JP3441327B2 - 耐摩擦溶融性に優れた皮革様シートの製造方法 - Google Patents

耐摩擦溶融性に優れた皮革様シートの製造方法

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JP3441327B2
JP3441327B2 JP00517597A JP517597A JP3441327B2 JP 3441327 B2 JP3441327 B2 JP 3441327B2 JP 00517597 A JP00517597 A JP 00517597A JP 517597 A JP517597 A JP 517597A JP 3441327 B2 JP3441327 B2 JP 3441327B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐摩擦溶融性、耐
摩耗性に優れ、しかも引張強さなどの力学的性質、耐水
性等の耐久性、耐寒性などの特性においても良好であ
り、柔軟性や屈曲性にも富んでいて、スポーツ用品、
靴、鞄などの広範囲な用途に使用することのできる皮革
様シートを、安価でかつ生産性に優れた方法で製造する
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、銀面層付の皮革様シートの製造方
法としては、離型紙上にポリウレタン溶液を塗布し、乾
燥してフイルムを形成したあと、該フイルムを編織布又
は不織布からなる基材の表面に接着剤で貼り合せ、離型
紙を剥離する方法、いわゆる乾式法が一般的に用いられ
ている。また基材の表面に、ポリウレタン溶液を塗布
し、湿式凝固又は乾式凝固方法にて多孔質のポリウレタ
ン層を形成し、そのうえに着色剤を含む樹脂溶液を塗布
・乾燥して着色層を形成した後、エンボスロールで凹凸
模様を形成する方法も一般に用いられている。
【0003】また特開昭53ー62803号公報には、
基材上に形成した合成樹脂層の上に、押出機を用いて合
成樹脂溶融物を膜状に押し出し、一体化すると共に表面
をエンボスする皮革様シートの製造方法が記載されてお
り、また特公平7ー3033号公報には、金属蒸着層に
T−ダイから押し出されたポリウレタン溶融体を積層す
るシートの製造方法が記載されている。また特開平2−
307986号公報には、合成繊維布帛の表面にシラン
カップリング剤をあらかじめ付与しておき、しかる後に
その表面に熱可塑性樹脂を溶融押出して布帛に圧着し、
布帛と熱可塑性樹脂層との接着強力を向上させる方法が
記載されている。
【0004】一方、皮革様シートの表面物性に関して
は、従来の熱可塑性エラストマーでは、耐摩擦溶融性、
耐摩耗性などの特性が低い。そのため、例えばシューズ
の爪先部分のように、苛酷な摩耗性が要求される用途に
は、柔軟性や風合を保ちながら耐摩擦溶融性、耐摩耗性
などの特性に優れ、しかも引張強さ、耐水性、耐寒性、
耐久性などの諸特性を兼ね備えた皮革様シートが求めら
れている。これに対し、本発明者らは、数平均分子量が
1500〜4000の高分子ジオール、有機ジイソシア
ネートおよび鎖伸長剤を用いて製造された対数粘度が
0.9dl/g以上で且つ長鎖ハードセグメント加熱溶
融保持率が80%以上である熱可塑性ポリウレタンの溶
融成形フイルムまたはシートであって、熱可塑性ポリウ
レタンの製造に用いられる前記高分子ジオールを構成す
る低分子ジオール単位の30モル%以上が1,9−ノナ
ンジオール単位からなっていて、且つ該高分子ジオール
の結晶化エンタルピー(△H)が70J/g以下である
ことを特徴とする熱可塑性ポリウレタンと繊維質基材と
の積層体からなる皮革様シートを特許出願している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この特許出願した方法
は、繊維質基材上に熱可塑性ポリウレタンを溶融押出し
し、同時に圧着して積層体を製造するものであり、銀面
層の形成と皮革様シートの形成が同時に行えるメリット
を有している。従来、積層体の製造方法としては、繊維
質基材に有機溶剤又は該溶剤に熱可塑性エラストマーを
溶解した溶液を塗布し、繊維質基材の溶剤塗布面とフィ
ルムとを貼り合わせ、乾燥することにより製造する方法
が公知である。この方法は、上記した銀面層の形成と皮
革様シートの形成を同時に行う方法と比べて、銀面層用
のフィルムを在庫しておき、随時、所望の繊維質基材と
組み合わせて積層するといった小ロット対応が必要な用
途において好まれて使用される。しかしながら、本発明
の目的である耐摩擦溶融性、耐摩耗性を満足するポリウ
レタンは、その構造上、積層時に用いる有機溶剤には実
質的に不溶であるため、フィルムと繊維質基材とを、有
機溶剤又は該溶剤に熱可塑性エラストマーを溶解した溶
液を塗布して積層する方法では、著しく接着面の剥離強
力が低いものしか得ることができなかった。
【0006】本発明の目的は、柔軟で良好な風合を保ち
ながら、耐摩擦溶融性、耐摩耗性、耐ブリード白化性に
優れ、しかも引張強さなどの力学的性質、耐水性、耐寒
性、耐久性などの諸特性を兼ね備えた皮革様シートの製
造に際し、別々に用意した銀面層用フィルムと繊維質基
材とを安価に、効率よく積層する方法を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は鋭意検討を
重ねた結果、積層時に使用する有機溶剤に実質的に不溶
のポリウレタン層の裏面に、あらかじめ、積層時に使用
する有機溶剤に可溶のエラストマーからなる厚さ10μ
以下の層を積層した一体化フィルムを製造しておき、必
要時にこれと繊維質基材とを積層する方法により本目的
が達成できることを見出し、これらの知見に基づいて本
発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、繊維質基材と、表面
に積層された凹凸模様又は鏡面模様を有するポリウレタ
ン無孔質層からなる皮革様シートを製造するに際し、以
下の(1)〜(4)の工程、(1)下記(3)の工程で
使用する有機溶剤に可溶のエラストマーからなる厚さ1
0μ以下の層(A)を形成する工程、(2)下記(3)
の工程で使用する有機溶剤に実質的に不溶のポリウレタ
ンの溶融物を層(A)上に流延して、層(A)上に無孔
質層(B)を積層し、一体化フィルム(C)を形成する
工程、(3)繊維質基材に、有機溶剤又は該溶剤に熱可
塑性エラストマーを溶解した溶液を塗布する工程、
(4)繊維質基材の溶剤塗布面と、フィルム(C)のエ
ラストマー(A)面とを貼り合わせ、乾燥する工程、を
順次行うことを特徴とする皮革様シートの製造方法であ
る。
【0009】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。ま
ず、表面に凹凸模様又は鏡面模様を有するポリウレタン
無孔質層(B)と、エラストマー層(A)を積層し、一
体化フィルム(C)を製造する。表面層にあたる無孔質
層を構成する樹脂は、強度、耐久性および天然皮革調の
性能が得られる点で、熱可塑性ポリウレタンが好まし
く、後述する、工程(3)の積層時に使用する有機溶剤
に実質的に不溶なポリウレタンである必要がある。すな
わち、部分的に架橋構造を有しているか、分子鎖同士が
高度にからみあって、有機溶剤に実質的に不溶になって
いるポリウレタンを用いることにより、高度な耐摩擦溶
融性、耐摩耗性を有する皮革様シートを得ることができ
る。
【0010】このようなポリウレタンとしては、従来公
知のポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネー
ト系等が使用できるが、これらを混合したものでもよ
く、また、他の熱可塑性エラストマー等をブレンドして
もよい。表面層に使用する樹脂の流動開始温度は120
℃〜260℃、好ましくは150℃〜240℃の範囲で
ある。さらに好ましくは、数平均分子量が1000〜4
000のポリエステルポリオール(a)、有機ジイソシ
アネート(b)および鎖伸長剤(c)を、下記の数式
(i): 1.00≦b/(a+c)≦1.10 (i) (式中、aはポリエステルポリオールのモル数、bは有
機ジイソシアネートのモル数、cは鎖伸長剤のモル数を
示す)を満足する割合で反応させて得られる熱可塑性ポ
リウレタンであり、しかも製造に用いられる前記ポリエ
ステルポリオール(a)のエステル基濃度(エステル結
合数/全炭素原子数)が0.08〜0.17であり、か
つ結晶化エンタルピー(ΔH)が70J/g以下であ
リ、さらに1分子当たりの水酸基の数が2.01〜2.
08個である、熱可塑性ポリウレタンである。このよう
な熱可塑性ポリウレタン(以下、これをポリウレタンと
略称する場合がある)は、例えば以下に述べる方法で製
造することができる。
【0011】ポリウレタンの製造に用いられるポリエス
テルポリオール(a)は、実質的にポリオール単位およ
びジカルボン酸単位から構成され、ポリエステルポリオ
ール(a)を構成するポリオール単位としては、例え
ば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,
4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジ
オール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジ
オール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−
メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジ
オールなどの1分子中に1級水酸基を2個含有する低分
子ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘ
キサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリ
ン、メチルグリコキシドなどの1分子中に水酸基を3個
以上含有する低分子ポリオールから誘導される単位を挙
げることができ、これらのうち1種または2種以上を含
ませることができる。これらのなかでも、耐摩擦溶融性
および耐加水分解性に優れたポリウレタンが得られる点
から1,9−ノナンジオール単位を含ませることが好ま
しく、また耐寒性に優れたポリウレタンが得られる点か
ら3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位を含ませ
ることも好ましく、耐摩擦溶融性および耐熱強度に優れ
たポリウレタンが得られる点からトリメチロールプロパ
ンを含ませることも好ましい。
【0012】ポリエステルポリオール(a)を構成する
ジカルボン酸単位としては、例えば、グルタル酸、アジ
ピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバ
シン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサン
ジカルボン酸などの飽和脂環族ジカルボン酸;フタル
酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボ
ン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和
ジカルボン酸;テトラブロモフタル酸などのハロゲン含
有ジカルボン酸;これらのエステル形成性誘導体、また
はこれらの酸無水物などが挙げられ、これらは2種以上
を用いてもよい。さらに、必要に応じて、トリメリット
酸、ピロメリット酸などの3官能以上の多塩基酸から誘
導される単位を少量含んでいてもよい。これらのなかで
も、得られるポリウレタンの耐摩擦溶融性、耐加水分解
性がより一層優れている点から、アジピン酸、アゼライ
ン酸、イソフタル酸のいずれかを用いたものが好まし
い。
【0013】ポリエステルポリオール(a)は、エステ
ル基濃度(1分子中のエステル結合数を1分子中の全炭
素原子数で除した数値)が0.08〜0.17の範囲で
あることが耐摩擦溶融性、耐熱強度および溶融成形性を
高める点で好ましく、得られるポリウレタンの耐摩擦溶
融性、耐熱強度および溶融成形性がさらに優れている点
から、0.10〜0.16の範囲であることが一層好ま
しく。ポリエステルポリオールのエステル基濃度が0.
08未満の場合には、得られるポリウレタンの溶融成形
性、耐寒性が低下し、またエステル基濃度が0.17よ
り大きい場合には、得られるポリウレタンの耐摩擦溶融
性、耐熱強度および耐加水分解性が低下する。
【0014】さらに、ポリエステルポリオール(a)
は、結晶化エンタルピー(ΔH)が70J/g以下であ
ることが好ましい。ポリエステルポリオールの結晶化エ
ンタルピー(ΔH)が70J/gより大きい場合には、
得られるポリウレタンの耐寒性が著しく低下し、低温
(例えば−30℃)雰囲気下においてクラックなどが発
生しやすくなる。ポリエステルポリオール(a)の結晶
化エンタルピー(ΔH)を70J/g以下とする方法と
しては、例えば、ポリエステルポリオール(a)を構成
するポリオール成分として、2−メチル−1,3−プロ
パンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオー
ル、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの側鎖
にメチル基を有する低分子ジオール成分を単独で、また
はこれらの側鎖にメチル基を有する低分子ジオール成分
と直鎖のジオール成分とを併用する方法、あるいはポリ
エステルポリオール(a)を構成するジカルボン酸成分
として、イソフタル酸、オルトフタル酸、テレフタル酸
などの芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジカルボン酸成
分とを併用する方法などを挙げることができる。なお、
本発明でいう結晶化エンタルピー(ΔH)は、いずれも
下記の実施例の項に記載した方法により測定した値をい
う。
【0015】さらに、ポリエステルポリオール(a)
は、1分子当たりの水酸基の数が2.01〜2.08個
の範囲であることが好ましく、さらに2.01〜2.0
7の範囲であることがより好ましく、さらに2.02〜
2.06の範囲であることが最も好ましい。ポリエステ
ルポリオール(a)の1分子当たりの水酸基の数が2.
01個未満の場合には、得られるポリウレタンの分子量
が十分に増加せず、耐摩擦溶融性、耐熱強度が低下す
る。一方、1分子当たりの水酸基の数が2.08個より
大きいと、得られるポリウレタンの耐熱強度が低下する
とともに、成形温度が高くなるために、成形する際にポ
リウレタンが熱劣化しやすくなり、溶融成形性が悪化す
る。ポリエステルポリオール(a)の1分子当たりの水
酸基の数を2.01〜2.08個とする方法としては、
例えば、ポリエステルポリオール(a)を構成するポリ
オール成分として、1分子中に1級水酸基を2個有する
低分子ジオール成分と、1分子中に水酸基を3個以上有
する低分子ポリオール成分とを、ポリエステルポリオー
ルの1分子当たりの水酸基の数が上記の範囲になるよう
に任意の割合で併用する方法、あるいは1分子当たり水
酸基を2個有するポリエステエルジオールと、1分子当
たり水酸基を2個以上有するポリエステルポリオールと
を、ポリエステルポリオールの1分子当たりの水酸基の
数が上記の範囲になるように任意の割合で併用する方法
などを挙げることができる。
【0016】ポリエステルポリオール(a)の数平均分
子量は、得られるポリウレタンの力学的性質、耐摩擦溶
融性、耐摩耗性、低温特性、溶融成形性等の観点から、
1000〜4000であることが好ましく、1500〜
3500であることがさらに好ましい。ポリエステルポ
リオール(a)の数平均分子量が1000よりも低い
と、得られるポリウレタンの引張強さなどの力学的性
質、耐摩擦溶融性、耐摩耗性、低温特性が低下し、40
00を越えると得られるポリウレタンを押出成形する場
合に、フィッシュアイなどのブツが発生し、吐出量の安
定性の確保が困難になる。なお、本明細書でいうポリエ
ステルポリオールの数平均分子量は、いずれもJIS
K1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出
した数平均分子量である。
【0017】ポリエステルポリオール(a)は、前述の
ポリオール成分およびジカルボン酸成分、またはこれら
のエステル化物を用いて、従来既知のエステル交換反
応、直接エステル化反応などによって重縮合させること
により製造される。その場合に、重縮合反応はチタン系
またはスズ系の重縮合触媒の存在下に行うことができる
が、チタン系触媒を用いた場合には、重縮合反応の終了
後にポリエステルポリオールに含まれるチタン系重縮合
触媒を失活させておくのが好ましい。
【0018】ポリエステルポリオール(a)の製造に当
たってチタン系重縮合触媒を用いる場合には、従来から
ポリエステルポリオールの製造に使用されているチタン
系重縮合触媒のいずれもが使用でき、特に制限されない
が、好ましいチタン系重縮合触媒の例としては、チタン
酸、テトラアルコキシチタン化合物、チタンアシレート
化合物、チタンキレート化合物などを挙げることができ
る。より具体的には、テトライソプロピルチタネート、
テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘ
キシルチタネート、テトラステアリルチタネートなどの
テトラアルコキシチタン化合物、ポリヒドロキシチタン
ステアレート、ポリイソプロポキシチタンステアレート
などのチタンアシレート化合物、チタンアセチルアセテ
ート、トリエタノールアミンチタネート、チタンアンモ
ニウムラクテート、チタンエチルラクテート、チタンオ
クチレングリコレートなどのチタンキレート化合物を挙
げることができる。
【0019】チタン系重縮合触媒の使用量は、目的とす
るポリエステルポリオールおよびそれを用いて製造する
ポリウレタンの内容などに応じて適宜調節することがで
き、特に制限されないが、一般に、ポリエステルポリオ
ールを形成するための反応成分の全重量に対して、約
0.1〜50ppmであるのが好ましく、約1〜30p
pmであるのがより好ましい。
【0020】ポリエステルポリオールに含まれるチタン
系重縮合触媒の失活方法としては、例えば、エステル化
反応の終了により得られたポリエステルポリオールを加
熱下に水と接触させて失活する方法、該ポリエステルポ
リオールをリン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン
酸エステルなどのリン化合物で処理する方法などを挙げ
ることができる。水と接触させてチタン系重縮合触媒を
失活させる場合には、エステル化反応により得られたポ
リエステルポリオールに水を1重量%以上添加し、70
〜150℃、好ましくは90〜130℃の温度で1〜3
時間加熱するとよい。チタン系重縮合触媒の失活処理は
常圧下で行っても、または加圧下で行ってもよい。チタ
ン系重縮合触媒を失活させた後に系を減圧にすると、失
活に使用した水分を除去することができて望ましい。
【0021】ポリウレタンの製造に用いられる有機ジイ
ソシアネート(b)の種類は特に制限されず、通常のポ
リウレタンの製造に従来から使用されている有機ジイソ
シアネートのいずれもが使用可能であり、分子量500
以下のものが好ましい。有機ジイソシアネートとして
は、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ
ート、p−フェニレンジイソシアネート、トルイレンジ
イソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネー
ト、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタン
ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの
芳香族ジイソシアネート類や、ヘキサメチレンジイソシ
アネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジ
シクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシ
リレンジイソシアネートなどの脂肪族または脂環式ジイ
ソシアネート類などを挙げることができる。これらの有
機ジイソシアネートのうち、1種または2種以上が使用
される。これらのなかでも、4,4’−ジフェニルメタ
ンジイソシアネートまたはp−フェニレンジイソシアネ
ートを使用するのが好ましい。また、トリフェニルメタ
ントリイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシア
ネートを、必要に応じて少量使用することもできる。
【0022】ポリウレタンの製造に用いられる鎖伸長剤
としては、通常のポリウレタンの製造に従来から使用さ
れているいずれもが使用でき、特に制限されないが、イ
ソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2
個以上有する、分子量300以下の低分子化合物を使用
するのが好ましい。例えば、エチレングリコール、1,
4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,
4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4
−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチ
ル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオ
ール類や、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレン
ジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、
ピペラジン、ピペラジン誘導体、フェニレンジアミン、
トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒ
ドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン
類、アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコー
ルなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらの
うち1種または2種以上が使用される。
【0023】ポリウレタンの製造にあたっては、前述の
ポリエステルポリオール(a)、有機ジイソシアネート
(b)および鎖伸長剤(c)を、下記の数式(i)を満
足する割合で反応させるのが好ましい。 1.00≦b/(a+c)≦1.10 (i) (式中、aはポリエステルポリオールのモル数、bは有
機ジイソシアネートのモル数、cは鎖伸長剤のモル数を
示す)
【0024】数式(i)におけるb/(a+c)の値が
1.00未満では、得られるポリウレタンの溶融成形後
の数平均分子量が十分に高い水準に維持されないことか
ら、耐熱強度、耐摩擦溶融性が不十分となる。一方、b
/(a+c)の値が1.10より大きい場合には、得ら
れるポリウレタンの溶融成形性が不良となる。得られる
ポリウレタンの耐熱性、溶融成形性などの諸性能が特に
良好になることから、b/(a+c)の値が1.005
〜1.10の範囲であることがより好ましく、1.00
5〜1.05の範囲であることが一層好ましく、1.0
1〜1.04の範囲であることがさらに好ましい。
【0025】ポリウレタンを製造する場合に、前述のポ
リエステルポリオール(a)のほかに、必要に応じて、
ポリカーボネートジオールなどの他の高分子ポリオール
を少量使用してもよい。
【0026】ポリウレタンは、スズ系ウレタン化触媒を
スズ原子の量に換算して0.5〜15ppm含有してい
るのが好ましい。スズ系ウレタン化触媒を0.5ppm
以上含有させると、成形後もポリウレタンの数平均分子
量が十分に高い水準に維持されるため、ポリウレタン本
来の物性が効果的に発現する。スズ系ウレタン化触媒の
含有量がスズ原子換算で15ppmを越えると、耐加水
分解性、熱安定性などの性能が低下する傾向があるため
好ましくない。
【0027】スズ系ウレタン化触媒としては、例えば、
オクチル酸スズ、モノメチルスズメルカプト酢酸塩、モ
ノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズモノオク
チレート、モノブチルスズモノアセテート、モノブチル
スズマレイン酸塩、モノブチルスズマレイン酸ベンジル
エステル塩、モノオクチルスズマレイン酸塩、モノブチ
ルスズマレイン酸ベンジルエステル塩、モノオクチルス
ズマレイン酸塩、モノオクチルスズチオジプロピオン酸
塩、モノオクチルスズトリス(イソオクチルチオグリコ
ール酸エステル)、モノフェニルスズトリアセテート、
ジメチルスズマレイン酸エステル塩、ジメチルスズビス
(エチレングリコールモノチオグリコレート)、ジメチ
ルスズビス(メルカプト酢酸)塩、ジメチルスズビス
(3−メルカプトプロピオン酸)塩、ジメチルスズビス
(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジブチルスズ
ジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルス
ズジステアレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチ
ルスズマレイン酸塩、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマ
ー、ジブチルスズマレイン酸エステル塩、ジブチルスズ
ビス(メルカプト酢酸)、ジブチルスズビス(メルカプ
ト酢酸アルキルエステル)塩、ジブチルスズビス(3−
メルカプトプロピオン酸アルコキシブチルエステル)
塩、ジブチルスズビス(オクチルチオグリコールエステ
ル)塩、ジブチルスズビス(3−メルカプトプオピオン
酸)塩、ジオクチルスズマレイン酸塩、ジオクチルスズ
マレイン酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸塩ポ
リマー、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズ
ビス(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジオクチ
ルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステ
ル)、ジオクチルスズビス(3−メルカプトプロピオン
酸)塩などのスズのアシレート化合物、メルカプトカル
ボン酸塩などを挙げることができ、これらのうち1種ま
たは2種以上が使用される。なかでも、ジブチルスズジ
ステアレート、ジブチルスズジラウレートなどのジアル
キルスズジアシレート;ジブチルスズビス(3−メルカ
プトプロピオン酸アルコキシブチルエステル)塩などの
ジアルキルスズビスメルカプトカルボン酸エステルを用
いるのが好ましい。
【0028】ポリウレタンを製造する方法は特に制限さ
れず、前述のポリエステルポリオール(a)、有機ジイ
ソシアネート(b)、鎖伸長剤(c)および必要に応じ
て他の成分を使用して、溶融重合、溶液重合などの公知
のウレタン化反応技術を利用して、プレポリマー法、ワ
ンショット法などのいずれで製造してもよい。なかで
も、実質的に無溶媒下で溶融重合することが好ましく、
特に多軸スクリュー型押出機を用いる連続溶融重合法が
好ましい。
【0029】ポリウレタンの重合過程または重合後に、
必要に応じて、ポリウレタンを製造する際に通常使用さ
れている熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃
剤、滑剤、着色剤、加水分解防止剤、結晶核剤、耐候性
改良剤、粘着性付与剤、防黴剤などの各種添加剤、ガラ
ス繊維や有機繊維などの各種有機および/または無機繊
維、タルク、シリカ、その他の無機充填剤などの1種ま
たは2種以上を適宜加えてもよい。
【0030】表面に凹凸模様又は鏡面模様を有するポリ
ウレタン無孔質層の成形方法としては、熱可塑性ポリウ
レタンのチップに、必要があれば着色剤及び酸化防止剤
などを添加して、押出機にて加温加圧下で溶融混練した
後に、Tーダイから溶融状態でフイルム状に押出す方法
が用いられる。表面層としての厚みは、一般には皮革様
の風合いを有し、且つ表面強度、接着強力および屈曲性
等の物性を満足する上で10μm以上で400μm以下が
好ましく、30μm以上で300μm以下がより好まし
い。表面層の厚みが薄すぎると同じ色調に着色する場合
の顔料濃度(対ポリウレタン)が高くなり、表面物性が
低下することとなる。また表面層の厚みが厚すぎると屈
曲性が悪くなったり、ゴムライクな風合となり好ましく
ない。ポリウレタン無孔質層(B)を構成するポリウレ
タンは耐摩耗性や耐摩擦溶融性の点で、後述する有機溶
媒に実質的に溶解しないものである必要がある。
【0031】表面に凹凸模様又は鏡面模様を形成する方
法としては、凹凸模様又は鏡面模様を有する離型紙上
に、Tーダイよりフイルム状に溶融押し出しし、押圧ロ
ールによりプレスする方法が一般的に用いられるが、特
に限定されるものでない。生産性、すなわち生産速度を
高める上からは、賦型ロールで賦型をフィルム成形と同
時に行う方法が好ましい。本発明で言う賦型ロールと
は、表面に鏡面又は凹凸模様のエンボス模様を有するエ
ンボスロールであり、また離型性のエンボスシートと通
常のロールを組み合わせたものであってもよい。好まし
くは表面に鏡面又は凹凸模様のエンボス模様を有するエ
ンボスロールであり、鏡面模様のエンボスロールを用い
た場合には、エナメル調の皮革様シートが得られること
となるが、場合によっては得られるエナメル調の表面
に、皮革の表面凹凸に類似したエンボス模様を有するロ
ール用いて表面を凹凸模様としてもよい。
【0032】ロールの材質としては、エンボスロールの
場合は金属ロールが用いられる。バックロールとしては
金属ロール、弾性体ロールのいずれでもよいが、押圧の
安定性の点からは弾性体ロールを用いることが望まし
い。押圧する圧力は、熱可塑性エラストマーの流動性に
応じて、賦型性と接着強力を満足する条件で行えばよ
い。表面が賦型されたフィルムは、実質的に熱可塑性エ
ラストマーの温度が低下して流動性がなくなってから賦
型ロールから剥離される。まだ熱可塑性エラストマーが
流動性を有する内に剥離すると、凹凸模様あるいは鏡面
模様が崩れ、いわゆるシボ流れが発生し、シープな凹
凸模様あるいは極めて平滑な鏡面が得られない。このた
めにエンボスロールは必要に応じてロール内部に冷却液
を循環する構造となっているものや強制的に冷風により
剥離点付近を冷却するような構造となっているものが好
ましい。
【0033】次に、ポリウレタン無孔質層(B)を、エ
ラストマー層(A)に積層し、一体化フィルム(C)を
製造する工程について説明する。本発明においてこの工
程が必要な理由は次の通りである。一般に、繊維質基体
と高分子重合弾性体からなるフィルムを接着する際に
は、通常の接着剤で接着することも可能であるが、接着
部分に違和感を生じさせないため、また、生産性の点か
ら、接着面を、繊維質基体およびフィルムを構成してい
る樹脂または繊維を共通溶剤により溶解して接着させる
ことが好ましい。また、接着強度を高める必要がある場
合には、該共通溶剤に可溶性の樹脂を添加する方法が用
いられる。例えば、ポリウレタンフィルムと、ポリウレ
タンエラストマーを含浸した繊維質基体を接着する場合
には、接着溶剤としてジメチルホルムアミド、またはポ
リウレタンを溶解したジメチルホルムアミドが用いられ
る。しかしながら、本発明のポリウレタンフィルム
(B)は、耐摩耗溶融性を保持するために、このような
接着溶剤に実質的に不溶であり、上記方法により製造し
た場合には、接着面の剥離強力は著しく低いものとなっ
てしまう。そのために、あらかじめ積層時に使用する有
機溶剤に可溶のエラストマー層を、繊維質基体との接着
面に積層した一体化フィルムとしておく必要がある。
【0034】エラストマー層(A)の厚さは、風合いを
低下させないでかつ十分な接着力が確保できる範囲が好
ましく、10μ以下である。また、エラストマーとして
は、ポリウレタンエラストマー、ポリウレタンウレアエ
ラストマー、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体な
どの公知の樹脂が使用できるが、表面層のポリウレタン
層との密着性の点から、ポリウレタンエラストマーが最
も好ましい。エラストマー層(A)の形成には、たとえ
ば、離型紙上に、グラビアロール、ナイフコーターなど
を用いて、エラストマー溶液を塗布し、乾燥してフイル
ムを形成する方法が用いられる。
【0035】ポリウレタン無孔質層(B)とエラストマ
ー層(A)の積層方法は、まず、支持体の上に、エラス
トマー層(A)を形成し、その上に前記の方法で、ポリ
ウレタン無孔質層(B)を形成する樹脂を、Tーダイよ
りフイルム状に溶融押し出しし、同時に積層する。この
際、あらかじめフィルム化したポリウレタン無孔質層
(B)の面に、グラビアロール、ナイフコーターなどを
用いて、エラストマー溶液を塗布し、乾燥して一体化す
ることは、ポリウレタン無孔質層(B)がエラストマー
溶液の溶剤に溶解しないため、ポリウレタン無孔質層
(B)とエラストマー層(A)との界面の接着強力が低
くなるため適当ではない。
【0036】次に、本発明で使用する繊維質基材は、適
度な厚み及び充実感を有し、且つ柔軟な風合いを有する
シートであれば使用することができ、したがって従来一
般の皮革様シートの製造方法に使用されている各種の繊
維質基材をそのまま本発明に使用することができる。た
とえば、極細繊維又はその束状繊維、多孔中空繊維、通
常繊維、天然繊維等からなる絡合不織シート、編織物シ
ート及び又はそのシートの繊維間にバインダーとしてポ
リウレタン等の高分子弾性体が含有されている繊維質基
材が挙げられるこれらの中でも、極細繊維束からなる絡
合不織布が好ましく、そしてその際の極細繊維束を構成
する繊維の細さとしては、好ましくは0.5デニール以
下、特に望ましくは0.1デニール以下であり、また極
細繊維束のトータルデニールとしては0.5〜10デニ
ールの範囲が好ましい。繊維の種類としては、ナイロン
系の繊維やポリエステル系の繊維などが挙げられる。
【0037】そのような極細繊維は、例えば、溶剤に対
する溶解性の異なる2種以上のポリマーを海島型や分割
型に混合紡糸または複合紡糸して得られる混合繊維また
は複合繊維から溶解速度の速い方のポリマーを溶剤で抽
出除去する方法、分解剤に対する分解速度の異なる2種
以上のポリマーを海島型や分割型に混合紡糸または複合
紡糸して得られる混合繊維または複合繊維から分解速度
の速い方のポリマーを分解剤で分解除去する方法、ある
いは相溶性の低い2種以上のポリマーを混合紡糸または
複合紡糸して得られる海島型や分割型の混合繊維または
複合繊維を機械的または化学的にフィブリル化処理して
繊維を構成してポリマーの界面で剥離させる方法といっ
た公知の方法により得ることができる。
【0038】積層体に天然皮革調の風合を付与するため
に、繊維質基体にポリウレタンエラストマー、またはそ
の他の弾性重合体を含浸しておいてもよく、その場合に
弾性重合体を多孔質構造を有した状態で繊維質基体中に
含浸させておくと、天然皮革に一層近い風合を有する積
層体を得ることができる。高分子弾性体としては、従来
から皮革様シートの製造に使用されている樹脂であり、
ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニ
ルブチラール系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアミ
ノ酸系樹脂、シリコン系樹脂やこれらの樹脂の混合物が
挙げられ、これら樹脂はもちろん共重合体であってもよ
い。ポリウレタンエラストマーやその他の弾性重合体を
繊維質基体中に多孔質状態で含浸させるには、例えば弾
性重合体の溶液を繊維質基体中に含浸させて弾性重合体
を湿式凝固させる方法などを採用すればよい。繊維質基
材の少なくとも表面部を構成する高分子弾性体として
は、表面仕上げに用いる熱可塑性エラストマーと同種の
ものが接着性の点で好ましく、特にポリウレタンが強度
や天然皮革調の性能が得られる点で好ましい。繊維質基
材を構成する繊維と高分子弾性体との量比としては、重
量比で90:10〜40:60の範囲が好ましい。
【0039】また、繊維質基体は、ポリウレタン層との
接着性を高め、さらに革調の外観とするために、その
片面または両面を起毛しておいてもよく、またその片面
または両面に凹凸を付与しておいてもよい。更に、繊維
質基体の片面または両面に、ポリウレタン層を形成する
前に、弾性重合体または非弾性重合体よりなる多孔質お
よび/または無孔質の被覆層を形成してあってもよく、
そしてそのような被覆層の表面は必要に応じてサンドペ
ーパーやその他により粗面化してあっても、エンボスロ
ールなどによって凹凸を形成しておいてもよい。そし
て、そのような被覆層は繊維質基体の片面または両面に
連続した層として形成されていても、或いは不連続な層
状で形成されていてもよい。
【0040】繊維質基材の厚みは、得られた合成皮革の
用途により任意に選択でき、特に限定されるものではな
いが、中間層及び表面層とのバランスの点から好ましく
は0.3mm〜3mm、特に好ましくは0.5mm〜
2.0mmの範囲である。
【0041】繊維質基材とフィルム(C)の接着は、ま
ず、繊維質基材の片面に有機溶剤、もしくは該溶剤に熱
可塑性エラストマーを溶解した溶液を塗布し、塗布液が
乾燥する前に、フィルム(C)のエラストマー(A)面
とを重ね合わせ、押圧し、その後乾燥することにより、
完了する。塗布方法は、グラビアロール、ナイフコータ
ーなどを用いればよいが、塗布液が乾燥する前にフィル
ムを重ね合わすことが可能な設備を使用する必要があ
る。有機溶剤は、用いる樹脂の種類、製造設備などに応
じて選択することができるが、たとえば、ジメチルホル
ムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルオキシ
ド、トルエン、メチルエチルケトンなどが使用でき、こ
れらを混合して使用することもできる。塗布する有機溶
剤の量としては、10〜100g/m2の範囲が好まし
く、より好ましくは20〜60g/m2の範囲である。
【0042】また、接着強度をさらに高める必要がある
場合には、溶剤に可溶性の樹脂を添加して塗布する方法
が用いられる。この場合に用いる樹脂は、風合いを低下
させないため、ポリウレタンエラストマー、ポリウレタ
ンウレアエラストマー、アクリロニトリル−ブタジエン
共重合体のようなエラストマーが望ましく、接着強力の
点から、フィルム(C)のエラストマー(A)面と同じ
種類のものであることがより望ましい。
【0043】このようにして得られる、ポリウレタン層
と繊維質基体層とからなる本発明の積層体は、その優れ
た耐摩擦溶融性、耐摩耗性、耐ブリード白化性、引張強
さなどの力学的性質、耐久性、耐寒性、柔軟性、屈曲
性、肌触りなどの諸特性により、スポーツ用品、靴、鞄
などの用途に有効に使用することができる。
【0044】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものでは
ない。なお、以下の参考例、実施例および比較例におい
て、結晶化エンタルピー(ΔH)、耐摩擦溶融性、耐摩
耗性(テーバー摩耗性)の測定または評価は以下の方法
に従って行った。
【0045】〔結晶化エンタルピー(ΔH)〕示差走査
熱量計〔理学電気(株)製、Rigaku Thermal Analysis
Station TAS10〕を用いて、ポリエステルポリオールの
結晶化エンタルピー(ΔH)を測定した。サンプル量は
約10mgとし、窒素気流下(100ml/分)で、下
記の表1に示す条件で熱量測定を行い、行程3における
ピーク面積より結晶化エンタルピー(ΔH)を求めた。
【0046】〔耐摩擦溶融性〕 ポリウレタンの積層体から短冊状試験片(3cm×6c
m)を作製し、この短冊状試験片のポリウレタン層側を
1800rpmで回転する桜製ローラー部(直径73m
m、幅26mm)に荷重1.5lb下で2秒間接置した
後の試験片の摩擦溶融面積(cm )を測定し、併せて
摩擦溶融面の状態を肉眼で観察して下記に示す基準によ
ってランク付けを行った。
【0047】 ○:摩擦溶融はほとんど生じていない △:摩擦溶融が少々生じている ×:摩擦溶融が大きく不良
【0048】〔耐摩耗性(テーバー摩耗量)〕JIS
K7204に従って測定した。すなわち、ポリウレタン
の積層体から直径12cmの円形の試験片を切り出し
た。この円形試験片のポリウレタン層側に摩耗輪(H−
22)を当て、荷重1kgfで円形の試験片を1000
回転させて摩耗試験を行い、摩耗試験の前の試験片の重
量から摩耗試験実施後の試験片の重量を差し引いて、テ
ーバー摩耗量(摩耗によって減少した重量)(g)を求
めた。
【0049】参考例1(ポリエステルポリオールの製
造) 3−メチル−1,5−ペンタンジオール9173gおよ
びアジピン酸9641gを反応器に仕込み、常圧下、2
00℃で生成する水を系外に留去しながらエステル化反
応を行った。反応物の酸価が30以下になった時点で、
チタン系重縮合触媒としてテトライソプロピルチタネー
ト90mgを加え、200〜100mmHgに減圧しな
がら反応を続けた。酸価が1.0になった時点で真空ポ
ンプにより徐々に真空度を上げて反応を完結させた。そ
の後、100℃に冷却し、これに水を3重量%加えて攪
拌しながら2時間加熱することにより、チタン系重縮合
触媒を失活させ、減圧下で水を留去した後、これにスズ
系ウレタン化触媒としてジブチルスズジアセテートを1
0ppm(スズ原子換算で3.4ppm)を加えた。こ
れによりチタン系触媒を失活した後にスズ系ウレタン化
触媒を添加したポリエステルポリオール(以後、これを
PMPAという)を得た。得られたポリエステルポリオ
ールの数平均分子量は2000、1分子当たりの水酸基
の数は2.00、エステル基濃度は0.156、結晶化
エンタルピー(ΔH)は検出されなかった。
【0050】参考例2(ポリエステルポリオールの製
造) ポリオール成分として、3−メチル−1,5−ペンタン
ジオールとトリメチロールプロパンを10:1.22の
モル比で混合したものを用いる以外は、参考例1と同様
にしてエステル化反応を行った後、チタン系重縮合触媒
を失活させ、スズ系ウレタン化触媒を加えることによ
り、ポリエステルポリオール(以後、これをPMPPA
という)を得た。得られたポリエステルポリオールの数
平均分子量は2000、1分子当たりの水酸基の数は
3.00、エステル基濃度は0.157、結晶化エンタ
ルピー(ΔH)は検出されなかった。
【0051】参考例3(ポリウレタンの製造) ポリエステルポリオールとして、参考例1で得られたP
MPAおよび参考例2で得られたPMPPA、鎖伸長剤
としてブタンジオール(以後、これをBDという)、な
らびに有機ジイソシアネートとして50℃に加熱溶融し
た4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以
後、これをMDIという)を、(PMPA:PMPP
A):MDI:BDのモル比が(0.97:0.0
3):3.88:2.80で、かつこれらの総量が20
0g/minとなるように、定量ポンプから同軸方向に
回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D
=36)に連続的に供給して、260℃で連続溶融重合
を行った。生成したポリウレタンの溶融物をストランド
状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切
断し、このペレットを80℃で6時間除湿乾燥した。こ
のポリウレタンはジメチルホルムアミドに溶解しない。
【0052】参考例4(ポリウレタンの製造) ポリエステルポリオールとして、参考例1で得られたP
MPA、鎖伸長剤としてブタンジオール(以後、これを
BDという)、ならびに有機ジイソシアネートとして5
0℃に加熱溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソ
シアネート(以後、これをMDIという)を、PMP
A:MDI:BDのモル比が1:3.88:2.80
で、かつこれらの総量が200g/minとなるよう
に、定量ポンプから同軸方向に回転する二軸スクリュー
型押出機(30mmφ、L/D=36)に連続的に供給
して、260℃で連続溶融重合を行った。生成したポリ
ウレタンの溶融物をストランド状で水中に連続的に押し
出し、次いでペレタイザーで切断し、このペレットを8
0℃で6時間除湿乾燥した。このポリウレタンはジメチ
ルホルムアミドに溶解する。
【0053】参考例5(繊維質基体の製造) 海成分としてポリエチレン50重量部および島成分とし
て6−ナイロン50重量部を同一溶融系で溶融紡糸し
て、単繊維繊度10デニールの複合繊維を製造した。こ
の複合繊維を3.0倍に延伸し、捲縮を付与した後、繊
維長51mmに切断し、カードで解繊した後クロスラッ
パーウェバーでウェブとした後、ニードルパンチによ
り、目付650g/m2の繊維絡合不織布とした。この
不織布にポリエステル系ポリウレタンを主体とするポリ
ウレタン組成物16重量部とジメチルホルムアミド84
重量部よりなる溶液を含浸し、凝固、水洗後、複合繊維
中のポリエチレンをトルエン中で抽出除去して、平均
0.01デニールの6−ナイロン極細繊維からなる束状
繊維とポリウレタン結合剤とからなる厚さ約1.3mm
の繊維質基体を得た。
【0054】実施例1 3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ブタンジオー
ル、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートから
重合して得られたポリウレタンを、ジメチルホルムアミ
ドに溶解し、グラビアロールで離型紙上に塗布、乾燥
し、膜厚7μmのポリウレタン層を作製した。続いて、
このポリウレタン層と、シボの凹凸模様を有する離型紙
(DE−14:大日本印刷製)の間に、参考例3で作製
したポリウレタンペレット100部と、白顔料ペレット
(顔料濃度30%:樹脂ポリエチレン)5部を混合した
ポリウレタン組成物を、押出機及びT−ダイを用いて、
溶融帯温度235℃、ダイス導入部温度235℃で、フ
イルム状に製膜しながら溶融状態で供給した。金属ロー
ルと弾性体ロールとでプレスした後、離型紙を剥がし、
シボを有する厚さ平均200μmのポリウレタン無孔質
表面層を得た。次に、参考例5で作製した繊維質基体の
片面に、140メッシュのグラビアロールでジメチルホ
ルムアミドを40g/m2塗布し、ジメチルホルムアミ
ドが乾燥する前の約1秒後に、ポリウレタン無孔質表面
層を前記膜厚7μmのポリウレタン層が内側となるよう
に重ね合わせ、プレスした後、乾燥した。得られた皮革
様シートの物性値について下記の表1に示す。
【0055】実施例2 参考例5で作製した繊維質基体の片面に、140メッシ
ュのグラビアロールで、3−メチル−1,5−ペンタン
ジオール、ブタンジオール、4,4’−ジフェニルメタ
ンジイソシアネートから重合して得られたポリウレタン
の5%ジメチルホルムアミド溶液を5g/m2塗布し、
乾燥する前の約1秒後に、実施例1で用いたポリウレタ
ン無孔質表面層を重ね合わせ、プレスした後、乾燥し
た。
【0056】比較例1 参考例4で作製したポリウレタンペレットを用いる以外
は、実施例1と全く同様にして皮革様シートを作製し
た。
【0057】比較例2 シボの凹凸模様を有する離型紙(DE−14:大日本印
刷製)の上に、参考例3で作製したポリウレタンペレッ
ト100部と、白顔料ペレット(顔料濃度30%:樹脂
ポリエチレン)5部を混合したポリウレタン組成物を、
押出機及びT−ダイを用いて、溶融帯温度235℃、ダ
イス導入部温度235℃で、フイルム状に製膜しながら
溶融状態で供給した。金属ロールと弾性体ロールとでプ
レスした後、離型紙を剥がし、シボを有する厚さ平均2
00μmのポリウレタン無孔質表面層を得た。次に、参
考例5で作製した繊維質基体の片面に、140メッシュ
のグラビアロールで、3−メチル−1,5−ペンタンジ
オール、ブタンジオール、4,4’−ジフェニルメタン
ジイソシアネートから重合して得られたポリウレタンの
5%ジメチルホルムアミド溶液を塗布し、約1秒後に、
ポリウレタン無孔質表面層を重ね合わせ、プレスした
後、乾燥した。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】本発明により得られる皮革様シートは、
耐摩擦溶融性、耐摩耗性に優れ、しかも引張強さなどの
力学的性質、耐水性等の耐久性、耐寒性などの特性にお
いても良好であり、柔軟性や屈曲性にも富んでいて、ス
ポーツ用品、靴、鞄、バックなどの袋状物、箱状物、家
屋などの建築物の内装材、家具用の化粧材、衣料などの
広範囲な用途に有効に使用することができる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維質基材と、表面に積層された凹凸模
    様又は鏡面模様を有するポリウレタン無孔質層からなる
    皮革様シートを製造するに際し、以下の(1)〜(4)
    の工程、(1)下記(3)の工程で使用する有機溶剤に
    可溶のエラストマーからなる厚さ10μ以下の層(A)
    を形成する工程、(2)下記(3)の工程で使用する有
    機溶剤に実質的に不溶のポリウレタンの溶融物を層
    (A)上に流延して、層(A)上に無孔質層(B)を積
    層し、一体化フィルム(C)を形成する工程、(3)繊
    維質基材に、有機溶剤又は該溶剤に熱可塑性エラストマ
    ーを溶解した溶液を塗布する工程、(4)繊維質基材の
    溶剤塗布面と、フィルム(C)のエラストマー(A)面
    とを貼り合わせ、乾燥する工程、を順次行うことを特徴
    とする皮革様シートの製造方法。
  2. 【請求項2】 層(B)が、数平均分子量1000〜4
    000のポリエステルポリオール(a)、有機ジイソシ
    アネート(b)および鎖伸長剤(c)を、下記の数式
    (i): 1.00≦b/(a+c)≦1.10 (i) (式中、aはポリエステルポリオールのモル数、bは有
    機ジイソシアネートのモル数、cは鎖伸長剤のモル数を
    示す)を満足する割合で反応させて得られる熱可塑性ポ
    リウレタンの溶融成形層であり、かつ熱可塑性ポリウレ
    タンの製造に用いられる前記ポリエステルポリオール
    (a)のエステル基濃度(エステル結合数/全炭素原子
    数)が0.08〜0.17であり、かつ結晶化エンタル
    ピー(ΔH)が70J/g以下であリ、さらに1分子当
    たりの水酸基の数が2.01〜2.08個である請求項
    1記載の皮革様シートの製造方法。
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