JP3432936B2 - 中空複合繊維の製造方法 - Google Patents

中空複合繊維の製造方法

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JP3432936B2 JP5517995A JP5517995A JP3432936B2 JP 3432936 B2 JP3432936 B2 JP 3432936B2 JP 5517995 A JP5517995 A JP 5517995A JP 5517995 A JP5517995 A JP 5517995A JP 3432936 B2 JP3432936 B2 JP 3432936B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は中空複合繊維の製造方法
に関する。本発明の方法により製造された中空複合繊維
は、詰め綿やクッション材として有用である。
【0002】
【従来の技術】クッション材は主に寝具類、家具類、車
両シートや自動車シート等の乗り物シートなどの用途で
用いられており、従来はクッション材としてポリウレタ
ンフォームが汎用されている。しかしながら、ポリウレ
タンフォームの製造にはフロンガスが使用されることが
多く、またポリウレタンフォームの燃焼時に有毒なシア
ンガスが発生し易く、しかも埋め立てが困難でリサイク
ルができないので、地球環境の汚染や破壊などを生ずる
という問題を抱えている。しかも、ポリウレタンフォー
ムは、床ツキ感があり且つ蒸れが大きいために、クッシ
ョン材として使用した場合に、座り心地や寝心地が悪
く、しかもベトついた不快な感触を与え易く、快適性に
劣るという欠点がある。
【0003】そこで、上記した欠点を有するポリウレタ
ンフォームに換えて、ポリエステル綿などの合成繊維製
の詰め綿をクッション材として用いることが行われるよ
うになっており、ポリエステル綿などの主体繊維にバイ
ンダー繊維を混綿し、それを熱成形してクッション材を
形成する方法が通常採用されている。その場合に、クッ
ション材を構成する主体繊維は嵩高性および耐ヘタリ性
が良好であることが必要であるために、嵩高で且つ耐ヘ
タリ性の高い合成繊維を得るための方法が色々試みられ
ており、例えば、繊維の延伸時に機械捲縮を付与する方
法、溶融紡糸時に冷却風を一方向のみから吹き付けて繊
維の内部構造に局部的な変化を生じさせて潜在捲縮性を
付与する方法、繊維を中空繊維としその中空率を高める
方法、極限粘度および溶融粘度に差のある2種の繊維形
成性熱可塑性重合体を用いてサイドバイサイド型に溶融
紡糸して内部構造に配向差および収縮差を有する中実ま
たは中空の複合繊維を製造する方法などが知られてい
る。
【0004】しかしながら、上記した従来法により得ら
れる合成繊維は、嵩高性および耐ヘタリ性において未だ
充分に満足のゆくものではない。特に、極限粘度および
溶融粘度に差のある2種の繊維形成性熱可塑性重合体を
サイドバイサイド型に溶融紡糸して中空複合繊維を製造
する上記した従来法では、2種の繊維形成性熱可塑性重
合体の溶融粘度が異なることによって、繊維が斜向して
ノズルから紡糸されるために口金からの繊維の離れが悪
く、糸切れ(繊維の切れ)が多発して、連続して溶融紡
糸を行うことが困難である場合が多い。しかも、2種の
繊維形成性熱可塑性重合体の接合が完全ではなく繊維に
中空割れを生じて中空繊維とならず、嵩高性および耐ヘ
タリ性が低下し易いのが現状である。
【0005】そこで、中空割れや糸切れなどを生ずるこ
となく、嵩高性および耐ヘタリ性に優れる中空複合繊維
を円滑に製造することを目的として、ノズルパックに改
良を加えること(特公昭45−25846号公報)、ノ
ズルパックを改良すると共にノズルの紡糸用スリットの
端部に粘度の高い方の熱可塑性重合体流がかからないよ
うにして紡糸すること(特公昭47−17089号公
報)、ノズルのスリットを偏心させて紡糸時のノズルか
らの糸離れを改良したもの(特公平5−65604号公
報)などが提案されている。しかしながら、これらの従
来法のいずれもが、中空割れ(重合体の接合面での剥離
等)がなくて、嵩高性および耐ヘタリ性に優れる中空複
合繊維を得るには充分満足のゆくものではなく、より改
良された技術の開発が求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、粘度
の異なる2種の繊維形成性熱可塑性重合体を用いて、中
空割れやパンクなどがなく、嵩高性に富み、しかも耐ヘ
タリ性に優れるサイドバイサイド型の中空複合繊維を、
紡糸時の繊維の斜向、紡糸口金への繊維の付着、それに
伴う糸切れの発生などを防止しながら、良好な工程性
で、高い生産性で安定して製造することのできる方法を
提供することである。特に、本発明は、中空割れやパン
クなどがなく、嵩高性および耐ヘタリ性に優れていて
クッション材や詰め綿として使用するのに適すサイド
バイサイド型の中空複合繊維の製造方法の提供を目的と
するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らが上記の目的
を達成すべく検討を重ねた結果、特定の形状および寸法
を有するノズルから、特定の条件下に、粘度の異なる2
種の繊維形成性熱可塑性重合体をサイドバイサイド型に
溶融紡糸すると、中空割れ、パンク、糸切れなどを生ず
ることなく、嵩高性および耐ヘタリ性に優れる中空複合
繊維を、良好な工程性で生産性よく安定して製造するこ
とができること、またそれによって得られる中空複合繊
維は、その優れた嵩高性および耐ヘタリ性などの特性に
よってクッション材などの詰め綿等として極めて適して
いることを見出して本発明を完成した。
【0008】 すなわち、本発明は、粘度の異なる2種
の繊維形成性熱可塑性重合体をサイドバイサイド型に溶
融紡糸して中空複合繊維を製造する方法であって、 (i) 3個の円弧状スリットA1,B1,C1が互いに
同じ間隔(d1)をあけて同一円周上に配置されている
紡糸ノズルから、前記の2種の繊維形成性熱可塑性重合
体をサイドバイサイド型に溶融紡糸し; (ii) その際の紡糸ノズルは、 円弧状スリットA
1の幅a1、円弧状スリットB1の幅b1および円弧状スリ
ットC1の幅c1が下記の式(1)および(2)を満足
し;
【0009】
【数7】 1.25≧a1/b1≧1.00 (1) 1.25≧a1/c1≧1.00 (2) 3個の円弧状スリットA1,B1,C1の前記した各
幅a1,b1,c1と各円弧状スリットA1,B1,C1の間
の前記の間隔d1が下記の式(3)〜(5)を満足し;
【0010】
【数8】 1.50≧a1/d1≧0.80 (3) 1.50≧b1/d1≧0.80 (4) 1.50≧c1/d1≧0.80 (5) 円弧状スリットA1の延長線により形成される中心
角の角度α1が下記の式(6)を満足する;
【0011】
【数9】 α1≧360°×(X/100)×(5/6) (6) [式中、Xは中空複合繊維における粘度の高い方の繊維
形成性熱可塑性重合体の複合比率(重量%)を示す] 紡糸ノズルであり;且つ (iii) 粘度の高い方の繊維形成性熱可塑性重合体
を、円弧状スリットA1の両端部にかからないようにし
て該円弧状スリットA1から吐出す;ことを特徴とする
中空複合繊維の製造方法である。
【0012】 さらに、本発明は、粘度の異なる2つの
繊維形成性熱可塑性重合体をサイドバイサイド型に溶融
紡糸して中空複合繊維を製造する方法であって、 (i) 2個の円弧状スリットA2,B2が間隔(d2
をあけて同一円周上に配置されている紡糸ノズルから、
前記の2種の繊維形成性熱可塑性重合体をサイドバイサ
イド型に溶融紡糸し; (ii) その際の紡糸ノズルは、 円弧状スリットA
2の幅a2および円弧状スリットB2の幅b2が下記の式
(7)を満足し;
【0013】
【数10】 1.25≧a2/b2≧1.00 (7) 2個の円弧状スリットA2,B2の前記した各幅
2,b2と円弧状スリットA2,B2の間の前記の間隔d
2が下記の式(8)および(9)を満足し;
【0014】
【数11】 1.50≧a2/d2≧0.80 (8) 1.50≧b2/d2≧0.80 (9) 円弧状スリットA2の延長線により形成される中心
角の角度α2が下記の式(10)を満足する;
【0015】
【数12】 α2≧360°×(X/100)×(5/6) (10) [式中、Xは中空複合繊維における粘度の高い方の繊維
形成性熱可塑性重合体の複合比率(重量%)を示す] 紡糸ノズルであり;且つ (iii) 粘度の高い方の繊維形成性熱可塑性重合体
を、円弧状スリットA2の両端部にかからないようにし
て該円弧状スリットA2から吐出す;ことを特徴とする
中空複合繊維の製造方法である。
【0016】 上記した本発明の方法により製造される
中空複合繊維、詰め綿やクッション材として有効に用
いられる
【0017】限定されるものではないが、本発明の内容
の理解を容易にするために、図を参照して本発明につい
て詳細に説明する。まず、本発明では、 ○ 図1の(a)〜(c)に示すような3個の円弧状ス
リットA1,B1,C1が互いに同じ間隔(d1)をあけて
実質的に同一円周上に配置されている紡糸ノズルから、
粘度の異なる2種の繊維形成性熱可塑性重合体(以下粘
度の高い方の繊維形成性熱可塑性重合体を単に「高粘度
重合体」と、また粘度の低い方の繊維形成性熱可塑性重
合体を単に「低粘度重合体」と称することがある)をサ
イドバイサイド型に溶融紡糸することによって中空複合
繊維を製造するか;または ○ 図2の(a)〜(c)に示すような2個の円弧状ス
リットA2,B2が間隔(d2)をあけて実質的に同一円
周上に配置されている紡糸ノズルから、高粘度重合体と
低粘度重合体をサイドバイサイド型に溶融紡糸すること
によって中空複合繊維を製造する。ここで、本発明でい
う「サイドバイサイド型に溶融紡糸する」とは、溶融紡
糸によって得られる中空複合繊維が、図3の(a)〜
(c)の中空複合繊維の横断面図で例示すように、高粘
度重合体からなる一方の円弧部分と低粘度重合体からな
るもう一方の円弧部分とが互いに接合して1本の中空複
合繊維を形成していることを意味する。
【0018】その場合に、高粘度重合体は、円弧状スリ
ットA1または円弧状スリットA2から吐出されるが、 ○ 図1に示す3個の円弧状スリットA1,B1,C1
有する紡糸ノズルから溶融紡糸する場合は、円弧状スリ
ットA1の幅a1、円弧状スリットB1の幅b1、および円
弧状スリットC1の幅c1が、下記の式(1)および
(2);
【0019】
【数13】 1.25≧a1/b1≧1.00 (1) 1.25≧a1/c1≧1.00 (2) を満足する寸法になっていることが必要であり;また ○ 図2に示す2個の円弧状スリットA2,B2を有する
紡糸ノズルから溶融紡糸する場合は、円弧状スリットA
2の幅a2および円弧状スリットB2の幅b2が、下記の式
(7);
【0020】
【数14】 1.25≧a2/b2≧1.00 (7) を満足する寸法になっていることが必要である。ここ
で、円弧状スリットの幅a1,b1,c1,a2,b2は、
図1および図2に示すように、各円弧状スリットの直径
方向におけるスリット幅(熱可塑性重合体を吐出すスリ
ットの厚み)を意味する。
【0021】図1に示す紡糸ノズルから溶融紡糸する場
合にa1/b1およびa1/c1の値が1.00よりも小さ
いと、そして図2に示す紡糸ノズルから溶融紡糸する場
合にa2/b2の値が1.00よりも小さいと、高粘度重
合体と低粘度重合体との不完全接合、未接合、接合面の
剥離などに起因する中空割れが増加し、しかも得られる
中空複合繊維の潜在捲縮能が低下する。一方、図1に示
す紡糸ノズルにおいてa1/b1およびa1/c1の値が
1.25よりも大きいと、また図2に示す紡糸ノズルに
おいてa2/b2の値が1.25よりも大きいと、紡糸時
の曳糸性が低下する。
【0022】そして、本発明においては、 ○ 図1に示す3個の円弧状スリットA1,B1,C1
有する紡糸ノズルから溶融紡糸する場合は、3個の円弧
状スリットA1,B1,C1の各幅a1,b1,c1と、各円
弧状スリットA1,B1,C1の間の間隔d1が、下記の式
(3)〜(5);
【0023】
【数15】 1.50≧a1/d1≧0.80 (3) 1.50≧b1/d1≧0.80 (4) 1.50≧c1/d1≧0.80 (5) を満足することが必要であり;また ○ 図2に示す2個の円弧状スリットA2,B2を有する
紡糸ノズルか溶融紡糸する場合は、2個の円弧状スリッ
トA2,B2の各幅a2,b2と円弧状スリットA2,B2
間の間隔d2が下記の式(8)および(9);
【0024】
【数16】 1.50≧a2/d2≧0.80 (8) 1.50≧b2/d2≧0.80 (9) を満足することが必要である。ここで、3個の円弧状ス
リットA1,B1,C1の間の間隔d1、および2個の円弧
状スリットA2,B2の間の間隔d2は、図1および図2
に示すように、各円弧状スリットの隣り合う端部間の円
周方向の距離を意味する。
【0025】図1に示す紡糸ノズルにおいてa1/d1
1/d1およびc1/d1の値が0.80よりも小さい
と、また図に示す紡糸ノズルにおいてa2/d2およびb
2/d2の値が0.80よりも小さいと、中空複合繊維の
製造時に高粘度重合体の吐出量が減少して、高粘度重合
体と低粘度重合体との未接合、不完全接合、接合部の剥
離などに起因する中空割れが多発する。一方、図1に示
す紡糸ノズルにおいてa 1/d1、b1/d1およびc1
1の値が1.50よりも大きいと、また図2に示す紡
糸ノズルにおいてa2/d2およびb2/d2の値が1.5
0よりも大きいと、該幅d1または幅d2部分の強度が低
下して、ノズルの強度の低下による破損などを生じ易く
なって、上記した所定の形状および寸法の円弧状スリッ
トを保てなくなる。
【0026】本発明において、高粘度重合体を吐出すた
めに、円弧状スリットA1の幅a1および円弧状スリット
2の幅a2の実際の寸法は使用する繊維形成性熱可塑性
重合体の種類、3個の円弧状スリットA1,B1,C1
たは2個の円弧状スリットA2,B2から吐出される中空
複合繊維の外径、製造しようとする中空複合繊維の単繊
維繊度などに応じて異なり得るが、一般に、円弧状スリ
ットA1の幅a1および円弧状スリットA2の幅a2を約
0.10〜0.30mmの範囲にしておくのが、紡糸
性、得られる中空複合繊維の耐ヘタリ性、嵩高性などの
点から好ましい。また、円弧状スリットB1とC1の幅b
1とc1、円弧状スリットB2の幅b2、各円弧状スリット
間の間隔d1およびd2は、円弧状スリットA1の幅a1
よび円弧状スリットA2の幅a2の実際の数値(mm)を
用いて、上記した式(1)〜(5)または式(7)〜
(9)を満たす範囲内の値になるようにして決められ
る。
【0027】また、図1の紡糸ノズルにおける3個の円
弧状スリットA1,B1,C1により構成される紡糸孔の
外径r1、図2の紡糸ノズルにおける2個の円弧状スリ
ットA2,B2により構成される紡糸孔の外径r2は、製
造を目的とする中空複合繊維の外径、デニール数などに
応じて調節できるが、一般に、約1.60〜2.20m
mの範囲にしておくのが耐ヘタリ性に優れる中空複合繊
維を得る点から望ましい。さらに、図1に示す紡糸ノズ
ルにおいて、円弧状スリットB1と円弧状スリットC1
長さ(それぞれの円弧状スリットの延長線により構成さ
れる中心角の角度)は、同じであってもまたは異なって
いてもよいが、円弧状スリットB1と円弧状スリットC1
の長さを同じにしておくのが、バランスのとれた潜在捲
縮能を有する中空複合繊維を得ることができるので望ま
しい。
【0028】更に、本発明では、 ○ 図1に示す3個の円弧状スリットA1,B1,C1
有する紡糸ノズルから溶融紡糸する場合は、円弧状スリ
ットA1の延長線により形成される中心角の角度α1が下
記の式(6);
【0029】
【数17】 α1≧360°×(X/100)×(5/6) (6) を満足すると共に、高粘度重合体を、円弧状スリットA
1の両端部にかからないようにして該円弧状スリットA1
から吐出す、すなわち円弧状スリットA1の両端部より
もうちわになるようにして円弧状スリットA1から吐出
すことが必要であり;また、 ○ 図2に示す2個の円弧状スリットA2,B2を有する
紡糸ノズルから溶融紡糸する場合は、円弧状スリットA
2の延長線により形成される中心角の角度α2が下記の式
(10);
【0030】
【数18】 α2≧360°×(X/100)×(5/6) (10) を満足すると共に、高粘度重合体を、円弧状スリットA
2の両端部にかからないようにして円弧状スリットA2
ら吐出す、すなわち円弧状スリットA2の両端部よりも
うちわになるようにして円弧状スリットA2から吐出す
ことが必要である[上記式(6)および式(10)にお
いて、Xは中空複合繊維における高粘度重合体の複合比
率(重量%)を示す]。
【0031】ここで、上記した点を図1の(a)および
図2の(a)の紡糸ノズルを用いた場合を例に挙げてよ
り詳細に説明すると、図4の(a)および(b)に示す
ように、本発明では、高粘度重合体を、円弧状スリット
1または円弧状スリットA2の両端部にかからないよう
にして(円弧状スリットA2の両端部よりもうちわにな
るようにして)、円弧状スリットA1または円弧状スリ
ットA2から吐出し、それと共に低粘度重合体を、紡糸
ノズルの他の部分から吐出す、すなわち図1に示す紡糸
ノズルでは円弧状スリットA1の両端部およびその近傍
並びに円弧状スリットB1およびC1から、また図2に示
す紡糸ノズルでは円弧状スリットA2の両端部およびそ
の近傍並びに円弧状スリットB2から低粘度重合体を吐
出すことが必要である。円弧状スリットA1または円弧
状スリットA2から吐出される高粘度重合体は、勿論、
円弧状スリットA1または円弧状スリットA2の一方の端
部にかかっても、中空割れなどのない中空複合繊維を製
造することができない。
【0032】円弧状スリットA1の延長線により形成さ
れる中心角の角度α1、および円弧状スリットA2の延長
線により形成される中心角の角度α2が、それぞれ上記
の式(6)および式(10)で表される角度よりも小さ
いと、円弧状スリットA1または円弧状スリットA2から
吐出される粘度の高い方の繊維形成性熱可塑性重合体
が、吐出し時に円弧状スリットA1の両端部または円弧
状スリットA2の両端部にかかってしまって、中空複合
繊維の前記した中空割れが多発し且つ耐ヘタリ性が低下
する。
【0033】中心角の角度α1および中心角の角度α2
上限値は特に制限されないが、潜在捲縮能の高い中空複
合繊維を得るためには、高粘度重合体塑性重合体:低粘
度重合体の複合比率を後記するように一般に30:70
〜70:30の重量比にするのが好ましいので、そのよ
うな複合比率の基づいて、中心角の角度α1および中心
角の角度α2の上限値を、下記の式(11)または(1
2)を満足するような角度にするのが好ましい。
【0034】
【数19】 α1≦360°×(X/100)×1 (11) α2≦360°×(X/100)×1 (12) [式中、Xは高粘度重合体の複合比率(重量%)を示
す]
【0035】また、限定されるものではないが、図4を
参照して説明すると、紡糸ノズルの円弧状スリットA1
または円弧状スリットA2から吐出す高粘度重合体の角
度β1またはβ2が、下記の式(13)または(14)を
満足するようにして、高粘度重合体を円弧状スリットA
1または円弧状スリットA2から吐出し、残りの部分から
低粘度重合体を吐出すようにするのが、中空割れがな
く、潜在捲縮能の高く、しかも耐ヘタリ性に優れた中空
複合繊維を得ることができる点から好ましい。
【0036】
【数20】 0.95α1≧β1≧0.75α1 (13) 0.95α2≧β2≧0.75α2 (14)
【0037】そして、高粘度重合体を円弧状スリットA
1または円弧状スリットA2の両端にかからないようにし
且つ低粘度重合体を残りのスリット部分から吐出すよう
にするには、例えば、紡糸ノズルを有する口金に接する
分配板における高粘度重合体の流路を円弧状スリットA
1または円弧状スリットA2の両端部よりもうちわに設け
ると共に低粘度重合体の流路を紡糸ノズルのその他の部
分にまで達するように設けることによって行うことがで
きる。
【0038】本発明では上記した紡糸ノズルから2種の
繊維形成性熱可塑性重合体をサイドバイサイド型で溶融
紡糸して中空複合繊維を製造するが、本発明でいう「繊
維形成性熱可塑性重合体」とは、繊維形成性熱可塑性重
合体のみからなるものに限定されず、添加剤などを含ま
ない繊維形成性熱可塑性重合体自体、繊維の製造に従来
から汎用されている1種または2種以上の添加剤および
/または他の重合体を含有する繊維形成性熱可塑性重合
体組成物の総称を意味する。
【0039】本発明で使用し得る繊維形成性熱可塑性重
合体としては、溶融紡糸によって繊維を形成し得る重合
体であればいずれも使用でき、その代表例としてはポリ
エステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリビニルア
ルコール系重合体などを挙げることができ、それらのう
ちでも繊維形成性のポリエステル、ポリオレフィン、ポ
リアミドなどが好ましく、繊維形成性ポリエステルを用
いるのがより好ましい。
【0040】より具体的には、繊維形成性熱可塑性重合
体が繊維形成性ポリエステルである場合は、テレフタル
酸またはそのエステル形成性誘導体を主たるジカルボン
酸成分とし、これにエチレングリコールおよび/または
1,4−ブタンジオールを主たるジオール成分として反
応させて得られるポリエチレンテレフタレート系重合体
および/またはポリブチレンテレフタレート系重合体が
好ましく用いられる。そして、繊維形成性熱可塑性重合
体としてポリエチレンテレフタレート系重合体および/
またはポリブチレンテレフタレート系重合体を用いた場
合には、耐ヘタリ性に極めて優れ、且つ嵩高性にも優れ
るクッション材として極めて適する中空複合繊維を得る
ことができる。また、かかるポリエステル系重合体より
なる中空複合繊維は、その使用後に加熱溶融等によって
再生が可能であり、しかも燃焼してもシアンガスなどの
有毒ガスを発生しないので、地球環境の汚染を低減させ
ることができ、安全性が高い。
【0041】ポリエチレンテレフタレート系重合体およ
び/またはポリブチレンテレフタレート系重合体は、必
要に応じて少量の(通常30モル%以下)の他のジカル
ボン酸成分、オキシカルボン酸成分、他のジオール成分
の1種または2種以上を共重合単位として有していても
よい。その場合に、他のジカルボン酸成分としては、例
えばイソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレ
ンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸またはそれら
のエステル形成性誘導体;5−ナトリウムスルホイソフ
タル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ビ
ス(2−ヒドロキシエチル)などの金属スルホネート基
含有芳香族カルボン酸誘導体;シュウ酸、アジピン酸、
セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸ま
たはそのエステル形成性誘導体を挙げることができる。
また、オキシカルボン酸成分の例としては、p−オキシ
安息香酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸またはそれ
らのエステル形成性誘導体などを挙げることができる。
また、他のジオール成分としては、例えば1,3−プロ
パンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチ
ルグリコールなどの脂肪族ジオール;1,4−ビス(β
−オキシエトキシ)ベンゼン、ポリエチレングリコー
ル、ポリブチルグリコールなどを挙げることができる。
【0042】また、繊維形成性熱可塑性重合体としてポ
リオレフィンを用いる場合は、例えばポリプロピレン、
改質ポリプロピレンなどを、ポリアミドを用いる場合
は、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイ
ロン、7−ナイロン、9−ナイロン、11−ナイロンな
どを挙げることができる。
【0043】そして本発明では、粘度の異なる2種の繊
維形成性熱可塑性重合体(すなわち高粘度重合体と低粘
度重合体)を使用して、且つ図3を引用して上記したよ
うに、粘度の高い方の繊維形成性熱可塑性重合体を円弧
状スリットA1または円弧状スリットA2からそれらのス
リットの両端部にかからないようにして吐出すが、その
場合の高粘度重合体と低粘度重合体は、それらの重合体
がその接合面で良好に接合(融着)して、中空割れを生
ずることのない中空形状を安定して形成し得るものであ
れば、同種の重合体を組み合わせて使用しても、または
異なる種類の重合体を組み合わせて使用してもよい。し
かしながら、高粘度重合体と低粘度重合体として同種の
重合体を使用するのが、互いに親和性が高くて両者の接
合が良好になって、中空割れのない中空複合繊維を円滑
に得ることができるので好ましい。
【0044】高粘度重合体と低粘度重合体の粘度差は、
溶融紡糸時の温度における両重合体の溶融粘度の差が5
0〜1000ポイズの範囲であるのが好ましく、200
〜800ポイズであるのがより好ましい。高粘度重合体
と低粘度重合体の溶融粘度の差が50ポイズよりも小さ
いと、繊維の内部構造において配向差が小さくなって潜
在捲縮能が小さくなり、嵩高性および耐ヘタリ性に劣っ
た中空複合繊維となり易く、一方溶融粘度の差が100
0ポイズよりも大きいと、溶融紡糸時に繊維が斜向して
口金からの糸離れが悪くなって糸切れなどを多発し、紡
糸が困難になり易い。
【0045】高粘度重合体および低粘度重合体として例
えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系
重合体を用いる場合は、両方のポリエステル系重合体の
極限粘度[η]が0.35〜0.85(20℃、フェノ
ール・四塩化エタン等重量混合溶媒中で測定)の範囲に
あって、且つ両方のポリエステル系重合体の極限粘度差
が0.10〜0.30、より好ましくは0.15〜0.
25にあるものを組み合わせて使用すると、溶融紡糸温
度(280℃)における溶融粘度の差が上記した50〜
1000ポイズの範囲になって、繊維の内部構造におけ
る配向差の大きい、潜在捲縮能が高く、嵩高性および耐
ヘタリ性に優れた中空複合繊維が得られる。
【0046】中空複合繊維を製造する際の、高粘度重合
体:低粘度重合体の複合比率は、繊維形成性熱可塑性重
合体の種類などに応じて変え得るが、一般に重量比で3
0:70〜70:30とするのが好ましく、40:60
〜60:40であるのがより好ましい。高粘度重合体の
複合比率が30重量%よりも少ない(低粘度重合体の複
合比率が70重量%よりも多い)と、嵩高性および耐ヘ
タリ性に優れた中空複合繊維が得られにくくなり、一方
高粘度重合体の複合比率が70重量%よりも多い(低粘
度重合体の複合比率が30重量%よりも少ない)と中空
複合繊維に潜在捲縮能が付与されにくくなる。
【0047】中空複合繊維の単繊維繊度は10デニール
以上であるのが好ましく、10デニールよりも小さいと
耐ヘタリ性が低下し易い。耐ヘタリ性、嵩高性などの点
から中空複合繊維の単繊維繊度が10〜40デニールで
あるのが好ましい。また、限定されるものではないが、
1個の紡糸口金における紡糸ノズルの数は約50〜30
0個程度とするのが好ましい。
【0048】更に、中空複合繊維における中空率を10
〜40%の範囲にするのが、中空割れがなく、耐ヘタリ
性および嵩高性に優れる中空複合繊維を良好な紡糸工程
性で得ることができ好ましい。中空複合繊維の中空率が
10%よりも小さいと耐ヘタリ性が低下し易くなり、一
方40%よりも高いと中空割れが多発して紡糸が困難に
なると共に嵩高性が低下し易い。
【0049】本発明の中空複合繊維を製造する際の紡糸
方法、紡糸装置、紡糸条件は、本発明で必須としている
前記した要件を満足している限りは、繊維形成性熱可塑
性重合体を用いて中空繊維、中空複合繊維を製造するの
に従来採用されている溶融紡糸方法、溶融紡糸装置、溶
融紡糸条件を採用することができる。特に、紡糸時また
は紡糸後に延伸を施すと、繊維の内部構造に大きな配向
差が生じてその潜在捲縮能を高めることができるので望
ましい。
【0050】また、本発明における中空複合繊維の製造
に当たっては、必要に応じて、例えば触媒、着色防止
剤、耐熱性改良剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色
剤、光沢改良剤、帯電防止剤、芳香剤、無機微粒子など
の1種または2種以上を使用してもよい。
【0051】 上記した本発明の方法により得られる中
空複合繊維は、中空割れがなく、しかも高い潜在捲縮能
を有し、加熱すると良好な捲縮を発現して、嵩高性およ
び耐ヘタリ性に優れる中空複合繊維となるので、寝具
類、家具類、車両シートや自動車シートなどにおけるク
ッション材として特に有効に用いることができる。本発
明の方法により得られる中空複合繊維をクッション材と
して用いる場合は、例えば、短繊維状に切断した中空複
合繊維をそのまま単独で、またはバインダー繊維や他の
接着剤などと一緒にして、寝具類、家具類、車両シー
ト、自動車シートなどにおける外皮(包皮)中に空気吹
き込みやその他の方法で充填し、バインダー繊維や接着
剤を用いた場合には外皮中で中空複合繊維同士を結合さ
せることによって、目的とする種々のクッション製品を
得ることができる。その場合に、中空複合繊維における
捲縮の発現はクッション製品用の外皮中に中空複合繊維
を充填した後に行ってもまたは充填する前に行ってもよ
いが、外皮に充填した後に加熱処理などを施して捲縮を
発現させるのが外皮へ中空複合繊維の充填が容易であり
望ましい。しかしながら、本発明の方法により得られる
中空複合繊維を用いてクッション製品を製造する方法
は、上記の方法に何ら限定されず、合成繊維製の詰め綿
を用いてクッション製品を製造する既知の方法のいずれ
もが採用できる。
【0052】
【実施例】以下に実施例などによって本発明について具
体的に説明するが、本発明は、それにより何ら限定され
ない。以下の例において、中空複合繊維における中空割
れの有無の判定および中空率の算出、並びに中空複合繊
維を用いて得られたクッション材の硬さ、繰返し圧縮歪
みおよび剥離強度の測定は、下記のようにして行った。
【0053】[中空複合繊維の中空割れの有無の判定]
溶融紡糸により得られた中空複合繊維の任意の50本か
ら試料を採取し、それを繊維の長さ方向に対して垂直に
切断し、断面を顕微鏡で観察して、全ての試料において
全く中空割れが生じていない場合を◎、延べで10%以
下の中空割れが生じている場合を△、延べで10%より
も多い中空割れを生じている場合を×として評価した。
【0054】[中空複合繊維の中空率の算出] 溶融紡糸により得られた中空複合繊維の任意の20本を
採取し、それを繊維の長さ方向に対して垂直に切断し
て、その断面を400倍の倍率で顕微鏡写真を撮る。そ
の写真を2倍に引き伸ばして現像し、できた写真を中空
部に相当する部分と繊維部に相当する部分に分けて切り
取りとる。写真から切り取った、中空部に相当する部分
および繊維部に相当する部分の重量をそれぞれ測定し
て、次式により中空率を求める。なお、中空割れが延べ
10%以上生じている繊維の場合は中空率の算出を行
わなかった。
【0055】
【数21】 中空複合繊維の中空率(%)={C/(C+D)}×100 (式中、C=中空部に相当する部分の重量 D=繊維部に相当する部分の重量)
【0056】[クッション材の硬さの測定] (1) 以下の各例で製造された中空複合繊維からなる
短繊維(繊維長64mmmm)70重量部と、バインダ
ー用複合繊維[(株)クラレ製「ソフィットN−720
タイプ」;単繊維繊度3デニール;繊維長51mm)3
0重量部を混綿し、常法によりカードを用いて厚さ20
mmのウエブを製造した。このウエブから縦×横=10
0mm×100mmの片を切り出して、その片を10枚
重ねて平板型金型に入れて、圧力0.5kg/cm2
温度190℃で10分間熱処理して、クッション材を製
造した。 (2) 上記(1)で得られたクッション材を用いて、
インストロン型万能試験機(島津製作所製「オートグラ
フDCS型」)によるヒステリシスカーブ(歪み量−荷
重曲線)を求め、歪み量が25%および50%の時の圧
縮に要する荷重によりクッション材の硬さとした。この
クッション材の硬さの値は、クッション材の圧縮による
沈み込み時の反発力(硬さ)を意味する値であり、JI
S−K6401に準ずる値である。
【0057】[クッション材の繰返し圧縮歪の測定]ク
ッション材の硬さの測定における上記(1)と同じよう
にしてクッション材を製造し、得られたクッション材に
対して、元の厚さ(圧縮試験を施す前の厚さ)とその5
0%の厚さとの範囲を繰り返す圧縮可能な装置[高分子
計器(株)製「DF−10」)を用いて、8万回の繰り
返し圧縮をクッション材に対して実施し、8万回圧縮後
のクッション材の厚さを測定して、元の厚さ(圧縮試験
を施す前の厚さ)に対する比(%)として求めた。この
方法により得られる圧縮歪の値はJIS−K6401に
準ずる値である。
【0058】[クッション材の剥離強度の測定]上記と
同様にして製造したクッション材に対してインストロン
万能試験機(島津製作所製「オートグラフDCS型」)
を用いて、その熱接着引裂強度をJASO−M304に
準じて測定して剥離強度の値とした。
【0059】《実施例 1》図1の(a)で示される紡
糸ノズル(α1=180°、r1=1.90mm、a1
1=c1=0.20mm、d1=0.15mm)を有す
る口金を備えた紡糸装置を用いて、極限粘度[η]が
0.65と0.60の2種類のポリエチレンテレフタレ
ート(PET)を、50/50(重量比)の複合比率
で、且つ極限粘度[η]=0.65の方のPETを円弧
状スリットA1から円弧状スリットA1の両端にかからな
いようにして吐出角度β1=150°で、両方のPET
の合計紡出量=450g/分、溶融紡糸温度285℃
(溶融紡糸時の高粘度PETと低粘度PETの溶融粘度
差約500ポイズ)、引き取り速度800m/分の条件
下にサイドバイサイド型に溶融紡糸して、1800デニ
ール/100f(単繊維繊度18デニール)の図3の
(a)に示す横断形状を有するサイドバイサイド型の中
空複合繊維を製造した。その結果得られた中空複合繊維
は、下記の表1に示すように中空率20%であり、しか
も中空割れの判定結果は◎であって中空割れが何ら生じ
ていなかった。
【0060】《実施例 2》図1の(b)で示される紡
糸ノズル(α1=200°、r1=1.90mm、a1
1=c1=0.20mm、d1=0.15mm)を有す
る口金を備えた紡糸装置を用いて、極限粘度[η]が
0.72と0.65の2種類のPETを、60/40
(重量比)の複合比率で且つ極限粘度[η]=0.72
の方のPETを円弧状スリットA1から円弧状スリット
1の両端にかからないようにして、吐出角度β1=16
0°、両方のPETの合計紡出量=450g/分、溶融
紡糸温度285℃(溶融紡糸時の高粘度PETと低粘度
PETの溶融粘度差約600ポイズ)、引き取り速度8
00m/分の条件下に溶融紡糸して、1800デニール
/100f(単繊維繊度18デニール)の図3の(b)
に示す横断形状を有するサイドバイサイド型の中空複合
繊維を製造した。その結果得られた中空複合繊維は、下
記の表1に示すように、中空率25%であり、しかも中
空割れの判定結果は◎であって中空割れが全く生じてい
なかった。
【0061】《実施例 3》図1の(c)で示される紡
糸ノズル(α1=140°、r1=1.90mm、a1=b
1=c1=0.20mm、d1=0.15mm)を有する
口金を備えた紡糸装置を用いて、極限粘度[η]が0.
65と0.58の2種類のPETを、40/60(重量
比)の複合比率で且つ極限粘度[η]=0.65の方の
PETを円弧状スリットA1から円弧状スリットA1の両
端にかからないようにして、吐出角度β1=130°、
両方のPETの合計紡出量=450g/分、溶融紡糸温
度285℃(溶融紡糸時の高粘度PETと低粘度PET
の溶融粘度差約500ポイズ)、引き取り速度800m
/分の条件下に溶融紡糸して、1800デニール/10
0f(単繊維繊度18デニール)の図3の(c)に示す
横断形状を有するサイドバイサイド型の中空複合繊維を
製造した。その結果得られた中空複合繊維は、下記の表
1に示すように、中空率13%であり、しかも中空割れ
の判定結果は◎であって中空割れが何ら生じていなかっ
た。
【0062】《比較例 1》極限粘度[η]が0.65
と0.60の2種類のPETを用いて、図1の(c)で
示される紡糸ノズル(α1=140°、r1=1.90、
1=b1=c1=0.20mm、d1=0.15mm)の
円弧状スリットA1から吐出角度β1を150°として極
限粘度[η]=0.65の高粘度PETを円弧状スリッ
トA1の両端にかかるようにして溶融複合紡糸した以外
は実施例1と同様にして、図3の(a)に示す横断形状
を有するサイドバイサイド型の中空複合繊維を製造し
た。その結果得られた中空複合繊維は、下記の表1に示
すように、中空割れの判定結果は×であって中空割れが
多発していた。
【0063】《比較例 2》極限粘度[η]0.72と
0.65のPETを60:40(重量比)の複合比率
で、且つ高粘度PETの円弧状スリットA1からの吐出
角度β1を160°として該高粘度PETが円弧状スリ
ットA1の両端にかかるようにして図1の(c)の紡糸
ノズル(α1=140°、r1=1.90、a1=b1=c
1=0.20mm、d1=0.15mm)から溶融複合紡
糸した以外は実施例2と同様にして、図3の(b)に示
す横断形状を有するサイドバイサイド型の中空複合繊維
を製造した。その結果得られた中空複合繊維は、下記の
表1に示すように、中空割れの判定結果は×であって中
空割れが多発していた。
【0064】《比較例 3》極限粘度[η]0.65と
0.58のPETを40:60(重量比)の複合比率
で、且つ高粘度PETの円弧状スリットA1からの吐出
角度β1を130°として該高粘度PETが円弧状スリ
ットA1の両端にかかるようにして図1の(c)の紡糸
ノズル(α1=120°、r1=1.90、a1=b1=c
1=0.20mm、d1=0.15mm)から溶融複合紡
糸した以外は実施例3と同様にして、図3の(c)に示
す横断形状を有するサイドバイサイド型の中空複合繊維
を製造した。その結果得られた中空複合繊維は、下記の
表1に示すように、中空割れの判定結果は×であって中
空割れが多数発生していた。
【0065】
【表1】
【0066】上記表1の結果から、上記した式(1)〜
(6)を満足する紡糸ノズルを有する紡糸装置を用い
て、且つ高粘度PETを円弧状スリットA1の両端にか
からないようにして高粘度PETと低粘度PETをサイ
ドバイサイド型に溶融紡糸している実施例1〜3の場合
には、中空割れを生ずることなく中空複合繊維が円滑に
製造されるのに対して、上記した(1)〜(6)を満足
する紡糸ノズルを有する紡糸装置を用いた場合であって
も高粘度PETを円弧状スリットA1の両端にかかかる
ようにして高粘度PETと低粘度PETをサイドバイサ
イド型に溶融紡糸している比較例1〜3の場合には、中
空割れが多発して、中空複合繊維が円滑に得られないこ
とがわかる。
【0067】《実施例4〜8および比較例4〜6》極限
粘度[η]が0.65と0.60の2種類のPETを、
下記の表2に示す各部寸法の紡糸ノズルを有する口金を
備えたそれぞれの紡糸装置を用いて、50:50(重量
比)の複合比率で、極限粘度[η]0.65のPETの
方を円弧状スリットA1から円弧状スリットA1の両端に
かからないようにして下記の表2に示す吐出角度β
1で、両方のPETの合計紡出量=450g/分、溶融
紡糸温度285℃(溶融紡糸時の高粘度PETと低粘度
PETの溶融粘度差約500ポイズ)、引き取り速度8
00m/分の条件下にサイドバイサイド型に溶融紡糸し
たところ、表2に示す単繊維繊度および中空率を有する
中空複合繊維をそれぞれ製造した。その結果得られたそ
れぞれの中空複合繊維の中空割れを上記した方法で判定
したところ、下記の表2に示すとおりであった。なお、
比較例5では、a1/b1の値が1.25を超えるため
に、紡糸時の曳糸性が不良であった。また、比較例6で
は中空割れが多発していた。
【0068】
【表2】
【0069】上記表2の結果から、図1に示す紡糸ノズ
ルを有する紡糸装置を用いて、高粘度重合体と低粘度重
合体をサイドバイサイド型に溶融複合紡糸して中空割れ
の中空複合繊維を円滑に製造するためには、紡糸ノズル
における各部の寸法が上記した式(1)〜(6)を満足
することが必要であることがわかる。
【0070】《実施例 9》 (1) 極限粘度[η]が0.65と0.60の2種類
のPETを、下記の表3に示す各部寸法の紡糸ノズル糸
を有する口金を備えた紡糸装置を用いて、下記の表3に
示す複合比率で、極限粘度[η]0.65のPETの方
を円弧状スリットA1から、下記の表3に示す吐出角度
β1で、両方のPETの合計紡出量=450g/分、溶
融紡糸温度285℃(溶融紡糸時の高粘度PETと低粘
度PETの溶融粘度差約500ポイズ)、引き取り速度
800m/分の条件下にサイドバイサイド型に溶融紡糸
して、表3に示す単繊維繊度および中空率を有する中空
複合繊維をそれぞれ製造した。その結果、表3に示すよ
うに、溶融紡糸時に極限粘度[η]0.65のPETが
円弧状スリットA1の端部にかかって吐き出された実験
番号(9)の中空複合繊維では中空割れが多発していた
が、極限粘度[η]0.65のPETを円弧状スリット
1からその端部にかからないようにして溶融紡糸した
実験番号(1)〜(8)の場合は中空割れのない中空複
合繊維が製造された。 (2) 上記(1)で得られたそれぞれの中空複合繊維
を繊維長64mmに切断して短繊維とし、この短繊維7
0重量部とバインダー用複合繊維[(株)クラレ製「ソ
フィットN−720」;単繊維繊度3デニール;繊維長
51mm)30重量部を混綿したものを用いて、上記
「クッション材の硬さの測定」の項で説明したようにし
てクッション材を製造し、得られたクッション材の硬
さ、繰返し圧縮歪みおよび剥離強度を上記した方法で測
定したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0071】
【表3】
【0072】上記表3の結果から、硬さが大きく、繰返
し圧縮歪みが小さく、且つ剥離強度の大きいクッション
材を中空複合繊維から得るためには、中空複合繊維にお
ける高粘度重合体と低粘度重合体の複合比率を30:7
0〜70:30(重量比)の範囲にすると共に中空複合
繊維の単繊維繊度を10デニール以上にするのが望まし
いことがわかる。
【0073】
【発明の効果】本発明による場合は、中空割れやパンク
などがなく、嵩高性に富み、耐ヘタリ性に優れるサイド
バイサイド型の中空複合繊維を、紡糸時の繊維の斜向、
紡糸口金への繊維の付着、それに伴う糸切れの発生など
を防止しながら、良好な工程性で、生産性よく安定して
製造することできる。そして、本発明の方法により得
られる中空複合繊維はその良好な嵩高性および耐ヘタリ
性によってクッション材として極めて適しており、本発
明の方法により得られる中空複合繊維を用いてクッショ
ン材を製造した場合には、硬さが大きく、繰返し圧縮歪
みが小さく、しかも剥離強度が大きくて、底つき感のな
い、すわり心地および/または寝心地の極めて良好なク
ッション材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる紡糸ノズルの一例を示す図であ
る。
【図2】本発明で用いる紡糸ノズルの別の例を示す図で
ある。
【図3】本発明の方法で得られる中空複合繊維の横断面
形状の例を示す図である。
【図4】本発明の方法で中空複合繊維を製造する際の、
高粘度重合体と低粘度重合体の各円弧状スリットからの
吐出形態を模式的に記載した図である。
【符号の説明】
1 円弧状スリットA11 円弧状スリットB11 円弧状スリットC12 円弧状スリットA22 円弧状スリットB2
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−174016(JP,A) 特開 昭61−152824(JP,A) 特開 昭63−165519(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01D 5/24 D01D 4/02 D01F 8/00 - 8/18

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粘度の異なる2種の繊維形成性熱可塑性
    重合体をサイドバイサイド型に溶融紡糸して中空複合繊
    維を製造する方法であって、 (i) 3個の円弧状スリットA1,B1,C1が互いに
    同じ間隔(d1)をあけて同一円周上に配置されている
    紡糸ノズルから、前記の2種の繊維形成性熱可塑性重合
    体をサイドバイサイド型に溶融紡糸し; (ii) その際の紡糸ノズルは、 円弧状スリットA1の幅a1、円弧状スリットB1
    幅b1および円弧状スリットC1の幅c1が下記の式
    (1)および(2)を満足し; 【数1】 1.25≧a1/b1≧1.00 (1) 1.25≧a1/c1≧1.00 (2) 3個の円弧状スリットA1,B1,C1の前記した各
    幅a1,b1,c1と円弧状スリットA1,B1,C1の間の
    前記の間隔d1が下記の式(3)〜(5)を満足し; 【数2】 1.50≧a1/d1≧0.80 (3) 1.50≧b1/d1≧0.80 (4) 1.50≧c1/d1≧0.80 (5) 円弧状スリットA1の延長線により形成される中心
    角の角度α1が下記の式(6)を満足する; 【数3】 α1≧360°×(X/100)×(5/6) (6) [式中、Xは中空複合繊維における粘度の高い方の繊維
    形成性熱可塑性重合体の複合比率(重量%)を示す]紡
    糸ノズルであり;且つ (iii) 粘度の高い方の繊維形成性熱可塑性重合体
    を、円弧状スリットA1の両端部にかからないようにし
    て該円弧状スリットA1から吐出す;ことを特徴とする
    中空複合繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】 粘度の異なる2つの繊維形成性熱可塑性
    重合体をサイドバイサイド型に溶融紡糸して中空複合繊
    維を製造する方法であって、 (i) 2個の円弧状スリットA2,B2が間隔(d2
    をあけて同一円周上に配置されている紡糸ノズルから、
    前記の2種の繊維形成性熱可塑性重合体をサイドバイサ
    イド型に溶融紡糸し; (ii) その際の紡糸ノズルは、 円弧状スリットA2の幅a2および円弧状スリットB
    2の幅b2が下記の式(7)を満足し; 【数4】 1.25≧a2/b2≧1.00 (7) 2個の円弧状スリットA2,B2の前記した各幅
    2,b2と円弧状スリットA2,B2の間の前記の間隔d
    2が下記の式(8)および(9)を満足し; 【数5】 1.50≧a2/d2≧0.80 (8) 1.50≧b2/d2≧0.80 (9) 円弧状スリットA2の延長線により形成される中心
    角の角度α2が下記の式(10)を満足する; 【数6】 α2≧360°×(X/100)×(5/6) (10) [式中、Xは中空複合繊維における粘度の高い方の繊維
    形成性熱可塑性重合体の複合比率(重量%)を示す]紡
    糸ノズルであり;且つ (iii) 粘度の高い方の繊維形成性熱可塑性重合体
    を、円弧状スリットA2の両端部にかからないようにし
    て該円弧状スリットA2から吐出す; ことを特徴とする中空複合繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】 繊維形成性熱可塑性重合体として粘度の
    異なるポリエステル系樹脂を用いる請求項1または2の
    製造方法。
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