開
昭58−100627、特開昭61−91319、特開
昭62−83421、特開平1−119644、特開平
1−212721、特開平1−309923、特開平1
−309924、特開平2−30714、特開平2−1
41532、特開平3−111516、特開平3−28
7721、特開平5−9666号公報等数多く存在す
る。しかしながらこれらの技術で方向性電磁鋼板を安定
して製造するためには製造条件を厳密に制御する必要が
ある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、方向性電磁
鋼板を安定して製造する方法を提供するものである。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、C:
0.005〜0.025重量%(以下%と略記する)以
下、Si:2.0〜4.5%、酸可溶性Al:0.01
0〜0.080%、N:0.001〜0.020%、
S:0.0020〜0.060%、Sn:0.01〜
0.3%の成分を含んだ珪素鋼スラブを1000℃から
1200℃の温度域で粗圧延後仕上圧延を行って熱延鋼
帯とした後、熱延板焼鈍を施すことなく、冷間圧延圧下
率15%以上80%以下の冷間圧延を行った後、700
℃から1100℃の温度域で焼鈍後、40%以上95%
以下の圧下率で所定の板厚とし、800℃から1000
℃の温度域で5秒以上200秒以内加熱脱炭後鋼板を走
行せしめる状態で窒化処理をし、焼鈍分離剤を塗布し、
仕上焼鈍を施すことにある。この場合一次再結晶焼鈍の
少なくとも加熱後段の雰囲気のP H2 O /P H2 を0.
06以上4.0以下とした後、窒化処理を行うことで、
所望の窒化が効率的に行われる。 【0005】即ち本発明においては窒化処理後の窒素含
有量は150ppm から1500ppmの範囲にあることが
磁気特性の優れた二次再結晶方位を発現させ、そのため
に、一次再結晶焼鈍の雰囲気をこのように制御すること
が好ましい。またこのように窒化を行っても、仕上焼鈍
の雰囲気の窒素分圧が50%以下では形成された窒化物
がインヒビターとして有効に働かない場合があるので、
該仕上焼鈍の昇温過程800℃以上で窒素分圧50%以
上とすることが好ましい。 【0006】以下本発明について詳細に説明する。一次
再結晶焼鈍工程では脱炭を行わないで一方向性電磁鋼板
を製造する方法として発明者らは特開昭57−1146
14号公報で開示した技術を開発したが、この方法では
磁束密度が比較的低いという欠点があった(実施例B8
=1.88)。また磁束密度が高い鋼板を製造する技術
として特開昭57−89439号公報(実施例B8
1.97)や、特開昭57−207114号公報(実施
例B8=1.94)も開発されたが、安定してこのよう
な高い磁束密度が得られない場合が存在した。 【0007】その原因について鋭意研究し、C:0.0
05〜0.025%、Si:2.0〜4.5%、酸可溶
性Al:0.010〜0.080%、N:0.001〜
0.020%、S:0.0020〜0.060%、S
n:0.01〜0.3%の成分を含有した珪素鋼スラブ
を1000℃から1200℃の温度域で粗圧延を開始
し、仕上圧延を行って熱延鋼帯とした後熱延板焼鈍を施
すことなく、冷間圧延圧下率15%以上80%以下の冷
間圧延を行った後、700℃から1100℃の温度域で
焼鈍後40%以上95%以下の圧下率で冷間圧延を行い
所定の板厚とし、800℃から1000℃の温度域で5
秒以上200秒以内加熱脱炭後鋼板を走行せしめる状態
で窒化処理をし、焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍を施す
ことにある。この場合一次再結晶焼鈍の加熱後段の雰囲
気のP H2 O /P H2 を0.06以上4.0以下とした
後、窒化処理を行うことで、所望の窒化が効率的に行わ
れる。 【0008】先に述べたように本発明においては窒化処
理後の窒素含有量は150ppm から1500ppm の範囲
にあることが磁気特性の優れた二次再結晶方位を発現さ
せ、そのため一次再結晶焼鈍の加熱後段の雰囲気のP H
2 O /P H2 を0.06以上4.0以下とすることが好
ましい。窒素量の下限を150ppm としたのはこれ以下
の窒素量では時として二次再結晶が発現しない場合や、
発現しても磁気特性の著しく悪い結晶方位を持った二次
再結晶粒が発現するためであり、1500ppm以下とし
たのはこれ以上窒素量を増やしても磁気特性の向上は飽
和するので、これ以上の窒素量とする必要はないので1
500ppm としたものである。また仕上焼鈍の雰囲気の
窒素分圧が50%以下では形成された窒化物がインヒビ
ターとして有効に働かない場合があるので、該仕上焼鈍
の昇温過程800℃以上で窒素分圧50%とすることが
好ましいことを発見し、本発明を完成させた。 【0009】熱延板を直ちに冷延後700℃から110
0℃の温度域で焼鈍を行う(この熱処理を中間焼鈍と呼
ぶ)理由は第1に再結晶させることで、熱延組織を破壊
し、結晶粒を微細化することにある。この場合冷延率を
15%以上としたのは、これ以下の圧下率ではこの中間
焼鈍で結晶粒が微細化しないためであり、80%以下と
したのはこれ以上の圧下率でも微細化効果は向上する
が、これ以上高い圧下率とすると、熱延板の厚みを厚く
しないと、2回目の冷延圧下率を高くとれない場合があ
り、このような厚い熱延板を所定の厚みまで冷間圧延す
ることは経済的でないので、上限を80%とした。 【0010】第2の理由はこの中間焼鈍でAlNの析出
を指向したものである。AlNは冷間圧延歪を付与する
ことで中間焼鈍で析出が促進される。中間焼鈍温度を7
00℃以上としたのはこれ以下では再結晶が起きにく
く、インヒビターとしてのAlNの析出も不十分となる
ためであり、1100℃以下としたのは、これ以上高温
では、再結晶粒が粗大化して、二次再結晶の発現に適し
た一次再結晶集合組織が形成され難くなることと、Al
Nの析出効果が不十分となる。またこの中間焼鈍では冷
却は空冷より速い速度で冷却することが好ましい。 【0011】このような速い速度の冷却を行うと、固溶
Cが増加し、またC量によっては、マルテンサイトのよ
うな硬い第2相が形成される。この過飽和の固溶Cや硬
い第2相が存在すると、引き続く冷延再結晶で磁束密着
の高い二次再結晶粒が発現し易い一次再結晶集合組織が
形成される効果がある。またCが0.025%と高い場
合一次再結晶焼鈍での脱炭を容易にするため、この中間
焼鈍で部分的に脱炭を行うことも良い。またこのような
脱炭を行うと、表面相の結晶粒が粗大化し、その結果、
一次再結晶で(110)〔001〕方位の存在頻度が増
し、二次再結晶粒径を微細化し、鉄損を改善する効果も
ある。 【0012】本発明においてはこの中間焼鈍後再び40
%以上95%以下の圧下率で冷間圧延を行った後、一次
再結晶焼鈍を行う。圧下率を40%以上としたのはこれ
以下の圧下率では一次再結晶で(110)〔001〕に
喰われ易い結晶粒の発達が不十分で高い磁束密度が得ら
れないためであり、95%以下としたのはこれ以上の圧
下率では、一次再結晶で核となる(110)〔001〕
方位粒の発達が不十分となり、高い磁束密度が得られな
いためである。 【0013】特開平2−77525号公報で開示された
方向性電磁鋼板の製造技術においては、脱炭焼鈍後鋼板
を走行せしめる状態下で窒化処理をし、焼鈍分離剤を塗
布した後高温仕上焼鈍をすることを特徴としている。本
発明における粗熱延開始温度は1200℃以下であり、
この条件はこの先行技術と同一である。本願発明とこの
先行技術が構成上最も異なる点は先ず本発明は中間焼鈍
を挟んだ2回冷延工程であることであり、第2に鋼成分
であり、第3に一次再結晶焼鈍条件である。先行発明に
おいてはSnは添加されていないが、本発明においては
Snを0.01%から0.3%の範囲で添加されてお
り、Snを積極的に活用しているところが成分で異なる
第1の点である。 【0014】またこの先行発明ではSが0.012%以
上含まれている場合は二次再結晶不良になるので、Sは
好ましくは0.007%以下としている。しかるに本発
明においてSは0.010%以上でも良好な二次再結晶
が発現し、0.04%程度まではSは高いほど二次再結
晶が安定する。本発明とこの先行技術がSの作用効果の
点で全く異なる。Sの範囲及びその作用効果が異なる点
が成分で異なる第2の点である。先行発明ではCは0.
025%以下では二次再結晶が不安定になり、かつ二次
再結晶した場合でも製品の磁束密度が1.8Tesla と低
下するとしている。本発明においては熱間圧延以前の状
態ですでにCが0.005%から0.025%の範囲で
あるが、二次再結晶は安定であり、磁束密度も1.8Te
sla 以上の高い値を示す。一次再結晶前のC量が異なる
点が先行発明と成分で異なる第3の点である。 【0015】方向性珪素鋼板は一般に熱延工程ではα,
γ2相組織であり、2相組織であれば冷延前の結晶粒は
微細化される。Cが低くほぼα単相であると、冷延前組
織は粗大化し、先行発明に述べてあるように二次再結晶
が不安定となる。しかし本発明の如く中間焼鈍を施せ
ば、結晶粒が微細化できこの問題は解決できる。更に中
間焼鈍を施すことで二次再結晶核が増加し、二次再結晶
粒径が微細化し、鉄損を低減する効果がある。本発明の
インヒビターとしては硫化物と窒化物の双方及び、固溶
Snを活用するところが本発明と先行発明で成分構成が
異なってくる理由である。 【0016】本発明では一次再結晶焼鈍前にCが0.0
05%以上0.025%以下、Sが0.0020%以上
でSnが0.01%から0.3%の範囲で含有されてい
る鋼板を800℃以上の温度で脱炭焼鈍後一次再結晶焼
鈍させた後窒化処理することにある。先行技術では一次
再結晶焼鈍前にC:0.025%から0.075%以下
含有されている鋼板を再結晶させ、引き続き水蒸気を含
んだ雰囲気中で800℃から850℃の温度で120秒
以上加熱して脱炭を行い、しかる後に窒化処理を行って
いる。即ち本発明鋼では炭素量が少ないので脱炭が極め
て容易となる。そのため、従来の素材と比べ脱炭に要す
る時間が短縮できるだけでなく、脱炭時の雰囲気の許容
範囲が広がる。例えば75%H2 −N2 雰囲気であれば
露点は40℃以下20℃以上あれば0.002%以下に
脱炭可能である。 【0017】二次再結晶焼鈍過程では鋼板表面に形成さ
れたSiO2 と鋼板に塗布したMgOが反応し、いわゆ
るグラス皮膜と呼ばれるセラミックス皮膜が形成され
る。この皮膜は鋼板に表面張力を与えて鉄損を下げる働
きをするが、この皮膜の善し悪しは、一次再結晶焼鈍時
の雰囲気に強く影響されることが良く知られている。C
含有量の高い素材では効率的に脱炭するため、一次再結
晶焼鈍の雰囲気の酸素分圧は、ある範囲に厳密に制御す
る必要があるが、本発明鋼では炭素量が0.025%以
下であるので雰囲気の酸素分圧をかなり広い範囲で選ぶ
ことが可能であり、グラス皮膜の形成に有利な雰囲気を
選べる利点がある。 【0018】また従来材では一次再結晶焼鈍の脱炭に伴
い鋼板表面に形成される内部酸化層が、二次再結晶焼鈍
後も受け継がれ、鉄損を劣化させる原因の一つとなる
が、本発明では脱炭時間が短いことや、雰囲気の酸化度
を変えることでこのような内部酸化層の形成を軽減で
き、二次再結晶焼鈍後受け継がれる内部酸化層が少な
く、この内部酸化層に起因する鉄損劣化を軽減すること
が可能である。一次再結晶と脱炭に引き続き窒化処理を
連続的に行うが、この窒化処理前の雰囲気のP H2 O /
P H2 を0.06以上4.0以下とすることで、二次再
結晶が安定し、かつ良好な磁気特性が得られる。即ちこ
のような雰囲気制御を行うことで窒化処理後の窒素量を
150ppm から1500ppm に容易に制御可能となる。 【0019】以上成分及び一次再結晶焼鈍の各条件及び
窒化処理後の窒素量を組み合わせることで、本発明では
二次再結晶を安定させ、かつ磁束密度を1.8Tesla 以
上確保できる。実験事実からその組み合わせ効果が生じ
る理由を以下の如く解釈している。先ず、Cを0.00
5%以上0.025%以下に限定した理由を述べる。本
発明鋼のCの常温での固溶量は0.002%以下であ
り、これ以上のCが含有された場合炭化物として析出す
る。高温ではCの溶解量は高くなり、本発明鋼ではおよ
そ0.015%程度である。これ以上のCを含む場合は
オーステナイト相が析出する。オーステナイトが析出す
るとCはオーステナイト相に吸収され、それと平衡関係
にあるフェライト相のCは低下する。しかしCが0.0
25%程度であれば、形成されるγ相も少なく、0.0
15%C材とほぼ同様の作用効果がある。従って、Cの
上限を0.025%としたが、好ましい範囲は0.01
5%以下である。 【0020】冷延前に過飽和のCが存在すると、冷延工
程で二次再結晶に有利な集合組織が形成されることを発
見し本発明が完成された。中間焼鈍で700℃から11
00℃の温度域で加熱後空冷より速い速度(通常は水冷
する)で冷却する目的の一つは先に述べた如くこの過飽
和のC量を高め、またγ相があればこれをマルテンサイ
トのような硬い相にするためである。このように鋼板に
過飽和のCが多く存在する場合や、硬い相があると引き
続く圧延再結晶工程で二次再結晶に有利な集合組織が形
成される。 【0021】更にこのような過飽和のCが含まれた状態
で冷間圧延途上で、少なくとも1回以上100℃以上の
温度で1分以上保持した後冷間圧延を繰り返すと、二次
再結晶に有利な集合組織が形成されることが明らかとな
った。この場合保持温度は100℃以上高い方が効果的
であるが、300℃以上にすることは経済的でないので
上限を300℃とした。また保持時間は1分以上長いほ
ど良いが、1時間を超えるとその効果が飽和する。 【0022】Snが0.01〜0.3%含まれると、
(110)〔001〕方位の二次再結晶核となる可能性
のある結晶粒が増加し、二次再結晶粒以外の結晶粒の
成長を阻止する作用効果があることが分かった。この場
合,の効果はSnが0.01%以上あれば顕著とな
り、Snが増すほどその効果が大きくなることが分かっ
た。従ってSnは多いほど良いが、上限を0.3%とし
たのはこれ以上の添加では一次再結晶焼鈍後の窒化が阻
害され、結果としてインヒビターの強度が弱まるためで
ある。本発明における窒化処理後の窒素含有量は分析値
で150ppm から1500ppm あれば、二次再結晶が安
定し、良好な磁気特性が得られる。従ってSnの添加量
が0.3%を超えても、窒化処理後150ppm 以上あれ
ばSnの添加量は0.3%以上あっても良いのはいうま
でもない。 【0023】次にSを0.002〜0.060%の範囲
に限定したのはの効果が発現するためである。即ち本
発明素材成分においてはSが0.002%未満では二次
再結晶粒が発現し難くなったり、二次再結晶した場合も
(110)〔001〕から外れた二次再結晶粒の発現が
多くなることを見いだした。即ち本成分系においてはS
はの効果を与えると解釈される。そのメカニズムは明
瞭ではないがSが0.002%以上存在する場合は固溶
Sと微細なS系硫化物がの効果を発現するものと解釈
している。Sは0.06%でも効果があるが、Sが多い
場合熱延工程で割れが発生し易いので、本発明では上限
を0.060%としたものである。 【0024】本発明において、Mn量は0.05〜0.
3%とすることが二次再結晶の発現に好ましい。これ
は、Mn系硫化物の形成によるものであり、Mn量が
0.05%以下でもMn系硫化物は形成されるが、二次
再結晶の発現に対する効果が少なくなること、また逆に
0.3%を超えるとMn系硫化物のサイズが大きくなり
すぎて、磁束密度の高い二次再結晶粒が成長し難くなる
ためである。 【0025】次に先行発明と異なる一次再結晶焼鈍条件
を選択した冶金学的理由を述べる。先にも述べた如く、
先行技術では一次再結晶焼鈍工程において820℃から
860℃で120秒以上脱炭性雰囲気下での加熱が必要
である。この場合加熱温度が900℃以上では、脱炭に
有害な層が鋼板表面に形成され、脱炭し難くなるので、
加熱温度は900℃以下に抑えられている。この脱炭焼
鈍工程では鋼板表面部に内部酸化層が形成され、この内
部酸化層は仕上焼鈍工程で形態を変化させるが最終製品
まで残存し、磁気特性特に鉄損を劣化させる。しかるに
本発明鋼板では一次再結晶焼鈍では再結晶させることだ
けが主目的であり、脱炭は最大0.025%のCを0.
002%以下にするだけで良いので、このような製品の
鉄損に悪影響を与える原因となる内部酸化の形成を抑え
る雰囲気で加熱することが可能となり、良好な磁気特性
を得ることが容易となる。このため加熱温度の上限はな
く、加熱時間も短時間でも良い。 【0026】加熱温度は再結晶とわずかの脱炭さえすれ
ば良いので700℃以上であれば良いが、加熱温度を8
00℃以上としたのは、これ以下の温度で一次再結晶さ
せた場合、加熱時間が短いと一次再結晶粒径が小さいた
め、結果として製品の磁束密度が低下する場合があるか
らである。加熱温度の上限を1000℃以下としたのは
これ以上の加熱温度でも良好な磁気特性が得られるが、
時として磁気特性が劣化する等安定して良好な特性が得
られない場合があることと、このような高温で加熱する
ことは不経済なためである。加熱時間を5秒以上とした
のは、これ以上の時間であれば脱炭が可能で良好な磁気
特性が得られるためである。本発明のCの上限である
0.025%含んだ場合、脱炭はこの一次再結晶焼鈍工
程のみならず、中間焼鈍工程や、仕上焼鈍工程で受け持
たせることで、一次再結晶焼鈍での加熱時間を短縮でき
る。 【0027】加熱時間の上限を200秒以下としたの
は、これ以上の加熱時間でも良好な磁気特性が得られる
が、加熱時間が長すぎると引き続く窒化処理に不利な表
面性状となり、結果として製品の磁気特性が劣化する等
安定して良好な特性が得られない場合があることと、長
時間加熱することは不経済であるためである。この場合
加熱前段の雰囲気のP H2 O /P H2 は0.06以下と
し、しかる後に窒化処理開始前の雰囲気のP H2 O /P
H2 を0.06以上4.0以下とすることが好ましい。
このような雰囲気で処理することで製品の磁気特性が向
上することと、引き続き窒化工程で窒化し易くなるの
で、成分的に窒化され難いSn等の元素が添加されてい
る場合特に有効である。 【0028】以上中間焼鈍工程がもたらす効果と成分効
果と一次再結晶焼鈍の効果が相俟って、先行技術では不
可能なCが0.005%以上0.025%以下の素材を
出発材として二次再結晶が安定し、かつ磁束密度が1.
8Tesla 以上の方向性珪素鋼板の製造が可能となったと
考えている。以下本発明法におけるその他の成分、熱延
条件、熱延以降の処理条件について述べる Siは含有量が多いほど固有抵抗が増加して製品の渦流
損を減少させるので、渦流損を減少させるためにはSi
は多いほど良い。Siを2%以上と限定したのはこれ以
下では渦流損が大きく好ましくないので下限を2%とし
たものである。しかしSiは添加量が増すほど冷間圧延
工程で割れ易くなる。この傾向はCが高いほど顕著とな
る。本発明鋼は冷間圧延工程ではCが既に0.004%
以下であるので、従来の素材と較べ割れ難いが、Si
4.5%以上では冷間圧延に特別の工夫が必要で経済的
に製造するという本発明の目的にそれるので上限を4.
5%とした。 【0029】Alは(Al,Si)Nを形成しインヒビ
ターとして働くが、酸可溶性Alとして0.01%以上
ないとその効果が発揮されないので下限を0.01%と
した。上限を0.08%としたのはこれ以上のAlが存
在するとインヒビターとして有効に働かなくなるためで
ある。Nは(Al,Si)Nを形成しインヒビターとし
て働くが、スラブの段階で0.001%以上ないとその
効果が発揮されないので下限を0.001%とした。上
限を0.02%としたのはこれ以上含まれるとブリスタ
ーと呼ばれる表面傷が発生するためである。 【0030】粗熱延開始温度が1200℃以上でも本発
明法では二次再結晶が安定で製品の磁束密度も良好であ
る。しかし1200℃以上の高温で粗圧延を開始するた
めには、スラブを高温で加熱するとか、CC−DRプロ
セスを採用する場合、温度低下がないよう特別の注意が
必要なので、経済的ではないので上限を1200℃とし
た。粗熱延開始温度が1000℃以下でも良好な磁気特
性が得られるが、熱延に要するエネルギーが多く必要
で、かつ熱延時に鋼板表面に傷が入り易くなるので経済
的でないため、粗熱延開始温度を1000℃以上とし
た。 【0031】仕上焼鈍の雰囲気は従来の方向性電磁鋼板
の仕上焼鈍同様で良い。しかし仕上焼鈍昇温過程の窒素
を50%以上の雰囲気で焼鈍すると、安定して良好な磁
気特性が得られるので、仕上焼鈍の昇温過程における8
00℃以上の領域で窒素50%以上の雰囲気で加熱する
ことが好ましい。この場合800℃以上と限定したの
は、これ以下の温度では影響が少ないためである。窒素
量は100%でも良いが、全く水素を含まない場合雰囲
気中に酸素等が混入すると、鋼板が酸化される場合もあ
り、好ましくないので数%の水素を混入させておくこと
が好ましい。 【0032】ところで、本発明鋼の窒素含有量は先に説
明した如く、熱延鋼帯の状態では0.001%以上、
0.020%以下の範囲であれば良いが、窒化処理後は
150ppm から1500ppm の範囲が望ましい。これは
窒素が少ない場合二次再結晶が発現し難くなる傾向が生
じたり、二次再結晶が発現しても磁束密度が著しく悪く
なるためである。窒素含有量が低い場合二次再結晶が発
現し難くなるのは窒化物としてのインヒビターが不足す
るため、いろいろの方位を持った結晶粒が成長するため
である。二次再結晶が発現しても磁束密度が低いのは、
窒化物としてのインヒビターが不足するため、二次再結
晶が低温で発現し、その場合の二次再結晶方位は(11
0)〔001〕方位以外の二次再結晶粒である確率が高
くなるためである。窒素含有量が高い場合は、二次再結
晶が発現するので問題ないが、窒化量を増やすことは経
済的でないので1500ppm 以下にすることが良い。 【0033】以下本発明の実施態様を述べる。C:0.
005〜0.025%好ましくは0.015%以下、S
i:2.0〜4.5%、酸可溶性Al:0.010〜
0.080%、N:0.001〜0.020%、Sn:
0.010〜0.3%、S:0.002〜0.060
%、残部Fe及び不可避的不純物からなる溶鋼を通常の
工程もしくは、連続鋳造してスラブとした後、1200
℃から1000℃の温度域から熱間圧延して熱延鋼板あ
るいは、熱延鋼帯とする。この熱延鋼板は熱延板焼鈍を
行うことなく、圧下率15%以上80%以下で冷延され
た後、700℃〜1100℃の温度域で短時間加熱後空
冷より速い速度で冷却される。ついで圧下率40%以上
95%以下で冷延された後800℃〜1000℃の温度
域で一次再結晶焼鈍される。 【0034】この焼鈍の後段でインヒビター強化のため
アンモニア含有雰囲気による窒化処理を行う。次いで再
結晶板は、焼鈍分離剤が塗布されて仕上焼鈍炉に入る。
仕上焼鈍の昇温速度は、通常の一方向性電磁鋼板のそれ
と同様である。仕上焼鈍の昇温時の雰囲気も通常の一方
向性電磁鋼板のそれと同様、中性あるいは還元性である
が、800℃を超える温度域では窒素分圧を50%以上
とすることが好ましい。なお、窒素分圧調整のためアル
ゴン、ヘリウム等の不活性ガスを混合することは何等差
し障りない。二次再結晶完了後、純化のため100%水
素で高温(約1200℃)保持される。仕上焼鈍終了
後、必要に応じてレーザービーム照射等の磁区細分化処
理を行う。 【0035】 【実施例】C:0.014%、Si:3.30%、M
n:0.090%、P:0.026%、Al:0.02
8%、S:0.0070%、Cr:0.10%、Cu:
0.011%、Sn:0.60%、N:0.0070%
を主成分としたスラブを1100℃の温度で2時間加熱
後、粗圧延、仕上圧延を経て厚さ3.5mmの熱延板とし
た(A)。比較のため2.3mmの熱延板も試作した
(B)。材料Aは直ちに冷延して厚さ2.3mmとした
(圧下率34%)。次いで900℃で2分間加熱し水冷
した。酸洗後冷間圧延を行い厚さ0.30mmとした。こ
の場合冷間圧延途中板厚1.6mm,1.2mm,0.8m
m,0.6mm,0.4mmの各厚みで250℃20分保持
した。次に表1に示した温度、時間で加熱後、冷却過程
でN2 −H2 −NH3 の雰囲気で連続的に窒化処理し
た。次にMgOを塗布し95%N2 −H2 の雰囲気で昇
温速度15℃/hrで1200℃まで加熱後、100%H
2 雰囲気で20時間加熱後冷却した。次いで歪取り焼鈍
を行い磁気特性を測定した。結果を表1に示す。 【0036】Bの比較材は熱延板を900℃で2分間加
熱し水冷した。酸洗後冷間圧延を行い厚さ0.30mmと
した。この場合冷間圧延途中板厚1.6mm,1.2mm,
0.8mm,0.6mm,0.4mmの各厚みで250℃20
分保持した。次に表1に示した温度、時間で加熱後、冷
却過程でN2 −H2 −NH3 の雰囲気で連続的に窒化処
理した。次にMgOを塗布し95%N2 −H2 の雰囲気
で昇温速度15℃/hrで1200℃まで加熱後、100
%H2 雰囲気で20時間加熱後冷却した。次いで歪取り
焼鈍を行い磁気特性を測定した。結果を表1に示す。表
に示したように本発明材は比較材と比べ特に低い鉄損が
得られた。 【0037】 【表1】 【0038】 【発明の効果】本発明により、スラブの段階で0.00
5%から0.025%という比較的低いCを含有した珪
素鋼を素材として磁気特性の優れた珪素鋼板が安価に容
易に得られる技術が提供された。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−9666(JP,A) 特開 平2−77525(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12 C22C 38/00 303 C22C 38/60 H01F 1/16

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量%で、 C :0.005〜0.025% Si:2.0〜4.5%、 酸可溶性Al:0.010〜0.080%、 N :0.001〜0.020%、 S :0.0020〜0.060%、 Sn:0.01〜0.3%、 残部Fe及び不可避的不純物を含んだ珪素鋼スラブを1
    000℃から1200℃の温度域で粗圧延を開始し、引
    き続き仕上圧延を行って熱延鋼帯とした後、熱延板焼鈍
    を施すことなく、冷間圧下率15%以上80%以下の冷
    間圧延を行った後、700℃から1100℃の温度域で
    焼鈍後、40%以上95%以下の圧下率で所定の板厚と
    し、800℃から1000℃の温度域で5秒以上200
    秒以内加熱脱炭した後、一次再結晶焼鈍の少なくとも加
    熱後段の雰囲気のP H 2 O /P H 2 を0.06以上4.
    0以下とした後、鋼板を走行せしめる状態で窒化処理を
    し、焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍を施すことを特徴と
    する方向性珪素鋼板の製造方法。
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