JP3434889B2 - 塗工紙の製造方法、紙加工用塗工剤組成物および塗工紙 - Google Patents

塗工紙の製造方法、紙加工用塗工剤組成物および塗工紙

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JP3434889B2
JP3434889B2 JP13301794A JP13301794A JP3434889B2 JP 3434889 B2 JP3434889 B2 JP 3434889B2 JP 13301794 A JP13301794 A JP 13301794A JP 13301794 A JP13301794 A JP 13301794A JP 3434889 B2 JP3434889 B2 JP 3434889B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、塗工紙の製造方法、紙
加工用塗工剤組成物および塗工紙に関し、より詳しく
は、撥水度、後印刷適性、糊貼り性および離解性に優れ
た塗工紙の製造方法、その方法に用いられる紙加工用塗
工剤組成物、およびその方法で製造された塗工紙に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】各種包装用資材、例えば段ボール、重袋
あるいは包装紙などは、輸送中における内容物の品質保
全、安全輸送、さらには包装紙材の強度劣化の防止のた
め、内容物によって種々の機能付加のための処理が行わ
れている。とりわけ青果物、水産物などの包装に用いる
段ボールなどにおいては、鮮度の保全および水分などに
よる包装紙材の強度劣化を防止するために、撥水加工さ
れた塗工紙が広く使用されている。
【0003】ここで撥水加工とは、段ボール用ライナー
あるいはクラフト紙などの表面に、撥水性の塗工剤を塗
布あるいは含浸させる加工であり、通常、紙にR6〜R
10の撥水度(JIS P−8137規格による)を付
与する加工をいう。
【0004】この様な撥水加工に用いられる塗工剤の主
成分としては、従来から石油系ワックスやシリコーン系
ワックスが利用されている。しかし、これらの塗工剤を
そのまま使用してR6〜R10の撥水度を維持するため
には、多量の塗工あるいは含浸が必要となり、結果とし
て得られた撥水加工紙の印刷や糊貼りなどの後加工適性
が得られないという問題があった。
【0005】そこで、高い撥水度と後加工適性の双方を
付与する試みとして、特公昭42−19222号公報、
特公昭43−27531号公報では、通常の乳化剤を使
用した水性樹脂エマルジョンと水性ワックスエマルジョ
ンの混合物からなる塗工剤が、また特開昭52−118
016号公報ではこの系にさらに体質顔料を混合した塗
工剤が提案されている。
【0006】しかし、この種の塗工剤は水性樹脂エマル
ジョンと水性ワックスエマルジョンとの相溶性の不良に
起因して保存安定性が低い点、また塗工適性の不良に起
因して塗工量の制御が困難(前記ワックス系塗工剤も同
様)となり、目的とする撥水度と後加工適性を有する塗
工紙を安定的に製造することが困難であるなどの問題を
有していた。
【0007】また、パルプ資源を節約するために行われ
る古紙の再生において、得られた塗工紙を再生処理する
際に、上記塗工剤が容易に溶解されず(すなわち離解性
が得られず)、再生紙の地合悪化、ピッチトラブルなど
の原因となっていた。
【0008】さらに特開昭61−113663号公報で
は、通常の水性樹脂エマルジョン、撥水剤に加えて水溶
性樹脂を混合した塗工剤が提案されている。しかし、こ
の種の塗工剤では、水溶性樹脂量が多くなるほど撥水性
が低下するため、高い撥水度を有したままで、良好な塗
工適性、離解性を有する撥水加工紙を得ることが困難で
あった。
【0009】なお、本願出願人は、特定の酸価を有する
樹脂の水性ワニス、水性樹脂エマルジョンおよび水性ワ
ックスエマルジョンを特定の比率で含有する塗工剤を塗
工し、さらに熱プレス加工する、防湿塗工紙の製造方法
を特願平4−326853号で提案している。しかしな
がら、なにぶんにも防湿塗工紙の製造が目的であるた
め、水性ワニスと水性樹脂エマルジョンを併用できる代
わりに熱プレス加工工程を必須の構成としているが、撥
水加工紙となれば、省エネルギー、工程の簡略化された
塗工紙の製造方法が望まれるものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的
は、常に安定して高い撥水度と優れた後加工適性を有
し、さらに良好な離解性を有する塗工紙の製造方法、お
よびそれに使用する紙加工用塗工剤を提供することであ
る。
【0011】さらに、高い撥水度と優れた後加工適性を
有し、良好な離解性を有する塗工紙を提供することであ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、
子内にカルボキシル基を有する酸価50〜350の高分
子乳化剤(a1)20〜50重量部の存在下で、重合体
のガラス転移温度が90℃以下となる範囲で選択され
かつアクリル酸系単量体、スチレン系単量体の中から選
択された1種または2種以上のラジカル重合性単量体
(a2)50〜80重量部(ただし、a1とa2を合わせて
100重量部とする)を乳化重合して得られる水性樹脂
エマルジョン(a)、および融点が50〜120℃のワ
ックスの水性エマルジョン(b)の2成分を、a/bの
固形分重量比率が30/70〜98/2となる範囲で含
有する紙加工用塗工剤を、紙表面に2〜25g/m
2(乾燥重量)の盛り量で塗工した後、塗工面をワック
スの融点以上の温度で加熱することを特徴とする塗工紙
の製造方法に関する。
【0013】その好ましい態様として、塗工面を、表面
温度がワックスの融点以上に加熱された熱板または熱ロ
ールに接触させて加熱する塗工紙の製造方法、および、
a1の酸価が250より高く350以下である紙加工用
塗工剤、またはa/bの固形分重量比率が95/5より
大きく98/2以下となる範囲で含有する紙加工用塗工
剤を用い、さらに塗工面を表面温度がワックスの融点以
上に加熱された熱ロールを使用して、60〜150kg
/cmの線圧下でプレス加工する塗工紙の製造方法に関
する。
【0014】また本発明は、塗工紙の製造に用いられる
紙加工用塗工剤組成物であって、 a.分子内にカルボキシル基を有する酸価50〜350
の高分子乳化剤(a1)20〜50重量部の存在下で、
重合体のガラス転移温度が90℃以下となる範囲で選択
され、かつアクリル酸系単量体、スチレン系単量体の中
から選択 された1種または2種以上のラジカル重合性単
量体(a2)50〜80重量部(ただし、a1とa2を
合わせて100重量部とする)を乳化重合して得られる
水性樹脂エマルジョン、 b.融点が50〜120℃のワックスの水性エマルジョ
ンの2成分を必須成分として含有し、かつ、a/bの固
形分重量比率が30/70〜98/2の範囲であること
を特徴とする紙加工用塗工剤組成物に関する。
【0015】その好ましい態様として、以下の〜
紙加工用塗工剤組成物に関する。前記高分子乳化剤
(a1)が、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するカ
ルボン酸および/または酸無水物と、その他の共重合可
能なラジカル重合性単量体の共重合体である紙加工用塗
工剤組成物。 さらに、金属架橋剤を紙加工用塗工剤組
成物中に存在する全カルボキシル基に対して0.2当量
以上含有する前記紙加工用塗工剤組成物。
【0016】さらに本発明は、上記の製造方法によって
製造された塗工紙に関する。
【0017】
【作用および実施例】以下に本発明を詳細に説明する。
【0018】まず、本発明で用いられる紙加工用塗工剤
は、高分子乳化剤の存在下でラジカル重合性単量体を乳
化重合して得られる水性樹脂エマルジョンと水分散性ワ
ックスエマルジョンを主成分とするものである。
【0019】前記水性樹脂エマルジョンの高分子乳化剤
としては、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するカル
ボン酸および/または酸無水物と、その他の共重合可能
なラジカル重合性単量体との共重合体が好適に使用でき
る。
【0020】ここで、ラジカル重合性不飽和二重結合を
有するカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロ
トン酸などの炭素原子数が3〜4個程度のモノカルボン
酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸
などの炭素原子数が4〜5個程度のジカルボン酸と、そ
のモノアルキルエステル、モノヒドロキシアルキルエス
テル、モノアミドをあげることができる。また、ラジカ
ル重合性不飽和二重結合を有する酸無水物としては、無
水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸など
をあげることができる。
【0021】なお、前記ジカルボン酸のモノエステル
類、モノヒドロキシアルキルエステル類、およびモノア
ミド類としては、当該ジカルボン酸成分と、次に記載す
る炭素原子数が1〜18個程度のモノアルコール成分ま
たは炭素原子数が2〜8個程度のジオール成分とのモノ
エステル化合物、および炭素原子数が1〜18個程度の
アミン成分とのモノアミド化合物があげられる。
【0022】モノアルコール成分 メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、
ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノー
ル、オクタデカノールなど ジオール成分 エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレン
グリコールなど アミン成分 エチルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、へキシ
ルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、オクタデシ
ルアミンなど これらのラジカル重合性不飽和二重結合を有するカルボ
ン酸および/または酸無水物の中でも、得られる高分子
乳化剤の乳化能の点から、モノカルボン酸、なかんづく
アクリル酸またはメタクリル酸の使用が好適である。
【0023】また、その使用量は、全単量体成分を重合
して得られる高分子乳化剤の酸価を50〜350とする
範囲である。高分子乳化剤の酸価が50より低くなる
と、得られる撥水加工紙の離解性が低下し、一方酸価が
350より高くなると、水性ワックスエマルジョンとの
相溶性が低下し、また得られる塗工紙の撥水度が低下し
て好ましくない。
【0024】なお、高分子乳化剤の酸価が250を超え
て、350に近くなるほど撥水度は低くなるが、良好な
離解性の有する塗工紙を製造することができる。さら
に、この系で撥水度を高くする方法として、熱プレス法
があげられるが、これについては後で記載する。
【0025】一方、その他の共重合可能なラジカル重合
性単量体としては、例えば次に記載するアクリル系単量
体、スチレン系単量体およびマレイン酸系単量体が利用
できる。
【0026】・アクリル系単量体:(メタ)アクリル酸
の炭素原子数が1〜18のアルキルエステル、炭素原子
数が1〜18のアルキルアミド、炭素原子数が2〜4の
ヒドロキシアルキルエステルなどで、具体的には、メチ
ル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレー
ト、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)ア
クリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル
(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレー
ト、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)ア
クリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、ヘキシ
ル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレートなどをあげることができる。 ・スチレン系単量体:炭素原子数が8〜10個程度のス
チレンおよびその誘導体で、具体的には、α−メチルス
チレン、クロルスチレン、ビニルトルエンなどをあげる
ことができる。
【0027】・マレイン酸系単量体:マレイン酸の炭素
原子数が1〜18のジアルキルエステル、炭素原子数が
1〜18のジアルキルアミド、炭素原子数が2〜4のジ
(ヒドロキシアルキル)エステルなどで、具体的には、
ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジブチルマレー
ト、ジオクチルマレート、ビス(2−ヒドロキシエチ
ル)マレート、マレイン酸ジメチルアミド、マレイン酸
ジエチルアミド、マレイン酸ジブチルアミド、マレイン
酸ジオクチルアミドなどをあげることができる。
【0028】以上のラジカル重合性不飽和二重結合を有
するカルボン酸および/または酸無水物と、その他の共
重合可能なラジカル重合性単量体から高分子乳化剤を製
造する方法としては、有機溶剤中で重合開始剤の存在
下、前記単量体成分を所定の温度および反応時間で反応
させた後、有機溶剤を留去する方法が利用できる。
【0029】ここで、使用可能な有機溶剤としては、酢
酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系、アセト
ン、メチルエチルケトンなどのケトン系、低級アルコー
ル系、グリコールおよびその誘導体などをあげることが
でき、一方使用可能な重合開始剤としては、過硫酸カリ
ウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過
硫酸塩類、ベンゾイルハイドロパーオキサイドなどの有
機過酸化物類、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ
化合物類、また必要に応じて還元剤と組み合わせたレド
ックス系開始剤をあげることができる。
【0030】なお、本発明の方法で得られる撥水加工紙
が、段ボールの糊貼り工程のように、処理温度が120
℃以上となる加熱工程を含む分野に利用される場合は、
撥水加工紙の耐熱性付与の点から、高分子乳化剤のガラ
ス転移温度を60℃以上にすることが好ましい。
【0031】次に、高分子乳化剤の存在下で、乳化重合
に供されるラジカル重合性単量体としては、前記アクリ
ル系単量体、スチレン系単量体、マレイン酸系単量体の
他、次に例示する飽和カルボン酸のビニルエステルをあ
げることができる。
【0032】・飽和カルボン酸のビニルエステル:炭素
原子数2〜18の飽和カルボン酸のビニルエステルで、
具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリ
ル酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどをあげることがで
きる。
【0033】これらのラジカル重合性単量体の中でも、
水性樹脂エマルジョンの分散性からアクリル系単量体、
スチレン系単量体が好ましい。
【0034】以上のラジカル重合性単量体は、得られる
重合体のガラス転移温度が90℃以下となる範囲で単独
または混合して用いられるものである。得られる重合体
のガラス転移温度が90℃より高くなると、撥水加工紙
の撥水度が低下して好ましくない。
【0035】以上の高分子乳化剤、乳化重合に供される
ラジカル重合性単量体を使用して、水性樹脂エマルジョ
ンを製造する方法としては、高分子乳化剤をアルカリ化
合物の水溶液中に溶解させた後、乳化重合に供される単
量体と重合開始剤との混合物を添加し、所定の温度およ
び反応時間で反応させる方法が利用できる。
【0036】ここで、高分子乳化剤を水性媒体中に溶解
させるために使用するアルカリ化合物としては、アンモ
ニア、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノール
アミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホ
リン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど
のアミン類を使用することができ、また重合開始剤とし
ては前記の高分子乳化剤を製造するために使用する重合
開始剤を使用することができる。
【0037】また、本発明の高分子乳化剤と乳化重合に
供されるラジカル重合性単量体との重量割合は、高分子
乳化剤/ラジカル重合性単量体=20/80〜50/5
0、好ましくは30/70〜45/55の範囲である。
高分子乳化剤の割合が前記の範囲より低くなると、得ら
れる水性樹脂エマルジョンの安定性および撥水加工紙の
離解性が低下し、一方前記の範囲をこえると撥水性が低
下する。
【0038】次に、本発明で使用する水性ワックスエマ
ルジョンは、融点が50〜120℃の範囲にあるワック
スを、乳化剤の存在下で水中に分散させたものである。
【0039】ここで使用できるワックスとしては、パラ
フィンワックス、マイクロクロスタリンワックス、カル
ナバワックス、モンタンワックス、ポリエチレンワック
ス、ポリプロピレンワックスなどをあげることができ
る。
【0040】ワックスを水中に乳化するために使用する
乳化剤については、特に制限はなく、ノニオン系界面活
性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤お
よび前記した本発明の高分子乳化剤のいずれも使用でき
る。なお、高い撥水度を維持するためには、水性ワック
スエマルジョン中の乳化剤の含有量が少ない方がよく、
たとえばワックスの量に対して10重量%以下が好まし
い。
【0041】本発明における水性樹脂エマルジョンと水
性ワックスエマルジョンの含有比率は、固形分重量比率
として30/70ないし98/2である。ここで本発明
においては、水性樹脂エマルジョンの固形分とは全固形
分を意味し、水性ワックスエマルジョンの固形分とはワ
ックスを意味する。水性ワックスエマルジョンの含有量
がこの範囲より少なくなると、得られる撥水加工紙の撥
水性が低下し、一方この範囲より多くなると後加工適
性、離解性が低下して好ましくない。
【0042】ここで、前記水性ワックスエマルジョンの
含有比率が95/5より小さく98/2に近くなると、
撥水度は低くなるが、良好な離解性の有する塗工紙を製
造することができる。さらに、この系で撥水度を高くす
る方法として、熱プレス法があげられるが、これについ
ては後で記載する。
【0043】さらに、撥水加工紙が高い撥水性と耐熱性
を必要とする用途に用いられる場合は、本発明の撥水加
工用塗工剤中に、カルボキシル基と反応可能な水溶性金
属錯塩などを架橋剤として添加することにより良好な結
果を得ることができる。
【0044】ここで使用可能な水溶性金属錯塩として
は、Zn、Zr、Sn、Tiなどの多価金属を、炭酸、
リン酸などの無機酸、もしくはタンニン、没食子酸、フ
ミン酸、サリチル酸、安息香酸、パラオキシ安息香酸な
どの有機酸と反応させて金属錯塩とし、さらにアンモニ
ア、エチレンジアミン、メチルアミン、エチルアミン、
ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノール
アミンなどのアミン類で中和して水溶化したものをあげ
ることができる。
【0045】具体例としては、炭酸亜鉛アンモン、リン
酸亜鉛アンモン、没食子酸亜鉛アンモン、フミン酸亜鉛
アンモン、安息香酸亜鉛アンモン、あるいはスズ、ジル
コニウム、チタンの同様の金属錯塩などが例示できる。
【0046】これら水溶性金属錯塩の製造法としては、
先ず多価金属の水酸化物、酸化物などにアンモニア、ア
ミンなどの水溶液を加えてスラリーを調製し、これに前
記の酸もしくはそのアンモニウム塩、アミン塩を添加
し、金属化合物を水溶化させることによって得ることが
できる。
【0047】これら水溶性金属錯塩の効果的な使用量
は、撥水加工用塗工剤組成物中に存在する全カルボキシ
ル基に対して、0.2当量以上、好ましくは0.5当量
以上である。
【0048】これらの金属架橋剤は、化学量論的にはそ
の1当量がカルボキシル基の1当量と反応するが、反応
率が100%ではないため、全カルボキシル基を架橋す
るには1.5当量程度含有させることが好ましい。1.
5当量を超える金属架橋剤の添加は、特に問題はないと
しても、その効果は1.5当量の添加時とほとんど変わ
らなくなる。
【0049】さらに、本発明の目的である保存安定性、
撥水度、離解性を低下させない範囲で、各種水溶性樹
脂、水混和性溶剤、消泡剤などを適宜添加することがで
きる。
【0050】これらの材料を使用して、塗工剤を製造す
る方法としては、高速ミキサーなどの従来より公知の撹
拌機を使用して、各材料の所定量を撹拌混合して製造す
ることができる。
【0051】次に、本発明に係る塗工剤の塗工方法とし
ては、紙表面に通常のロールコーター、ドクターブレー
ドコーター、ナイフエッジコーター、カーテンコータ
ー、グラビアコーター、バーコーターなどのいずれによ
っても塗工することができる。
【0052】さらに、紙面に薬剤や各種紙塗被剤が塗工
された後に、本塗工剤を塗工することもでき、紙の片面
もしくは両面に塗工することもできる。なお、本塗工剤
の有効な塗工量としては、1回または複数回の塗工で、
通常2〜25g/m2 、より好ましくは5〜20g/m
2 (乾燥重量)の範囲である。
【0053】紙表面に塗工剤が塗工された後の乾燥方法
としては、熱風ヒーター、赤外線ヒーターなどの各種ヒ
ーター類を使用することができる。
【0054】さらに、塗工面をワックスの融点以上に加
熱することにより、より高い撥水効果を得ることができ
る。塗工面の加熱方法としては、熱風ヒーターや赤外線
ヒーターを利用してもよいが、与えられる熱量が小さい
ため、熱板や熱ロール表面に接触させて、すなわち実質
的に圧力をかけずに加熱する方法がより効果的である。
なお、本撥水加工紙が段ボールに利用される場合は、糊
貼り工程で熱板や熱ロールに接触させられるため、本工
程を省くことができる。
【0055】さらに、本願発明の紙加工用塗工剤組成物
の高分子乳化剤の酸価が250より高く350以下であ
るとき、および/または水性樹脂エマルジョン/水性ワ
ックスエマルジョンの固形分重量比率が95/5より大
きく98/2以上の範囲であるときは、表面温度がワッ
クスの融点以上で、かつ好ましくは90〜180℃に加
熱された熱ロールにて、60〜150kg/cmの線圧
下でプレス加工する方法により、より高い撥水度を有す
る塗工紙を製造することができる。
【0056】これらの方法から得られる塗工紙は、より
少ない紙加工用塗工剤の塗工量で、高い撥水度、優れた
後加工適性および良好な離解性を有するものである。
【0057】以下、実施例によって本発明をより具体的
に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。なお、特にことわりの無い限り、「部」および
「%」は「重量部」および「重量%」を表す。
【0058】<水性樹脂エマルジョンの合成> 高分子乳化剤合成例 撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ
口フラスコに、酢酸エチル350部を仕込み、75〜7
8℃に加熱した後、窒素ガスを導入しながら、表1に示
したモノマー成分、および反応開始剤として、ジターシ
ャリーブチルパーオキサイド2.0部を混合して、4時
間かけて滴下した。さらに同温度に保ちながら2時間重
合させた後、溶剤を減圧下蒸発させて共重合体No.1
〜6を得た。
【0059】
【表1】
【0060】水性樹脂エマルジョン合成例1 乳化機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ
口フラスコに、表2に示す高分子乳化剤成分を仕込み、
窒素ガスを導入しながら、90℃に加熱して共重合体N
o.1〜6を溶解した後、乳化重合成分、およびジター
シャリーブチルオキサイド1.2部の混合物を4時間か
けて滴下した後、さらに2時間反応させて乳化重合を行
い、固形分40%の水性樹脂エマルジョンNo.1〜1
4を得た。
【0061】
【表2】
【0062】水性樹脂エマルジョン合成例2 乳化機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ
口フラスコに、水570部、ドデシルベンゼンスルホン
酸ソーダ10部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエ
ーテル20部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90℃
に加熱した後、メタクリル酸メチル172部、アクリル
酸2−エチルヘキシル28部、スチレン200部、およ
びジターシャリーブチルオキサイド1.2部の混合物を
4時間かけて滴下した後、さらに2時間反応させて乳化
重合を行い、固形分40%の水性樹脂エマルジョンN
o.15を得た。
【0063】<水性ワニスの調製>乳化剤共重合体N
o.2の400部を、水455部、25%アンモニア水
145部の混合溶液に加熱溶解させて、水性ワニスN
o.1を得た。
【0064】<架橋剤の調製>25%アンモニア水25
部、炭酸アンモニウム25部、酸化亜鉛粉末25部、お
よび水25部から架橋剤を調製した。
【0065】実施例1〜24および比較例1〜7 表3〜4の配合にしたがって、水性樹脂エマルジョンと
水性ワックスエマルジョンを撹拌混合し、実施例1〜1
8および比較例1〜6の塗工剤を製造した。また、水性
樹脂エマルジョンNo.15を60部(固形分換算)、
水性ワニスNo.1を40部(固形分換算)、水性ワッ
クスエマルジョン67部(固形分換算)を撹拌混合し、
比較例7の塗工剤を製造した。なお、水性ワックスエマ
ルジョンとしては、コロパールW−100(星光化学
(株)製、固形分45%、ワックス:パラフィン系ワッ
クス、融点61℃)を使用した。
【0066】坪量75g/m2 のクラフト紙に実施例1
〜17および比較例1〜7の塗工剤をハンドプルーファ
ーを利用して、5g/m2 (乾燥重量基準)の塗工量で
塗工し、熱風炉中で110℃×2分間乾燥した。
【0067】さらに実施例19、20、22、23では
塗工面を110℃に加熱した熱板または熱ロールに約2
秒間接触させ、実施例21、24では110℃の熱ロー
ルで100kg/cmの線圧下、5m/minのライン
速度でプレス加工した。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】実施例および比較例の評価 (1)撥水度 JIS規格 P−8137に準じて、撥水度R1〜R1
0の評価を行った。R6〜R10が実用範囲である。
【0071】(2)離解性 家庭用ミキサー((株)東芝製、MX−240G)を使
用して、パルプ濃度1%に調整した撥水加工紙と水の混
合物1リットルを2分間撹拌した。評価値がA〜Cであ
れば実用範囲である。 A:完全に紙が繊維状に離解する。 B:80%以上の紙が繊維状に離解する。 C:50%以上80%未満の紙が繊維状に離解する。 D:50%未満の紙が繊維状に離解する。
【0072】(3)印刷適性 塗工紙にハンドプルーファーを用いてフレキソ用水性印
刷インキ(サカタインクス(株)製、NewFK HS
B−X藍インキ)を印刷したときの、印刷物の状態から
印刷適性を評価した。評価値がA、Bであれば実用範囲
である。 A:印刷面に色ムラがみられない。 B:印刷面にわずかに波状の色ムラが認められる。 C:印刷面にインキの転移していない部分が認められ
る。
【0073】(4)糊貼り性 塗工紙に段ボール加工用糊(サカタインクス(株)製、
SKTグルー SK−072)を0.15mmのメーヤ
バーで塗工した後、塗工面同士を合わせて、10g/c
2 の荷重をかけ10分間放置した。荷重を解いてか
ら、さらに24時間室温で放置した後、剥離したとき
の、塗工紙の接着の状態から糊貼り性を評価した。評価
値がA、Bであれば実用範囲である。 A:糊の塗工面全体で紙むけがみられる。 B:糊の塗工面の一部分で紙むけがみられる。 C:塗工紙から糊がきれいに剥離する。
【0074】(5)耐熱性 塗工面に200℃に加熱した熱板をアルミ箔を介して2
kg/cm2 の荷重をかけて5秒間接触させたときのア
ルミ箔に塗工剤が付着する状態から耐熱性を評価した。
評価値がA〜Cであれば実用範囲である。 A:アルミ箔に塗工剤が全く付着しない。 B:アルミ箔表面が塗工剤でくもる。 C:アルミ箔表面に塗工剤が部分的に移行する。 D:アルミ箔表面に塗工剤が全面的に移行する。
【0075】
【表5】
【0076】
【発明の効果】以上、実施例をあげて具体的に説明した
ように、本発明の撥水加工用塗工剤は高い撥水度と優れ
た後加工適性を有し、さらに高い離解性を有する撥水加
工紙を与え、長期保存が可能な撥水加工剤である。
【0077】また、本塗工剤を塗工し、熱板または熱ロ
ールに接触させる方法、または熱ロールプレスする方法
により、より高い撥水度を有する撥水加工紙を得ること
ができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−302299(JP,A) 特開 平3−279492(JP,A) 特開 昭55−90562(JP,A) 特開 平2−307999(JP,A) 特開 昭53−127556(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D21H 11/00 - 27/42

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分子内にカルボキシル基を有する酸価5
    0〜350の高分子乳化剤(a1)20〜50重量部の
    存在下で、重合体のガラス転移温度が90℃以下となる
    範囲で選択され、かつアクリル酸系単量体、スチレン系
    単量体の中から選択された1種または2種以上のラジカ
    ル重合性単量体(a2)50〜80重量部(ただし、a
    1とa2を合わせて100重量部とする)を乳化重合し
    て得られる水性樹脂エマルジョン(a)、および融点が
    50〜120℃のワックスの水性エマルジョン(b)の
    2成分を、a/bの固形分重量比率が30/70〜98
    /2となる範囲で含有する紙加工用塗工剤を、紙表面に
    2〜25g/m2(乾燥重量)の盛り量で塗工した後、
    塗工面をワックスの融点以上の温度で加熱することを特
    徴とする塗工紙の製造方法。
  2. 【請求項2】 塗工面を、表面温度がワックスの融点以
    上に加熱された熱板または熱ロールに接触させて加熱す
    る請求項1記載の塗工紙の製造方法。
  3. 【請求項3】 a1の酸価が250より高く350以下
    である紙加工用塗工剤を用い、さらに塗工面を、表面温
    度がワックスの融点以上に加熱された熱ロールを使用し
    て、60〜150kg/cmの線圧下でプレス加工する
    請求項1記載の塗工紙の製造方法。
  4. 【請求項4】 a/bの固形分重量比率が95/5より
    大きく98/2以下となる範囲で含有する紙加工用塗工
    剤を用い、さらに塗工面を、表面温度がワックスの融点
    以上に加熱された熱ロールを使用して、60〜150k
    g/cmの線圧下でプレス加工する請求項1記載の塗工
    紙の製造方法。
  5. 【請求項5】 塗工紙の製造に用いられる紙加工用塗工
    剤組成物であって、 a.分子内にカルボキシル基を有する酸価50〜350
    の高分子乳化剤(a1)20〜50重量部の存在下で、
    重合体のガラス転移温度が90℃以下となる範囲で選択
    され、かつアクリル酸系単量体、スチレン系単量体の中
    から選択 された1種または2種以上のラジカル重合性単
    量体(a2)50〜80重量部(ただし、a1とa2を
    合わせて100重量部とする)を乳化重合して得られる
    水性樹脂エマルジョン、 b.融点が50〜120℃のワックスの水性エマルジョ
    ンの2成分を必須成分として含有し、かつ、a/bの固
    形分重量比率が30/70〜98/2の範囲であること
    を特徴とする紙加工用塗工剤組成物。
  6. 【請求項6】 さらに金属架橋剤を、組成物中に存在す
    る全カルボキシル基に対して0.2当量以上含有する請
    求項5記載の紙加工用塗工剤組成物。
  7. 【請求項7】 前記高分子乳化剤(a1)が、ラジカル
    重合性二重結合を有するカルボン酸および/または酸無
    水物と、その他の共重合可能なラジカル重合性単量体と
    の共重合体であることを特徴とする請求項5または6記
    載の紙加工用塗工剤組成物。
  8. 【請求項8】 請求項1、2、3または4記載の方法で
    製造された塗工紙。
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