JP3434463B2 - 油中水型乳化油脂組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、パーム油を含有す
る油中水型乳化油脂組成物に関する。本発明の油中水型
乳化油脂組成物は、パーム油を高度に含有しているにも
かかわらず粗大結晶（グレイン）が生成しない滑らかな
組織を有するものである。

【０００２】

【従来の技術】油中水型乳化油脂組成物は、マーガリン
やファットスプレッドの形態で広く使用されている。例
えば、家庭では、テーブル油脂としてパンやクッキー等
に塗布されたり、調理用油脂として料理に利用されてい
る。また、原料油脂として製菓・製パンの際に生地に練
り込まれる等、その用途は広範である。このようにして
用いられる油中水型乳化油脂組成物に要求される重要な
特性は、保形性や口溶性、あるいは展延性等が良好なこ
とである。油中水型乳化油脂組成物は、油相と水相をそ
れぞれ調製し、それを油中水型に乳化するのが一般的で
ある。この油相に配合される油脂としては、大豆油、綿
実油、サンフラワー油、サフラワー油、コーン油、魚
油、牛脂、ラード、パーム油、パーム核油、ヤシ油等が
ある。これらの油脂の中にあっても、パーム油は、物量
が豊富で、価格が他の油脂に比較して安価である等の理
由によって、油中水型乳化油脂組成物の原料油脂として
は重要な資源である。

【０００３】しかし、パーム油は、欠点として結晶の悪
さが挙げられている。このため、油中水型乳化油脂組成
物の油相に高度（多量）に配合すると、製造工程におけ
る急冷可塑化工程や冷蔵下での保存中に粗大結晶（グレ
イン）を生成するといった問題がある。粗大結晶が生成
すると、製品の機能や外観だけでなく、摂取したときに
ザラツキ感を与えるため商品価値を著しく低下させる原
因となっている。この粗大結晶が生成するのは、パーム
油特有のトリグリセリドに起因するといわれている。パ
ーム油は、トリグリセリド分子の１，３位に飽和脂肪
酸、２位にオレイン酸を結合する対称型トリグリセリド
を多く含有する。このように同種の構造を有するトリグ
リセリドは整列し易く、それらが粗大結晶へと成長して
いくと推測されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記したように、油脂
の中にあっても、パーム油は、物量が豊富で、価格が他
の油脂に比較して安価である等の理由によって、油中水
型乳化油脂組成物の原料油脂として重要性を増していな
がら、製造工程中あるいは保存中に経時的に粗大結晶の
生成があって、その配合量は制限されているのが現状で
ある。このようなことから、本発明は、パーム油をでき
るだけ高度に配合できる油中水型乳化油脂組成物につい
て検討したものである。すなわち、本発明は、油相にパ
ーム油を多量に配合しても粗大結晶の生成しない油中水
型乳化油脂組成物を提供することを課題とするものであ
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明は、以下のような油中水型乳化油脂組成物
を提供するものである。すなわち、本発明は、可塑性食
用油脂を基質とする油相の２０〜８０重量％と、水を基
質とする水相の８０〜２０重量％とを、油中水型に乳化
してなる油脂組成物であって、油相が少なくともパーム
油１０〜５０重量％を含有する混合油脂と飽和脂肪酸結
合型ソルビタン脂肪酸エステルからなり、かつ油相の総
脂肪酸量に対して炭素数６〜１２の中鎖脂肪酸を０．８
〜１５重量％含有することを特徴とする油中水型乳化油
脂組成物である。また本発明は、上記の飽和脂肪酸結合
型ソルビタン脂肪酸エステルの飽和脂肪酸が、パルミチ
ン酸、またはステアリン酸からなるものである。また本
発明は、上記の飽和脂肪酸結合型ソルビタン脂肪酸エス
テルの含有量が、油相に対して０．０５〜１．５重量％
からなるものである。また本発明は、上記の飽和脂肪酸
結合型ソルビタン脂肪酸エステルのＨＬＢが４以上から
なるものである。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。通常、マーガリンやファットスプレッド等の油中
水型乳化油脂組成物は、20〜80重量％の油相と80〜20重
量％の水相を乳化することによって調製されている。本
発明の油中水型乳化油脂組成物は、この油相と水相の範
囲において、油相は少なくともパーム油10〜50重量％の
混合油脂と飽和脂肪酸結合型ソルビタン脂肪酸エステル
からなり、かつ油相の総脂肪酸量に対して中鎖脂肪酸を
0.8 〜15重量％含有するものである。

【０００７】油相を構成する油脂は、上記したようにパ
ーム油10〜50重量％と他の油脂を混合した混合油脂であ
るが、パーム油と混合される油脂としては、食用に供さ
れる油脂であれば特に制限されない。例えば、大豆油、
ピーナッツ油、やし油、パーム核油、乳脂、ナタネ油、
コーン油、サフラワー油、綿実油、ひまわり油、ラー
ド、牛脂、魚油等で、またこれらの硬化油、エステル交
換油、分別油等を挙げることができ、これらの中から１
種以上が選択される。尚、上記のパーム油の配合量にお
いて、10重量％未満であれば、従来の配合量と大差な
く、本発明の目的を達成するものではなく、一方、50重
量％を超えて配合された場合には、製造工程中、あるい
は冷蔵下で保存した場合に粗大結晶の生成が避けられな
い。

【０００８】また本発明は、パーム油と他の油脂とを混
合する混合油脂の調製にあたって、油脂の総脂肪酸量に
対して中鎖脂肪酸を０．８〜１５重量％含有するように
配合するものである。この中鎖脂肪酸は、Ｃ_６〜Ｃ_１２
程度の脂肪酸で、パーム核油、ヤシ油等のラウリン系の
油脂に多く含まれており、この中鎖脂肪酸を上記の範囲
において配合することにより、後記する飽和脂肪酸結合
型ソルビタン脂肪酸エステルの配合と共にパーム油の粗
大結晶の生成を抑制するものである。また中鎖脂肪酸を
多く含む油脂として、上記のパーム核油、ヤシ油等の他
にも、中鎖脂肪酸をグリセリンとエステル化して調製し
た精製中鎖脂肪酸トリグリセライド（ＭＣＴ）の半合成
油脂も使用できる。

【０００９】上記の中鎖脂肪酸の配合量において、0.8
重量％未満では粗大結晶の生成抑制の効果がない。一
方、15重量％を超えて配合する場合には、パーム核油、
ヤシ油等を30重量％近く配合しなければならなく、これ
らのラウリン系油脂は、可塑性や融解性が低いためにあ
まり多量に配合すると、得られた油中水型乳化油脂組成
物の口溶性や展延性の低下が避けられない。また中鎖脂
肪酸トリグリセライドは、高価であるため、その配合量
も制限される。

【００１０】上記のようにして、パーム油10〜50重量％
と他の油脂を混合して、中鎖脂肪酸の含有量を0.8 〜15
重量％に調整した混合油脂に、乳化剤として飽和脂肪酸
結合型ソルビタン脂肪酸エステルを0.05〜1.5 重量％配
合する。ソルビタン脂肪酸エステルに結合する飽和脂肪
酸としては、多くの飽和脂肪酸が利用可能であるが、特
にパルミチン酸、またはステアリン酸が好ましい。ま
た、本発明においては、ソルビタン脂肪酸エステルに結
合する飽和脂肪酸のエステル化度による影響を受け、Ｈ
ＬＢが２以上のトリ体であってもよいが、ＨＬＢが４以
上であるモノ体において、特に好ましい効果が得られ
る。上記の飽和脂肪酸結合型ソルビタン脂肪酸エステル
の配合量において、0.05重量％未満では、粗大結晶の生
成抑制といった効果が得られず、一方、1.5 重量％を超
えて配合した場合には、その風味が感じられるようにな
って好ましくない。

【００１１】このように本発明の油中水型乳化油脂組成
物の油相においては、パーム油と他の油脂を混合して中
鎖脂肪酸の含有量を調整し、さらに乳化剤として飽和脂
肪酸結合型ソルビタン脂肪酸エステルを配合しているた
め、中鎖脂肪酸とソルビタン脂肪酸エステルに結合した
飽和脂肪酸との相互作用によって、パーム油を配合した
ときの粗大結晶の生成を抑制できるものである。この油
相には、さらに必要に応じて、モノグリセリド、レシチ
ン等の他の乳化剤を併用したり、チーズやバター等の乳
製品、あるいは糖類、着香料等を配合してもよい。

【００１２】上記のようにして油相を調製した後、常法
に従って、水相と乳化する。水相は、水のみでもよい
が、脱脂乳や全乳等の乳蛋白質、食塩等の風味物質、乳
化剤、香料、着色料等を任意に配合して加温下に攪拌し
て均質な水相を形成する。次いで、上記のようにして得
られた油相の20〜80重量％に水相の80〜20重量％を攪拌
下に添加混合して乳化させ、殺菌後急冷して可塑化する
ことにより、油中水型乳化油脂組成物が得られる。

【００１３】このようにして得られた本発明の油中水型
乳化油脂組成物は、従来のパーム油を含有したこの種の
乳化油脂組成物に比較して、パーム油を高度に含有して
いながら、製造工程中や保存中に粗大結晶の生成がな
く、滑らかで、組織の安定したものとなる。

【００１４】

【試験例】以下に乳化剤の種類と中鎖脂肪酸の配合量を
変化させて調製したパーム油を含有する油中水型乳化油
脂組成物の粗大結晶の生成について測定した試験例を示
す。

【００１５】試験例１ この試験例１は乳化剤の種類を特定した試験例である。 (1) 試料の調製 油相と水相を、表１に示す配合（原料の種類、配合量）
に基づいてそれぞれ調製し、常法に従って、乳化タンク
で攪拌乳化後、それを85℃で殺菌して、10℃に急冷し、
ピンマシンで混練して油中水型乳化油脂組成物を調製し
た。得られた油中水型乳化油脂組成物を試料１〜６とし
た。尚、表中、 不飽和蒸留モノグリ＝不飽和蒸留モノグリセリド ソルビタン脂肪酸＝ソルビタン脂肪酸モノパルミテー
ト ソルビタン脂肪酸＝ソルビタン脂肪酸モノステアレー
ト ソルビタン脂肪酸＝ソルビタン脂肪酸トリパルミテー
ト ソルビタン脂肪酸＝ソルビタン脂肪酸モノオレエート パルミチン酸結合型＝パルミチン酸結合型ショ糖脂肪酸
エステル を表す。

【００１６】

【表１】

【００１７】(2)粗大結晶の測定 上記で調製した試料１〜６を、半径10cmのガラスシャー
レに厚さ１cmになるように均一に入れ、20℃で30日間保
存した後、表面に生成した粗大結晶（ツブ状の粒状化
物）の大きさと数を測定した。その結果を表２に示す。

【００１８】

【表２】

【００１９】表２から明らかなように、試料１および２
では、乳化剤として、ソルビタン脂肪酸にパルミチン酸
またはステアリン酸がモノ体でエステル化したものを配
合しているため粗大結晶の生成が全くみられない。また
試料３では、ソルビタン脂肪酸にパルミチン酸がトリ体
でエステル化した乳化剤を配合しているため、若干の粗
大結晶の生成がみられる程度である。しかし、試料４で
は、ソルビタン脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸である
オレイン酸をエステル化した乳化剤が配合され、また試
料５では、パルミチン酸であってもショ糖脂肪酸にエス
テル化した乳化剤が配合されているため粗大結晶の生成
がかなりある。さらに試料６では、試料１と同じ乳化剤
が配合されているが、中鎖脂肪酸の含有量が少ないため
に粗大結晶の生成が抑制されていない。これらの実験結
果から総合的に評価して、乳化剤として、ソルビタン脂
肪酸にパルミチン酸またはステアリン酸がエステル化さ
れているものが、粗大結晶の生成抑制に効果があること
が判る。特に、試料１および２から、モノ体（ＨＬＢが
４程度）において、その効果が顕著で、本発明の目的を
十分に達成することができる乳化剤であることが判る。
これに対して、他の乳化剤では、粗大結晶の生成抑制の
効果がほとんどないことが明らかである。

【００２０】試験例２ この試験例２は、中鎖脂肪酸の配合量を特定するための
試験例である。 (1) 試料の調製 油相と水相を、表３に示す配合に基づいて調製した。こ
の調製した油相と水相を、常法に従って、乳化タンクで
攪拌乳化後、85℃で殺菌して、10℃に急冷し、ピンマシ
ンで混練して油中水型乳化油脂組成物を調製した。得ら
れた油中水型乳化油脂組成物を試料７〜12とした。乳化
剤として、試験例７〜12ではソルビタン脂肪酸モノパル
ミテートを配合した。このソルビタン脂肪酸モノパルミ
テートに替えて、ソルビタン脂肪酸モノステアレートを
配合した以外は試料７〜12と順次同一配合で油中水型乳
化油脂組成物を調製した。得られた油中水型乳化油脂組
成物を試料13〜18とした。

【００２１】

【表３】

【００２２】(2)粗大結晶の測定 上記で調製した試料７〜18を、試験例１と同様に、半径
10cmのガラスシャーレに厚さ１cmになるように均一に入
れ、20℃で30日間保存した後、表面に生成した粗大結晶
（ツブ状の粒状化物）の大きさと数を測定した。その結
果を表４および表５に示す。

【００２３】

【表４】

【００２４】

【表５】

【００２５】表４および表５から明らかなように、試料
７と試料13では、パーム油の含有量が少なく、かつ乳化
剤としてソルビタン脂肪酸モノパルミテートまたはソル
ビタン脂肪酸モノステアレートを配合しているにもかか
わらず、中鎖脂肪酸の含有量が0.8 重量％未満であるた
め、小さな粒状化物が若干認められる。これに対して、
試料８〜12と試料14〜18では、パーム油の含有量が多く
ても、前記乳化剤を配合すると共に中鎖脂肪酸の含有量
が0.8 重量％以上となっているために、粗大結晶の生成
が全くないことが判る。これらのことから、試験例１と
試験例２を併せて総合的に評価すると、パーム油を高度
に含有する油中水型乳化油脂組成物の粗大結晶の生成抑
制に、乳化剤として飽和脂肪酸結合型ソルビタン脂肪酸
エステルを配合し、かつ中鎖脂肪酸の含有量を総脂肪酸
量に対して0.8 重量％以上に含有させることが有効であ
ることが明らかである。また、試験例２において、パー
ム核油の配合量を増加させて中鎖脂肪酸の含有量を15重
量％を超えるようにすると、粗大結晶の生成はないが、
得られた油中水型乳化油脂組成物の口溶性と展延性の低
下現象がみられ、中鎖脂肪酸の含有量の上限値も判明し
た。

【００２６】

【実施例】以下に本発明の実施例を示し、具体的に説明
する。 実施例１ パーム油20重量％、大豆硬化油15重量％、菜種白絞油30
重量％およびパーム核油10重量％を混合して75℃に加温
し、混合油脂を調製した。この混合油脂にソルビタン脂
肪酸モノステアレート（HLB4.7)0.4重量％、反応モノグ
リセリド0.2 重量％、レシチン0.2 重量％およびβ−カ
ロチン若干量を添加して攪拌溶解して油相とした。一
方、水相は50℃の温水21.7重量％に、食塩1.5 重量％と
脱脂粉乳1.0 重量％を添加し、分散・溶解して調製し
た。上記で調製した油相を攪拌しながら、これに水相を
添加して油中水型乳化物とした。得られた油中水型乳化
物にバターフレーバー若干量を添加し、85℃で殺菌処理
を行なった後、45℃まで冷却した。次いでパーフェクタ
ーで10℃まで急冷処理して、ピンマシンによって混練処
理を行ない油中水型乳化油脂組成物とした。得られた油
中水型乳化油脂組成物に含有する中鎖脂肪酸量は、総脂
肪酸量に対して7.4 重量％であった。この油中水型乳化
油脂組成物を、容器に充填し、冷蔵庫で７℃で４カ月間
保存したが、粗大結晶の生成は見られなかった。

【００２７】実施例２ パーム油35重量％、菜種硬化油８重量％、菜種白絞油30
重量％および中鎖脂肪酸トリグリセリド３重量％を混合
して75℃に加温し、混合油脂を調製した。この混合油脂
にソルビタン脂肪酸モノパルミテート（HLB6.7)0.3重量
％、反応モノグリセリド0.2 重量％およびβ−カロチン
若干量を添加して攪拌溶解して油相とした。一方、水相
は50℃の温水22.5重量％に、食塩1.0 重量％を添加し、
分散・溶解して調製した。上記で調製した油相を攪拌し
ながら、これに水相を添加して油中水型乳化物とした。
得られた油中水型乳化物にバターフレーバー若干量を添
加し、85℃で殺菌処理を行った後、45℃まで冷却した。
次いでパーフェクターで10℃まで急冷処理して、ピンマ
シンによって混練処理を行ない油中水型乳化油脂組成物
とした。得られた油中水型乳化油脂組成物に含有する中
鎖脂肪酸量は、総脂肪酸量に対して3.9 重量％であっ
た。この油中水型乳化油脂組成物を、容器に充填し、冷
蔵庫で７℃で４カ月間保存したが、粗大結晶の生成は見
られなかった。

【００２８】実施例３ パーム油18重量％、大豆硬化油８重量％、菜種白絞油30
重量％、ヤシ油３重量％および乳脂肪３重量％を混合し
て75℃に加温し、混合油脂を調製した。この混合油脂に
ソルビタン脂肪酸モノパルミテート（HLB6.7)0.2重量
％、ソルビタン脂肪酸モノステアレート（HLB4.7)0.2重
量％およびβ−カロチン若干量を添加して攪拌溶解して
油相とした。一方、水相は50℃の温水36.6重量％に、食
塩1.0 重量％を添加し、分散・溶解して調製した。上記
で調製した油相を攪拌しながら、これに水相を添加して
油中水型乳化物とした。得られた油中水型乳化物にバタ
ーフレーバー若干量を添加し、85℃で殺菌処理を行なっ
た後、45℃まで冷却した。次いでパーフェクターで10℃
まで急冷処理して、ピンマシンによって混練処理を行な
い油中水型乳化油脂組成物とした。得られた油中水型乳
化油脂組成物に含有する中鎖脂肪酸量は、総脂肪酸量に
対して3.3 重量％であった。この油中水型乳化油脂組成
物を、容器に充填し、冷蔵庫で７℃で４カ月間保存した
が、粗大結晶の生成は見られなかった。

【００２９】

【発明の効果】油中水型乳化油脂組成物の調製に際し
て、パーム油を油相比で10重量％以上配合すると、製造
工程中において、あるいは保存中にグレインといわれる
粗大結晶を生成して、組織や食感の悪いものとなってい
た。このため、油脂としてパーム油は、物量が豊富な
上、価格も比較的安価でありながら油中水型乳化油脂組
成物の原料油脂として使用量が制限されていた。本発明
は、パーム油を、油中水型乳化油脂組成物の原料油脂と
て有効に利用し、かつ粗大結晶の生成を防止するため
に、乳化剤として飽和脂肪酸結合型ソルビタン脂肪酸エ
ステルと中鎖脂肪酸を同時に配合したものである。これ
によって、パーム油を油中水型乳化油脂組成物に配合し
た際に生成する粗大結晶を完全に抑制し、品質の良好な
ものとすることができたのである。本発明によると、パ
ーム油の有効利用という点から実用上効果の大きいもの
である。

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 可塑性食用油脂を基質とする油相の２０
   〜８０重量％と、水を基質とする水相の８０〜２０重量
   ％とを、油中水型に乳化してなる油脂組成物であって、
   油相が少なくともパーム油１０〜５０重量％を含有する
   混合油脂と飽和脂肪酸結合型ソルビタン脂肪酸エステル
   からなり、かつ油相の総脂肪酸量に対して炭素数６〜１
   ２の中鎖脂肪酸を０．８〜１５重量％含有することを特
   徴とする油中水型乳化油脂組成物。
2. 【請求項２】 飽和脂肪酸結合型ソルビタン脂肪酸エス
   テルの飽和脂肪酸が、パルミチン酸、またはステアリン
   酸である請求項１記載の油中水型乳化油脂組成物。
3. 【請求項３】 飽和脂肪酸結合型ソルビタン脂肪酸エス
   テルの含有量が、油相に対して０．０５〜１．５重量％
   である請求項１または２記載の油中水型乳化油脂組成
   物。
4. 【請求項４】 飽和脂肪酸結合型ソルビタン脂肪酸エス
   テルのＨＬＢが４以上である請求項１〜３のいずれか記
   載の油中水型乳化油脂組成物。