JP3437874B2 - スラブ調複合仮撚糸及びその製造方法 - Google Patents

スラブ調複合仮撚糸及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スラブ調複合仮撚糸及
びその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、
道中部のズリ抜けやスラブ崩れがなく形態安定性に優
れ、しかも、色感変化に優れたスラブ調複合仮撚糸及び
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、スラブ調複合仮撚糸には芯部に位
置する糸条に対し、鞘部に位置する糸条が過供給されて
三重捲回構造を有するスラブ部と該鞘部に位置する糸条
が一重捲回構造を有する道中部とで構成されたスラブ調
仮撚糸が特公昭45−28018号や特公昭47−49
459号の他多数提案されており、これらのスラブ調複
合仮撚糸はネップ調や紬調の織編物に広く提供されてい
る。また、最近では複数本の鞘糸による長短混在スラブ
等複雑な形態や、異染性繊維の併用等により多様な色感
変化も含めた表面効果を得る提案が成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の提案によるスラブ調複合仮撚糸は、後工程時の糸摩擦
により道中部に糸割れが生じ、スラブの崩れが発生し、
工程通過性や形態安定性が悪くなる、そのため追撚工程
が必要であった。また一様なスラブ部、道中部の繰り返
しによりモアレが発生し易いなどの問題があり、より優
れたスラブ調複合仮撚糸が望まれていた。本出願人ら
は、これら課題に対して、特願平5−178315号
で、道中部のズリ抜けやスラブ崩れのない形態安定性に
優れたスラブ調複合仮撚糸を提案した。本発明は、特願
平5−178315号の方法を改良し、該方法で得られ
た形態安定性に優れたスラブ調複合仮撚糸に、色感変化
等の表面効果または風合いの向上を付加させたスラブ調
複合仮撚糸及びその製造方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の要旨は、
芯部に位置する糸条に対し鞘部に位置する糸条が三重捲
回構造を成すスラブ部と、一重捲回構造を成す道中部と
が交互に繰り返されてなるスラブ調複合仮撚糸に於い
て、スラブ部に於いては、レーヨン糸及びセルロースア
セテート糸を含む2本以上の糸からなる糸条aが芯部
に、他の糸条bが鞘部に位置し、道中部に於いては、糸
条bが芯部に位置すると共に、糸条aの外周に壁撚り状
に捲回している部分と、糸条a及び糸条bが互いに交絡
している部分が存在していることを特徴とするスラブ調
複合仮撚糸である。
【0005】本発明に於いては、糸条aが2本以上の糸
条で構成されることにより、糸条a及び糸条bとの開繊
交絡の他に、糸条a相互の糸条のもつれにより該道中部
に於いても糸条aに未解撚部を設けさせ、道中部のズリ
抜けを防止し、スラブ崩れのないスラブ調複合仮撚糸と
なる。さらに、本発明では、糸条aがセルロースアセテ
ート糸及びレーヨン糸を含む糸条から構成されるため、
シャリ感と適度なドレープ性を有し、かつ多様な杢調表
現が可能なスラブ調複合仮撚糸となる。
【0006】本発明において、糸条b、及びセルロース
アセテート糸またはレーヨン糸以外の糸条aに使用され
る糸は、特に限定されたものではなく、ポリエステル
糸、ポリアミド糸、ポリアクリロニトリル糸等の合成繊
維や、異繊度糸、異収縮糸、部分配向糸、高応力高収縮
糸、カチオン可染糸、極細糸、多成分糸等の特殊長繊
維、あるいはこれらの複合糸等々、種々の繊維を用いる
ことでより複雑な形態や色調表現が可能となる。
【0007】図1は本発明に係わるスラブ調複合仮撚糸
の道中部において、糸条bが芯部に位置すると共に糸条
aの外周に壁撚り状に捲回している部分を示す側面図、
図2は該道中部において糸条a及び糸条bが互いに交絡
している部分を示す側面図、図3はスラブ部分を示す側
面図である。本発明のスラブ調複合仮撚糸では、上記壁
撚り状捲回部分と交絡部分の存在により、三重捲回構造
を成すスラブ部のスラブ崩れが防止される。
【0008】また、本発明の第2の要旨は、仮撚加工中
の糸条aの加撚域に、糸条bをオーバーフィード状態で
供給し、糸条bを糸条aの周囲に捲回させながら仮撚加
工するに際して、糸条aにレーヨン糸及びセルロースア
セテート糸を含む2本以上の糸からなる糸条を用い、仮
撚温度を100℃以上、糸条bのオーバーフィード率を
30%以上、並びに仮撚撚り数を1200T/M以上に
設定することを特徴とするスラブ調複合仮撚糸の製造方
法である。
【0009】すなわち、本発明の第1の要旨であるスラ
ブ調複合仮撚糸を得るためには、複合仮撚糸を仮撚加撚
域に於いて熱固定する必要があり、該加撚域でのヒータ
ー温度は100℃以上が必要である。また、三重捲回構
造を有するスラブ部を得るためには糸条bのオーバーフ
ィード率が30%以上とすることが必要であり、更には
仮撚撚り数を1200T/Mとすることで安定的に本発
明のスラブ調複合仮撚糸が得られる。さらに、糸条aに
セルロースアセテート糸及びレーヨン糸を含む糸条を用
いることによって、シャリ感と適度なドレープ性を有
し、かつ多様な杢調表現が可能なスラブ調複合仮撚糸を
得ることができる。
【0010】以下図面を用い、本発明を詳細に説明す
る。図4は本発明に使用する装置図の一例を示すもので
ある。糸条a(1:セルロースアセテート及び2:レー
ヨン)はマグネットテンサー4により定常的にしかも安
定に供給される。また、糸条b(3)が供給ローラー5
によりオーバーフィード状態で供給されることにより、
糸条bガイド6を支点として、糸条a(1、2)の外周
を糸軸方向に三重捲回構造を成すスラブ部と一重捲回構
造を成す道中部とが交互に且つ連続的に形成され、第1
ヒーター7及び仮撚ユニット8により糸条は加熱熱固定
される。該スラブ部は三重捲回構造で強固に固定されて
いるため、未解撚のまま仮撚ユニット8を通過する。道
中部は2本の糸条で構成された糸条aに対し、糸条bが
一重捲回構造を成しているため、該糸条a相互がもつれ
未解撚部を生じながら解撚されると共に、その一部が糸
条bと絡み、糸条aが糸条bを壁撚状に捲回し集束した
道中部が形成される。次いで、第1引取ローラー9から
第2引取ローラー11及び第2ヒーター10による熱処
理後、巻き取りチーズ12となる。
【0011】以下、本発明を実施例で具体的に説明す
る。 〔実施例1〕糸条aを構成する一方の糸条(1)には、
150d/40fのトリアセテートブライト糸を、糸条
aを構成する他方の糸条(2)には、75d/30fの
レーヨンブライト糸を使用し、糸条b(3)には、20
d/12fのポリエステルセミダル通常糸を使用する。
これらを図4の装置により、仮撚数1800T/M、仮
撚方向Z、第1ヒーター7の温度200℃、第2ヒータ
ー10の温度200℃、マグネットテンサー4の張力
(テンサー出側)8g/Y,糸条bガイド6と仮撚加工
中の糸条aとの距離150mm,仮撚加撚域への糸条b
−バーフィード率100%、第1引取ローラー9の速度
80m/分、該第1引取ローラーから第2引取ローラー
11間のオーバーフィード率15%の条件設定で仮撚加
工を行った結果、三重捲回構造を成すスラブ部と一重捲
回構造を成す道中部とが交互に繰り返され、且つ、該道
中部においては糸条bが糸条中心部に位置し、糸条aが
該糸条b外周部を壁撚条に捲回してなる、100〜20
0mm程度のスラブを有するスラブ調複合仮撚糸が得ら
れた。このスラブ調複合仮撚糸を用いて織物・編物とし
たところ、従来製織・編工程中に生じていたスラブ崩れ
が無く、また、三重捲回構造スラブと壁撚状を成す道中
部の凹凸感から、従来にないシャリ感を持ち、且つ、適
度なドレープ性を持つ織物・編物が得られた。また、分
散染料を用い、糸条aを構成する一方の糸条であるトリ
アセテートと糸条bのポリエステルだけを染色すること
により、表面に出現する白残しのレーヨンが、ムラの無
い、きめ細やかな杢調表現をする織物・編物が得られ
た。
【0012】〔実施例2〕糸条aを構成する一方の糸条
(1)に75d/20fのトリアセテートブライト糸を
用いた他は、実施例1と同様の条件で仮撚加工を行った
結果、同様な糸形態をした、80〜180mm程度のス
ラブを有するスラブ調複合仮撚糸が得られた。このスラ
ブ調複合仮撚糸を用いて織物・編物としたところ、実施
例1より更にドレープ性に優れた織物・編物が得られ
た。
【0013】〔比較例1〕糸条aを構成する一方の糸条
(1)には150d/40fのトリアセテートブライト
糸を、糸条aを構成する他方の糸条(2)には50d/
36fのポリエステルセミダル通常糸を使用し、糸条b
(3)には30d/12fのポリエステルセミダル通常
糸を使用する以外は図4の装置により実施例1と同様の
条件で仮撚加工を行ったところ、実施例1よりもやや凹
凸の緩やかな壁撚状の道中部を持つスラブ調複合仮撚糸
が得られた。しかし、このスラブ調複合仮撚糸を用いて
織物・編物としたところ、シャリ感に富み風合いは良好
であったが、ドレープ性に乏しいものであった。
【0014】〔比較例2〕仮撚数1100T/M,仮撚
加撚域への糸条bオーバーフィード率30%とした以外
はすべて実施例1と同様の装置・条件で仮撚加工を行っ
たところ、糸条aが糸条b外周部を壁撚状に捲回する道
中部は部分的に現れるものの、三重捲回構造を成すスラ
ブ部は形成されず、同時仮撚の状態で糸分れしてしま
い、実施例1のようなスラブ調複合仮撚糸は得られなか
った。
【0015】
【発明の効果】本発明のスラブ調複合仮撚糸は、製織・
編工程におけるスラブ崩れを防ぐための追撚の必要がな
く、且つ壁撚状に形成された道中部の微妙な凹凸変化に
より、従来に無いシャリ感を持ち、更に適度なドレープ
性としなやかさを必要とされる織物・編物に適したもの
である。しかも、簡易な装置で製造が可能であり、その
経済効果及び複雑な意匠効果による産業上の利用価値は
非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスラブ調複合仮撚糸の道中部におい
て、糸条bが芯部に位置すると共に糸条aの外周に壁撚
り状に捲回している部分を示す側面図である。
【図2】本発明のスラブ調複合仮撚糸の道中部におい
て、糸条a及び糸条bが互いに交絡している部分を示す
側面図である。
【図3】本発明のスラブ調複合仮撚糸のスラブ部の一例
を示す側面図である。
【図4】本発明のスラブ調複合仮撚糸の製造方法の一例
を示す装置の横断面図である。
【符号の説明】
1 糸条aを構成する一方の糸条 2 糸条aを構成する他方の糸条 3 糸条b 4 マグネットテンサー 5 供給ローラー 6 糸条bガイド 7 第1ヒーター 8 仮撚ユニット 9 第1引取ローラー 10 第2ヒーター 11 第2引取ローラー 12 巻取チーズ a 2本の糸条から構成された糸条a b 糸条b
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−201040(JP,A) 特開 平7−34345(JP,A) 特開 昭57−56533(JP,A) 特開 昭64−33230(JP,A) 特開 平6−2275(JP,A) 特開 平7−189061(JP,A) 特開 昭61−102444(JP,A) 特開 昭61−215731(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02G 1/00 - 3/48 D02J 1/00 - 13/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芯部に位置する糸条に対し鞘部に位置す
    る糸条が三重捲回構造を成すスラブ部と、一重捲回構造
    を成す道中部とが交互に繰り返されてなるスラブ調複合
    仮撚糸に於いて、スラブ部に於いては、レーヨン糸及び
    セルロースアセテート糸を含む2本以上の糸からなる糸
    条aが芯部に、他の糸条bが鞘部に位置し、道中部に於
    いては、糸条bが芯部に位置すると共に、糸条aの外周
    に壁撚り状に捲回している部分と、糸条a及び糸条bが
    互いに交絡している部分が存在していることを特徴とす
    るスラブ調複合仮撚糸。
  2. 【請求項2】 仮撚加工中の糸条aの加撚域に、糸条b
    をオーバーフィード状態で供給し、糸条bを糸条aの周
    囲に捲回させながら仮撚加工するに際して、糸条aにレ
    ーヨン糸及びセルロースアセテート糸を含む2本以上の
    糸からなる糸条を用い、仮撚温度を100℃以上、糸条
    bのオーバーフィード率を30%以上、並びに仮撚撚り
    数を1200T/M以上に設定することを特徴とする
    求項1記載のスラブ調複合仮撚糸の製造方法。
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JP5219666B2 (ja) * 2008-07-24 2013-06-26 三菱レイヨン株式会社 ポリエステル捲縮糸及びその製造方法と、同捲縮糸との複合糸を使った織編物

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