JP3438672B2 - 加湿装置 - Google Patents

加湿装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加湿装置に関し、
特に、室外に設置されたユニットで生成した加湿用空気
をダクト等で室内へ送って加湿を行うものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、室外に設けた加湿ユニットで
湿度の高い加湿用空気を生成し、この加湿用空気をダク
ト等で室内に送って加湿を行う加湿装置が知られてい
る。例えば、特開平8−128681号公報には、上記
の加湿装置と空調機とを組み合わせ、加湿機能付きの空
気調和機を構成したものが開示されている。
【0003】具体的に、上記公報では、加湿ユニットを
空調機の室外機に収納している。この加湿ユニットに
は、共に室内に開口する一対のダクトが接続されてい
る。一方のダクトには室内から空気が取り込まれ、この
空気が加湿ユニットに送られる。加湿ユニットは、送り
込まれた空気をヒータで加熱し、加熱された空気に水分
を供給して加湿用空気を生成する。そして、生成した加
湿用空気が他方のダクトを通じて室内に送られ、室内の
加湿に利用される。
【0004】また、上記加湿ユニットには、吸着剤が設
けられ、この吸着剤に室外空気中の水分を吸着させてい
る。この加湿ユニットは、送り込まれた空気をヒータで
加熱し、加熱後の空気を吸着剤と接触させる。このた
め、水分を吸着した吸着剤は、加熱後の高温の空気で加
熱され、この吸着剤から水分が脱着する。そして、加湿
ユニットは、吸着剤から脱着した水分によって空気を加
湿して加湿用空気を生成する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、上記従
来の加湿装置では、室外の加湿ユニットで生成した加湿
用空気を、ダクトを通じて室内に送っている。ところ
が、室内の加湿が必要とされる冬期には気温が低い。従
って、加湿ユニットからの加湿用空気は、ダクトを流れ
る間に外気によって冷却され、ダクト内で結露が生じて
しまう。つまり、加湿ユニットで空気に付与した水分
は、その一部が室内に到達せずに凝縮してしまう。
【0006】これに対し、従来は、加湿量の確保を最重
要視する観点から、加湿ユニットのヒータによる加熱量
を増大させ、ダクト内で結露が生じないようにしてい
た。つまり、加湿用空気の温度を高く設定し、該加湿用
空気をその相対湿度が低い状態でダクトに送り込んでい
た。そして、ダクト内を流れる間ずっと加湿用空気の相
対湿度を100%未満に維持し、相対湿度が100%未
満の状態の加湿用空気を室内に吹き出していた。
【0007】しかしながら、ダクト内での結露を防ぐた
めに空気を加熱すると、ダクト内部の加湿用空気とダク
ト外部の外気との温度差が拡大し、加湿用空気から外気
への放熱量が増大してしまう。この点について、図4を
参照しながら説明する。
【0008】図4は、露点温度40℃の加湿用空気がダ
クト内を流通する際の温度変化を示している。加湿用空
気を58℃でダクトに送り込んだ場合、ダクト内を1m
進む間に加湿用空気の温度はほぼ露点温度にまで低下す
る。一方、加湿用空気を70℃でダクトに送り込んだ場
合であっても、ダクト内を1m進むと、加湿用空気の温
度は、58℃でダクトに送り込まれた場合とさほど変わ
らない温度まで低下してしまう。これは、上述のよう
に、加湿用空気と外気の温度差が拡大し、放熱量が増大
するからである。
【0009】従って、ダクト入口での加湿用空気の温度
を高く設定し、これによりダクトの全長に亘って加湿用
空気を露点温度以上に維持しようとすると、ヒータでの
加熱量をかなり大きく設定しなければならない。このた
め、ヒータでの消費電力が増大し、ランニングコストの
増加を招くという問題があった。
【0010】本発明は、かかる点に鑑みてなされたもの
であり、その目的とするところは、室外で生成した加湿
用空気を室内に供給する加湿装置において、空気に対す
る加熱量を減少させてランニングコストを削減すること
にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、空気ダクト
(21)内での水分の凝縮を許容することによってランニ
ングコストの低減を図るものである。
【0012】本発明が講じた第1の解決手段は、室外に
設置されて加湿用空気を生成する加湿ユニット(20)
と、室内に開口して加湿用空気を加湿ユニット(20)か
ら室内に導く空気ダクト(21)とを備え、加湿用空気を
室内に送り込んで室内を加湿する加湿装置を対象として
いる。そして、上記加湿ユニット(20)は、空気を加熱
する加熱手段(26)を有し、該加熱手段(26)で加熱さ
れた空気に水分を供給して、上記空気ダクト(21)の途
中で加湿用空気が飽和空気となるように所定状態の加湿
用空気を生成するものである。
【0013】本発明が講じた第2の解決手段は、上記第
1の解決手段において、加湿ユニット(20)は、飽和空
気の状態の加湿用空気を生成するものである。
【0014】本発明が講じた第3の解決手段は、上記第
2の解決手段において、加湿ユニット(20)は、必要な
加湿量が一時的に増す高負荷状態において加湿量が増大
するように加湿用空気の温度を該加湿用空気の露点温度
よりも高く設定する制御手段(50)を備えるものであ
る。
【0015】本発明が講じた第4の解決手段は、上記第
1,第2又は第3の解決手段において、加湿ユニット
(20)は、室外空気に含まれる水分を吸着した吸着剤か
ら水分を脱着させて、該吸着剤から脱着させた水分を利
用して加湿用空気を生成するものである。
【0016】本発明が講じた第5の解決手段は、上記第
4の解決手段において、吸着剤は、疎水性ゼオライトに
より構成されるものである。
【0017】本発明が講じた第6の解決手段は、上記第
1の解決手段において、空気ダクト(21)に形成された
U字型でトラップ状の部分には、溜まった凝縮水を排水
するように構成された水抜きユニット(40)が設けられ
るものである。
【0018】−作用−上記第1の解決手段では、加湿装
置に加湿ユニット(20)と空気ダクト(21)が設けられ
る。加湿ユニット(20)は、取り込んだ空気を加熱手段
(26)で加熱し、加熱後の空気に水分を供給して、加湿
用空気を生成する。即ち、加湿ユニット(20)は、取り
込んだ空気の加熱と加湿を行って加湿用空気を生成す
る。空気ダクト(21)は、室内に開口して加湿ユニット
(20)と室内とを連通させている。加湿ユニット(20)
で生成された加湿用空気は、室外に設置された加湿ユニ
ット(20)から空気ダクト(21)を通じて室内に導かれ
る。
【0019】ここで、加湿用空気は、空気ダクト(21)
内を流れる間に空気ダクト(21)外の外気に対して放熱
し、その温度が次第に低下する。一方、加湿ユニット
(20)は、所定の状態の加湿用空気を生成する。具体的
に、加湿ユニット(20)は、加熱手段(26)での加熱量
を抑制し、ほぼ飽和状態(相対湿度100%)あるいは
相対湿度がかなり高い状態の加湿用空気を生成する。そ
して、相対湿度の高い加湿用空気を空気ダクト(21)に
流した場合、その間に加湿用空気の温度が露点温度まで
低下して、空気ダクト(21)の途中で加湿用空気が飽和
空気の状態となる。また、飽和空気の状態の加湿用空気
を空気ダクト(21)に流した場合、空気ダクト(21)の
全長に亘って加湿用空気が飽和空気の状態となる。従っ
て、何れの場合も空気ダクト(21)内で結露が生じる。
即ち、加湿ユニット(20)で加湿用空気に供給された水
分の一部は空気ダクト(21)内で凝縮する。
【0020】上記第2の解決手段では、加湿ユニット
(20)で生成される加湿用空気が飽和空気の状態、即ち
相対湿度が100%の状態とされる。この飽和空気の状
態の加湿用空気が、加湿ユニット(20)から空気ダクト
(21)に送り込まれる。上述のように、加湿用空気は、
空気ダクト(21)を流れる間に放熱し、その温度が低下
してゆく。従って、この場合、空気ダクト(21)の全長
に亘って加湿用空気が飽和空気の状態となる。
【0021】上記第3の解決手段では、制御手段(50)
が高負荷状態において加湿用空気の温度を露点温度より
も高く設定し、該加湿用空気の相対湿度を100%未満
の状態とする。このため、高負荷状態においては、空気
ダクト(21)の途中までは結露が生じず、空気ダクト
(21)内での凝縮量が減少して室内の加湿量が増大す
る。また、高負荷状態は一時的な状態であるため、制御
手段(50)は加湿用空気の温度を一時的に高く設定する
に過ぎない。
【0022】尚、高負荷状態の一例としては、装置の起
動時が挙げられる。例えば、冬期に暖房を開始すると共
に加湿装置を起動するような場合、室温が急速に上昇し
て室内の相対湿度が急速に低下するため、室内において
必要とされる加湿量が一時的に増大する。
【0023】上記第4の解決手段では、加湿ユニット
(20)に吸着剤が設けられる。加湿ユニット(20)で
は、吸着剤が室外空気に含まれる水分を吸着する。その
後、水分を吸着した吸着剤から水分を脱着させ、脱着し
た水分が空気に供給される。即ち、加湿ユニット(20)
は、室外空気から水分を奪い、この奪った水分を加熱後
の空気に供給して加湿用空気を生成する。
【0024】上記第5の解決手段では、疎水性ゼオライ
トが吸着剤として用いられる。ここで、従来は、吸着性
能を重視する観点から、水分子との結合力の強い物質
(例えば、シリカゲルや親水性ゼオライト等)を吸着剤
として用いていた。この種の水分子との結合力の強い吸
着剤を用いると、吸着剤から水分を脱着させるために多
大なエネルギが必要となる。具体的には、吸着剤から水
分を脱着させるのに、水の蒸発潜熱の2倍程度のエネル
ギが必要であった。
【0025】これに対し、本解決手段で吸着剤として用
いられる疎水性ゼオライトは、水分の吸着は行うもの
の、水分との結合力が比較的弱いものである。このた
め、吸着剤から水分を脱着させる場合には、吸着剤をさ
ほど高温まで加熱する必要はなく、比較的少量のエネル
ギを加えれば充分である。具体的には、水の蒸発潜熱と
ほぼ同等あるいはこれをやや上回る程度のエネルギを吸
着剤に与えれば、該吸着剤から水分が脱着する。尚、こ
の種の疎水性ゼオライトとしては、SiO2 のモル分率が
Al2O3 のモル分率よりも大きいものが例示される。
【0026】
【発明の効果】上記の解決手段では、加湿手段における
加熱量を抑制し、空気ダクト(21)内での結露を許容し
ている。従って、加湿ユニット(20)で加湿用空気に与
えた水分は、その一部が空気ダクト(21)内で凝縮して
しまい、該水分の全てが室内に供給されないこととな
る。このことは、加湿量のみを考えると従来よりもロス
を増大させているようにも見える。しかしながら、上述
のように、従来は加湿用空気に多大な熱量を与えること
によって空気ダクト(21)内での結露を防いでいる。つ
まり、空気ダクト(21)内での結露防止に多大なエネル
ギを要していた。
【0027】これに対し、上記の解決手段のように、空
気ダクト(21)内での結露を許容すると、凝縮した水分
から凝縮熱が放熱されて放熱ロスの増大となる。ところ
が、空気ダクト(21)内を流れる加湿用空気の温度が低
くなるため、加湿用空気と外気の温度差が小さくなって
加湿用空気からの放熱量が減少し、この点では放熱ロス
の減少となる。そして、水分の凝縮量を考慮すると、結
露による放熱ロスの増大分が加湿用空気の温度低下によ
る放熱ロスの減少分を下回り、放熱ロス全体としては減
少する。
【0028】このため、装置全体で考えると、上記の解
決手段のように空気ダクト(21)内での結露を許容した
方が放熱ロスを削減でき、更には加熱手段(26)による
空気の加熱量を削減して運転に要するエネルギを削減す
ることが可能となる。この結果、装置の運転に要するエ
ネルギを減少させてランニングコストの削減を図ること
ができる。
【0029】上記第2,第3の解決手段では、加湿ユニ
ット(20)で生成する加湿用空気を飽和空気の状態とし
ている。従って、加熱手段(26)による空気の加熱量を
最小限に抑制し、ランニングコストの一層の削減を図る
ことができる。
【0030】更に、上記第3の解決手段では、制御手段
(50)の動作により、高負荷状態に対応して加湿用空気
の温度をその露点温度よりも高く設定している。このた
め、空気ダクト(21)内における水分の凝縮量を低減す
ることができ、高負荷状態に応じて加湿量を増大させる
ことができる。この結果、必要とされる加湿量の変化に
対応した的確な運転が可能となる。この高負荷状態で
は、加湿用空気の温度を高く設定することから、加熱手
段(26)での加熱量が増大する。しかしながら、高負荷
状態は一時的なものに過ぎないため、加熱手段(26)の
加熱量が増大するのも一時的であって、トータルでのラ
ンニングコストは依然として低く維持される。
【0031】上記第4の解決手段によれば、室外空気に
含まれる水分を利用して加湿用空気を生成し、この加湿
用空気を室内に送って室内の加湿に利用できる。このた
め、外部から水道水等を供給することなく室内の加湿を
行うことができ、いわゆる無給水加湿を実現できる。
【0032】上記第5の解決手段によれば、疎水性ゼオ
ライトを吸着剤として利用することによって、吸着剤か
らの水分の脱着、即ち吸着材の再生に要するエネルギを
低減することが可能となる。
【0033】ここで、従来のように空気ダクト(21)内
での結露を回避しようとすると、疎水性ゼオライトを用
いたとしても空気に対する加熱量はさほど低減されな
い。つまり、空気ダクト(21)内での結露を防ぐには、
空気ダクト(21)の入口における加湿用空気の温度をあ
る程度高温としなければならず、この点は、吸着材に疎
水性ゼオライトを用いた場合も同様である。従って、疎
水性ゼオライトの採用によって吸着材の再生に必要な熱
量は削減されるものの、空気に対する加熱量自体はほと
んど変化しない。
【0034】これに対し、本解決手段のように、空気ダ
クト(21)内での結露を許容した上で吸着材に疎水性ゼ
オライトを採用すると、加熱手段(26)において空気に
与える熱量を、吸着材の再生に必要な熱量とほぼ同等に
まで抑制することが可能となる。従って、本解決手段に
よれば、加熱手段(26)における空気の加熱量を更に削
減することができ、ランニングコストの一層の削減が可
能となる。
【0035】
【発明の実施の形態1】以下、本発明の実施形態を図面
に基づいて詳細に説明する。
【0036】図1に示すように、本実施形態に係る加湿
装置は、空調機と一体に構成されて室内の加湿を行うよ
うに構成されている。
【0037】上記空調機は、室内機(10)と室外機(1
5)とによって構成されている。室内機(10)は、室内
熱交換器(11)と室内ファン(12)を備え、室内の壁面
に取り付けられている。室外機(15)は、室外に設置さ
れている。この室外機(15)には、図示しないが、圧縮
機、膨張機構、室外熱交換器、室外ファン等の構成機器
が収納されている。室内機(10)と室外機(15)とは、
一対の連絡配管(16)によって接続されている。
【0038】室内熱交換器(11)と共に圧縮機、膨張機
構及び室外熱交換器が連絡配管(16)等によって接続さ
れて、冷媒回路が構成されている。この冷媒回路は、図
外の四路切換弁を備え、冷媒の循環方向を反転可能に構
成されている。そして、冷媒回路では、冷媒が循環して
冷凍サイクル動作とヒートポンプ動作とが切り換えて行
われる。
【0039】加湿ユニット(20)は、室外機(15)と一
体に形成されている。この加湿ユニット(20)には、空
気ダクト(21)の一端が接続されている。また、空気ダ
クト(21)の他端は、室内機(10)の内部における室内
熱交換器(11)の上流に開口している。そして、加湿ユ
ニット(20)は、空気ダクト(21)と共に加湿装置を構
成している。
【0040】上記空気ダクト(21)は、加湿ユニット
(20)との接続部から一旦下がった後に上方に延びて室
内機(10)に接続されている。つまり、空気ダクト(2
1)には、U字型でトラップ状の部分が形成されてい
る。このトラップ状の部分には、水抜きユニット(40)
が設けられている。水抜きユニット(40)は、図示しな
いが浮き子式のバルブを備え、水抜きユニット(40)内
に所定量の凝縮水が溜まると、この凝縮水を外部に排水
するように構成されている。
【0041】図2に示すように、加湿ユニット(20)に
は、除湿側通路(23)と再生側通路(25)とが区画形成
されている。また、加湿ユニット(20)には、除湿側通
路(23)と再生側通路(25)の両方を横断する姿勢で回
転ロータ(22)が設置されている。この回転ロータ(2
2)については、後述する。
【0042】除湿側通路(23)における回転ロータ(2
2)の下流には、除湿側ファン(24)が設けられてい
る。更に、除湿側通路(23)において回転ロータ(22)
の位置する部分は、除湿部(31)に構成されている。こ
の除湿側ファン(24)を運転すると、除湿側通路(23)
に室外空気が取り込まれる。除湿側通路(23)に取り込
まれた室外空気は、回転ロータ(22)を通過した後に室
外へ排出される。
【0043】再生側通路(25)には、ヒータ(26)と再
生側ファン(27)とが設けられている。更に、再生側通
路(25)において回転ロータ(22)の位置する部分は、
再生部(32)に構成されている。また、再生側通路(2
5)の終端には、上記空気ダクト(21)の一端が接続さ
れている。尚、図2においては、水抜きユニット(40)
の図示を省略している。
【0044】上記ヒータ(26)は、回転ロータ(22)の
上流に配置され、再生部(32)に送られる空気を加熱す
る加熱手段を構成している。一方、上記再生側ファン
(27)は、回転ロータ(22)の下流に配置されている。
この再生側ファン(27)を運転すると、再生側通路(2
5)に室外空気が取り込まれる。再生側通路(25)に取
り込まれた室外空気は、ヒータ(26)と回転ロータ(2
2)とを順に通過して加湿用空気となり、この加湿用空
気が空気ダクト(21)に導入される。
【0045】上記回転ロータ(22)は、円板状に形成さ
れている。また、回転ロータ(22)は、ハニカム状に形
成された基材の表面に吸着剤を担持させて構成されてい
る。即ち、回転ロータ(22)は、その厚さ方向に空気を
通過させることができ、通過する空気と吸着剤とを接触
させるように構成されている。そして、回転ロータ(2
2)では、吸着剤による水分を吸着と、吸着剤からの水
分が脱着とが行われる。
【0046】上記回転ロータ(22)の基材としては、セ
ラミック紙、ガラス繊維、セルロースを主成分とした有
機化合物(例えば、紙)、金属、樹脂等の材料が好適に
用いられる。この種の材料は、比熱の小さいものであ
り、このような材料で回転ロータ(22)を形成すると回
転ロータ(22)の熱容量が小さくなる。
【0047】上述のように、回転ロータ(22)は、除湿
側通路(23)及び再生側通路(25)に跨って、両通路
(23,25)を横断する姿勢で配置されている。具体的
に、回転ロータ(22)のうち扇形状の一部分が、再生側
通路(25)を横切る姿勢で再生部(32)に設けられてい
る。従って、再生側通路(25)を流れる空気は、再生部
(32)を通過する際に回転ロータ(22)と接触する。ま
た、回転ロータ(22)の残りの部分は、除湿側通路(2
3)を横切る姿勢で除湿部(31)に設けられている。従
って、除湿側通路(23)を流れる空気は、除湿部(31)
を通過する際に上記回転ロータ(22)と接触する。
【0048】また、上記回転ロータ(22)は、図外のモ
ータによって駆動されて中心軸周りに回転し、除湿部
(31)と再生部(32)の間を移動する。即ち、除湿部
(31)において除湿側通路(23)を流れる空気と接触し
た回転ロータ(22)の部分は、回転ロータ(22)の回転
に伴って再生側通路(25)の再生部(32)に移動する。
一方、再生部(32)において再生側通路(25)を流れる
空気と接触した回転ロータ(22)の部分は、回転ロータ
(22)の回転に伴って除湿側通路(23)の除湿部(31)
に再び移動する。
【0049】上記吸着剤としては、疎水性ゼオライトが
用いられている。この疎水性ゼオライトとしては、SiO2
(シリカ)のモル分率が Al2O3(アルミナ)のモル分率
よりも大きい組成のゼオライトを採用している。疎水性
ゼオライトの組成としては、モル分率でシリカ/アルミ
ナの割合が80%/20%から90%/10%の範囲が
望ましい。更に望ましくは、シリカ/アルミナの割合が
85%/15%程度であるのがよい。
【0050】ここで、吸着剤には、冬期の乾燥した室外
空気からも水分を吸着するための吸着性能と、吸着剤か
ら水分を脱着させるエネルギを低くするための脱着性能
という、相反する性能が求められる。そこで、本実施形
態では、上記の相反する性能を満たすべく、従来より吸
着剤として一般的に用いられるシリカゲルや親水性ゼオ
ライトに代えて、上記の組成の疎水性ゼオライトを吸着
剤として採用している。
【0051】−運転動作− 先ず、暖房運転時の動作について説明する。暖房運転に
おいては、室内機(10)における室内空気の加熱と、加
湿ユニット(20)からの空気の供給との両方が行われ
る。尚、以下に示す数値は、全て例示である。
【0052】空調機の冷媒回路では、冷媒が循環してヒ
ートポンプ動作が行われる。即ち、室内熱交換器(11)
には、圧縮機から吐出された高温高圧のガス冷媒が送り
込まれる。また、室内ファン(12)を運転すると、室内
機(10)の内部に室内空気が取り込まれる。取り込まれ
た室内空気は、室内熱交換器(11)を通過する際にガス
冷媒と熱交換を行う。この熱交換によって、室内空気が
加熱され、ガス冷媒が凝縮する。
【0053】加湿ユニット(20)では、除湿側ファン
(24)及び再生側ファン(27)が運転され、ヒータ(2
6)に通電される。また、回転ロータ(22)が、図外の
モータで駆動されて、1時間あたり30回転で所定の方
向(図2にに矢印で示す方向)に回転する。
【0054】除湿側通路(23)には、室外空気が取り込
まれる。室外空気の状態は、温度7℃、相対湿度87%
となっている。また、除湿側通路(23)における風量
は、4.0 m3/min. に設定されている。除湿側通路(2
3)に取り込まれた室外空気は、除湿部(31)に導入さ
れる。
【0055】除湿部(31)では、回転ロータ(22)が回
転しつつ導入された室外空気と接触する。室外空気と回
転ロータ(22)とが接触すると、室外空気に含まれる水
分が回転ロータ(22)の吸着剤に吸着される。従って、
除湿部(31)では、回転ロータ(22)が回転するに従っ
て吸着剤に水分が蓄積され、やがて吸着剤が飽和する。
その後、回転ロータ(22)は、除湿部(31)から再生部
(32)に移動する。一方、除湿部(31)において水分を
奪われた室外空気は、除湿側ファン(24)に吸引されて
室外へ排出される。
【0056】再生側通路(25)には、室外空気が取り込
まれる。再生側通路(25)における風量は、0.25 m
3/min. に設定されている。再生側通路(25)に取り込
まれた室外空気は、ヒータ(26)によって加熱される。
加熱された室外空気は、その後に再生部(32)へ送り込
まれる。
【0057】再生部(32)では、回転ロータ(22)がヒ
ータ(26)により加熱された空気と接触する。この回転
ロータ(22)は、回転移動しつつ空気と接触して加熱さ
れる。回転ロータ(22)が加熱されると、回転ロータ
(22)の吸着剤から水分が脱着する。これによって、回
転ロータ(22)の吸着剤が再生される。吸着剤から脱着
した水分は、回転ロータ(22)と接触する空気に供給さ
れ、これによって加湿用空気が生成する。
【0058】再生部(32)で生成した加湿用空気は、再
生側ファン(27)により吸引されて空気ダクト(21)へ
導入される。ここで、加湿用空気は、空気ダクト(21)
へ導入される時点において、ほぼ飽和空気の状態とされ
ている。具体的に、加湿用空気は、温度が40〜50℃
程度で、相対湿度がほぼ100%の状態とされている。
ただし、加湿用空気の状態は、外気条件等の運転条件に
よって変動するため、常に相対湿度100%の状態に維
持されなくとも、相対湿度が90〜100%程度の高い
状態に維持されれば充分である。
【0059】加湿用空気は、空気ダクト(21)の内部を
流れて室内に導かれる。一方、空気ダクト(21)は室外
に設置されているため、空気ダクト(21)の外部には低
温(7℃程度)の外気が存在する。従って、加湿用空気
が空気ダクト(21)を流れる間に外気によって冷却さ
れ、空気ダクト(21)内で結露が生じる。その際、空気
ダクト(21)の入口において、加湿用空気の相対湿度が
100%であれば空気ダクト(21)の全長に亘って結露
が生じ、加湿用空気の相対湿度が100%未満であれば
空気ダクト(21)の途中から結露が生じる。
【0060】そして、再生部(32)で加湿用空気に付与
された水分は、その一部が空気ダクト(21)内で凝縮
し、残りが加湿用空気と共に室内に導入されて加湿に利
用される。また、空気ダクト(21)内で凝縮した水分
は、空気ダクト(21)の途中に設けられた水抜きユニッ
ト(40)に溜まってゆく。そして、凝縮水が水抜きユニ
ット(40)にある程度溜まると、この水抜きユニット
(40)から凝縮水が排出される。従って、凝縮水の液滴
が加湿用空気と共に室内に吹き出されることはない。
【0061】再生部(32)で放湿して再生された回転ロ
ータ(22)は、再び除湿部(31)に移動する。即ち、回
転ロータ(22)は、除湿部(31)と再生部(32)との間
を回転移動することによって、除湿部(31)における水
分の吸着と、再生部(32)における水分の脱着とを交互
に繰り返す。
【0062】次に、冷房運転時の動作について説明す
る。冷房運転においては、室内機(10)における室内空
気の冷却のみが行われ、加湿ユニット(20)の運転は行
われない。
【0063】空調機の冷媒回路では、冷媒が循環して冷
凍サイクル動作が行われる。即ち、圧縮機から吐出され
て室外熱交換器で凝縮した冷媒は、膨張機構で減圧され
た後に、室内熱交換器(11)へ送り込まれる。また、室
内ファン(12)を運転すると、室内機(10)の内部に室
内空気が取り込まれる。室内機(10)に取り込まれた室
内空気は、室内熱交換器(11)を通過する際に冷媒と熱
交換を行う。この熱交換によって、室内空気が冷却さ
れ、冷媒が蒸発する。
【0064】−実施形態1の効果− 本実施形態1では、空気ダクト(21)内での結露を許容
している。従って、加湿ユニット(20)で加湿用空気に
与えた水分は、その一部が空気ダクト(21)内で凝縮し
てしまい、該水分の全てが室内に供給されないこととな
る。このことは、加湿量のみを考えると従来よりもロス
を増大させているようにも見える。しかしながら、上述
のように、従来は加湿用空気に多大な熱量を与えること
によって空気ダクト(21)内での結露を防いでいる。つ
まり、空気ダクト(21)内での結露防止に多大なエネル
ギを要していた。
【0065】これに対し、本実施形態1のように、空気
ダクト(21)内での結露を許容すると、凝縮した水分か
ら凝縮熱が放熱されて放熱ロスの増大となる。ところ
が、空気ダクト(21)内を流れる加湿用空気の温度が低
くなるため、加湿用空気と外気の温度差が小さくなって
加湿用空気からの放熱量が減少し、この点では放熱ロス
の減少となる。そして、水分の凝縮量を考慮すると、結
露による放熱ロスの増大分が加湿用空気の温度低下によ
る放熱ロスの減少分を下回り、放熱ロス全体としては減
少する。
【0066】このため、加湿ユニット(20)の全体で考
えると、本実施形態1のように空気ダクト(21)内での
結露を許容した方が放熱ロスを削減でき、更にはヒータ
(26)による空気の加熱量を削減して運転に要するエネ
ルギを削減することが可能となる。この結果、運転時の
消費電力を減少させてランニングコストの削減を図るこ
とができる。
【0067】また、本実施形態1では、加湿ユニット
(20)において、室外空気から奪った水分を利用して加
湿用空気を生成し、生成した加湿用空気を室内に送って
室内の加湿に利用している。このため、外部から水道水
等を供給することなく室内の加湿を行うことができ、い
わゆる無給水加湿を実現できる。
【0068】また、本実施形態1によれば、疎水性ゼオ
ライトを吸着剤として利用することによって、吸着剤か
らの水分の脱着、即ち吸着材の再生に要するエネルギを
低減することが可能となる。
【0069】ここで、従来のように空気ダクト(21)内
での結露を回避しようとすると、疎水性ゼオライトを用
いたとしても空気に対する加熱量はさほど低減されな
い。つまり、空気ダクト(21)内での結露を防ぐには、
空気ダクト(21)の入口における加湿用空気の温度をあ
る程度高温としなければならず、この点は、吸着材に疎
水性ゼオライトを用いた場合も同様である。従って、疎
水性ゼオライトの採用によって吸着材の再生に必要な熱
量は削減されるものの、空気に対する加熱量自体はほと
んど変化しない。
【0070】これに対し、本解決手段1のように、空気
ダクト(21)内での結露を許容した上で吸着材に疎水性
ゼオライトを採用すると、ヒータ(26)において空気に
与える熱量を、吸着材の再生に必要な熱量とほぼ同等に
まで抑制することが可能となる。従って、本実施形態1
によれば、ヒータ(26)における空気の加熱量を更に削
減することができ、ランニングコストの一層の削減が可
能となる。
【0071】
【発明の実施の形態2】本発明の実施形態2は、図3に
示すように、上記実施形態1において、制御手段である
コントローラ(50)を付加するものである。
【0072】上記コントローラ(50)は、加湿ユニット
(20)の起動時に所定時間に亘ってヒータ(26)への入
力を増大させ、ヒータ(26)による空気の加熱量を増大
させるように構成されている。ここで、冬期に暖房の開
始と同時に加湿装置を起動するような場合、室温が急速
に上昇して室内の相対湿度が急速に低下する。従って、
加湿ユニット(20)の起動時から一定の時間が経過する
までの間は、室内において必要とされる加湿量が一時的
に増大する高負荷状態となる。
【0073】そして、コントローラ(50)は、必要な加
湿量が増大する高負荷状態において、ヒータ(26)によ
る空気の加熱量を増大させる。ヒータ(26)での加熱量
を増大させると、再生部(32)から空気ダクト(21)へ
送られる加湿用空気の温度が上昇する。つまり、加湿用
空気は、その温度が露点温度よりも高い状態となり、そ
の相対湿度が60〜70%の状態となる。従って、加湿
用空気は、空気ダクト(21)を流れる間に温度低下して
ゆくものの、その温度が露点温度となるまでは空気ダク
ト(21)内で結露は生じない。このため、空気ダクト
(21)内で凝縮する水分の量が減少し、室内に供給され
る水分量が増大する。
【0074】加湿ユニット(20)の起動から所定時間が
経過し、室内の温度及び湿度が安定した状態となると、
コントローラ(50)はヒータ(26)への入力を減少させ
る。この状態では、空気ダクト(21)の入口における加
湿用空気はほぼ飽和空気の状態となる。そして、上記実
施形態1と同様に、ヒータ(26)での消費電力を減少さ
せてランニングコストの削減を図る。
【0075】−実施形態2の効果− 本実施形態2では、コントローラ(50)の動作によっ
て、高負荷状態である起動時にヒータ(26)への入力を
一時的に増大させている。従って、空気ダクト(21)内
における水分の凝縮量を低減することができ、高負荷状
態に応じて加湿量を増大させることができる。この結
果、必要とされる加湿量に応じて的確な運転を行うこと
が可能となる。また、コントローラ(50)がヒータ(2
6)への入力を増大させるのは一時的に過ぎないため、
トータルでのランニングコストは依然として低減され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1に係る空調機及び加湿ユニットの全
体構成図である。
【図2】実施形態1に係る加湿ユニットの概略構成図で
ある。
【図3】実施形態2に係る加湿ユニットの概略構成図で
ある。
【図4】空気ダクト内における加湿用空気の温度変化を
示す距離と温度の関係図である。
【符号の説明】
(20) 加湿ユニット (21) 空気ダクト (22) 回転ロータ (26) ヒータ(加熱手段)(40) 水抜きユニット (50) コントローラ(制御手段)
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−241842(JP,A) 特開 平11−19436(JP,A) 特開 平8−145406(JP,A) 特開 平1−159026(JP,A) 特開 平8−210664(JP,A) 特開 平9−228252(JP,A) 特開 平10−238843(JP,A) 特開 平10−267331(JP,A) 特開 平5−301012(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F24F 6/08 F24F 3/147

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 室外に設置されて加湿用空気を生成する
    加湿ユニット(20)と、室内に開口して加湿用空気を加
    湿ユニット(20)から室内に導く空気ダクト(21)とを
    備え、加湿用空気を室内に送り込んで室内を加湿する加
    湿装置であって、 上記加湿ユニット(20)は、空気を加熱する加熱手段
    (26)を有し、該加熱手段(26)で加熱された空気に水
    分を供給して、上記空気ダクト(21)の途中で加湿用空
    気が飽和空気となるように所定状態の加湿用空気を生成
    する加湿装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の加湿装置において、 加湿ユニット(20)は、飽和空気の状態の加湿用空気を
    生成する加湿装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の加湿装置において、 加湿ユニット(20)は、必要な加湿量が一時的に増す高
    負荷状態において加湿量が増大するように加湿用空気の
    温度を該加湿用空気の露点温度よりも高く設定する制御
    手段(50)を備えている加湿装置。
  4. 【請求項4】 請求項1,2又は3記載の加湿装置にお
    いて、 加湿ユニット(20)は、室外空気に含まれる水分を吸着
    した吸着剤から水分を脱着させて、該吸着剤から脱着さ
    せた水分を利用して加湿用空気を生成する加湿装置。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の加湿装置において、 吸着剤は、疎水性ゼオライトにより構成されている加湿
    装置。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の加湿装置において、 空気ダクト(21)に形成されたU字型でトラップ状の部
    分には、溜まった凝縮水を排水するように構成された水
    抜きユニット(40)が設けられている加湿装置。
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